資料1 重点検討事項「障害者差別解消法を踏まえた「合理的配慮」や「不当な差別的取扱い」に関する考え方の確認」について(前回検討会(第4回)における主な議論の内容)

重点検討事項「障害者差別解消法を踏まえた「合理的配慮」や
「不当な差別的取扱い」に関する考え方の確認」について
(前回検討会(第4回)における主な議論の内容)


1.大学等における合理的配慮の位置づけ
大学等は様々な学生支援の取組を実施
○ 支援内容による分類(例)
・ 奨学金
・ 就職支援
・ 課外活動支援
・ 健康相談・カウンセリング
○ 支援対象による分類(例)
・ 日本人留学生(派遣)支援
・ 外国人留学生(受入)支援
・ 社会人学生支援
→ 障害学生への合理的配慮の提供も、こうした学生支援の取組の一つとして位置づけられる


2.障害者差別解消法の条文から考える「合理的配慮」の内容
「合理的配慮」を規定した条文の構成
○ 第7条第2項 国公立大学等を含む行政機関等(法的義務)
(1)行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、
(2)障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、
(3)その実施に伴う負担が過重でないときは、
(4)障害者の権利利益を侵害することとならないよう、
(5)当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、
(6)社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。
○ 第8条第2項 私立大学等を含む事業者(努力義務)
(1)事業者は、その事業を行うに当たり、
(2)~(5) 第7条2項と同じ
(6)社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするように努めなければならない。

(1)「行政機関等(事業者)は、その事務又は事業(その事業)を行うに当たり、」
・合理的配慮は、本来業務に付随して提供義務(ないし努力義務)が発生
(2)「障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、」
・合理的配慮は、個々の場面における社会的障壁除去についての障害者のニーズ(いわゆる個々のニーズ)が実際に存在している場合に提供義務(ないし努力義務)が発生。「意思の表明があった場合」という文言(条件)は、合理的配慮の決定プロセスが基本的には意思の表明の後に開始されることを意味する。
・他方、意思の表明がない場合であっても、当該障害者が社会的障壁の除去を必要としていることが明白な場合には、法の趣旨に鑑みれば、適切と思われる配慮を提案するために建設的対話を働きかけるなど、自主的な取組に努めることが望ましい。
・また、あらかじめ障害者一般のニーズを念頭に置いて社会的障壁を除去する措置である事前的改善措置を行うことが望ましい。
(3)「その実施に伴う負担が過重でないときは、」
・ある合理的配慮に伴う負担が過重か否かは、個別の事案ごとに、1)事務・事業への影響の程度、2)実現可能性の程度、3)費用・負担の程度、4)事務・事業規模、5)財政・財務状況などの要素が考慮に入れられて、総合的・客観的に判断される。
(4)「障害者の権利利益を侵害することとならないよう、」
・権利利益の侵害は、合理的配慮の提供に必要な要素に含まれない。よって、権利利益の侵害については証明しなくても、合理的配慮の不提供を証明することができる。
(5)「当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、」
・個々のニーズは障害の状態のみならず、性別や年齢も考慮に入れたものとなることを意味する。プライバシーの扱いも、個々のニーズに含まれうる。


3.合理的配慮の決定プロセス
○ 合理的配慮は、個々の学生(障害者)と個々の大学等(相手方)との間で[個別的性格]、学生の意思の表明がなされた後に[事後的性格]、両者の対話を経て[対話的性格]、その提供又は不提供が決定される。
○ 合理的配慮の決定に関わる要素として、(1)学生に関すること、(2)大学等(教育)に関すること、(3)法律・規程に関すること、がある。
(1)学生に関すること
◇ 学生からの意思(配慮を求める)の表明がある
・「教育に付随する配慮」を求めること
◇学生が大学等に対して、機能障害(障害による活動制限や参加制約)や社会的障壁があることを説明する
・機能障害を有することに関する状況の説明
・求める配慮と機能障害とは関係があることの説明
(2)大学等(教育)に関するもの
◇学生の意思の表明を受けて対話を開始
・意思の表明がない場合でも、明らかに困っており社会的障壁の除去が必要な学生や、機能障害により意思の表明が困難な学生への支援は必要
・特に後者に対しては、学生の意思の表明をサポートする手段を講じるとともに、自立(自己決定)に向けて学生に意思の表明をできる力(学生が自身の権利や制度を知る)を身に着けさせる観点が重要(そのためには、障害特性を熟知し、支援に関わるスキルを持った専門家の配備や教職員の育成も必要)
◇求めている配慮は大学等の業務に付随するものであることの確認
◇機能障害があることの確認
・根拠はあるか(根拠資料の確認)
「合理的配慮の決定に当たっては、他の学生との公平性の観点から、学生に対し根拠資料(障害者手帳、診断書、心理検査の結果、学内外の専門家の所見、高等学校等の大学入学前の支援状況に関する資料等)の提出を求め、それに基づく配慮の決定を行うことが重要である。障がいのある学生の修学支援に関する検討会報告(第一次まとめ)」
・その状態が長期的に続くものか
・現状のいわゆる一般的な「やり方」が機能障害との関連において社会的障壁になっていると言えるか
・求めている配慮と機能障害に関連はあるか(医学、心理学による客観的判断やこれまで受けてきた支援に関する資料)
・機能障害の状態から考えて、配慮の内容的量的側面において妥当であるか
◇変更できない教育の本質部分との関係の確認
・教育(学位授与、単位認定)の目的、内容、機能は何かを明示する
・そのためには、アドミッションポリシーやディプロマポリシー、シラバス等を明確化、具体化すること。それが、「本質的な変更」が否かの判断のよりどころとなり、これらを公開することで改善を促進できる
・教育目的等を達成するための「方法」が社会的障壁となっているか
・教育目的等の本質を変えずに社会的障壁の除去が可能か
◇妥当性判断のための体制整備
・根拠資料を得やすい環境の整備(拠点校を中心とした関係機関間ネットワークにおける専門スタッフの配置と検査等の共同実施等、高大連携、成人期の発達障害の診断が受けられる医療機関の情報の集積 等)
(3)法律・規程に関すること
◇決定プロセスを進めるための前提条件
・学内規程が法律との関連で妥当なものとなっているか
・過重な負担にならないか
・障害者、第三者の権利利益を侵害していないか
◇常に見直されるものであるため、その際には、改めて、合理的配慮の提供を受ける側、提供する側、それらの関係者、第三者の権利利益を侵害していないか、過重な負担にならないかの確認が必要


4.場面ごとの決定プロセス・課題の例
(例1)試験時間の延長
◇機能障害によって社会的障壁となっている要素は何か
・試験の形態によって異なる
◇測定しようとしている能力は何か
◇その能力を評価者に伝えるために求められる技能は何か(例えば、文章をスムーズに読む技能、手書きで文字を書く技能、書字や読字の流暢性と正確性等)
◇配慮の妥当性の評価
・どの程度の延長が妥当か
(一般的な延長時間判断の根拠の例)
→読み障害の青年において、一般的な大学生の1.5~2倍の時間がかかるものがいた(立脇、 2016)
(個別ケースにおける延長時間判断の根拠の例)
→四肢完全麻痺の受験生において、数学の試験で対照群に比べ3.2倍の筆記時間がかかるものがいた(近藤、2016)

(例2) 学外実習
「障害のある学生が資格の取得やインターンシップ等のため、学外の諸機関での実習を希望する場合、可能な限り機会を確保するよう努める。
これらの実施に当たっては、実習先機関の利用者への影響を考慮しつつ、実習の教育目標を達成するための合理的配慮が提供されるよう、大学等は実習先機関と密接に情報交換を行うことが重要である。(第一次まとめ)」
◇実習授業の目的・内容・機能の本質的変更をせずに、過重な負担とならないよう、第三者の権利利益を損なわない形が可能か
◇実習の内容・実施体制、障害の程度を考慮


5.紛争の解決と防止
○ 決定プロセスの後に、障害学生等が、
・合理的配慮の決定プロセス(特に対話)の進め方
・合理的配慮の不提供の決定、
・合理的配慮の実際の提供(の内容と仕方)
について不満をもち、紛争がおこる場合がありうる
○ 紛争の防止のためには、
・事前的改善措置を全学的・計画的に進めること(それにより合理的配慮が不要になったり、合理的配慮が実際に提供されやすくなったりする)
・調査による実態把握
・マニュアルの作成と見直し
・教職員への情報共有・研修
・学生の意識向上
・合理的配慮の決定から実施までの仕組み作り
等が重要
○ 紛争が生じた場合の解決のための学内手続きの仕組み作り、体制整備が必要


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文部科学省高等教育局学生・留学生課