障害のある学生の修学支援に関する検討会(平成28年度)(第2回) 議事録

1.日時

平成28年5月18日(水曜日)14時~17時

2.場所

文部科学省5F3会議室

3.議題

  1. 本検討会での論点等について
  2. 関係者へのヒアリング等
  3. その他

4.議事録

【小代課長補佐】資料1-1、1-2に基づきまして御説明させていただきます。資料1-1は、前回の御議論を踏まえて、座長に御相談し、論点整理を更新したものです。委員の皆様方にも御照会し、頂戴した御意見も踏まえています。資料1-2は、第1回の資料そのままです。1回目の資料を見え消しで御提示をするのが、本当は修正点がわかりやすいとは思いますが、そうしますと、全部修正するような形になりまして、逆にどこを修正したかわからなくなってしまうということが起こりますので、これは並べて横で見ていただきながら、適宜御利用いただければと思っています。
それでは、資料1-1につきまして簡単に御説明したいと思います。まず、検討会の目的です。ここは変更等ございません。続きまして2番目、検討の対象範囲です。この後にもございますが、どの委員から頂いた御意見を基に修正したか、委員のお名前を載せておりますので、併せて御確認を頂ければと思います。
検討の対象範囲ですが、総論の部分に、第1次まとめでは十分に議論できなかった「教育とは直接に関係しない学生の活動や生活面への配慮」についても検討の対象とするということを明示しております。検討対象とする学生の範囲ですが、言葉の定義を追加記載して、対象をより明確化しております。学生の活動の範囲につきまして、進学あるいは就職等、移行に関するものも検討事項となっておりますので、障害者政策委員会での御意見等を踏まえて、「入学」から「卒業に加え」といったところを追加しています。「上記とは直接に関係しない学生の活動や生活面への配慮」、これは先ほどの総論の部分に対応するものとして、追加しています。「学生に関係する保護者や、介助者」に対しても配慮に関する事項を検討すべきという御意見もございましたので、これを追加しています。このページの最後の、なお書きのところ、当然、この検討会で検討の対象となっていない障害者についても、大学がそれは支援をしなくていいという誤解がないようにという御意見が前回ございましたので、このことについても留意するようにということで、追加しています。
それから、次のページです。検討事項の整理です。最初に、障害者政策委員会との関係について御意見いただきましたので、そのことについて留意することということ、地方公共団体における条例の策定作業、こういったものについての留意といったことも必要ではないかという御意見が追加でございまして、こちらを追記しています。一次まとめのさらなる課題は前回と同様です。2.の国立大学における国等職員対応要領のところ、ここに前回、公立大学も含めていた形でしたが、公立大学における地方公共団体等職員対応要領を明示する形で修正しています。
それから、3.のところ、重点検討事項についてです。(3)初等中等教育段階から大学への移行・進学に関するもの、それから(4)大学等から就労への移行・就職に関する考え方ということで、2つの移行ということで、進学、就職というところを含め、ここを明示することで記載を修正しています。(5)具体的な取り組みを促進する方策の中に、専門人材の養成・配置を支援するような方策といったことの御意見がございましたので、追記しています。(6)障害者差別解消法の施行を踏まえた合理的配慮に関する考え方で、そこには不当な差別的取り扱いについても加えた方がいいのではないかという御意見がございまして、これを入れております。(6)の中身のところですが、2)番のところに、合理的配慮の合意形成プロセスに加えて、決定後のフォローアップに関する考え方等につきまして加えてはどうかという御意見がございましたので、追記しています。4)番です。合理的配慮と、それとは異なる考え方に基づく配慮・支援との違いについての考え方という表現がいいのではないかということで、御意見を頂きました。最後、5)番、これは(6)のところにもございましたが、不当な差別的取り扱いに関する考え方についてです。これが資料1-1ということで、論点整理の方針まで含め、御議論を頂ければと思います。
なお、資料1-3ですが、これは先ほど、資料1-1の中の3 検討事項の整理のところに障害者政策委員会、基本計画との関係等についての記載を追加しました。これは前回、委員から御発言がございましたので、障害者基本法等につきまして載せて、障害者政策委員会がどういう位置づけにあるかということ、それから、その構成委員と、それから三次の障害者基本計画の実施状況について今どういうふうにまとめられているかということで、その具体的な関係を見る上での参考の資料としていただければということで、資料をつけています。

【竹田座長】ただいまの御説明について御意見、御質問、ございませんでしょうか。

【白澤委員】大変細かいところで恐縮ですが、資料1-1の3.重点検討事項の(6)1)に、「基礎的環境整備」という用語がありますが、この言葉は、初等中等教育局が出された、インクルーシブ教育に関係する委員会で最初に出された言葉だと思います。今回、資料に掲載されている言葉は、意味的には、内閣府が出している「環境の整備」という意味で使っていらっしゃるのだと思いますが、初中局の「基礎的環境整備」の定義というのは、国や地方公共団体が実施することを基礎的環境整備、個々の学校が実施することを合理的配慮という整理だったかと思うので、少し誤解を招くのではないでしょうか。掲載するのであれば、「環境の整備」あるいは「事前的改善措置」といったような、基本方針の中で使われている言葉を使用した方がいいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

【殿岡委員】その点に関しては、これは中教審の答申ですが、それをどう考えていくのか。解消法的に言うと、閣議決定された基本法の中では、多数の合理的配慮が繰り返される場合において、これを基礎的環境整備として事前的に行うという定義があって、恐らくこちらは閣議決定文書ですから、もし使うのであれば、そちらの定義に従うべきです。そうでなければ、白澤先生が言うとおり、用語を変えた方が望ましいと思います。

【竹田座長】そうですね。用語の問題ですので、誤解のないように。

【井上課長】変えましょう。もう少し具体的にわかるように事務局で検討させていただきます。

【竹田座長】そのほかいかがでしょうか。よろしいでしょうか。そうしましたら、委員の先生方にも事前にいろいろお伺いした上での今回の修正案ですので、かなり前回の原案に比べてすごくいろんな点、重点項目がわかりやすくなったと思います。この論点整理、資料1-1は、今の文言の実際の修正を含めて、原案のとおり決定するということでよろしいでしょうか。ありがとうございます。では、そのように進めさせていただきたいと思います。
それでは、次に進めさせていただきたいと思います。次の議事、関係者へのヒアリング等に入らせていただきます。論点整理に基づきまして、教育方法に関する考え方に関連しまして、本日は宮城教育大学の松﨑先生から御説明を頂くこととしております。松﨑先生、どうぞよろしくお願いいたします。

【松﨑准教授】皆様、こんにちは。今御紹介いただきました宮城教育大学の松﨑と申します。
まず私の聴覚障害について御説明しますが、生まれつき聞こえませんので、補聴器を装用しても音声でのコミュニケーションは難しいです。筆談又は手話でコミュニケーションをしています。また、私は小学校から高校までは地域の学校に通いましたが、情報保障が全くないまま自己努力で勉強してまいりました。また、大学に入ってからは、障害学生支援の体制をつくるために、学生の立場で学生情報保障団体や地域支援センターの設立など様々な活動をし、今に至っています。
本日は教育方法ということでテーマを頂戴しましたが、聴覚障害当事者としての経験、それから、教員として聴覚障害学生支援に関わる経験から教育方法に関わる事例紹介と併せて、皆様に御提案というかお話をさせていただきます。
資料2をごらんください。聴覚障害に関して様々起こる事例について一つ一つ書いてございますので、御説明させていただきます。
まず、情報保障・コミュニケーション上の配慮ということで、事例の1授業における障害学生の発言に対する教員の対応で、例としまして、学生が音読したり発表する授業で、障害学生が発言する順番を飛ばされるという事例がございます。私が学校に通っていたときから繰り返して起こっている問題です。教職員の中には、配慮をしようと思っても、その中にはきちんと本人と話をせずに、そのまま支援をしてしまうという例があります。善意による差別ということもでき、こちらもそういった例かと思います。合理的配慮というのは、きちんと当事者との間で対話して合意形成しているかどうかということをきちんと周知させる必要があるかと思います。
また、もう1つは、障害学生本人がこういった問題に対して意思表明が難しいということがあります。なぜかと申しますと、障害学生も小さなころからなかなか支援を受けられずに育ってきて、そのために、そうした問題に対して自分から改善や配慮をしてほしいということをはっきりと伝えることができないという状況があります。障害学生支援室に相談はできても、教員には自分から直接説明をするということができないということがあります。そう考えたときに、意思表明する前の段階でもっと自分の意思や自分の置かれている状況を自分自身で確認していくといった手引き、導きのような教育支援が必要ではないかと思います。
続きまして、事例2に入ります。学生の支援者の恒常的な人材不足。例としまして、障害学生が希望する全授業科目の情報保障が困難。学生支援者の教育実習等のため、大学内の情報保障活動に欠員が生じる。
聴覚障害の場合は、やはり講義に手話通訳やノートテイクなどの人的支援が必要となります。でも、希望の講義に対して100%それをつけるというのが難しい状況もあります。そういった問題に対して、学内の人的資源だけで十分な対応は厳しいと思います。このあたりをどうするかということを考えなければならないと思います。例えば、大学間で連携して相補的な支援体制を構築して遠隔情報保障を行う。また、手話通訳やノートテイカーのような支援者以外に、教職員も自分で例えばUDトークのように音声認識のソフトを使ってコミュニケーション保障をするようなアプローチも、考える必要があるのではないかと思います。
次のスライドです。事例3、授業、課外授業、学校行事への参加等における集団コミュニケーション。例、学生同士のグループ活動やゼミ等における集団コミュニケーションへの参加の工夫に限界がある。
以前と比べまして、アクティブ・ラーニングのように、学生が主体的に参加してディスカッションをするような場面がふえてきたかと思います。そういった場合に教員から、聞こえない学生がグループの中にいるので、ゆっくり話すだとか筆談をするような配慮をお願いしますということを、学生に対して指示ができればいいのですが、やはりグループの中のコミュニケーションで、意見が盛り上がってくると、なかなかそういった配慮がなされずに置いていかれてしまって、そのまま進行されるということがあります。参加するための方法や工夫だけでは限界があると思います。
また、家族や学校等での聴者との集団コミュニケーションの、突然で非合理的な阻害体験の蓄積により、自ら要請することを躊躇(ちゅうちょ)する。阻害体験による建設的対話の体験不足から、誤解やトラブルが生じ、登校拒否、精神疾患に至るケースもある。
障害学生本人は、今まで小さなときから聞こえないために集団コミュニケーションに参加ができていなかったので、それで仕方がないとあきらめて、我慢をしてしまう。1対1の会話と集団でのコミュニケーションというのは全く違うものだと思います。1対1であればそれぞれ協力ができるものであっても、集団では、それぞれの発言の中から今の論点が何なのかをつかんでいくだとか、みんなにわかるように説明をしていく、自分の考えを考える、そういった参加の仕方が求められてくると思います。しかし障害学生本人は、そうした集団コミュニケーションの参加の仕方を身につける機会が限られているのです。それに突然、理由もなくそれを阻害されてしまう。いつもその集団コミュニケーションから阻害されてしまうために、心も傷ついて、そういった心的経験が積み重なっていく。
そのように参加の仕方や心理的な面で課題が大きくあったまま大学に入学するという経緯が多いのではないかと思います。そう考えますと、コミュニケーションをどうしたらいいのか、情報保障をどうしたらいいのかといった合理的配慮を検討するだけでは限界があるのではないかと思います。参加の仕方や心理的な面を整理して、どのように集団コミュニケーションに参加するのか、その中でどのように意思表明をしていくのかといった教育的な視点での支援がもっと必要ではないかと思います。
先ほどの事例に補足になりますけれども、障害学生本人がそこをうまく整理できなかったために、聴こえる学生に誤解、齟齬(そご)が起きて、そのために聞こえる学生と関わるのが怖いと思ってしまい、対人不安障害などで家に引きこもりがちになってしまうという、精神疾患のような形になってしまう例も実際にありました。
ただ、障害者本人にとっては、自分で考えて必要な情報保障を要望できても、今までのコミュニケーションの経験不足から生じる参加の仕方や心理的な問題は障害学生支援の範囲に入るのかどうかを考えると、それは入らないと思って個人で努力をしようとすることが多いと思います。ですので、支援室ではなく私のところに来て、実は…と相談しに来る学生もいます。そこで初めてそういった状況が起きているということがわかります。障害学生支援の範囲は何なのかといったときに、学生本人は、自然にそれらを分けてしまっているところもあるのかなと思います。そうではなくて、コミュニケーションや対人関係で伴う心理的な問題や参加の仕方などを含めて支援をしますよということがわかるような支援の在り方が求められているのではないかと感じております。
また、自分が参加するためにどうしたらいいのかということを自分で研究してみる経験も、学生に必要かと思います。当事者研究というものがありますけれども、自分が参加できないことについて、この問題を分析したり整理したりして、自分に合った方法でどうしたらいいのかを一緒に考えて実践し、それを検証することの支援も必要かと思います。
次のスライドです。学外における実習や資格取得としまして、事例で、教育実習。中学校における英語科の授業担当者は、今はスピーキングとリスニングを重視した授業を進めなければならず、障害のある実習生であっても、障害のない実習生と同等の条件での評価が必要。つまり、授業内できちんとした発音と生徒の発音の聞き取りができることであり、それができないと授業はできない、聴覚支援学校に変えてはどうかとの意見も言われた。教育実習校で英語担当教員と本学担当者が協議し、聴覚障害学生の英語スキルを両者間で把握の上、授業を進めるために、必要な機器や教材を使って授業をすることにし、スピーキングやリスニングができないことを理由にした評価を行わないことにした。実際には、授業立案や内容構成が不十分という指導がなされた。
この事例の学生本人は卒業後に英語の教員になりたいと思っていました。この経験から、トラウマというか、非常にショックを受けまして、英語の教員になるのをあきらめました。そして、他の仕事についています。とても残念な例です。英語教育でスピーキングとリスニングが推奨されているために、聴覚障害学生の合理的配慮の提供がなされにくい、本来の教員免許制度も踏まえた指針の記載が必要ではと書かせていただきました。今回頂いた教育方法というテーマをちょっと超えてしまうかもしれないのですけれども、実際こういった課題もあることを御理解いただきたいと思います。
聴覚障害学生本人にとって資格取得というのが、やはり自分の夢をかなえるために勉強するものであって、そのときに実習というのは、自分が障害当事者としてその仕事ができるのか、合っているのかという意味で、試される場だと思います。自分を試される場としての実習があって、きちんと自分が仕事をしていくための方法を確認するときに、こういった事例のような問題点が起きないように本来の免許法制度に則(のっと)りながらもどのような方法で実践できるのかを整理する必要があるかと思います。
次です。中高英語免許取得予定の聴覚障害学生は、英語科のクラス分けで、英語の成績ではなく、障害を理由に自分の能力よりも能力的に低いクラスに配属される。聴覚障害学生が担当教員に改善を求めるが、早期に解決できず、障害学生支援担当教員は学生本人からの相談を受けて、授業担当教員に連絡して改善。
これも先ほどの事例と似ておりますけれども、教員は善意による対応と思い、学生と合意をとらないまま進めてしまったという事例です。やはり合理的配慮と善意の一方的な配慮というのは、切り分けていく必要があると思います。そこをきちんと周知させていかないと、このように混乱した事例が多分出てくるのではないかと思います。
次の事例です。病弱学生が教育実習に不安を抱えていたが、逆に病弱ということで病気とは何かという物事の見方を実習校の教職員や生徒に伝えられることが強みになるのではという助言で、自らの身体や生活等を振り返って整理し、配慮文書を作成した。病気の基本的な状況、外的環境に起因する症状、行動に起因する症状、症状が起きたとき、体調が悪くなったときの対処方法、症状を起こさないために必要な予防行動、許可していただきたいことなど、詳細につくられていた。
これについて少し背景を補足させていただきます。こちらは、病弱の学生本人は、自分は病気があるから実習、また教育実習に行ったり仕事を始めたりしても、病気のせいで皆さんに御迷惑をおかけするかもしれないということで、非常に消極的になっていたのですね。病気に対して配慮はしてもらいたいけれども、本当にこのような状態で実習に行っていいのかどうか、また教職が自分に合っているのかというふうに悩んでいたという事例です。
そのとき、私にその学生が相談に参りまして、むしろそれは病気という見方について、例えば病気というのについて一般的には健康でないということで悪いイメージが持たれているけれども、そうではなくて、どのようなイメージを持てばいいのかについて、あなた自身が病弱当事者の立場から話して聞かせることもたくさんできるのではないか、それは教員としてあなただけが持てる武器ではないかという助言をしました。それを受けた学生は、そういったことを考えたことがなかった、そして、これをきっかけに、実習に向かってもっと自分の病気についてきちんと課題を整理しまして、配慮していただきたい事項というのをきちんとまとめることができたという経緯がありました。これは実習における意思表明や合理的配慮とはまた少しずれた内容かもしれませんが、ある職業で障害当事者としてどのように「障害」や「病気」というものをどのように活(い)かせば貢献できるのか、ということを考えていくという、ある意味、障害学生に対する教育的な視点を持った支援も求められているのではないかと思っています。
次に、今までは通学課程のお話でしたが、通信教育課程のお話です。通信課程におけるスクーリングの対応体制の整備。通信課程の聴覚障害学生は、通学課程と比べて支援者の確保作業、講義開始前までに開催地の通訳派遣要綱の把握、通訳派遣申請、大学と派遣元機関の連絡調整、派遣元機関への資料事前送付・機器手配・通訳方法の確認、通訳当日に打合せや会場のセッティング等や通訳費用負担、学生本人が2日間で10万円以上払う事例もあった、を伴うことが多い。そのため、過重な負担が受講前から伴い、かつ、当日の調整作業等で授業に集中することも困難となる。また、開催地が都市に限られ、地方在住の学生には開催地の個人派遣を認めてもらえない、大学が依頼するようにと断られる事例も。通信課程に在籍している聴覚障害学生のお話を聞きますと、ほとんどが自分で通訳を手配しなければならないと大学側から言われて、自分で手配をしている状況のようです。今お話をしたように、準備だけでも非常に大きな労力がかかります。心的な負担も伴います。このように支援者を非常に苦労して自力で確保しなければならない課題に対して、非常に強い意志を持って積極的に交渉に臨めるような人でなければ、これをなし遂げることは難しいのではないかと思っております。ですから、通信課程は通学課程と同じように、やはり支援者の配置というのは、大学側が積極的に関与して支援体制を検討すべきではないかなと考えています。通信課程における教育方法の支援の在り方をもっと考えなければならないのではないかということで、この事例を出させていただきました。
最後に、宮城教育大学の取り組みについても少しお話を頂きたいというふうに依頼を頂いておりましたので、本学の取り組みについて紹介させていただきたいと思います。
宮城教育大学では、障害学生支援を、教員養成大学ならではの特色を生かして、学生教育の1つと考えて、位置づけて取り組んでおります。また、先ほどもお話しましたように、障害学生本人がなかなか相手に対して意思表明が難しいというような事例も多々あります。そういった中で、学生同士の主体的なかかわり合いを深めていくことを促進するというような目的を持って、我々教職員、支援室スタッフはうまく学生同士を交流させて、引き合わせていけるような活動を取り組ませております。そして、障害学生支援の主体が誰かというと、やはり障害学生本人ですから、学生本人がもっと意思表明をできるように、周りからサポートしていくためには、自分が意思表明しやすい雰囲気を、アットホームな雰囲気をつくり出すことで、意欲的に活動ができるようにサポートしております。
次が支援体制についての図をお示ししています。まず、障害学生が入試を受けてから卒業するまでの流れに合わせて御説明します。
入試の際には、大学内の入試部会という担当部局で行います。今まで聴覚障害、視覚障害、様々な障害学生が入試を受けてまいりました。その部会の中で、障害学生が受験するときの対応する委員を選出いたします。私がその委員を担っております。入試課と私、障害学生支援担当の私でいろいろと相談をして、決定していくという流れになっています。
次に、合格した後、入学前からは、障害学生支援室がその支援の担当を担うこととなります。障害学生支援室長は連携担当理事が担っております。また、副室長と、専門部会と申しておりますけれども、私の大学は全障害に対応できるスタッフがおりますので、下の枠にありますように、聴覚障害部会、視覚、肢体不自由、病弱・虚弱、発達障害、それぞれの部会が設けられております。これらの5つの部会が設けられており、専門的なサポートをするための部門となっております。障害学生支援のコーディネーターを3人雇用しております。
障害学生支援室は、基本的には障害学生本人の意思表明に応じて支援を開始します。ですが、その前に、意思表明ができる前の支援というのも非常に大切だと考えていますので、私が聴覚障害部会の中で聴覚障害学生と定期的に集まりを待ち、又は個別に面談を行い、学生生活で何か困っていることがないかということを引き出しています。その中で、これは是非意思表明をした方がいいとか、どのように具体的に意思表明をしていったらいいのかというようなサポートをしております。それを具体的な意思表明につなげていくような取り組みを行っています。
それから、下にインクルーシブ推進委員会というのが設けられています。これは本年度新たに立ち上がった委員会となっています。これは教職員対応要領の中にも明記されている委員会になります。この内容に基づきまして委員会が立ち上げられたという経緯がございます。障害を理由として差別が発生した場合の相談窓口というのを委員会の中に設けております。この相談窓口については次のスライドに詳しく記載しております。
教職員対応要領の中にも明記されている委員会になります。この内容に基づきまして委員会が立ち上げられたという経緯がございます。障害を理由として差別が発生した場合の相談窓口というのを委員会の中に設けております。この相談窓口については次のスライドに詳しく記載しております。
教職員対応要領に基づいて設置される相談窓口一覧です。障害学生支援室、学生相談室、保健管理センター、上杉学習支援室、事務局、学長が指名する教職員となっております。最後の学長が指名する教職員は、障害のある当事者の教員が指名されています。聴覚障害の方では私が、もう1人、視覚障害を有する教員がおりまして、その2名が学長から指名を受けている形となっております。障害当事者本人も入ることで、障害学生も本音を打ち明けやすい雰囲気をつくろうというふうに、このような形が設けられております。
先ほど専門部会のお話をいたしましたが、その中でもやはりいろいろな障害学生の人数に細かく対応できるように、いろいろな支援メニューを用意しております。障害種別における事前的改善措置として資料に掲載している内容です。今、視覚障害の在籍はございません。聴覚障害の学生は9名在籍しております。発達障害が2名、肢体不自由の学生が2名、病弱・虚弱が3名在籍しています。それぞれに対応して右側の内容、メニューがいろいろあるのですが、障害学生と面談をいたしまして、どのようなメニューをどういった場面で利用したいのかということを合意を図った上で、支援内容を決定しております。
またスライドは少し戻るのですが、教員組織との連携についてです。宮城教育大学における支援体制の図の中で、先ほど教育方法の事例をお話させていただきましたが、英語の教育実習や資格取得の授業に関する課題がありました。障害学生支援室に英語の授業で問題があったということで障害学生本人が相談に来たときに、英語教育講座の教員に連絡し、同講座にもつなぎ、どういった支援・配慮が必要なのかということを相談して改善するということをしました。
このように教員組織と障害学生支援室の連携がきちっとできるかどうかが、教育方法を改善するためには重要なところだと思っています。例えば、本学の場合、音楽の授業で聴覚障害学生が受講する場合、どのように教育をすればいいのか、教員も戸惑ってしまうところがありました。そこで音楽担当の教員が支援室に、聴覚障害部会にも積極的に来てくださいまして、どんな障害なのか、どうやって教えたら良いのかということで、相談に来られました。そのおかげで、音楽担当の教員も障害学生に合わせた教育の方法について、それだけではなくて、将来、その障害学生本人は小学校の教員になる可能性がありますので、音楽をいかに教えられるのかについても考えてくださいました。どうやって学生が将来、教員として音楽を教えるかというところまで踏み込んで学生と対話して検討してくれました。つまり、授業の合理的配慮の提供だけではなくて、卒業後の教員といった教育職としての発揮ができることも考えて指導してくださったわけです。このように教育方法を巡って教員個人あるいは教員組織との連携ができることが理想的ですけれども、そのような連携体制をきちんと形にするためにはどのようにしたらいいのか考える必要があるかと思います。

【竹田座長】教育方法に関する考え方とそれから宮城教育大学における支援の状況、いろいろ大切なポイントについてわかりやすく御説明いただけたと思いますが、ただいまの松﨑先生の御説明に対しまして、委員の先生方から御質問等ございましたら、よろしくお願いいたします。

【神藤委員】本日は貴重なお話、ありがとうございました。本学でも視覚障害のある学生で、教育実習に行って、「目の見える人と同じように教えなさい」というようなことをちょっと実習先の先生に言われて、ショックを受けていったん教員をあきらめたというような例もありまして、その後、大学院生になりましたので、教えることに再トライするためにTAになったその学生をまた支えるということも行っています。
先ほど先生がお話になった中で、人材不足が生じない体制について、学内人的資源だけでは困難になった場合に対してはどのように整備するかというところがございましたが、関西では大学間連携というのは進んでいるのですけれども、ある地域では、国立大学は手話が必要であるということで手話通訳者を雇用・確保されていいいのですけれど、必要としている(他の)大学に通訳者が回れないという状態も進んでいるようです。私としては、地域ごとに、恐らく国から補助が出ているであろう国立大学にリーダーシップをとっていただいて、地域全体のことを考えて動いていただくというのがいいのではないかなと考えています。

【竹田座長】人材の話が出ました。人材不足というのは多分、本日お集まりで、大学の支援に携わられている皆さんはお感じだと思うのですけれども、松﨑先生の話の中でも補足して説明いただければと思います。例えば、うちの大学でも学生ボランティア、そういう学生のパワーにもかなり手伝ってもらうというか、支援をする上では、これはいいか悪いかは別として、力になっていただいている部分はあるのですけれども、先生のところなんかでは、そういう学生ボランティアの役割というのはどうなのでしょうか。うちの大学は最初、理念的には、学生の教育的効果というようなこと、これはいろいろな側面があると思いますけれども、そういうことも重視して、学生ボランティアという、単なる人材不足の穴埋めということではなくて、始めてきた経緯があります。先生の大学ではそういう方たちはどういうふうに関わっているか、補足していただければ。

【松﨑准教授】宮城教育大学も基本的には、筑波大学のおっしゃったような同じ形で、学生ボランティアのパワーで担われています。以前と比べて今の聴覚障害学生の入学者がこのままふえていくと、小規模大学なので、人材の確保を考えれば、非常に難しくなってくるということが確実に起きてきます。そういったときに、学生ボランティアの活用以外に、白澤先生も関わっているPEPNet-Japanの遠隔情報保障事業という事業があるのですけれども、大学間で遠隔情報保障をする、そういった仕組みをつくっていただくような取り組みをなされていると思うのですけれども、後で白澤先生にそのあたりを詳しく言っていただくとして、そういったことですとか、また、学生のボランティアだけではなくて、講義を担当する教員ももう少し自分の教育方法に工夫をする余地がまだまだあるのではないかと感じています。
実際、私の大学の場合は、大学院に入った聴覚障害学生が、少人数指導が多いので、そういった際は講義担当教員が音声認識のアプリを活用して、音声を文字に変換して、他の学生もそのアプリに音声を入力してというような方法でやったり、聴覚障害学生が逆に発言をするときには、そのアプリの中に入っている読み上げ機能がありますので、それを活用して、文字で入力をして、それを読み上げてもらう。通訳がなくても、代わりになる、当事者間で助け合う場というのもあるのではないかと思っています。

【竹田座長】学生ボランティアの場合には、質をどこまで保証できるか。白澤先生、今、遠隔保障の話が出てきたかと思いますが。

【白澤委員】それについては今、松﨑先生がお話されたとおりだと思っています。
加えて、もう少し掘り下げて松﨑先生にお聞きしたいことがあるので、お聞きしていいですか。今おっしゃったように、教員からの支援を引き出していく、あるいは、学生自身がもともと用意されている支援だけではなくて、多様な支援を使いこなしていくためには、聞こえない学生自身、障害のある学生自身の持つ力が重要になると思います。そうした力をどう引き出していくのか。松﨑先生はお話の中で、繰り返し心理的な支援が必要ではないか、あるいは意思表明をサポートとしていく必要があるのではないかとおっしゃっていただいたと思うのですけれども、具体的に松﨑先生が学生さんに対して実践されていることを教えていただけませんか。今こちらの中には当事者研究が必要ではないかというお話を書かれていますけれども、具体的にどういう支援、どういう体験を学生たちにさせればいいと感じていらっしゃるのか教えていただきたいのですけれども。

【松﨑准教授】聴覚障害学生支援の心理的サポートという面では、公的に相談する時間をきちんと設けてという形では意外に少ないです。ふらっと来て相談をして、その中でわかるケースの方が多いです。例えば学生がふいに来て話が始まって、「実はグループでのコミュニケーションに参加できていないのです。困っているのですけど。」と、ぽろっと言ってくる。そのときにもっとそれを深めて話を始めるようにしています。具体的に言いますと、集団会話のときにやっぱり論点がつかめないときにどうしたら良いのかとか、発言が一方的になってしまって、ストレート過ぎて相手にショックを与えてしまう、それを和らげて説明をする方法はどうしたらいいのか、というようなことを学生が言ってくることはあります。そのときにすぐアドバイスをするのではなくて、どういった条件のときにそういった問題が起きるのかということを引き出していきます。自分の置かれている状況を分析的に整理させて話させる。その中で、もしこういった条件が加わったらもっとよくなるのではないかなということで整理をして、方法を決めていくというような形で対話をしています。「次はこのことを実際やってみてね。」「また何かわかったことがあったら報告に来てね。」という形で終わります。「こういうことは障害学生支援室には相談に行かないの。」と聞くと、「これは障害学生支援の範囲に入るのですか。私にはわからないので、先生だったら当事者ですし、言ってもいいかなと思って、言ったのです。」と言ってくるのです。
こうような形で少しずつ分析をさせて、整理ができていく。自分の置かれている状況を俯瞰(ふかん)することで何が問題なのかを整理できたり、相手に対してどうやって話すようにすればいいのかということがわかってくる。それと、学生の状態によっては、音声認識を使った講義をやるように提案してもいいかな、と私で判断をして、その時々いろんな支援の方法を提案することもしています。音声認識を使ったアプローチというのは、大学院以上の学生だけには提案します。自分の置かれている状況を整理して、分析できているからこそ、そういった方法を提案します。そのように、ある恣意的(しいてき)状況に合わせてできる方法を私から提示していくというような関わりの仕方をしています。

【広瀬委員】大変貴重なお話、ありがとうございました。
放送大学は全国に50か所の学習センターを持っております。その中で1年間3,000の面接授業、つまり、ここでいう通信課程におけるスクーリングのようなもの、それを全国で年間3,000件持っています。細かい話でいえば、1科目2単位で、授業料は5,500円です。その中で情報保障を整備するのは非常に財政的に厳しい状況があります。本学にはキャンパスに常時大学院生もおりませんし、今のところボランティア組織もまだありません。今、松崎先生が話されたのは音声認識のUDトークだと思いますが、それを使う面接授業を考えております。面接授業とは、普通の講義形式です。手元のiPadなどでテキスト化するということを今年度、実験的にやってみたいと思っています。なかなか専門家がおりませんので、そういったことのノウハウをどういうところで学んだらいいか。松﨑先生がなさっておられるのは、インターネットなどで存じておりました。情報保障をしたいけれども、実際にできないという大学も多いのではないかと思います。この音声認識アプリの使い方のようなもの、どの程度、どの段階でできるのかというような事例など御教示ください。

【松﨑准教授】宮城教育大学では、今おっしゃった音声認識アプリ、名前はUDトークといいますが、これはスマホやタブレットにダウンロードして使うアプリになっております。パソコンではないですね。このアプリを使って音声認識をしているのですけれども、認識率はとてもよいものなので、大学として法人契約をして導入しています。どうやって使うかということですけれども、初めに、私が教員会議などで試しにUDトークを使って先生方の発言を認識させています。すると、この先生の話はすごく認識されるという先生が何人かいるわけです。それで先生方がUDトークに関心を持ってくださり、講義や聴覚障害学生とのやりとりでも使ってみませんかというふうにお願いしている。私はICTの専門家ではないのですけれども、UDトークの認識をあげる使い方は、私も様々な活用事例を試してみて把握しております。もし聴覚障害学生が講義で使ってみたいという意思がある場合は、あらかじめどのような目的でどんな使い方をしたらいいのか、シミュレーションをして、講義を担当する教員と聴覚障害学生と私とで一緒に試しに行っていきます。例えば、スマホを先生が持って話すと、聴覚障害学生はその話した内容が見られないので、それを見るためにどうしたらいいかということで、QRコードを使って、他のタブレットやスマホと通信して認識した結果を同時に出すことができますので、それを使いましょうとか、聴覚障害学生が、誤認識が出てきた場合に、これは何だからわからないなとなったら、先生や一緒に受講している学生にお願いをしてスマホで修正してもらったり筆談で正しい言葉を教えてもらうだとか、タブレットを使って直してもらうというような方法を確認をして、そういった方法で講義に導入していきましょうということで、あらかじめシミュレーションをして必要なシステムの構築をしています。このように基本的な使い方をおさえた上で、後は講義の形態や進行方法に合わせてどういった活用事例が考えられるか、その都度相談をして進めていくような形です。

【白澤委員】1つだけ補足させてもらってよろしいですか。
今、松﨑先生がおっしゃっていただいたとおり、音声認識は決して万能な方法ではないということです。なぜ松﨑先生が大学院生以上にしかそのやり方を教えていないのか、それは、大学院生以上じゃないと、自分がわからなくなってしまったとき、きちんと認識されなかったときに、「これはどういう意味ですか」と聞けない。また、音声認識は機械に向かってきちんと話をしてもらわないと認識できないので、うまい話し方をすればものすごくうまく認識するのですが、そこから外れると、途端に認識率が悪くなるわけですね。このため、先生方が意識せずにそうなってしまったときに、「ちょっと待ってください。今、認識されていないから。」ということを言える学生じゃないと、今の段階では使いづらいということです。そのことをきちんと先生自身が見極められた上で、この学生ならできるだろうと導入されているということかなと思います。

【広瀬委員】本当にそうです。音声認識率が高い先生の講義というのは、案外単調でつまらない。抑揚があったり、話が飛んだり、非常にビビットな授業だと、本当になかなかうまくできないのですね。そのあたりのサポートが大切です。もちろん最初にPPTを印刷して渡しておくとか、資料を渡しておくとか、わからないことがあったらすぐ手を挙げてもらうとか、後で時間をつくるとか、そういう配慮が必要です。是非いろいろ教えてください。

【松﨑准教授】UDトークについてちょっと補足なのですけれども、UDトークの中には人工知能が入っておりまして、先生がきちっとわかりやすくまとめて説明をしなければ、認識が落ちてしまったりする可能性がありますので、UDトークを使いこなしていくことで先生の話し方、まとめ方も良くなっていくという、そういった効果が実はあります。
もう一つ私が驚いたことがあるのですけれども、UDトークを試しに見せたときに、ある先生、聞こえる先生ですけれども、ありがとうと言ってくださったことがあるのです。なぜかというと、今までは学生ボランティアに全て任せていて、自分は何もできなかった。UDトークがあれば、自分も障害学生に対して直接何か支援することができる、コミュニケーションすることができる。そういうふうに結果的に障害のない教職員のエンパワーメントにもなっているように私は思っているところがあります。

【大島委員】ITの話が出たので、簡単にお話をさせてください。音声認識のシステムは、UDトーク以外にもいろいろなものが出ていまして、いろいろなところで使われていると思うのですが、今お話を伺っていて、やはりそういう情報がまだ適切に出せてないというのを、IT企業としても責任を感じました。松﨑先生のお話にもありましたように、機能は人工知能も含めてよくなっていますし、最近は音声認識の辞書がクラウドに上がることによって辞書自体の頭が良くなって、変換も良くなるというように技術は進んでいるので、やはりそういうものを適切に必要な方にお届けすることが、必要だと感じました。

【殿岡委員】貴重なお話をありがとうございました。
コミュニケーションの経験不足を補っていくところの支援や、それから支援に入る前の支援の充実というのは、恐らく特に聴覚支援の分野では宮城教育大学は突出して、技術というかノウハウが蓄積されていると思うのですね。一方で、やはり聴覚以外の支援と言うと、お越しいただいている富山大学の西村先生のところは、この分野を発達障害のところできちっとつくり上げてきた。一見すると、松崎先生のお話は聴覚障害だからできたのかとか思ってしまうんだけれども、そこにはやはり検討会でいうところの合理的配慮の合意形成活用のところに当たるのですが、支援に至るプロセスのところの障害種別を超えた普遍性みたいなものをやっぱり西村先生からもコメントいただくとともに、西村先生から発達障害との共通点とか、そのあたりを聞いてみたいなと思いまして、発言しました。

【西村委員】まさに今、殿岡委員がおっしゃってくださったことを言いたくて。本当に富山大学は発達障害の支援が長く、聴覚障害の学生の支援は非常に短いので、本日のお話は非常に参考になりました。ありがとうございました。と同時に、非常にこちらの心が動くというか、非常に共通点があるなと思って聞いていました。
1つ思ったのが、支援室とか支援者の役割、そこをきちんとどうあるべきかということを明らかにしていかないと、よくないのだなということを改めて思いました。今、松﨑先生がおっしゃったように、支援者というのは、学生がどういうふうに支援を求めていけばいいか、そのときにはその前段階として、自分の障害や特性についてきちんと理解するという、受けとめるということが必要になってくる。それをこのスライドでいえば3ページ目の心的体験、整理しながら意思表明するためのというふうに書いていらっしゃる。そこにつながっていて、そこのところに私たちも発達障害の場合に非常に時間をかけています。
多少、聴覚障害と発達障害の体験というのは違っていて、発達障害の場合は、ひょっとしたら何が起きているのかわからない。何だかわからないけれども、うまくいかない。それが世の中のせいなのか自分の特性のせいなのか、よくわからないでいるその困り事を、これはこういうふうに意思表明していけばいいんだ、というふうに持っていくときの対話というのは、非常に大事だなと思っています。
それと同時に、教員への配慮の求め方についても、本当に今おっしゃったように、教育的視点を持った対応、これが合理的配慮のところとどうなのかというところですけれども、例えば重点検討項目の(6)4)、高橋委員が前回おっしゃったことにかかると思うのですけれども、経験的には合理的配慮について伝えるというよりも、この学生にとってどういう方法が一番学ぶ環境としてはいいのかということを教員と一緒に話し合って、その教員が教師としてこういうことならできるとか、こういう工夫をすることならやってみたいと思うということを引き出していくというか、一緒に見つけていくプロセスが非常に大事になってきていると思います。
ですから、支援者の役割として、合理的配慮の考え方とか基本になるところはきちんと持っていなければいけないけれども、その言葉だけを使って何かを調整していくというよりも、そのことを念頭に教育の専門家であるその教員と一緒に考えていくという考え方が、一番教員を動かす力になるというか、対話になると考えています。そのあたりが非常に松﨑先生のされていることと、富山大学が発達障害の学生の支援をしているところと非常に通じ合っていて、そういう意味で、勉強になったと同時に、すごく何だか知らないけれどもうれしくなりました。

【高橋委員】松﨑先生、ありがとうございました。松﨑先生のお話の中でも、これは障害学生支援に入るのか入らないのかといったことが、学生から出たというお話もありました。そこで、今、西村委員からもお話がありましたように、重点検討事項の(6)で話題に挙げました点というのは、結局、合理的配慮だけではうまくいかないと。ただし、何でもかんでも一緒にしてしまうと、これは義務なのか義務でないのか、やらなければいけないのかやらなくていいのかという議論になってしまうと。そこで、合理的配慮はこのルールでこれはやらなければいけない。一方で、義務ではないけれども、教育的にこういったことをやっていかなければ、障害学生支援は成り立たないと。そういったことも議論に入れていかないと、結果として合理的配慮がどんなにいいルールとして確立しても、支援自体はうまくいかないということがあり得るなと思いました。そういった点で、合理的配慮に入るか入らないかという議論というのは、それ以外でも必要なことというのがあるということを同時に挙げていくことかなと思いました。

【竹田座長】時間も来てしまいましたけれども、教育的方法に関する考え方ということで、表面的なことではなくて、かなり深い、いろいろ意義ある議論を頂いたと思います。
それでは、続きまして、次の大学間連携を含む関係機関との連携の在り方に関する考え方に関連して、まず近藤委員から御説明を頂きたいと思います。

【近藤委員】本日はお時間頂いて、AHEAD JAPAN、一般社団法人全国障害学生支援協議会について御説明をさせていただきたいと思います。
まず、この通称AHEAD JAPANというふうに呼んでおります全国障害学生支援協議会ですが、この協議会は2013年10月に、これはもともとこういった協議会というものが日本の中には存在しておりませんでしたので、全国42校の大学が発起校となって本協議会を設立するという動きになりました。現在は全国で65校、最新はもう少しふえていると思うので、後ほど差しかえさせていただくかもしれませんが、別添の資料のとおりの、資料3-2にございますけれども、全国65校の会員校で構成されている協議会になっております。ここで挙げさせていただいている会員校は、法人として加入していただいているところです。第1種法人正会員と書かれているところは、これはほぼ法人に準ずる形で御参加いただいている形になっています。
AHEAD JAPANの42校の発起校が、こうした協議会が必要だということでつくられたときの事業内容とその問題意識を次のスライドに書いています。読み上げますけれども、高等教育機関における障害学生支援に関する相互の連携・協力体制を確保するとともに、実践交流を促し、障害学生支援に関する調査・研究及び研修・啓発を行って、実務への還元を図り、もって大学における障害学生支援の充実並びに学術研究の発展に寄与することを目的とする事業と位置づけております。
実際の事業としましては、以下の6点を行っております。大学における障害学生支援に関する実践・研究集会の開催、大学間の障害学生支援に関する連携・協力・研修事業、大学における障害学生支援に関する国内国外の資料及び情報の収集・提供、大学における障害学生支援に関する調査・研究、大学における障害学生支援に関する機関誌、書籍、報告書等の刊行といったことを行うということです。実際には2013年に設立されて、14年に設立大会を行い、15年に第1回の全国大会を行い、次の6月に第2回の全国大会を行うというところで、会自体はまさにここに挙げられたような事業を、それぞれを高い水準で実現していくための準備を行っている段階でもありまして、最も中心的に活動しているのは、この1番の実践・研究集会を開催して、様々な知見の集積などを行っているところです。
次のスライドに、AHEAD JAPANが実際にどういったようなことを行っているか簡単に概念図として示したものをお示ししております。AHEAD JAPANには法人という形で全国の大学に御参加いただいているのですけれども、なぜこのような法人という形で御参加いただく形をとったかと申しますと、やはり障害のある学生の支援に実際に当たる方々というのは、多くの大学では教員ではなくて職員が直接、障害のある学生一人一人に寄り添うような形で支援を行うものになっています。一方で、こうした協議会や団体などに職員が御参加される場合は、やはり通常の教員であれば、学会等には自由に参加をして、スケジュールや予算等も自由に調整をして参加をするという形が一般的です。けれども、職員の場合、大学が実際にこういった取り組みに参加をして知見を共有するということは非常に重要であるということを認識した上で、大学の職務として参加をするという形が非常に重要であると考えていますので、法人という形をとって、法人会員で御参加いただくという体制構築を行っています。毎年この会員校の職員、職員が御参加される比率が非常に高いのですけれども、職員、それから教員が中心となって大会や集会に参加をするという形が、今、第2回大会を迎えるという段階になっております。
それから、協議開始のところは、様々な全国の大学で実際に行われている支援の事例というのがこの全国大会の中で発表されていて、その発表をしっかり資料にまとめていただいて、大会発表誌の中で記録をするということを行っています。そういった専門的な知識や、経験によって得られた経験知というのは、AHEAD JAPANがしっかりと蓄積をして、それを会員の皆さんと一緒に全国で共有するという枠組みを行っています。
それともう1つは、この会員の協議によって、会が取り扱うべき問題や、どのような具体的な方向に日本の障害学生支援を向けていきたいのかという、そういう議論もこのAHEAD JAPANの議論の中で行われています。そういった会員同士の自発的な協議に基づいて、会の運営の方針であったり取り扱うべきテーマが決まっていっているというのが現状で、このようなところとは、やはり現場でリアルタイムに起こっている様々な問題意識とか、実際に我々が対処していかなきゃいけないこととか、そういった生の現場に非常に近いところの問題を取り扱うことができるという意味で、大学が組織をする、その組織した大学が問題提起をするといった形がとれる協議会というものというのは、非常に重要なものであるというふうに考えています。
実際、そのような形で様々な問題意識を扱っていますが、問題意識については次のスライドで御紹介しますが、まずここの図式で示していることを御説明させていただきます。それぞれの大学の、主に大学の中には、今現在、障害のある学生の支援を専門に行う部署若しくはそれを担当する部署というのが、何らかの形で多くの大学でつくられてきているところです。実際にAHEAD JAPANに参加している大学というのは、その多くが専門の障害学生支援室といったような部署を持っているところも多く、障害学生支援が、ある職員若しくは教員の重要な職務として定義されているようなところが多いです。彼らが実際にAHEAD JAPANに大会などに参加をしてくるということになります。現状では、日本の中でいわゆる先ほどから議論になっておりました障害学生支援の専門性を持った人材が行うべきことはどういったことなのか、若しくは大学の中で具体的にどのような調整であったり環境構築、体制整備を行っていくべきかというのは、実際には多くの大学が手探りをしながら今後に向けて準備をしているようなところであると言えますので、大会にやってきた障害学生支援室の担当の教職員の方々というのは、その場で、私たちのところではこういった取り組みをしているんだけれども、あなた方のところでは、こういったときにはどのようなことをやっているのであろうかといったような問題意識を共有したり、かなり白熱した議論になるような場面というのも多く見られています。
さらにいいますと、AHEAD JAPANでまだ明確に具体的な取り組みとして既に整備ができたわけではないのですけれども、それぞれ御参加いただいているいわゆる会員校の方々というのが、自発的に各地域で小さな集会のようなものを行われて、例えば九州地域であったり四国地域であったり、関西の地域、関西の地域に関しては後ほど村田委員から御説明あると思いますけれども、既にコンソーシアムのようなものが構築されていましたけれども、ここ1、2年の動きでは、例えば四国や九州であったり、新たな集まりが立ち上がってきて、実際に集まってその大学同士が議論をするといったようなことも生まれてきているという現状があると、AHEAD JAPANの参加校からは聞いています。
具体的にAHEAD JAPANが今後、力を入れて行わなければいけないのは、やはりそのような、これは本当にいわゆる現実的な地域という形で行うべきなのか、それとも何か特定の目的を共有するような大学によって行うべきなのか、様々な議論が現状あるのですけれども、何らかの形でAHEAD JAPANが関わって連携を促進することによって、お互いが必要としている、大学のそれぞれが必要としているような知識を素早く共有したり、若しくは支援のリソースというのを柔軟に共有したりとか、そういった様々な連携・協力の体制というのを構築していく必要があるというふうに考えています。
次のスライドでまた申し上げることになりますが、障害のある学生の支援というのは既に日本国内だけの問題ではなくなってきているというのが現状です。と申しますのは、やはり大学にやってくる学生の中には、海外からやってくる留学生であったり、既に入試の段階で、海外で行われている配慮を自分の社会では受けてきたんだけれども、あなたの大学でも行ってもらえるだろうかといった相談であったり、そういったものに各障害のある学生の支援室のスタッフが対応するということが起こり始めています。
このことで申しますと、例えば米国の同じくAHEADという名前のついている協議会、これは全米でおよそ2,000校の大学が参加している巨大な協会になるのですけれども、例えばヨーロッパのLINK Projectという、これは国を超えて様々なヨーロッパ内の大学が情報の共有であったり、支援リソースの共有であったり、そういったことを行っているような協議会ですが、そういったところとAHEAD JAPANも情報を共有することによって、日本の中で国際的な位置づけとして大学がどのような支援体制を構築していくべきなのかという議論も既に起こってきています。実際に米国のAHEAD、それから欧州のLINK Projectから、その代表者、プレジデントに当たる人やディレクターに当たる方々をAHEAD JAPANとしてお招きして、様々なディスカッションだったり、今後の連携についての議論するということを既に行っている状況です。
このような形で、AHEAD JAPANは全国の大学の1つのハブとして、様々な実際の現場で行われている支援の経験知であったり、専門的な知識の共有を進めることによって、障害学生支援を行う。国際的には職能領域というふうに考えられているのが、この障害学生支援、ディスアビリティー・スチューデント・サービス、その日本の中での在り方、本日、様々委員の方々に御議論いただいたようなポイントというのが、いわゆるどこまでが支援で、みたいな線引きの問題もあったかもしれませんが、これは障害学生支援という職能を持った人たちが、どのようなマインドであったり、関わり方で障害のある学生の教育というのを大学でつくっていくかということで、非常に重要な視点だと思ってお伺いしていましたけれども、そのような意識、専門性というのをしっかり共有した職能集団というのを構築していくという意味でも、AHEAD JAPANの重要性というのが今後拡大していくのではないかと私たちは考えています。
現在、リアルタイムに私たちが問題意識として感じていることは、まさにこの6月25、26日に行われるAHEAD JAPANの全国大会の中で、複数のテーマを掲げて、そのテーマに合わせて分科会を行う状況になっていますので、そのテーマを簡単に御紹介させていただいて、現在どのような問題意識が共有されているのかというのを理解するきっかけにしたいと思います。ここに6つのポイントを挙げていますけれども、これは今現在、既にウエブページに掲載しています分科会のテーマとは、最新版では異なっているところがございますが、基本的にはこういった考え方が議論されているということで御紹介させていただきます。
まず、1番と2番に関しましては、この合理的配慮というふうに、いわゆる関係者間での合意形成、それから意思決定をしていく必要があるのですが、この決定過程を考える上で、どのような仕組みだったり、若しくは問題がそこにあるのかということをテーマとして掲げています。この1番の決定過程では、学内で起こってくる紛争解決であったり、組織としてこの合理的配慮を組織の意思決定として提供していく、そういった意思決定の仕組みであるとか、妥当性判断を様々な形で、現場の職員であったり、もちろん大学としても意思決定をしていく必要があるのですが、その根拠をどのように考えるかといったようなテーマが問題意識として掲げられていて、そのことについての議論が行われます。
それから、2番は、もう少し大学の中で行われる様々な活動の種類に応じてどのように合理的配慮を判断していくべきか、その必要性について議論が起こることがありますので、そういったことをまとめています。例えば学外実習において合理的配慮を提供するのは、もちろん大学が中心的な役割を果たしていくことになると思うのですけれども、現実、他の団体であったり組織が関わってきますので、それをどのような形で合意形成をしていくべきか。
それから、身体介助。食事介助、トイレ介助を含めた身体介助も、大学の中で配慮として提供していくときに、どこまでどのようなことができるのか。
これも先ほど来、松﨑先生にも御提案いただいたことと非常に近いところがありますが、やはり実習においての能力要件というのが、障害者の参加を前提としていないような能力要件になっていた場合というのは、非常に安易に障害者の参加が断られてしまう場合というのがあります。もちろん単純にそれは差別であるという言い方もできるのですが、実習時の能力要件というのがどのような設定がされているのかというのをしっかり学内で議論をして、本質的な部分は何なのかということを考えを深めていく必要があるというふうに考えています。そういう意味で、この実習時の能力要件の在り方という議論を行うということになっています。
さらに申しますと、既に先ほどの国外の協議会との連携のところで少し申し上げましたが、海外からの留学生の受入れであったり、若しくは国内の学生が海外に出かけていく場合に、若しくは逆の場合もそうですけれども、そういったときに、大学が主体となって行うわけですが、どういった範囲の支援が行えるかといった議論が起こっています。
それから、3番目のところは、障害学生支援というのは、日本の中でもこれから1つの職能集団、職能領域としてキャリアパスが構築されていくことになると思うのですけれども、現実、今、私たちの多くの中で議論になっていることというのは、その職業上の身分の安定というのが様々な大学において非常に基盤が弱い。例えば、任期つきの職員であったり、若しくは賃金においても、専門性自体というのが広く理解されているわけではないので、一定の賃金水準に達しないようなところもあるというふうに、様々な問題点というのが挙げられています。このキャリアパスの在り方というのをどのように大学の中で位置づけて、その専門性というのをしっかり育成していくのかということは、大きなテーマとなっています。
次に、大学教育のアクセシビリティとユニバーサルデザインに関しては、いわゆる障害学生支援の中では、例えば教材、若しくはこれは教科書だけではなくてビデオ等も含みますけれども、様々な著作権などのそのほかの法制に触れるようなことというのもたくさんあります。そういった部分は、しっかりハンドリングできるような状況になっていないと、そもそも障害のある学生に紙ではないものとか、ビデオの音声ではないものとか、そういった別の形のものを提供できないという壁がございますので、多様な授業方法、現在、1つとして挙げられているのは、例えば反転授業と言われるような、ディスカッションが中心となった授業というのをどのような形で保障するかとか、本当に様々な教育方法についてのアクセシビリティの議論というのが起こっています。
それから、5番目の支援の質の担保というところは、例えば、学生ボランティア等によって具体的な支援を提供する大学というのは、非常に多いですけれども、その支援の質というのを一体どの水準、若しくはどのような体制で担保していくのかというのは、常に議論になっています。また、大学のみで提供できる支援とそうではない支援というのもありますので、やはり地域の障害者支援のリソースともしっかりと連携をしながら、質の高い支援を担保していくということが必要であると議論がありまして、そういったこともテーマとして掲げております。
最後のこの障害学生支援室の立ち上げとマネジメントですが、AHEAD JAPANに参加いただいているような大学の中には、もう既に歴史のある障害のある学生の支援体制を持っている大学というのが多数ございますが、今まさに障害のある学生支援の体制を立ち上げて、学内に予算等も含めた盤石な基盤というのをつくっていく、まさにそのプロセスにあるというような大学も非常に多いので、さらに、先ほど、通訳者の手配について、専門性の高い通訳者をどのように手配するかという議論がありましたが、これが同じように、障害学生支援においては、障害の種別を問わずに、様々なジャンルの困難に対して合理的配慮を提供していくということが求められますので、そのような幅広い知識や経験を持った支援に携わるスタッフをどのようにリクルートして、また育成していくかというのは非常に大きな問題となっていますので、こういった支援室という、若しくは支援部署そのものの立ち上げとマネジメントについてというのも大きな関心事になっています。
重要なことは、これら全てについて、様々な大学で既に問題として取り扱われて、また、よりよい方法が考えられて、それを乗り越えてきたような経験を持っている、経験知を持つ大学というのが非常に多いですので、そういったことがこれまでは特定の大学だけの知識になっていたり、若しくは特定の地域の間だけで共有されているようなことであったりしてきましたので、これを全国に拡大をしていく。全国の大学の間で効果的に共有をして、より質の高い支援を構築していく。そういうことを望んでいる大学がAHEAD JAPANには参加をしてくださっていると思いますので、今後、この連携の部分や知識共有の部分、経験の共有の部分をより高めていくようなネットワークを構築するということがAHEAD JAPANのミッションになっていると私たちは理解をして、様々な取り組みを現在まさに構築を続けています。

【竹田座長】御質問はこの後の村田委員の御説明の後、併せて行わせていただきたいと思います。それでは、引き続きまして村田委員からよろしくお願いいたします。

【村田委員】それでは、村田のほうから資料4に基づき、関西圏における障害学生支援のネットワークのひとつである関西障害学生支援担当者懇談会、通称KSSKについて紹介をさせていただきたいと思います。
まず、前置きですが、今回は地域での実務者の集まりについて紹介させていただくことになります。ただ、必ずしも地域という枠組みでのネットワークが、どの地域でも同じように構築されることが望ましいかどうか、ということは別の話だと思っております。もちろん、その有効さは実感していますが、地域という枠組みではなく、何らかの目的を共有して、あるいは設置形態別というような形も枠組みとしては考えられます。様々なコミュニティ、ネットワークが形成されていくことは、この分野にとってプラスだと思いますし、そのひとつの例として、KSSKについて紹介させていただきたいと思います。
そもそもこのKSSKが立ち上げられた経緯ですけれども、きっかけは10年ほど前にさかのぼります。当時、日本学生支援機構の障害学生支援事業のひとつとして、客員研究員であった筑波技術大学の石田久之先生が中心となり、関西圏の6つの大学を集めて、障害学生支援に携わる実務的な教職員の研究会が立ち上がりました。その当時の議論は、現在にもつながってくるものが多々あったようです。例えば、コーディネーターとしてどういうスキルや資質を身につけるのかといったことや、学内でどのように組織をマネジメントしていくのかというようなことが議論されていました。この研究会は一定の期間を経て終了しましたが、研究会で培ったネットワークを中心に、より広い活動としてKSSKを立ち上げていこうという話になり、平成20年から現在のような活動がスタートしています。
先ほど、職能集団という言葉が近藤委員からもありましたが、KSSKはまさに実務者が集まる職能集団といえるかもしれません。もちろん、管理職に当たる方も参加されますけれども、参加者のほとんどは支援の現場にいる実務者です。それぞれの立場も様々で、教員もいれば職員もいる、常勤の方だけでなく非常勤の方も少なくないですし、コーディネーターという名前で専門的な業務を行っている方もいれば、兼任で支援を担当されている方もいます。地域で集まることのメリットとしては、多額の旅費も必要無いですし、午前中は大学で支援業務にあたり、昼から懇談会に参加するというように、時間的な都合もつけやすいということがあると思います。
運営体制ですが、平成20年に立ち上がったときからつい先ごろまで、座長の石田先生をはじめ、10校程度の大学が世話人という形で企画・運営に携わっていました。基本的な理念としては「実務目線」で、キーワードは「面と向かって」ということかと思います。参加する人たちが、率直に、ざっくばらんに実務的なことを話し合う。いわゆるグッドプラクティスといわれるような例や理想的な支援、また、一般論としての話だけではなくて、実際の現場でどのような工夫をしているのか、理想どおりにできないときにどのような方法考えられるのかということなどを話し合うということが、この懇談会の特徴であるといえます。運営に関しても手弁当という言葉がありますが、まさに有志の集まりで、そのようなアットホームな雰囲気のなかだからこそ率直に意見や情報交換ができる場になっているようにも思います。
平成20年12月に第1回の懇談会を開催し、それ以降は年に2回のペースで開催してきました。昨年度までに16回の懇談会を開催しましたが、各懇談会での分科会の記録やアンケートなどは、現在、大学コンソーシアム京都のホームページご覧いただくことができます。
前回の第16回懇談会では、関西圏の実務担当者が70名ほど集まるような比較的規模の大きいものに変わってきてまして、そこでも様々なテーマで活発な議論が行われていました。また、分科会のなかでは、何らかの答えをみんなで見つけるということだけではなくて、様々な意見や支援の方法をきいたり、同じ地域だからこそ共有できるような情報交換をしています。さらに、その場で構築された人間関係は懇談会が終わった後でも継続しており、何か困ったことがあれば、手短に聞ける相手が近隣の大学にいる、そのようなネットワークづくりにも寄与していると思います。
現在は、KSSKが立ち上がった当時からの有志で運営してきたスタイルと少し異なった運営方法になってきています。この点が画期的だと考えている部分のひとつですが、もともとの有志の集まりから組織的な運営に移行したということです。立ち上がったのは平成20年なので、それほど前ではないというふうに思われるかもしれませんが、皆さんご存知のように、大学における障害学生支援は、この7、8年で大きく変化してきています。それは我々のネットワークでも同様で、社会的な動向であるとか、あるいは各大学での支援のニーズが高まってきていて、この懇談会への参加希望者もとても増加してきています。
このような変化を受けて、有志による運営体制というものをどのように継続していくのか、よりよい運営体制を模索できないかという議論が発生しました。このような流れのなかで、大学コンソーシアム京都が事務局となり、組織的にも安定した形で継続できないかと、つまり、KSSKは有志の良さを残しながら、その活動はより公的なものへと変化したのです。1年間ほどの移行期を経て、今年度からは正式に大学コンソーシアム京都が事務局を担い、活動を継続しています。
ちなみに、この大学コンソーシアム京都の障害学生支援事業というのは、ここで挙げているKSSKのほかに、例えばノートテイカーの養成講座を行ったりしています。障害学生支援専門の委員会も設置するなど、コンソーシアム組織として障害学生支援に積極的に関わるという先駆的な取り組みをしているのではないかと思います。KSSKは、今年度も2回の懇談会開催に向けてすでに動き出しています。
繰り返しになりますが、KSSKは一方的にレクチャーを受けるというものではなくて、現場の担当者が率直にそれぞれのノウハウや問題意識を共有すると場になっています。これは個人的な感覚ですが、地域としての背景・気質も影響しているように思います。とても良い意味で少しおせっかいであったり、面倒見が良かったり、難しいことは難しいこととして率直にシェアしていく。他の人も同じように困っているんだ、じゃあ一緒に考えてみようというとても単純なことが自然とできるような雰囲気が出来上がっているようにも思います。このような親近感のある感覚というのは、地域でのネットワークの最大の良さかもしれません。
冒頭で申し上げたとおり、この関西での活動というものがそのまま他の地域でも必要なのか、それはまた別の話だとは思います。各地域の状況は様々でしょうし、社会的にも大きく変化が起きているなかで、どのようなコミュニティやネットワークが必要になってくるかも変わってくるのだと思います。KSSKも、今後、AHEADをはじめとした様々なネットワークとの役割分担、連携のあり方をどのように整理していくのかということもあるかと思います。このような一地域でコツコツを続いてきた活動が皆さんの参考になれば幸いです。

【竹田座長】ただいまのお二方、近藤委員、村田委員の御説明に対しまして、御質問、御意見、よろしくお願いします。
【大島委員】AHEAD JAPANとKSSKさん、両方にお伺いしたいをしたいのですが、企業ですとか企業で組織されている団体との連携を、どのように考えているか教えていただければと思いました。こういった高等教育機関さんの組織と企業側と言うと、幾つかの側面があると思うのですが、例えば就職。各企業、就職エージェントさんの企業さん、障害のある学生さんの就労を支援するような団体だったり企業だったり、そういったところとの連携というのは、フォーカスに含まれているのでしょうか。また、就職ということ以外にも、先ほどもお話がありましたITの企業やIT以外でも障害のある学生さんを支援する製品やサービス、様々あると思いますが、そういったところとの連携がフォーカスに入っているのか教えてください。また、そういうところへの要望があれば、是非教えていただきたい。近藤先生には、米国のAHEADですとか欧州は、そういうところとの連携はされているのかというのもお伺いできればと思います。

【竹田座長】それでは、近藤委員からよろしくお願いします。

【近藤委員】まず、実際に企業の方々や、若しくは企業の方々によって組織される団体等との連携が現時点で存在するのかということですが、これは現時点では今、そういった団体との連携を、AHEAD JAPANとして進めるということは行っていません。ですけれども、それは積極的に行っていないというわけではなくて、今は、ここで先ほど挙げさせていただいたように、AHEAD JAPANに参加しているメンバーの多くが、体制整備と新しい学内でのいわゆる障害者差別解消法への対応ということについて非常に関心が高まっている、実際に体制整備を行わなければならない時期ですので、そのような部分についてのテーマが非常に多くなっているということであると思います。今後は、大学から就労への移行支援の部分の関心がかなり高まってくると思いますので、そういった連携というのは必ず行われてくるであろうと思いますし、理事会等の議論の中では、そういったところが時折触れられるということは実際にございます。
こういったAHEAD JAPANの体制をつくっているというのは、先ほども申し上げたように、今、実務者等が直面している問題であったり、今後こういったことを行うべきといった問題というのを、かなり私たちは柔軟に委員会のようなものを立ち上げて、その委員会はいわゆるインタレストグループじゃないですけれども、今後やっていかなければいけないことというピークを立てて、そこに様々なAHEAD JAPANの会のリソースをつぎ込むといったことを今後、次々に行っていくことになると思います。そういったところでやはりしっかりした形で企業の方々との連携というのは今後必ず起こってくると思います。
次に、2番目に御質問いただいたテクノロジーとか、そういった技術のことについてですけれども、AHEAD JAPANとして、今、確実に行っていることというのは、毎年の大会のときに必ず企業展示というものを行っていまして、そういった様々な障害のある方々の学びや生活を支援するテクノロジーを持っておられる企業さんというのがそこに出展をされて、その参加校の方々とフェース・トゥ・フェースで議論をしたり、物を実際に見ていただいたりということを行っています。
それとは離れたところで、これは支援の実践の専門性を高めるということと、実務的に支援をより円滑に進めていくために、テクノロジーについての知識を実務者がつけていくということも、過去、やはり理事会等で議論になっていますけれども、それを現時点で大々的にやるというよりも、このAHEAD JAPAN自体というのは、例えば会員からの様々な取り組みの発表というのが集約されますので、その中でこの一般的支援技術と呼ばれるような、テクノロジーについての発表というのが見られていたり、そこでディスカッションが行われるということが起こっているので、今後さらに体制整備の部分の関心というのが、次のステップの実務とさらに支援の方法論のところで、テクノロジーの話題であったり専門性というのがフォーカスされていくことは、これもまた確実に起こるだろうと思っています。
3番目に御質問いただいた、海外ではそういった企業との連携であったりテクノロジーについての議論というのが行われているかどうかということなのですけれども、これはどちらもイエスであると思います。さらに、AHEAD JAPANの中では、大会のときに、例えば米国のAHEADですと、大体、毎年2,000名を超える参加者が集まってきて、それから、そこで同時並行的に行われているセミナーの数というのも、100は超えてはいないと思いますけれども、数十にわたって様々なワークショップであったり小さなシンポジウムのようなものが並列で行われていて、その中では、就労の移行であったりとか、特に米国というのは、大学の教育機関というのが、いわゆる障害学生支援ではなくて、一般的な様々な職能についての専門性を高めるような位置づけというのがありますので、それを大学の教育プログラムの中でどのように行っているのかという実践報告というのが非常にたくさん行われていますので、そういったものというのは今後深まっていくのではないかというふうに思います。
それと、本日は申し上げなかったのですが、AHEAD JAPANとマサチューセッツ大学のボストン校と、日本財団さんとの3者の連携で、今年の10月に、数校の大学のキャリアサービスの方々と、障害のある学生の支援を担当しておられる方々、その2つの部署が米国のマサチューセッツ大学ボストン校に研修として出かけて、キャリアサービスと障害学生支援をやっている方々というのが、どういう連携であったり具体的取り組みをしているのかというのを、1週間にわたって研修を行うというプログラムが予定されていて、その後方支援というのはAHEAD JAPANも行っていますので、そういったことの中でもやはり得られた様々な知見がまた日本の取り組みにも反映されるといったことが、今後深まっていくだろうというふうには感じております。

【村田委員】KSSKとしては、現時点で企業との密接な連携はありません。ただ、当然、就職に関する話題は絶えずありますので、そのようなテーマの分科会を設けて、就職、あるいはキャリア支援について話し合う場合もあります。
一方、このKSSKは何かの会議体、つまり全体として意思決定をするとか、ひとつの団体として物事を検討するとか、そういった集まりではありません。基本的には実務者の集まりで情報共有していくのですが、地域で実施することのメリットとしては、やはり就職に関するものもあると思います。例えば、地域の企業、あるいは地域の就労に関する支援機関、そういったところの情報が共有しやすいというところのメリットは非常に大きいと思っています。例えば、障害のある学生の就職活動を後押しする際に、どうやっていいかわからないという場合があったとします。こういう課題については、地域の資源としてこのようなセンターがあるとか、このような企業があるというような情報交換が可能になりますし、そのことは障害のある学生にとってとてもメリットがあることかと思います。
やや話は逸れますが、同じような考え方で言えば、自治体であるとか、地域の初等・中等の教育機関など、様々なカテゴリーとの連携も重要かと思います。高等教育として各大学が連携をするという形だけではなく、その他のカテゴリーとの連携も今後は必要になるのではないでしょうか。

【柏倉委員】村田委員に質問ですけれども、大変先進的な取り組みだと伺いました。愛知でも名古屋大学や日本福祉大学で度々そういった連携をしようということで、企画したり、実際、愛知教育大学なんかとは何回かやっているのですけれども、なかなか盛り上がりに欠けて、とても参考になるなと思ったのですけれども。
3つほど聞きたいのは、1点目は、大学によって学内の支援の得意・不得意があると思うのです。支援者、コーディネーターを含めて。他の大学のそういった支援を活用したりというような取り組みがあるのかということが1点目です。
2点目ですけれども、先ほど座長からもありましたけれども、大学においては学生による支援に依存するというのが、これ、いいか悪いかは別として、多くの大学であると思うのですけれども、そういった支援学生の支援の質の担保も含めて、学生間の交流みたいなものもやられているのかということ。
3点目ですけれども、障害のある学生さんなのですけれども、それぞれの障害種別というのは、聴覚とか視覚とかいろいろあるわけですけれども、大学によって非常に孤立しているケースがあります。例えば視覚障害の学生が集まって様々な経験交流するということは重要だと以前から指摘されているのですけれども、聴覚の分野などは全国的な動きもありますが、そういった割と希少な障害のある学生さんたちが集まるということが非常に重要だと思っていて、そういう当事者の学生の集まりみたいなことをやられているのかどうか、あるいはそういう検討をされているのか、この3点についてお願いします。

【村田委員】1点目からお答えできればと思います。柏倉先生がおっしゃったように、大学ごとに規模も違えば、どのような学生がいるのかも違いますので、やはりそれぞれで得手・不得手、経験の有無があると思います。ただ、こういう時こそ他大学とのネットワークは有効だと思います。例えば、ある程度の支援経験がある大学でも、全く対応したことのないような新しいケースが出てくる場合があります。そのようなときに、自分の大学にとっては初めてのケースでも、隣の大学ではもうすでに対応した経験があるという場合もあります。顔見知りになっていれば、どのように対応したのかなど、参考になるような話が聞けることもあります。
また、ノウハウや資源の共有については、KSSKが仲介をするなど、具体的にその役割を担っているわけではないのですが、そこで構築されたネットワークをもとに、機器類を貸し合ったりすることはあります。特に、支援に関する機器というのは比較的高額なものがあったりしますので、試しに使わせてもらうというようなことは有効だと思います。また、画期的なのは学生サポーターの共有ですね。学生サポーターについても、KSSKが旗を振って具体的な派遣を担っているわけではないですが、近隣の大学とのネットワークができることによって、サポーターの交流は行われつつあります。例えば、本学、京都大学から近くの私立大学に行って支援を担っている学生もいます。具体的に言えば、通信制のコースをもっている大学で、夏のスクーリング期間に大量のノートテイカーやパソコン文字通訳者が必要になる、そのような場合に、本学の学生サポーターがその支援を担っているというケースも起こっています。
2点目の学生サポーターの交流についてですが、これに関しては、KSSKとしての取り組みはございません。ただ、KSSKとまた違った関西圏のネットワークとしまして、近畿地区障害学生支援協議会という集まりがあります。本日は関西大学の神藤さんもいらしていますけれども、関西大学さんもそのメンバーで、近畿地区の7大学が集まっているネットワークです。この近畿地区の協議会は年に一度、障害のある学生や学生サポーターの交流会を実施しています。昨年度も多くの学生が集まって、支援に関する様々なことをディスカッションしたりとか、交流したりということをやっています。これはKSSKの活動ではありませんが、学生間の交流につながっているかなと思います。
一方で、3点目の当事者のみの集まりについてですが、KSSKにしても近畿地区の協議会にしても現時点でそのようなネットワークづくりは行っていません。ただ、先ほど申し上げた学生間の集まりの中でお互いが顔見知りになって、当事者間で情報交換をしたりということは、以前に比べると進みつつあるように思います。また、別の話になりますが、いくつかの大学の障害のある学生を集めて就職活動のサポートをしているという例もあります。昨年度、本学で実施したのですが、企業の方をお招きして、就職にあたっての準備ですとか、就職活動の進め方であるとか、また、社会において必要になることとは何かということを、ひとつの大学だけだと対象の学生が少なくなってしまいますので、複数の大学が集まってそのような取り組みをしているケースもあります。ちなみに、本学で実施したものは、ACEという社団法人にお世話になりながら、実施させていただきました。

【竹田座長】今、お名前挙がりました神藤委員から、同じ地域で追加でお願いできれば。

【神藤委員】関西大学の神藤です。
関西では、先ほどから何度もお話に出ているように、連携が進んでいます。KSSKさんにも参加者として参加したことがありますが、本学は2013年にセンターができて、それから、今、整備を進めていっているのですが、本学では比較的、大学内の風土が支援していきましょうというようなものの下地がありましたので、まだやりやすいところがあったのですけれども、多くの大学さんでは、やっぱり支援をしたいと思っている職員が十分な支援をできているわけではありません。また、うちもまだできたばっかりの大学ですけれども、支援のことを教えてほしいというふうにお見えになる方がいらっしゃるのですけれども、中には御自分の大学では、こんなことができないのですというような、愚痴のような話をされて帰られる方もあって、現場はやはり大変。私は職員としてこの場におりますので、職員の視点から発言させていただきますと、現場の多くの職員はやっぱり最前線に立って大変な毎日を過ごしていまして、「支援の窓口はあるけれども、雇われたのは非常勤の自分だけであるとか、誰からの指示もなく、どうしていいのかわからない。」そんな話をしていった方もいらっしゃいます。
KSSKの参加者も先ほど手弁当でというようなこともおっしゃっていましたけれども、障害学生の対応を自分がしているけれども、大学として、部署として支援しましょうというようになってないところもあって、「関大さんは何でそういうふうにできているのですか」、という質問も受けます。この検討会は、できればそういう現場の職員が、検討会の話し合いがあって、それを基に支援が進められるような、それが取りまとめになるのかどうかはちょっとわからないのですけれども、そういうものができればいいなと思っています。
毎日、そういう現場の職員は建設的な対話というものを繰り返しながら、初めての事例に奮闘しているわけです。大学というところはやはり、先生方、皆さんもよく御存じですけれども、前例主義ですので、初めてのことを実行するであるとか、予算をつけるというのは本当に難しい。それぞれの現場は学内の様々な資源を結びつけたり、他大学の状況を聞いたり、いろんなものを結びつけてコーディネートしてやってきていますけれども、組織として、大学として、そういったことが進んでいったらいいなというふうに思っています。
今、7大学の近畿地区の協議会のお話が出ましたけれども、その7大学ぐらいですとかなり支援が進んでいまして、ただ、参加者は自分のところの大学だけでとどまらせるのではなくて、他大学にどうやったら影響を及ぼしていけるのか、ということもしておりますので、この検討会でもそういう話ができたらと思っています。
地域ごとのことで言いますと、例えば昨年、(日本学生支援機構の)体制整備のための研修会が行われましたけれども、できればまた地域ごとで、希望者が参加するということももちろん必要ですが、できればもうちょっと強制力のある、大学の中で決定権のある方に参加を促すような研修会を行っていただくと、現場としては支援がやりやすくなるのではないかと思います。

【殿岡委員】全国障害学生支援センターですが、第6回か7回のころからオブザーバーのような形で、地域外ではあるですが、KSSKさんには参加させていただいています。分科会も少人数で、本当の小さなグループにということで、自分が話題を出せるような仕掛けがたくさんあったりとか、あとは、話しっ放しではなくて、必ず会議に報告の場があって、他の分科会のこともきちんとわかるような運営がされているのが、とてもいい取り組みだと思います。
本当に特筆すべきなのは、結果的に関西圏の支援の担当者の方は、人事交流、ある大学で人が足りなくなった、あるいは人が余ったといったときに、この人事交流がされていることが関西圏の障害学生支援を豊かにしているし、とりわけ京都市という場所に限れば、KSSKとしては京都市だけじゃないのですが、京都市周辺に限って言うと、一地方自治体としては極めて高いレベルの障害学生支援が維持されている。それはやはりKSSKがあったからだというところに尽きるのかなと思います。
加えて、これは是非文科省の方に聞いていただきたい部分ですが、JASSOがまいた種、そして、JASSOは当初全国各地に同じようなものをつくろうとした。いろいろな事情の中でそれがかなわなかった。だけども、こういった中において、KSSKだけがしっかりと生き残りをして、花開いていった。ここの部分に関して、是非本省の方にもそれを取り入れてほしいと思ったことと、それを現場の地域の人がどう生かして根付かせて、そして今日のところへつなげていったか、そこのプロセスの部分を是非本省の方には感じていただけると、村田さんの話がさらに奥深く見えてくるのかなと思います。

【村田委員】コメント、ありがとうございます。少し補足しますが、人材交流というのは、結果としてそういうことが起こっていて、良い側面もあるといえますが、率直にいうと、それが頻繁に起こってしまうということが本当に良いことなのかというのはまた別の問題です。ただ、実際にそうやって現場レベルでの交流が進んでいることによって、人材交流が起こっているのは事実です。結局、KSSKがなぜ続いてきたのかということを私なりに考えると、1つの要因につきるように思っています。それは現場は困っている、ということですね。現場の支援担当者は、障害のある学生も多くの学生を同じように学んで欲しいし、そのための支援を一生懸命考えています。ただ、ノウハウや資源が足りないという困り事も絶えずあるわけです。この状況は現在でも続いていますし、このようなネットワークが継続しているということも、そのことを物語っているのだと思っています。
実際の支援の現場は、単にノートテイクつけましょうとか、移動介助をしましょうとか、そういう単純な世界ではありません。個々のニーズの聞き取りからはじまり、様々な折衝を行いながら、ひとつの支援を作り出し、馴染ませていくというところにはインフォーマルなノウハウといいますか、コツのようなものが有効になる場合があります。そのような情報を交換することには、とても大きなメリットがあると思います。場合によっては、〇〇大学では、このような対応をしています、という情報は、自分の大学で同じような支援を構築していくときの交渉にとても役立つ場合もあるのです。
このような実務者の集まりは今後も継続していけば良いと思うのですが、一方で、現場の負担は大きくなってきています。このような状況をどのようにバックアップできるのかということは喫緊の課題ではないでしょうか。例えば、国立大学においては障害学生支援に関する教員の配置を(国立大学法人運営費交付金により)促進していただいておりますけれども、実態としては、支援にあたる現場では、1人1人の教員が各大学で1人ずつ配置されて、各大学の障害学生支援を賄っていくというのはかなり厳しい状況があります。立場が教員なのか、職員なのかというようなことは置いておいて、現場でコーディネートする人材をどのように育成するのか、また、そのようなコーディネーターが効果的に機能するための処遇などについて、高等教育全体としてしっかりと議論していかなければならないと思っています。

【西村委員】AHEAD JAPANのことですけれども、こういう非常に今、大事な話し合いがされていく会議ですけれども、ここに参加していない大学、それから、国立大学でも専任の教員が配置されていないところもあると思うのですけれども、そういうところがまさに困っているときに、こういう情報って非常に大事になってくるし、ああこういうふうに考えればいいんだと思うと、じゃあ人を雇おうかなとか、支援室をつくろうかなというふうになるような気がするので、これをどういうふうに参加していないところにつなげていくかというのが1つ課題としてあるかと思いました。
それから、もう1つ、村田委員のKSSKのことですが、地域的にこういうふうに集まるということ、すばらしいなと思っていて、1つは、実務者目線でやっていたことが、コンソーシアム京都の事業の1つとしてきちんと位置づけられたということで、その実務者目線ということはずっと担保されているのかということ、あと、コンソーシアム京都としてというのはすごいいいなと思ったのですね。
追加ですが、私たち富山は、聴覚障害の学生が昨年度入学して、地域というのがなかなか難しかったので、同志社大学さんのピアサポーターの人たちと富山大学のピアサポーター、当事者と交流したのですね。そうすると、歴史のあるところのピアサポーターの方々とそういう人事交流をしたことで、すごくこちらの意識も変わったし、自分たちでそういうミーティングをするときの段取りのいいこと、すぐ学ぶのです。だから、地域では、まだまだなのですけれども、そういうところと、すぐれたところと目的を持って交流するということの意味も非常に感じております。

【村田委員】まず、組織が移行したことによって、実務者目線というところが担保されているかどうかというところです。ある意味、これが1番KSSKの色といいますか、特徴的なところなので、移行するにあたっては、これをどのように確保するかということが大きなテーマでした。KSSKにはもともと世話人といわれる各大学の関係者がいたのですが、その役をやっていた方々がコンソーシアム京都での運営に変わってからもそのまま幹事になっています。おかげさまで、実務者目線でやっていくということは、今でも確保されていると考えています。その大きな理由としては、コンソーシアム京都でKSSKを引き継いでいこうとなったときに、その他の団体等、具体的にいえば日本学生支援機構やAHEAD JAPANであるとか、それぞれのネットワークがあったので、そのようなところとは違った、地域の良さ、実務担当者が気兼ねなく集まれる場所ということを前提にしていこうという考えがあったと思います。むしろ、だからこそコンソーシアムという組織でこの事業を実施する意義があるのではないかということで、合意できたものだと考えています。
今の話にもつながりますけれども、コンソーシアム組織に移行しまして、事務局体制がしっかりしたというのが非常に大きいです。手弁当でやっていたこともあり、参加者の名簿をつくったりとか、分科会の運営をしたりとか、会場を予約したりということは、有志で担っていました。もちろん、それ自体は悪くないことなのですが、参加者も増えてきたりするなかで事務局体制がしっかりしたことは良かったと思っています。

【矢澤委員】先ほど西村委員がおっしゃったAHEAD JAPANの認知の拡大について、是非とも高専も入れていただきたいというお願いです。私も不勉強で恥ずかしいことですけれども、高橋委員から実は今回、第2回のお誘いを受けまして、高専の分科会もしていただけるということで大変有り難く思っています。高専は、前回お話したように、高校生年齢からいるものですから、実はこういうネットワークとか情報共有とか研修とかいうときに、どこにまぜてもらえるんだろうと。私、仙台ですけれども、幸いなことに、私の学校の場合、仙台市の発達相談センターというのがあり、この辺の高校情報交換会というのにまぜてもらえているのですけれども、全国の高専は地元のそういうまぜてもらえる研修会とかの組織がなくて、困っているところがいっぱいあります。いろんな全国規模の研修会とか、JASSOさんのを初め、出るのですけれども、今回、AHEAD JAPANのような組織が立ち上がったということを全国の高専が知ると、結構そこに行って研修したい、情報共有したいというのがふえてくると思いますので、是非そこをよろしくお願いします。

【竹田座長】それでは次の、本日の大事な論点の1つですが、初等中等教育段階から大学等への移行に関する考え方ということで、市川委員に御説明をお願いします。

【市川委員】まず、私ですが、都立の清瀬特別支援学校の校長です。特別支援学校というのは、御存じのように視覚障害特別支援学校、聴覚障害特別支援学校、肢体不自由特別支援学校、知的障害特別支援学校と病弱児の特別支援学校がございますが、その中で知的障害の特別支援学校の校長をしています。今回のテーマが初等中等教育ですから、特別支援学校の高等部、若しくは高等学校から大学への支援の必要なお子さんたちの接続の円滑化ということについて、現状をとのお話だと思いまして、簡単な資料をつくらせていただきました。
お手元の資料ですが、これは東京都立の公立の特別支援学校の高等部から大学進学者数というのが、大体、公立学校統計調査によりますと、この程度ありまして、視覚障害特別支援学校、聴覚障害特別支援学校については、10そこそこの数の方が大学に進学なさっています。これ実は、今から思えば、卒業者数を一緒に持って来ればよかっのですけれども、それを忘れてしまったので漠然とした数字になっているのですが、ざっくり言わせていただきますと、視覚障害、聴覚障害の特別支援学校の高等部の在籍者数、卒業者数というのは、非常に少ない、40とか20という数になります。肢体不自由の方になると100人ちょっと超えるぐらいで、一番多いのが知的障害の方で、1,000人を超えるという形になっています。その中でも1名しか行かれてないということを先にここで押さえていただきたいところです。
私の特別支援学校の校長の仲間にお話を聞いたところ、視覚障害特別支援学校からの進学のお子さんというのは、障害がある生徒として受験をすることが明確でありますと。受験しているときから配慮をしていることが多いから、合格した後も特別支援学校から大学へ必要な支援等について引き継ぐことがほとんどですよと。特別支援学校で作成した個別の教育支援キットを活用して引き継ぎを行っている場合もありますよということです。
この引き継ぎというところが私、非常に重要だと思っています。障害のある方たちへの支援というのは、例えば視覚障害の生徒さんであるからこういう支援ということではなくて、Aさんにとって必要な支援を引き継がなくてはいけない。Bさんにとって必要な支援を引き継がなくてはいけない。そう考えていますので、その生徒さんが特別支援学校若しくは高等学校でどういう支援を受けていて、どういう支援が必要になっていくかというところは、しっかり引き継いでいただかないと、その生徒さんにとってうまく回っていかないということになると思っています。
同じように、聴覚障害特別支援学校の校長に聞いても、受験のときから必要な支援について連携を図っているので、合格した後も大学の学生課等を通して必要な支援については必ずこの引き継ぎを行っているということは聞いています。そのときに個別の教育支援計画等の続きを使うこともあるとは聞いています。
ただ、一方、高校等、次のページへいっていただきたいのですが、視覚障害特別支援学校、聴覚障害の引き継ぎについて聞きますと、特別支援学校から大学へ進学する場合は、はっきり言いまして、特別支援学校なので、必要とする支援の程度が明確なケースであるとも言えるのです。コミュニケーションに障害がはっきりあると。本人も保護者もそのことを前提として進学を考えているので、支援もやりやすい部分もあるし、また、非常にそれが重要な要素になっているということです。
ただ、一方、特別支援学校以外の学校に在籍しています難聴の生徒さんや弱視の生徒さんの場合には、支援の引き継ぎが行われにくいことも考えられますというのが、視覚障害とか特別支援学校の校長の話でした。これは必要な支援が、程度が軽いと書きましたけれども、重たい軽いという言い方がちょっと適切かどうかわかりませんが、量が少ないと言いましょうか、そういうところがあるのかと思っています。
特別支援教育における引き継ぎというのは、先ほど話したとおり、支援を必要とする生徒について、学校間でその内容を引き継ぐことが非常に重要だと言われています。これは小学校、中学校、高等学校を引き継いでいって、できれば大学若しくは就労先へも支援を引き継いでいくということが特別支援教育の基本的な考え方になります。それも先ほどお話をしたとおり、知的障害だから、聴覚障害だから、発達障害だからこういう支援ではなく、A君、B君、C君、D君の支援を引き継いでいかなくてはいけない。そのときに必要になるのが個別の教育支援計画を作成することだということまで、文部科学省も東京都なんかの場合でも、教育委員会が学校の先頭に立って進めているところですが、なかなか個別の教育支援計画自体は特別支援学校だけで作成されるものではなくて、全ての学校で作成されることが望ましいと言われていますが、小学校、中学校、特に高等学校においては、なかなか作成が難しい、活用が難しいと言われています。
実はこの話題を提供しようと思いましたら、ついこの間の朝日新聞か何かの報道で、ちょっと名前を忘れましたが、カルテという言葉が出ていました。引き継ぎが難しいからカルテをつくっていくんだということが文部科学省さんで事案があるようですので、私も同じような考え方です。
次のページに、個別の教育支援計画についての絵を描かせていただきましたが、乳幼児期から学校を卒業まで長期的な視点に立って云々(うんぬん)かんぬんなのですが、私はここで一番重要なのは情報の引き継ぎだと思っています。小学校ではこういう支援をしてきた、中学校ではこういう支援をしてきた、高等学校ではこういう支援してきたので、大学に入っても同じようなことが必要になってきます、ということを引き継いでいくことが重要と思っています。ただ、なかなかそれがうまく引き継ぐことができられないということが大きな課題になっていくと思っています。
そこで、特に発達障害の生徒の引き継ぎについてお話をしていければと思っています。今言ったように、視覚障害とか聴覚障害のお子さんの場合には、特別支援学校卒業生が多いので、引き継ぎについては、数は少ないですけれども、我々の方で頑張ってやっている部分もありますが、発達障害のお子さんの場合には、知的障害を併せ有する発達障害の生徒の多くは、知的障害特別支援学校の高等部を選択するケースが多いので、私の学校とか知的障害の特別支援学校の高等部に進学しますが、知的障害のない発達障害の生徒の場合には高等学校に進学する形になっています。
先ほど言いましたように、特に高等学校ではなかなかこの個別の教育支援計画の作成というのが難しい。活用が課題で、大学等への進学情報の引き継ぎの在り方の検討をする必要があると、高等学校の校長先生からも聞いています。大学の先生等から聞くときも、高等学校での支援の必要なことがあったことを、大学側も入学したときに教えてもらえると、もうちょっとうまくやれたんだろうけれども、大学へ入ってから支援が必要なお子さんだとわかって、どうしていいんだかわからなかったり、若しくは、その生徒さんの方もうまく学校に溶け込めなくなってしまう課題があるということは聞いています。ただ、これは大学だけの問題ではなくて、中学校から高等学校への情報の引き継ぎも同様に課題だということです。
これはなぜそういうことになっているのかという、私なりの今までのいろんな聞き取りをしたところの私見という形でまとめさせていただきましたが、個別の計画等の活用をして情報を引き継ぐことをしていきたいのですが、一番の難しいところは、保護者や本人の了解が必要なのですが、了解を得ることが難しくて、例えば中学校から高等学校へ、高等学校から大学へ、なかなか支援の情報を引き継ぐのが難しいということが言われています。特に保護者の方・本人の了解が難しいと。なぜかと言いますと、発達障害の生徒の課題である対人関係、集団適応につきましては、場面や集団が変わると改善されるのではないかという期待を保護者の方や本人が持っている場合が多くて、中には、大学に進学されると多分改善されるだろうと、若しくは、中学校から高等学校に進学すると、その課題は解決されるのではないかという期待で、引き継ぎについての了解を得ることが難しいということを聞いています。
もう1つが、これはもう一方の考え方ですが、対人関係や集団適応の課題というものについては、場面や状況によって変化するために、高等学校では特段問題なく生活できていても、大学に進学して顕著にあらわれることが多々あるとは聞いています。これは、高等学校の場合には、明確な時間割があり、特に今、高等学校は結構厳しい学校もありますので、制服とか学校のルールとか非常に決まっているので、自己選択・自己決定というものが少なく、問題なく発達障害の生徒さんでも過ごせていても、大学に行くと自己選択とか自己決定をしなくちゃいけないことになりまして、そこでうまく大学でいかない部分があると。
あと、学級とかグループが決まっている高等学校では、集団の中でうまくいかないようになっても、うまくいかない部分が少ないのですが、ゼミ等の集団に適応することが難しいみたいなことも聞いています。また、ゼミ等で自ら意見を言ったり他人と共同作業をすることが難しくて、大学に行くとうまく生徒さんが大学に溶け込めないなんていうことは話の中で聞くので、ここら辺も課題になると思います。
先ほど松﨑先生のお話を聞いて思ったのですが、実は特別支援学校の視覚障害とか聴覚障害の生徒さんも、まさに人とのやりとりとか人と話し合う機会を、しっかり学校の中で育てておかないと、大学に入ってうまくいかないということは、私も聞いたところもあるところです。そこら辺は多分、特別支援学校で今後、課題にしていかなくてはいけないところなのだろうと。また、同じように、発達障害のお子さん等についても、人とうまく話し合いをしたり、うまく集団に溶け込めるということについては、大学に行く前に高等学校等でしっかりその辺の力をつけていく必要もあるのかなとは思ってはいます。やっぱりそれが、本日の話題ではないのでしょうけれども、1つ大きなテーマになってくるのかなと思っています。
ただ、一方、次のページへいっていただいて、支援を必要な生徒さんが情報を伝えていくということについては、私は、大学に支援が必要な生徒であるとの情報が伝わると、こんな支援が受けられるとか、こんな相談してもらえるとかなどのメリットがあることを、保護者・本人に理解していただくことがまず重要なのかなと思ってはいます。というのは、先ほど言ったみたいに、情報を伝えてほしいと高等学校なり特別支援学校が話をしていても、いやいや、それは待ってくださいと言う保護者が多いわけですよ。そのときに、言葉は悪いのですけれども、強引にってあんまりよくないかもしれませんが、やはり伝えるためには、伝えたらこういうふうなことがあるんだということがあって初めて、情報というものはうまく伝わっていくことがあると思っています。
例えば相談機能としてこんなことがあるのですよ、支援機関はこんなことがありますよ、具体的にこんな支援が行われていますよ、みたいなことがあれば、支援というものの引き継ぎのところが深まっていくと思っています。そうすれば、このことを前提に高等学校等では、一人一人の支援の必要なお子さんたちについて、大学でもうまくいって、大学でもうまく勉強に取り組んでいただけるために、支援を引き継ぐための手立てがもうちょっと深まっていくのかなとは思っています。
ちょっと話が脱線するのですが、一方、今日お話を聞きますと、各大学での支援の必要なお子さんたちについてのサポートというのは非常に進んでいる部分があるので、そこら辺をちょっと高等学校があんまり知らないんじゃないかなということが、私の中では思いがありました。これはちょっと極端な言い方かもしれませんが、今、小中高大と連続の中で、高等学校段階が一番支援についてはちょっと、遅れたという言い方は良くないですね、今後頑張っていただかなければいけないところが多々あるといいましょうか、あるのかなということはちょっとチラッと、感想ですけれども思いました。
もう1点、先ほど言いましたように、聴覚障害、視覚障害、肢体不自由のお子さんについては大学進学ということがあるのですが、知的障害のお子さんについては、1,000人以上の方が卒業する中で1名の方しか(大学に)行っていない。主に知的障害のお子さんたちというのは、今は一般企業へ就労することが目標になっています。大学というところは、知的障害のお子さんについて、門はこれを開いていくんだろうか、どうなんだろうかということについて、今回、レジメには書きませんでしたが、私もそれについてわからない部分があるので、ちょっと議論していただけると有り難いかなと思っています。
ちなみに、カルチャーとしてといいましょうか、文化として大学で、生涯教育として、例えば高等教育の一部を味わうというのがいいでしょうか、そこに参加するというのも、知的障害の方の人生において、私は非常に重要な意味をなすこともあるのではないかと。学問としてという、うまく言えませんが、資格を取ったり学問として突き詰めるということ以外に、大学というところで、そういうふうなものに参加していくような場が設けられるということも、知的障害の方にとっては非常に人生を豊かにする1つの考え方ではないのかなという、これは個人的な思いはあります。ただ、それがいいのか悪いかは私もちょっとわからない部分が多々あるので、その辺は御議論を頂く必要があるのかなと思っています。

【竹田座長】大変示唆に富んだお話だったと思います。今、お話の中でカルテということについてお話が出てきましたので、補足を初中局の田井専門官に御出席いただいていますので、御説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。

【田井専門官】新聞報道でカルテを今後義務づけるというような報道がなされましたけれども、中央教育審議会の学習指導要領の改定の議論の中でも、本日ちょうど特別支援教育に関する部会がありました。その審議まとめの中で、今後、先ほどお話のありました個別の教育支援計画ですとか個別の指導計画、今は特別支援学校の児童・生徒に義務づけられているものですけれども、それを小学校・中学校の通級による指導ですとか、特別支援学級に在籍している児童・生徒についても義務化していこうという方向で議論がなされています。
また、高等学校におきましても、平成30年度から通級による指導を開始することを予定しておりますので、そういったお子さんにもこういった個別の指導計画、教育支援計画が作成されていきますので、(これらの計画の)作成は今後促進していきたいというふうに考えているところです。

【殿岡委員】当センターも先月、東京都教育委員会と意見交換会を持ちまして、そこでも様々な話を聞かせていただきました。ちょっと保護者・本人がなかなか同意できないという問題、これに関しては、これは当事者の側(がわ)からお話したいのですが、やはり個別の指導計画、個別の支援計画の中の権利性が非常に弱いところがあります。なぜかというと、これは中教審のインクルーシブ報告がやはり合理的配慮を指導の1つ、評価の1つとして位置づけて、「合理的配慮をよくできました」マル、「合理的配慮をよくできませんでした」バツという評価の仕方が、これがやはり自分が評価を受けてしまっているということと権利性が担保されるところに関係にあるのですね。
逆に、東京都教育委員会へ話をすると、例えば、Aさんという教員、Bさんという教員がつくった支援計画や指導計画の中に、どのような不当な差別的取り扱いが存在していますか、いませんか、あるいは、どのような合理的配慮の不提供が存在していますか、いませんかという評価は、今誰もできないのです。校長はできるか、あるいは支援コーディネーターができるか、都教委ができるかと言ったら、誰もできない。だから、ここを限りなく追求していくと、恐らくその本人が納得できる指導計画のところにやはり1歩近づく。ただ、これに近づけるためには枠組みが必要で、それに関しては、本検討会が、大学相手に模範を示すことだと私は思っているのですね。そうした合理的配慮の決定プロセスをいかに小・中・高等学校などに徐々におろしていけるかというあたりがすごく大事なのかなと思っています。
また、先ほど知的障害はという御発言でしたが、当センターでも、正課の学生として10名前後の知的障害の学生が在籍していることを何度か確認させていただいています。発達障害とは別の純粋な知的障害で10人前後ですね。
そして、本検討会の関係でいうと、検討の対象範囲に、学生には、科目等履修生・聴講生等、研究生等を含むというくだりがあるのですが、これは前回の4年前の検討会で私が当時の松尾課長、今、また審議官にお聞きしたところは、これには知的障害がある聴講生なんかも含むと。だから、知的障害のある学生の合理的配慮も第1次まとめでの大学における合理的配慮の範囲内であるということは前検討会ではあったものですから、この辺が出てくると、恐らくまた見方が変わってくるのかな。さっき言った支援計画、指導計画の中に潜んでいるあるいは内包された、そういった差別的事例や差別解消への取り組みという視点から是非御意見を頂ければ、面白い議論ができるかなと思っています。

【市川委員】そのことに直接答えられるかどうかわからないのですが、個別の教育支援計画でつないでいく情報の1つというのは、やっぱり本人とか保護者、私は本人がすごく大切だと思っていますが、願いとか思いをつないでいくということがあると思っています。ですから、大学に入って、例えばどんなことが学びたいとか、どんな人生を送りたいとかいうことをつないでいった上で、その支援をどこまで大学でできるのかと。その中で確かに合理的配慮という視点でどういうことがやれるのかということが合意形成をしていく必要があると思いますが、最初に考えるべきところというのは、本人・保護者がどういうふうに思っているのかということをまず受けとめていただきたいというところが大切なのかなと思っています。
あと、2点目のところで知的障害のお子さんのことなのですが、まさにちょっと私は今までの検討会の議事録をよく読めてなかったところなのですが、聴講生、まさにそういう話で、全ての教科には出ていないけれども、例えば大好きな音楽だけは大学の音楽のレベルに参加するというのも、ちょっとしていただけるといいのかななんて思っています。というのは、つたない経験を言わせていただきますと、私が、文部科学省のお金で行ったのですが、イギリスの方に自閉症の勉強で行っていたことがありまして、そのときに向こうの学校で勉強、学生としていたときに、これからカレッジに行ってくるという話があったのですよ、自閉症のお子さんが。知的障害があるお子さんだったのですけれども、カレッジに行くって。えっ何しに行くのだと思ったら、まさにカレッジにカルチャーを学びに行くのだという感じで、私もその制度はよくわからないのですが、ユニバーシティだとちょっとあれなんだけれども、カレッジというのはそういうふうな広く受入れられるところみたいなことをお話があったので、日本なんかでもそういうのが広まっていくと、人生を豊かにする高等教育ということになると思って、少し提案をさせていただいたところです。

【高橋委員】殿岡委員の質問にもやや関係しつつというところですけれども、市川先生のお話、私見という形で発達障害関係の課題のあたりも、私も非常に納得できるところが多い、考えが通じると思って聞いていました。
課題に関してなのですけれども、これは松﨑先生の障害のある学生がなかなか自己主張ができない、配慮を求めていくようなことがやりにくいといったようなお話とも関連してくるのですが、確かに子供の発達段階を考えたときに、私、心理学の専門ですけれども、初等教育段階で自己決定・自己選択、これは確かに限界があるとは思うのですが、ただ、中等教育段階になってきますと、ある程度の条件を整えれば、かなり自分で判断とか自己決定ができるようになってくると思うのです。ただ、私の印象では、どうも特別支援教育と言いますと、周囲がおぜん立てをしてくれる、決めてくれる、そういった部分が大きいように感じています。そういった中で、中等教育段階で子供のそういった自己決定や自己選択を育てていくような取り組みというようなものがあるのかというのを質問できればというか、あるのかな。教えていただければと思います。

【市川委員】特別支援学校においては、知的障害の軽い生徒さんが入学している学校もございますが、そういうところでは、一般企業に就職して働くためには、やっぱり自分で自己選択・自己決定ができないと、どちらかというと、決められた仕事よりも応用力のある仕事を求められることが多いので、そういうふうに自分で選択するようなこと、決定することをすごく大切にする教育が行われています。
それと、発達障害のことについてお話をいたしますと、今は非常に発達障害のお子さんの教育について、小学校、中学校、高等学校でも、特に高等学校だとこれからのことがあると思いますが、先生が御専門だと思いますが、やっぱり人とのやりとりだとか社会性ということを学ばなくてはいけないということになったときに中核になってくるのが、人とのやりとりとの部分には自己決定とか自己選択とか、自分の意思を周りに伝えるということが大切になってきますので、そういう教育はやっていかなければいけないと言われていると思っています。
実は発達障害について私はちょっと専門で勉強してきたことがあったので、そのときの大学の先生の話を聞きますと、大人になるときに発達障害のお子さんたちがそれがやっぱり課題になると。先ほどのレジメに書いたのは、高等部段階において、高等学校段階において、ある程度枠組み、カチッと決めちゃいますと、それほど問題なく過ごせちゃう。でも、結局それって問題の先送りともいうのではないのという意味、そういうことを言う専門家の方はいます。
となりますと、大学に入ったときに、その問題について取り組んでいただかないと、社会に出たときに、発達障害系の方は(自分からは障害について)言いませんけれども、社会適応がうまくいかない若者がいるというときに、やっぱりその問題というものが出てきてしまう。人とのやりとりだとか自己選択とか自己決定とか集団適応とか、社会性と言われる部分の指導をどこかでやらなきゃいけないのが出てくるんだろうと思っています。

【高橋委員】大事ですけれども、難しい課題だと思います。自己決定を育てるというようなところは、これはきっと合理的配慮として義務づけられた対応ではないですけれども、そういったことを入れていかないと、結局、社会で自立して生きていける状態にはならないということで、そういったところを意識した支援も考えていかなければいけないかなと思いました。

【鈴木委員】当社は放課後等で厚労省のシステムを使っていまして、小中校のお子さん、大学生の人、それから大人の発達障害を見ていますので、結構、どういうふうに成長しているかというのがわかりやすい立場だと思います。そのときに、同じいわゆるIQというか、お子さんでも、特別支援学校の高等部のお子さんと高校に行くお子さんと、どちらがより大人に近づくかというと、私の感覚ですけれども、やっぱり特別支援学校。なぜかというと、働くことをもうすり込まれる教育されるので、おっしゃったとおりで、なるほどと思ったのですけれども、自己決定・自己選択をあと3年後にするんだよというふうに言われて、やっぱり成長しているなという感じがします。
一方で、高等学校に行かれたお子さんは、ある意味レールに乗っていればいいので、受験戦争という与えられたものをこなすというだけで大学に入っていくケースが多く感じます。そこで、その合理的配慮というのは松﨑先生がおっしゃったところと関連すると思うのですけれども、自分で意思表明をできない、こういう配慮をしてほしいというのが意思表明ができないまま大学に行く方が多いので、意思表明をしろといったときに、まだ保護者が関わってくるケースが多いと思うのです。本日、お話聞いていて、保護者の関わり、保護者がどこまで合理的配慮のところで高等教育機関と入っていけるかというのは、結構重要な議論かなと思う。米国等はちょっとわからないのですけれども、やっぱり権利主張はしっかり小さいころから全ての国民がされるのかもしれないですけれども、日本はそういったカルチャーがもともと薄く、教育にも組み込まれているのかなというのがちょっとわからないのですけれども、そのあたりが苦しんでいると思うのです。
次回、お話させていただくので、その辺も踏まえてと思うのですけれども、さっきもちょっと意見というか考えて、そもそも、親としては入試の前の段階で言うべき配慮を言っていいのかどうかで今、大学では悩んでいます。言って落とされるんじゃないか、というのがかなりまだ強い。一方で、では、いつ言うのというと、どこに言うのかわからないので、履修登録のときまで待ってしまって、結局それでうまく履修できなくて、1年棒に振るとかっていうのがあります。
保護者がボールを握っていればいるほど、今度は、ちょっと言葉は悪いですけれども、いわゆるモンスターペアレントみたいな感じで、それが大学に持ち込まれるんじゃないかというのも、やっぱり高等教育機関の側(がわ)からするとちょっと恐れているのかなとも思いますし、一方で、高等教育まですらっと入っちゃったので、実は支援が必要だというのが大学でわかったときに、今度は親の了解とか理解がなかなか得られにくくて、合理的配慮のところに来てほしいんだけれども、なかなかその意思表明すらできないというのがあるなと思いました。

【近藤委員】今のことに関連して言えば、私は今、AHEAD JAPANの立場でさっきお話したのですが、これからはDO-IT Japanという、私がやっている障害のある子供たちの高等教育と就労移行の支援の取り組みの立場でお話させていただきます。
今の話題の流れは、実は全てDO-IT Japanで常に直面してきていることで、DO-IT Japanは小学生から障害のある子供たちの支援を行ってきているので、先ほど高橋委員に御指摘いただいた、小学校でも十分、自己決定できるんじゃないかということ、いわゆる中学年以降であればというのはまさにそうでして、私たちのところでは、早い子供であれば、それこそ小学校の中学年から高学年ぐらいにかけて、本人が合理的配慮を学校に対して求めていくということができるようになってきています。
ただ、それ以前のDO-ITに来る前の段階では、そういう配慮を求めていいというマインドセットがそもそも育っていないので、自分はばかなんだと思い込んでいる子供たちが非常に多いです。それがDO-ITにやってくると、クラスにいると自分1人だけとか2、3人ぐらいしかいないですから、通級にいると何人かいますけれども、そのとき、そういうことを求めていいんだという感覚がなくて、ただ、DO-ITに来ると、200人ぐらいそういう子供たちがいるので、僕はこんなことを学校で求めたよとか、他の子たちがばんばん言っているので、じゃ自分も実は言おうと思っていたことというのを先生に言ってみるよって言って、帰って実際に求めていく。
先ほど特別支援学校と通常の学校の違いというのが出てきていましたけれども、特に個別の指導計画をつくるときに非常に大きいのは何かというと、特別支援学校は結構、「あなたは将来何になりたいの」って言って、そこからスタートして、カリキュラムをかなり自由に変えることができる。ですけど、通常の学校は、基本的に学習指導要領に基づいて配慮の在り方をつくらなくてはいけないので、学習指導要領に書く力とか書かれていたら、じゃ、書字障害の子はどうするのみたいな話になってしまう。そこで通常のクラスの先生たちは非常にためらうのです、果たしてこの子はワープロに切りかえていいのかどうか。
そういうところで、「先生、僕、もう書けないから、小学校5年生だけど、字、死ぬほど練習してきたけど、わからないから、ワープロにさせてください」というお願いを、親も本人もできない。そうすると、自分のいわゆるモデルとして、ああ、自分はあんなふうな学び方をしたいというのを、これはどこかで学んで、その後、学んだ後に帰っていって、クラスでしっかり自分のことを権利擁護していくということができないと、なかなか子供たちが小学校高学年でそれを求めていくというのは無理だと思うのです。
さらにそこで自己決定に持っていって、あなたはそもそも学ぶ権利があるし、自分がどんな形で求めていこうかというのをちゃんと決めていこうよ、という自己決定を一々聞かれる機会というのは、小中とないですね。高校まではない。僕らもしつこいぐらい聞くのですけれども。それこそエレベーターに乗ったときも、勝手に行き先のボタンも押さないぐらい、とにかく聞きまくるのですね。そういう自己決定を聞かれるというチャンス自体が極めて少ないというのは、鈴木委員がおっしゃったように、本当にそうだと。
ただ、面白いなと思うのは、大学まで来ると、大学はかなり自由に、あなたがどうなりたいのというところから自己決定を求めてくる。障害学生支援のカルチャーが育っている大学だと、ちゃんとそこに寄り添って、そもそもあなたは何をやりたかったんだっけ、というところから出発して、配慮の在り方を聞いてくれるので、本当はこうやりたかったんだというのが言えると。
ただ、おっしゃるように、通常の小中高のところでは、まだ出発点が学習指導要領で、本当の意味での自己決定に基づいた合理的配慮に寄り添うというプロセスというのは本当にできていない。特別支援学校はその辺かなり自由にできるのですけれども、痛しかゆしで、ちょっと誤解もあるかもしれないですけれども、経験上なので私見だと思って聞いていただきたいのですが、やっぱり子供1人に対して先生の数が多過ぎるので、先生が頑張っちゃう。やっぱり先生がその子供の支援にすごく活躍しちゃうので、先回りの支援が多くなってしまって、自由だとかっていろんなことをやっているけれども、本当の意味では困り感に直面していない。困り感に基づいた自己決定というのに、そういうチャンスをたまに奪っているときもあって、いい先生はあえてそういう場面をつくる。いい特別支援学校の先生って意外と何もしなかったりするのですよ。だから、そういうチャンスがあったりするのですが、そこにどう、教育の中で自己決定をどう育てていくか、かなり早い段階から育てていくのかというのは、これは本当に不可欠な問題だと常に思っていて、この場でこういう意識の共有ができていくということは、私はすごく喜ばしいことだと、重要なことだと思います。

【市川委員】発達障害のお子さんの教育をということを進めるときに、今おっしゃったことがすごい課題になっていたと思うのです。結局、読み書き障害のお子さんが、DO-ITがまさにそうだと思うのですけれども、字を書くのは難しいだろう、キーボードにしちゃえばいいじゃないとか、黒板をとるのに時間がかかっちゃえば、アイフォンで撮って、うちへ帰って見ればいいじゃないという論議がずっとあったと思うのです。ただ、なかなか日本の中において、どこまでそのお子さんの能力を最大限伸ばしているのかなということもまた一方あると思うのです。ですから、書けるのであれば、書いた方がいいでしょうという論議も1個出てくると思います。それはなかなか難しいところだと思いながらも、学校の先生方がICT機器とかそういうふうに、ある意味言葉は悪いかもしれませんけれども、割り切れなかった理由というのは、やっぱり将来的なものが見えなかったからではないかと私は思っています。
大学に行ったときに、はっきり言って、例えばキーボードを使いながらばんばん書字障害のお子さんが難しいことをやっているとか、計算はなかなか苦手だけれども文化的なものはすごいとか、そういうのがどんどん出てくると、ああ、そういうふうな生活があるんだということで、多分、高も小も変わってくるのかなという。何ていうのか、うまく言えないけれども、勉学の進め方自体の抜本的な改革になるのではないかな、と私個人は非常に期待をしております。

【近藤委員】今のポイントは非常に重要だと思っていて、私たちもいつも使っている言葉は、ロールモデルを早くから見せるという。通常の学校の学級にいるお子さんたちだったら、ああ将来あんなふうになりたいなという、先輩たちに出会うチャンスがすごく多いのですけれども、障害がちょっと重かったりとか、偏りがあったりすると、なかなかそのロールモデルに自分を重ねていけないというのがあるので、何個か上のとか、(DO-IT Japanは)もう10年やっているので10歳上とかそういう先輩ができてきているのですけれども、彼らを見て、ああ、あんなふうにやっていきたいなという子供たちがすごく出てきているので、そのロールモデルの部分で大学と小中、初等中等教育がしっかり接続されるということができると、本当にいいんじゃないかなというふうに日々感じています。
これはちょっと誤解があるのですけれども、発達障害といったときに、DO-ITは読み書き障害ばっかりやっているわけじゃなくて、自閉症スペクトラムの子たちが、すごい多いのですけれども、自閉症スペクトラムは自己決定できないとか、そういう意味で誤解があるのではないかといつも思っていて、すごく思いやりがあって、自己決定もしっかりできて、いろんなことを考えられる自閉症スペクトラムの子もたくさんいるので、やっぱりそれはチャンスの少なさ、自己決定のチャンスとか、そういうことに触れられる機会の少なさということもあるのではないかというのは、おっしゃっていることはわかってあえて言っているのですけれども、ポイントかというふうには思いました。

【竹田座長】まだまだ議論を続けたいところではありますが、残念ながら時間が来てしまいました。最後に当面の検討会のスケジュールについて事務局から御説明をお願いします。

【小代課長補佐】資料6をごらんください。本日が2回目、5月18日ということでございまして、次回は第3回、6月16日木曜日の15時から18時の開催予定です。場所につきましては、傍聴等の方の数なども考慮して、これから検討させていただきたいと思いますので、後日御連絡申し上げます。
次回の内容ですが、ここに書いてありますとおり、大学等から就労への移行、就職に関する考え方、それから、具体的な取り組みを促進する方策、「1億総活躍社会」の実現に資するために優先的に取り組むべき取り組みについて御議論を頂くこととしまして、これを踏まえまして、ヒアリングのできる方を、座長に御相談をしまして決定をしたいと思います。それから、また委員からの御説明をお願いしたいと考えておりまして、これは大島委員、それから鈴木委員にお願いをする方向で、これも御相談をしたいと思っています。
4回目以降の日程については随時また調整をさせていただきたいと思っています。

【竹田座長】それでは、本日の議事は以上です。そのほか内容全体を通しまして御意見等ございますでしょうか。

【広瀬委員】今、子供にどう自己決定をすることを教えていくか、そういう議論があったのですけれども、教員の立場で言うと、大学の教員は、小中高の教員と違って、教職がなくても誰でもなれる。教授法や、子供たちを理解する心理学などの講義を聴かずとも、教授になれる。私は発達障害の学生、某私立大学で1年間教えましたが、多くの教員は障害を理解していない。大学教員が発達障害の子たちの特性などを学ぶチャンスがないのです。手がかかるから早く卒業させたいとまともに向き合わないケースも多いのです。母親は校庭でいつも待っているのです、心配で心配で。だから、本当に大学の教員が障害について学ぶ機会を、FDなどで是非つくっていただきたい。小中高の教員は学習の機会はありますが、大学は私ども教員を含めて理解が少ないわけで、是非こういった機会を使って、皆様に周知していただきたい。

【竹田座長】それでは、次回も引き続きましてヒアリングと議論を続けていきたいと思います。ヒアリングにつきましては、先ほど事務局から御説明ありましたように、今後調整して、委員の皆様にもお伝えしていきたいというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。
以上で障害のある学生の修学支援に関する検討会第2回を終了します。


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