平成29年6月19日(月曜日) 10時00分~12時00分
文部科学省(中央合同庁舎第7号館)15階 15F特別会議室
(主査)加治佐 哲也 委員 (副主査)松木 健一 委員 (委員) 伊藤 幸子、北山 敦康、蛇穴 治夫、関根 郁夫、田中 一晃、牧野 光朗、松田 恵示、水落 芳明、山崎 博敏、渡邊 恵子の各委員
浅田 高等教育局審議官、角田 高等教育局大学振興課長、長谷 初等中等教育局教職員課教員免許企画室長、柳澤 高等教育局大学振興課教員養成企画室長
国立教員養成大学・学部,大学院,附属学校の改革に関する有識者会議(第8回)
平成29年6月19日
【加治佐主査】 それでは,どうも,皆様,おはようございます。定刻になりましたので,ただいまより,第8回になります,国立教員養成大学・学部,大学院,附属学校の改革に関する有識者会議を開催いたします。
本日は,主に資料の1,これは議論のまとめ案となっております。それから,資料の2,組織,体制について,この2つはこれまでの意見や状況の整理をしたものです。これについて御議論いただきたいというふうに思います。
それでは,まず初めに,主にこの2つの資料につきまして,確認や説明をお願いしたいと思います。
【柳澤教員養成企画室長】 よろしくお願いいたします。資料1でございますが,議論のまとめ案です。第6回,7回の会議でお配りをしまして,御議論いただきました課題と対応策というもの,この資料をベースにいたしまして,それを膨らませる形で,これまでの皆様からの御意見をなるべく多く取り入れまして,それに関係する経緯,内容あるいは法令的な検討を少々加えたいといったことをいたしまして,文章を増やしたものでございます。内容につきましては,主査,副主査と御相談をさせていただきながら,それぞれの論点について,ある一定の方向性を示す資料という形で作成をさせていただきました。
なお,資料1の1ページの最後の5の部分,教員需要等に応じた規模や体制,あるいは,ページ数としては最後の部分ですが,20ページのところでは,(8)組織,体制についてというところがございますが,この部分につきましては,国立大学全体の再編,統合といった議論が出ているという中で,国立教員養成大学,学部のあり方につきましても,非常に重要で,影響の大きい論点であるということですので,もう少し議論を深めていただく必要があるというふうに考えまして,全体に一定の方向性を示す作りになっている資料1の方には入れないで,資料2として別途,御用意をさせていただきました。
この資料2の方の考え方でございますが,国立教員養成大学学部や附属学校の組織,体制に関係する内容につきまして,これまでの本有識者会議における御意見,あるいは過去の会議における提言,あるいはこれまでの政府の決定,通知などの経緯を整理するという形でまとめ,このような観点からの検討が必要ではないかということをお示しするという形の資料にさせていただきました。
本日の会議におきまして,本会議としてどのような方向性を示すべきかにつきまして,実際の実現可能性や効果を見据えつつ,御検討をいただきたいと思っております。また,提言内容を確実に実現させるためにはどのような措置が必要かなども含めて,御意見をいただけますと幸いでございます。
なお,資料2の末尾に2枚の教員需要の推移のグラフを付けております。28年度までは実績値でございますが,それ以降は文部科学省の推計,又は,2枚目につけておりますが,本会議の山崎委員の試算を参考にさせていただいて作りました折れ線グラフでございます。
とりわけ教員需要の将来予測というのは流動的な要素も多いので,確定的なことは申し上げられませんが,大きな傾向という程度でご覧いただきたいと思いますけれども,確実に言えますことは,平成29年,30年,このあたりをピークとして,その後は長期的に,継続的に教員需要が減っていくということが,少なくとも,この資料でいきますと,平成42年頃まではずっと続いていくということが確実であろうということでございます。
そのほか,資料3は第7回会議の発言要旨,資料4は今後のスケジュール(案)でございます。
以上です。
【加治佐主査】 どうもありがとうございました。それでは,意見交換に入ってまいりたいと思います。全体を2つに分けます。今,御説明のあった資料1と資料2です。資料1はかなりまとまったものですけれども,こちらにつきまして,大体,11時20分頃まで意見交換を行いたいというふうに思います。残りの時間が資料2です。
それで,資料1の方をご覧いただきたいと思いますが,資料1の議論のまとめは主なポイントということで見出しも付いているんですが,大きくは,1の課題と,それから,8ページ以降,課題に対する対応策,この2つの部分からできております。
内容が多いですので,1は全体,課題のところはまとめて行っていいと思うんですが,2の対応策は,これは(1)から(7)までですので,きれいにまとまっていますので,それぞれについて分けて意見交換を行いたいというふうに思っております。その後,資料2ということになります。今,御説明がありましたように,特に資料1はかなり方向性を示したものになっております。これをこういう形で集約していいのかどうか,是非,具体的に御発言いただきたいと思います。できれば,何ページの何行目をこういうふうに変えるべきだとか,あるいは付け加えるべきだとか,そういったような御意見をいただけるとありがたいかなというふうに思います。それでは,どうぞよろしくお願いいたします。
まずは,資料1の最初の1の部分です。この最初の主なポイントも含めてもらって結構なんですが,それプラス,この1の課題の部分です。こちらについての御意見を承りたいと思います。名立てを立てていただいて,よろしくお願いしたいというふうに思います。
それでは,名立てが立ちましたので,蛇穴委員,それから関根委員,田中委員ですね。その順番でお願いいたします。
【蛇穴委員】 それでは,発言させていただきます。大項目1番の一部と,1ページ目の「主なポイント」について,気付いたことをお話しさせていただきたいと思います。
1ページ目の,まず「主なポイント」の方から先に,気付いた点をお話しさせていただきます。最初に,ポイントの1番目に「本会議が目指すもの」ということが明確に書かれております。いろんな前提条件がありますけれども,ここでの結論は,「教員養成機能を最大限に高めること」という,目指すべき方向性が書かれています。そのことを踏まえて2から5までの内容を見たときに,一部,付け加えた方がいいのではないかという観点があると思います。
つまり,最大限に高めるためには,機能的な面の強化と,それから組織・システムの改善という,大きく2つの論点があると思います。機能的な面の強化で言いますと,この資料にもありますとおり,カリキュラムとそれを担う大学教員の問題,それから,カリキュラムに影響を及ぼす外部あるいはステークホルダーからの要請の問題,そして,附属学校との連携・協働のあり方の問題等が機能的な面の強化として挙がってくると思います。
それから,もう一つ,組織・システムの改善という観点から言いますと,高度化を目指すという観点からの大学院,特に教職大学院の在り方の問題,附属学校と大学との関わり方の問題,それから,資源の有効活用ということにつながってくる,その組織・体制の問題ということが挙げられるだろうと思います。
そうしますと,今,述べた中で抜け落ちているのが,カリキュラムと大学教員の問題だろうと思います。全体をまとめる重要なポイントになると思いますので,ここのところは本文の方から,カリキュラムと大学教員に関わる部分を少し抜き書きして,まとめてはどうかということが1つです。
それから,もう一つ気になりましたのが,3ページ目でございます。3ページ目の真ん中に【「教員養成」の学問分野の欠如】という項目が書かれておりまして,そのうちの1つ目の丸の中段あたりに,「しかし」から始まるところがあります。その部分が,それぞれ教科教育の担当者と教科専門の担当者が,それぞれの立場から,互いに批判し合っている,あるいは課題を指摘し合っているかのような内容となっており,多少,私としては気になりました。次のように修正していただきたいと思います。
「しかし」から始まる箇所を読みながら具体に説明させていただきます。「しかし,教科専門科目担当教員は他学部出身者が多く,自身の専門分野の研究を深める意識が強く教員養成とのつながりが弱い」と,そこまではいいんですが,その次の「教科教育法(学)担当教員から指摘される一方」というところは,必ずしも事実ではないだろうと思いますので,ここは,少し曖昧にして,「教科教育法(学)担当教員から」という文言は削除し,「のではないかとの指摘がある一方」としたいというのがまず1点です。
それから,その後の部分ですが,「教科教育法(学)担当教員は現場重視で学問的探求が弱いと教科専門科目担当教員から指摘され」とあります。ここもまた,事実と異なると思いますので,ここのところは,少し長いのですが,こういうふうに書き替えてはどうかと思います。「教科教育法(学)担当教員は」の後に続く内容として「教科内容を踏まえた教育を行う必要があるものの,当該教科の土台となる学問分野の研究者とは異なる専門性を持っている。その両者の緊密な連携が不可欠でありながら」とし,最後の「両者の協働が必ずしも有効に機能していない」という部分につなげれば良いのではないかと思いました。教科専門担当者と教科教育法担当者に限定して書くことは,事実とは少し異なってくるのではないかという気がいたしましたので,その点について,少し意見を述べさせていただきました。
以上です。
【加治佐主査】 よろしいですか。具体的によく分かりましたね。それでは,関根委員。
【関根委員】 私も,主なポイントで,最初の1番目,蛇穴先生が言われたのですが,教員養成機能を最大限に高めることに加えて,幼稚園からかもしれませんけれども,小中高特全体の教育の質,学校教育の質の向上に資することも入れていただけないかということが1つあります。
これはどういうことかというと,具体的には,例えば5番です。教職大学院のところで,新たな役割と特色の発揮です。ここは,新たな役割というのは,教職全体を支える観点からの新たな役割です。この教職全体を支えるという観点と違って,各学校の教育の質を向上させるという観点から,知の拠点としての役割が求められていることも入れていただけないかと思います。
つまり,小中高特で課題があったときに,その課題について,大学院が一緒になって考え,研究して,解決方策を探っていき,それらを積み上げていくということもしていかないと,教育の方法とかが積み上がっていっていないのです。その積み上げていくところの拠点となるのが,教職大学院ですか。ここが担っていただけないかなという意味で,ここにそういう項目を加えていただけたらありがたいということでございます。
【加治佐主査】 よろしいですか。検討させていただきます。じゃ,田中先生。
【田中委員】 失礼します。課題と対応策とうまく分けて発言することができないような気がするので,一緒になってしまうかもしれませんが,お許しいただきたいと思います。
全国の国立大学附属学校に関わる立場としまして,特にこの有識者会議が始まってからは,機会あるごとに全体に向け,また,個別に,ここで得た情報を基に,附属学校は変わらなければならない,変わるべしと訴えかけています。
この会議でも御意見をいただきましたとおり,附属学校は教育の二極化を生んだ元凶という,大変厳しい御意見を伺いまして,附属学校関係者としまして,深く反省しているところであります。
附属学校がこれまで特別意識,特権意識を強く持っていたと。そして,今もそういうことを思っている学校があるということは否めませんし,その意識こそが一般社会,学校との間に大きな壁を作っていると考えているところです。
多くの附属学校がほかとは異なる特別な学校と思っている,そして,外からはそう見られている以上,そこに協働,協力的な関係は生まれません。全ての問題,課題を解決するために,全ての附属学校が,何よりも,まず,この特別,特権意識をなくさなければならないと考えています。
ただ,残念ながら,地域,学校による温度差がありまして,この期に及んでと,私としては歯がゆいところがあるのも事実ですが,全体としましては,附属学校に向けられている多くの声にこれまでのように反発するのではなくて,重く真摯に受け止めていると実感を得ています。
各学校自らが問題を我が事として捉え,他から評価される附属学校を目指そうとする機運が高まってきています。先日も,短時間の中で,教員の働き方,学校業務のスリム化への取組について調査をかけましたが,その改善に既に取り組んでいる,取り組み始めている学校が予想を超えて多くありました。
改革案の方にも入るかもしれませんが,ただ口先だけの改革宣言では,これまでと同じようなことを繰り返すだけですから,言ったことを実行する,確かなエビデンスを基に評価するといったことに,今後,私ども,全附連と教大協が連携しつつ,取り組んでいきたいと考えています。
具体的には,資料1,議論のまとめ案,2の取組に対する対応策,7,国立大学附属学校について,2の早急に対応すべきこととして,20ページにあります各附属学校の存在意義,成果の還元状況,公私立学校にはない付加価値,全国に発信できる特色等を客観的なエビデンスをもって示す資料を作成することであります。
作成されたプランが常に掲げられ,また,周知されることによって,附属学校は目標が明らかとなって,全教員で共有されると同時に,実行しなければならない社会的な責任を負うことになります。
達成状況が確認できるチェックリスト的なものの作成,そして,取り組もうとしていることの価値と取組について,第三者の評価をどのように受けていくのかも含めて,早急に検討していきたいと思っています。
自らがこのような動きを進めていくことによりまして,努力している学校,他から期待されている学校,評価されている学校,残したい学校と,逆に,そうでない学校が明らかになってくることは十分に考えられます。
決して望んでいるわけではありませんが,その結果,附属学校の規模の縮小や統廃合が促進されるという結果を招いたとしましても,望ましい在り方を考えたとき,それもいたし方ないと考えているところです。
附属学校がこのような決断をしたとき,周囲の目も,これまでのように十把一からげで附属学校を見るのではなく,それぞれの学校に目を向けていただく必要があります。今後,多くの教員養成大学,学部の附属学校が教育委員会と連携し,地域のモデル校としての役割を担い,これまで以上に地域のニーズや課題を受け止め,解決の手だてを広めていくことで貢献していく役割を目指すことになり,そのために,入学選抜を含め,公立学校に近い形に変えていくことを検討していくことになると思われます。
しかし,以前も申し上げたとおり,全ての附属学校がどこも同じように,地域の公立学校がすぐに活用できる教育研究を提供するモデルを目指さなくてもよいと思います。
附属学校の中には,国や地域から評価され,ここでしかできない個性的な質の高い研究を行っているところもあります。例えば,校名を挙げていきますが,学校現場では,我が国唯一で,しかも東大の知見を生かして,双生児,双子の研究を行っている東京大学教育学部附属中等教育学校,大学と一体となって,音楽界のエリート人材の育成を進めている東京芸術大学音楽学部附属音楽高等学校,国公立学校で初の国際バカロレア認定校となって,グローバル人材の育成が評価されている東京学芸大学附属国際中等教育学校,さらに,あえて申し上げますが,国公私立を含めて,一,二の進学校として知られる筑波大学附属駒場中・高等学校など,国を代表するような教育・研究を行っている附属学校は大きな方向性を変えずに,今の教育・研究を推進していくに当たり,周囲からの批判は出ないのではないでしょうか。それは,公私立では真似のできない,国立ならではの姿がそこにあるからで,ある意味で,国家の財産と考えているからです。
こういった,ほかにない,ほかでは真似のできない姿を放棄させ,全ての附属学校を公立学校化,画一化することが国益にとって有益であるとは決して思いません。ハイレベルな教育,特殊な教育研究を行う学校として,現教職員が学ぶ場としても,その価値は大きいと考えます。しかし,残念ながら,現在,これだけの評価をされている附属学校は多くありません。
こういった考えの基,資料1,議論のまとめ案,2,課題に対する対応策,(7)国立大学附属学校について中長期的な方針,多様な選抜方法として,16ページにあります,全ての附属学校が多様な子供たちが入学できる選抜方法を目指すべきであるとありますが,入学選抜に関しては,それぞれの果たすべき役割,達成すべき目標に沿い,根拠を明らかにした上で内部で内容を検討し,各学校で責任を持って実施すべきであり,その結果,タイトルどおり多様な選抜方法が生み出されていくものと考えます。
ただし,20ページにありますとおり,入学を希望する者が公平に入学者選抜を受けられる募集方法への改善,その他,地域や時代のニーズに合った学校運営の改革に向かうということにつきましては,今後,全ての附属学校が取り組まなければならない緊急の課題と考えています。
まとまりがなく,大変申し訳ありませんでした。失礼しました。
【加治佐主査】 ありがとうございました。もう対応策の方にまで言及していただきました。それでは,松木さん。
【松木副主査】 先ほど蛇穴先生の方から,主なポイントの最初の本会議が目指すものというところで,機能強化,特に大学のカリキュラムとか,大学教員の資質のことと,もう一つはシステムの改革と2つあるんだというお話がありました。これに絡んで,私自身も同じようなことを感じております。
今,日本の教員養成が直面する課題は,大きく2つあるように思います。1つは,少子化に伴う定員削減の問題,そして,もう一つは,教育改革を支えていくというような意味での教員養成の在り方を変えていく。具体的には学習指導要領の改訂等も含めてですが,コンテンツベースからコンピテンスベース,あるいはコンピテンシーとコンテンツが複合した状態への移行といったようなことが教員養成では大きな課題になっているように思います。
そのことを踏まえて考えますと,削減のことだけが目に入ってきちゃうと,有識者会議としての見識が疑われてしまうんじゃないかというような気がいたします。大きく削減の問題と,教育改革を進めていく教員養成に変わっていくんだということを大きく2つ述べていく必要があるんじゃないかと思います。
とりわけ教科領域を取り込むということが今回の柱にもなっています。ですが,残念ながら,現段階では,知識,技能の習得というところに,どうしても教員養成自身が偏ったシステムになっている。ですから,下手をすると,教科領域の取り込みが今求められている教育改革と逆行してしまうような危険性をも含んでいるような気がします。
グローバル化した社会,産業構造,あるいは社会構造が大きく変化していく中で,本当に21世紀の学力を支えるようなシステムに教員養成が変わっていく,そういったことを含めて,2つの大きな課題として位置付けていくべきじゃないかと思います。
当然,教員養成に関しては問題点ばかりじゃなくて,よいところも幾つかあるような気がします。それについてもきちんと評価をし,日本型の学校教育のよさ,それを支えている教員養成のよさを世界に向かって発信していけるようなことについても位置付けていくということが,もう一度,自信を取り戻していくことにもつながっていくような気がします。削減ばかりではなくて,もう一つ,教員養成として課せられている課題について,2つあるんだということを位置付けていくということが必要じゃないかなと思っております。
以上です。
【加治佐主査】 よろしいですか。あと,いかがでしょうか。それでは,松田さん,それから渡邊さんですか。じゃ,牧野さん。じゃ,今,私が述べた順にお願いします。
【松田委員】 失礼いたします。重なりますので,私が思います点だけ。
4ページの(3)の2つ目の卒業生の実態把握の不足という,質の保証・評価に関わる部分なんですけれども,後ほどの方策のところでも触れたいと思っていたのですが,いわば教員養成の結果といいますか,数字というものを,確かに大学がフォローしてこなかったというところはコリまでの御指摘のとおりで,この面は改善していく必要があります。
しかし,併せて実は,こうした結果の実数は既に教育委員会が現在お持ちなんですね。ですので,むしろこれは教育委員会との連携において,こういう実態把握というものが進んでいないということが課題として追記されればいいんじゃないかとちょっと思います。
改善というところでは,また後ほど。すみません。よろしくお願いします。
【加治佐主査】 分かりました。それでは,渡邊さん。
【渡邊委員】 私もこの資料を拝見したときに,先ほど松木先生がおっしゃったように,これまで取り組んできた教員養成大学の努力とか良さみたいなものがこの文章からは感じられないので,議論のまとめ案としていくには,少し欠けている部分があるのではないかと感じています。
そのような基本的な認識の下で,3つほど,この文章をまとめていくに当たって御検討いただきたいと思っていることを申し上げます。1つ目ですが,アンケート調査の結果を基にした記述が1か所だけだったと思うのですが,せっかく大規模に行っていただいたアンケート調査でもありますし,ここで議論をまとめていくに当たっての論拠とすべきではないかと思います。アンケート調査の結果分析から根拠付けられる課題や成果にも触れて,それらを基にしているということが分かるようにしていただけないかということが1点目です。
2点目は,大学教育における教員養成という視点が明確でないということです。今,大学教育の改革というのは,3つのポリシーに基づく教育改善とか,インスティテューショナル・リサーチというものを活用した内部質保証の改善というところで進んでいて,教員養成系学部は全学の取組の一環として,教員養成系大学であれば大学として,これらのことにも取り組んでいかなければならないという流れにあるわけです。
この議論のまとめの,具体的に申し上げると,例えば,10ページの2の早急に対応すべきことで,最新のニーズや課題への対応というところに書かれているカリキュラムのことと,最近まとめられた3つのポリシーの策定と運用に係るガイドラインとの関係性が全く分かりません。また,11ページの早急に対応すべきことの実態の把握,分析のところですけれども,これも内容的にはインスティテューショナル・リサーチ機能の充実を図ることと同じ方向性を持っている内容ですが,そういったことの言及もありません。
また,これは表現ぶりの話なので余り目くじら立てることではないのですが,3ページ目に,教員養成大学・学部は学問の場であると同時に,学校教育という実践に向けた職業教育の場であると書いてあるんですけれども,職業教育との対比としては,学問の場というよりも大学教育の場であるということだと思います。学術の中心として,広く知識を授けるとともに,深く専門の学芸を教授,研究することとの対比で職業教育があると考えますと,今の書きぶりでは教員養成の大学教育としての位置付けというのが非常に薄くなっていることが気になります。
3点目です。2点目とも関連するのですが,幾つかの提言の中には,何々すべきである,何々しなければならないということが,根拠があまり明確でないにも関わらず,書かれています。有識者会議として言うのであれば,どういう効果を見込んでこういうことを各大学に求めるのか,私にはちょっと理解できないところがあります。私の基本的なスタンスが,大学のことは大学がきちんと考えてやるべきだというところにあるからだとは思うのですが,非常にマイクロマネジメント的なことに入り込んでいってしまっていて,そのことをやった結果,教員養成機能の向上につながらなかった場合の責任は誰がとるんだろうというふうに思ってしまうところがありますので,一つ一つの内容を精査していく必要があると感じています。
【加治佐主査】 3番目のことについて,ちょっと申し上げますと,我々は教員養成大学・学部がこうあるべきだと,こう改革するんだという提言をするんです。これはあくまで提言なわけです。それに基づいた形で,各大学はそれぞれ努力していただくということになります。当然,その改革案とか,その改革案に基づいた具体的な計画とか,そういうのは必要に応じて文科省が承認するとか,同意するということはあると思うんです。だから,文科省が同意する云々と言ったときには,それは文科省も責任は負うと思います。だけど,基本的には,提言で出された方向性に即して,各大学が考え,努力すると,これは基本ですので,そこはもう基本的には各大学の責任であるということ,これは間違いないというふうに思います。高等教育機関ですし,大学は自ら経営していくのは,これは当然のことですので。
ただ,これまでこういうニュアンスのことは申し上げてきたと思うんですけれども,結局,時代の変化,環境の変化に合わせて,各国立教員養成の大学,学部が,それなりの対応がうまくできているということであれば,こういう言われ方はしないはずなんです。それがないということに,皆さん,ほとんど違和感がないようです。だから,結構,厳しめに言わざるを得ないということはあるわけです。大学が自らばんばんやってくれれば,何も言う必要はない。それができていないからということだと思います。私は自己反省を込めて言っているんですけれども。それでよろしいですか。
【渡邊委員】 ということであれば,書きぶりとして,一つ一つ見ていきますと,かなり強い言い方で,これをやらなきゃいけない,あるいは,手法を1つに限定しているというような部分がありますので,これは提案であるというようなこと,あるいは,目指すべき方向は1つでいいと思いますが,それにたどり着くために幾つかの方法がある,そのうちの1つの方法だというようなことが分かるような書きぶりにしていただくのが,受け止める側にとっても理解のしやすい方法ではないかと思います。
【加治佐主査】 じゃ,牧野さん。
【牧野委員】 今の議論の続きのような話ですが,この主なポイントのところ。今,主査からもお話があったように,提言であるとは思うんですけれども,しかし,提言をした内容を各大学がどう受け止め,それをどう改革したかというフィードバックがあって,それをどう評価して,また,それをどう戻していくかということが,私は必要だと思うんです。
大学の方でちゃんとやってくれて,それが実際に世間的に周知されて,よくやっているというふうになれば,それはもちろん,それでいいわけでありますけれども,実際のところは,そういったものが世間的に周知されるというのはなかなか難しいと思うんです。そこはやはりちゃんとフィードバックして,それを評価して,それで,よくやっているという話までを,きちんと世間的に周知していくということをしていかないと。今,主査が言ったような話は,結局,いつまでもくすぶる話になりかねないと。私は,そういう意味では,ちゃんとPDCAを回していくんですという話を,このポイントの中にきちんと入れていくべきじゃないかなと思います。
【加治佐主査】 それでは,時間もありますので,1の部分についてはいかがですか。ほかには。2の方には,できるだけ早く行きたいと思うんですが,じゃ,山崎先生。
【山崎委員】 よろしいでしょうか。ちょっと簡単に。4ページの(3)でございますが,先ほどから幾つか意見が出ておりますが,ここのところをもう少し広く捉えることはできないかという意見です。個別大学のカリキュラムとか教育のPDCAとか,これはもう非常に重要でございます。さらには,例えばこの教員就職率によって,国立大学,学部が社会的にいろいろ議論されるという現状もございますので,この教員養成機能というのを就職率だけで評価される現状がございます。
そういうマクロの観点から言いますと,それ以外の様々な多様な役割を十分に我々自身が把握しきれていないという現状もありますので,例えば研修とか,各地の教育行政が果たしている役割とか,私立大学では不十分であると思われる全教科の教員養成をやっているとか,様々なメリットがありますので,そういったものも含めて,教員養成大学,学部の全体的な役割を把握するという,そういうもっと大きなマクロの視点も加えて,この(3)のところを書いたらいいかとか。現状では,ちょっとほかのところに比べて手薄になっておりますので,マクロの観点を追加していただければというような意見でございます。
【加治佐主査】 すみません。(3)というのは,これは質の保証のところ。
【山崎委員】 はい,質の保証のところ。
【加治佐主査】 そのところに,今おっしゃったようなことを書くべきだということですか。
【山崎委員】 はい。そうです。
【加治佐主査】 ただ,一言申し上げると,おっしゃることはわからなくはないんですけれども,国立教員養成大学・学部は教員養成の目的大学なんです。目的学部なんです。国税が投入されている。どこまで就職率が上がれば目的を達成するか,判断することは難しいんですけれども,ただ,現状の数字が余りにも低いわけです。単純な就職率は臨採も含んで60%,卒業生から保育士,大学院進学者を除いても70%にいかないわけです。しかも教員採用数が増える中で上がらない。何度も言っていますけれども。
だから結局,そういう現実を絶対無視できない。目的大学ですから,就職するということが一番のベースになるわけです。それがあって,何%がいいのか分かりませんけれども,かなりの数字があって,その上で,大量に出しているんだけれども,出した教員の質が悪いとか,あるいは,それ以外は何もしていないんじゃないかと,研修に大学が貢献していないとか,そういう言われ方はまだ分かるんです。要するに,ベースになるエビデンスが就職率であると。
【山崎委員】 ええ,それはおっしゃるとおりなんですけれども,全体の外部環境の変化というのがありますので,これは国立だけじゃなくて,全てが下がっていくということもありますので,私が申し上げたいのは,それを否定するわけじゃございません。就職率以外にも,様々な教育活動の成果を図るものがたくさんありますので,ここに書いていますように,学術論文中心の評価であるとか,分かっているわけですけれども,ほかにももっと評価する際に取り上げるべき事項がないでしょうかということを申し上げている次第でございます。
【加治佐主査】 分かりました。それじゃ,検討させていただきます。それでは,よろしいですか。
【関根委員】 短時間で。松木副主査と渡邊委員が言われた,この全体の作りの問題で,課題から始まる課題解決ですけれども,いいところというのですか,残しておくべきよさというのですか,この辺を全体で出せるのであれば,出していただけたらありがたいなと思います。どうしても,課題を見ているだけだと,現場が元気が出ません。課題だけ解決しても,いいものが継承されない,なくなってしまうと,現実的には教育力が落ちてしまうので,そういった意味では,もしも書けるのであれば,こういうところが現状のよさですよということを書ける欄があったら,ありがたいなと思います。
【加治佐主査】 分かりました。それでは,8ページからの課題に対する対応策に参りたいと思います。それで,私,最初,それぞれ8つの両括弧の番号に分けて意見を伺っていくということを申し上げましたけれども,時間もありますし,また,相互に関連する可能性も高いということがあると思いますので,どこからでも結構ですので,御意見をお願いしたいと思います。じゃ,松田先生,それから伊藤先生,お願いします。
【松田委員】 分かりました。それでは,8ページからの課題に対する対応策に参りたいと思います。それで,私,最初,それぞれ8つの両括弧の番号に分けて意見を伺っていくということを申し上げましたけれども,もうちょっと時間もありますし,また,相互に関連する可能性も高いということがあると思いますので,どこからでも結構ですので,御意見をお願いしたいと思います。じゃ,松田先生,それから伊藤先生,お願いします。
【松田委員】 失礼いたします。気付いたところからというようなことで,まず,9ページの,先ほど来,議論になっています教員就職率の問題なんですけれども,PDCAサイクルを回すというような部分は全くそのとおりだと思いまして,そのためにも,正確な数字というものがやはり共有される必要があると思うんです。
この報告書のトーンとしては,各大学が努力しろという,非常にそういうトーンが強いんですが,実際に,国立出身者がどうなっているかというのは,教育委員会が数字としてお持ちだと思うんです。ビッグデータということが言われる時代にあって,教育委員会とこの面での連携ができていないから,数字がなかなか把握できていない。この部分を大学だけが努力して担うというのは,ちょっと厳しい面もあるんじゃないかと思います。そういう数字を教育委員会と連携して利用するためには,恐らくガイドラインのようなものが設定される必要があると思います。教育データというのは,そもそも基本的にデータとして取り上げるときにハードルを課せられる場合が多く,そのあたりの不整備というのが大きい気がするんです。
ですので,この9ページ以降の方策のところに,例えば教育委員会と教大協なり,文科省なんかも連携していただいて,教育データの利用に関するガイドラインの作成ということをうたった上で,そういう評価に関わる重要な成果・実績データを具体的にPDCAサイクルにつなげていくということが,何か書き込まれればいいんじゃないかなと思いました。
これは個人的感覚の話ですけれども,教員就職率の議論がよく出ますが,私は,実数が出れば,これは6割とか7割じゃなくて,もっとパーセントが上がるんじゃないかと思ったりしています。もっとも,あくまでも,これはただの予想です。
【加治佐主査】 実数で。
【松田委員】 実際に国立の教員養成大学出身者が教員になっている率ということで言うと,時間的なものも含んで,相当上がるんじゃないかと思ったりしています。もちろん根拠のある話ではないという部分はありますけれども,それをちょっと確認する必要というのがやっぱりあるんじゃないかと思えるということです。
続いて,同じ9ページの,これはちょっと部分的な話ですけれども,日本型教育の海外展開という,こういうテーマをちょっとここで書いてくださっています。そのときに,確かに先ほど来,社会のニーズを引き受けるということと,やっぱりさらに社会を前へ引っ張っていくという役割が国立大にはあって,この部分も大学改革から見れば重要な観点の1つだと思うんです。
ただ,ここの文章だと,途上国から引き受けて,日本型教育を普及するという,あくまでも発展途上型の議論になってしまっていて,例えば,現状,グローバル・シチズンシップというような,そういうOECDが進める先導的な動きなんかを見ても,むしろ,要するに,そのグローバルなレベルでの教育の先導性というものを構成していくために,日本型の教育を海外展開するということで,是非,ここには入れた方がいいんじゃないかと思いました。
次に,9ページを集中攻撃みたいな感じなんですけれども,2の早急に対応すべきということで,教員志望の高い学生の受け入れというものがあります。ここは非常にまた重要な論点だと思っているんですけれども,先週末,「夢ナビ」という外部進学説明会があって,高校生が4万人ほど来る場に本学もブースを出していたのですが,教員養成系の大学の説明を聞きにくる学生というのは,やっぱりその規模でも少ないというのが現実として引き受けて来たところです。
教員志望の高い学生を入試時に専攻して引き受けていくという,このことも非常に大事なことだとは思うんですが,むしろ,たとえそれほど志望が強くなくても,教員志望者となる可能性を持つ学生を受け入れていくというような,そういうような面も重要だと思っています。そういう意味では,ちょっとその書きぶりとして,何か選別をして,ピュアな志望者だけを抱えていくというニュアンスしかないようなところが気になるので,少し御検討いただけたらなと思いました。
最後に,先ほど来,やはりアカウンタビリティーのような問題が見え隠れするんですけれども,今回の有識者会議に向けられた,ある種,教員養成に対する不満とか課題というものは,確かに的を射た部分が多くて,改善していく必要があるところではあると思いますが,その説明すべき先はどこにあるかといったときに,何か教育関係者内にのみ向いている気がして仕方がなくて,例えば,一般の,広く国民が教員養成大学は必要がないというようなことを今,盛り上がって言っているのかというと,それはちょっと違うように思っています。だからといって,改善が必要じゃないなんていうのは全く思っていないんですけれども,ちょっと議論が上滑りしている面があると思えます。そういう面では,それは緩めた方がいいという意味ではなくて,少し視野を広げた上で,広く国民全体にメッセージを送るというスタンスで,しっかりと,本当に求められている改善というものに焦点をさらに絞り込むということが残りの期間でできればいいんじゃないかなとちょっと思ったという次第です。
【加治佐主査】 分かりました。それでは,あと,先ほど私は順番は言いませんでしたか。言っていないですか。
【松木副主査】 言っていないです。
【加治佐主査】 言っていない。それじゃ,改めて。ほとんど皆さん,手が挙がっていますね。それじゃ,こちらから機械的に行きますので,じゃ,伊藤さんから,挙がっている方ですね。お願いします。簡潔に,できればお願いします。
【伊藤委員】 失礼いたします。私は,12ページのところでございます。これまで,この会議の多くの場面で養成カリキュラムと学校現場で必要とされている資質,能力のギャップへの改善,このことの必要性ということが取り上げられてまいりました。その意味において,12ページの中ほど,研究者教員の現場経験です。これによって,教員養成分野の大学教員として資質,能力を向上させることができる仕組みを整備すること。このことが協議会の設置でありますとか,指標の設定でありますとか,大変重要であるというふうに思っております。
前もお話ししたことがありますけれども,学校の教員の業務というのは,学習指導はもとより,生徒指導でありますとか,学級経営,特別活動,道徳教育,特別支援教育,そのほか部活動や校務分掌,家庭や地域との連携など,多岐にわたる業務をほかの教員とチームとなって行いながら,日々,子供たちと関わり続けているわけでございます。
なぜ教員のコミュニケーション力が求められるのか,なぜチームとしての学校とか,地域との連携,協働が求められるのか,なぜ業務改善ということが言われているのかといったようなことも含めて,大学の先生方に現場を丸ごと見ていただく,現場経験をしていただくことで,より分かっていただける。そして,そのことによって,教員養成や現職教員の研修においても,大学の先生方から大きな御示唆をいただけるものと思っているわけです。
何よりも,学校現場を肌で感じていただくこと,これによって大学の授業そのものがより現場のニーズに対応したもの,現場に即したものになるのではないかというふうに期待をしております。
そして,1つほど,気付きとして申し上げるならば,今回のまとめ案には,大学,学部と教育委員会との連携でありますとか,学校現場との共同研究でありますとか,外に向けての連携,協働ということはかなり示されていると思います。しかし,例えば,先ほどもありましたが,教員同士の協働です。実務家教員と研究者教員との連携や協働といったことのようなもの。オムニバスになりがちな授業をどうチームとして作り上げていくのかといったようなことは,私自身,大学院の在学中に,このことについて,授業評価の中で,それに向けた改善が必要であるのではないかというようなことを書かせていただいた記憶がありますけれども,この大学の教員同士の協働,この点についての記述が余り出てこないというのが少し気になるところでございます。
是非,このことも含めた検討をお願いできたらというふうに思います。
【加治佐主査】 分かりました。大学教員の同僚性,協働性ですね。それでは,蛇穴委員,お願いします。
【蛇穴委員】 まずこの「まとめ案」のつくりをみますと,「1」の方で課題が述べられていて,「2」の方でその対応策をまとめているという,対応関係になっているかと思います。今日の資料では,その対応関係を見まして,こういう課題にこう対応するという整合性がありません。( )書きの番号をつけた項目はほぼ対応していますが,その中の小項目(【 】部分)が対応していません。その小項目の事項をもう少し大くくりにして,まとめることができれば,対応関係をつくりやすくなるのではないかと思います。
それと関連して,課題の対応策の中に,大学教員のことが(4)で書かれていますが,それに対応する項目が「1」の課題の中にはないといったこともありますので,その辺りの整合性をとっていただければ良いのではないかと思います。全体的な構成についてはそういうふうに思いました。
あとは,実際に直していただければありがたいなという細かい点をメモで持ってきているんですが,こちらは今,ここで説明した方が良いでしょうか。
【加治佐主査】 もし,差し支えなければ,後で細かいところは事務局の方におっしゃっていただけるとよろしいかなと思います。あるいは,重要なことであれば,今,ここでもよろしいかなと思います。
【蛇穴委員】 そうですか。そうであれば,他の先生方がどう思うか分からないというところもありますけれども,メモとして渡す方が早いと思いますので,そうしたいと思います。今回配られた資料では,多少,先週もらった事前資料と変更されているところもありましたので,その部分を確認しつつ,後日メモで出させていただきたいと思います。
【加治佐主査】 お願いします。それでは,関根委員,お願いします。
【関根委員】 先ほど申し上げたこととの関係で,13ページの1,2,3に出ているのですが,そこに4として,幼小中高特の教育の質を向上させるため,学校現場の課題を共同研究して解決することや,すぐれた指導法や教材などが流通するネットワークの拠点となる役割という形で付け加えていただけないかと思います。簡単に言うと,教員養成だけじゃなくて,学校現場の教育の質を上げることの,いろんな意味での拠点となっていただけることを教職大学院に求めたいなということがあります。
それから,もう一つ,同じようなことなのですが,14ページ,下の方から2つ目の地域への貢献というのがありますが,この中に,2つ目の丸で,教職大学院まで,下線部分が教育実践の研究の成果を分かりやすく応用可能な形に集約して発信するという,発信するだけになっているのです。ですから,この発信したり,学校現場の課題を共同で解決したりすることによりということで,単に一方通行で発信するのではなくて,一緒にやるということもここに書き込んでいただけないかなということです。
【加治佐主査】 松木委員。
【松木副主査】 主に2点です。
1点は,先ほど松田委員が言われたこととも関係してくるんですが,これは誰に向けて発信していく文書なのかということを考えたとき,当然,各大学ということでもありますが,今回の内容を見ますと,教育委員会にもやっぱり聞いていただかなければ話が進まないようにも思います。教育委員会との連携の中で解決しなきゃいけない問題が多々ありますので,教育委員会に届くような形にするにはどうしたらいいのかということを事務局の方で考えていただけるとありがたいなというふうに思います。
具体的には,先ほどデータの話,教員採用率の問題も,各都道府県の教育委員会が一番分かっていらっしゃるんじゃないかなというふうにも思いますし,もう一点,国立のよさとしては,例えば3年以内の離職する教員,都市部なんかは特にそうかもしれないんですが,その中で,比較的,安定しているのではないかというような気もしています。ですから,就職率だけじゃなくて,安定した教員を出しているということについても,分かるデータがあるといいと思っています。
2点目は,附属学校に絡んでです。附属学校が今後,定員の削減等に伴って縮小していかなきゃいけないということは,ある意味,事実として受け入れていかなきゃいけないところがあるかなと思いますが,それに対応して,その新しい課題を求めていることに対する条件整備の保証ということも,是非,国に求めていきたいと思います。
例えば幼稚園がだんだん定員割れを起こしてきているその背景に,勤め方が変わってきている。その勤め方が変わってきていることに対して,国立大学の附属なんかは,なかなか保証がされていない。認定こども園にはなれても補助金がないといったような問題だとか,あるいは放課後児童クラブの設置等も含めた,そういったことも公立学校と同じように認めていただけるようなことについても,附属学校が変わっていくためには必要な条件になってくるかなというような気がいたします。
以上です。
【加治佐主査】 分かりました。それでは,牧野委員,お願いします。
【牧野委員】 先ほどの松田委員の話と関連するんですけれども,大学に向かって,こういう提言をしていくということなんですが,そうした提言をしたときに,誰に理解をしてもらうかというお話だと思うんですけれども,これは,今,主査からお話があったような,各地域の教育委員会のみならず,本当に広く一般的に,こういったことで改革をしているんだということを知ってもらうことがすごく大事だと思うんです。それも,こういった形で改革しているのでこれは各大学において自己改革能力があるということをしっかりと示していくことが,その先の評価につながっていくと思うんです。
去年,一昨年,私,教職員の削減や定数化問題で,全国市長会の立場でずっと最前線でやってきて思うことは,先ほどお話があったように,どこから責められるかといったら,それはもう間違いなく財政当局なんです。そのときに,じゃ,誰が守ってくれるかという話なんです。例えば教育委員会が最前線に立って,体張って守るんだという話には実はなかなかならないんです,正直言って。そこはやはり各地域の皆さん方の理解の上に立って,地方3団体なりが,ちゃんとこれはこういうふうな形でやらなきゃだめなんだということを言っていけるかどうかだと思うんです。ちょっと泥臭い話に聞こえるかもしれないんですけれども,現実的にはそういうことが,もう過去,起きているわけですから。だからこそ,それをしっかりと踏まえて,そうした地域の皆さん方にもちゃんと御理解いただけるような,そういった改革の形にしていくんだということを前面に出していった方が,後のことを考えたらいいと私は思うんです。
【加治佐主査】 分かりました。では,水落委員,お願いします。
【水落委員】 お願いします。私は,17ページ。一番上の教職大学院の教員の評価のところです。2つ目の丸も1つ目の丸も,研究者教員と実務家教員の在り方を言っていますが,特に2つ目の丸で,教職大学院の全ての教員が研究と実務の両面を持つように,また,3行目では,ピアレビューの視点で評価をするシステムを構築すること。これがここに書かれているということは大変すばらしいなと思います。
そこで,私は,3つ目の丸として,その研究と実務の両面を持つ教員を,例えば実務研究者教員として評価するというようなことを設けたらどうかと思います。これから研究業績と実務業績のどちらもあるという人を増やしていくということが求められているわけですから,きちんと名前を付けるということが,その下にある修士課程の教科専門の教員にとって教職大学院への移行に向けた目標となるよう広く周知することにつながると考えるからです。したがって,しっかりと名前を付けて評価すること。そして,それが目標となるように周知していくということを3つ目の丸として書くべきと思っております。
もう一つは,その次の実務家教員の範囲のところですが,アンダーラインが引いてあるところの3行目です。実践力を持っていることが教育委員会等が作成する書類において確認できるというところ。ここをカットしてはどうかと思っています。というのは,今後,教職大学院と教育委員会の連携が深まっていくということは大変重要なことだと思うのですが,だとすれば,この教育委員会が作成する書類において確認できるということが,ともすると,これは言葉が適切かどうかはわかりませんが,お手盛りの認めになってしまう可能性があるんじゃないかと。先ほど言ったところで,ピアレビューの視点で評価するシステムを構築することが重要だと言っているわけですので,この部分をカットしてはどうかなと思っています。
もう一つ,その下の行で,10年以上20年以内の者も,この20年以内というところもカットしたらどうかなと思っています。10年以上であっても,きちんとピアレビューで評価できるものは評価されていいのではないかなと考えますので,20年以内は不要と考えるわけです。
【加治佐主査】 分かりました。新しく名前を付けるというのは,教職大学院制度は実務家教員と研究者教員と両方使われています。個々の大学でということですね。
【水落委員】 いいえ。個別ではなく,全国的に通用する名称をという意味で申し上げました。例えば,そういう人がどれだけいるのかということを調査するときに,本当はしっかりとした名前があった方がいいと思いますので,こういう名前を付けて調査していくと。そうすることで目標になり得るんじゃないかなと考えています。
【加治佐主査】 それでは,山崎委員,お願いします。
【山崎委員】 9ページの課題に対する対応策,上の方から教員就職率の引き上げという見出しが出ている箇所がございます。この教員就職率というのは,先ほども話題になりましたが,国立教員養成大学,学部の卒業者で教員に就職をした者の数を当てるのが就職率でございます。ところが,長期的には,この就職者数は減る,需要が減りますから,そういうことが見込まれるわけです。
この率を今から上げるというのは,そもそも日本国全体で無理な話なので,国立に限らず,これをここに掲示をするということはいかがかと。
【加治佐主査】 母数を減らせばいいんじゃないですか。
【山崎委員】 それは程度の問題です。後ろにグラフが出ていますけれども,過去を振り返ると,最低を記録した西暦2000年度における国の全体の公立学校の教員の採用者数が6,300人と出ています,現在は2万2,000ですから,割り算をすると三,四倍になります。最大値と最小値は大きく異なっており,市場の変動は極めて大きいです。採用数に合わせて比例配分的に入学定員を変化させるという形の教育計画が適切なのかどうかと私は思っています。
これだけじゃなくて,もっと複眼的に見る必要がある。例えば,戦後の高度成長期に,国の物差しとして使われておりましたけれども,全ての公立学校の教員の採用の中で,国立が何%供給するかというのがございました。当時は7対3というのが目安としてしばらく使われていた時代があったんです。今は,多分,3対7か4対6ぐらいになっていると思うんですけれども,そういうのも国としての大きな目安として重要な物差しであると思います。例えば,そういうものも1つの目安として,我々が関与していくというふうなことも十分考えられると思います。
少なくとも,この教員就職率だけで,しかも,これを引き上げるというふうに書かれると,これはなかなか非現実的で大変な問題になるんじゃないかと思っております。是非,ここをもう少し増やして,教員就職率以外のものを増やすという方向で,複眼的に物差しを採用していくというふうにやったらいかがでしょうか。
【加治佐主査】 よろしいですか。
【山崎委員】 はい。せっかくですから。各大学というふうに書いておりますけれども,こうなりますと,今から採用が増える大学は,そういう都道府県所在地という大学は大丈夫だけれども,早く減るというところとなると,非常に厳しいということになります。これを各大学に当てはめることも,やっぱり簡単にはすべきではないのではないかと,私は個人的にはそういうふうに思っています。各大学を評価する物差しとして,これを直に使うということは問題かな。国立大学全体としてどうかということを評価するときはいいかもしれませんけれども,そういう問題もあると思っております。
【加治佐主査】 先ほど一般地域の人々向けに発するんだとかということもありました。この数字というのは,はっきり言って効くわけです。だから,その数字を高めるとかといったようなことは,一番,目標としては分かりやすいわけです。それが変わらないとか,無理だとかいうのは,なかなか厳しいものかなと思います。
それと,もう一つは,開放制の原則は変わりませんので,その前提で考えたら,私学はたくさんありますので,むしろ状況は私学の方が厳しいのかもしれません。今はたくさん教員を出していますが。ただ,国立がそういう消極的な姿勢は出せないと思います。
それでは,渡邊委員,お願いします。
【渡邊委員】 先ほどとは別のことで,1つだけ申し上げたいと思います。
11ページの質の保証,評価についての2の早急に対応すべきことの実態の把握,分析のところです。牧野委員や松田委員がおっしゃったように,PDCAを回す,あるいはフィードバックをきちんとやっていくということにも関わってくることで,大事なことを書いていただいていると思います。
大学教育改革が進んでいく中で,総合大学は,全学組織として,大学教育センターとか高等教育研究センターなどを置き,自分たちの大学がどのように学生を教育しているのかというデータを蓄積してきています。一方,教員養成系大学は,そのようなことを行ってこなかったのではないかという認識を持っています。一部に,岡山大学のように,教師教育開発センターで全学の教員養成のデータを積み重ねて,それを学部にフィードバックし,教員養成の採用率を上げてこられているところもございます。
要すれば,インスティテューショナル・リサーチ機能を教員養成系大学がもっと強く持っていくべきではないかということと,それには条件整備ももちろん必要になってきますので,そこは応援していけるような形にしていきたいと考えます。
【加治佐主査】 分かりました。それでは,いかがですか。もうあと5分ほどは予定の時間からするとありますが,資料1の全体にわたってでも構わないんですが,いかがでしょうか。よろしいですか。それでは,資料2の方に行きまして,また後で振り返っていただいても構わないと思います。それでは,資料2の方です。
その前に,1つ,申し上げておきたいことがあります。この会議は,国立教員養成大学,学部が対象になっているわけです。附属学校は,今までも議論になりましたように,養成系だけではなくて,そうでない国立大学も持っているわけです。直接の対象とはしておりません。会議の名前からいって,そういうことであるんですけれども,基本的には,この附属学校について (7)です。18ページからの,中長期的な方針と早急に対応すべきことは,基本的には当てはまることだというふうに考えていただいて構わないと思います。
これら提言の実行状況を,養成系でない大学の附属学校について,どういうふうに,PDCAのお話もありましたけれども,フォローしていくのかということもありますけれども,基本的には,そんなに違和感はないのかなというふうには思っています。直接的に当てはまらないところもあるのかもしれません。そういう部分を除けば,当てはまると考えていいと思います。
それから,私の気付きで,教職大学院のところで,16ページになります。教職大学院での学びのインセンティブです。学部を卒業して,すぐに教職大学院に入る学生さんのためのインセンティブは書かれているんですが,現職教員へのインセンティブが,どういうわけか書かれていないんです。こちらはちょっと見逃しているといった面があると思います。これまででの提言でも,例えば一昨年12月の教員の資質向上の中教審答申等で書かれておりますので,そういうところを加えていただきたいなというふうに思います。ちょっとバランスを欠くのかなというところです。
それでは,2の方に参ります。資料2の方です。組織体制です。これについての御意見等をお願いしたいと思います。それでは,よろしいですか。北山先生,お願いします。
【北山委員】 お願いいたします。私,資料1につきましては,若干の書きぶりや文言については,皆さんから御意見があったようなことは同じように思いましたが,基本的に,まとめとしては正しい方向を向いているかなというふうに読ませていただきました。
しかし,これを公表されるときに,恐らく資料2に当たりますところの,この有識者会議が現状どのように認識しているかということが,やはりこれも公表されるわけです。どのような現状認識の下にこのような方向性が示されているかということが多くの教育関係者,あるいは国民にとって重要な興味のところかと思います。したがって,この資料2に書かれていることというのは,かなり慎重に精査すべきじゃないかなというふうに思っているところです。ということで,2点ほど申し上げます。
まず1点は,定員削減についてですけれども,この定員削減については,この資料に書いていただいておりますように,業務全般の見直しですとかミッションの再定義とか,そういうことを経まして,各大学では,もうかなり全学改組の中で削減していっているところがあります。ただ,今,大学を出ている学生の数は,まだ減っていません。なぜならば,入学定員が減って,卒業をする学生が減るまでには4年かかるわけですので,そういう現状の認識がどこまで進むかということもありますので,できましたら,教員需要のグラフと同じように,今後の入学定員が削減された後の見通しというようなものも添えていただけるといいのではないかなというのがまず1点です。
2点目は2ページ目になりますが,維持向上方策についての本有識者会議のドットの最初の2点が若干,私,気になりましたので,意見を申し上げたいと思っております。
1つは,「全教科フル装備」ということについての考え方ですけれども,「やめる手もある」というか,「フル装備」について考える必要はあると思うのですが,この「フル装備」というものの考え方について,「全教科フル装備」と言うと,ちょっと意味が分からなくなるんです。これは免許校種,つまり小学校,中学校,高等学校とかいう校種のフル装備のことを直接に示しているのか,あるいは,小学校教員を養成する上での小学校の教科科目のことを示しているのかということが明確ではありません。
ですので,私の立場としては,この資料3にも出ていますけれども,免許校種のことは若干,考え直す必要があるかと思います。特に,教育学部でなくても開放制に基づいて免許を出せるところはたくさんありますので,そういうところも利用するということはあってもいいかもしれません。しかし,小学校におきましては,やはり1つは全教科担当が原則であるということと,それともう一つは,養成の段階では教科横断的な見方を持った教員の養成というのは必要不可欠だと思いますので,教科のフル装備といいますか,教員養成の課程の中に全教科を含むことは重要だと思っています。
それと,2つ目には,2行目のドットなんですけれども,「教員スタッフを集めにくい」ということは,何の,どういう根拠を基に言われているのか,ちょっと分からないです。それと,論点が違うんじゃないかなというふうにも思います。
それと,その次にありますところの「芸能技能関係」という文言も,ちょっとこれは聞きなれない言葉で,「芸能科」という教科は国民学校時代の教科目でありましたけれども,現在はこういう言葉は使いませんので,別の文言にされた方がいいと思います。
それで,例えば,恐らく,ここでも以前に話題になったかと思うんですが,採用に当たりましても,なかなか採用の難しい教科があるわけです。例えば中学校技術科ですとか。中学校技術科の教員免許を出せる大学は非常に少なくて,教員養成大学に限られるわけです。ですので,そういうところが大事にされないと困るわけで,しかも,技術科あるいは美術,家庭,音楽なんかもそうでしょうけれども,中学校においては,持ち時間数が割と少なくなっておりますので,教員免許も小学校と兼ねなければいけないという場合も生じてくると思うんです。
さらに,小学校の免許と中学校のこれらの免許を同時に持つということは,これから重要になってくると思いますので,そういう意味で,先ほど申し上げました「全教科フル装備」という中で慎重に考えて,統合ですとか分担ですとかということではなくて,小規模であっても小学校教員養成課程は全教科を横断できるような教育ができるような組織を持ちたいというふうに思っているところです。
資料3にもありますけれども,これは,2ページのような書き方で公表されますと,現状認識についての疑義を持たれると思いますので,この辺の書き方は慎重にした方がよろしいんじゃないかなと思いました。
【加治佐主査】 分かりました。あといかがでしょうか。それじゃ,渡邊さん,山崎さん,それから松田さんですね。それから牧野さん。この順番でお願いします。それで松木さん。
【渡邊委員】 私自身は,先ほど事務局の口頭での御説明の中にありました,国立大学の改革全体の流れとの関係が分からないと,この資料をどう受け止めていいのかも分からないのではないかと困惑しています。事務局から,国立大学の改革全体の議論がどのように進んでいるかについて丁寧に御説明をお聞きした上で議論をした方が良いのではないかと思うのですが,それが適切かどうかは主査の御判断に従いたいと思います。
【加治佐主査】 この資料に,非常に簡潔なものでありますけれども,これまでの提言とか方針とか,そういうものが,政府から出されたもの等々が全部書かれていると思うんです。今,中教審で全体の大学改革の議論が始まっているわけです。そういうことを踏まえるということは,あるいは,それにつなげるといったようなことは,これまでも出ていると思うんです。だから,それは当たらないと思うんです。じゃ,山崎さん。
【山崎委員】 資料2の1ページでございます。考えられる方向性というところで,先ほど申し上げたところと関係するんですけれども,教員需要の減少率に見合う入学定員の削減を検討すべきことを示すか。また,時期や期限を示すかということでございます。本日の資料に,教員就職者数の棒グラフ,折れ線グラフがございます。それを見ますと,西暦2000年,平成12年に最低の数字6,356人を記録しました。それから,平成28年には2万2,900人になりました。割り算をするとざっと3.5倍ぐらいになります。全国ベースでも需要の変動は非常に大きいんです。これに合わせて,各大学とか全体の入学定員を比例的に変えていくということは,これは難しいと思います。ですから,過去,様々なバッファ,新課程を設けるなど,いろいろな措置を段階的にやったことがあります。
今回,教員就職率を85パーセントと高めの値に設定し,需要に比例して入学定員を増減するというふうな形で,強く書くということになりますと,将来に禍根を残すことにならないかと私はおそれております。教員需要の周期は非常に長く,2030年とか2040年とか,どの時点までを目安にして計画するのかという問題があります。もちろん,地域ブロック単位で変動を見るなどの考慮をしないといけないというのは当然なんですけれども,大学の組織には市場の変化ほどの柔軟性はありません。このあたりの書き方も少し慎重に書かれてはいかがかなと思います。
以上です。
【加治佐主査】 先生,ちょっとお伺いします。これから定年退職者のことは別にして,少子化が進んでいきます。増えることはあるんですか。
【山崎委員】 教員需要がですか。
【加治佐主査】 そうです。
【山崎委員】 それは地域によって異なります。日本国全体では現在が需要のピークです。今後,増加が見込まれるのは,地方遠隔地です。今まで需要低迷していた地域が増えます。しかし,大都市地域は近い将来減っていくという趨勢にあると見ております。
【加治佐主査】 だから,多分,定員削減といったときには,そういうことも踏まえた形での検討になるだろうと。これは当然だと思います。
【山崎委員】 ええ。一般論はそうなんですけれども,そのときの,例えばここの言葉に,減少率に見合うというふうな表現になっていますね。
【加治佐主査】 各地域のとはあります。
【山崎委員】 だから,この書き方が,慎重に書かれたかなという,そういう意見でございます。
【加治佐主査】 だから,私も非常に悔しい思いをしているわけですけれども,つまり,この間,ぐっと増えたわけです。在り方懇以降,教員需要は増えたわけです。ところが,それを誰が賄ったかというと,国立ではないわけです。それがあるんです。国立は定員が抑制されたということはありますけれども,先ほど言った就職率は上がっていないので,だから,それも言い訳にできないということがあって,今後を見通したときに,国立は今後,全部,担えるんだと言いたいんです。90%ぐらい就職率があれば,国立は大きな価値を占めますので,そう言って通用すると思うんだけれども,今の数字で,国立の将来の定員を,これからの教員需要で判断していくというのはちょっと難しいです。
つまり,開放制で,私学がたくさん,特に小学校教員を養成していますので,だから,難しいんです。だから,国立として就職率を上げて,あるいは,おっしゃるようなほかの存在価値も上げて,大きな役割を果たすという提言が必要なんだろうなと思います。
【山崎委員】 頑張らないといけないことは当然でございますけれども,教員就職率を上げるというふうな形で目標を設定しても,実際には上がらないと思うんです。日本国の大学全体で教員就職率が低下し始めるという趨勢の中で,就職率を上げるという設定は厳し過ぎるんじゃないかと思います。
【加治佐主査】 多分,教員需要が減るから教員就職率を上げるという目標は設定できないという理屈は,国立教員養成大学・学部の内部にいる人には通じるかもしれませんが,一般的には通用しないです。分かりました。あとは,こちらから順番に行きます。松田先生,それから牧野さん,松木さん,それから田中さん,あと蛇穴さん。じゃ,そういう順番でお願いします。
【松田委員】 資料2については,まず,1番が定員削減で2番が養成機能の維持向上になっているんですけれども,逆の方がいいんじゃないかと思います。
定員削減の必要性というのは,今,加治佐先生からも御説明がありましたけれども,既に見直しと通知があって,これは重要なことなんですけれども,一方で,有識者会議の一番の目的は,養成機能を高めていくためにはということでありますので,全体的に体制を考えるといったときには,教員養成の在り方,特に全国,日本という全体の枠組みの中で,今後の学校や,それを支える教員養成の在り方ということが問題となると思いますので,そのような順序性をと思います。
次に,その観点から考えるときに,国立の定員を削減していくということは,社会状況の変化から必要なことだと思うんですけれども,一方で,今の議論もそうなんですが,確かに国立の就職率が上がらなくて,私学がそれを支えているから削減しても大丈夫というような話になってしまっていて,そういう国立,私立という区別によらない問題を見過ごしがちになることを危惧しています。学校現場から言いますと,子どもの先生が国立出身か私学出身か,保護者からは余り関心がなくて,むしろ,いい先生なのかどうなのかということしかないのではないかというように考えます。
そうだとすると,国立という,税金を投入して行っている高等教育機関だからこそできること,そのような高等教育機関でないとできないことの一つとして,むしろ私学の教員養成に対して,ネットワークを組んで協働したり支えたりするというような,そういう課題も重要じゃないかと思えるんです。
そのことを考えると,余りにも,私立の教員養成との関係づくり,ネットワーク的観点が,ここまでの議論や,この資料にはちょっとなくて,そのあたりは少し方針を示した上で考えていく必要があるんじゃないかと思います。
今のことと併せて言いますと,国立,私立のシェアという問題以上に,明確に起こっていると思われることは,それだけが教員の資質ではないというのは強く思うんですけれども,教師の学力階層の変化,いわゆる受験学力の階層が下がった人が教員に採用されているという現状というのは広がっているんじゃないかと思います。
東京都も,学力を重視する形で,採用試験を今年度からちょっと検討し出していると。そういうことが引き起こっている現状というものも,やはりこの議論を考える上で,あるいは,私学と国立の連携でもって,教員養成の全体ということの質を考える上では,ちょっと必要な観点になるんじゃないかなと思います。
【加治佐主査】 分かりました。それでは,牧野委員,お願いします。
【牧野委員】 今の1番,2番どっちをという松田委員のお話,確かに定員削減の話をどうするかという議論はおっしゃるとおりだと思うんですけれども,主査もおっしゃったように,本来であれば,就職率が上がっていけば,それはそれだけの需要があると。つまり,各地域の教育委員会が先生の採用をされている中で,今お話があったように,私学と国立と比べて,国立の方が採用が多くなっていくという状況があるんであれば,それは就職率が上がるので,就職率が上がれば,それだけの定員定数を維持したっていいじゃないかということになるわけです。
主査からも,それから山崎委員からもお話があるように,そこはとても難しいだろうという前提に立つとすると,じゃ,どうするのという話になっていくと思うんです。ここは,ほかの話をという前に,就職率を上げるための努力をどれだけできるかということがあって,それをしても,なおかつ,やっぱりこれだけの,需要にどうしても満たないところはあるとすれば,そこは母数を考えざるを得ないんじゃないかという,そういう組み立てになるんじゃないかなと思うんです。これは,もうまさに現場の皆さん方の話だと思うので,そういうことができないのかどうかという話だと思うんですけれども。できなければ,もう定数削減の話はやむを得ずだと私は思うんですけれども。
【加治佐主査】 じゃ,松木先生,お願いします。
【松木副主査】 2点,1番目の定員削減のことと2番目のことに関してです。
最初に,定員削減のことについてなんですが,この定員削減の定員が入学定員を指しているかなというふうに思いますが,教員養成の場でいくと,入学定員と教員の定員の削減ということが,ある意味,セットになっているような気もいたします。そう思ったときに,新課程は入学定員に入っていないのか,いるのか。つまり,新課程が入っていないんだったら,ほかの多くの,大手の大学以外は,新課程はみんな,潰してきているんです。ここの定員のところに関して,入学定員と教員の定員との関係を考えますと,新課程をこの中でどう扱っているのかということは,はっきりさせていただいた方がいいんじゃないかなというような気がいたします。
2点目なんですが,私学での教員養成がだんだん増えて,それはある意味,規制緩和をしていくということが前提にあるかなというふうに思います。それでも,国立大学を縮小しながらも残していくということについては一致しているんじゃないかなと思うんです。ということは,国立大学の使命が,私学とは違う使命があるんだということを自覚していることになるかなと思います。
そう考えたときに,希少価値のあるような,先ほどは技術の免許なんかが出ておりましたが,こういった免許については,なかなか経営を考えると,私学では取り上げていかないものかなというような気がします。ですが,免許としては必要。そういった非常に少ないもの,免許なんかを出すにはどうしたらいいのか。特に必要な教員等が出てきますので,国立大学では厳しいところがありますが,国立大学の使命として考えていかなければならないかなと思います。
あるいは,研修のような分野,あるいは,今後必要になってくることを考えると,小中の免許,先ほどもこれも挙がっていましたが,両方に対応できる義務教育学校の教員。こういった,ある意味,私学ではなかなかしにくい部分について,国立大学を残していく上でのミッションとして求めていく。その中で,どう削減していくかという工夫をしていくようなことが必要になるかなと思います。
その場合に,幾つかの削減の方法があるかなと思いますが,改めて教員養成を学部段階でやっていくということと,教職大学院段階でやるということ,つまり,この2つを別々にやっていくことの無理があるように思います。そこをむしろ一貫していくということの中で考えていく方策をとることで,小中等で必要な免許も出しながら,かつ高度な専門職養成をしていくという仕組みが可能になってくるんじゃないかなというような気がいたしております。
以上です。
【加治佐主査】 分かりました。じゃ,田中先生,お願いします。
【田中委員】 失礼します。附属学校の立場から発言させていただきます。今の議論とかみ合わないところがあるかもしれませんが。
今現在,附属学校は全国に259校園,これは非教員養成系大学を含めて存在しています。もちろん全ての学校園が未来永劫にわたって残り,発展し続けていくことは望ましいわけですが,個人的には,具体的に努力する学校は残り,そうでない学校,有効活用が望めない附属学校については消えていくという運命をたどってもやむを得ないかなというふうに思っています。
これを前提としまして,組織,体制について,大学と国に対してお願いしたいことがあります。既に指摘されていることですが,改めて附属学校を持つ大学は,附属学校が大学にとって有効に活用できる存在になるように,ガバナンス体制強化の一環として,大学主導で附属学校の今後の在り方を検討して,附属学校がそのプランを基に教育研究を推進していけるよう,責任を持って指導していただきたいと思います。
そして,有効活用を期待して,附属学校を持つ以上は,そこに必要な高い資質,能力を有した人財,経費の確保,このあたりは大学の責任によってかなうべきであり,運営面でのさらなる工夫と努力を期待したいと思っています。
国に対しては,様々な取組を始めているというお話はさせていただいたところですが,今後も新たなニーズに対応して,国や地域に貢献しようと努力する附属学校を是非応援していただきたい。財源が厳しいことは十分に理解していますけれども,この国の未来のために,全国の学校をリードする立場にある附属学校に,是非,必要な支援,措置等を願うばかりであります。
失礼しました。以上です。
【加治佐主査】 分かりました。それでは,関根委員,お願いします。
【関根委員】 教員養成の中で,採用する側の立場から言うと,埼玉大学からなかなか合格してくれません。正直言うと,国立大学の学生さんたちは是非採りたいのです。合格率が低いというのが,教育委員会としてはつらかったです。採用してからはいいのですから,是非,合格率を高めてほしいと思います。
教育長のときに埼玉大学の教育学部の有識者会議みたいなものの委員だったのですが,当初,国立大学は余り受験対策をしていないのではないかと思っていました。私立大学が非常に高いので。そう思っていたら,そうではないのです。よくやっているのです。非常によくやっています。埼玉大学も,私がびっくりするほどよくやっています。
ただ,この教員養成で考えてほしいなと思ったのは,養成し過ぎです。やり過ぎて嫌になってしまうのです。より優秀な人たちに,より負荷をかけているので,教員になるまでに,教員を諦めてしまうのです。もう少し,教員は楽しいよということを伝えていただいて,なってからでも養成できますので,余り完全を目指さないでもいいんじゃないかと思います。その辺のゆとりも含めて考えていただけたらと思います。
つまり,ここまでやらなくちゃいけないのかというぐらいたくさんのことを初年次からやっていらっしゃる。それが希望者を減らしている原因の一番だと私は思っていました。
それから,需要の関係で言うと,私,今,私立大学に在職していますが, 10年後を見据えていれば,児童教育から撤退したらどうですかと言っています。採用試験に合格しなくなります。私は超氷河期のときに担当をやっていましたので,採用がほとんどできませんでした。ですから,私立大学としては,恐らく維持は無理ですから,早めに撤退を考えた方がいいということを言っています。多分,私立大学は,そういうことを考えながらやっていくと思います。とにかく全く需要がなくなっていきます。
ただ,その後,40年後ぐらいにまた増えるのです。子供たちは減りますけれども,それ以上に退職する教員の数が増える時代がまた来ますので,また増えます。ですから,国立大学には,是非,ずっと耐えていただいて,またその採用が増えた時期に,どうしても国立大学には残っていただかないと現場は困ります。そういった意味では,何らかの形で工夫して,教育学部の定員,ゼロ免課程がだめなのかもしれませんけれども,そういうことも工夫してやっていくことが必要だと思います。そんな工夫も是非,ここで提言できるかどうかは厳しいのですが,工夫していただけたらと思います。国立大学の存在意味というのは非常に大きいと私は思っております。
【蛇穴委員】 教員養成をやっている側の立場から,この資料2に関する問題について申し上げるのは,言い訳がましくなって,少し気後れしてしまいますが,基本的に,資料の2は,1ページ,2ページ,4ページ目の囲みの部分に対して,有識者会議としてどうするかということの議論なのではないかと思います。それで,その囲みの下に書いてあることにつきましては,恐らく,これまで,この会議の中でも,こういうような意見もあったという程度でまとめていただいているんだと思います。
さらに言えば,この資料2の議論を踏まえて,資料1の「規模・体制」のところに書き込んでいくというのが最終的な姿になるわけでして,そのときにどうするかということが問われているんだろうと思っています。
それで,この1ページ目,2ページ目,4ページ目の書きぶりをそれぞれ比較してみますと,例えば4ページ目の附属学校のところが,一番,わかりやすいと思いますが,3行目に「検証した上で,必要に応じて新たに」という書き方がされています。このような書き方であれば,少し,各地域ごと,あるいは,各大学ごとの検証ということが可能になるだろうという気がしておりました。
一方で,1ページ目(定員削減)と2ページ目(少子化の中での教員養成機能の維持向上方策)について言えば,この有識者会議で,厳密な意味で提言できるほどそれぞれのデータを詳しく分析したかと言われると,私自身の中ではそれも不十分な点があるのではないかという気も多少しています。もちろん,山崎先生からも色々なデータが出されて,それぞれの地域ごとのものも検討しましたけれども,各教科ごとに今後の見通しがどうなるかといったような細部まで踏み込んでいくと,多少,有識者会議全体として,そのことについて何らかの明確な方向性を提言することは厳しいという気もしています。
定員のことで補足しますと,大学関係者はよく御存じだと思いますけれども,大学院の定員の未充足という問題がありまして,本学もそうなんですが,大学院の定員の未充足が続きますと,法人評価等で指摘されて,これはもう確実に対応せざるを得なくなります。それに比較しますと,学部で定員未充足ということは,国立では今のところほとんどないと思います。つまり,学部の場合「第3期中に」というぐらいの検討の余地があると思います。
そうしますと,先ほど委員からの意見にもありましたが,この議論のまとめでは,最初に私も言いましたように,教員養成機能を最大限に高めるということによって,国民の期待に応えていくんだという提言になるとすれば,機能強化の取組がまず先にあって,それでもやはり教員需要という観点や,様々な要因を考えたときに,入学定員の減ということを考えていかなければいけないということになるのではないかと思います。それを10年も先にやれという意味ではなくて,せめて「第3期中に」ということになるのだろうと思います。そういうような状況だと思いますので,ここのところは非常に神経を使って書かなければいけないんだろうと思います。きょうのこの資料で言えば,「検証と必要に応じて」という条件の中で大学自身の分析,検証ということに任せる部分もあっていいのではないかか気がしています。
【加治佐主査】 じゃ,水落先生,どうぞ。
【水落委員】 この資料2の内容になると,やはりこの会議でもトーンが落ちるというか,発言しにくい部分になるんだなというのを感じつつ,だからといって,私が何か思い切ったことを言えるのかとか,言って帰る場所があるのかとか,そういうことも感じながらも,やはり申し上げない訳にもいきません。例えば附属学校のことで,田中委員が今日,先ほど来,発言されていること。これまでの議論を踏まえて,しっかりと踏み込んで発言されていることを踏まえると,この国立大学も,例えば,この3ページのところに書いてある再編や統合のことについても,しっかりと書いていくということがこの会議の意義として重要になってくるのではないかなと思います。
中でも私が一番注目したいと思うのは,このドットの3つ目です。教員養成学部の地域的な連合というところがありますが,ここは学部だけじゃなくて,教職大学院も今後,地域的な連合や統廃合というものを視野に入れていく必要があるのではないかなと考えます。これはこの会議でも議論になりましたEd.D.の話,これは時間が掛かる,もうちょっと情報をしっかりと精査,検討する必要があるということでございましたが,そういったものも視野に入れたときに,学部だけじゃなく,教職大学院,またその上のEd.D.を視野に入れつつ,地域的な連合ということをやって,視野に入れていく必要があるのではないかと,これをしっかりと盛り込んでおく必要が,この会議としてはあるのではないかなと考えています。
また,先ほど申し上げた学術研究と教育実践の両面の業績を持つ教員のことですが,そういった教員が必要だということは,もうずっと以前から言われてきたことです。今回もまたそれで同じ内容の記述程度だということであれば,せめて,こういう再編,統合の中に,そういった両面の業績を持つ教員を複数の大学でシェアしていくとか,そういったことも入れてみるのもどうかと考えます。
以上です。
【加治佐主査】 じゃ,簡潔にお願いします。
【松木副主査】 定員削減のことなんですが,なかなか難しいところがあるかなと思うんですが,このまま放っておけば,もっと厳しい状況になるし,財務省からの話もより大きくなってくるかなと思うんです。ですから,やはり自らが何らかの方向性を出していくという必要性があって,それは,ある程度,期限がちゃんとあった方がいい話じゃないかなと思います。もちろん検証しなきゃいけない点もたくさんあるかなというふうに思いますが,少なくとも,第3期中には,各大学は何らかの形で方針を示してくるといったようなことについては,合意できる話ではないのかなというような気がいたしますが,いかがでしょうか。
【加治佐主査】 簡潔に。
【関根委員】 教員養成の機能の維持向上方策ということなので,ここで言っていいかどうか分からなかったんですけれども,教員養成の中での,持っている財産というんですか,つまり,教員を単に養成するだけじゃなくて,人材を育成していくという面での,教員養成学部,それから大学院も含めた,持っている財産というのをもう少し広く使えないのかと思います。つまり,教員養成オンリーで考えていったらば,これはもう縮減せざるを得ないのですが,ほかの分野に打って出るというぐらいのことができないのかと思っています。
教育産業が,これからは大きくなっていく可能性がありますので,そことの関わりの中で,教員養成の学部が,ほかで活躍できる部分も模索していかないと,教員養成オンリーでいったらば,これは縮小するに決まっています。ですから,その辺のところは考えていく必要があるのではないかと思います。
【加治佐主査】 特色化の1つですね。それでは,予定の時間がもう近付いておるんですが,この資料の2の組織・体制のところですけれども,私,少し,これまで述べてきたことも含めて,考えを述べさせていただきたいと思います。
確認すべきは,国立大学は残るということです。国立大学の教員養成・研修機能,これは絶対残るわけです。それどころか,国立はこれまで以上に大きな役割を果たさなければいけない。学校教育の改善に。そのための教員の資質,能力の向上に大きな役割を果たさなければいけない。
そのためには,国立が今までの実績を生かすと同時に,恵まれた資源を最大限に有効活用すると。そういう方法を考えなきゃいけないと思うんです。私,これまで何度も述べてきたように,今の体制は,あえて言うと,非効率です。はっきり言って。牧野さんも言われるように,国民の納得を得られるような数字や業績は出ていないと思うんです。
機能強化のために,あるいは国立大学としてのさらなる存在意義を高めるために,新しい形を打ち出さなければいけない。期限付きで。それをしないと,とりわけ国民に対するアピールはほとんどないと思います。また,現実に改革に向かう動きは起こらないと思うんです。
ただ,確かに,ああせい,こうせいと言うわけにはいきませんので,それは地域事情もありますし,大学の事情もありますので,そこは当然,考慮されなければいけない。これは当然のことです。これまでの改革も,大学の場合はそうであったと思うんですけれども。資料1にちゃんと目的が書いてありますように,教員養成の高度化,教職大学院に重点化するということが基本方向です。そのためにどうしていくかということを組織・形態として具体的に,せめて例示はすべきだというふうに思います。
1つは,きょうは私立大学のことも出てきましたけれども,地域によって様々な教員需要とか,教員の今後の採用動向とか,そういうことがありますので,教育委員会の考え方もあるでしょう。そういうことを含めた形で,公立,私立も含んだような地域連合です。それは特定教科について,芸術系教科等が出ましたけれども,そういうものについて役割分担するとか,あるいは国公私立の間で共同で運営するとか,そういったようなこととか,それを地域ごとに,できれば国立が中心になって話し合って,出していくとかということが必要だと思います。
さらには,地域によっては,かなり教員養成のニーズが少なくなってきます。そうすると,そこは何らかの効率化のための,あるいは,その貢献度を高めるための1つの組織的なまとまりというのは必要だと思います。だから,あえて言いますけれども,国立大学同士の統合とか,そういうのも必要だと思います。
そうしないと,特に,私は何度も申し上げてきたんですけれども,単科大学は給料を払えなくなります。もし,今のままでいくと。本当に。そうなんです。そういう状況なんです。ここには,余りそういうことを言うなと言われて,書いていないんですけれども,本当にそうなんです。切実な問題があるんです。特に附属は,出ましたけれども,教職員数は減らせませんので。
そうなったら教職員の意欲も落ちるわけです。その前に,前向きな対応というのをやらなきゃいけない。そのためには,統合も視野に入れた方がいいと思います。生首切られるわけじゃないんですから。誰も。むしろ中堅若手や,やる気のある教職員にとっては,新しい活躍の場が与えられますので,そういう前向きな方向を是非持っていただきたいと思うんです。そのための統合も含めたものをやったらいいと思います。
これも昔は検討されたんですけれども,15年ぐらい前ですか,地域にはたくさんの学部を持った総合大学がありますので,そことの統合ということも1つの視野に入れていいんだと思うんです。地域事情によってはです。受け入れる側がどう言うか,わかりませんけれども,それはそれとして,そういう選択肢もある。
これも私,前回に述べましたけれども,11教育大学は教員養成の高度化を先頭になって担わなきゃいけないとなると,その力を結集して,より国立としての貢献度を高めるような統合の在り方とか,そういったようなことも,是非,検討すべきだと思います。統合・再編の例示として出すべきだと思います。
幾つか例を出して,それぞれの検討は当然ながら大学にやっていただきます。松木先生が言われるように,私も第3期中でないと,もう間に合わないと思います。牧野委員がこれまで言われた,外圧が来て,第3期中に,できればすぐの方がいいんですけれども,出さないと,危ないのかなという気がします。
だから,そこは,国立大学が中心になって,教員養成大学が中心になって,公立私学を巻き込む,あるいはほかの国立大学を巻き込んで,何らかの形を作っていただきたい。そのための例示をすべきだというふうに思います。
それを文科省の方で,是非,調整するような形でまとめていっていただきたいと思います。各大学から,それぞれの事情,地域の事情,あるいはほかの公私立大学の事情を踏まえたようなものをちゃんと出していただいて,その上で計画を立てて,その場合には,文科省からさらなる機能強化のための支援も当然いただかなければいけない。はっきり言いますけれども,統合するんだったら,運営費交付金を増やしてもらわないといけないということになると思います。
そういうことまで含めてやって,第4期,平成34年度からですから,その中期目標・計画には新しいものが何らかの形で書き込めるというか,そういう形にしないと,よろしくないというか,非常に不安を覚えるというところです。
だから,是非,何度も述べてきましたけれども,前向きなものとして,この資料2の最後のところはまとめるべきだろうというふうに思います。
それから,附属も,田中先生が言われたように,存在意義を発揮しているものもいくつかありますので,各大学でよく附属のことも考えていただくということが中心になると思います。たくさん附属を持っているところもありますので,附属全体として,そのミッションを明確にする。今,それを明確にして,いろいろ貢献度を上げるための活動をしてもらっているわけですけれども,さらに,それに加えて,複数学校種や同一校種を複数を持っているところは,それぞれの学校の役割にまで踏み込んで,地域ニーズを踏まえた必要性とか存在意義とか,そういうことを明確して,これもまた文科省とよく話し合って,新しい方向を出していくべきだろうというふうに思っております。
はっきりしないような議論をして,はっきりしないようなことを書くと,結局は国立教員養成大学・学部にはね返ってくるような気がしてならないんです。明確な姿勢を示さないと。具体的にはどうなるかまだ分かりませんから,どういう形の統合をするとか,どういう形の再編ができるとか,それは分かりませんので,それはまだこれからの検討になりますけれども,ここでは,せめて再編・統合の例示ぐらいはしておかないと,また時期を示すとかといったようなことをしておかないと,後々,困ることが出てくるんじゃないかなというふうに思っているというところです。
国立大学の関係者はなかなかこういうことをはっきり言えませんので,私も以前は関係者でしたけれども,今は,非常に我が母校に対して思いは強いんですけれども,母校を発展させるためには,こういう方向のことを言わざるを得ないと思っているというところです。
それでは,議論はここまでにしたいというふうに思います。それでは,今後のスケジュールを事務局の方から説明していただきたいというふうに思います。
【柳澤教員養成企画室長】 本日はどうもありがとうございました。資料4にありますように,今後のスケジュールですが,次回は7月12日水曜日の15時からを予定しております。日程及び内容の御連絡は,追ってお送りいたします。
なお,本日,いろいろ御意見いただきました。本日,この会議でお配りしました資料1,2は,これまでの委員の先生方の御議論を踏まえて,事務局の方でまとめたものということで,あくまで議論のたたき台としてお示しをいたしました。本日,大きな方向性も含めまして,様々な御意見がありましたので,それらを反映して,今後,文案を作り直していきたいと考えております。
また,本日,限られた時間での御議論でしたので,本日,言い切れなかった点につきましては,後ほどメール等でお送りいただけましたら,主査と御相談をして,なるべく反映をしていきたいと思っております。
どうもありがとうございました。
【加治佐主査】 少し時間が延びましたが,これで終わりたいと思います。本日はどうも御苦労さまでした。ありがとうございました。
―― 了 ――
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