障害のある学生の修学支援に関する検討会(平成28年度)(第1回) 議事録

1.日時

平成28年4月19日(火曜日) 14時~16時

2.場所

文部科学省3F2特別会議室

3.議題

  1. 検討会の開催について(非公開)
  2. 座長の選任等について(非公開)
  3. 本検討会での論点等について
  4. その他

4.議事録


(会議の冒頭、出席委員の了承のもと、竹田委員の座長選任等について検討会として決定。)

【小代課長補佐】資料4を御覧ください。本検討会におきます議論のたたき台になることを想定しまして、論点整理の案ということで整理をさせていただいたものを御用意しました。
大きく3つの項目で、まず1つ目は、検討会の目的。それから、2つ目としては検討の対象範囲について。それから、3つ目が、これから作る「第二次まとめ」の記載事項と、3つのカテゴリーで整理をしてみました。
まず1つ目の検討会の目的でございます。第一次まとめ及び障害者差別解消法の施行を踏まえ、第二次まとめを取りまとめて公表することと考えております。
続きまして2つ目です。検討の対象範囲についてまとめております。大きくは2つです。まず1つ目は、第一次まとめはこれまでに大変重要な役割を果たしてきたと考えておりますので、その記載事項の継続性といったものは考慮してはどうかと考えております。したがいまして、基本的にはその継続性を考慮し、その点で対象範囲を踏襲して考えてはどうかということでございます。
以下、その第一次まとめにおける検討の対象範囲を書いております。言葉の範囲というところで、「学生」は、我が国における大学等に入学を希望するもの及び在籍する学生とし、学生には科目等履修生、聴講生等、研究生、留学生及び交流校からの交流に基づいて学ぶ学生等も含むとしています。それから、「障害のある学生」の範囲については、障害及び社会的障壁等により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にある学生としています。学生の活動の範囲については、授業、課外授業、それから学校行事への参加等、教育に関する全ての事項としており、この第一次まとめの検討範囲を踏襲してはどうかということです。
2つ目として、その第一次まとめでは対象外とされました、教育と直接に関与しない学生の活動や生活面への配慮について、こういう範囲をどうするかということは考えていきたいと思っておりますが、一方でそれは今後の検討課題とする部分というのが当然あると思いますので、今後の検討の参考になるよう、進んだ取り組みや支援、配慮事例をまとめるという取扱いとしてはどうかということであります。
この検討範囲を踏まえまして、3つ目として、第二次まとめの記載事項ということで、大きく、2つの項目を中心に整理をしてはどうかと考えております。
1つ目ですけれども、第一次まとめにおいて関係機関が取り組むべきとされた事項の現在までの取り組み状況と、それから出てきたさらなる課題についてです。第一次まとめにおける短期的課題と中長期的課題について進捗状況と、それから、さらなる課題とがどうかということでのまとめをしてはどうかと。
それから、2つ目としまして、国公立大学における「国等職員対応要領」、いわゆる対応要領について、私立大学でもこういったものがつくられている可能性があります。(私立大学では)当然、文部科学省がつくりました「対応指針」を踏まえた対応は行われているということで、(それらの対応と)障害者差別解消法の施行後の状況と課題について、考察、取りまとめてはどうかということでございます。
さらに、これらの状況、課題と御議論を踏まえまして、重点的に検討すべき事項を絞り込み、それらについて考え方を整理してはどうかと。限られた時間の中でのまとめということで、網羅的に全てということもなかなか難しいかと思いますので、重点的な検討事項を定めてはどうかということです。
その検討すべき事項の例として、まず1つ目、合理的配慮に関する考え方はもう一度確認してはどうかということで、大体3つの視点があるのではないかと思います。合理的配慮と基礎的環境整備への考え方。それから、合理的配慮の内容の妥当性と合意形成プロセスに関する考え方。あるいは、合理的配慮における過重な負担というものの考え方。それから、2つ目の例としては、初中教育段階と大学の接続の円滑化。これを更にどう進めていくかということ。それから、3つ目は、教育方法に関する考え方。4つ目は、就労支援の在り方をどうするかということ。5つ目は、大学間連携ですね、それぞれ個別の大学だけではなくて、大学間の連携を基に関係機関ともっと連携していく、その在り方に関する考え方。それから、最後ですが、具体的な取り組みを促進する方策です。こういったものを促進するためにはどういったことをやっていくか。ネットワークの構築を支援するのはどうするか、その方策をどうするかということがあるかと思っています。これらを重点的な検討課題としてはどうかということです。
更にそのもう一つの例で、一億総活躍社会といったことが政府の方針としても掲げられているところでございます。そういったものを踏まえて、文部科学省が推進すべき取り組みといったものは何かということを整理していただくというのはどうかと。
こういった点で、論点整理のたたき台をおつくりしたところでございます。以上でございます。

【竹田座長】ありがとうございました。ただいま論点を3つに分けて御提案いただいておりますので、順番に確認し、議論をいただければと思ってございます。
最初に、1番の検討会の目的についてですが、これは余り御異論ないのではないかと思いますが、何か御意見等ありますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、目的はこのとおりで進めさせていただきたいと思います。
続きまして、検討の対象範囲ですが、これに関して御意見ございますか。

【殿岡委員】 第一次まとめで対象外とされた、この教育とは直接に関与しない学生の配慮、生活への配慮というところですが、まず、結論から申しますと、障害者差別解消法の施行を踏まえて、この対象外という考え方は既に法的な根拠を失ったというのが、私の基本的な認識です。
理由を述べてみます。まず、第一次まとめができた段階では、解消法の影も形もないですね。検討すらされていなかった時期でして、ちょうど政権交代があったりして、全くなかった。その後、2月に入り、新聞報道等を踏まえて、解消法の検討がスタートし、そして、9月でしたかね、国会で確立していく。次の段階は(障害者)政策委員会での「基本方針」、これに基づく対応要領等の議論の中で、例えば、ある都道府県なら、都道府県の設置する高校とか支援学校とか、市立大学とか、自治体が合理的配慮をされるように行くわけですが、ただ、小中学校でそれと接続をなされる、きちっと合理的配慮を書き込みながら、高等教育の部分だけ、第一次まとめに書いてあるが、ここだけを合理的配慮から除こうとした対応要領は存在しておりません。
あるいは、全ての学校に対する対応要領を書いた上で、大学だけ除くことをしているところもない。逆に、こういった対応が、国公立大学、こういった書き方、合理的配慮が法的義務になる以上、そこからこの項目だけを外して、対象から漏れていることは、法的な整合性が既にない。そして、そういう関係に基づいて施行されたの(法)が、今、施行から20日を経(た)とうとしているところです。
つまり、第一次まとめに対象外とされた、これらのことに関しては、全て、また第二次まとめにおいても、対象範囲となり得れば、法的整合性があると考えております。

【竹田座長】ありがとうございました。2つ目の、対象外とされたというところの御意見です。
他の委員の先生方、この辺、一次まとめを受けての二次まとめですので、当然、一次まとめのときに踏み込めなかったところにどういうふうにアプローチしていくかというところが、一番重要な柱なのではないかなというふうに思いますけれど、いかがでしょうか。
一次まとめのときの委員の先生方もいらっしゃると思いますけれども、確かに一次まとめのときは、まだ何もない段階で、法律も施行されていませんでしたので、修学に特化したというようなことで、情報保障とか、環境整備とか、それから啓発とか、そのようなことから入ってきたわけですけれども、こういう生活支援とか通学支援とか、あとは医学的、医療的ケアとか、そういういろいろ難しい問題というのは、なかなかこの検討会だけではまだ議論し切れない部分というのがあるというような意見が出て、まとめていただきましたと思います。対象範囲ということで、ここに原案として事務局で書いてあること、確かにいろいろ個別事例とか、先進的な取り組み等々はいろいろベースとしては集積していくというのかなということはありますので、その上で、それらを一律にというよりは、今の段階でどういうふうにそれを検討会で吸い上げて、今後に結びつけていくかという、事例のまとめというような、そう言う形なのかなというふうに思いますけれど。

【松尾審議官】第一次まとめのときの担当課長でしたので、殿岡委員、それから竹田委員には本当にお世話になりまして、ありがとうございました。
確かに、殿岡委員が言われたように、第一次まとめのときには、ピンポイントで、時間の制約もありましたし、どうやるかというのもございましたので、対象をある程度絞ってやったと思います。教育と直接関係ない、いろんな生活支援について、大学だけに任せるというのはなかなかしんどいところがあろうと思いますけれども、ただ、これだけ世の中も変わっておりますし、一方で、他のいろんな制度がありますので、その制度とうまく、どうつなげていくかという視点でしっかりと議論をしていくということが重要だと思います。そうやって、切れ目のないような形で制度をつくっていくと。
一方で、ここだけで議論し切れない部分もありますので、その議論をしていただく重点というのを少し置きながら、そして、他の制度と、これは、自治体の制度であったりとか、厚労省さんの制度であったり、いろいろな制度がありますので、どうやって組み合わせて、接続をして、1人の学生、障害のある学生から見たら、家から学校に、そして就職につながるかという視点で議論を頂くということだと思います。我々もここで書いたのは対象外ということではなくて、うまく接続するためにいろんな事例を持って、その地域、地域でやり方が違うと思いますので、そういったこともうまく加味し、事例を集めながら議論していただくということが重要だと思いますので、そういった視点でまとめていくというようなことでお願いできればと思っています。

【殿岡委員】松尾さんがおっしゃるとおりだと思います。ただ、もちろん課題もあるし、他省庁との連携も問題あるけれども、対象をある程度整えた上で議論して先行事例を集めることと、対象外だけれども、将来に向けて議論するのとでは、意味合いが違います。これで対象だよということで、やっぱり誰でも理解して、こういう委員会でやってきている部分がありますので、ここでやはり対象に含めていくということを、是非確認させていただければと思います。

【松尾審議官】委員が言われるように、「対象外」ではなくて、しっかり議論していくと、「内」として議論していくということで、お願いできればと思います。

【竹田座長】これは特に、この後また御意見を頂きますけれども、二次まとめの記載事項の最後の方の、例えば大学間連携を含む関係機関との連携とか、そのあたりでもすごく関係してくると思います。

【殿岡委員】対象内ということで、よろしいですね。

【松尾審議官】検討の対象範囲の中で議論するということで、結構だと思います。

【竹田座長】先ほど申したように、第一次まとめで議論できなかったことは、この第二次まとめの議題になると思いますので、殿岡委員の御指摘、ありがとうございました。

【白澤委員】こちらも対象内、外の話になってしまうと思いますけれど、学生の範囲、障害のある学生の範囲ということで、この検討会で重点的に議論をする範囲としてはこのような形で構わないと思いますが、大学が支援を行わなければいけない障害者の範囲というのは、もっと広いと思います。例えば、行事等で大学を訪れる一般の方々、大学が主催するシンポジウムとかへの参加者なども含まれるでしょうし、入学式、卒業式などに参加される保護者の方々、あるいは附属施設というのも非常に大きな範囲になってくるかと思います。
これらが、文科省が打ち出しているまとめの報告書の中で対象外とされているから、大学は支援をしなくていいといったような受け取り方がされないような、そういった出し方は必要かなとは思いました。

【松尾審議官】これも対象内と対象外でありますけれども、順序ということと、それから今回の検討会の名称も、障害のある学生支援という「学生」にある程度絞っています。今、白澤委員が言われたように、どこまでもスコープは広げないといけないし、オープンキャンパスに来られる方々に対しては支援すべきだと思いますが、大学に受講に来る学生との間で全く同じような形での支援ということではなくて、まずは大学として、十分に(支援)し切れていない学生について、まず絞って議論をしていただきたい。大学であれ我々の一般の役所であれ企業であれ、一般に来られた方々に対して支援せねばならないことですが、それと、実際に大学として授業等、責任を持って見る学生との間での支援の在り方、これらは若干違ってくると思いますので、そこにまずはターゲットを絞って議論をしたいという趣旨であります。
シンポジウムで来られるとか、一般の利用で来られるとか、そこについても当然それは組織としてやらねばならないことではありますけれども、ちょっと色合いを分けて議論いただき、混乱しないようにしていただければと思います。

【広瀬委員】放送大学は一般の大学と比べて、いわゆる社会人の学生さんが多いです。OECDの調査でもそうですけれども、全世界の中で25歳以上の学生が少ない、これはもう日本は最下位の方に入っていますけれども、もし今後、日本がいろんな意味で国力、そして教育の力をアップさせるためには、やはり再就職や、そして25歳以上の方々がいつでも大学に戻ってこられる、そういう視点を考えなくてはならないと思います。
今日は、厚生労働省の就労支援の方々や、様々な方々がおいでなので、申し上げたいのは、例えば日本には引きこもりが100万人いると言われています。その中の3分の1は、何らかの関係で発達障害を抱えていらっしゃる方々も多いのではないかと言われている。大人が、大学まででしたら短い対象範囲の中で支援することはできるかもしれませんけれども、一旦社会に出た人、そういう人たちの行き場所がないのですね。その場合、放送大学はある意味そういった社会で仕事につけない方々、それでも意欲のある方々、その中には大学を卒業してから精神的な病気になった、鬱病の方々もたくさんいます。そういう意味で、学生と言ったときに、25歳以下のばりばり勉強し、そしてすぐ就労に結びつくという、そういった単純な考え方ではなくて、本当に国民全体を考えていただいた上で、学生という範囲を是非考えていただきたいと思います。その意味では、精神科領域の機関との連携、それから、就労支援、ハローワーク、様々なところで、自治体などとも連携していただければ有り難いと思います。

【竹田座長】そのほかの委員の先生方、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、基本的にこちらの原案に沿って進めさせていただきまして、また二次まとめの記載事項、こちらにもう少し多く時間をとりたいと思います。
それでは、3番の、第二次まとめの記載事項について、御意見をお願いいたします。冒頭に御説明いただきました、一次まとめの課題とされたものから、2枚目に重点的に検討すべき事項、重点事項に絞り込みということが書いてあります。そこに検討すべき事項ということで、合理的配慮に関する考え方とか、妥当性と合意形成のプロセス、あるいは過重な負担の考え方ということで、今、法律が施行されて、現場ではかなりいろいろな、悩ましいというか、いろんな困難な状況も含めて、対応をしているところではないかなと思いますが、そういう状況を踏まえて、二次まとめとして、いい取りまとめができればいいかなというふうに思いますが、いかがでしょうか。

【西村委員】先ほどからの話にもつながるのですけれども、中長期的課題のところですね。教材の確保とか通信教育の活用ということについて、様々、例えば発達障害で、書字障害、読字障害のある方々の教材の確保ということを考えたら、一人一人ということになると、かなり時間も労力もかかるときに、ここを、大学間、それから放送大学等の関連の、強い専門性のあるところと連携して、単位とか、結ぶとか、そういうリーズナブルな方法を全体として考えていく必要があるなということを実感しています。
それから、就職支援につきましては、就職支援等の25年度、26年度の取りまとめのところで、それほど数が増えていないけれども、かなり取り組んでいるというデータがありましたが、ここについても、大学だけで就職支援をするって非常に難しいし、それから、富山大学で10年ほど発達障害の学生を支援しているのですが、修学支援と就職支援の時間をかける割合が非常に、就職支援にかなりのエネルギーがいるようになってきたわけですね。
やはり、すばらしい能力のある方々を社会に送り出すときに、それをどういうふうに就職につなげていくかというあたりは、求人情報を提供するとか、個別に支援をするとか、インターンシップをするとか、いろんなアイデアはあると思うのですが、障害学生について、どういうやり方がより効果的なのか。それから、厚生労働省、民間の就職に関するそういう訓練等をやっているところと、その学生の社会自立のために、密につながっていく、そういう体制、ケースをどんどん増やしていけたらいい。それはどの大学でも共有できるやり方ではないかなと考えていますので、そのあたりも、検討していったらいいのかなと思います。
最後ですが、初等中等教育段階と大学等の接続の円滑化に関する考え方ということに関しましても、年々、入学時に配慮願を提出する学生は増えてまいりました。けれども、地域差もあるのかもしれませんが、高校からのきちんとした引継ぎというのは、ほとんどありません。それがうちの大学だけなのか、ちょっとそこは余り言っちゃいけないこともあると思いますが、データもほとんどなくて、何があるかというと、保護者の方々のこれまでの家族としての支援ですね。そういうことはきちんと引き継がれているのですが、学校教育としてということが余りまだ十分ではないというあたりも考えますと、高等教育機関だけがそこの接続を一生懸命考えても難しいことであるなと思っておりますので、やはり関係機関を超えて、検討していくべきものではないかと思いました。

【竹田座長】(まず、)教材に関することですね。つまり、いずれも個別の大学レベルでやることは困難ということに、多分、現場はどこも感じていらっしゃると思います。教材の作成とか中身というか、共有化というかですね。放送大学の活用というのは、第一次まとめのときに広瀬委員からも御発言いただいて、議論になったかなと思います。
それから、就職というか、キャリア支援ということですかね。キャリア支援の在り方、これはすごく、全ての障害のある学生さんにとって非常に重要なテーマで、修学支援というのは、目的としては、その出口支援ということになれば当然、キャリアのことも大きな課題になるのかなと思います。
それから、高校段階からの連携ということで、特に情報の連携というかですね。配慮の合理性を考えたり、適切な配慮を考えるという意味では、そういう連携という言葉になると思いますが、その辺も非常に重要じゃないかなというふうに思いますが、重要なポイントを御指摘いただきましたけれど、今の西村委員の御指摘に関して、いかがでしょうか。鈴木委員、就職の話からでも結構ですが、もし何かご意見があれば。

【鈴木委員】当社は、小中高生が300人ぐらい、大学生が100人ぐらいで、大人は150人ぐらい、登録しています。大学生は、やっぱり発達障害に関しては今、ホットな話題かなと思っています。
意見というよりも、現状を共有させていただくと、やっぱりなかなか就職活動に入れない学生が多いです。大学をやめてしまう、休学してしまう、あるいは留年してしまう学生がすごく多いです。細かくは思い出せないですけれど、10%から20%とか、留年はしていると思います。就職活動ができない理由は、精神的にそこまで追いつかないとか、発達障害として段取りがなかなか難しいというケースもありますけれども、そもそも修学というか、単位が取れていないので就職活動に行けないとかというが多いです。
一方で、単位が取れている場合も、やっぱり大学の就職課に行きますと、障害者枠と一般枠で言うと、障害者枠はほとんど情報がないので、結局、じゃあハローワークにつなぎましょうと。と言っても、ハローワークはそこまでまだ専門性がないところが多い、新卒応援ハローワークも含めて。それで、4月、5月、今の時期、大学4年生、特にやることがなく、とまっちゃっているケースが多いと思います。
実際、例えば当社もそうですけれども、じゃあ今度は厚生労働省の仕組みの就労移行支援というのを使っていこうとか、そういった学生さんも出てきていまして、全国の、例えば京都とか大阪とか、京都が多いかな、認めてくれているので、大学生でも就労移行支援を使えるので、大学に通いながら、もう就労移行支援を使っちゃって、就職活動をしているというケースも結構目立ち始めています。当社もそういう事例があります。
一方で、自治体によっては、自治体によって変わるので、就労移行支援は大学生は使っちゃいけませんというところもあって、結構、学生としてはいろんな情報を集めながら親御さんが動くというような形になってしまっています。
ちなみに、就労移行支援は2年しか基本的には使えませんので、大学生から使ったときに、逆に就職できないときどうするのという話にも、御本人たちは結構悩まれるというような感じです。
ですので、現場で見ていると、確かにその特別支援学校で高校から就職活動を目指すというのは非常に道がきれいになっていて、その後、就労移行支援とかにもつながるようにはなっていますけれど、やっぱり大学生というのが、なかなか使えるものもないし、大学によってもなかなか専門的な方々がいないということで、結局おくれてしまわれている状況かと思います。
専門職員についても、データで見ると、専任されている方々が兼任されている方々の7分の1とかということで、つまり、兼任されているケースがすごく多くて、なかなか本腰を入れて一対一で向き合ってくれるということができないのかなと思っていまして、本当に大学の中で、その人ときちんと関係性をつくって、修学支援から就労支援まで結びつけてくれるスタッフが、窓口ができるだけじゃなくて、きちんと育ってほしいなと思いますし、その方々が厚労省とかハローワークの仕組みとか、上手に使えるようになっているのが重要だと思っています。

【竹田座長】就労支援の議題に関しては、また議論があると思います。
初中段階からの(支援の接続について)、市川委員は今日御欠席ですので、また委員御出席の上でも議論できるかなと思いますけれども。
広瀬委員、教材のことに関して、何かコメントあればお願いいたします。

【広瀬委員】放送大学では、例えば一つのコースを学んで、コースの中で一つの教科を学ぶときに、中身の充実した印刷教材がございます。それがテキスト・データでお渡しすることができますので、ちょっと幾つかのプロセスを踏んでいただければ、学生さんはテキスト・データを入手することができる。視覚障害の方々、発達障害の方々がパソコンでそれを見たり、また、点字にすることも可能です。
そして今、テレビの授業はインターネット配信で見られます。テレビの授業は今、50%以上の学科に字幕がついております。これは数年以内でなるべく100%に近づける努力をしておりますので、それは総務省と進めております。
ラジオに関しては、これはまだ、必要な方々に台本をお渡しするということでやっておりますけれども、今、インターネット上に画像に字幕をつけてラジオを配信するということをやっております。
放送大学は非常に今、財政困難でございまして、なかなかこのことを推進するのに苦労しております。ただ、現在380校ぐらいの大学と単位互換性を、制度を使っておりますので、もし小さな地方の大学、専門性のある大学が、一般教養のところで御苦労なさっているならば、放送大学と単位互換をして、そこで単位をとっていただいて、専門的なところに人材やいわゆるリソースをかけていただいて、いい教育をしていただく。そういうことは可能なのではないかと思いますが、まだ放送大学がそこまでの財源を持っていないということ、そして、そのことについて方針をしっかりと持ち得ていないというのが現状ですので、内側で一生懸命、少しずつこつこつと情報のアクセスビリティーに努めているところです。
しかし、教材の種類、その科目の多さ、そして教員の先生たちのことを考えると、かなり内容の濃い、非常に難しい、放送大学の授業は。そういう意味では、内容の濃い授業を提供できるというふうに思っておりますので、そういう声を全国で上げていただいて、そして内部からも外部からも変わっていければ、強い、世界でこれだけ情報アクセスビリティーの推進をしている通信制の大学はないと思っておりますので、是非声を上げて応援していただきたいなと思っております。

【竹田座長】今、お二方からの、二次まとめの記載事項の整理点の前半の方、要するに一次まとめのときの課題とされたところを中心に御発言いただきました。それから、4月1日からの対応要領、対応指針等を踏まえ(対応)、今回の議論で重点的な検討課題というような、そこは議論を整理させてもらいたいと思います。
後半の議論として、今いろいろ御発言いただいた問題点も重複してくると思いますけれども、重点的に検討すべき事項について御意見を頂きたいと思います。
合理的配慮の考え方の再確認、過重な負担というあたりが、かなり大きなものなのかなというふうに思います。

【柏倉委員】合理的配慮ということもあるのですけれども、この基礎的環境整備というところで、忘れてはならないなと思うのは、障害学生支援が進んでいる大学ほど、実は障害のある学生に対して、障害のない学生が様々な働きかけをしてきているという御指摘があります。
ボランティアというふうに片づけてしまえば簡単ですけれども、学内のうち、戦力となって、高度な、例えば聴覚障害の学生に対するノート提供ですとか、専門用語なども多いので、簡単にはなかなかできにくいということもあります。視覚障害のある学生に対する支援についても、一定の専門性が担保されるものと、なかなか、大学院生の点訳など、できないということがあります。そう言うところが余り表に出てこないということが、非常に心配になっているところです。
先般、文科省の対応指針の策定にかかわらせていただいて、その中には、こういった学生による支援について留意する必要があるという項目を入れてもらいました。そこには、学生の過度な負担にならないようにしていく、ノート提供でけんしょう炎になっている学生というのはうちの大学でも多数出ていて、コマ数の制限とかやっているのですけれども、学生さんにとっても、学友のためにということで一生懸命やるのですけれども、健康被害が出てしまうと。あと、他のところでもありますけれども、トイレ介助を同じ学生がやるということに対する人間関係に与える影響ですね。これについても指摘がいろんな大学である。
これらは表に出にくくて、特に私立の大学においては費用がかからないですので、学生に任せておけばいいのだということに流れてしまってはいけませんので、ここは是非押さえる必要があるのかなというふうに思っています。

【竹田座長】私立の大学ということでありましたけれども、神藤委員、同じように私立の大学の立場で支援に携わっていらっしゃいますけれども、御意見ありますでしょうか。

【神藤委員】意見というか、本学の現状ですが、この春に基本方針とガイドラインを制定いたしました。その際に、やはり理事長、学長を始め、トップの理解というのが重要と思います。
本学は、今、柏倉委員がおっしゃったような支援は支援スタッフに給与を支給し業務として行っております。また、学内でもそういう学生が学生に働きかけるというものについての教育効果は大きく重要だというように認識されております。本学では、支援する学生側にとって無理のないようにという配慮はしております。
障害者差別解消法の施行に当たりまして、昨年、管理職全員にその勉強会と言いますか、研修会を行いました。私立大学において、管理職全員対象にそのような研修会を行うことは難しいのですが、本学においては、上層部の理解もあり実施いたしました。そちらも、本学はもともと学生の支援をするということについては職員全員が、まず学生の支援をしたいというような思いを持っておりますが、それでも研修会後、「そこまでするんですか」というような質問がありました。合理的配慮のところですね、私立大学ですので経済的なところ、財務的なところ、難しいところもいろいろありますが、そこは話合いをしながら、それこそ建設的対話を日常的に行いながらやっております。

【竹田座長】第一次まとめのときは、合理的配慮という言葉と、合理的配慮にとらわれることなく、支援は各大学の判断でやることに対して、特にそういう、どうこう言うものではないという、そういう記載があったかなというふうに思います。
合理的配慮って意外と抽象的で、なので非常に難しいところなのですが、ここに取りまとめていただいた中に、合理的配慮と基礎的環境整備の考え方、あるいは合理的配慮の妥当性と合意形成プロセスと書いてありますね。合理的配慮の議論だと、必ずこの辺がキーワードになってくるところなのですが、このあたりに関して、御意見いかがでしょうか。

【高橋委員】今回、全般的な議論をしていく中で、その合理的配慮に当たる部分の議論なのか、それとも、その合理的配慮とは別の支援としての議論なのかというのは、整理することが必要かなと思いました。
法律が施行されてきた中で、各大学で、大学として、その義務として対応するべきことは何なのか。また、教育機関として、よりよい教育のためにやっていく、取り組むことは何なのかと。そういったことを整理して扱っていかないと、何でもかんでも義務のように勘違いを生じてしまってもまずいなというふうに、とても感じているところであります。
ですので、今、合理的配慮に関する考え方の再確認というのがあるのですけれども、多くの大学で今、困っていると言いますか、その合理的配慮の判断の部分ですね。これは合理的配慮なのかどうか。そういったところをここできっちり議論をして、一つの考え方を出していくというのは、この検討会において非常に重要な役割なのではないかなと思います。

【殿岡委員】 今の合理的配慮の話を聞いて、どういった項目を出していけばいいか、幾つかあげさせていただきます。やはり合理的配慮を考えるときは、基本的には、「障害者基本法」や、そして「障害者権利条約」を、他のものとの平等という考え方をきちっと踏まえている。
よく似た言葉に、ADA(障害のあるアメリカ人法)における合理的配慮。これは合理的配慮と教育的配慮に分けて、合理的配慮を捉えるときも、合理的配慮ある、これとは違いますよね。アメリカは障害者権利条約を批准していませんし、教育でADAを考える、ここからが教育的配慮だという議論ではなく、権利条約は他の者との平等で、障害のない一般の方と比べたときに、その人がどういう変更・調整が必要かというところを、やはりきちんと押さえていく必要がある。基本ですが、押さえていく必要がある。
過重な負担や、あと、今日これは入っていないのですが、差別的取扱いの禁止。こちらは、私立大学に対しても義務ですから、これもまた議論が必要かなと思っていますし、それは、政策委員会、それから(文部科学省の対応)指針の検討会なども含めて、あげていくことで、きちんとした、今後、積み上げていくのがいいかなと思っております。
その他のことというのは、まず大学間ネットワークというところでは、今回から京都大学の村田委員にお越しいただいて、村田委員は「関西障害学生支援者懇談会」という、「KSSK」という団体を関西で、これはJASSOが全国に拠点をつくろうとしたときに、それがうまくいかなくて、でも、その中できちっと残ったのが、関西のKSSKが日本で唯一残ったということで、これは、ここのネットワークは是非、村田委員に来ていただいたので、やはり紹介していただきたいと思っています。
また、対応要領があるのですが、国立はもちろん義務ですから当然で、私も国大協を含めて4つの大学機関の支援をさせていただきました。これに対しても、深めていく必要があると思います。
また、私立大学が、公的にはないのですけれども、独自に対応要領のようなもの、あるいはポリシーのようなもの、独自につくって、国公立並みの議論をきちっとしていこうということが、言われています。これも、やはり取り上げていくのがいいかなと思っています。
それから、合理的配慮の中身に関しては、いつも繰り返しになるのですが、やはり文科省の対応指針の中で、最低限、過重な負担は、こういうふうなのは過重な負担とは言わないよとか言うことが最低限、対応指針で挙がっているところ、それから、検討会などのパブコメで追加されているところも含めてあります。この辺の最低のラインのところを、第一次まとめの項目の中で洗い出して、その水準に乗っけていくというようなことは、一つ大事なところかなと思っています。

【竹田座長】幾つか御指摘がありましたけれど、まず、下の方の合理的配慮の話はちょっと後回しにして、大学間連携の話が出ました。京都で村田委員が行っております例を、今も御紹介いただきましたが、これは今後その各大学が個別で取り組むことと、それから、周りでこういうネットワークを、もちろん関連機関も最終の議論に含めての連携の在り方というのは、結構これ、大きな議論になるかなというふうに思いますが、大学間連携に関して、いろいろ既に先行して取り組まれている村田委員から、これに関して何かコメントがあればお願いいたします。

【村田委員】合理的配慮の話と絡めて申し上げますと、合理的配慮は考え方そのものを整理していくことも非常に重要なのですけれども、実際に合理的配慮を実施していくというところが、やはり一番大きな課題になると認識をしています。
合理的配慮を実施する上では、先ほど他の委員からもありましたが、その建設的対話ができる状況を構築していくか、学内の中でどのようにコンサルテーションするかという部分が大切になってきます。そのような役割を担う専門的人材の養成が中長期的課題としても挙がっていますけれども、やはり人材をどのように確保していくのかということも課題になってきます。そこにはもちろん、財政支援というものも絡んでくると思います。さらには、地域間、あるいは同様の規模や性質を持った大学間の連携というものも必要になると考えます。
これは、いわゆるノウハウとか資源の共有というところも、もちろん実務的には効果がありますけれども、やはり合理的配慮というものをどのように判断していくのかということを考えるに当たっては、他大学との情報交換や連携というのはとても重要になってくると思います。
また、KSSKについて殿岡委員から御紹介ありましたけれども、KSSKはこのような大学間連携、地域の中での連携を何年も実施してきていますし、私自身もこの効果を実感しています。本検討会の中でも、詳しく御紹介できる機会があればと思います。

【竹田座長】この検討会では高等専門学校の該当者も対象になっていて、第一次まとめのときも、やはりどうしても大学、私学という、そういう議論があって、地域のネットワークという、そういう話もありましたけれども、高専の場合はまた少し形態も違いますし、対象となる生徒さんも少し変わってくるかなというふうに思いますが、そのお立場から、合理的配慮とか、この第二次まとめへの記載というところで、矢澤委員から、御意見をいただければと思います。

【矢澤委員】今、御紹介ありましたように、高専、御存じの方々も多いと思うのですけれども、中学校3年を卒業して、高校1年の年齢からの5年間ないしは7年間という課程です。大学等とちょっと違ってというか、同じところももちろんあるのですが、特徴的なこととしては、ほぼ工学系。全部ではないですけれども、ほぼ工学系で、エンジニアを目指す学生が入ってくるということと、あとは、先ほど言いましたように、大学と圧倒的に違うのは年齢でして、高校1年から3年に相当する学生もいるということ。それと、もう一つ、私がこれに曲がりなりにも携わってきて大きいなと思っているのは、いわゆる障害学生支援の本当の常勤の専門家は、ほぼ高専にはいないということです。
そう言う中でどうやってきたかというと、各高専でそれぞれ試行錯誤しながら、学生相談、学生支援体制、あるいは障害学生支援体制というのをつくってきているというところが大きな特徴なのかなと思います。
合理的配慮の話とか、あと、就職支援、専門的人材の話とか、財政とか、結局ポイントになるところは今までの議論と同じだと思うのですけれども、高専ならではというか、最近大学でもそうだとは聞いているのですが、特に学生の年齢が低いのは別にその合理的配慮かどうか、とにかく配慮、支援、援助という話をするときに、合意形成のプロセスになるのですけれど、保護者が欠かせないのですね。当然、本人が一番ですけれども、保護者といかに協調的にやっていけるかということで、このプロセスに保護者がかなりかかわってくる。同じ仲間として保護者をきちんと入れていかないと、後で大変なことになったり、そういうことがあるというのが大きな特徴かと思います。
そういう合意形成のプロセスとかのときに、やはりカウンセラーも非常勤ですし、コーディネーターなんかを置いている高専もあるのですが、専門ではない先生が兼業していたりとかで、何とかその後ろ盾となるような専門家がいればいいなと、心強いなと。判断がやはりできない、自信がないところが正直言ってあるのですね、私なんかでも。ですので、専門家の、人材育成というよりは、高専としては専門家の配置というのをすごく希望するところがあります。
あと、最後に、これは同じなのですが、出口の話で、就職支援。先ほどもありましたけれども、高専も全国に約60弱あるのですが、その一校一校が障害学生の就職支援に、もう、個別にやるのはもう本当に無理で、JASSOさんのアンケートで毎年私は自由記述欄に書いて、もしかしたら嫌われているかなと思っているのですけれども、高専一校一校では就職支援は無理です、こういうところでJASSOさんのような組織、ネットワークが何らかの後ろ盾をしていただけると非常に有り難いということは、毎年のように書いていて申し訳ないのですけれども。
今、地域の話もありました。これも、そういうネットワークがうまくできている地域もあるのですね。高専、全国にありますので。ですが、そうではないところが圧倒的に多いので、大学間連携とか地域ネットワークの中に、高専も入れていただけるような仕組みというのを生み出していただけると非常に有り難く思います。

【白澤委員】どの項目にあてはまるかわからないのですが、差別解消法の施行後に生まれた、新たな課題というのもあるのかと思います。
何かと申しますと、例えば不服申立てに関わる全国的な仕組みづくりや、学内のモニタリング体制などで、これらはこれから整備していかなければいけないにもかかわらず、まだ十分整備が整っていないところかと感じております。
私ども筑波技術大学では、日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク、PEPNet-Japanというネットワークを運営させていただいている関係で、全国の聞こえない学生からたくさんの相談を受けるのですけれども、その中で最近特に増えているのが、大学が全然対話に応じてくれないという相談なのですね。
恐らく、今までだったらそれであきらめていたのだと思うのですが、法律もできたし、何とかなるかと思って相談をしてくださったのであろうケースが結構あります。これらの中には、例えば自分でノートテイカーを見つけてきてくれるなら入室を許可してもいいけれども大学としてはそれ以上の支援はしないですとか、仕方ないので聴覚障害学生が学内でボランティアを募ろうとしたら、その聴覚障害学生がもし不合格になったら、自分の大学の学生たちの責任になってしまうから、外部からノートテイカーを集めてほしいといったことを言われたなどの例が、結構、最近出ていて、そういう学生の訴えを受けとめる機関が全然できていない状況を、問題に感じています。
私どもとしましても、今までそういう例が挙がってきたときには、聞こえない学生と話をして、できるだけ大学側から本学に問合せを頂き、それを受けて大学側にサポートさせていただくという流れをつくろうと努力してきたのですけれども、逆に法律ができて以降、大学の方がかたくなになってしまって、問合せをいただけない状況もあると感じています。大学の内には、これが「法律に基づいて議論した結果です」と、障害学生に突きつける形になっていて、全く対話になっていない例も多いです。障害学生側もどうしようもないので、我々としても、障害学生と一緒に大学に相談に行くことも始めようかなと考えているところです。
このように、我々としては、何かできることを探していこうとは思うのですけれど、そう言うのとあわせて、やはり地域連絡協議会との連携や、文部科学省の中の窓口、対応指針の中では学生・留学生課さんが相談窓口になると出していただいていますけれども、そういったところの機能・役割をどのように考えていくのかの議論が必要かと考えます。
特に、障害学生からの訴えを上げていけるルートの確保が必要です。全部が文科省に集まると大変だと思いますので、まずは学内の不服申立窓口の整備をきちんとするように大学に呼びかける。それでうまくいかないときには、地域レベルでの不服申立ての受けとめ体制をつくっていき、そこに我々のような支援団体も絡んでいく。更にそこでも解決できないような問題は、国レベルでの解決をするといったような、全国的な仕組みをつくっていく必要があるかなと思っております。
それから、そうした事態が発生しないようにするための学内のモニタリング体制も必要な課題だと思います。国大協(国立大学協会)のひな形等では監督者の配置に関する記載があり、これもモニタリング体制に当たるのかもしれないですし、アメリカ等ではADAコーディネーターという形で、一定の専門性を持った方々を大学の上部の組織に位置づける取り組みもされています。そうしたような形で問題を事前に防ぐ、学内全体が差別解消法に基づいて進んでいく体制づくりというのを進めていかなければいけないと思うので、こうした検討も是非とも論点に入れて進めていただければと思います。

【竹田座長】国立大学の場合の対応要領ですけれども、その苦情の吸い上げ方とか、そういう仕組みというのは必ず入れなければいけないということで、各大学も議論を、これからまた新しく入れるのだとは思うのですが。
あと、全国的なPEPNetの御紹介がありましたけれども、一次まとめ以降、AHEAD JAPANといって、この検討会を受けて大学間が連携するような仕組みなんかができていて、そういう当事者間、支援の当事者の専門家が、横の連携及び専門性の向上や、当事者の障害のある学生さんのフォローアップに資するような活動が始まっていますが、この辺に関して、理事長の石川委員がいるのですけれど、何かコメントをいただければ有り難いと思うのですけれど、いかがでしょうか。

【石川委員】すみません、その前にちょっと別のことを発言しようと今、身構えて。別の話を先にしてもよろしいでしょうか。今、第二次まとめで何を行うかという議論をしているところですが、その中で、第一次まとめに記載されたことの現状の到達点と課題を整理するということも、第二次まとめの中に入っている。これは重要なことですけれども。
実は、その第一次まとめのエッセンス的な部分は、第3次「障害者基本計画」の中に、文科省から取り組むべき施策として入れていただいていて、その書きぶりとか、その目指している気持ちみたいなものって非常に高く評価されていました。
それで、その第3次基本計画の中に、第一次まとめの中心的な部分は入っているということは、まず皆さんと共有したい。
障害者基本計画というものは、障害者基本法の中で、障害者施策を進めていく上でのいわばベースになるもので、それに基づいて、それぞれ所管している各省が障害者施策を進めていくということになっていて、その監視機能、監視機関というのは障害者政策委員会となっております。
それはそれで機能していかなければいけないわけですけれども、この障害のある学生の修学支援に関する検討会というのもまた、ある種、PDCAサイクルの中のチェック機能を、第二次まとめという形を通して担おうとしているわけですよね。
そうすると、その政策委員会によるモニタリングと、この場におけるモニタリングというのは、連動させてというか、相互に対話しながら、いわゆる建設的な対話を進めながらやっていくのが望ましいと。ここはこうで、もうやりましたという形じゃなく、政策委員会との間のある種のコミュニケーションというか対話をしながら進めていく必要があるように思うのですね。
なぜかというと、これは権利条約が求めていることなのですけれども、そうしたモニタリングというのは当事者参加を非常に重視しています。この会議にも殿岡委員であるとか、私であるとか、あと、お願いしているのかな。しかし、あくまでも少数なのですね。とすると、政策委員会とこことの関係をどういうふうにしていくかということもきちんとしていかないと、第二次まとめというのは構造的にどのような位置にあるものなのかということがわかりにくくなると言いますか、あるいはその本来の意図と違う解釈をされてしまうということも、せっかく熱意のある人たちが集まっている場所なのでもったいない話ですので、そこはきちんとやっていった方がいいと思います。
それから、第二次まとめで、これは今度、第3次障害者基本計画というのは5年計画なので、今年、もう4年目に入っておりまして、そろそろ第4次基本計画のための最終的な第3次基本計画に基づく施策の評価と、それから第4次基本計画の策定作業というのが始まるわけなのですね。そうすると、この第二次まとめというのが非常に重要な意味を持ってきまして、それは第3次基本計画において第一次まとめが果たしたのと、多分同じような役割を果たすことになり得ると思うので、その場合もやはり政策委員会は、そのモニタリング機関であると同時に、基本計画のアドバイザリー機関、意見を述べる機関になっていますので、どちらの意味におきましても、その枠組みと個々との間の関係をきちんとしていくということが重要じゃないかなというふうに考えています。

【竹田座長】基本計画、それから政策委員会とのすり合わせというのは、とっていくのも必要なのかなというふうに思いながら伺っておりましたけれども。
近藤委員は、AHEAD JAPANに関しては、事務局長をされているということで御発言があれば。

【近藤委員】AHEAD JAPAN、全国高等教育障害学生支援協議会というものが、今度、6月の25、26と第2回大会を開きますけれども、現在、60を超える大学が協議会の中に法人会員として参加をしてくださっていて、様々な形で、大学の中でのよりよい障害のある学生への支援というのをどう行っていくべきかと言うのを、かなり積極的に議論していただいているようなところです。
同様の組織というものは、例えば欧州であれば、やはりAHEADというアイルランドの団体が中心となって、欧州間の連携を「LINK Project」という名称で、欧州国間の連携をしております。それから、アメリカで言いますと、全米には6,000校ほど大学があると言われますけれども、そのうちの二千数百校が参加する形でAHEADという団体がつくられておりまして、その中でもやはり専門家が集まって、大学の中でどのような適切な合理的配慮であったり、差別の禁止というものを遂行していくのかということを議論しています。
日本でもそのような形の協議会というのが必要だということで、多くの方々の御支援を頂いて、今、その協議会というものがつくられているという状況です。
いわゆる障害のある学生の支援、ディスアビリティー・ステューデント・サービスと一般的に呼ばれますが、これは大学の中で不可欠な、大学に基本的に存在しているべき機能であるということが国際的には認識をされていて、一つの職能集団としてそういったものが形成されています。日本の中では今まだ、これからやっていこうというところですので、このAHEAD JAPANという団体が、大学の総意として、どのような職能を形成していくのかということが、しっかり今後つくられていることが必要であると思いますし、また、それをいろいろな方々の御支援いただきながら構築していく必要があると考えています。
第一次まとめの内容もそうですし、恐らくこの第二次まとめの内容についても、このAHEAD JAPANに参加してくださっているような職員や教員の方々は、基本的なリテラシーとして共有されていくものになっていくだろうと考えております。
今はAHEAD JAPANの事務局長としての立場で申し上げましたけれども、私、実はそれとは別に、東京大学において、DO-IT Japanという、障害のある学生の支援を行う取り組みを10年ほど続けておりまして、その中では、障害のある小中高大学全ての教育課程にいる、あらゆる障害のある学生たちの支援を行うという取り組みを行ってきています。
その中で、今日の議論の前半の方で出てきていたのですけれども、私たちが支援に入る際の最も中心的な考え方というか、最も求められることが多いものは何かと言いますと、「移行支援」です。もう既に多くの先生方から御指摘いただいておりますけれども、初等中等教育段階から大学に移行する際には、例えば大学入試での配慮の内容であるとか、高校の段階まで受けていた支援というものを進学後の大学の中でどのように実現していくのかという問題が起こります。この移行段階にあるときというのは、一回、支援がゼロになってしまうことが多く起こります。これは小学校から中学校でも同じですし、中学校から高校でも同じです。また今度は初中教育段階から高等教育段階に移るときというのは、また大きな断崖というものもございますので、その間をいかに移行支援をしていくのかということが、非常に重要なトピックになってきています。
特に大学に移るときというのは年齢が18歳を超えるということもありまして、福祉制度上にも大きな変化が生まれるということで、その福祉制度の利用についての移行支援の部分をどのようにサポートしていくのかというのがかなり重要なことになってきています。
それともう一つは、大学を卒業した後、就労の段階に移行していく段階です。大学の段階でどのように準備をしておくかというのが非常に重要です。それは何かというと、初中教育の段階では、学校が彼らの人生の大部分を占めるというか、行く場所の大部分を占めるものなのです。けれども大学に移りますと、今度は学校が全てを支援すればいいということではなくなります。彼らが様々な社会的なリソースを自由に組み合わせて使って、その後のいわゆる社会人、市民としてよりよく社会参加をしていくための準備を行うということが大学課程においては非常に重要になってきます。
ようやく卒業して就職する段階になって初めて、じゃあその社会資源、例えばヘルパーをどうやって使っていこうかとか、若しくは就労移行支援をどう使っていこうかとか、若しくは、そもそもこれまで、親に全て頼り切りだったのだけれども、初めて社会資源をいろいろ組み合わせて自分で独り立ちして暮らしていこうか、といった議論が、大学を卒業した後になって起こってくることというのは、かなり、なかなかその(困難が多い。)。本来的にはやはり修学の段階から、様々なリソースを組み合わせながら自立をしていく経験や機会が必要です。自立というのは、自分一人だけで生きていくことではありませんので、様々な社会リソースを効果的に組み合わせて生きていく人を大学教育までの段階でつくっていくということは、非常に重要な教育の使命だというふうに考えています。
そのように考えると、やはりこの初中教育から高等教育段階の接続と、高等教育から就労の接続というのは、大きな枠組みで言うと、移行支援ということになっていくかと思います。この移行支援ということに関しては、日本の教育というのは非常に弱いところでして、移行支援の専門性を果たしてどのように教育の中に位置づけていくのかというのは、私は極めて重要なトピックになっていくと思います。これら2つの段階の移行支援をまとめてしまうと、それぞれの段階で必要とされていることが弱くなってしまうかもしれません。けれども、移行支援というテーマで、修学支援の外側というか、そうした部分に、大学に社会的に重要な意義や機能があるということを位置づけていけると、望ましいのではないかと考えています。

【竹田座長】最後にいろいろ、石川委員、近藤委員から大事な御意見を頂いたと思いますが、そろそろ時間になりましたので、今日は活発な御議論を頂きましたことを踏まえて、論点を整理して、今後の検討会を構成していければと考えております。
それでは、最後に当面の検討会のスケジュールについて、事務局において資料5に整理しておりますので、事務局から御説明をお願いいたします。

【小代課長補佐】資料5 を御覧いただきたいと思います。当面の検討会のスケジュールについて(案)でございます。
まだ詳しいことが書いておりませんが、本日1回目が4月19日です。2回目は5月18日と、日程だけは決めさせていただいております。恐らく午後の時間帯ということになるかと思いますが、時間はまた御連絡を差し上げたいと思います。
それ以降は、本日御議論を頂きました論点整理、これを座長と御相談の上、事務局で整理しまして、どういうふうに組み立てていくかを考えたいと思いますが、この論点整理の内容を踏まえまして、当然ヒアリング等が必要になる、それから十分な議論も必要ということで、この後の日程を立てていきたいと思っております。
ただ、何年間もかけてやるような話でもありませんので、年末をめどに第二次まとめをしたいと考えております。
それから、その過程で、一度7月をめどに、第二次まとめの取りまとめに向けた基本的な考え方についても、少し整理をしたいと考えております。

【竹田座長】ただいまの御説明に御質問等ございませんでしょうか。ございませんようでしたら、本日の議事は以上ですが、その他会合全体を通して、御意見等はございませんでしょうか。

【大島委員】本日の議題にありました一億総活躍社会につきまして、本日お話ができなかったと思いますので、是非、メールベースなのか、次回なのか、お話ができればと思いますので、お願いします。

【竹田座長】では他にも、メールベースで事務局の方に、その他のことに関してでも結構ですので、事務局宛(あ)てに、時間が限られておりますので、メールいただきまして、一億総活躍に関しては、国の政策に関連したことですので、この検討会全体を通して、何か資するものが、提案、議論ができればいいかなというふうに思いますので、よろしくお願いします。

【殿岡委員】かなり時間が押しているところ、すみません。最後に一つだけ、お願いします。
現在、熊本県において発生している地震で、熊本大学、熊本学園大学、九州ルーテル学院大学など障害学生支援室を持っている大学が、被災をしております。
そして、特に、熊本学園大学につきましては、現在、障害学生支援室が避難所になっている状況です。何ができるわけではないのですが、是非皆さん、被災している障害学生支援室のことを、是非お心にとめていただき、我々も、防災というのが、もしかしたら今後の検討会でも議論になるかもしれませんが、できることをしていければと思っています。

【竹田座長】とても大事な御発言でしたので、検討会で、今の御発言は共有させていただきたいと思います。
それでは、次回から早速、議論とヒアリングを開始したいと考えております。具体的な議論のテーマとヒアリングに御協力いただく方につきましては、本日の御議論を踏まえて、私の方で事務局と相談して、その結果を事前に各委員の先生方にメールにて御連絡をさせていただこうと考えておりますが、いかがでしょうか。よろしいですか。では、そう言う形をとらせていただきます。
また、次回の検討会では、本日の御議論の内容を反映させた資料4の論点整理を整備させていただきますので、こちらにつきましても私の方で事務局と調整させていただきます。よろしくお願いします。
よろしいでしょうか。それでは、以上をもちまして、障害のある学生の修学支援に関する検討会の第1回を終了させていただきます。どうもありがとうございました。


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文部科学省高等教育局学生・留学生課

(文部科学省高等教育局学生・留学生課)