国立教員養成大学・学部、大学院、附属学校の改革に関する有識者会議(第7回) 議事録

1.日時

平成29年4月24日(月曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省3階 3F2特別会議室

3.議題

  1. 課題を踏まえた対応策の検討
  2. その他

4.出席者

委員

(主査)加治佐 哲也 委員
(副主査)松木 健一  委員
(委員) 北山 敦康、蛇穴 治夫、関根 郁夫、田中 一晃、古沢 由紀子、牧野 光朗、松田 恵示、水落 芳明、山崎 博敏、渡邊 恵子の各委員

文部科学省

小松 文部科学審議官、浅田 高等教育局審議官、角田 高等教育局大学振興課長、長谷 初等中等教育局教職員課教員免許企画室長、柳澤 高等教育局大学振興課教員養成企画室長

5.議事録


【加治佐主査】  どうも,皆さん,おはようございます。時間が参りましたので,国立教員養成大学・学部,大学院,附属学校の改革に関する有識者会議(第7回)を始めたいと思います。
 これまで6回にわたって幅広く議論をしてまいったわけですけれども,これまでも一応議論のまとめというものを箇条書きみたいな形で出してはきているわけです。そういう中で,少し議論が足りない,あるいは,もう少し集中的に議論した方がいいのではないかということを,3点ほど資料1に抜き出しております。今日はこれについて特に焦点を絞った議論をお願いしたいということであります。
 まず初めに,今私が述べましたことも含めまして,もう少し詳しく事務局の方から,資料の確認とともにお話しいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【柳澤教員養成企画室長】  よろしくお願いいたします。資料の確認でございますが,まず資料の1につきましては1枚の紙でございまして,ただいま主査から御説明いただきましたように,今後の特に議論を要する論点ということで,大きく3点を取り出した資料を御用意させていただきました。
 資料2の方は,前回これに近い形の資料を一度お示ししておりまして,それに若干の肉付けをしたものでございます。今まで頂いた意見が,非常に多いということで,全体を並べるのもかえって見にくいということもありましたので,主なポイントとしての意見のみをそれぞれの項目ごとに整理をして書かせていただきました。前回の資料,すなわち今までにここで出していただいた意見の箇条書きを若干増やしたというのが,この資料2でございます。
 それから,資料3につきましては,前回,第6回の会議におきまして,この会議のために全国の大学,教育委員会等に対してアンケート調査を行いました。それのグラフの結果につきましては前回お示ししております。そこに書き込んでいただきました自由記述等の整理が済んでおりませんでしたので,それを項目ごとにまとめ,また改めてグラフ等をその間に挿入をいたしまして,これ一式で全体の傾向が分かりやすい資料ということで,改めて作成させていただきました。
 それから,資料4でございますが,こちらは前回,第6回の会議の議事概要,それから資料5につきましては,この4月から役職等を代わられた方が数名いらっしゃいますので,それを反映いたしました名簿を入れさせていただきました。
 最後に,資料6が今後の開催スケジュールでございます。
 あともう一点,配付資料の資料番号をお付けしておりませんけれども,本日,松田委員から発言の際の参考資料ということで資料の御提出をいただいておりますので,当日配付資料という形で整理をさせていただき,お配りしております。以上です。
【加治佐主査】  それでは,意見交換に入ってまいりたいと思います。資料1,1枚もの,3点ですね。1点目が大学・学部の組織・体制です。これも,これまで何人かの委員から発言は頂いているところではありますが,これは避けて通れませんので,是非,より深めてまいりたいということです。
 その中に2つありまして,定員削減と,それから集約,分担,連携,統合ですね。時期,方法,メリット・デメリット,そういうことも含めていろいろお話しいただければということです。
 それから,附属学校についてです。これは教員養成系以外も含んで考えていただければと思います。これにつきましては結構いろいろ論点が出ているんですが,特に児童・生徒の受け入れには選抜方法が関わるわけですけれども,附属として多様な児童・生徒をどういうふうに受け入れるべきなのか,そのための選抜方法はどうあるべきなのかということですね。これについては,それほど議論がされてはいないということです。この機会に,是非ここのところにも踏み込んで報告書には書いていきたいということであります。それから,附属に対する大学のガバナンスが余りないということで,幾つかの附属では公立学校の校長先生を採用したりとかいう改革の動きもありますが,校長の在り方を含めた大学による管理組織の在り方ですね。
 それから,3番目が教職大学院です。こちらにつきましても,前回は主査ペーパーを出しましたし,かなり議論をしていただいているところなんですが,その中でも特に教科領域の内容を教職大学院に本格的に導入することについて,改めて議論をいただきたいということです。とりわけそれを担当する大学教員の質の確保についてです。
 また,それと深く関わると思いますが,兼務の問題です。今,特例措置で教職大学院と学部,修士課程とは兼任できるという時限措置が講じられていますが,これをどういうふうに考えていくべきなのかということです。
 3点あります。この順番にやっていきたいと思います。この3点以外にも,恐らくまだ御発言したいことがあると思いますが,とりあえずこの3点をおおよそ終わってから,ほかの点については御発言いただければと思います。
 それでは,まずは大学・学部の組織体制,こちらについて御発言いただきたいと思いますが,いかがでしょうか。
 山崎委員,どうぞ。
【山崎委員】  それでは,皮切りに発言させていただきたいと思います。定年退職者と毎年の出生数の大幅減少により,教員需要は中期的には減少が見込まれます。
 教員養成大学・学部の規模のある程度の縮小は,中期的には避けられないのではないかと考えます。しかし,過去の政策を振り返ってみると,幾つか考慮しないといけない事柄があると思います。
 まず第1は,需要の変化は地域によって随分違っております。ピークのずれが15年から20年ぐらいずれていますので,地域による需要変化を見極めた対処が必要であります。例えば全国を3つぐらいに分けて,早く先に起きる地域から順に対処を行うという必要があるかと思います。
 それから,既に地方大学では特にそうなんですけれども,教員養成課程が小規模になっております。一部の大学・学部では,教員養成課程を改組し教員養成大学・学部の範疇から外れている大学も出てきております。中・高の全教科の教員養成を行うには学生数や教員数の規模が小さすぎる大学も増えてきます。義務教育教員の養成と雇用が各都道府県単位になされているという戦後の原則を基本としつつ,大学によって得意分野を分担するとか,中・高教科の教員養成を分担するなども考える必要も出てくると思われます。
 また,1988年の教員免許法改定で教職に関する科目が非常に増加しました。今年,実践的教員の養成という方向で免許法施行規則が改定され,新しい科目がまた登場するわけですけれども,それに対応した担当教員の配置が必要になります。教員養成大学・学部には,数十人から100人以上の教員がいるわけですけれども,特に実践的な科目を担当する教員が担当授業の必要数に比較して不足しているという現状があります。大学側の教員の教育研究や大学院教育自体が変わっていかないといけないのですが,私たちは,そういう授業を提供しないといけない現状にございますので,めり張りつけた教員配置が必要ではないかと考えます。
 以上,3点申し上げました。お願いします。
【加治佐主査】  分かりました。
 いかがでしょうか,松田先生。
【松田委員】  失礼いたします。それでは,大学・学部の組織体制に関わって,ちょっと意見資料として整理してきたことがございますので,それを使いながら少しお話しさせていただきたいと思います。
 配付されています4枚つづりの資料です。その1枚目に概要が書いてございまして,2枚目以降,ちょっと図を作っております。このうち資料の1と2が大学・学部の組織体制に関わる意見でございますので,少しお話しさせていただきたいと思います。
 教員需要に応じた規模や体制については,在り方を見直していくというのは必然なことだと思います。ただ,その中で合理化という観点が出される場合が多いんですけれども,より積極的な意味付けといいますか,そういう部分もあるのではないかと思っております。結論から申し上げますと,これまで教員養成大学とか学部というのは護送船団方式とは言いませんが,各大学がフルスペックで,言い方を変えますと金太郎あめのような大学が全国にあるということの方を優先されてきたような気がするんですけれども,むしろ歴史や地域特性を生かして,それぞれが機能分化を促進し,そのことで逆にネットワーク化をしていくことが必要ではないかと考えています。
 国立の教員養成大学・学部が拠点になって,全国を教員養成ネットワークとして支えていくというような形で在り方を考えればどうかと考えております。その過程で私立大学の教員養成大学・学部との連携というのも必然になってくるのではないかと。むしろ,これを支えていく拠点という形で機能をどのように強化していくことが重要なのではないかと思っております。
 2枚目の資料を少し見ていただきたいんですけれども,今申し上げましたようなことをイメージしようと思いまして,これは仮に1つの観点でしかございませんが,現状の国立教員養成大学・学部を,例えば学部を中心になさっている大学,教職大学院,修士課程を中心といいますか,設置されている大学,さらには博士課程が設置されている大学,非教員養成の旧帝大系の教育学部等々,その色合いに応じて布置してみました。
 併せて,私立大学も同様の形があり,一番手前には教職課程の設置大学があると。こういう大学の布置のようなものというのは,これは歴史と地域特性によって育まれてきているというところもありますし,それぞれの大学の強み,弱みというものがやはりあると思います。ですので,こういう大学の――もちろん現状維持という意味ではありませんけれども,特性を生かす形で機能分化とネットワーク化を図るという観点,これが教員養成の質の向上や求められる教員養成の担保ということには重要なのではないか。そういう観点からも,是非合理化だけでなく,体制の在り方を考えてみてはどうかということです。
 一方で,資料の3枚目になりますけれども,体制を見直すといいますと,どうもやはりネガティブなというか,さらに言いますと,閉じて固まるイメージがすごく出てくるんですが,体制を見直して,新しい役割を果たそうとするからこそ,逆に打ってでる必要があるのではないかと強く考えています。資料3枚目は,真ん中の丸は,現在の教員養成の仕組みですけれども,例えば外部との連携という話が出ましても,これは必要なことではあると思うんですが,まず直近の課題としては,教育行政とか,学校現場という話になります。
 現在の学習指導要領の動向等を考えましても,より社会との密接な関係とか,あるいは大学自体が他の機関とのある種のチームアプローチというものをとっていく必要があると思われます。また,先ほどの組織の見直し等があった場合に,逆に補完し合うというような意味でも,外部の力と連携していくということが,やはりもう少し強く打ち出されてもいいのではないかと思っています。
 この図は,黄緑の丸が,従来までも連携は言われてきたんですけれども,より右下のような形で連携の幅と規模が広がっていくというようなことをイメージしております。これを具体的には,例えば企業や他学部と連携協働したサービスラーニングのような形での教育課程の開発だとか,あるいは人的な交流,さらには,例えば企業や地域とある学校を支える教育実践のためのツールを実践開発すること自体が,プロジェクト学習のような形で教職大学院や大学院等に教育課程として組み込まれるといったような,そんなようなアプローチを考える必要があるのではないかと思います。
 そういう枠組みの中で,社会人から教員へというキャリアパスが,例えば教員免許取得プログラムの教職大学院における3年制の設置等の形で進むことも視野に入れて考えるべきではないかと思いまして,ちょっと資料を用意してきたというところでございます。以上です。
【加治佐主査】  分かりました。非常によく分かりました。ありがとうございます。
 いかがでしょうか。
【松木副主査】  大学・学部の組織体制をどう作っていくかということに関わってですが,2つの問題を同時に解決していかなければいけないのではないかなと考えています。1つは,先ほど山崎委員さんから出たように少子化に伴う教員養成の縮小という視点,それと同時に,現在求められているような教員の資質,能力をどうやって高めていくか。あるいは,国際的な動向を踏まえて専門職化,高度化をどう実現していくかという,2つの課題を同時にかなえていくための方向性ということを示さなければいけないのではないかなと思っています。
 具体的に,縮小化に関しては4つの視点が今まで出されていたかなと思います。1つは,従来の在り方懇に沿った形での統廃合,あるいは免許法等を絡んだ大学との間での機能分担という方法,3つ目として,総合大学などでは教職センターの設置を行う上での統合といったようなこと,それから,もう一つ,4つ目として,教職大学院と教育学部を別々に扱うのではなくて,一本化することでどの地域にも教員養成機能を残していくといったような方法,4つがあるのではないかなと思います。
 小さくしていく上でも,同時に,先ほどお話ししたような求められる教員の資質・能力の向上を果たすのには教員養成はどうあるべきか,国際化に対応した形に教育学部を変えていくためにはどうすべきか,さらには,地域との連携の在り方,カリキュラムマネジメントのような能力の育成,先ほど出ておりました大学間ネットワーク化の問題,私立大学との連携の仕方といったような課題を解決する方向での検討の在り方が求められているのではないかなと思っております。以上です。
【加治佐主査】  分かりました。
 では,牧野さん。
【牧野委員】  前回,前々回,他の公務のため出席できなくて恐縮でした。今お話がありましたように,少子化の流れの中で,国立の教員養成大学等がどうあるべきかという話についてはずっと議論をしてきた,その方向性というものは非常に重要だという認識を持っております。先ほどから出ております在り方懇のときの議論との違いというのは,やはり右肩下がりの時代に入ってしまっていますので,そうした課題というものをなるべく早く解決していくという工程表,ロードマップを作っていかなければいけないということだと思うんです。
 いつかできればいいやというのではなくて,それをいつまでに,どこまでやるかという工程表まで見据えてやっていかないと,結局その問題の事実上の先送りになりかねないと。そうなってしまうと,ますます課題が大きくなってしまって,むしろ自己改革から,ほかのところからいろいろな話が出てきてプレッシャーを受けながらやるという,かなりドラスティックな改革を迫られることになりかねないと。
 それは,恐らくかなり急激な変化になりかねないので,余りお互いにいいことはないのではないかなと私は思っていますので,やはりそうした改革工程表というものをしっかりと作って,何をどこまでやるんだということを明確にしながらやっていくということが1つであります。
 もう一つ,お話ししたいのは,フィードバックのやり方はPDCAで回していくときのチェックのところをどういう形で作っていくかということなんですけれども,これは結局大学の中の成果というものは,実は卒業後の先生たちがどういった成果を上げていくかによって測られるべきものだと思うんです。それがちゃんとフィードバックできるかどうかだと思うんです。
 それがきちっとなされることによって,先ほどから出ております質の向上につながっていくのではないかと。えてしてほかの分野の学部でもそうですけれども,大学の役割というのは卒業までみたいな形で捉えられていて,あとは個人の皆さん方の努力だよ,みたいな形になってしまうと,なかなか本来の大学の役割の評価というのが見えなくなってしまう。
 やはりそこのところを見える化させるためには,卒業後の皆さん方の,先生方の成果というものをどういう形でチェックしていくかということが非常に重要になってくるのではないかと。以上,その2点を申し上げさせていただきたいと思います。
【加治佐主査】  いかがですか。
 それでは,北山さん,どうぞ。
【北山委員】  これまでの何回かの議論,情報交換を聞いておりましても,そのとおりでありまして,やはりこれは地域ごとの綿密な推計によって定員削減が行われることは避けられないと考えています。しかし,大学の規模の縮小によって学生定員が削減されて,教員数もその分,削減されるようになってきますと,教員養成の質の低下ということも危ぶまれますので,その辺をうまく避けるための方策を考えなければいけないと思っています。
 単純な少数分散ではなくて,地域によっては統合も当然あり得るとは思いますが,一定の規模を確保しながら改革していく必要があると思います。そのためには,慎重な検討が必要です。これまでにも出ておりましたように,一本化された教職大学院に教科研究のコースをちゃんと取り込むことによって,それがなされるかと思います。小学校教員養成におきましては,やはり教科横断的な考え方が重要ですので,余りにも機能が分化され過ぎますと,そこで小学校教諭の質の偏りが起きることが危険かなと思います。
 それと,教職大学院の充実によって,これまでの教育大学の教員養成という機能だけではなく,地域の教育委員会と協働して,教員研修の機関としての役割をこれからの教職大学院・学部が担っていく方向がいいのではないかなと思っております。
【加治佐主査】  はい,分かりました。いかがですか,よろしいですか。
 渡邊さん,どうぞ。
【渡邊委員】  いろいろな政策の流れの中でどう位置づけるのかということを考えながら今のお話を伺っていました。例えば,過去に行われた教員養成系大学・学部の学生定員の削減である,いわゆる5,000人削減の後,2005年に小学校教員養成の課程認定のルールが変わって,私立大学での小学校教員養成のボリュームが増えていきました。日本の場合,目的養成だけで教員養成をやっているわけでないので,私学が大きく教員養成の役割も担っているという,その配置図の中で考えると,5,000人削減は,国立で担っていたものが,私学の方に担われていったという流れと見えたりするので,政策としての一貫性というか,そういったものを考えながら議論する必要があるのではないかと思いながらお聞きしていました。
 そういう意味で,修士レベル化,高度化の議論は,今,修士課程の受け皿が実質的に少ないということもあって,ストレートに修士化できないという結論になったと思います。ですので,もし,学部の定員を削減するという流れにこの議論がなるのであれば,修士の学生定員を増やすというふうにして,修士レベル化,高度化に向けた政策の流れに位置づけるということもあるのではないかと考えました。
【加治佐主査】  そうだと思います。よろしいですか。
 じゃ,関根委員,どうぞ。
【関根委員】  確かに子供たちが減ってきて,中長期的には定員の削減だろうなと思います。私も3月まで教育委員会にいましたので,採用数を,今はたくさん採っていますけれども,いずれ減ってきます。実はその後,また減になって,また増える時期が来る。そういうでこぼこを私も経験してきていますので,少なくなった後,また増えるときには,減らしたままでいいのかと考えます。つまり,ある程度の柔軟性が持てるような仕組みを作っておかないと,対応ができないのではないかと思います。
 それと,基本的に国内で全て考えていますが,国外的に考えられないのか。つまり,教員の質の保証というのを日本の中だけで考えるのではなくて,世界的に見て,日本の教員養成の場合にも通用するような質保証の仕組みというのは作れないのかなと考えます。そういう中で需要というのを世界的にも増やしていくということも,長期的には考えていく必要があるのではないかと思います。
 要するに日本の中だけで質保証しても,果たして通用するのかなと思います。もっと世界的に日本の教育システムで教員養成の仕組みの中で育てられた者は世界的に通用するという担保をする仕組みも考えていきながら,長期的には定員,日本の中だけではない仕組みも考えていく。そういうこともしないと,そのとき,そのときでやっていきますと,これはずっとそれでやってきましたけれども,また下がって,またちょっと増えてと,定員が増減していく中で本当に質の担保ができるのかなという気がします。
 質の保証というのを,できれば免許法を変えてできないかと考えます。今の仕組みは全く免許状が質の担保になっていませんので,免許状が質の担保になる仕組み,国家検定化みたいなのも視野に入れていきながら,この学部のことも考えていかないと駄目なんじゃないかなと思っています。
【加治佐主査】  はい,なるほど。
 では,古沢委員。
【古沢委員】  少子化の中で,教員養成学部の一定の定員削減と拠点化はやむを得ない部分もあるかとは思います。一方で,どの地域にも教員養成機能を残していくことは必須だとも思います。今,社会の要請としては新課程とか新たな授業法への対応が必要なこともあり,教員へ向ける視線はかなり厳しく,もっと質を高めてほしいという声は高まっていると思います。教員養成では,むしろ充実させることが必要な部分もあるので,各地域の状況を踏まえて慎重に検討していく必要があるのではないかと思います。
 特に地方の場合,少子化,過疎化が厳しく,教育養成学部を拠点化した場合に各大学で十分な教育が受けられるのかなという懸念もあります。各地域の連携体制などをかなり柔軟に考えていく必要があるかと思います。
 当然,現職の研修,再教育機能も充実していく必要もありますし,先ほど松田先生がおっしゃった,社会人から教員へのキャリアパスというのも是非拡充していただきたいと思います。
【加治佐主査】  分かりました。よろしいですか。
 では,蛇穴さん,どうぞ。
【蛇穴委員】  ほとんど論点が出た感じがしています。その中で,何人かの先生方が言われたことの共通点を考えてみますと,先ほどPDCAサイクルのCの部分を大学としてどう受けとめて改善していくのかという話が牧野委員から出たと思いますし,それから,松田委員の方からは,様々なキャリアパスを持った人の受け入れということも出たと思います。そこに共通して見えてきますのは,教員養成プログラム,つまり学位プログラムをどういうふうにきちんと作り上げておくのかということだと思います。
 A→B→C→Dと積み上げるプログラムがあって,チェックする側から,Bに問題があるのではないか,と言われるのであれば,そこを変えようがあるわけです。ところが,体系性・順序性のないカリキュラムがあって,その中で単位数だけ満たせば免許資格を得るというようなことであれば,これはチェックが効くはずがないんです。ですから大学としては学位プログラムというものをどれだけきちんと作り上げていくのかということにかなりの責任があると感じています。キャリアの違いに対応する場合は,CをC´にするなど,その対応の仕方があるだろうと考えます。
 このプログラムを作るに当たって,その質を担保するためには,一つ一つの授業の中身と,それをカリキュラム全体の中で,きちんと体系付けるという作業が必要だと思いますし,さらに言えば,そのプログラムの一つ一つの歯車を回すために,大学の教員の質を高めるということと連動していなければ,学位としてはきちんとしたものができないということになるんだと思います。
 定員削減の問題,それから,それに応じた統合の問題がこれから課題になると思いますけれども,これだけは準備していないと教員養成のプログラムが完結しないんだというようなことを我々自身がはっきりと示せない限り,この定員削減のときに大学教員の定員をどこまで削るのかという話に,きちんと答えることができなくなるわけです。そういう意味で,私はこの学位プログラムというものを自らの責任の下でどうやって作り上げていくのかということが,最大限問われることになるのではないかと,個人的には考えています。
【加治佐主査】  いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 何といいますか,少子化に伴って,あるいは国家財政の逼迫に伴って何らかの定員削減,あるいはそれに伴う再編というものの必要性は皆さん,おっしゃったと思います。ただ,そこには様々な条件があると。例えば質の向上は避けて通れない。同時に,それを保証するような教育プログラム,あるいは教員の体制,さらにはそれを世界的な質の保証の中で考えるべきだとか,そういうお話もありました。同時に,状況は厳しいのでなかなか待ってはおれませんよと。待っていると,外から強圧が来て,かなりドラスティックなことになって,主体的な改革ができなくなるということも牧野さんからありました。
 それで,私が思うに,在り方懇から15年たちまして,この間,確かに国立の教員養成大学・学部はそれなりに変わったと思います。教職大学院ができたり,変わってはきております。ただ,教員就職率が,臨時採用も含めて70%に届かず,しかも教員需要が増える中で上がっていかないという,あえて言いますが致命的な問題があります。
 それに,シェアが低くなってきた。シェアが低くなってきたのは国立大学のせいだけではないんですけれども,これは政策の影響もありますけれども,いずれにしろ存在価値が下がってきていることも間違いないわけです。ここで,国立としての存在価値というか,そういうのを上げていかなければいけない,こういう発言も皆さんからあったと思うんです。
 そのために,具体的に再編とかをどう進めていったらいいかということになると思います。44大学・学部があるわけですね。地域連携も結構だと思います。その中で単科大学が中心になって1つのネットワークを作るとか,あるいは機能に応じた形でやっていくと,これもいいと思うんです。
 しかし,長いこと教員養成大学に関わり,かつ学長としていろいろな改革に取り組んできた経験から思うんですけれども,今の分立した体制の中では,11教育大学,そしてそれを合わせて44の分立した中では,今言われたようなことがスムーズにできるかというと,私は基本的に疑問に思っており,極めて難しいと思っております。再編・統合の議論がこのような抽象的なレベルで止まったら,正直申し上げて多分また何も変わらないと思います。だから,我々が自ら改革していくんだという強いものを具体的に出さないと,牧野委員が危惧するようなことが起こるような気がしてならないんです。
 私は,当然ここでの議論を踏まえて,また中教審で3月に諮問されましたような全体の大学改革の議論がありますので,そのことも踏まえながら,やはり何らかの見取図みたいなものを出すべきと思います。これは国が作るべきだと思います。もちろん,そこには実際に国立教員養成大学・学部を担当している者も関わらなければいけないと思いますが,何らかの具体的な再編・統合案を作るべきだと思います。
 それに従って,同時に具体的なロードマップを設定した形でやっていくべきです。スケジュールを設定してやらないと,まただらだらやるだけだなと思います。その中で,とりわけ先陣を担うべきなのは,11の教員養成大学です。この教員養成大学,それなりのいい面もあるわけですけれども,ただ,なかなか課題も多いと思います。1つは,やっぱりコストです。あえて申し上げますけれども,私は学長をやっていたからなかなか言いにくいんですけれども,公立学校教員1人を生むのに幾ら掛かっているのかなと,正直言って思わないわけではないんです。かなりの高い数字か出るんだと思います。要するに,教職員数は多くて学生数は少ない,附属学校も多いということです。だから,私学の人から見たら,かなり厳しく言われるところだと思います。
単科大学ですので財政基盤が弱いんですね。運営費交付金が30億,40億。30億切るところもあります。これがずっと漸減です。じわじわ,特に基盤的経費,基幹経費が減ってきているということです。早晩,立ち行かなくなる大学が出てくる可能性が高いと思います。
 さらに,これもなかなか言いにくいんですけれども,自己反省を込めて,やはり経営力の弱さがあると思います。これは規模が小さいことに起因するんだと思います。経営陣に人材源の裾野が狭いので,どうしてもなかなかいい人材が出てこないということがあるのかもしれません。
国立86大学は法人化第3期は3分類されまして,地域貢献,オンリーワン,それからグローバル大学に3分類されて,毎年,年度が始まる前に運営費交付金の重点配分のために各大学の計画を査定します。
 査定の結果である重点配分の再配分率(戻し率)を見ますと, 11教育大学の中でプラス,つまり戻しが引かれた分より多いのは2大学だけです。11教育大学の中で,東京学芸大学を除いて10大学が地域貢献型ですけれども,地域貢献型は全部で55大学あるわけですが,その中で戻し率が80~90%という非常に低い大学が5大学あります。そのうちの3大学は教員養成大学です。つまり,経営力が弱いというエビデンスを示しています。これが規模に起因しているとすれば,改善はなかなか難しいのかもしれません。
 教員就職率も上がらない,多くのコストが掛かっている,経営力の弱い中で,お金も減ってゆく。このような状態のまま置いていて,皆さんがさっきからずっと言われているような国際的に質保証するとか,教員養成の高度化を担うとか,修士レベル化するために教職大学院を増やしていくとか,修士課程学部から教職大学院に転換していくとか,役割を養成から研修に移すとか,附属学校を大きく変えるとか,Ed.Dを有する人材を養成するとか,そういうことを果たして担えるのかどうか極めて疑問です。
 とすると,やはり相当の効率化の上で,効果的な仕組みというのを考えなければいけないんだと思いますね。これがどういう形になるのか。例えばこれまでも提案されたことのあるアンブレラ方式ということで,1法人11教育大学なのか,あるいはあっさり1法人1大学なのか。
1法人1大学にするとしても,今日もお話があったように,各地の地域ニーズや実情は当然大事にしなければいけない。地域による教員需要も違いますので,当然大事にしなければいけないです。ですから,それぞれのキャンパスは当然残さなければいけないと思いますが,運営とか経営において,それぞれが独立するのではなくて,資源活用の効率化を全体として図る。例えば,最先端の教育課題を研究するための人材の集約や,地域ニーズを生かすための人材配置を個々の大学ではなくて,全体で再配置するといったことを,本格的にやらないと,これは進まないと思います。
 こうした統合・再編は, 11教育大学の話し合いでやれれば一番いいんでしょうけれども,それはまず無理でしょう。ですから,11教育大学も当然入りながら,やっぱり国の方でこれを作っていただきたいと思います。第3期は33年度までです。先ほどから申し上げている3分類に即して,それぞれの大学は努力していますので,第3期の後半ぐらいから,統合・再編の具体的な計画を立て,スケジュールを立てて,第4期の中期目標,中期計画は,私が今言ったようなことを何らかの形で含んだものにすべきだと思います。
 そうしないと,本当に牧野さんが言われることが起こるという感じを受けております。ですから,そういうことを強く申し上げておきたいということです。ただ,今私が言ったようなことを報告書にどのように書くかは,相当慎重に考えなければいけません。
 これまでの教育大学の資源を生かすためにも,あるいは実績を生かすためにも,何らかのそういうことが必要ですし,新たな踏み出しというものが必要なのかなという気がしております。
 それでは,また後で振り返っていただいても結構ですので,2番目のテーマです。今度は附属学校の問題です。主として,これまでは教員養成系の附属学校について語ってきたと思いますが,教員養成系以外にも国立の附属学校はたくさんありますので,教育養成系以外も含んだ形でお話しいただければというところです。いかがでしょうか。
 それでは,田中さん,どうぞ。
【田中委員】  失礼します。現在の附属学校をめぐる非常に厳しい状況,遅ればせながら附属学校にも浸透しつつありまして,関係者も共有し,もはや猶予はないという非常に強い危機感を持っているところであります。そして,多くの附属学校でこれまでの在り方を反省し,意識改革を進め,自分たちの存在意識について深く考えるようにもなってきているということも事実であります。
 多くの附属学校がそれまでの体質とは大きく変わりつつありまして,具体的な改革に取り組むようになってきているところであります。これまで独立的と批判されてき附属学校の存在も,まだまだ不十分とは言えなくもないかもしれませんが,大学の管理体制も少しずつ強化されてくるに従いまして,附属学校は大学にとっても有効活用し得る存在となってきていると判断します。
 また,地域の教育委員会や公立学校とも良い関係を構築しつつありまして,研修や研究,日々の授業実践等で地域の教育発展に貢献している附属学校もたくさん出てきています。今後,両者との関係,協働,連携もますます進んでいくものと思われます。このことは,今日資料としてお出しいただきました実態調査結果,27ページの(2)からも明らかでございます。回答した全ての大学が,附属学校は大学の教育研究に役立っていると回答しています。また,地域の教育委員会からは,附属学校は地域の公立学校等をリードする指導的,モデル的な学校となっているとする回答が90%を超えています。
 しかし,この結果に喜んでばかりはいられません。なぜなら,この実態調査結果,29ページの(4)にありますとおり,7割の教育委員会が,附属学校の研究,実践結果が公立学校等で実際に活用された事例については具体的に把握していないと回答しているからです。
 これは,地域とのコミュニケーションやPR不足の現状が明らかになったものと思われます。附属学校は自らの教育研究の成果を広く提供してきました。ただ,成果を提供したということで安心してしまいまして,その成果が確実に活用されているかどうかまで追求するという意識が弱かった面があるのは事実であり,この点が国民に附属学校の存在意識が正しく理解されてこなかった大きな要因になっていると思われます。
 これからは発信した,提供しただけで満足するのではなく,その内容がどのように伝わり,還元されているのかまでを見届ける努力をしていかなくてはなりません。このことが成果の把握と改善につながり,双方向のやりとりを進め,求められる課題やニーズが見えてくると思われます。その結果,附属学校の地域への貢献が目に見える形となって現れてきます。
 こうした努力を続けることによって,周囲から何を求められているのか,何が期待されているのかをつかみ,自分たちの進む道,その学校のスタイルを確立していくことが急務だと考えます。
 前回の会議で児童・生徒を選抜で入学させている附属学校が地域のモデル校になり得るかという御意見がありましたが,これはあくまですぐに参考にできる,活用できるといった次元の1つのモデルとしての見方だと考えます。モデルの解釈によっては,理想となる姿という捉え方もできるのではないかと思っています。実際,多くの附属学校がこれまで研究開発学校,SSH,SGH,地域の研究指定校として先進的,先導的,かつ開発的な教育活動を実践し,広く普及させてきました。
 附属学校でも実践が我が国の教育活動の目標となり,支えてきたと言っても過言ではありません。そして,先ほどの調査にあった9割以上の教育委員会が附属学校のこういった取組を評価し,期待しているものだと思われます。このような見方をすれば,附属学校は公立学校のモデルの役割を果たしてきたと言えます。附属学校がごく一部のいわゆるエリート校と称される学校に対するイメージに基づいて理解されるのは一面的であると思います。
 附属学校は試験による選抜を行うことによって,公立学校とは多少異なる子供がいるところが多いことは事実ですが,そのような環境だからこそ大学の教育研究への協力をスムーズに行い,地域に貢献することや,教育実習生を多く受け入れて地域に多くの教員を輩出することができている面があることも評価しなくてはならないと考えます。
 したがって,直ちに,あるいは全面的に附属学校の入学者選抜のための試験の廃止を求めることは,これらの機能を低下させることになる一方で,公立学校的な附属学校にした方が国全体としてより有益であるとは,必ずしも言えないと思います。
 よって,まずは本会議としては,現在の附属学校の貢献の成果が十分に国民に伝わっていないことや,その成果を目に見える形で示すべきことを警告として発信した上で,選抜試験を課さない選考や,選抜試験を行う場合には,選考に占める比率を下げることによる多様性の確保が考えられることを示し,各学校や各大学にその改善を促すことが得策と考えます。
 今後,国民からの評価を得るためには,それぞれの附属学校が果たしてきた役割を明らかにしていかなくてはなりません。そのためにも,各附属学校にどのような存在意識を持たせるか,その性格づけを附属学校と管理する大学が責任を持って明確にし,プランに基づいて入学方法をはじめ様々な改革に着手すべきで,本会議としましては,課題や目指すべき方向性をしっかり指摘するとともに,改善に向けて努力しようとする大学や附属学校については,その自己改善の動きを引き出せるような提言内容にすべきと考えています。
 失礼します。
【加治佐主査】  ありがとうございます。いかがでしょうか。
 では,北山さん,どうぞ。
【北山委員】  今日お示しいただいております資料1の論点整理について,短く意見を申し上げます。まず,多様な児童・生徒の受け入れの方法についてです。確かに単なる学力選抜では附属学校の独自性が発揮できないので,ふさわしいとは考えておりません。しかし,抽選等の方法で単純化することが必ずしも望ましいとも思っておりません。入学者の選考はそれぞれの附属学校がその地域の特性,学校の特性などに応じて求める生徒像を明らかにして,それに基づいた選抜の方法,あるいは,学力ならばどういう考え方を問うのかということを明確にするべきだと思います。実際,そうやっているところは多いと思います。まず,入学選考についてはそのように考えております。
 それと,大学による附属学校のガバナンスですが,これも文科省の指導等によりまして,総合大学でも附属学校担当理事を置くとか,あるいは数の多い附属学校を抱えているところですと,附属学校統括長ですとか,附属学校部長とかいう役職を大学に置いて,附属学校に大学のガバナンスが十分浸透するようにしているところが多いと思います。それは今後の浸透に期待するところでもありますが。同時に,それぞれの附属学校の中での校長の在り方ですとか,そういうところを整理していくべきだと思っております。あるいは,附属学校の管理職といいますか……。
 その前に,附属学校の教員の雇用の方法というのは全国に2とおりあります。1つは,東京学芸大学のような都市部の学校に見られる,大学雇いでほとんど全ての教員をそろえている附属学校です。これはこれで,私は全部同じにする必要はないと思っていて,こういうところも必要だと前回にも申し上げました。それは,そういうところで実務経験を十分持った人が教員養成大学の教員として力を発揮できているわけで,現在でもそのような形で進行していると思います。そういう附属学校も必要だと思います。
 さらに,全国的の多くの大学の附属学校は,県や市の教育委員会との人事交流によって成り立っております。その人事交流で成り立っているところに,校長が大学から出ていて,多くは教育委員会から副校長として十分経験のある管理職が来るわけですが,そこのところの在り方の改革というのはあっていいかなと思います。例えば,附属学校の校長は管理職の実務経験者を特任教授なりの大学の教員として雇用して,形の上ではこれまでのように大学教員との兼務ではありますが,今までのような研究者教員が出ていくというのではなくて,実務家教員が大学の教員になった上で校長を兼ねるということです。そして,その人材は退職校長を含む附属学校の教員の経験のある方や,あるいは附属学校の教頭から任用して,附属学校の管理職としてだけではなくて,教職大学院を中心として大学教育において大きな影響力を発揮できるようにしていけるといいと思っています。
 そういった意味からも,附属学校の在り方も,大学雇いのタイプと地域との交流のタイプというのをうまく,それぞれのよさを生かしていった方がいいと考えています。
【加治佐主査】  ありがとうございました。外国の,アメリカなどの大学附属学校を見ると,校長先生はそんな方ばかりですけれどもね。
【北山委員】  はい。
【加治佐主査】  牧野さん。
【牧野委員】  こういった附属学校の在り方という中で,まさに今の小学校,中学校なりの抱えている課題を解決できるような,そういった課題解決型の成果をどれだけ上げていけるかというのが,私は非常に重要だと思うんです。例えば,昨年度の予算のときに,いわゆる子供の数はもちろん少子化の中で減っていくんですけれども,その中でも実はある分野の子供たちは増えていくということで,基礎定数化の議論をずっと文科省の皆さん方としていたことがあるわけですね。
 この有識者会議でも前回,子供の貧困化の話が議論されたと思うんですけれども,予算の決着の中では,いわゆる特別な支援が必要な子供たちとともに,外国人の子供たちに対する定数化の話も一緒に議論されて,私ども,外国人集住都市会議のメンバーがその予算に関しまして,基礎定数化に向けてかなり動いたという経過があるんです。そういった課題に対して,附属学校がきちんと課題解決に向けたことをやってきて,その成果が横展開されていくような仕組みになってきているのか,あるいは,今後なるようになるのか,そういったところは,私は非常に重要ではないかなと思うんですけれども,いかがですかね。
【加治佐主査】  これまでもそういう指摘は出ているところですね。そういう点がまだ不十分だったのではないかということで,そういう議論も強化しなければいけないということですね。
 では,水落さん。
【水落委員】  お願いします。附属学校はその使命は大きく分けると,「教員養成のための実習校という使命」と,「先進的な取組をしてモデルを示していくモデル校の使命」とがあると思います。今日配付されましたこの資料の29ページ,(4)と(5)のところに,私は注目しています。
 (4)では,「公立学校等をリードする指導的・モデル的な学校となっていると考えますか。」という質問に対し,学部長,附属学校,そして教育委員会との意見が概ね一致しており,一番色濃く塗られている部分としては分かれているとしても,三者とも「考えている」という結果が出ています。これは,先ほど田中委員がおっしゃったことと一致しています。
 しかし,(5)の,「公立学校等において実際に活用された事例を把握していますか。」という質問の結果になると,学部長,附属学校としては「把握している」と判断されていますが,教育委員会としては「把握していない」という結果が出ています。どうしてこういうことが起きるのかなということを考えますと,結局私がかつて現場の先生をやりながら大学院の修士課程に派遣されて,学術研究と出会ったときの印象にもつながると思うんです。
 今まで現場の研究というのは,授業研究をやったり,何らかの取組をしたりして,抽出児童や抽出生徒等の取組を見て,学習への取組を見て,「学習に意欲的になった。」ということを研究紀要等でまとめてきました。でも,それをきちんとエビデンスを基に示せるかというと,なかなか難しい。そのときその現場にいた先生が「意欲的になった」と判断したというだけで,エビデンスを示すものになっていなかった。つまり,「何をやったか」が中心で,「何ができるようになったか」について,エビデンスを基に示すまでには至らなかったと思うんです。
 ここを改めずに何らかの改善の努力を求めていくと,「〇〇をやりました」という成果報告がどんどん増えていくだけです。結果として現場はどんどん忙しくなっていくと思うんです。附属学校に勤務した先生が一般の公立学校に戻っていくわけですので,そこでのノウハウを基に公立学校の研究等が進められていくと,そういう方法で成果発表をしていく。結局,日本の先生はどんどん忙しくなっていくという構造が,是正されるどころか加速していくことにつながるのではないかと思います。
 幸い教職大学院ができて10年たって,全国で理論と実践の往還が進められてきました。きちんと附属学校の研究成果というものもピアレビューの視点を持って精査されていくということが大事だろうと思います。恐らく附属学校,最初に申し上げた2つの使命の中で,実習校として頑張っていくのか,若しくはモデルを示すモデル校として頑張っていくのかという選択を迫られたとき,両方の役割を果たすというのが非常に矛盾しているということが,今問題として浮き彫りになっているわけですので,どちらの使命を果たしていくのかということを附属学校自身が選べるような形にしていくことが大切です。
 そして,これは全てではないかもしれませんが,実習校としてやっていくのであれば,やはり学力試験等の選抜はなくしていく。若しくは,学力試験が必要な実習があるのだということであれば,それをきちんとエビデンスを基に示していく。それが計画等で示されて,認められるなら,そういった学校の取組をやっていただいて,成果をきちんとエビデンスを基に報告していただくというような仕組みにしていくことが必要なのではないかと考えます。
 若しくは,計画段階でそれを示して審査するということが難しければ,何人かの有識者を募るなどして,その附属学校の取組を評価するような評価事項のようなものを作って,その項目に基づいて取組を報告していくシステムにしてはいかがでしょうか。そのときには,例えば単に「5%水準で有意差が出ました」というような学術的な報告だけではなくて,それがきちんと附属学校だけでなく一般の公立学校にどのように生かされているかということもきちんとエビデンスを基に示す。そういうアカウンタビリティーを果たしていただくということで,附属学校の役割ということが本当に見直されてくるのではないかなと考えています。以上です。
【加治佐主査】  山崎委員,松木委員の順で行きますが,もう一つテーマもありますし,ちょっと時間も大分たってきましたので簡潔にお願いします。
 山崎さん,どうぞ。
【山崎委員】  では,簡潔に。附属学校の役割が2つあるということは,全くそのとおりであります。昨今,教職大学院等で教育実習を公立学校で行うようになってております。それから,教員養成大学・学部がそれぞれの教育委員会と連携協定を結び,教員養成大学・学部と公立学校や教委との結びつきが強くなっております。
 その中で,附属学校は,教育実習,特に新人教員の実習については従前から大きな役割を果たしておりますけれども,今後もなお一層それは維持,強化していかないといけません。これは附属学校の存在意義に関わる重要な役割ではないかと思います。
 これに関して,附属学校の先生が大学の教員養成の授業にも関わるとか,連携をもっと生かした形で附属学校の役割を大きくしていくことも重要であります。事前・事後指導の指導だけでなく,実践的な授業科目が増えておりますので,附属の先生にも役割を担っていただけるような仕組み作りをもっと強化することを期待しております。
 私たちの大学では附属学校との連携を強化したいと思っているんですけれども,残念ながら大学のキャンパスと附属学校が遠くて,時間の浪費,いろいろな面ですごくロスがございます。教員養成学部の近くに附属学校を設置したいという大学につきましては,国も支援をしていただきますようにお願いしたいと思っております。以上です。

【加治佐主査】  はい,では。
【松木副主査】  2点です。1点目は,教育学部のあるところの附属学校と,2点目は,教育学部のないところの附属学校についてです。最初に,教育学部のあるところの附属学校についてですが,少子化,あるいは高度化をしなければいけないという現状を踏まえていくと,国立大学の教育学部は就学前の4年間の教員養成から,少しずつ生涯にわたる職の成長を支える大学に切り替えていかなければいけないといったような現状があるかなと思います。
 そのためには,附属学校の在り方も,学部附属であるのではなくて,大学院附属に切り替えていく中で,附属学校の教員の資質の向上と,大学の教員との人事交流,あるいは併任発令等を含めて資質の向上ということを同時に図りながら,教員研修学校に切り替えていくと方向性が必要ではないかなと思います。そのためには,やはり学長のガバナンスということを強めていくと同時に,附属学校間を統括していくような機能を校長に委ねていくのではなくて,幾つかの附属学校をまとめていくシステムを大学の方できちんと用意していくという必要があるかなと思います。
 そして,幾つかの学校を統合していく中で,附属学校の校種を超えた教育研究,特に公立学校ではしにくいようなことについても着手すべきだと思います。先ほど牧野委員さんの方から特別の支援の必要な子供の話がありましたが,附属学校の中には特別支援学校があります。よく考えてみると,インクルーシブ教育を実現していくということと,特別支援学校が存在しているということは非常に矛盾した状態でもあります。でも,その矛盾した状態がむしろより止揚していく,アウフヘーベンしていくというような方向で考えていくならば,特別支援学校と通常学校のうまい活用の仕方,こういったことも含めて,附属学校は積極的に取り組んでいくべきではないかなとも考えています。
 2点目の教育学部のない附属学校についてです。これまでの歴史的な背景を考えると,むしろ教育学部のない附属学校の方が,日本の教育改革の先導的な役割を果たしてきた附属学校が非常に多いのではないかなと思っています。しかし,今後のことを考えていきますと,大学とのつながり,あるいは大学院とのつながり抜きにして,そういった働きを強めていくということは非常に難しいです。何らかの形で大学院とのつながりを見つけ出していきながら,教員の研修機能を高めていく,つまり地域や日本全体をターゲットに,子供たちの成長を支える仕組みを附属学校がつくりだしていく必要があるのではないかと思います。以上です。
【加治佐主査】  ありがとうございました。それでは,蛇穴委員,関根委員,田中委員,古沢委員,簡潔にお願いいたします。
【蛇穴委員】  教育養成系の附属ということに限定して,お話しさせていただきたいと思います。この2つの論点について,個人的にはリンクしております。つまり,まず何のために学力選抜をしているかということですが,附属の役割である公立学校ではできない研究開発をするという大きな使命と,非常にリンクしていると思います。
 つまり,そのような研究をするために必要な能力として,私たちの学校はこれだけのものを求めているんですということを提示して,それに適う能力を確かめるための試験,あるいは選抜の方法だったと私は理解しています。研究開発は短期的なものだけではなくて,長期的な研究もしているわけですから,それぞれの目的にしたがって,こういう能力のある子供を入れて,このことを目指して研究しているんだという目的と,そのために必要な基準を明らかにするということが必要なんだろうと思っています。
 さらに,ガバナンスについてですけれども,今の考え方と当然強く結びついているわけで,これは学校を経営できればいいというだけの問題ではなくて,教員養成大学における研究開発校としての附属学校の意味というものを理解した上で,大学とどういうふうな連携をとりながら学校を運営していくのかという,きちんとした見通しを持った人がこのガバナンスに関わっていくということでなければ,教育養成系の大学に附属学校があるという意味はなくなると考えています。
 ですので,この2つの問題というのは,やはり研究開発というキーワードで非常にリンクしたものだと理解しています。
【関根委員】  私からも簡潔に。ちょっと厳しめに,附属は要らないのではないかということを言わせていただきたいと思います。1つは,やはりエリート校です。小・中のころから地元から離れて行くという教育を残していく問題です。しかも,子供たちは減っていく割に定員は減っていませんから。
 そういう意味では,附属を残していくということは,二極化を進める原因の1つであるということは自覚する必要があると思っています。その上で,実習であれば,市町村,公立の小・中学校でやるべきだと私は思います。
 もう一つ,モデル校として問題です。私は県教育委員会の教育長をやっていましたが,指揮命令系統が全く違います。ですから,県でやりたいことを,附属学校がやってくれるとは限りません。それぞれ附属校の論理で動きます。連携協力はやっていく必要がありますけれども,現実的にはなかなか県の思惑どおりに動くわけではありません。
 もしもモデル校としてやっていくんだとすれば,その成果がちゃんと示せるようなエビデンス付きの,これだけの成果が公立学校の小中に役に立っているということが示せなければ,モデル校としては意味がないというぐらいのつもりでいかないと,モデル校として生き延びていくには厳しいんじゃないかと思います。要するに自己満足と言われてもしようがないと思うのです。
 県と附属学校の連携はできますけれども,全く独立の発想で動くわけですから,そういう意味では,附属学校というのが今後,この財政がどんどん厳しくなっていく中で存続していくというのは厳しいんじゃないかなと思っております。
【田中委員】  失礼します。今後,大学のガバナンス強化を図る上で大切になることとしまして,附属学校の存在意義,それから有効な活用方策,これを大学と附属学校がよく協議をして,大学の責任においてしっかりプランを立てていかなくてはなりません。そのために,大学の責任において大学と附属学校の連携を円滑に進めるための命令指揮系統を確立するといった運営面,組織面での充実,強化を図ることは何よりも大切です。
併せて,附属学校の教員人事についても考えていかなくてはなりません,校長人事について,これまでのような大学の教員がなるということについて,また,附属によっては,それも象徴的な立場での校長の存在はやはり問題があります。今の時代,なかなかこういった実務経験がない校長が務まるほど簡単に学校の運営ができるというものではありません。是非,積極的な外部登用というものを進めていただきたいと思います。しかし,先ほど北山先生がおっしゃっておられましたけれども,これまで大学の先生が附属学校の校長であるということは,附属学校の声が届いたというよさはあったと思いますので,教授会の方へ附属学校の校長が出られるような,そういった仕組みを是非作っていただきたいということが条件になると思います。
 附属学校教員の人事についても,特に首都圏,大都市圏では人事交流を積極的に行う必要があります。これまで,人事交流が滞る1つの理由として,交流先が見つからないといった理由がありましから,他大学の附属との交流というものを進めていくような形を全体としても作るべきだと思います。
 そして,附属学校教員の大学への帰属意識をもっと高めていかなければなりません。附属学校教員が,もっと積極的に大学に関わる,大学の運営,授業に関わることで,大学への理解ももっと深まり,ひいては大学と附属学校の連携が円滑に進むものと思われます。
 大学の先生方にも,附属学校にもっと関心をもっていただけるようになることで,大学と附属学校の関係はますます良くなります。大学の先生方の専門的な知見が附属学校において生かされるということは,附属学校にとって大変有意義なことだと思いますので,そういった仕組みを作っていく必要があると思います。
 他に,地域の教育委員会とか,関係団体,企業等との連携を図る上において,これまで附属学校が単独で行っているということがよく見られましたが,やはり,これからは大学がそのことをきちんと把握し,場合によっては大学が窓口となり,リードしていくようなことも考えていく必要があるのではないかと思います。以上であります。
【古沢委員】  この論点の中にもありますが,附属学校の在り方を見直す上で,やはり選考方法の見直しというのは欠かせないのではないかと,個人的には思います。研究開発とか研修の場,モデル校といっても,やはり生徒の状況が公立とは余りにも開きがある状況で,それが適切なのかというのは外部から見ると疑問に思います。
 先ほど,ほかの委員の方々から,例えば抽選の比率を高めるというのもありますし,あと地域によって差があると思うんですが,生徒の選考をするとしても,住んでいる地域をより限定するということで,より公立に近い学習環境,教育環境を作ることが,ひいては教員養成大学の学生の質向上にも結びつくのではないかなと私は思います。
 それで,管理職については,やはり実務家というお話が出て,そのとおりだと思いますが,是非,公立の教育経験,校長経験のある方に校長になっていただく方が地域全体のために良いのではないかというふうに思いました。以上です。
【加治佐主査】  それでは,よろしいですか。いろいろ議論されたところです。やはり,この国立大学にとって,附属ははっきり言って,もうオプションではなくなった。ちょっと言葉が適切ではないと思うんですが。つまり,その存在意義なり,ミッションなりを,教員養成系も,教員養成系以外の附属学校も,本当に考えざるを得ない時期に来ているんだということだと思います。
 関根さんがおっしゃるようなことが背景には当然あるし,大学自体も財政が厳しくなっていますので,やはり本当に価値があるかどうかということを問い直しつつあるのは間違いないんです。だから,本当に大学自体も真剣になっていることは,これは間違いないです。どこかの大学が幼稚園をやめるとかいうふうなニュースもあったりもしているわけですね。
 だから,附属学校はそのミッションに基づいて,あるいはその役割に基づいてその選考方法が必要なんだということを明示すべきというようなことをおっしゃった方が何人もおられました。それは確かなんですけれども,その論理がこれまでと同じように通用するのかどうかということです。
 つまり,公立のモデルでなければならないということを,やはり納税をする側は絶対求めてくると思います。そうしたときに,その選抜方法は今みたいなやり方というのは,果たして説得力を持つのかどうかというのは,大学側の論理だけではなくて,古沢さんもおっしゃったような,外の方々の意見というものに相当しっかり耳を傾けなければいけないのかなという気はします。
 ガバナンスについても,大学は本当にその附属の存在意義を問い出していますので,私はおのずと,これは相当大学自体が考えると思います。考えざるを得ないといいますか,そういうことになるのは間違いないと思います。具体的には,校長の在り方としては,教職大学院に管理職コースがほぼどこもできつつありますので,私は,校長を大学教員にすべきだという御意見もありましたけれども,教職大学院の管理職コースを担当している大学教員が校長になるべきですね。附属学校の経営実践と,大学での教育研究の一体化,それを校長を通してやるということが一番望ましいと思います。その方が公立出身の場合も,当然あるというふうに思います。
 それから,もう一つだけ申し上げておきますと,附属は実験校なり,モデル校であるとする際に,大きな難点が制度的に1つあるわけです。それは,要するに幼保連携型認定こども園です。毎日のように保育の受け皿がないということがニュースになっていますけれども,そういう保育と幼児教育をそのために一体化する認定こども園,幼保連携型認定こども園が非常に増えてきているわけですけれども,国立大学はその対象ではありません。幼稚園しか持てません,制度的に持てません。
 そこのところは,制度的にできるようにすることは非常に難しいとは思いますが,いずれにしろ,就学前のところも当然附属は貢献しなければいけません。とすると,地域の自治体の保育機能を委託してもらうとかいうことで,大学が持っている附属の幼児教育機能と合わせたような形の一体化施設,認定こども園をつくるとか,そういうことも試みていかないと,ますます就学前の分野での存在意義が薄くなることだけは間違いないですね。そういうことを申し上げておきたいと思います。
 それでは,3点目です。教職大学院です。こちらについてお願いいたします。
【松田委員】  1点,遡ってしまいますけれども,加治佐先生がおっしゃった保育園,実は学芸大学では既にやっています。ですから,教員養成大学としてもこれから取組は広がっていくんじゃないかと思いました。それをちょっと一言だけ。
 教職大学院の件で,まず今日頂いた資料の7ページのところで,学生が学部において学んだ内容は,勤務上どの程度生かされているかというような質問があって,見ますと,高いのは教育実習と教科に関する専門的事項ということになっています。
 現職の先生方は,教職大学院なり修士課程の大学院にいらっしゃるときも,この教科領域の内容というのは,もちろん非常に大事にされるところがあります。でも,一方で,この会議でも再三にわたって議論されていますように,この教科領域の内容というものと,教科教育というものの融合というのが実は教員養成大学では進まない。それは,要するに教員意識の問題が非常に大きいというようなことが出ているんだと思います。
 それで,先ほど使いました,机上に配付させていただいた資料ナンバー3なんですけれども,資料の4枚目の絵を見ていただきたいんです。これは,教員養成大学の内部にいまして,どうすれば教員意識が改革できるかということを内部的に考えてみたものです。この資料は,教育研究の何か位置づけみたいなものを整理できたらと思って作ったものです。図の説明を簡単に致します。まず,教育の実践に参加するということを前提にする教育研究の場合が左側で,右側がその教育実践を対象化して教育研究するという場合が置かれています。
 一方で,内容に関して,知識,思考というレベルの問題と,技能とか行動という問題のレベルを上下に置いています。例えばフレーベルの専門研究者で,フレーベルの生涯とか考え方ということをやっているとすると,右上の既存のいわゆる教育科学としての教育学というようなオレンジの丸のところになると思います。それに対して教員養成の学問分野で求められているものというのは,そこから学校現場にどう接続させる臨床的な知や,あるいはその手法,技術というものが生み出せるのか。さらには,それが学校現場をどう変えていくのかということで,この赤のかぎ括弧のような位置に多分あるんだと思っています。
 現在求められているのが,教員養成の教員が,この赤のかぎ括弧のような立ち位置を専門とするという形だと思います。しかしながら,批判される場合はそのオレンジのところにとどまってしまうという,そういう話になっていると思います。
 このときに,今後,ここまでの議論でも,赤のかぎ括弧のような教員養成の学問分野が整備されることと,そこへの意識改革が重要だということで再々議論されてきたんですが,正直なところ,大学の現場――これは非常にぬるいと言われたり,批判されると思うんですけれども,オレンジの先生が,赤のかぎ括弧に専攻替えをするということというのは非常にハードルが高い。
 それはなぜかといいますと,その赤のかぎ括弧のような大学教員の育成システムがまだないからです。今,教員養成の大学には,要するに結局は既存の学問分野でのシステムで育った方か,現場ないし教科教育という固有の領域から上がった方しかいらっしゃらないので。今後これは変わっていくと思うんですけれども。
 そうしますと,現状で一番早いのは,例えて言いますと,このオレンジとかぎ括弧のダブルメジャーでいてくださいという,ダブルメジャー論のようなものを強く打ち出してみてはどうかというのが,ちょっと考えていることです。つまり,専攻替えしてくださいということのスピードが,どうしても外圧ということを考えても理解はできるんですけれども,内部にいますとなかなか現実的に動かないというような気持ちもありますので,そういうダブルメジャー的なことを行っていくためにも,オレンジのような領域をしっかりと作っていかないといけませんし,それに対するいわば科研費等の活用や,文科省の後押しが頂けたら,内部でも本当に改革を促していけるというふうに感じているところです。みません,以上です。
【加治佐主査】  いかがでしょうか。
 じゃ,蛇穴委員。
【蛇穴委員】  今の松田先生のお話は,私も前々から感じていたことを図に表していただいたと考えております。つまり,理学博士を持った人間が,もう一つ,実践,あるいは臨床的な研究をする,そういう学位プログラムを経験する必要があるだろうというふうに考えておりまして,それがこの資料の赤いかぎ括弧の部分に相当していくだろうと理解いたしました。
 振り返って見ると,これまでの中教審答申にしろ,協力者会議の答申にしろ,2012年,13年の頃だったと思いますが,あのときに教職大学院を担う教員としてどういう力量が求められているのかという中で,研究者教員であろうと,実務家教員であろうと,学校現場の課題について知らなければいけないし,それをきちんとした学術的な論文にまとめるだけの力量がなければいけないんだと言われていたと思います。それだけの力量を研究者・実務家両方の教員がどこかで身につけていかなくてはならないということです。
 そうしますと,今,松田先生がお示しになられたこのポンチ絵というのは,まさにそのことを制度的に変えていこうという1つの提案だと考えております。今日は主たる論点にはなっていませんが,Ed.D.という学位取得を目指す大学院の創設という方向性とも,これは一致するものだろうというふうに感じています。
【加治佐主査】  お考えはよく分かります。具体的に,これをこのまま抽象的に出しても多分進まないんです。つまり,教員を変えなければいけない,動かさなければいけない。そうするときに,この方向に行くために,だから教職大学院の担当教員としてどういう資格要件を設けるかとか,そういうレベルにまでおりていかないと,実際には動かないということなんです。
 だから,是非この考え方を,そういう具体的な教員基準といいますか,それが先生がおっしゃる人材育成機能がないわけですから,その人材の育成目標みたいな形にもなりますね。だから,そういうものを作っていかなければいけないということになると思います。
 いかがでしょうか。関根さん。
【関根委員】  埼玉県で私が教育長のときに,埼玉県版の県学力・学習状況調査を始めましたす。これはICTを使ってパネルデータでというので,小学校4年生から中3まで,カルテのようなものでずっと,どれだけできたかというのを引き継いでいって,子供たちの伸びを見ていこうとするものです。ここで私が一番やりたかったことは何かというと,どういう授業なり,教材なり,指導法なりが,どういう子たちに,どういう効果を上げたかということが測れるので,その研究を各学校でやってほしいとです。
 つまり,こういう手法なり,こういうものが,こういう子たちに成果が出るんじゃないかという仮説を立てて,実際そういう授業をしてみて,その結果をテストで測るということです。その研究を各学校でやってほしいとお願いしたのですが,なかなか厳しい状況です。この研究をやるためには,大学の先生と協働して,この学校にこういう課題がある,そのためにどういう手法をやったらいいかという共同研究していくようなことができないかと考えました。そういうもので,いいものをエビデンス付きできちんと作って,それを積み上げていく。
 つまり,戦後70年の間の小・中学校,高校もそうですけれども,一番の欠点は,いいものが積み上がっていかないということです。全然蓄積されず,継承されていないんです。その蓄積・継承をやっていかなくちゃいけないと思っています。
 そういった面では,教職大学院の方で,このポンチ絵のどこに当たるかが私はよく理解できないのですが,そういうところを現実的にを研究として大学院の先生には論文で発表していってもらうと。
 現場ではそういうものを蓄積して,共有していかないと,現場の教育力はどんどん上がっていきません。その辺のところを,大学院でやっていただけたらありがたいなというイメージがあります。
【加治佐主査】  いかがですか。水落委員。
【水落委員】  お願いします。前回の会議でも申し上げましたし,上越教育大学の教員選考基準というのも,回収資料でしたがご覧いただきました。この会議では,実務家教員でも研究の業績が必要だ,研究者教員でも実務の業績が必要だということを,「望ましい」という表現で「目標」として示すだけではなくて,それを「しっかりとした基準にしていく必要がある」というところまできちんと報告書にまとめないと,今までずっと言われてきたことですから,変わらないんじゃないかなと思います。
 前回も申し上げましたが,松田委員がおっしゃった,このオレンジの丸のところと,例えば赤いかぎ括弧のところ,両方の業績を持った人を何年間かの移行期間を設けた上で,一定程度の割合にしていくと。また,その移行期間中は,両方持っている教員は,その1人の教員を2人にカウントするとかですね。本当は予算的なインセンティブができれば一番効果的だと思いますが,それが難しい状況も考えられますので,そのように2人にカウントするなどのインセンティブを考えていくということが必要なんだろうと思います。
 そういった基準をしっかり定める方向でいかないと,いつになっても変わらないんじゃないかなと思います。以上です。
【加治佐主査】  そうですね。
【牧野委員】  今日の3つの論点全部に関係する話なんですけれども,主査がおっしゃるように,ここでそう言っていても具体的な話にならないと,結局言いっ放しになるという,その状況だけはどうしても回避したいという気持ちがあります。そのためには,やはり先ほど申し上げたPDCAのCの部分をちゃんとチェックして,ちゃんと評価して,それをフィードバックするための,ある意味の組織が私は必要になると思うんです。
 それをどういう形で作るかどうかというのは,もちろんいろいろな議論はあると思うんですけれども,少なくとも言いっ放しにさせないで,ちゃんとチェックして,フィードバックさせるような,そういった機能を持ったものが必要なんじゃないかと。
 それは,どういうふうに作られるかというのは,もちろん,いろいろあると思うんですけれども。コミュニティ・スクールのときの議論でも,結局学校現場の中だけで学校の運営を考えていてもなかなか難しかった。そこに地域の皆さん方に入ってもらって,まさに地域の課題と密接に関係するような学校現場をどういうふうに創っていくかという議論がなされてきていると思うんです。
 今日議論されている課題をどう解決していくかということを考えると,私はそういった機能というものをどこかに求めていく必要があると思うんです。それは,既存の大学にお任せという話には,私はならないんじゃないかという気がしているんですけれども。
【加治佐主査】  そうですね。本当は教育大学・学部の職能団体が,専門団体というか,そういうものが本来的にはコアカリキュラムを作ること,あるいは,今言ったアウトカムの検証も含めて,その結果で認証していくとか,そういう機能は担うべきだと思いますが,なかなか。
【牧野委員】  難しいのは分かります。
【加治佐主査】  経験的には,公的な規制が伴わない限り,ほとんど実効性はないというふうには思います。それがいいかどうかは別にしてですね。
 どうぞ。
【松木副主査】  今ほどの外からの評価ということも含めて,あるいは,先ほど松田委員さんから提案されたことも含めて考えていったときに,例えば私どもの福井大学では,教科専門だろうが,教科教育だろうが,教職の担当者であろうが,全ての大学の教員が学校に出向いていきます。そして,そこの課題を一緒に検討し,考えていく。当然そこで,役に立つかどうかという評価を受けてしまいます。
 そういうこと考えた場合に,先ほどの松田委員さんの図でいくと,私も2つの立場が立つというのはすごく重要じゃないかなと思っています。そのときに,1つは,それぞれの学問を背景とした領域だと思いますが,もう一つは,学校の今起きていることについて,そこに立って,もう一度自分のやっている学問の系譜を考え直していくということを考えますと,松田先生がお書きいただいたもので言うと,どこに足場を置くかというと,2つ。1つは,このオレンジ色だと思いますが,もう一つは,左下のところに本来足場があるべきです。そうじゃないと,外からの批判,あるいは評価を受けていくことはできないのではないかなとも思います。
 外との関係をきちんと結ぶためには,大学の教員としては,常に2つの足場を持ちながら考えていくことが大切です。松田先生と異なるのは,もう一つを左下に置くべきではないかと思います。それでこそ初めて学校からの評価も得るし,大学人としてどうあるべきかということも見直していけるんじゃないかなというふうに思います。
【加治佐主査】  それは具体的に現場経験とか,そういうことですか。その現場に足場を置くというのは。
【松木副主査】  学校に行くということです。
【加治佐主査】  行くということですね。
 それでは,水落さん,どうぞ。
【水落委員】  大変重要なポイントだと思うんです。学校現場に行くということ,重要だと思うんです。ただ,行くだけではなくて,やっぱりそこで何かピアレビューの視点を持ったようなチェックを受けて,アウトプットできる。価値を認められるものをアウトプットできるということが,やっぱり大学の教員としてはすごく重要だと思うんです。
 前回申し上げましたけれども,実務家教員は現場経験,おおむね20年以上という経験が1つの基準になっていますけれども,20年行っているということが15年の院生を指導する基準にならないように。研究者教員が,1年現場に行ったら,現場に行ったことになるかというと,これもやっぱりナンセンスだと思うんです。
 1年だろうが,半年だろうが,きちんと学校現場に役に立つと認められた業績を持つかどうか,何か実証的にそういうチェックを受けるということが必要だろうと思います。
【加治佐主査】  そうですね。いかがでしょか。
 北山さんからお願いします。
【北山委員】  私も,基本的にこれまで皆様がおっしゃったことと同じような考えでおります。総合的に,これから教育大学,教育学部の改革を進める上で,教職大学院のありようというのが一番のキーになるし,最も即効性があるのではないかなと思っています。そのためには,従来の研究科の修士課程と教職大学をどのように一体化させるか,そして一体化した上で,教職大学院の本来の趣旨を維持するということが重要だと思います。そのために,教科教育の領域をどのように教職大学院に取り込むかということが,ここの論点でも出ているわけですが。
 教職大学院における教科教育というのは,実践的な教科指導を基盤とするものでなければいけませんし,さらに,そこで行われる研究や教育,あるいは研修は教科横断的なものでなければいけないと思いますので,どういう形で教科教育の要素を取り込むかということを早く方針を示して,実現した方がいいのではないかと思います。
 これまでの教職大学院は,当初には教員養成学部や教育学研究科修士課程と機能・性格を分けて存在してきたわけですが,これからは教員の養成と研修を一体化して,大学と附属学校と地域を結ぶ学校教育研究のハブとしての機能をさらに強化していくべきだと思います。
【蛇穴委員】  先ほどの,松木先生の軸足の話とちょっと絡めてお話させていただきます。教科を担当する教員養成系の大学教員は,2015年度の資料で54%でした。つまり,半分以上は教科を専門とする教員なわけで,そのほとんどが専門学部から来ています。そうだとすれば,松田先生のこの図でいうと,先ほど松木先生がおっしゃられたように,教科に関する右上のところに大きく軸足を置いてこれまでやってきたものが,左下の学校現場のところにも軸足を置かなければいけないという話だと思います。
 それを制度化するためにも,つまり,FDでこれをやっていても限界があるということが我々自身分かったわけですから,これをきちんとやっていくためにEd.D.という学位を国際性のある学位として議論し,制度として作り上げていくことが必要なんだと考えます。それによって,Ph.D.の学位とEd.D.の学位の両方を持つ教員が出てくることで,研究と実践という2つの分野に軸足をきちんと置いてやっていくことができるようになるのだろうと思っています。
 教科担当でない先生方も当然おられるわけで,その先生方はその先生なりの専門性の領域があるでしょうから,必ずしも2つの学位という意味ではないですけれども,教科が専門の先生方は学位としては2つあってもいいんじゃないかと,そういうふうに考えています。
【加治佐主査】  いかがでしょうか。このダブルカウントの問題,いかがですか。この2点目の論点ですね。だから,現在も専門職大学の中で教職大学院だけが特例で,兼務が認められていることが延長されているんですね。いつまでですかね。
【柳澤教員養成企画室長】  30年度まででございます。
【加治佐主査】  30年度までですね。ということで,もう次を考えなければいけないというところに来ているわけですね。内部的には,人材コストからいっても,当然これ認めてくれということになるんだけれども,専門職大学院そのものの性格として,結局,教職大学院だけがそういうことが制度として認められるかどうかということになるわけですね。
 だから,それなりの論理がないと,多分一般的には通用しないと思うんです。そういう意図があって,ここに出されたということだと思います。いかがでしょうか。
【松木副主査】  是非とも実現していただきたいなというふうに思っています。教員養成学部自体が職業教育を念頭に置いた,ある意味では専門職養成の機関であるわけじゃないかなと思うんですね。そういう意味でいくと,だんだん少子化が進んでいく中で,教育学部を小さくしていかなければいけない段階で,2つの養成機関を持つだけの能力は大学にはないような気がします。学部段階の養成と,それから大学院段階での養成。むしろ,それらが一体とした形の方がより効率がいいですし,生涯にわたっての職能成長を支えていくことになるんじゃないかなと思うんです。
 そういったことを考えると,学部と教職大学院,この2つに関しては是非とも兼ねて,むしろ一体化して進められていくような方向が,より専門職大学院として必要じゃないかなというような気がしています。
 修士課程との兼務,これはまた別問題だというふうには考えています。むしろ,学部との兼務,あるいは今後出てくるのであるならば,Ed.D.との兼務,こういったことについては,是非とも認めていただける方向を考えていただければなと思っています。
【加治佐主査】  いかがですか。これから,教職大学院が拡充されていきます。博士課程も増えると思います。博士課程とのダブルカウントは,今もそうだし,これからも問題はありません。
 問題は学部になってきます。学部は,恐らく修士レベル化の中での教職大学院の拡充ということになると,これまでも出ていますように,学部というものが教職大学院との連動・連結というのをかなり意識することになると思います。やはり,そのカリキュラムや人材育成の目標なりを,かなりの程度,学部と教職大学院が兼ね合わせるような形にしないといけなくなると思うんです。
 そうすると,その担当する教員も,やっぱり両方が担当できなければいけないということは必然的なものとしてあると思います。そういうことからも,今,松木先生が言われたことは,私もそのとおりだなと思います。
 それでは,あと5分ほど時間がありますが,この3点でもよろしいし,あるいは,ほかの点についても何か御発言等ございませんか。
 どうぞ,渡邊さん。
【渡邊委員】  先ほど話題になったPDCAについてです。教職課程の評価が国際的にも行われていますが,それらは,教職課程のアウトカムを評価する方向になっています。
 OECDが2005年にまとめたティーチャーズ・マター(教員の重要性)という報告書でも,インプット(構造),プロセス,アウトプット,アウトカムのどこを評価するかということに関しては,インプット(構造)などは多様で良いので,アウトプットやアウトカムに重点を置くべきと書かれています。
 ですので,ここで提言するものをチェックするようなものと,教職課程の評価とは,種類が違う評価だと考えています。採用基準を設けるというようなことは,まさに大学として教える人たちを誰が選ぶかというデリケートな問題と関わってきますが,ここで提言する内容は,国立大学としての教員養成系大学・学部として求められる内容だと思いますので,むしろ今行われている国立大学の法人評価というものの系譜の中に位置づけて,チェックしていく方が適切ではないかと考えます。
【加治佐主査】  じゃあ,山崎先生から。
【山崎委員】  1件だけお願いします。昨今,この21世紀に入りましてから,義務教育教員養成機関が非常に多様化しております。特に小学校教員養成では,私立大学等の課程認定校が相次いでおりまして,量的にもたくさんの新人教員を供給するようになっております。しかし,我が国の小学校は全教科の指導ができる教員を必要としております。各教員は,理数科も含めて全教科を満遍なく十分に指導することが期待されています。国立の教員養成学部は――前からそうなんですけれども,全教科が指導可能な教員を養成していることが,大きな特徴であります。今後もこれがしっかり維持されて,我が国の義務教育の質の向上に大きな役割を果たしていく重要であります。
 将来,教員採用が悪くなりますと,教員就職率が低くなることが予想されますが,しかし,それは国立教員養成学部の教育が悪いからではありません。国立教員養成学部が,新人教員の養成,教育委員会と連携した教員の研修や社会貢献など,各地域の学校教育と教育行政に果たしている役割の大きさをもっとアピールしながら,今後も我が国の義務教育の中核を果たす役割を堅持していかなければならないことを,最後に申し上げて終わります。
【加治佐主査】  もちろんですね。
【松木副主査】  教職大学院のことですが,理論と実践の往還ということを理念として掲げ,そして学校における実習の10単位を含めた教育課程,実務家教員が4割以上の教員構成としたことは,大きな改革の契機になったと思っています。ただし,今の教職大学院がそれでいいとはとても思えないです。教育の課程,カリキュラムのことを見ると,まだ旧来の学問の在り方を背負った形でのカリキュラムの状態からきれいに抜け切れているわけではないような気がします。
 職業人の養成ということを含めて,もう一度,現行の教職大学院の在り方についても,同時に批判的に見直していくということが起きなければ,これ以上のまた教職大学院の展開ということは支え切れないんじゃないかというような気もしています。
 同時に,現行の教職大学院を見直していくということも,是非とも盛り込んでいただきたいと思います。
【加治佐主査】  はい。どうぞ。
【関根委員】  教員の養成であれば,きちんと,これだけの力を付けたという証明ができるような仕組みを,国立大学が主導で作っていただけないかという願いが私にはあります。教員免許状がほとんど意味をなさないでずっと来ましたから。都道府県が採用試験をやることで,何とかその質の担保を,質を見ていくという構造でやってきました。これは,非常に大きな問題だと私は思っています。各都道府県がかなり工夫してやってきていますけれども,大学が養成しているんですから,きちんとここまでの能力を付けましたという証明をできるような仕組み,これを国立大学が主導して作っていくということが,私は必要なんじゃないかなと思います。
 行く行くは国家試験化みたいな形にしていく,そういうものの先導を国立大学,教員養成大学がやるべきじゃないかなと考えています。
 教職大学院に関していえば,現場の教育力を上げるということがやっぱり一番の大事なところなので,その現場の教育力を上げることに対しての個々の積み上げをやっていただきたい。その仕組みも教職院大学がきちんと作って,現場の質を上げることを直接やれるから教職大学院は価値があるんですよとしていかないと思います。ただ優秀な人材を養成しましたと言っても,現実,現場の教育力が上がっていなければ,費用を掛けた効果にならないと思うんです。
 ですから,教職大学院というのは,基本的には,各地域の公立の学校の教育力が上がったということが教職大学院の評価になるような仕組み,この辺も国立大学を中心として作っていっていただけたら,ありがたいなと思います。
 教員の質の担保,それから教育の質の担保という部分を,国立の教員養成大学が率先して作っていくという姿勢を,私は有識者会議では出していくべきじゃないかなと思います。
【加治佐主査】  どうもありがとうございました。そういうことも,また考慮していきたいというふうに思います。
 それでは,もう時間になりましたので,本日のこの3点についての議論はここまでといたしたいと思います。本当に活発な御意見,ありがとうございました。頂いた御意見は,事務局においてまた整理させていただきます。
 8月に報告書まとめを出す予定ということを最初から申し上げているわけですけれども,だんだんその時期が近づいてまいりました。それで,次回なんですが,事務局において,これまでの御意見及び本日の御意見等を踏まえまして,議論のまとめの案を作っていただくということにしたいと思います。
 その際には,この会議で出た御意見をまとめるだけではなくて,最終的に実効性のある報告書にすることを念頭に,法令的な観点や過去の施策や答申等との整合性などの観点から内容を精査していただきたいと思います。そして,全体の構成についても,ストーリー性を持たせた文章にしていきたいということであります。
 できれば,次回にはそういったようなものの原案みたいなものが示されれば,示したいということであります。
 そこで,この作業には一定の時間が掛かります。連休もありますので,5月は開催せずに,次回は6月にいたしたいと思います。当初は5月も開催する予定でしたが,6月に延ばすということです。詳細については,今後,事務局と相談の上,委員の皆様にお知らせしたいということであります。
 それでは,最後に,今後のスケジュールについて,事務局からお願いいたします。
【柳澤教員養成企画室長】  今日の資料の6にございます,今後のスケジュールにありますように,次回は6月19日,月曜日の午前10時からを予定しております。詳細につきましては,また追って御連絡申し上げます。以上です。
【加治佐主査】  それでは,どうもありがとうございました。これで終了いたします。


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