資料1 第5回までの意見をベースとした主な課題と対応策案


<大きな方向性>

1.「協議会」を通じた地域との連携
 国立教員養成大学・学部は、新たに法定化された「協議会」等を通じ、地域のニーズを踏まえた教員養成をより強化するとともに、特に教職大学院では、教育委員会と連携して現職教員の研修機能を高める。
併せて、附属学校について、地域のニーズに対応した教員養成・研修の拠点としての機能を高めるとともに、大学によるガバナンス体制を強化する。

2.修士課程からの移行と教職大学院の教育内容の質の向上
国立教員養成大学・学部の修士課程から教職大学院への移行を引き続き確実に進める。併せて、従来の教職大学院がスクールリーダーなど幅広く指導性を発揮できる教員の養成に重点を置いてきたために、教科領域の内容の教育が不十分であったことから、全国化がほぼ実現した教職大学院の教育内容の質を高めるために、従来の教育内容に加えて、実践につながる教科領域の導入を積極的に進める。その際、実践とのつながりが弱かった修士課程からの安易な移行を確実に防ぐ仕組みを導入するとともに、博士課程へのスムーズな接続を進めつつ、将来的には実践重視のEd.D.(教職博士)の学位の新設を視野に入れる。

3.教員需要等に応じた規模や体制
教員需要の継続的な減少が確実な中、国立教員養成大学・学部の入学定員は全体的に減らさざるを得ない。地域の教員需要を踏まえつつ、各大学で定員削減を決断すべき時期に来ている。定員削減の結果、小規模となる教員養成学部が生じることから、従来の全教科の教員の養成・研修の仕組みを改め、近隣の大学との協力の下に、一部の教科の教員養成機能の集約・分担や、学部の教員養成機能全体の集約・分担、更には再編・統合も視野に入れた検討を進める。


 この他、詳細な課題や対応策等は以下のとおり。

●:主に国立教員養成大学・学部関係、○:主に教員養成に関わる大学全般関係

1.国立教員養成大学・学部全体の在り方
【主な課題】
○学習指導要領の改訂への対応
●社会環境の変化への対応(産業構造、私学の参入による供給源の多元化等)
●教員就職率の低下傾向(59%、進学者・保育士就職者を除くと67%)
●教員養成大学・学部としての学問分野の欠如
○大学全体の組織的な教員養成の取組の不足
○優秀な学生が教員を目指す仕掛けや教職の魅力の不足
【対応策案】
<中長期的>
●教員の養成から現職教員の教育・研修への重点化(教職生活全体を通じた職能成長の支援の拠点化)
●教科専門と教科教育の融合の視点からの教員養成全体の在り方の再構築
●教職大学院の拡充・振興を中心とした教員養成大学・学部づくり
<短期的>
●教員養成大学・学部が学問の場とともに職業教育の場であることを報告書で明示
●高校生を対象とした大学の授業体験の実施や面接試験の改善等を通じた、入学時点で熱意のある学生を入学させる仕組みの導入

2.カリキュラムの在り方
【主な課題】
○学習指導要領の改訂への対応
○「次世代の学校」(チーム学校等)を実現する上で必要な他者との協力による学校運営に関するカリキュラムの不足
○教師が実際に直面する多様な課題に対応できる力の養成
【対応策案】
 <中長期的>
○地域の多様な主体とのつながりや幅広さを備えた教員の養成
○実践力に重点を置いたカリキュラムへの移行
●「校長及び教員としての資質の向上に関する指標」を踏まえたカリキュラムの改善や「協議会」への参画を通じた地域のニーズを汲んだカリキュラムへの不断の改善
 <短期的>
●教育実習や学校インターンシップ等において、実際の教育現場で直面する教育課題を解決する活動、コミュニティ・スクール等の仕組みを生かした地域との連携・協働による活動等を全学年で体験させる内容への改善
○新たな教育課題等に対応できる力を養成するための各教科科目に関するコアカリキュラムの開発

3.質の保証、評価の在り方
【主な課題】
○教員養成教育の内部質保証の不徹底
【対応策案】
 <中長期的>
○学部の教員養成教育を評価する「教員養成教育認定評価」の成果を活用した内部質保証の仕組みの改善
 <短期的>
●学生アンケート、卒業生・校長・教育委員会に対するアンケート、卒業生(現職教員)に対する継続的な調査等を通じた教育成果の自己評価・検証
●学生が教育実習を開始する前に知識の定着状況等をチェックするシステムの開発・導入

4.教科専門と教科教育の在り方
【主な課題】
●長年にわたる教科専門と教科教育の分離
【対応策案】
<中長期的>
●教科専門と教科教育の融合、架橋領域の開発
●教員養成独自の研究領域の開発
●理論と実践を一体化した学問領域や学会の発展
●免許法施行規則改正を機に、国立教員養成大学・学部が教科専門と教科教育について臨床的な手法や教科横断的な教科の指導法等を含むことの必須化の検討
<短期的>
●研究者教員が必ず現場経験を積む仕組みづくり等を通じた、教科専門と教科教育の複眼性を持つ大学教員の増
●現場経験の不足している教科専門の教員は教科教育の教員とティーム・ティーチングで授業を行う仕組みの構築
●教科専門を教科教育の観点から学ぶ「実践重視の学部―教職大学院―博士課程」の一体性強化のための専任教員の兼担の強化
●教科教育的な実践活動を大学教員の業績として評価する仕組みの構築
●国立教員養成大学・学部による教育職員免許法施行規則改正を生かした教科専門と教科教育の融合科目の設置にインセンティブが働く仕掛けの検討

5.大学教員の在り方
【主な課題】
●教科専門教員の教員養成に対する意識不足
●教科専門と教科教育の教員の協働の不足
●基礎研究の成果に基づく臨床的研究の不足
●大学教員の評価が学術論文のみに基づく現状の改善
●大学教員として採用後の育成機能の不足
【対応策案】
 <中長期的>
●実践探求の場と学問探求の場の両方に軸足を置く大学教員の増
 <短期的>
●大学教員の採用に当たり、教職経験者や海外の大学でEd.D.(教職博士)を取得した者など実践力ある者を優先することの促進
●大学教員に対し、学校現場での一定期間の研修や学校現場との共同研究の実施を義務付ける等、FDの充実
●設置審査等において大学教員の実践的な活動や研究の実績を評価する仕組みの導入
●公立学校の教員が大学教員として教える、大学教員が県の研修センターで授業支援を行う等、大学と県教委との恒久的な人事交流の仕組みづくり

6.外部との連携
【主な課題】
●教育委員会との連携の不足
●公立学校等、学校現場との連携の不足
●養成カリキュラムと現場が求める教員の資質能力のギャップ
【対応策案】
<短期的>
●「校長及び教員としての資質の向上に関する指標」や「教員研修計画」に沿った研修の共同実施、研修成果の教職大学院における単位化、大学教員と教育委員会職員との恒久的な人事交流等、教育委員会との実質的な連携の具現化
●学部の授業を公立学校等の学校現場において実施することによる実践性の導入と現場への成果の還元

7.教職大学院の在り方
【主な課題】
○全国化する教職大学院の今後の役割の提示
○教職生活全体を見据えた教員の資質向上
○より多くの教員が教職大学院で学びやすい仕組みづくり
○教科領域の内容を深く学ぶニーズへの対応
【対応策案】
<中長期的>
●質を確保しつつ修士課程からの確実な移行
●学部と教職大学院の一体化や、飛び級を活用した5年制化の検討
○現職教員の教育・研修の強化(学校現場と大学での学びの往還の普遍化等)
<短期的>
○教職大学院の教育内容の質向上のための教科領域分野(コース)の導入
○幅広い指導力と教科領域の専門性の両立を確実に担保するカリキュラム
○大学の専任教員の教職大学院と学部との兼担の強化
○多様な人材を活用するための実務家教員の採用基準の多様化
○教育委員会の教員研修を教職大学院が担い単位化する仕組みの促進
○実践性確保のための学校現場で勤務しながら1年間で修了できる仕組みの普及
○教育委員会と連携した教職大学院入学者の教員採用試験における特例の拡充(採用候補者名簿の登載期間の延長、一部試験の免除、特別選考の実施等)
○「協議会」を活用した教職大学院修了者の優先的な採用・昇進の検討
●実践とのつながりが弱かった修士課程からの安易な移行を防ぐため、教職大学院の教員に求められる能力・経験等の基準の明確化
●教職大学院の教員となる者に対し、一定期間の学校現場での実務経験の必須化
●学生アンケート、修了生・校長・教育委員会に対するアンケート、修了生(現職教員)に対する継続的な調査等を通じた教育成果の自己評価・検証

8.Ed.D.(教職博士)の検討
【主な課題】
○教職大学院につながる教員養成の専門学位としての博士学位の欠如
【対応策案】
 <中長期的>
○Ph.D.を持つ者が臨床的な研究を行ってEd.D.を取得し、二つの博士学位を持つ者が大学での教員養成を担う流れへの移行の検討
○博士レベルの授業法、学生指導法、フィールドワーク等の具体的なカリキュラム、Ph.D.との違い、学位規則上、従来の「博士(教育学)」の枠内で実施すべきか新たな学位「教職博士」を新設すべきか等の検討

9.附属学校の在り方
【主な課題】
●地域の公教育のモデル校としての役割の発揮
●大学や教職大学院と附属学校との協働
●大学による責任ある管理体制の構築
●柔軟性や社会性を欠く組織の改善
【対応策案】
 <中長期的>
●教育実習学校から教員研修学校への重点のシフト
●附属学校での勤務へのインセンティブ付与
●教職大学院の教育研究や実習の場としての役割拡大
●脳科学やAIなど大学の科学的知見を、今後の教育指導や支援に応用するための教育研究の実施
 <短期的>
●教育委員会の声を附属学校の運営に反映できる協議会等の場の設定
●幼稚園・高校等も含めて、公立学校や他県の附属学校との人事交流の拡大
●校園長への公立学校教員の登用
●大学に附属学校を統括する組織を置くなどガバナンスの強化
●附属学校教員が教職大学院に入学しスキルアップしやすい仕組みや、附属学校教員が大学教授・准教授として学生を指導する仕組みの導入
●附属学校の実践を恒常的に教職大学院の教材として取り入れること
●公立学校におけるコミュニティ・スクールも参考にしながら、地域住民や保護者等の参画を得る仕組みの導入
●子供の貧困等、従来の附属学校では取組が弱かった教育課題を対象とした研究の率先実施
●附属学校での勤務を県の研修の一部として認める等、県教委と連携したインセンティブを高める仕組みの導入

10.組織・体制の在り方
【主な課題】
●教員就職率の低下傾向と教員採用の今後の継続的減少の下での大学・学部の在り方
●少子化の下での附属学校の在り方
【対応策案】
 <中長期的>
●地域の教員需要の見通しや公私立大学の教員採用実績等を勘案しつつ、地域のニーズに合った組織や役割への見直し
●総合大学の教職センター等の活用による、専門の教員が各学部に分属しながら教員養成に関われる仕組みの検討
●国立教員養成大学・学部の集約・分担や、再編・統合も視野に入れた検討
●一つ一つの附属学校の存在意義や地域への貢献度の検証
●附属学校の公立学校化も含めた在り方の検討
 <短期的>
●教員就職率に見合う国立教員養成大学・学部の定員規模の削減
●全教科フルセットの養成・研修から、一定の規模と多様性の中で学ぶための一部の教科の養成機能の集約・分担など、各大学の得意分野や強み等を生かした養成・研修の導入


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-- 登録:平成29年03月 --