理工系人材育成に関する産学官円卓会議(第10回) 議事録

1.日時

平成29年5月22日(月曜日)10時00分~11時45分

2.場所

経済産業省別館9階 944共用会議室

3.議題

  1. 人材需給ワーキンググループ取りまとめ
  2. 理工系人材育成に関する産学官行動計画のフォローアップについて

4.出席者

委員

内山田委員、野路委員、須藤委員、秋山委員、大西委員、上野委員、佐藤委員(鷹野代理)、谷口委員、神谷委員

文部科学省

常盤高等教育局長、松尾大臣官房審議官、浅野専門教育課長、福島専門教育課企画官

経済産業省
末松産業技術環境局長、飯村大学連携推進室長、渡邉産業技術政策課長

5.議事録

【飯村大学連携推進室長】  それでは,定刻よりも若干早い時間でございますけれども,委員の皆様に既にお集まりいただきましたので,早速ですが第10回の理工系人材育成に関する産学官円卓会議を開催いたします。
 委員の皆様におかれましては,御多忙にもかかわらず御出席いただきまして,まことにありがとうございます。経済産業省の大学連携推進室長の飯村でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回は,本年3月に策定いたしました人材需給ワーキンググループの取りまとめについての御報告,また昨年8月に取りまとめました理工系人材育成に関する産学官行動計画のフォローアップを行います。議事につきましては,事務局にて進行させていただきます。
 座長につきましては,内山田委員,大西委員の共同座長ということで引き続きお願いしたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず,委員についてでございます。商工会議所の横倉様におかれましては,商工会議所の役員の就任期間が終了されましたため,日本商工会議所において委員をご検討中とお聞きしております。商工会議所からは,本日の円卓会議においては委員の方は御不在という形になります。
 また,日本私立大学団体連合会の代表として参加される委員の藤嶋昭様から佐藤光史様に交代がありました。なお,本日,佐藤委員はご欠席でして,代理としまして工学院大学副学長の鷹野一朗様にご出席いただいております。
 それでは,まず佐藤委員の代理として,鷹野工学院大学副学長よりご挨拶いただければと存じます。

 

【佐藤委員(鷹野代理)】  皆様,こんにちは。工学院大学の副学長の鷹野でございます。
 佐藤が都合で来られませんので,私が本日,代理ということで務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 

【飯村大学連携推進室長】  ありがとうございます。
 資料の確認の前に,こちら側,事務局側なのですけれども,文科省の高等局のほうが国会対応ということで,本日は常盤局長,松尾審議官は御出席が難しいとお聞きしております。恐縮でございます。
 それでは,資料の確認をいたします。
 本日は,ペーパーレスということでお手元にiPadを置いております。下の電源ボタンを入れていただきますと,まず資料の一覧という形でごらんになられるかと思います。資料は,順番が0から始まっているのですけれども,0の議事次第から始まりまして,資料自体は1から資料11まで,神谷委員の資料まで,10と11が上のほうにございます。そのほかに,配付資料が1から5までという構成になっております。もし操作等についてご不明な点等ありましたら,手を挙げていただきまして,私ども事務局のほうから伺いたいと思います。
 また,議事進行に伴いまして,そちらのスライドでも資料をみえるようにしたいと思いますので,ご参照いただければと存じます。
 また,iPadに入っている資料のほかに,メーンテーブルの皆様には,各団体からご提出いただいた行動計画のフォローアップ表を別途お配りさせていただいております。
 資料についてはよろしいでしょうか。
 それでは,カメラ撮影の方はここまでで御退出いただければと思います。よろしいでしょうか。
 それでは,早速ですが議事に入りたいと思います。
 まず,本日なのですけれども,事務局のほうから,政府の取り組みを中心に資料1,2についてご説明をいただきまして,次に行動計画に係る皆様の取り組みについて,まず産業界の委員からご説明を頂戴しまして,その後,質疑。その後は,教育界の皆様からご説明をいただきまして,その後,全体的な質疑ということで全体を進めさせていただきます。最後の全体の質疑は,30分ほど時間をとっております。
 それから,経産省の冷房はまだ試運転でございまして,クールビズ期間でございますので,もし暑いようでしたら,上着はぜひ脱いでいただければと存じます。
 それでは,資料1に基づきまして,事務局のほうからご説明したいと思います。10分ほどお時間を頂戴します。
 資料1でございます。この資料は,円卓会議の下に設置しました人材需給ワーキングの取りまとめ及び本日の議論のポイントということでまとめております。
 まず,目次をごらんいただきますと,1つ目が円卓会議の下に設置した「ワーキングの取りまとめ」でございます。
 2ページ目をごらんください。円卓会議のもとに作成いたしました行動計画ですけれども,3つの柱がございまして,1つ目が「産業界ニーズと高等教育のマッチング方策・専門教育の充実」,2つ目が「産業界における博士人材の活躍の促進方策」,3つ目が「すそ野拡大,初等中等教育の充実」ということでございました。高等教育の中では,1つ目の柱について人材需給ワーキングを設置しまして,具体的には,これまでの最新のデータに基づいて議論を行いまして,かつ1つ目の「産業界のニーズと高等教育のマッチング方策」について議論を行うというふうにされております。
 したがいまして,昨年8月に行動計画を策定しましてから,この人材需給ワーキングを昨年12月から今年の3月にかけて3回開催いたしました。委員は,ごらんの皆様にお願いいたしました。
 ここで出てまいりました新しいデータでございます,4ページをごらんください。これは円卓会議のときからずっとごらんいただいておりました,分野における企業のニーズと研究者の分布のギャップということでございます。2年前に一度とったデータでおみせしたのですけれども,実は今回新しいデータでも,全く同じ分布という形になりました。機械,電子,特にIT系で最近は企業のニーズが高いと。他方で,研究者の割合が高いところは右側のバイオ系というところで,全く同じ分布ということでございます。
 時間に限りがありますので少し飛ばしますけれど,5ページ目。これは,今の折れ線グラフをさらに男女で分けたものでございます。
 6ページ目をごらんください。今回人材需給ワーキングの中では,円卓会議の行動計画のフォローアップ項目が大変多いということで,特に最近,喫緊の課題といわれております「数理・データサイエンス系の人材」,こういうことに注目しまして議論をしてまいりました。6ページ目は,新しいデータをここで追加させていただいたものです。私どもの試算です。専攻としてITを学んできた学生というのは必ずしも多くないと思うのですけれども,IT系以外の専攻でも,科目ベースでみるとかなり履修している人がいるということで試算をしたものです。もともと計算方法は,下のほうに書いてあります大学成績センターの履修履歴のデータベース,10万人のデータをもとに,文科省の256万人,大学学部生の数を膨らませた数で,延べ数ですけれども,上の各科目について大体どれぐらいの人が履修しているかというところで試算したものです。
 例えば,一番数が多いのは2段目のプログラミング,延べ数で約42万人程度。下から2番目の機械学習(人工知能)ですと3,000人ぐらいということで,桁の違いはありますけれども,こういった形で専門ではないけれども科目としてはとっている,こういう数も随分いらっしゃると。横にみていただきますと,例えば文系,理系,文系の方もとっているというのがごらんいただけると思います。
 7ページ目をごらんください。これは,大学を卒業して社会人になって入社1年目から3年目の技術系職種の方にお聞きした,「大学等への講座,指導方法等に関する要望」ということでございます。例えば「多様な分野の科目を学べる学科」,あるいは「企業等との共同研究」,「より実践的で実社会に貢献できる研究」,こういったものに対するニーズが高いということでございます。
 8ページ目「履修履歴の活用状況」,これも社会人の方にお聞きしたものです。応募時において大体3割前後,内定後の提出まで含めると8割ぐらいのところで,成績証明書を含めた履修履歴というものが使われているという状況でございます。
 9ページ目,注目しております情報系を中心に,大学で知識を学んだのか,あるいは企業内研修で学んだのか,働きながら学んだのか,そういったものを分野ごとに調べたものでございます。左側の真ん中あたりに「情報系」というのがありまして,赤の企業内研修で学んだというのが情報系は多いというのが一つの特徴でございます。
 また,10ページ目,社会人の学び直しということも注目されておりますけれども,「MOOCなどを利用したオンライン講座で学ぶ利点と課題」等についても調査しております。利点としては時間の自由度。課題としては質の問題,どういうものが良質なものなのか,あるいは相互方向ではないのでなかなか学び直しの知識が深まらない,こういった点が指摘されております。
 11ページ,12ページに,以上の調査の概要を書いております。これは社会人を対象に,約3万サンプルで調べたものでございました。
 もう一つ新しいデータということで,13ページでございます。これは文科省さんが委託調査で千葉大学に出されたものということで,対象は大学と企業・機関に対してということでございます。これも産業界・企業が重視するもの,大学で重視して教えているもの,こういったもののギャップをみることができます。
 例えば15ページをごらんください。「プロジェクト型教育」については,45度線より左上は企業が重視しているもの,右下が,大学のほうがどちらかというと重視しているもの。PBLについては,企業のほうがどちらかというと重視している様々な項目。コミュニケーション能力等々が多いということがごらんになれます。
 16ページは「専門基礎科目」の開講状況で,左側は,学生の理解度を先生方からみて指摘したもの。それぞれ開講している割合も違いますけれども,理解度という意味では割と低い科目も多い。青の部分,低い部分が多いということでございます。
 17ページ,もう一つごらんください。「専門基礎科目」が重要であるということは,円卓会議でもご指摘がありました。これも45度線を中心にみていただければいいのですけれども,左上の企業が必要としているものと,右下の大学で一生懸命教えていらっしゃるもの,これもややずれている部分もあると。企業がマネジメントあるいはシミュレーション技法というものの必要性を高く感じているのに対し,大学では基礎的な数学系の科目はよく教えられている,こういったギャップもごらんいただけるところでございます。このようなデータもご紹介しまして,人材需給ワーキングで昨年12月から3月まで議論してきたところでございます。
 19ページをごらんください。「人材需給ワーキングの議論の全体像」です。円卓会議の行動計画の項目は大変多いということで,今回は数理・情報技術分野の人材育成ということにかなり焦点を絞って議論してまいりました。
 19ページの左下の図なのですけれども,行動計画の中で,まず産業界と教育機関,産業界のニーズと行動計画のマッチング方策を議論するということで,どのような関わりがあるかということで,行動計画の中に大学協議体,当時は仮称と書いてありましたけれども,設置するということで行動計画を記載しているところです。これについて文科省さんと私どものほうで,かなり具体的な協議体の設置,創設に向けて議論を進めてまいりました。
 あるいは産業界から教育機関に,上のほうから矢印が延びているのですけれども,産業界が教育機関にかかわる方策として寄附講座や講師派遣,教材提供,奨学金等々,あるいは産業界自身もスキルの提示をしっかりしていっていただく。それから,教育機関もカリキュラムや学び直しの機会の提供,インターンシップ等々,こういったことを産業界と一緒に進めていく,これが行動計画の1つ目の柱の全体像でございました。
 20ページをみていただきますと,今の話と同じことを書いておりまして,大学協議体をまず設立するということで準備を進めております。5月の前半にも準備会合を進めさせていただいております。これには実務レベル,例えば学部長レベルの方に出ていただきまして,意見交換あるいは寄附講座等,具体的なプログラムに落とし込んでいけるように,これから活動を進めてまいります。
 21ページをごらんください。先ほどの産業界から教育機関への関わり方という意味では,下のほうの図をごらんいただければと思うのですけれども,幾つかレベルがあろうということで,リテラシー的なもの,分野横断的,専門分野×ITのような能力・知識,それから高度な研究能力,実践的能力ということで,これに対応する人材育成に関する産学連携の方法としては,リテラシーに相当するものであれば必要な情報提供,IT人材であれば,ITに関する寄附講座,講師派遣,教材提供等,実践的能力であれば共同研究,インターンシップ等ということで,この行動計画のフォローアップは,パワーポイントで簡単にごらんいただいているわけですけれども,実際の人材需給ワーキングでは,右側のパターン①,②,③に相当したようなパターン分けをしまして,好事例を横展開していこうということで好事例を発掘しているところでございます。
 また,22ページをごらんいだきますと,これはスキルの見える化ということで,まずは科目ベースで,必修科目はどういうものかというのを経産省の別の事業のほうで整理を始めております。また履修履歴というものは,採用活動だけではなく社内での企業内教育,あるいは学び直しにおいて有効な情報管理ツールであろうということで,最大限ぜひご活用いただきたいというふうに考えております。
 続きまして,23ページ目でございます。「社会人の学び直し」。先ほどの情報分野なども特にそうだと思うのですけれども,一度大学で学んだだけではなく企業内でも学び直す。あるいはキャリアアップ,キャリアチェンジのときにも,もしかしたら学び直す必要があろうということで,学び直しの促進は大変重要だというふうに考えております。
 23ページの左側,既に「職業実践力育成プログラム(BP)認定制度」というのがございます。これは雇用保険の給付金の対象でございます。さらに大学に活用していただきたいということでございますが,これは120時間の履修が必要ということで,下の囲みなのですけれども,さらに短期間でサーティフィケートが発行されるようなものについて,現在,文科省さんで平成29年度の創設を目指されているということでございます。
 24ページ目にまいります。これは大学における工学系教育のあり方全般ということで,第四次産業革命やSociety5.0,新しい社会,新しい産業構造に対応した人材育成が根本的に必要であるということで,文科省さんのほうで進めていらっしゃる検討会でございます。本ワーキンググループの議論とも連携して進めていただくということでございます。
 特に「今後取り組むべき方策」の下のほうに書いております情報系の標準カリキュラムは,今あるものが10年前だということで,こういうものの見直しをされていくと。それを産学協働でやっていくということが進められる予定でございます。
 以上が人材需給ワーキングの全体像でございます。
 25ページ目,最後にごらんいただきまして,事務局からは,本日のフォローアップの議論のポイントとしまして,大きく2つご提示させていただきたいと思います。まず1つ目,「今後の行動計画のフォローアップの進め方」でございます。行動計画全体,アクションプランの項目が大変多いということで,私どもとしては,的を絞って具体的に進捗があるような好事例を深掘りして横展開する,こういったフォローアップ方法がよいのではないかというふうに考えております。
 2つ目,まだデータあるいはヒアリングによる事実の発掘ということかもしれませんけれども,この人材需給ギャップを詳細に把握し,関係者が動くためにはどのようなデータ,ファクトが必要かという点についてご議論いただければと思います。
 2番目,「円卓会議の今後の進め方」でございます。人材育成であればAI関係の人材育成が官邸のほうでもありますので,さまざまな形で人材育成に関して大変注目が集まっています。したがいまして,我々もこのデータを人材育成推進会議のほうにご報告しまして,定量的なデータとして初めてこういう分布をみたということもいっていただきまして,大変価値があると思うのですけれども,どういった形で連携していくのがいいか,政策的にインパクトのある活動になるかという点についてご議論いただければと思います。
 また最後に,円卓会議は昨年6月の末に第9回を開催して,約11カ月フォローアップしてまいりまして,今回10回目ということで改めてお集まりいただいたところでございます。大体1年間で,新しいデータをみて,議論をしてフォローアップする,こういったサイクルで進めさせていただければと思っておりますけれども,この点についてもご議論いただければと思います。
 事務局から,資料1については以上で,資料2については,産学官のそれぞれの皆様からフォローアップ項目についてご提出いただいたものを事務局でまとめたものでございます。
 以上でございます。
 では,引き続きまして,行動計画に係る皆様の取り組みにつきまして,まず産業界の委員の皆様からご説明を頂きます。また,本日は一般社団法人新経済連盟様より関聡司事務局長にお越しいただいておりまして,資料6についてご説明をいただく予定でございます。
 ご説明時間につきましては,大変恐縮でございますが,5分厳守ということでさせていただきたいと思います。4分目のところで,学会方式で鈴を鳴らさせていただきます。恐縮でございます。
 それでは,まず内山田座長にお願いしたいと思います。

 

【内山田共同座長】  ありがとうございます。では,お手元タブレット上では資料3をお開きいただきたいと思います。理工系人材育成に関する産学官行動計画に関連します産業界の取り組みについてご紹介をさせていただきたいと思います。
 資料のスライド2をごらんください。本日,私のほうからは,Society5.0の実現と理工系人材というものと,産業界における3つの事例について紹介をさせていただきたいと思います。
 スライド3をごらんください。経団連は,本年2月に公表しましたSociety5.0に関する提言におきまして,実現に向けた行動計画とともに,図中,左のほうに示してございますが,突破すべき5つの壁を提案いたしました。その1つに人材の壁,まさに今議論されている人材問題があるわけですが,我が国は,理工系人材が質・量ともに圧倒的に不足しております。産業界としましては,人材の壁を突破するために,省庁の横断的連携による長期的な人材戦略のもと,大型の共同研究などを通じた人材育成が必要だと考えております。
 スライド4をごらんください。左半分に,先ほどご説明いただきました円卓会議から出ました行動計画の概要を示しておりまして,今から3つの事例をご説明しますが,その各々の事例が行動計画のどの部分と関係があるかというのを示しているものでございます。
 スライド5をお願いいたします。1つ目の事例ですが,これは社会ニーズに対応する教育環境整備に関するものでございます。トヨタ自動車と筑波大学は,地域未来の社会基盤づくりに取り組む未来社会工学開発研究センターを共同で設立いたしました。筑波大学内の多様な研究組織,さらに地域住民や自治体にも参加いただきまして,オープンラボ方式による組織対組織の本格的な産学官連携を推進する計画でございます。
 スライド6をお願いいたします。未来社会工学開発研究センターは,地方,地域が抱える課題のうち,産業支援,保育支援,防災・減災などをターゲットとしまして,自動運転,ロボティクス,燃料電池などの自動車の技術革新とビッグデータ解析,人工知能などの先進技術を組み合わせまして,地域創生に資する政策提言,実学研究に取り組んでいく計画でございます。さらに教育講座を開設し,地域のイノベーション拠点形成を促進する理工系人材の育成にも取り組んでまいります
 スライド7をお願いいたします。2つ目の事例は,未来の産業創造,社会変革に対応した人材育成に関するものでございます。経団連と東京大学は,東大・経団連ベンチャー協創会議を立ち上げまして,昨年11月に第1回総会を開催いたしました。活動の一つとして,東大の起業家人材育成プログラムに経団連が関与しまして,起業家人材の育成強化に努めていきたいと考えております。今後,ロボティクスやエネルギー,サービスにかかわるベンチャーとの連携,ベンチャーの創出・育成に積極的な他大学への展開に向けた検討を予定しております。これらの連携を通じた人材育成に取り組んでいく所存でございます。
 スライド8は最後の事例ですが,理工系人材の裾野拡大に関するものです。経団連と内閣府,文科省は,「夏のリコチャレ2016」を開催いたしました。これは2015年度の第1回に続いての開催で,文科省に新たに参画いただきました。この夏も2017の開催を予定しております。
 夏のリコチャレは,夏休みを利用しまして女子中高生に技術系職場の見学や技術者とも対話してもらい,理工系進学に関心をもってもらおうというもので,理工系人材の裾野拡大に貢献するものと考えております。産業界もこのイベントには力を入れており,スライドの真ん中,ピンクで示しておりますように,参加企業,学生数とも大きく伸びております。この成果を理工系進学者の増加につなげられるよう,政府の皆様にはPRの強化,省庁間・部局間連携の強化など,より一層の取り組みを期待しております。
 以上で私からの説明を終わります。

 

【飯村大学連携推進室長】  内山田座長,ありがとうございました。
 それでは,野路委員にご説明をお願いしたいと思います。

 

【野路委員】  それでは,資料4をお開きください。私からは,大型の産学共同研究をどのように進めていくかということについて,私どもの会社の事例をご紹介します。
 資料は1枚で,そこに2005年から現在まで12年間の歩みを載せております。当初は包括連携協定から始めまして,次に共同研究講座,そして現在は協働研究所での研究に至っています。研究講座は一人の教授を中心とした共同研究ですが,協働研究所は大学と企業との組織対組織の研究体制になります。ですから,今行っている研究では,全世界の大学にある知的能力を,大阪大学を経由して集めてくるということもできるようになっています。
 また,人的交流の面でも,2006年からはコマツからも特任教授を派遣して大学に常駐させ,大学側の教授と連携して研究を進めています。
 さらに今年から,クロスアポイントメントを開始いたしました。企業と大学のクロスアポイントメントは,理由は分かりませんが,ほとんど実例がないと聞いています。
 資料下部の左側に,協働研究所とはどのようなものかについて記載があります。コマツから2人派遣し,ポスドク4人との計6人で1つのテーマを研究しています。費用は全額コマツ負担で,間接経費20%を大学に支払っています。ポスドクの人件費も当然負担しています。その他,賃料,つまり家賃ですけれども,それもお支払しています。合計すると,テーマの研究費の3割を負担しているという形になっていて,大阪大学にとってかなりの財務的なサポートになっているとのことでございます。また,先生方による大学としての研究と明確に分けるため,キャンパス内に別棟を建てて,そこで研究をしています。これが非常に有効だということを聞いておりまして,大阪大学の非常に大きな特徴かと思います。
 資料下部の右側は,今回のクロスアポイントメントの概要です。クロスアポイントメントについては,今年から始めたばかりなので,どのように進めるか,今,大阪大学と話しあっているところです。企業側は,ダイキンさんとコマツです。コマツが負担するのは我々を担当いただく教授の方の人件費で,コマツが2割,阪大が8割の比率です。先生方には,若干ですけれども,インセンティブもお付けするという形になっています。業務としては,共同研究テーマの進捗状況確認に加え,可能であればコマツの各事業所にも来ていただいて技術コンサルティング的な指導もお願いしようかなということを進めていますが,なにしろ始めたばかりなので,中味はこれからです。大型共同研究にしてもクロスアポイントメントにしても同じなのですが,そういった活動が企業と大学の間で進まないことには,お互いの立場を理解できないだろうと思います。マッチング等についての議論も大切ですが,産学連携を進めるスタートラインは,まずはこういった活動を進めることだと思います。ここが一つのポイントではないでしょうか。
 それと,大阪大学の例でいうと,こういう研究を長年やっているおかげでリクルートもうまくいっていますし,大学のドクターの人たち,ポスドクの人たちのリーダーシップ育成にも効果が出ています。課題研究のテーマを主体的に扱いますので,リーダーシップの能力がつくわけです。おかげさまで今年も1人,ポスドクの人を採用することができました。ドクターの人たちは,我々の会社には28才から29才で来るわけですから,入社した段階で既にリーダーの能力が必要なのです。今回,何人かのドクターの方を面接しましたが,正直なところそのような人材は少なく,こういう地道な活動をどんどん進めることが大事だと思います。
 以上です。

 

【飯村大学連携推進室長】  どうもありがとうございました。
 引き続きまして,須藤委員にご発表をお願いいたします。

 

【須藤委員】  資料5を使いまして,産業競争力懇談会(COCN)のベストプラクティスを報告いたします。
 1ページ目です。前回の円卓会議が続いているときからやっていましたけれども,まず8大学サイトビジット,あるいは個別の意見交換会というのを実施しております。下のほうに15年12月から順番に書いてありますけど,名古屋大学,東京大学,大阪大学,北海道大学,九州大学,東工大,京都大,東北大と続けて実施しました。主に総長,学長の先生方,あるいは産学連携本部の担当の理事の方を中心に対話会を実施しております。
 次をお願いします。その結果なのですけれども,3つ書いてあります。もう何度もいわれていますけど,このクラスの先生方,理事の方と話すと,もちろん産学連携の意欲というのはものすごく高いということで,産業界とほぼ認識は一致しているということです。
 2番目ですけれども,少し個別のテーマをもって対話会に臨もうということで,COCNで実施していますプロジェクトの中の「IoT,CPSを活用したスマート建設生産システム」,この中で土木に関する情報学というのをかなり積極的に提言していますので,この内容を各大学との意見交換会のときにまずぶつけてみようということで進めてまいりました。
 もう一つは,先ほど申し上げましたように執行部の先生方の意識は高いのですけど,どうも各教授の方までいくと少し意識が違うのではないかということも,当然前からいわれていますけど,その辺を埋めるためにどうしたらいいだろうかということで対話会でも議論をしまして,それではということで,2016年度のCOCNのテーマの中で,学会を少し使ってみようではないかということで,学会をオープンイノベーションの推進の場とするための方策というのをプロジェクトとして進めております。例としては,機械学会,応用物理学会,高分子学会,土木学会,この辺を中心に進めているところです。
 最初に,真ん中の土木学会,「土木情報学の整備」のところでございますけれども,何度か説明していますけれども,2015年度のテーマとして「スマート建設生産システム」というのを出しています。BIM・CIMの進化,あるいはICTの導入。特に土木の分野とICTというのは,学問的にはかなり離れているのですけど実際は必要だということで,少し重点的にやろうということでまとめました。これを提言しております。
 下のほうに(1),(2),(3)と書いてありますけど,土木工学におけるデータの取り扱いによる新分野の展開,あるいは2番目のデジタル化推進による生産性の向上,建設生産におけるCPS(サイバー・フィジカル・システム)の高度利活用というようなところを整備しようということで提言しまして,学会を中心にやろうということで,土木学会とCOCNの間でいろいろと検討を進めております。
 真ん中のほうに少し書いてありますけれども,土木学会に入っております研究者の方々,あるいは国交省,文部科学省の方に入っていただきまして意見交換を実施しております。実はあさっても,もう一回,次をやる予定になっております。この辺を通して土木における情報を入れながら,産業界の要望をカリキュラムの中に入れてもらおうということを今進めているところです。
 次,5ページ目は飛ばしまして6ページ目,もう一つのテーマで「学会をオープンイノベーションの推進の場とするための方策」ということで,先ほど申し上げましたように,大学の幹部の方ではなくて個々の先生方と産業界の意見調整をする場を設けようと。なかなか個対個だと難しいということで,学会に少し協力してもらおうということで進めております。先ほど申し上げました学会を中心に今進めておりまして,この図でいいますと,左側の企業の要望,それを学会に出す。それから,このようなテーマをやったらいいのではないかということを企業側から学会に提案しまして,学会を通して会員の先生方の参加を募るということで,この場を通じることによって,企業,産業界の意見と個々の先生方の意見調整ができるのではないかということで,これは現在進めているところであります。
 以上です。

 

【飯村大学連携推進室長】  どうもありがとうございました。
 それでは,新経済連盟の事務局長・関様からご発表をお願いいたします。

 

【新経済連盟・関事務局長】  新経済連盟事務局長の関でございます。私のほうからは,資料6になると思うのですが,先端クリエイティブ人材の育成ということに関しての取り組みについてご説明したいと思います。
 1スライド目をごらんください。ここで先端クリエイティブ人材とは何かということを定義づけておりますが,第四次産業革命においてテクノロジーの飛躍的発達,それに基づく新サービス,ビジネスモデルが生成され進化していくということを踏まえて,それらの有機的な結合・活用によって,新たな価値を生み出すことのできる知識・創造力・行動力,こういったものを備えた人材というふうに定義づけております。
 また,意味合いにつきましては左下に書いてありますけれども,テクノロジーに関しては人工知能とかロボティクス等々,多数の分野。あるいはその下のビジネス関係につきましては,シェアリングエコノミーとかフィンテックを初めとする〇〇テックといわれるような,いろいろな個別産業のテクノロジー関係に関連するビジネスを,特に制約を設けずに考えております。
 次の2スライド目をごらんください。その目的を達するために,新経済連盟の中に産学連携人材育成ワーキンググループというものを設置しました。先ほど事務局のご説明にもありましたように,企業ニーズと研究者の需給ギャップがあるということですので,そういったことを埋めるということも含めまして,幾つかの活動をしようということで取り組んでおります。
 次のスライドをごらんください。もう少し具体的に書いたものでございまして,新経済連盟の中で賛同する会員企業,それから大学のニーズを戦略的・組織的にマッチングするということでございまして,講座の提供とか講師の派遣とか,そういったものを大学と会員企業の中でマッチングできるように取り組んでいくということがまず第1点と,さらにその下にありますように,その活動と大学協議体の活動も連携させる形で,産業界として一定の貢献をしていきたいということでございます。
 その際に,先日も10日ほど前に第1回のワーキングを開いたのですが,寄附講座等をやっている企業もあるのですけれども,大学の先生方との個人的なつき合いでやっているということで,そこからどう発展させるかということについては方策が特に思いつかなかったり,あるいはまだ寄附講座をやってない企業からも,やりたいのだけどどうしたらいいかわからないといった意見がありました。こういった意見を埋めていく,改善するということに今後も取り組んでいきたいというふうに考えております。
 4スライド目は具体的な事例でございます。会員企業であるトランスコスモス社が東京大学に寄附講座をやっている事例でございまして,Facebook広告の管理システムのデータ履歴を提供する形で連携をしているという事例でございます。
 また,次の5スライド目につきましては,これも会員企業でありますオプトホールディング社が,滋賀大学に同社の分析サービスとして,「DeeP Analytics」というサービスを提供する形で連携している事例でございます。
 最後のスライドでございます,6スライド目でございます。大学協議体がつくられるということですので,2つほど要望させていただければと思います。まず1点目は,大学協議体におきましては,産業界との意見交換内容を個別大学に展開するということで,大学と企業の橋渡し機能を期待しているというのがございます。
 2点目といたしましては,各教育機関においての話ですけれども,産業界に対してどのような教育・学習ニーズがあるかということを明らかにしていただきたいということと,産学連携で教育プログラムの構築に向けて動こうということをご検討いただければと思っております。
 説明は以上でございます。

 

【飯村大学連携推進室長】  ありがとうございました。
 こちらで,前半の産業界の委員の皆様からのご発表が終わりました。また,本日は御欠席の日本商工会議所及び東京商工会議所の取り組みにつきましては,配付資料2として御用意しております。各地の商工会議所でキャリア教育活動を実践されているということで,特に東京商工会議所における具体的な取り組み事例を紹介されたものでございます。また,日本商工会議所におきまして本年4月に公表されました「商工会議所キャリア教育活動白書Vol.3」を後半にお付けしたものとなっております。商工会議所の取り組みがまとめられておりますので,ぜひごらんいただければと存じます。
 ここで,一旦産業界の皆様の前半のご発表が終わりましたので,質疑応答とさせていただきたいと思います。大体時間は10分程度というふうに考えております。
 大西座長,どうぞ。

 

【大西共同座長】  ありがとうございました。野路さんと須藤さんにお尋ねしたいのですが,野路さんのほうでクロスアポイントメントを初めて阪大とやったということでしたけれども,クロスアポイントメントの中身。実質的には今までいろいろな形態で行っていたと思うので,クロスアポイントメントという制度に乗せるというのが初めてなのかもしれないのですけれども,試したり検討したりしてみて,その制度に必ずしも乗せなくても似たようなことはできるのではないかということもあって,制度を直接使わずに,実質的には行っていることが多いように思うのですけれども,その辺について何か試行を踏まえたコメントがあったらお聞きしたいということです。
 もう一つ,須藤さんのご発表の中で,大学との連携で,トップと話せばどこも産学連携に積極的だけど,個々の教員が必ずしもそうではないということで,学会でいわば教員ベース,研究者ベースでの交流というか連携を進めようとされているということだったのですが,大学で,学長はともかくとして,個々の研究者にアプローチするとどういう問題があってなかなか進みにくいと感じられたのか,少し補足していただけるとありがたいと思います。

 

【飯村大学連携推進室長】  では,まず野路委員からお願いいたします。

 

【野路委員】  おっしゃるとおり,制度そのものはどんな形でも私はいいのだろうと思います。兼業でもいいですし,クロスアポイントメントでもいいのですが,まずは大学の先生と企業側が同じテーブルについて,いろいろなディスカッションをできるような形にすることが一つ大事だと思います。
 2つ目は,こういうことをせっかくやるわけですから,教授の収入が増えるということが大事なポイントだと思います。収入が増えないのに何だかんだいっても,なかなか世の中は進まないのだろうと思うのです。ドイツなどに行くと兼業は当たり前で,名刺を2つもらいます。私は〇〇の会社の研究所長です,という名刺を堂々と渡すのです。皆がこのようにする必要はないですが,そのような大学教授もいる,ということが私は大事だろうと思います。
 大学の先生にとっても,企業とのディスカッションの中で,企業側の課題は何だとか,要求される学生の能力はどんなレベルだとか,企業の技術屋のレベルはどうだとか,そういういろいろなことがわかってくると思います。ですから冒頭にいいましたように,先生方にも企業の中に入ってきていただいて,少しずつでもいいですから,お互いに話しをすることが大切で,それによって理解が深まります。相手の立場でものごとを理解するためには,相手の現場に入り込むしかない,ということだと思います。
 以上です。

 

【須藤委員】  大学の先生と企業とのやり方で,今は組織対組織ということで進めていますけれども,産業界からすると,相当な数の先生方との共同研究というのは今まで実施してきていますので,必ずしも全員が組織対組織の中に入ってこられているかどうかというのは,いろいろとヒアリング等をしてみると疑問があるということで,個々としてやりたいという先生もいます。これは事実だと思います。そういう先生方にもうまく産業界のほうに向いてもらうということが必要ではないかなというのが1つです。
 もう一点,大事なところなのですけれども,組織対組織でやるとどうしても一企業,一組織,一大学というのになりそうなので,大学の先生方の連携というのを我々としても期待しています。それには,やはり学会というある中立の場を使って,同じ分野のいろいろな大学の先生が連携する。企業の側も産産連携するという仕組みがこれでできるのではないかなということで,その点も重要視して学会を使ってみようということで進めております。

 

【飯村大学連携推進室長】  大西先生,よろしいでしょうか。

 

【大西共同座長】  結構です。

 

【谷口委員】  今のご質問とよく似ているのですけれども,まず1つは,いろいろな企業と連携して取り組みをやられたときに,それを結果的に教育のプログラムとかカリキュラムに落とし込めたような例はあるのかどうか。もしあれば,企業の意見を入れてカリキュラムを作成したなど――企業の人が大学に来て非常勤で講義されるというのはよくあるのだけれども,カリキュラム全体の中でうまく落とし込めたような例があれば,教えていただきたいと思います。
 それから,学会を使っていろいろな方が集まる多数の大学の人たちが集まって産業界の方と連携するというのは,かなりできると思います。今,私は日本化学会の副会長をやっていますけど,そういうことをやろうというのを今進めております。高専のほうも日本全国に51ありますので,先生1人ではできないけれども,束になってかかったらできるというようなこともあるだろうということで,今考えておりますので,今後うまく進んでいくのではないかなと思っています。カリキュラムについて,もし何かこういう例があってうまくいきましたよというのがあったら,教えていただければありがたいです。

 

【飯村大学連携推進室長】  須藤委員,どうぞ。

 

【須藤委員】  まだそこまで,うまくいったというところまで進んでいないのですけど,今,土木学会といろいろと情報交換していまして,資料にも書いたのですけど,「土木情報学ハンドブック」というのを今土木学会のほうでまとめてもらっていますので,そこに我々の意見を入れて,うまくカリキュラムに反映できないかなというふうに考えています。まさに今進行しているところです。

 

【谷口委員】  わかりました。ありがとうございました。

 

【野路委員】  私どもは協働研究所で活動しているので,カリキュラムには入っていませんが,副次的な効果はでています。先生方との意見交換会でお聞きしたのですが,ご自身の新しい研究テーマが幾つか生まれているそうです。世の中こうなっているのだから,こういうテーマをドクターや学生に研究させるべきだ,というテーマが生まれているとのことです。
 教育カリキュラムについてはまた別な話なので,これはそういう形ではやっていません。

 

【谷口委員】  大学院のレベルとかだと,かなり高い,いわゆる研究のレベルではいろいろな形のものがかなり進めやすいかなと思うのですけど,その中のある種のエッセンスのようなものをもっと学部のレベルに落としてうまくできると,人材がだんだん育っていきますから,そこがうまくできるといいかなと思ったものですから。ありがとうございました。

 

【飯村大学連携推進室長】  ありがとうございます。
 1点補足させていただきますと,先ほどの事務局の資料1の23ページ目というところに,これはBPなのですけれども,平成27年度のBP認定で「社会基盤メンテナンスエキスパート養成プログラム」,岐阜大学で行ったものについては,これは地元の企業さんも含めてカリキュラムを一緒につくっていったと,大変好評だったというふうにお聞きしております。
 ここで,また教育機関側の委員の皆様にご発表いただきまして,最後に30分ほど,再び質疑応答の時間をとらせていただきたいと存じます。
 それでは,大西座長お願いいたします。

 

【大西共同座長】  資料7というのをごらんください。
 1ページ繰っていただきまして,この行動計画の柱,1から3に沿ってご説明,紹介をさせていただきます。特に私が学長を務めております豊橋技術科学大学の事例を中心に,他の国立大学の事例についても,国大協を通じて集めていただきましたので,併せてご紹介します。他大学の事例と本学のページが別になっていますので,ページが飛んだりしますが,恐縮ですがお付き合いください。
 まず,「産業界のニーズと高等教育のマッチング方策,専門教育の充実」についてです。私どもの大学は,高専からの学生が多い。高専というのは,高校生18歳人口の中で1%弱,毎年1万人の卒業生ということなのですけれども,大学の工学系の進学者という観点でみると,高専卒の方のうち4,000人が大卒の資格を取っていますので,国立大学の工学系約3万人の1割を超える勢力だということで,高専卒の学生というのは,工学系においては無視できない非常に大きな人材のグループだと思っています。
 高専の卒業生は中学を出たときから専門教育を受けているということで,次の4ページをごらんいただきますと,我々は「らせん型教育」と呼んでいますけれども,基礎と専門,さらに座学,実務訓練,あるいは卒論というのを繰り返して,真に科学を理解し,新しい技術を創り出す学生を教育するというスタイルをとっています。
 その中で特に,私どもは伝統的に実務訓練と呼んでいますが,いわゆるインターンシップについて説明します。5ページをごらんいただきますと,これを開学以来40年間必修にしていまして,卒論が終わった後,1月から3月初めにかけて2カ月,実務訓練を行っています。
 6ページをご覧いただきますと,最近では,海外で実務訓練を行うというケースも増えております。これは海外についての棒グラフで,その次の7ページにマレーシア・ペナン州の海外拠点とありますが,私どもの教育拠点をペナンに設け,これを拠点にマレーシアの企業に実務訓練に行くということも集中的に行ってきています。この教育拠点はサマースクール等にも使うということであります。
 次の8ページのところに,他大学の事例ということで,茨城大学,埼玉大学でのインターンシップの事例を紹介しています。課題解決型実務訓練。
 9ページは,北大,名古屋大学,阪大,九大等の数理・情報技術分野の人材育成における取組事例であります。
 さらに,MOOC等のICT活用教育における実効性の高い教育プログラムということで,電通大の事例が紹介されています。
 次が産業界における博士人材の活用の促進方策ということで,11ページをごらんいただきます。ここでは特に,私どもで去年から,企業等とのマッチングファンドによる共同研究を強化しようとしてきました。
 もう一つが,特に博士課程の教育でリーディングプログラムという文部科学省のプログラムがありますが,私どもでは「ブレイン情報アーキテクト」という,脳情報という分野においてこれを展開してきています。12ページがその様子でありますが,産学官の参画を得つつ,専門分野の枠を超えて,修士・博士一貫教育という仕組みの中でやっていこうということであります。
 13ページもその模様で,脳情報科学の具体的な内容を紹介しています。
 14ページでは,グローバルサマースクール等の活動もこの一環として行っているということで,これはマレーシアでのサマースクールの模様です。
 産学連携による博士人材育成のための教育の充実について,他大学でも阪大,東北大,金沢大学が15ページ,16ページに宮崎大学の事例があります。
 最後のページで「理工系人材の裾野拡大,初等中等教育の充実」ということでありますが,出前講座,「Jr.サイエンス講座」,こういうものをスーパーサイエンスハイスクール事業への協力等の格好で地元で行っているということであります。
 それから,特に女子中学生を対象とした「のらねこ&テクノガールズ」という理科教室なども活用して,裾野の拡大を図っているということでございます。
 今後,国立大学としては,重点に着手すべき取り組みについて積極的に対応していきたいと。さらに各大学の特筆すべき取り組みについて,横展開を図り,大学教育の向上につなげていきたいというふうに思っています。
 以上であります。

 

【飯村大学連携推進室長】  大西座長,どうもありがとうございました。
 引き続きまして,公立大学協会の糸山様から,資料8についてご説明をお願いいたします。

 

【公立大学協会・糸山様】  公立大学協会事務局の糸山と申します。資料8を用いまして,公立大学における「理工系人材育成に関する産学官行動計画」に関する取り組みとして作成した資料の説明をさせていただきます。
 まず初めに,各大学の取り組み事例を紹介する前に,簡単に公立大学協会における理工系学部の連携の状況についてお伝えしたいと思います。
 2ページ目をごらんください。公立大学協会では,平成28年度現在ですが,13の分野別に部会というものが設けられております。理学部会には,首都大学東京や大阪府立大学など理系,医学系の学部研究科を置く都市型の総合大学を中心に,6大学が参加しております。一方,工学部会には,同様に工学系の学部,研究科を置く都市型の総合大学のほか,前橋工科大学や富山県立大学など,地域の技術開発,産業振興の要請に応える特色ある工学系の単科大学など16大学が参加しております。これらの部会においては,各大学の当該分野の学部長や研究科長,事務局担当者らが一堂に会しまして,分野に共通する課題に関する協議などを行っております。
 3枚目をごらんください。理工系人材育成の観点でいいますと,例えば昨年度の理学部会においては,大学院生やポスドクのキャリア,就職支援ということについての協議がなされまして,各大学の取り組みについて報告がなされました。
 4枚目をごらんください。また,昨年度の工学部会においては,「地域企業との共同研究の促進について」というテーマで協議が行われ,企業と大学とのギャップやマッチングに課題があることが指摘され,その解決に向けての報告,議論等がなされました。公立大学では,このような会議を部会ごとに1年に1度行っておりまして,各分野の振興に向けて研鑽を重ねているという状況がございます。
 5枚目をごらんください。次に,各大学による取り組みの事例について説明いたします。これらは,さきの工学部会に所属する大学に対して行った,今回の「理工系人材に関する産学官行動計画」のフォローアップ進捗状況の照会に回答のあった大学の取り組みから,3つのテーマごとに1つの事例をピックアップして記載させていただきました。1つ目の北九州市立大学と九州歯科大学の取り組みですが,これは,ほかに国立の九州工業大学と私立の産業医科大学という,北九州市に置かれている4つの大学による分野融合型・産学協働による人材育成プログラムです。
 「ものづくりのまち」である北九州市において,地域の就業高齢者の健康増進によるものづくり技術の継承と学際的職業人の育成が目指されております。地域振興,また地域ニーズに応えるために,国公私の設置形態と医療・福祉・工学という分野の枠を超えた連携体制の構築が図られています。これは文部科学省による平成24年度の「大学間連携共同教育推進事業」に選定されておりまして,本年度において事後評価がなされる予定となっております。
 6枚目をごらんください。2つ目として,大阪府立大学,大阪市立大学,兵庫県立大学という,ほぼ同規模でありながらそれぞれに特色を有する3つの公立大学による,産業界での博士人材の活躍促進のためのプログラムについて紹介させていただきます。公立大学ならではの機動性,波及性及び3大学合同によることによる規模,多様性のメリットを生かして,キャリアパス開発事業における新しい公立大学モデルの構築が目指されております。
 7枚目をごらんください。産学連携の実践的な講義や連携企業との交流,長期インターンシップにより企業や若手研究者の意識変化を促し,産業を牽引する意欲・能力をもった人材が輩出され,また活躍の場も新たに生まれていくという好循環を生み出すことが目指されております。この事業は,平成24年度の文部科学省「ポストドクター・キャリア開発事業」に選定されておりまして,こちらも本年度において報告がなされる予定となっております。
 最後,8枚目ごらんください。3つ目として,富山県立大学における理工系人材のすそ野の拡大の取り組みについて紹介させていただきます。これは高等学校の理工系科目担当教員に向けた実験教室を開催し,高校教員に科学技術のおもしろさを知ってもらい,日々の授業に還元してもらうことで,ひいては高校生の科学技術に対する関心の掘り起こしが目指されておる事業でございます。平成25年度から実施されておりまして,これまでに延べ64名の高校教員の参加を得ております。
 公立大学協会からの説明は以上です。

 

【飯村大学連携推進室長】  どうもありがとうございました。
 続きまして,鷹野副学長にご発表をお願いいたします。

 

【佐藤委員(鷹野代理)】  資料の9番目になります。私から,工学院大学の事例とその他の私立大学における取り組みについてご説明させていただきます。
 まず,2ページ目になります。ここでは全体像ですが,1番目が「産業界の将来的な人材ニーズを踏まえた大学等における教育の充実方策」として,7件を例として挙げております。
 それから,3番目に,「初等中等教育における産業を体感する取組の充実方策」として2件挙げております。それぞれについてご説明をさせていただきます。
 3ページにまいります。まず,本学の事例ですが,「情報セキュリティ寄附講義」というものが行われております。これはNPO法人日本セキュリティ監査協会から寄附を受けまして,講義を実施するというものです。当然のことながら,第一線のセキュリティ監査技術者から最先端の情報セキュリティを学ぶことができる講義で,学生にとっては非常にアクティブな講義を受けられます。その受講で,資格等も申請できるという状況になっております。
 次が4ページ目になります。「数理・情報教育PBL」ということで,ビッグデータの解析共同研究ということです。こちらは,西東京バスと工学院大学の情報系の研究室と共同で行っている研究になります。西東京バスの乗車データを解析しまして,それぞれの路線で,人数がどれぐらいかとか,この路線が混んでいるかとか,そういったところを処理する研究を進めております。事業的効果,研究的効果,教育的な効果,それぞれに波及しているという事例になっております。
 次が「ロボティクス・IoT・AI分野の大学院・学部設置」ということで,これは大阪工業大学さんの事例ですが,2017年の4月からロボティクスとデザイン工学部を融合した形で,IoT,AI分野の研究を含めた学部を創設したという事例になります。
 もう一つ,こちらのほうは本学のもので,「ISDCプログラム」というものです。いわゆるインダストリーとスチューデントをダイレクトに結ぶコラボレーションプログラムということです。企業から資金提供を受けまして,学生が独自に研究を発展させるということになっております。こちらのほうは,大学院も含めそれぞれの学生が興味を持ち,企業にとっても解決が重要なテーマを研究するものです。
 7ページ目をご覧いただきますと,具体的な事例が出ております。実質的にはモール・エスシー開発さんとフジタさんから協力を受けまして,大型商業施設における高齢者のウォーカビリティーの向上とか,タイルつきコンクリート外壁の環境負荷低減解体方法の研究とか,いくつかのテーマについて研究を進めているという事例でございます。
 それから,大きなものとして私どもの「ソーラーカープロジェクト」というものがございます。こちらのほうは世界大会に向けて学生プロジェクトとして進出しているものですが,実際にはこの学生プロジェクトだけではなくて,地域の産業,企業様との連携も結んでいるということで,9ページ目をごらんください。
 9ページ目にございますように,このように多くの企業様と協働しており,300名近い学生が参加しているということも特長でございます。
 それから,東京電機大学さんの事例で,「国際化サイバーセキュリティ学特別コース設立プログラム」というものも動いております。これは夜間に開講し社会人の学生が多いということですが,実際に効果を上げているということでございます。
 その他ではIFAEE,またPBLとして,特許取得なども含めて実際に科目として実施されたものがございます。
 次に,最後の3-1になりますが,「科学教室(産官学コラボレーション)」ということで,これは初等中等教育の方々に対する施策になります。本学では24回目になりますが,東京だけでなく多くの地域にも進出している事例があります。
 それと,最後になりますが,同じような事例で,東北学院大学さんが多賀城市との連携を結んでいるなかで,小中学校教員に対して科学技術分野を講義しており,小中学生に対する理科教育向上の一つの方策となっております。
 以上になります。

 

【飯村大学連携推進室長】  鷹野副学長,ありがとうございました。私立大学における取り組みをご紹介いただきました。
 続きまして,谷口委員に次のご発表をお願いいたします。

 

【谷口委員】  それでは,資料10でご説明をさせていただきます。国立高専がメーンになりますけど,公立も基本的には同じで,国立と私立あるいは公立の高専とも連携をさせていただきながらやらせていただているということでございます。
 国立高専も,できまして55年たちます。昔の学生さんと今の学生さんで少し違っている,あるいは社会が求める人材も変わってきています。これを踏まえまして,日本は国立51の高専が,北海道から沖縄までの広い地域にございますけど,どこで学んでも,学力レベルは,あるところまではちゃんとクリアできている,という基本的な教育の質保証をしたいので,3分の2のカリキュラムについてはモデル的なコアだということで,どこの高専を出ても同じ教育の質,同じレベルだということがいえるよう,モデルコアカリキュラムというのを,5年をかけてつくってきました。半分ぐらいのところはもう既に実施していますが,来年度から,完璧に51の高専で全てやらせていただきます。もちろん高専の教育は,座学だけではなくて実験・実習,あるいはコンテストというものを上手に使いながら,実際の実務レベルができるように,実践的かつクリエイティブ・創造的な人材をつくるということを掲げて,今までやらせてきていただいているところでございます。
 1つの特徴は,高専の場合には15歳からの中学校を卒業した若い学生さんがいるということで,早期に専門的な教育を始めると有効であるといわれているような情報セキュリティの問題,そういうものについても取り組ませていただいていますし,一方では,社会実装といいますか,実践的で社会とつながっているというところで社会実装教育を重視しています。大きくいいますとその2つが特徴ということで,その2つについて少し説明をさせていただきます。
 まずは情報セキュリティ。次のページをみていただきますと,日本全国51のところの中で20ほどの学校を選びまして,高知高専を一番の中核にします。情報の関係だと,必ずしも都会にあるわけではなくて,地方にある,地域にある,そこでも十分できる,教育の中身,レベルが高ければ十分対応できるということで,日本全国幾つかのブロックに拠点校を置き,さらにその周辺に参加校を置いて,15歳からの学生さんを,情報セキュリティに関してかなり高いレベルのスキルをもてるような状況で育てる。もちろん全ての学科の学生さんを情報セキュリティの基礎教育を実践して育てているわけですが,最終的には,その中の1%を情報セキュリティに関する能力がとびっきりすぐれた学生さんに育てていく。高専だけでは,もちろんできることが限られているところもありますけれども,企業とつながる,場合によっては警察ともつながらせていただいていますし,もちろん大学等ともつながりながら,15歳からというところを特徴としてやらせていただいています。
 それから社会実装に関しては,ロボットは有名ですけれども,学生さんは,こういうロボットがあるといいねといったら,まず100円ショップに走って,数千円のお金で形をつくります。そこから改良していっていろいろなものをつくり上げていきます。それを社会実装して世の中に出すために,学校の中で階段を掃除するのに,こんなロボットがあったらいいねと,そこから始めて,いろいろな本当に使えるロボットを作っていく。今ご承知のように,福島高専では廃炉の処理をするロボット等もつくらせていただいていますけど,そういうものにかかわっているロボットの話はその一例です。
 それから,次のページに行っていただいて,沖縄高専あたりは――今,物流の中心は那覇にありますので,そこに航空機がいっぱいやってくる。一方では,沖縄というのは余り産業がない。そこで,修理等々含めて航空機の安全運航に関してかなりなことができないと困るというようなことがあって,沖縄高専が,その中心になって航空機技術者というものを育てるようなプログラムを進めています。もちろん地域貢献ということに関係あるわけですから,各地域においては,それぞれの地域がもっている特徴,その地域の活性化のためにということで,本格的に取り組ませていただいて,地域の拠点としてやらせていただいているという例が,幾つか後々書いてあります。
 おもしろいのは,例えば明石高専の取り組みなどは,学生さんを無作為に選んでチームをつくります。ある人は化学,ある人は機械,ある人は電機なのだけれども,そんなのは無視して,合わせて一つのチームとして学生さんを集める。一方,先生は何が専門の先生かをおいて,その先生も無作為に選んでチームをつくります。そうすると,先生も勉強しなきゃいけない,学生さんも勉強しなきゃいけないけれども,ある目的がありますので,いろいろな人が知恵を出して頑張れるということがあります。特に,若い学生さんは割とそういうことはやれるのですけど,先生の教育力のアップに非常に有効だと聞いています。僕は,先生をインターンシップに出さなきゃいけないといつも申し上げていますけど,これで先生方が教育力アップをある種できるということがある。そういう取り組みをやらせていただいているということだけ,ご紹介させていただきました。
 公立高専も都立高専の例を1つだけ出させていただきましたけれども,ここもサイバーセキュリティの話でありますとか,航空技術者というのも先ほど申しましたような形で,東京都立ですけどつくっておられるということでございまして,社会に,地に足つけたといいますか,社会実装ということを常に念頭に置いた教育,あるいは取り組みというのをやらせていただいていることだけ申し上げて,ご説明にかえさせていただきます。ありがとうございました。

 

【飯村大学連携推進室長】  谷口委員,ありがとうございました。
 では,教育機関側の委員の皆様からの最後で,神谷委員からご発表をお願いいたします。

 

【神谷委員】  では,資料11に基づいてお願いをいたします。
 今,文部科学省の研究指定としまして,SSH(スーパー・サイエンス・ハイスクール)と,もう一つの柱としてSPH(スーパー・プロフェショナル・ハイスクール)という指定がございます。これは人材育成をする際に,社会の変化や産業の動向に対応した高度な知識や技術を身につけて,社会の第一線で活躍できる専門的な職業人を育成する,そういった取り組みを行う高校を指定して研究指定をしているという制度であります。
 平成26年度から始まりまして,毎年10校ずつ指定されてまいりました。本年平成29年も10校指定されまして,40校がこの指定に当たっております。中でも工業高校は大体毎年2校でありますので,今8校ということで,本校も平成26年度,最初の年に指定をされました。
 では,その工業高校,工学系ですが,どんな取り組みをしているのかということで,資料の1ページからお願いをいたします。26年度に指定されたのは石川県立工業高校と本校・豊田工業高校ですが,石川県立工業高校さんについては,専門高校の部分で高等教育機関と連携をして,先端的な科学技術ですとか知識,技術に触れる機会を設けると。そういった体験に基づいて,高度な知識,技能に対する情熱とモチベーションを高めて,将来の社会的な変化や産業の動向等に対応できるような技術開発に携わろうとする人材を育成していこうという形で研究が進められました。28年度をもちまして研究は終了しているということで,今その成果を各地区で伝達していくということになっております。
 次の2ページをごらんください。本校・豊田工業高校になりますが,愛知県というのは,ご存じのように工業出荷額が40兆円を超えておりまして,38年連続日本一と。2位の神奈川県に比べて倍以上の工業出荷額をもっております。そんな愛知県におきまして,将来の日本のものづくり産業の柱となるであろう航空宇宙産業あるいは自動車産業,そういったものを担っていく中核的な専門的な人材を育成するために,地域,企業,大学,そういったところと連携をして,活躍できる人材を育成していくという取り組みを行ってまいりました。本校も3年の指定が終わりましたので,29年度から,この成果をもとにまた新たなステージに入っていこうと思います。
 次,3ページは,平成27年度に指定されました宇都宮工業高校になります。宇都宮工業高校は,タイトルにありますように「技術立国日本を担うグローバルエンジニアの育成」ということで,生徒が主体的に能力を発揮して広い視野をもち,高いレベルの技術・技能を身につけることによって,日本のみならず国際的に活躍できる次世代を担うグローバルエンジニアを育成するという取り組みを行っておられます。今年が3年目ということで,成果の出てくる年であると思います。
 続きまして,千葉工業高校さんです。こちらも3年目になりますので,そこにありますように,社会や地域のニーズを踏まえて,産学官連携のもとに高度な科学技術に対応した,科学的思考力をもってものづくりを通して課題を解決できる,工学的なセンスを身につけたグローバルに活躍できる人材を育成するという形で取り組んでおられます。
 続きまして,28年度から指定されております岐阜工業高校になります。岐阜工業高校のテーマは「次世代テクノロジストの育成」ということで,成長産業あるいは新技術の開発に挑戦するものづくりスピリッツをもった若者の育成ということで取り組んでおられます。
 最後,6校目になりますが,今治工業高校になります。今治工業高校は,ご存じのように船を中心として,船づくりというのをモデルケースにして,地元地域と連携をとってスペシャリストの育成を図っていこうということで取り組んでおられます。
 ことし平成29年度も指定された学校がありますが,資料は特に用意してございません。
 最後のページ,細かい資料で申しわけありませんが,本校の豊田工業高校の取り組みということで紹介させていただきました。人材育成を担う高校というのは,短期間,3年間でそれがかなうことではありません。ですので,本校は「連携」という言葉をキーワードにいたしまして,幼稚園,小学校,中学校,他の高等学校,大学,企業さんと連携を図りまして,その一連の連携の中で,生徒の成長過程を踏まえて人材育成を考えていこうという取り組みをしております。特にキャリア教育ということを含めますと,高等学校という部分ではなくて,もっと幼いころからの連携が必要なのかなと考えております。
 以上です。

 

【飯村大学連携推進室長】  神谷委員,ありがとうございました。
 以上で委員の皆様からのご発表,全て終わりました。
 ここまでご説明いただいた内容について,前半の産業界の委員の皆様のものも含めまして,意見交換させていただければと存じます。いかがでしょうか。
 秋山委員,どうぞ。

 

【秋山委員】  秋山でございます。皆様のすばらしい発表内容,ありがとうございました。すばらしい取り組みが進んでいるなと思う一方で,全体を通じて,もう少し危機感を強くもたなければならないのではないかなというふうに感じましたので,この点についてお話をさせていただきたいと思います。
 今回,人材需給の問題について,特に数理・データサイエンティスト,技術者になるような人材にフォーカスしていくということなのですけれども,今の現状というのは,少なくとも産業界に身を置く最先端技術でビジネスをしている私の立場からすれば,非常にクリティカルな状況に陥っております。日本を代表するAIのベンチャー企業でも,日本中から優秀なデータサイエンティストをかき集めても,どんなに一生懸命集めても100人に満たないと。つまりクオリファイ,データサイエンティストとして実用に耐えられるレベルの人材というものの数が圧倒的に足りない。その人数だと,デンソーさんとファナックさんのプロジェクトを受けたら,それ以上の仕事ができないというのが今起きていることなのですね。
 一方で,例えばアメリカの西海岸でこういうデータの分析に非常に長けた人材の人たちは,シリコンバレーで起業するのではなくて,中国の深圳に行って起業する。なぜならば,そこはものづくりのメッカで,大変な量の膨大な製造データがあって,それを活用したデータ分析のサービスやソフトですとか,そういう新しいビジネスを立ち上げるベンチャー企業がどんどん今,そういう動きが非常に活発になっているということがあります。
 先週,経産省の産業構造審議会の総会のほうにも出させていただきましたけれども,経産省としても,日本の一つの強みは,ものづくりの現場のデータというものの蓄積が非常にたくさんあると。これを強みとして生かしていくのだという方向性を打ち出されていますけれども,この強みが短期間で強みでなくなるということをいかにして回避するかということが非常に重要でないかというふうに思っております。
 ですので,全般的にですけれども,今までの話の中でも幾つか,こんな制度をつくりました,でも,やはり使いにくいとか,こんな制度をつくったけれども実際の実例がないというようなお話が大変気になります。仕組みづくりに満足するのではなくて,成果にフォーカスするということが重要ですし,では,成果というのはどういうことかといえば,これから必要になる専門分野に先行した人材,特に最低でもマスター,できればドクターをもった専門人材をこれから何人輩出できるか,何年後にどれぐらい輩出できるかというようなことから逆算して物事を進めていくぐらいの取り組みが必要ではないかと思います。
 あと,もう一つは,先般,総務省から子供たちのITリテラシーの調査の結果が出て,小学校に入る以前の子供から,今日本ではタブレット端末ですとかそういうものに触れる子供たちが大変増えていて,次の世代で日本人のITリテラシーというのは劇的に変わると思うのですね。では,その受け皿,そうやってITリテラシーを高めた子供たちが,単にアプリケーションとして使うのではなくて,それをさらに専門的にきわめていくという教育の受け皿が必要だと思います。
 先ほど高専ですとか工業高校の取り組み,大変すばらしい取り組みを幾つか紹介いただきましたけれども,こういったところで学んだ子たちが,どうすれば専門分野でマスターやドクターを取れるような人材に育っていくのかとか,そういった教育の受け皿というのも一つの喫緊の課題ではないかなというふうに思いました。
 以上です。

 

【飯村大学連携推進室長】  ありがとうございます。
 ただいまの秋山委員のコメントも含めて,ご意見ありますでしょうか。
 谷口委員,どうぞ。

 

【谷口委員】  今おっしゃった通りです。例えば情報セキュリティ関連は,先ほども少し申しましたように早くやらないといけない。日本は必ずしも――外国へ行ったら,小学校,中学生の子でそういうのに積極的に取り組んでいるのがいます。日本は子どもの数が少ないということも少しあるのですけど,だけれども,せめて中学校を出たところでということで。高専では,この種の人材育成に取り組ませていただいています。
 そこで,高専の中でできること,工業高校もそうだと思いますが,あとは大学と,それぞれの教育機関であるレベルまでもちろん持ち上げます。高専の学生の1%は,そういう分野で非常に特殊な能力をもっている芸術家みたいな人がいますから,それは十分やれると思っています。1%といったって,5万人いたら500人しかいないという話になりますから,とてもとても足りないのですけど,そこだけはとびっきりすばらしい人に育て上げようと考えています。
 そこで今,技科大を初めとしたいろいろな大学とのおつき合いもありますし,企業さんとも一緒にやらせていただいていますし,特に今のところ,実践で一番有効なのは警察なのです。警察で何するのだと思われるかもしれないけど,そこでの実例というのが,一番本当に一番危機感をもって現実的な対応力を身につけるためのいろいろなことができる。
 さらにそこから上のレベルの人材は,国が恐らくある種の機関をつくらないと育てられない。結局アメリカのシリコンバレーとかいろいろなところへ行って,例えば,中国へ行って自分で会社をつくって,中国を変えた100人の1人とかという高専の卒業生がいますけれども,そうやって世界で一応活躍はしていますけど,本当に日本のために何かするには,どこかでもう一つレベルの高い何か機関をつくらないと,かなり効率的に育っていかないかなというのがありますので,ぜひそういうふうにやってほしい。
 それから,高専の本科を出た子は20歳です。情報の業界ではもうそうなっていると思いますけど,その子たちの初任給でいいですから,それをせめて大卒,4年生を出た21歳,22歳の子と同じにしてやってほしい。それから,専攻科を出た子は22歳ぐらいで,大学を出た者と同じ年ですけど,その子たちをマスター(修士課程)を出た者と同じ給与に,初任給でいい,後,伸びなかったら下げても結構ですから,そうやって勝負するようにすると,絶対優秀な子が頑張っていくのです。そういうような仕組みを合わせてつくっていかないと,頑張る人が集まってこないのではないかという危惧ももっています。少し長くなりましたが,そういう状況にあるということを申し上げておきます。

 

【飯村大学連携推進室長】  ありがとうございます。
 ほかにご意見,いかがでしょう。上野委員,どうぞ。

 

【上野委員】  意見というよりも感想3点,順不同で申し上げます。
 人材需給ワーキングのレポートがございまして,これから産業界と大学協議体の本格的な議論が始まるということをお伺いしました。私ども大学として大事なのは,大学協議体と産業界の議論が各大学にどれだけ具体的に伝わってくるかという仕組みがどうあるべきかというところが,一番これから大事だろうというふうに思っております。公立大学,実は88大学あるのですけれども,先ほどのレポートにもありましたように,例えば理学系をもっている大学は6,あるいは工学系をもっている大学は16というふうに,公立大学そのものが非常に複雑な仕組み,組織,構成になっていますので,どううまく大学協議体の議論が各大学に具体的に伝わるかということが,これからの非常に大事な課題になるかというふうに受けとめました。
 2点目ですが,この会議の一つの大きなポイントは,たしか博士人材の活躍の方策をどう構築していくかということだったと思います。先ほど野路委員から,博士人材にリーダーシップ資質が足りない面もあるというふうなご指摘があって,確かにそうかもしれません。私ども大学としては,例えば分野横断プログラム,研究室だけに閉じこもるような教育ではなくて,もう少し幅広な視野をもつ博士人材の育成とか,あるいはアントレプレナー教育,リーダーシップ教育をどう博士人材に提供していくかというのはこれから大きい課題だと思うのですが,これについてのグッドプラクティス,ベストプラクティスをできるだけ多く発信していただくことと,1つの大学でこういう教育プログラムを抱え込むのは割と困難なので,ある意味有力大学とコンソーシアムを組んで,そういうプログラムを開発していくという努力をこれからすることが大事かというふうに思っております。
 最後は極めてささいな3点目ですけれども,理工人材育成で議論するときに気をつけたほうがいいなと思うのは,私どもの大学の工学系・理科系は大体7割から8割が修士課程に進むのですけれども,その議論,今これから行おうとしている議論が学部レベルでの教育プログラムへの提案なのか,大学院修士課程レベルでの提案なのかというところを常に鮮明にしながらこれから議論していくことが必要かというふうに感じました。
 少し長くなりました。以上,感想です。

 

【飯村大学連携推進室長】  どうもありがとうございます。
 文科省さん,大学協議体について何かありますか。

 

【辻補佐】  ありがとうございます。文部科学省の専門教育課でございます。大学協議体につきましては,文部科学省としましては大学関係団体等の協力によって設立されるものと考えておりますけれども,現在,早期に設立されるよう国公私立大学の大学関係団体と調整を進めているところでございますので,いただいたご意見を踏まえまして,引き続き詳細について検討してまいりたいというふうに思っております。
 以上でございます。

 

【飯村大学連携推進室長】  今のご意見の3点目の,学部なのか修士なのか,どのレベルの人材なのかということに関して,資料1の21ページに若干整理しておりまして,まさにリテラシーみたいなものと専門分野の知識を前提に,掛けるITみたいな話と,高度な研究能力,実践的な能力,それぞれ違うのではないかと。行動計画自体はいろいろなことが書いてありますので,改めてこういうふうに整理しますとそれぞれターゲットが違うので,それぞれに応じた良い例を出していく必要があるというふうに考えております。
 特に高度な専門人材,研究人材というのは,ここでパターン①と書いてありますような,教育というよりも共同研究を通じて企業と育てていく。産学連携を通じて育てていくべきような人材であり,手法ではないかというふうに考えております。
 それから,秋山委員のご指摘に関係するのですけれども,ピラミッド的なというか高度人材,それから人数の多い真ん中あたりの人材,こういう形をしていると思うのですけれども,同じ資料1の例えば30ページをみていただきますと,IT人材に関してもやはりハイレベルの人材,ミドルレベルの人材,そしてエントリーレベルの人材があろうということで,これは政府の人材育成会議のほうで議論されているものでございます。
 実際の不足数というのが,2ページ戻って28ページにありまして,既に現在,IT系人材で17.1万人足りないと。それが2020年には36.9万人に拡大するということでございます。
 これに対して32ページ,これも一つの試算です。大学において,年間でこの数理・データサイエンス系の学科を卒業する人材の数,少しみにくいのですけれども,左下の表で修士と博士,みていただくと,これは人ですが3桁であると。本当の専門的な人材は3桁であると。まさに秋山委員がおっしゃっていたような,日本中かき集めても100人ぐらいしかいませんよという規模感であるということがごらんいただけると思います。
 どうぞ。

 

【野路委員】  2点ございます。1つ目は修士の件です。私たちの時代は学士で就職するのが普通でしたが,現在はうちの会社に入社する人も,ほとんどが修士です。大手企業はみな同様で,90%以上が修士だと思います。ですから,学生にもっと自分で選択をさせたほうがいいと思うのです。修士で就職する学生は,自分がどの企業に行きたいのか,学部卒業時点でだいたい決まっているはずです。それならば,その企業ではどんな専門知識が必要なのかというのは自分で考えないと。アメリカの学生は,何が必要か自分で考えて,どこへでも勉強に行くわけです。こういうことは,例えばどこかの大学の工学部の,ある一人の教授のところに行って,そこでだけ教育を受けるという方法ではなかなか難しいと思います。もっと柔軟に,日本の大学のどこの専門教育を受けても卒業できるというような形にしてあげて,自分で選択をさせるようにする。要するに,学生が自分で考えて自分で選択するということを大学の中でやっていただくと,もっともっと自主的に教育を受けるようになると思うので,是非お願いします。
 2つ目ですが,秋山委員のお話はそのとおりだと思います。では,どうしたらいいのか。私の個人的な意見ですが,経済産業省をはじめとして後追い的な政策が多過ぎるのでは,と思っています。AI,IoTといった技術については,既にアメリカとかほかの国でどんどん進んでいて,専門家は大勢いるわけです。日本の何百倍といるわけです。ですから,そういう今の技術ではなくて,もっと5年後あるいは10年後を見据えた,将来の技術とは何なのだというのを見つけさせるための政策が必要だと思います。それが大学発ベンチャーへとつながり,新しい産業の創出へつながっていく。このようにして日本発の新産業が生まれない限り,日本が世界をリードすることはできないと思うのです。
 私どもの会社は,全世界から技術を集めてプラットフォームを作るなどの形で開発を進めています。ですから,別に日本にいなくても,早く技術を導入すればビジネスができるわけです。しかし悲しいかな,我々がビジネスを考えても,日本には技術屋がいないので欧米に頼らざるを得ない,というのが現実です。それはなぜかというと,いち早く新産業を起こしていないからです。私のところでは,十数年前に無人ダンプ運行システムを開発し,今,全世界で100台ほど無人で稼働しています。プラットフォームは,あるアメリカのベンチャー企業を買収して作りました。だから,うまくいっているのです。GPSを使って位置を決めるソフトウエア産業というのは,欧米が15年ほど前に既に席巻していましたから,その時点で始めても勝ち目はなかったのです。今の我々のプラットフォームの件は,海外企業と手を組まざるを得なかったという実例なわけです。
 ですから後追いではなく,5年後10年後に世の中はこうなるから,という視点での政策が必要だと思います。将来を目指したテーマでプロジェクトを立ち上げ,大学には1,000億円規模の資金を投入して研究開発を進めてもらい,その成果を新産業に繋げるベンチャー企業が起きる施策も用意しよう,という考え方が必要です。若い人が技術を生み,若い人が新産業を起こすのですから,教育の話と新しい産業を生むという話とは,2つの柱として進める必要があるのではないかと思います。
 以上です。

 

【飯村大学連携推進室長】  ありがとうございます。
 内山田座長,お願いします。

 

【内山田共同座長】  本日,行動計画のフォローアップということで,産業界,アカデミア両方から,比較的うまくいっているのではないかという事例を持ち寄ってみると,皆さんのお話を伺っていて,1つの大きな共通点は産学連携だと思うのですね。産学連携をやることによって,最終的には理工系人材の育成にも資するというようなお話が,今日,すごくあったと思うのです。
 資料1の4ページで飯村さんが説明された,アカデミアと産業界の需要と現実のギャップを示している,すごくみんながなれ親しんでいるグラフがあるわけですけど,確かにギャップがこういうふうにあるのですけど,これはある意味仕方のないことで,学生の数というのは先生の数で,先生が多いところに学生は物理的に集まるわけですが,先生が一家を構えるには20年ぐらいかかっているわけです。20年前の先生がこれをやろうと思ったものが成果物としてこういう分布になっていて,産業界は目の前のものに合わせてもっと早く変わっていきますから,いつまでたってもこのギャップというのは存在します。我々がやらなくちゃいけないのは,このギャップをいかに早く縮めるかということです。
 リードタイムを少なくして,今,野路さんもおっしゃったように,時間が我々からみると間に合わない,間に合わないということになってしまうわけですから,これを縮める一つの手が産学連携だと思うのです。産学連携をやることによって,アカデミアの方は当然,今何を研究しなくちゃいけないかということがリアルにわかりますし,また,この産学連携の場にポスドクの人とか,あるいは学生が参加することによって,そういう方向に早く切りかわっていくということがあると思います。
 そのときに,産業界も従前の産学連携ではなくて,本当に今我々が国際競争で打ち勝っていくための武器として,産学連携を使うということがもっともっと必要で,多分さっきの事例などがうまくいっているのは,そういうことをやっているものではないかなという気が改めてしましたので,各省庁がいろいろな施策をやるときも,その施策の中に産学連携の推進強化という軸をもっともっと,今でも大分入れてもらっているのですが,入れていただくことによってそういうことが進むと思います。産業界側は,オープンイノベーションで競争力を上げるために産学連携の仕組みをもっと使うということが,実務面ではかなり手っ取り早いのではないかなと思います。

 

【飯村大学連携推進室長】  ありがとうございます。
 もうお一方ぐらいいかがでしょうか。大西先生。

 

【大西共同座長】  お話を伺って,大学側あるいは教育機関側もそれなりにいろいろなプログラムを入れているというところはあると思うのですが,一方で大学なり教育機関のカリキュラムというのは,小回りがややききにくいところもあるわけですね。体系を立てて,一定のこれまでの蓄積を教えるというところがベースにあるということで。しかし,世の中の動きはもう少し早くて,新しい必要な分野というのが次々とあらわれるし,人材が必要になる。そういうものにもう少し臨機応変に対応するような仕組みというのを大学等の教育機関でもつ必要があるのではないかという感じがしました。
 研究面では,個々の研究室でそれぞれ世界の動きに対応して新しい研究を始めているというところはあると思うのですけど,ただ教員によっては,それはリスキーなので,なかなかそこでドクターの学生まで育てにくいと。もし失敗したら,そいつはドクターを取れなくて何年間か棒に振ってしまうことになるので,やはりドクターの学生を出そうとすると,それなりにドクター論文が書けるという見通しを教員がもたないとやれないというわけですね。ややリスキーなというか,どこにころぶかわからないテーマというのは,自分がやって,ある程度それを見きわめてから学生と一緒にやるとかいう工夫をしているという先生もいるのですね。
 だから,そういう新しい分野について大学としてどう取り組んでいくかとかいうことで,それは,1つの大学では少人数なので,横に連携をするというようなことも要ると思うのですが,それを見える化することで,何人かがリスキーな分野でも一緒にやっていれば,そのリスクを埋めるようなこともできると思うので,ある程度学生を育てるというところまで割と早くもっていけるのかなと思うのですね。その工夫をしないと,今出たような問題になかなか応えにくいという気も率直にいってします。

 

【飯村大学連携推進室長】  ありがとうございました。
 内山田座長がおっしゃっていたような,ギャップをいかに早く縮めるかという意味では,まさに大西座長がおっしゃっていたような,教育機関としては少し時間がかかると。いいプログラムをそろえてカリキュラムも整備してということですので,私どもも,例えばMOOCというのはもっと使えないだろうかということも着目して,データも紹介させていただいたところでございます。
 本日,11時45分までのこの会議となっております。間もなく時間となりますので,本日はここまでとさせていただきたいと存じます。
 今回は,行動計画を昨年8月に策定しまして初めてのフォローアップということで,委員及び団体の皆様におかれましては,ご対応いただきましてまことにありがとうございました。PDCAのPが決まり,DCAが動き始めたところでございます。他方で,行動計画を策定しました後に,政府全体で第四次産業革命の人材育成推進会議など人材育成に係るさまざまな会議体が立ち上がっております。今後,行動計画のフォローアップの進め方,あるいは円卓会議の進め方につきましては,皆様の本日のご意見も踏まえまして,ほかの会議体の動きも注視しながら事務局にて検討してまいりたいと存じます。
 最後に,大西座長,内山田座長,それから私どもの末松局長から一言ずつお言葉をいただければと存じます。
 大西座長,お願いします。

 

【大西共同座長】  もう時間もないのですが,こういう機会をつくっていただいて,議論はできるところまで来ていますが,産業界とまだ溝が埋まったとは思えないので,さらに実践を通じていろいろな協働の試みの新しい展開というのも報告されていますので,そういうものが積み重なっていくと,新しい成果が出てくるようになるのではないか。ぜひそこまでは早くしていかないといけないというのを強く感じました。

 

【飯村大学連携推進室長】  ありがとうございます。
 内山田座長,お願いします。

 

【内山田共同座長】  今ちょうど画面に出ているあのギャップを埋める手段として,先ほど産学連携の推進という話をしましたが,もう一つは社会人の再教育。これは一度話題になりましたけど,先ほど説明があったAIとかITとか,不足している人材を短期にやろうとしますと,技術者全体のそちらへのシフトというための社会人再教育というのもありますし,先の話になりますが,女性の理工系人材の量を増やすということが,母集団を増やすということではかなり意味があるかなと思います。
 それともう一つ,政府のいろいろな委員会に参画していますと,どこでもそのテーマのもとに人材育成の話は必ず出てくるものですから,これも説明ありましたように,あっちこっちで人材育成の議論はされていると思います。一度それを網羅的に,どこでどういう人材育成の問題意識と方向,こういうことをやるべきだということをいっているかということを,理工系にフォーカスしてでも構いませんけれども,まとめるというのもかなり意味があるのではないかなと思いました。

 

【飯村大学連携推進室長】  ありがとうございます。

 

【末松産業技術環境局長】  ありがとうございました。まず1点,私もいろいろな会議に出ていて思うのですが,人材の話というのはいろいろな場で議論されているので,今,内山田さんがおっしゃられたことは,もう一度整理したいというふうに思います。
 それから,2点ほど申し上げたいと思います。どのように人材をマッチングするかという話は,秋山さんがおっしゃったような危機感からこういう検討が始まっているというふうに私は思っているのですが,一歩先の人材がこれだということを行政が決めて育成するというのは実は難しいと思います。やはり産業界の方とか大学の中でこういうことをすべきだという話を受けてやるということが役人の限界であるような気がします。
 そういう意味では,一歩先ではなくて,まさに今起ころうとしていることについては,今日色々話し合ったことをできるだけ感度よく政策にもっていくというのが大切ではないかというふうに思っています。
 また,AI人材のことについては,色々なところで研究をしたり,高度人材を研究の場にとにかく投入すべきだという話を聞いて,AI戦略のときも議論したのですが,優秀な方を3,000万でも5,000万でも1億でも連れてこいという話がよくあるのですけど,なかなかそれは難しくて,やはり20代,30代の人を磨くのがいいということだと思います。そういう意味では,先ほど秋山さんも話されたし,皆さん話されたような,その育成の仕組みをきちんとするということは大切だというふうに思います。
 今日お話を聞きながら私は,いい事例がいっぱいあって,すごくすばらしいなというふうに単純に思ったのですけど,事例があるのと量が確保されているのは別だなというのを途中で感じました。せっかくいい事例があるのを,こういう機会があって関係者の方が共通認識を持つということができたので,それを広げていくということ,それから,我々がどういうふうに支援をするべきかということを考えていきたいというふうに思います。
 今日話を聞きながら,我が省でできることもいっぱいあるというふうに思っておりました。こういう協働の試みを積み重ねていくということを引き続きしたいと思いますし,協議体の実行をするためにも,引き続きぜひご協力をいただきたいというふうに思います。今日はありがとうございました。

 

【飯村大学連携推進室長】  ありがとうございました。
 本日の議事は全て終了いたしました。長時間にわたるご議論,大変ありがとうございました。

                                 ――了――  
 

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