理工系人材育成に関する産学官円卓会議人材需給ワーキンググループ(第2回) 議事録

1.日時

平成29年2月10日(金曜日) 15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省東館15階 15F特別会議室

3.議題

  1. 理工系人材育成に係る調査結果・取組事例紹介について
  2. 理工系人材育成に関する産学官行動計画のフォローアップ及び今後の方向性について

4.出席者

委員

江村委員、岸本委員、剣持委員、関委員、辻委員、永里委員、萩谷委員、山本委員

文部科学省

浅野専門教育課長、福島専門教育課企画官、辻専門教育課長補佐、牧野専門教育課長補佐、飯村大学連携推進室長(経済産業省)、渡邉大学連携推進室長(経済産業省)、小林大学連携推進室長(経済産業省)

5.議事録

【福島企画官】  失礼いたします。そうしましたら,定刻になりましたので,ただいまから,第2回人材需給ワーキンググループを開催いたします。
 委員の皆様におかれましては,ご多忙にもかかわりませず御出席いただき,まことにありがとうございます。
 専門教育課の福島でございます。よろしくお願いいたします。
 そうしましたら,本日の議事進行は岸本座長の方にお願いいたします。よろしくお願いいたします。


【岸本共同座長】  それでは,皆さん,こんにちは。
 それでは,まず最初ですけれども,事務局の方から,資料について確認をお願いしたいと思いますので,よろしくお願いします。


【福島企画官】  配付資料でございますけれども,議事次第を御覧いただければと思いますが,資料1から資料7までそれぞれお配りしておりますのと,それから,参考資料ということで,辻委員から提出資料を頂いております。それから,萩谷委員の方も,後で配付資料等ございますので,資料としては全部で9種類ということでございます。不足等ございましたら,事務局にお申し付けいただければと思います。よろしくお願いいたします。


【岸本共同座長】  よろしいでしょうか。
 報道陣の方はいらっしゃらないですね。よろしいでしょうかね。冒頭のカメラ撮影は,これで終わりにしたいと思います。
 それでは,江村委員が間もなくお着きになられる予定ですので,来られたときに,今回初めてでいらっしゃいますので御挨拶いただくといたしまして,議事の方に入ってまいりたいと思います。
 まず,資料1の産業界のニーズの実態に係る調査結果について,これにつきましては経済産業省事務局から,資料2,工学分野における理工系人材育成の在り方に関する調査研究につきましては,関委員より,それぞれ10分程度で説明をお願いしたいと思います。
 ちょうど江村委員が御到着になりましたので,到着早々恐縮でございますけれども,この委員会初めての御出席ですので,簡単に御挨拶を賜ればと思います。よろしくお願いします。


【江村委員】  すみません,遅れまして。NECの江村でございます。
 人材需給ということで,人材そのものが非常に重要なことと認識しているんですけれども,人材って一日にしてできないので,そのギャップがあったときに,それを時間軸を含めてどうやって埋めていくか,あるいは,これから先に必要になる人材がどういうものかということをやはり意識した議論を是非させていただければいいかなと思っていますので,よろしくお願いいたします。


【岸本共同座長】  どうもありがとうございます。
 それでは,資料の方の説明をお願いしたいと思いますけれども,まず最初の資料1につきまして,経産省の方からお願いしたいと思います。よろしくお願いします。


【飯村室長】  経済産業省の大学連携推進室長の飯村でございます。よろしくお願いいたします。
 それでは,まず資料1,産業界のニーズの実態に係る調査結果ということで,10分ほどお時間頂戴しまして御説明したいと思います。
 産業界のニーズの実態に係る調査は,もともとの円卓会議の行動計画においても,毎年実施しまして,定点観測するということになっているものでございます。1ページ目を御覧いただきますと,円卓会議の方で御紹介しました社会人アンケート,これをアップデートしたのが1つ目でして,更に加えて,今回は就職アンケートという,回答者のうち,入社1年目から3年目の社会人の方を対象に追加しまして行ったアンケート,この二本立てで御紹介させていただきます。
 1つ目は,社会人アンケート結果でございます。3ページ目は,このアンケートの概要でございます。これはWeb調査でアンケートにお答えいただいたのは,20歳~45歳未満の技術系約1万人,非技術系約2万人の方を対象にお答えいただいております。
 早速ですが,4ページ目を御覧いただきまして,これが,これまでの円卓会議などでも御紹介してまいりました,企業における業務で重要な専門分野,オレンジの柱と,青の点線の各分野の研究者の研究者数,科研費で見たものということで,これは26年度から28年度に改めて数字を取り直しましたけれども,結果としましては,依然としてある部分は企業ニーズが高くて,研究者の数よりも大幅に多いということで,機械,電気,土木,ITなどが企業ニーズが高い。その反対に,研究者の数が多い分野は,右側の分子生物学とか,生体システム,これは前回と全く変わらないという結果でございました。
 5ページ目でございます。今の折れ線グラフを男女に分けたものでございます。そうしますと,女性の方が高い分野というのは幾つかありまして,例えば,化学,それから,右側の方の分子生物学,食品・微生物など,赤の部分がちょっと高いところが見られます。
 次のページ,6ページ目を御覧いただきまして,今度は横軸を細かく取ったものでございます。同じように,今度は折れ線で見ていますけれども,企業における業務で重要な分野と,大学における研究室で学んだ専門分野と。これも基本的に同じでございます。これは全業種について技術系人材を見たものでございます。
 8ページ目,9ページ目は,そのうち,業種をソフトウェア,情報システムに限って見たものでございまして,8ページ目の横軸の続きが9ページ目につながっているという感じなんですけれども,この小さい字で緑の山ができているところは,実は,人文科学,社会科学系の出身の方が,このソフトウェア,情報システム開発の業種の中でも活躍されていると,大学でそういう文系だった人もこちらにいらっしゃるという,そういう山が見えているところでございます。
 10ページ目,参考で,関係学科別の学生数です。全体として,学部の学生数約250万人,大学院が20万人のうち,ここでお示ししているような理系95万人について,学科別の学生数を見たものでございます。出典は,以下に記載しております。これは御参考でございます。
 時間が限られておりますので,12ページのあたりは飛ばしまして,14ページ,15ページ,これはまた一つのつながったデータでございます。先ほどの企業における業務と各分野の研究者に,もう一つ,青い折れ線を重ねています。青い折れ線は,イノベーション等による新たな展開・成長に向けて研究が進むことが望ましい専門分野ということで,赤が今の企業のニーズ,緑が今の研究者の分布,青はむしろ将来に対するニーズということで,これの山が高いのは,裏の15ページに行っていただきまして,青のところが高く出ているのは,AIというところでございます。その左側にソフトウェア,これは赤の山が高いということで,現在企業が重要だと思っているのがソフトウェア系のものと,これからイノベーションとして重要なのはAIなどというのが見えるところでございます。
 以上がギャップに関する話でしたが,併せて幾つか,今回の行動計画の,この人材需給ワーキンググループでフォローアップする内容と関係する質問も採っておりますので,御紹介したいと思います。
 16ページは,学び直しについての質問でございます。これは,今,社会人の方に有効であると思われる学び直しの方法というものを聞いたものです。左側の棒グラフで,自社内の研修,自主的な勉強会等々が高くなっております。右側の円グラフは,その費用負担について聞いたものです。43%が,全額,勤め先や公的給付金があれば学び直しすると。赤は34%,一部そういうものがあればすると。緑の13%,これは全額自己負担があっても学ぶということで,全部含めますと,約9割の方が,何らかの形で学び直しに意欲を持っていらっしゃるということが分かります。
 続きまして,17ページです。これはMOOCs,Massive Open Online Courseの利用について,この回答していただいた方は,使ったか使っていないかというのは別にしまして,どのような利点,あるいは課題があるかというものをお聞きしたものです。利点は左側で,基本的には自由度に関する利点が多くて,時間の自由が利く,費用が安い,通勤中スマホ・タブレットで見られるといったことが挙げられています。また,課題の方は,どちらかというと,クオリティに関するものでして,どこのオンライン講座が良質か判断がつかないとか,双方向ではないため学びや知識が深まらない等々が挙がっております。
 以上が,社会人に関するアンケート結果でございます。
 続きまして,社会人1~3年生の方にお聞きしました就職アンケート結果が,以下のものでございます。これは先ほどの全体の母集団の一部ということで,19ページに御覧いただきますとおり,全体では約1,400人,そのうち技術系は400人の方にお答えいただきました。
 20ページ目,これは社会人に割となりたてで,就職活動の記憶が新しいということで,まず行動計画にも出てきております履修履歴の活用状況についてお聞きしました。全体としますと,まず応募時に履修履歴の提出を求められているというのが,全業種で29%,技術系はやや高くて32%,それから,何らかの内定後の提出までも含めると,全体として8割の企業が履修履歴の提出を求めているということでございます。
 21ページ目を御覧ください。採用選考において履修履歴の提出が求められたというのが,採用選考において履修履歴の活用は進んでいるか,重視されているかということの1つの学生側の価値観として感じられます。31%が,早期から履修履歴の提出が求められたということを重要なんだなと感じている。あるいは,成績や単位,科目,それから,学問の関心等について質問があったということをもって,採用選考において履修履歴の提出が重視されていると考えているというお話もありました。
 次は,また違う話題に行きまして,22ページ目でございます。社会人1~3年生の方に,振り返って,大学,大学院等にあったら望ましいと思われる指導や仕組み,授業をお選びくださいということでお聞きしたものです。22ページは,技術系と非技術系を合わせて書いておりますけれども,トップにあるのは,多様な分野の科目を学べる学科,あるいは,仕事に関する知識・スキルを学ぶ授業というのが高くなっております。
 これを,23ページ目に行きまして,技術系だけ抜き出したものが後ろのグラフでございます。トップは変わらないですが,2番目に,企業との共同研究とか,実践的な実社会に貢献できる研究,あるいは,大学に入ってから専門を決められる仕組み,専門以外の専門もサブコースとして学べる仕組み(ダブルメジャー等)というのが高い回答になっており,専門以外の関心というのも高く示しているというのが見えると思います。
 それから,24ページ目,これは最後の項目でございます。会社に入って1年目から3年目の方が,現在の業務で最も必要な専門知識をどこで学びましたかという質問でございます。これは,左側のグラフが,いろいろな機械系,電気・電子等ですが,我々が今この人材需給ワーキングで注目している情報系を見てみますと,これは,どちらかというと,全体として,青の大学・大学院で学んだというものだけではなくて,赤の企業内研修ですとか,緑の働きながら自分で学んだというのが多い分野であるというのは,情報系の1つの特徴であるというふうに捉えております。
 ちなみに,最後は25ページ目でございまして,情報系以外の機械,電気・電子,化学,土木,建築等についても,青,赤,緑で御覧いただけます。例えば,機械材料,生産工学,金属物性などについては,青の大学・大学院というのが20%ぐらいということなので,やや低くて,それ以外のところで学んでいるといったような傾向が見られます。
 最後の26ページ目は,以上のまとめでございます。
 以上でございます。


【岸本共同座長】  ありがとうございました。
 それでは,続きまして,資料2につきまして,関委員から御説明いただきたいと思います。お願いいたします。


【関委員】  千葉大学の関でございます。
 この調査は,産学のミスマッチを,特に工学分野に限って調査したもので,昨年度,ミスマッチがどこにあるかということで広く調査したんですけれども,今年度,まだ中間報告ですが,工学分野において少しポイントを絞って調査をしております。
 それで,めくっていただいて,4ページのところを見ていただきますと,大学というのは,工学の主要7分野の学科・専攻等を持っている大学の学科・コース単位に906を選びまして,これは全部ということなんですけれども,そこに回答を求めています。企業は,小さい従業員100名~300名,300名~1,000名,1,000名以上というふうにカテゴライズした上で,工学の主要7分野に関連する製造業を選びまして,昨年の調査の結果から,回答していただけそうな会社1,000社ほどの技術部門担当者に出しております。回答者の8割は,大学時代に工学系であったと回答しております。
 それを踏まえまして,めくっていただきまして,6ページのところ,まず1つの論点は,プロジェクト型教育というものが産学連携教育で重要ということは,かねてから言われているところでございますが,開講状況は,そこの左の上にありますように,大学のおよそ7割で,そのような形の開講をしているということでございます。実施は,プロジェクト型教育が一番右の上にありますように,課題解決を目的として,学生がチームを組み,自主的,主体的に取り組む実践的教育手法という定義をした上で聞いているところでございます。実施は,そのように,かなりの大学で現在既に行われているというところであります。
 それから,必要性についても,その次の7ページにあるように,大学,企業とも高い割合の認識としては,必要であると考えているところであります。それから,企業様がプロジェクト型の教育に協力していただけるかという質問が7ページの右側にありますが,現在協力しているのは,そこにある16%ぐらいですが,今後,35%ぐらいの企業が,機会があれば協力したいというふうに答えております。
 それから,めくっていただきまして,8ページ目のところでは,プロジェクト型教育でどういう点を重視しているかということで,期待されますように,課題解決能力であるとか,自主性・自立性だとか,コミュニケーション能力とか,普通言われているようなことを期待して大学側でやっておりますし,企業側も,ほぼ同じようなことを期待して,育成を重視すべきかということで期待しているところでございます。
 時間の関係で,その次は飛ばせていただきますけれども,10ページのところで,プロジェクト型教育を今後発展させるための課題というのがございまして,やってはみたいところだが,これ以上やると,1つは,大学ではこのプロジェクト型教育は非常に負担が大きくて,教員がやっていくのが大変であるとか,予算が不足しているだとか,そのための時間も十分ではないというようなことが挙げられています。
 それから,11ページからは,日本ではプロジェクト型教育というものの特徴的なものとして,卒業研究や修士研究を非常に重視して教育を工学系ではしております。これもプロジェクト型教育で様々な内容が含まれているので,これについてどういうふうに考えているかということを聞いております。昨年の調査では,この評価について,少し企業と大学では違う傾向があるかなということで調べておりますが,大学では,やはり卒業研究で,学んだ知識の総合的理解,あるいは,研究を計画,自ら研究する能力であるとか,課題解決,設定して解決する能力とか,そういうことを求めている。プロジェクト型教育の1つとして,卒業研究や修士研究を実施しているというふうに考えているんだということで,めくっていただきますと,12ページの上側に工学系出身者の卒業研究に対して,企業はどういうふうに考えているかという回答がございまして,2番の,研究を行う過程で得られた課題解決などの能力は,実務に役立っているというところでは,かなり多くの企業様が「そう思う」とか,「どちらかといえばそう思う」というような回答をしていただいておりますし,3番にあるような,実務では直接は役立っていないが,行った経験は生きているというような回答も,かなり高い割合で頂いています。
 それから,3番目の課題で,基礎教育として,理工系といいますか,今回,工学系ですが,共通に教えなければいけないことは何かという,基礎はどういうものであるかということについて調べたものでございます。12ページの下に,1番から30番まで,多くの大学で開講しているであろう工学の共通教育の科目名が挙げられています。
 その次の13ページのところを見ていただきますと,その科目の開講状況が出ておりますけれども,予想されるように,数学や物理の基礎的な線形代数とか,微積分,力学等はどの大学でも開講しているところでございますが,ちょっと色が変えてあるところが,最近言われている数理・データサイエンス教育に近い部分ですが,その開講状況は必ずしも高くないということと,右側に,大学の教員が学生はどの程度理解していると考えているかという部分から言いますと,基礎的な教育については,余り理解度が高いと大学の教員も考えていないというところは少し見えています。
 次,めくっていただきまして,そのような教育を企業様が必要と考えているかどうかということについて,右側に企業,左側に大学ですが,企業側の順位で重み付けのソートをしてあります。青いのが5点で,オレンジが4点というような形で重み付けソートしてあります。それを見ていただきますと,企業様も大学も同じように重要と考えているものもありますけれども,少し大学の必要性の順位とはずれているというようなことが少し見えてきています。例えば,上から4つ目の統計学などというのは,大学も企業も,統計学の中身という議論ございますから,精査する必要はございますけれども,同じように考えていますけれども,先ほど申し上げた数理・データサイエンスの教育に当たる少し色を変えた部分では,企業様と大学様は少し違うようなところも見えております。
 それを,大学を横軸にして企業を縦軸にして見たのが,15ページのところです。それで,対角線上にあるところの丸の科目は,大学と企業とほぼ同じような評価をしているものですけれども,少し外れたようなところにある点が,企業と大学で少し違う考え方をしているもので,やはり大学は,数学の基礎である微積や線形代数,微分方程式というようなところが割と必要性が高いというふうに考えているわけですけれども,実務上は,企業様はそんなに考えていないというのがある一方で,例えば,左の上の方にシミュレーション技法とか,知的財産権だとか,機械学習だとか,そういうのは少し外れたところにあるというのは,企業様が実務上必要というふうに考えているけれども,大学はそれほど考えていないというような部分で,ずれが生じているかと思います。
 少し時間があるので飛ばせていただきますが,今度は18ページのところに,産学連携について,インターンシップというのがかねてより行われているので,それについて少し調べておりますが,インターンシップは,非常に多くの大学様が単位認定をしております。83%の大学がインターンシップの単位認定をしておりますけれども,ただ,インターンシップには様々なものがございまして,非常に短い期間,1週間から2週間程度のインターンシップが現在非常に多いわけですので,それに対する大学側と企業側の意義と問題点について整理したものがそこにあるものでございます。大学側は,学生が企業を知る良い機会であるとか,学習のモチベーションが上がるというようなところで意義があるというふうに考えていますけれども,企業様は,そういうのに加えて,優秀な学生の採用につながるというようなところも重要になっているという,当然の結果が出ているかと思います。
 それから,19ページに,産学の共同研究について伺っておりますけれども,これは産学共同研究を通じた教育という観点で聞いておりますけれども,実施している企業様は,大学から見ると89%ですけれども,企業側で実施経験があるのは,過去3年で52%という答えでございました。その企業様の産学共同研究を行う意義というのを見ていただきますと,ネットワークづくりというのが一番上に来ておりまして,大学の知識・技術をそのまま生かすということと同じ,あるいは,それ以上に,そういう人的なネットワークを作るということを重視していることが見てとれるかと思います。
 めくっていただきまして,やはり産学共同研究ですけれども,大学側は,学生が参加する……ここも時間の関係で飛ばします。
 21ページの,発展させるために今後重要だと思うということについてですけれども,大学側も,企業側も,大学ともっと情報交換を促進して,あるいは,人的交流を促進したいというような意向がございまして,これから恐らく産学共同で,教育の面でも交流を進めていく,これは研究を通した教育というであると思いますけど,そういうことを期待しているということが読み取れるかと思います。
 以上でございます。


【岸本共同座長】  ありがとうございました。
 それでは,ただいまの2つの資料の御説明に関しまして,御意見等頂ければと思います。どこからでも結構でございますが,まず最初に,委員の方々の上に机上配付資料というのがございますが,それにつきまして,萩谷委員の方から皮切りとして御説明をお願いできますでしょうか。


【萩谷委員】  どうもありがとうございます。
 現在,文部科学省から委託を頂きまして,情報処理学会の方で,情報教育に関する調査を進めております。今回御紹介するのは,その調査の中途段階の結果ということで,調査自身は3月末まで続きまして,データの方も更新され,分析の方も今進行中ですので,今回は机上配付とさせていただいています。
 まず一番上にありますソフトウェア開発の現場ということなんですけれども,こちら,実際に,いわゆるユーザー系の企業にお願いして,ソフトウェア開発部門の職員の方の出身学科を全て頂くことができました。こちらは,先ほどの経産省の調査を補足・補強するものではないかと思います。
 職種ごとに出身の学部学科を分類したものなんですけれども,どの職種におきましても,文系の出身の方が半数を超えているという状況になっています。例えば,システムエンジニアですと,文系出身が51.5%,それに対して,情報系の学科の出身者が25.5%ということで,およそ4分の1が情報系の出身ということになっています。
 そのほかは,そこにありますように,電気・通信,機械・制御,理系というふうに分類しております。情報系の出身の方は,職位が上がると減る傾向にありまして,例えば,上級のエンジニアですと15.9%ということで,これは年齢が上がっているからということもあるかと思います。
 この情報系の出身の方の中は,実は,後で説明しますけれども,理工系以外の学科が多く含まれております。こちらはユーザー系なんですけれども,今後,ベンダー系の企業に対しても,このような調査を行いたいと考えております。
 以上,企業に関する調査で,次,2枚目以降は,大学における情報教育の現状ということで,簡単にまとめてございます。実は,これ,日本の全大学に対して,文部科学省の御協力を得て調査を進めておりまして,この規模の調査は恐らく初めてではないかと思います。特に情報教育に特化した調査ということでございます。回答率が86.4%ということで,この種の調査では非常に高い回答率が得られたと考えております。
 調査は何種類かありまして,まず調査Aというのは,情報専門学科に関する調査で,こちら,御自身の学科が情報系だというふうに認識されている学科からの回答をまとめたものでございます。具体的には,316学科から回答を得ています。実は,理工系情報学科協議会という,理工系の情報工学とか情報科学の学科の協議会というのがございまして,ここに属しているのが151学科ありまして,そのうち127学科から回答していただいております。ということは,半数程度は工学分野なんですけれども,それ以外の分野が非常に多いということになります。つまり,情報系と言っても,非常に様々な分野に広がっておりまして,例えば,社会科学の中で情報系という学科は,理学以上に存在しているという状況になっています。
 具体的に,こういう情報系の学科で学ぶ学生数はどのくらいかと言いますと,現在のデータですと,約2.7万人ということになります。現在,大学の1学年は約60万人ですので,およそ5%弱が情報を専門にしているということが分かりました。このような情報系の全体の数等は,恐らくこの調査で初めて明らかになってきたものだと思います。
 それから,次のところなんですけど,今申しましたように,5%ということで,情報系の専門の学生というのは非常に少ないわけです。実は,情報系でない非情報系の学科における情報教育というものも非常に盛んに行われておりまして,そこにありますように,351校から回答がございまして,履修者の総数が8万7,000人という数が出ています。実は,しかしながら,この調査の回答率はかなり低いのではないかと思います。例えば,東京大学では,工学部,理学部のほとんどの学科で何らかの情報教育が専門基礎教育として行われているという状況になっています。恐らく,このような非専門の学科における情報教育が,高等教育における情報教育を支えているのではないかと考えられます。
 そこの細かいデータを見ていただけるとありがたいんですけれども,非情報系学科における情報教育も,非常に多くの分野に広がって行われているということが分かります。理学,工学だけではなくて,社会科学,それから,例えば,保健の分野などで活発に行われているということでございます。
 それから,いわゆる一般情報教育といって,全学的な共通教育,教養教育として情報教育も依然として広く行われておりまして,そこにありますように,履修者総数が25万ということですので,おおよそ大学生の2人に1人は,大学で何らかの情報教育を受けているということが分かります。
 最後なんですけど,これは以上のような調査結果からの現状の私見なんですけれども,後で多分,フォローアップ及び今後の方向性の御説明があると思うんですけれども,それに対する私の考えを先取りして,少し御紹介したいと思いますが。
 まず,産業界のニーズの実態に係る調査に基づく需給マッチングということなんですけれども,今御説明しましたように,IT産業における採用の現状というのがございます。理系だけではなくて,文系からも広く採用があるということですね。
 それから,もう一つ,大学教育の現状がありまして,情報系の専門の学生というのは,比率は非常に小さい。それに対して,専門基礎教育の中での情報教育が広く普及しているという状況があります。したがって,現実的な方向性の一つとしては,専門基礎の情報教育の充実の拡大というのが今後重要ではないかと考えられます。
 それから,2番目の観点で,産業界が求める理工系人材のスキルの見える化,産業界の採用活動における当該スキルの有無の評価と強化という観点がございますけれども,先ほどから,履修履歴というものを採用段階で重要視するというような,そういうお考えが言われておりますが,そういう履修履歴が有効であるためには,各科目の内容が見えるようになっていて,知識・能力が保証されなければならないというふうに考えられます。今申しましたように,情報教育の場合は,例えば,工学部の中で広く行われている専門基礎教育が非常に重要であると。したがって,そういう専門基礎の情報教育の標準化と質保証ということが重要ではないかと思います。
 情報教育,広く行われているんですけど,例えば,科目名とかが非常にまちまちであったりとか,授業の内容とかも偏りがあったりとか,いろいろあると思うんですね。そういうものを標準化していくと同時に,そういう科目を学んだ学生の質というものを何らかの形で保証していくと。そういうベースがあって,初めてその履修履歴というものが有効になるのではないかと思います。
 以上,私見も含めて御説明させていただきました。


【岸本共同座長】  ありがとうございました。
 それでは,今の萩谷委員の御説明も含めて,何か委員方々,コメントございますでしょうか。
 じゃ,江村委員,お願いいたします。


【江村委員】  すみません,今日初めて出ているので,もう議論されている内容かもしれないんですけど。まず一番気になっていることが,理工系という言葉が一括りで語られていることです。いわゆる理と工というのが違うというようなこととか,研究者の話をしているのか,技術者の話をしているのかというのは,非常に根本的な問題だと思いますね。
 それで,今,萩谷先生がおっしゃった方は,どちらかというと,ソフトウェア・エンジニアに近い部分のお話をされていたように,違っているかもしれませんけど,受け取りました。それに対して,やっぱり需給のマッチングの議論は,マッチングの議論であると思います。
 一方で,先ほどの赤くとんがっていたところのAIなんかのところの本当の最先端のクリエイティビティも含めた人材というのは,違うタイプの議論をしなければいけなくて,それを一緒に議論していると,本質の議論が隠れてしまうのではないかというのが一番の懸念事項です。
 それから,もう一つが,やっぱり最初にも申し上げたんですけど,現状はこうなんですけど,今,テクノロジーが進んできていて,バズワード的にはAIみたいに言われていますけど,今,人がリソースとしてかけている部分がほかのものに代替されてきたときに,どういう能力が必要になるのかというようなことをやっぱりイメージした議論をしておかないと,今,一所懸命準備したら10年後は全然役に立ちませんでしたみたいなことになりかねないのではないかなということがあって。それと,先ほどの研究の話なのか,技術開発の話なのかというのを,ちょっと複雑なんですけど,でも,そのぐらいは整理した話にしておかないと,せっかく時間を使ってもいい議論にならないのではないかなというふうに感じていますので。


【岸本共同座長】  ありがとうございます。
 まだ御意見あるかもしれませんが,この資料については,皆様方,大体御理解いただいたのではないかなと思いまして,これからディスカッションの方は,もう少し資料を説明した後に,ゆっくり時間を取ってさせていただきたいと思いますので,時間の関係がありますので,先に進ませていただきたいと思います。
 それでは,次の資料になりますけれども,本日は,一般社会法人日本オープンオンライン教育推進協議会(JMOOC)から,福原美三常務理事様にお越しいただいております。次の議題でもあります行動計画フォローアップの一環といたしまして,福原様より,資料3の理工系基礎科目講座,企業・大学での活用について,恐縮ですけど,5分間程度で御説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。


【福原常務理事・事務局長】  御紹介いただきましたJMOOCの福原でございます。お手元の資料で手短に紹介させていただきたいと思います。
 MOOC全体の紹介は省略させていただきまして,今日は,今日の議論であります理工系人材の育成ということに関して,現在,JMOOCが取り組んでいる施策といいますか,実際の講座を制作する,及び,それを提供するということに少し特化してお話をさせていただきたいと思います。
 ページをめくっていただくと,今回のこの理工系の基礎科目ということを展開するということに関して,目的・狙いのところは読み上げませんが,多くの企業で基礎的な科目を学び直しているという実態があるということを前提にして,それにMOOCで提供しようと。自由度のある社会人が学びやすい環境で,この講座によって基礎知識を補っていただこうということが目的でございます。したがいまして,主にメーカー系の若手の技術者を想定した内容になっております。もう一つは,理科系・理工系の学生の皆さんに対しても,履修の幅が広がるだろうということも併せて考えております。
 内容的には,理工系大学の1~2年次に相当するような基礎科目のレベルということでございます。
 2ページ目が,実際の講座について,非常に簡単な説明をしておりますが,基礎科目,大学で提供する大体15コマ,90分ないし60分掛ける15回というのが,基礎的な全体の枠組みでございますが,今回のMOOCについては,6~9コマという,少し圧縮したエッセンスのみを抽出する形にしています。また,基本的に,これはMOOCが全てそうですが,10分のビデオクリップを前提として,その組合せで構成するという形になっております。1コマごとに修了条件を確認するような修了テストがセットされています。
 3ページ目は,円卓会議の中でMOOCの効用について説明させていただいた資料ですので,ちょっと省略させていただきます。
 4ページも同じなんですが,ここだけは簡単に振り返らせていただきますが。経団連様の加盟企業に御協力いただきまして,400人強から,実際の学び直した科目をフリーワードで書いていただくという形のアンケートを実施させていただいたと。2,000~3,000の科目名が挙がってきたものを,系統ごとに分類しまして,ほぼ同じ科目は同じ科目で名寄せをして,回答の多いものほど上に並べてみたというのが,4ページの表でございます。それぞれに上のものが,それぞれの科目の中でたくさんの方が学び直したということですので,これをMOOCで提供していくということが,より多くのニーズに対応することになるだろうということで,これを積極的にやっていこうというふうにJMOOCとしては決定し,進めているところでございます。
 具体的な話が5ページでございますが,今,当面12科目を準備しております。既に1月17日に,そのうち4科目が開講しています。実際にこの講座を担当していただいたのは,かなり実務的な内容ということもございまして,国立高専機構の先生及び長岡技術科学大学の先生に依頼をして,この各大学・学校で提供されている講座を再構成していただいています。5ページの内容を,今,簡単に,開講しているものだけ御紹介しますと,電気回路,制御工学,それから,品質管理,金属材料,これが既に提供されています。その他,機械系,電気系の基礎科目は,4月に開講ということで,今,準備を進めているところでございます。
 6ページは,実際に今のMOOCとの違いがございまして,世の中で提供しているMOOCは順に学んでいただくんですが,今回のこの基礎科目は,学び直しをかなり前提にしますので,全ての単元どこからでも学べるようにしてあります。かつ,単元ごとに修了,いわゆるバッジ,これが修得できるようにしてありまして,バッジを全て集めると修了証が提供されるという形になっております。
 7ページはイメージでございますが,実際の実験映像等も,これはオンラインの動画を中心にしたものですので,組み込むことができるということで,そういう講座になっております。
 8ページが,テストが含まれていますよということを,実際のイメージの中で見ていただくということでございます。
 9ページ目でございますが,通常,MOOCの場合は,半年ないし1年ごとに再開講というのが多いんですけれど,この場合,この科目群は比較的多くの方々が繰り返し学ぶ必要があるだろうということで,3か月ごとに再開講するというような形で,今,想定しております。今開講しておりますものが3月末で終わりましたら,今度,4月からは残りの8科目というような形で展開してまいります。
 この12科目の次の予定が,10ページに書いてございます。情報系科目と化学系科目がまだ提供できておりませんので,JMOOCの会員大学と相談しながら,ニーズの高いものを中心に,10科目ないし15科目程度準備し,この次の年度,これは半年ぐらいかかるんですけれど,提供していく予定にしております。
 11ページ,最後のページを簡単に一言だけ。実際に組織的に学んでいただいた企業には,修了した社員の皆さんの修了状況を分析してフィードバックするというサービスを提供するということで,企業の皆さんに,要は,人事評価にも活用していただくということを想定して開発をしているところでございます。
 以上でございます。


【岸本共同座長】  どうもありがとうございました。
 それでは,御意見いただければと思いますけれども,皆様から頂く前に,参考資料といたしまして,辻委員の方から資料が提供されてございます。これについて御説明をお願いしたいと思います。


【辻委員】  ありがとうございます。MOOCと同じように,実は,履修履歴データベースというのは新しい仕組みです。今後,理工系人材の育成に関して,その内容と,それから,MOOCとどう連動していくと理工系の育成に関係するのか。それから,特に後半の方に数理・情報系の人材,ここでもキーワードになっていますけれども,その育成に相当影響するかと思って,少し御理解いただきたいということで,説明させていただく時間を頂戴します。
 めくっていただきまして,DSS・大学成績センターというのは,目的は,もともとNPOの活動なんですけれども,就職問題を解決するために,学生の学業への優先順位を立ててもらうために,企業への履修履歴の活用を推進するということで,具体的な活動は2つです。
 1つは,成績を見るだけではなくて,履修の行動を聞くということで,文系でも一応使えるような活用方法の啓蒙と,こちらの方が関係するので,それに対して,もう一方は,履修履歴のデータベースというような,企業にとっては活用の利便性を高めるものです。技術者の採用では,実は,もともとあった基礎科目の検索とか,それから,ある程度評価の厳正度が簡単に分かるというふうなものです。それから,学生にとっては,無料の履修履歴の保管場所で,これは今後,今は大学生なんですけれども,社会人でも転用ができますので,言うなれば,個人がずっと自分の履修の経歴を保持し続ける,そういうふうな仕組みになります。
 概要を説明します。単純でして,マル1ですけれども,企業が応募する学生に対して,成績証明書を履修履歴データベースに登録して,データすることを依頼されます。学生は一度登録するだけで,いくつもの企業に履修履歴を簡単に送信できるシステムです。現在は,大手企業中心に174社が利用しています。その結果,そこを応募する学生は必然的に登録しますので,実はもう10万人程度の学生が登録しております。就職をする大卒が,今,リクナビとかの登録は約40万人弱なので,約30%はもう登録しているような状態になっております。
 次のページ,どんなデータが登録されているかと言いますと,サンプルに記載されている項目がすべてデータで登録されているとお考え下さい。企業にとっての利便性は,見やすくしているというのが1つで,あとは,平均値です。大学によって評価のばらつきがありますので,その大学学部学科は平均どんなものかということと,あと,真ん中の方にアスタリスクマークは,成績評価が一定のバラつきがあることを確認されている授業についています。それによって,ある程度,その大学での授業の評価の厳正度がある程度分かるようにしているものです。
 もう一方,重要なのは,すべての項目がCSVデータになっていますので,授業名のチェックなどが企業側で簡単にできるというものです。3ページ目を見てください。このページは履修履歴データベースとJMOOCの講座が連動することで,実は,基礎科目のチェックは簡便化し,活用レベルは向上することを説明しています。つまり企業がデータで履修履歴を取得すると,応募者の学生や内定者のうちから,任意の科目を履修している学生を簡単に検索できるわけです。また必要な科目の習得レベルのチェックや,必要な科目を修得している学生へのアプローチとかが,面接官のチェックだけでなく,会社として共有しやすくなります。
 ですから,必要な科目の習得が足らない人に関しては,入社までにこの科目を修得してほしいとの依頼を個別にすることがやりやすくなります。MOOCは個人にとって無料で学べ,習得レベルもチェックできます。またMOOCで修得したものをデータベースに登録することで,企業側でも,実際に彼がやったのかどうかという確認ができます。
 学生はMOOCのような大学以外の学びも登録できるので,例えば,文系学科の学生でもプログラミング基礎の習得を登録することで,企業側で,学部・学科の枠を超えて,プログラミング基礎を学んだ学生をチェックすることができます。このような一連の流れによって,基礎的な科目に対する意欲を高めていくということになります。
もう一つ重要なのは,採用場面で確認するということで,就活生の先輩から後輩に,基礎的な科目や,IT系の科目は取得したほうが良いと伝わります。つまり企業が採用場面で科目をチェックすることで,低学年からの履修行動が変わることにつながります。
 次のページが,数理・情報系の分野での影響を書いています。前回の会議でも,数理・情報系人材が足らない。例えば,先端IT人材とか情報セキュリティ人材などというのが,この前のところでは,2030年に79万人弱足らないという話がありました。ちなみに,情報処理学会の資料で,ソフトエンジニアリングに必要な知識項目として挙げられているものを記載してます。学位レベルの知識項目が必要みたいです。それらの人材を育成する方法として考えられるのは,情報系学科の増強と他学科のダブルディグリーとかも増強は考えられます。しかし,学位を取るということは,やっぱり2年程度の学習期間とか費用は必要です。また,本人が学位取得には高い目的意識が必要です。これらの方法だけで79万人を養成するのは難しいと思われます。ですから現実的には,下の3と書いていますけれども,例えば,文系学科でもプログラミングを幾つかやっていたとか,また,機械系学科でも幾つかの情報系科目をやっている社会人は結構います。それらの人があと数科目ぐらいを社会人になってから追加取得することで学位レベルの知識を取得して,それらの技術者にスキルアップしていく方法が現実的には必要です。そのためのポイントは,働きながらスキルを蓄積させていって,実際,そういう技術分野へスキルアップさせていく。要するに,ニーズがあるところにキャリア転換をさせていくということが,実際問題は重要になってくるかと思います。
 その際に,個人が本人の履修した履歴をデータで保有していることが極めて重要になってきます。つまり個人は学生の時だけでなく社会人になってからも必要な科目を徐々に蓄積していきます。例えば,3年間で1年に2科目ずつ取得し,3年間で学位レベルに必要な科目を取得できます。またどこで取得したものも一元的に管理できます。本人の意思でそのデータを企業に開示することもできます。そうすると企業は,自社に必要な知識を持っている人を履修履歴から任意に検索することが簡単にできます。
 今,リクナビNEXTという社会人の就職サイトでは,一般的に個人が自分の職務経歴を登録しています。そこから企業は実は自社に必要なスキルを検索したり,人材紹介会社が検索し,アプローチしています。そこに同様に履修の履歴も登録できるようになってくれば,職務経歴と履修の履歴で検索しアプローチできるという社会になってきます。そうすると,学生,または社会人にとっては,科目を蓄積することが自分自身のキャリア形成にとって価値がでてきます。
 この仕組みというのは,私の知っているような諸外国にないので,諸外国は,どうしても学位というのが必要になってきます。ただし,このデータベースがあれば,企業で言ったら,大学で任意の科目セットを持っている人を自分の社の応募者から探す,または,そういう登録者から探すということが可能になってくるということになってきます。
 ちなみに,次のページの5ページになりますけれども,現時点で当方のデータベースには10万人の今年の4月に入社する人のデータがすでに貯まっています。そのデータを少し分析してみたんです。ちなみに,ネットワーク基礎というのは,先ほどの必要なところと,プログラミング基礎,それから,確率・統計ってよく出てくるんで,そういうところ,どんなキーワードかと言ったら,知識キーワードというのは,こういうのも出ていて,そういうキーワードを持っているような授業名を広く検索すると,実は,10万人のデータから言ったら,日本で506個の授業名があります。そこから,本当にこういう知識項目を持っているのを,シラバスで検索できるわけです。大学名は分かりますから。そうすると,恐らく,このネットワーク基礎に近い科目をやっているのは273データあります。そこに受講している学生は,10万人の中で言うと,1,788人で,文系も実は589人います。何が言いたいかと言いますと,データになってくるので,日本の大学でどの授業がこういう知識項目を教えているのかというのが,実はもうひも付けが可能になるということです。
 右の方にちょっと色を付けているところがありますけれども,この中に分散算出可,分散算出負荷というのがあります。先ほどネットワーク基礎で273の科目のうち,ある程度そこの授業を受けている10人以上貯まってきたら,その成績の分散です。言うならば,全部にAを付けているのではなくて,AからC,Dまで幅広く付けている。割と厳正に評価している可能性が高い授業ということぐらいです。それが全体として……。


【岸本共同座長】  すみません,もうちょっと簡潔に後の方をお願いいたします。


【辻委員】  すみません。要するにデータが貯まることによって,評価の分散が分かります。それによって,評価の厳正度がある程度分かるわけです。先ほど言われました習熟度のレベルがある程度企業から想定しやすいという状態が,データが貯まるとできるのです。
 最後のページ,6ページになりますと,これはどちらかというと提案になるんですけれども,是非,大手企業のところで,履修履歴の活用で,できたらデータベースを使っていただくと,今年貯まったデータが来年の集計結果に反映されます。そうなると,重要科目,1,2,3,4と書いていますけれども,数理統計とか情報科目の全部細かなところが分かる状態ができ上がります。また,企業にとっても,どの大学のどの学科,推薦している人の平均評価がどうなのかとかというところも分かりやすくなるので,実際,企業にとって履修の履歴が使いやすくなるという状態になるのではないでしょうか。ですから,是非,ここでは,もともと履修履歴の活用というのを推進していただくことによって,そういうデータベース化が進み,結果として,個人が履修履歴をずっと持ちながらキャリアを変えていける,企業はそれを確認できるという社会に近づくのではないかということであります。
 終わりには,メッセージとして少し書かせていただいております。
 以上でございます。


【岸本共同座長】  ありがとうございます。ちょっと急がせまして,失礼いたしました。
 JMOOCの関係で,簡単な御質問があればと思いますけれども。じゃ,一つお願いいたします。


【関委員】  先ほど御説明いただいたJMOOCの方なんですけれども,基本的に開講時期みたいなものがある――もともと一度作ってしまえば,どの時期からも始められて,いつでも受講が始められるような仕組みにはできないものなんでしょうか。


【福原常務理事・事務局長】  コエデュケーションの長い歴史の中で言うと,先にそれがあったんですね。それはMITがやりましたオープンコースウェアというもので,基本的にはいつでも見れます。大学の科目までデジタル化して,どうぞ自由に見てください,これがどんどん世界中で広がったんですね。
 その中で何が起きたかというと,結論だけ言います。いつでも見れるは,いつまでも見ないということになってしまいます。ただし,全体の集合で言うと,10%,20%のすごく自己管理ができてやる気のある人たちは,それでいいんです。下の60%の人たちがそれをどう利用するかというのは,やっぱりそこに同じ科目を同時に学んでいる人がいて,その中で学び合いが起きるとか,背中を押されているとか,それが学ぶ効果につながっているというのがある意味実証されてきて,受講期間という概念を組み合わせたということです。


【関委員】  それは,一緒に学んでいる人が何か見えるような仕組みがあるんですか。


【福原常務理事・事務局長】  はい。ディスカッションボードがあって,そこに上げると必ず誰かが答えてくれる。それから,質問も先生にするのではなくて,ディスカッションボードに上げると必ず答えてくれると,この仕掛けが有効に働いています。


【関委員】  あと,最後の質を保証する,受講したというのは,ただ聞いていたのではなくて,試験が,問題があるとおっしゃられたんですけど,そこの作り込みなんですけど,問題というのは,1つのパターンだけあるんですか。


【福原常務理事・事務局長】  バリエーションが幾つか出てきていまして,いわば今のコンピュータベースドテスティングなんかも同じですけど,IRTなんかの前提となる考え方がございますが,そこまで完璧にできているものはまだ少ないです。ただ,だんだんそういう流れの方向にシフトしようということではございます。


【関委員】  多分,そこら辺,非常に重要なものだと思うんですけど,そこら辺をうまく作り込むことというのは,多分,今後,例えば,1つのパターンしかなければ,それを覚えれば終わってしまうというので,余り実質的な意味がなくなってくるので,そこは重要かなと考えます。


【福原常務理事・事務局長】  おっしゃるとおりですね。


【岸本共同座長】  ありがとうございました。
 この次の議題に移りたいと思いますけれども,福原様には,この後も質問があるかもしれませんので,このまま最後までお残りいただければと思います。
 それでは,次の議題に移りたいと思います。資料4,理工系人材育成に関する産学官行動計画のフォローアップ及び今後の方向性,それと,資料5,人材需給ワーキンググループ取りまとめ骨子(案)について,事務局より説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。


【福島企画官】  失礼いたします。資料4と資料5を使いまして説明をさせていただきますけれども,資料5につきましては,これは資料4にある中身をある程度様式を整えた形にした資料でございますので,今日は資料4で説明をさせていただきまして,それについて御議論いただければと考えております。
 それでは,資料4を御覧いただければと思います。資料をまずおめくりいただきまして,1ページ目,これは前回の会議でもお示ししたものですけれども,この会議で何をするのかというところですけれども,そこのあるとおりでございますが,産業界と高等教育のマッチング方策,それから,専門教育の充実というところにつきまして,この図にあるような構図で議論をするということ,それから,優先すべき分野というところで,数理・情報技術分野というのを喫緊の課題とするというのが前回の議論でございました。
 それを受けまして,2ページを御覧いただければと思いますが,これは同様の構図を,どのような能力・知識を身に付けさせるかということを横の大きな軸としまして,そういう能力を身に付けさせるために,大学に対して産業界がどういう形で産学連携の方法で関わっていくかという形で整理させていただいた図でございます。主として教育というところが,肌色のような色で網が掛かった部分で書かせていただいております。
 3ページを御覧いただければと思います。ここからが本題といいますか,具体的な部分でございます。ここから最後のページまでは,この(1),マル1というのは円卓会議の行動計画の数字でございますけれども,(1)のマル1,(2)のマル2,(2),(3)マル1,(3)マル2という形で,大きく5つの部分に分かれておりまして,それぞれの部分につきまして,第1回資料の再掲と右肩にございますけれども,行動計画に実際どういうふうに書いてあるかということ,それから,前回の資料で示した論点,それから,次のページに行動計画の進捗状況,その次に方向性という形で,そういう流れで資料を整理しているところでございます。
 そういう意味で,3ページにつきましては,行動計画の該当箇所というところで,改めてお示ししておりますけれども,赤字の部分が優先的な部分ということで,この赤字の部分が,次の4ページを御覧いただきたいと思います。この表の中で,行動計画における優先すべき取組というのが表の左側にございますけれども,ここが前のページの赤の部分を抜粋して入れているということでございます。それの進捗状況というのが,この表の右側に書いてあるというところでございます。
 簡単に説明させていただきますけれども,まず政府の部分でございますが,産業界のニーズ調査の実施ということで,本日も経済産業省の方から御説明いただきましたけれども,産業界ニーズ調査を実施して,この結果について情報提供して,活用していくというのが,まず1点目でございます。
 続きまして,教育機関というところですけれども,大学関係者による協議体を大学関係団体等の協力によって設立するということで,産業界とも意見交換をしながら,どういうことに取り組むかということの検討,あるいは,進捗状況の確認・検証をするという記載になっておりまして,その右側でございます。ここにつきましては,まだ調整中ということで,恐縮でございますけれども,今,大学関係団体と議論をしているところでございますので,次の円卓会議がまた来年度ございますけれども,その前に開催できればということで,今,調整を続けているというところでございます。
 下,産業界というところで,この大学協議体に積極的に参加するというところで,進捗状況につきましては,経団連,新経連をはじめとして,積極的に参加するということ等が書いてございます。
 それにつきましての方向性というものが,5ページでございます。推進するための仕組みの構築というところで,定期的に教育機関と産業界が意見交換できる機会を設け,密に情報共有することが重要だとしております。ただ,この種の会議,たくさんいろいろございますので,作るからには,やはりきちっと機能する仕組みにしていく必要があると思っておりまして,まず,その意味で,円卓会議,それから,人材需給ワーキング,協議体の関係性ということを左に整理しておりますが,円卓会議本体でございますが,これは行動計画の策定・フォローアップ,これは主なものでございます。この人材需給ワーキング,これは調査を起点としまして,調査結果の分析に基づく対応策の検討をすると。大学協議体というものにつきまして,これは基本的に大学関係団体等の協力で作るという形になっておりますけれども,このワーキングの議論を踏まえて,どういうふうに効果的に実行していくかということを具体的に議論してもらう場ということで考えております。
 全体のサイクルがどういうふうに回るかというのが,その下のカレンダーのやつでございますが,調査を受けて,このワーキングを開催して,それを受けて協議体を開催し,円卓会議の本番に行くと,こういうサイクルを回していければというのが,まずこの1点目でございます。
 次が,(1)のマル2というところで,社会ニーズに対応する教育環境の整備というところでございます。6ページ,7ページが前回の資料でございますので,8ページを御覧いただければと思います。ここが行動計画の進捗状況というところで,まず産業界の部分でございますが,ここの行動計画は,いわゆる絶滅危惧分野と言われるようなもの,それから,今後の数理・情報技術分野,そういったものについて,大学等における実践的な教育への参画を促進するということ,それから,奨学金,寄附講座の提供といったことに取り組むことによって,能力,専門的知識を生かした適切な人材育成・確保に取り組むというのが,行動計画の記載でございました。
 それにつきまして,進捗状況というところ,右側でございますが,経団連はとなっておりますけれども,「本格的な共同研究」の推進においてというところで,若手人材の参画,人件費の負担等に柔軟に応じていくべきということ。それから,下のまた書きでございますが,「絶滅危惧学科」,「理工系女性の活躍」に関してということで,ここではトヨタ自動車様の例を挙げさせていただいているところでございます。
 それから,教育機関のところに飛びますけれども,ここにつきましては,数理・情報分野につきまして,実践的な教育を行う産学連携ネットワークの構築というのを書いておりまして,これにつきまして,右側には,一番最後に括弧書きで,成長分野を支える情報技術人材の育成拠点の育成(enPIT)とございます。これは文部科学省の事業でございまして,これについて,もともとは平成24年度からスタートしまして,最初は大学院生を対象にしておりまして,それから,次に学部生ということですけれども,また以下にありますとおり,平成29年度からは,社会人の学び直しのための実践教育プログラムの開発・実施ということで,順次,これについても実証してきているということでございます。
 それから,一番下,左下でございますけれども,数理・情報技術分野等の人材の強化というところで,右側ですけれども,2つ書いてございますが,1つ目の黒丸は,平成29年度からの事業というところで,大学の数理・データサイエンスに係る教育の強化というところで,12月に6拠点を選定したところでございます。
 それから,2つ目,これは上の再掲でございますけれども,大学の取組に対して,文部科学省としても補助をするというところでございます。
 次,9ページを御覧いただきたいと思います。ここが方向性というところでございますけれども,教育環境の整備ということで,大きく3点書いております。
 1つ目でございますけれども,産学連携の人材育成と申しましても,目的,あるいは,どういう専門性に着目するかというのが差がございますので,それに応じた人材育成の取組の推進が重要だという上で,そういう連携をしていくに当たっては,産業界との意見交換の場の活用が必要ではないかと。下の図でいけば,緑で網かけしていますけれども,組織的な仕組みを期待とありますけれども,そこでございます。
 それから,2つ目でございますけれども,数理・情報技術分野固有というものだけではなくて,「分野掛けるIT」としますけれども,例えば,土木とITとか,そういった人材育成の養成の期待が高いということが1つございます。
 それから,最後でございますけれども,産学連携の人材育成ということにつきましては,たくさんいろんな例はあるわけでございますけれども,点での取組ではなくて,産業界と大学の橋渡しを行って,双方向で改善を行うような仕組みの構築が期待されるのではないかと書いております。
 次のページ以降,10ページから,10,11,12,13と続きますが,これは具体的なそういう取組の例を掲げさせていただいております。時間の関係もあるので,詳細は省略いたしますけれども,例えば,先ほどの時間軸という話がございましたけれども,例えば,工学部の教育改革というところにつきましては,学部学科を作っていくということに加えまして,やはりカリキュラムによって柔軟かつ速やかに対応できる教育体制が要るのではないかということで,ここにつきましては,例えば,東工大の例,それから,千葉大学の例を紹介させていただいておりますので,また後で委員から補足があればと思っております。
 それから,次のページ,11ページでございます。ここは(1)のマル2というところでございますけれども,ここでは共同研究と人材育成の例ということで,ここはNEC様と東京大学の方で包括的な研究・教育戦略パートナーシップ協定というのを締結されておりますけれども,そのことにつきまして御紹介させていただいております。特に4番ですけれども,奨学金とインターンシップを活用した人材の育成と輩出という人材育成の要素も,ここで取り上げていただいているというところでございます。
 続きまして,12ページを御覧ください。これは業界団体が大学に講師を派遣しているという例でございまして,このページと次のページに2つ例を挙げておりますけれども,このページでは,一般社団法人電子情報技術産業協会というところの例を挙げさせていただいております。ここでは,大学生,理系学科とありますけれども,人材育成の講座というところで,2002年度から実施されておりまして,平成28年度の実施状況がそこにございますが,10大学(12講座)ということで,大体650名の学生が年間に受講しているということでございます。
 それから,次のページ,13ページでございます。これは社団法人の例でございますが,アクチュアリーの保険数理の関係でございますが,日本アクチュアリー会という社団法人の取組というところで,こちらは4大学,京都,大阪,神戸,東京と書いておりますけれども,ここに講師を派遣して専門教育の提供ということで,右側に掲げておりますのは,京都大学における取組の例ということで,これにつきましては,対象別に,学部生であれば,例えば,講義・演習ですとか,それから,保険数学専攻の修士課程の学生であれば,保険数学のゼミですとか,そういった形で対応していただいているということを掲げております。
 それから,14ページ,15ページ,これは公表情報で,経済産業省の方でお作りいただいた資料でございますが,大学と産業界の共同研究の例ということで表に掲げさせていただいています。
 それから,次の16ページ,これも寄附講座というのが出てまいりましたけれども,その寄附講座につきまして,左下に書いてございますが,例えば,手続き,スケジュール,役割分担というものが事前に明確になっていないのではないかということで,ここで2つ資料を出していますけれども,左上,これは手続きのフローという例ですけれども,矢印がいろいろ書いてございますが,こういう事務手続きがあるということで,講座開設には2~5か月程度,それから,右側ですけれども,寄附講座の規程というのは,これは抜粋をしておりますけれども,存続期間,変性の最小単位というのが微妙に違うというような実態があるということでございます。
 続きまして,17ページを御覧いただければと思います。ここからは(2)というところで,スキルの見える化,それから,採用活動におけるスキムの有無の評価という部分でございます。
 ここにつきましては,18ページを御覧いただければと思いますが,行動計画の進捗状況及び今後の方向性というところで,まず理工系人材のスキルの提示というところでございます。これにつきましては,右側にありますとおり,経団連ではとありますけれども,JMOOCさんと協力されまして,学び直しを行った科目の調査を実施していただきまして,その学び直しを多く行った科目につきまして,JMOOCによるオンライン講座の開設の予定と,先ほど御説明もあったとおりでございます。これにつきましては,経済産業省さんの理系女性活躍促進支援事業との連携も検討されているということでございます。
 それから,採用活動において,スキルの有無の評価を強化するという話が2つ目でございますが,そこにつきましては,経団連さんの方では,「採用選考に関する指針の手引き」というのを作成されておりますけれども,その中で,「大学等の履修履歴について一層の活用の検討が望ましい」という記載を通じて促していただいているということでございます。
 それから,最後,MOOC等のICTを活用した教育について,スキル修得に役立たせるというところでございますけれども,右側でございます。現在,JMOOCさんの方には51大学87講座を提供していただいているということ,それから,その下でございますけれども,先ほどの理工系基礎科目につきまして,高専機構等が協力して,今後配信をする予定というふうに書かせていただいております。
 続きまして,19ページは,(2)の部分の方向性というところでございます。大きく2つ丸が書いてございますけれども,1つは,スキル・知識を見える化して,履修履歴を活用して,その有無を評価するというところで,履修状況の変化を促すということと,マッチングが期待されるということで,個人のライフスタイルに合わせた履修ということで,MOOCの活用も効率的ではないのかというのが1点目でございます。
 それから,2点目というところですけれども,採用活動時の履修履歴の活用,それから,履歴の取得,データベース化ということが重要ではないかということを書かせていただいております。
 ここにつきましては,併せて,技術士というものも我々は仕組みを持っておりますけれども,この技術士の仕組みにつきまして,昨年の12月22日に技術士分科会の方で報告がまとまっておりまして,そこにつきまして少し記載をさせておりますけれども,ここも少し後で委員の方から補足があればお願いいたしたいと思います。
 次が20ページでございます。ここからが(3)のマル1という部分でございまして,大学等における社会人の学び直しの促進としております。ここの具体的な進捗状況等につきましては,22ページを御覧いただければと思います。(3)のマル1,ここでございますけれども,ここのICTを活用した教育について,学び直しに役立たせるというのは,先ほどのところの再掲でございますので,省略させていただきまして,その次の政府の取組というところでございますけれども,文部科学省で,今,職業実践力育成プログラム,BPと言っておりますけれども,この制度につきまして,昨年度は123課程認定をしておりますけれども,昨年の12月に新たに60課程を認定いたしまして,現在138課程という状況でございます。このうち,27講座が専門実践教育訓練に指定されるという予定でございまして,こういうふうに指定されますと,例えば,厚生労働省さんの教育訓練給付金とか,そういったものの対象になるというようなことでございます。
 それを受けました方向性が,23ページでございます。ここにつきましては,岐阜大学の取組の例を下に挙げさせていただいておりますけれども,この取組の特徴というところで申し上げますと,大学だけではなくて,右側にありますけれども,社会基盤メンテナンスエキスパート養成ユニット運営協議会というものがございまして,ここは岐阜大学,それから,岐阜県,国と交通省の整備極,それから,業界団体というのが全部加盟しておりまして,ここがいわゆる社会人の学び直しのプログラムについて点検・評価に参画する,あるいは,外部講師の派遣等に関わっていると。併せまして,県の方,あるいは,業界団体の方が,このプログラムに,右下の方から左上の矢印ですけれども,受講者の派遣,あるいは,実習というのがこういう場合あるわけですけれども,その実習先の無償提供等をやっているということで,要は,プログラムの内容について,自治体,団体,企業が関わっているということ,それから,その資格を取った人の活用・受入れというところまで全部セットで完結するようなプログラムになっておりまして,これについては,今,取組も順調に進んでいるということで御紹介させていただいております。
 こういう形で,上の黒丸に戻りますけれども,地域や業界単位で,人材育成から業界における活用まで一貫した形で連携サイクルを作るのが効果的なのではないかと書かせていただいております。
 それから,最後になりますけれども,(3)のマル2というところで,未来の産業創造・社会変革に対応した人材育成というところで,ここについては,具体的には,26ページを御覧いただければと思っております。ここにつきましては,話として大きく2つございまして,1つ目,教育機関のところにございますけれども,教養教育,あるいは,専門教育の基盤となる基礎教育の充実,あるいは,分野横断的な教育プログラムの提供といったことが求められるということに対しまして,右側でございますけれども,現在,文部科学省におきまして,「大学における工学系教育の在り方に関する検討委員会」というのを設けております。1月に第1回を開催しておりまして,5月から6月を目途に中間まとめをしたいと考えておりまして,詳細は,次の27ページを御覧いただければと思いますけれども。
 ここにつきましては,先ほどの,どこに絞るかという話でいけば,これはまず理工系の中でも工学に絞った形で議論しておりまして,その中で,まず検討の視点というところがございますけれども,そういう工学系の教育の中で,いつの時代も変わらないような基礎的な工学の部分,それから,もう一つは,今,AIとか言っておりますような,そういう変化に対応するような部分,それから,今はないわけですけれども,今後の新たな時代を作り出すような工学系教育の在り方,こういう3つの視点の下に議論を進めておりまして,具体的な論点というところで(1),(2),(3),(4)とありますけれども,主に議論しておりますのは,(1)と(2)の部分でございまして,1つ目としましては,教育体制・教育課程の在り方というところで,やはり学部学科ということではなくて,どういう教育を学生にやっていくのか,学位プログラム等をどういうふうに考えていくのかということ。それを考える際に,柔軟に対応していくようなプログラム,あるいは,多分野融合でできるようなプログラムということで,先ほど東工大さんと千葉大学さんの例はありましたけれども,そういったものをもっと組織的にできないのだろうかということ。
 それから,情報科学技術,これについては,どの工学分野でも必要になってまいるわけですけれども,それを具体的にどういうふうに入れていくのかということ。
 それから,4,5,6,これは大学工学部の中でも,学部で大半が就職しているようなところもあれば,修士まで8割9割という大学,それから,研究者というのがあるわけですけれども,そういう実態に合わせた形で少し仕組みが考えられないだろうかというのが(1)でございます。
 それから,(2)というところで,産学連携教育というところで,やはり人事交流の推進ということが1つ大きな柱として掲げておりますのと,あとは,産学共同研究を通じた博士課程へ社会人学生の受入れの推進ということで,ここで入れさせていただいております。
 これにつきましては,右下の方に,3番で今後のスケジュールというふうに書いてございますけれども,第2回を3月10日に行いまして,5月,6月を目途に取りまとめをしたいと考えております。
 1ページお戻りいただきまして,ここの項目につきまして,もう一つ,数理・データサイエンスの件がございますけれども,ここにつきましては,先ほど申し上げたとおりでございまして,右下のポンチ絵にありますけれども,平成29年度は,国立大学の運営費交付金の中で,志賀,京都,九州,大阪,東京,北海道と,この6拠点を整備しておりまして,ここでは,文系・理系を問わず,全学的な数理・データサイエンス教育の実施ということで取組を進めているというところでございます。
 すみません,長くなりましたが,以上でございます。


【岸本共同座長】  どうもありがとうございました。
 それでは,あと残りの時間,委員の皆様から御意見を賜りたいと思いますけれども,このワーキングとしましては,あと1回で,最後にお話ししていただきました,この資料4をもとにした資料5,これを作り上げるというのがこの委員会としてのゴールだとしますと,それに向けていろいろコメントいただくのがまずよろしいのではないかなと思いますけれども,様々意見があると思いますので,委員の皆様から御発言いただければと思いますが,いかがでしょうか。
 永里委員,よろしくお願いします。


【永里共同座長】  非常に急いで御説明なさっているので,はっきりとした説明はなかったんですが,一括りで,産業界と大学協議体と教育機関というのが出てきていますけれど,産業界というのは,経団連を含めて,我々,産業界の人間なのでイメージはわくんですが,大学協議体と言ったときに,大学というのは,産業界から見たら独立自尊心が強くて,大学協議体なるものが簡単にできるのだろうかと。この短期間にですよ。ここにスケジュールは書いてありますから。どこが主体でこういうことをなさっていくんでしょうかという質問です。


【福島企画官】  委員の御懸念は本当にそのとおりだろうと思います。現在のいろんな団体に,私ども,裏でいろいろ話をしているところでございまして,国大協,工大協,それから,私大連ということで,親会議の円卓会議に入っていただいておりますので,そことお話をするということが1点ございます。
 それから,先ほど焦点を絞るという意味でいけば,このメーンは,工学部の話がやっぱりメーンでございますので,そういう意味では,工学教育の方につながるような団体にお願いしていくということも1つあり得るのかなと思っております。
 いずれにしましても,抽象的な話をするだけでは作る意味がありませんので,具体的に,どうすれば具体的な行動につながるかというところで団体とお話をさせていただいて作りたいということと,それから,最初から間口を広げていくのか,できるところから少し進めていって,少しずつ機能を広げていくのかという,進め方の問題もありますけれども,今,そこは調整をしておりますので,ある程度の形ができた段階で,また御説明をさせていただければと考えております。


【岸本共同座長】  江村委員,どうぞ。


【江村委員】  今のに絡んでなんですけど,途中に絶滅危惧学科みたいな話があって,これは何を意味しているかと思ったときに,最初に申し上げたことに結構リンクするんですけど,いわゆるRU11のような,研究を主とした大学なのか,教育を主とした大学なのかというのは,そういうところの定義をクリアにしていかないと,やっぱりいろんな議論をしても,最初に申し上げたことの繰り返しになっちゃうんだけど,具体的なアクションにならないと思うんですね。
 それは,どういう人材を作らなければいけないかという議論とまさにリンクする話なので,ですから,まさに永里さん言われたように,協議体という漠とした一言で済ますのはよろしくないなと思うので,やっぱり目的は何なんですかという議論が抜けちゃっていませんかと。さっきの話に戻っちゃって申し訳ないんですけど,最先端(研究)の人材が足りないと言っているのか,エンジニアリング(技術開発)の人材が足りないと言っているのか,あるいは,先ほどから出ている融合領域が出てきて,学び直しが必要だというような感じが非常に強く私は思っているんですけど,学び直しというのもすごく曖昧で,だから,そういうことをもっとはっきりしていただきたいなという感じがするんですけど。


【福島企画官】  例えば,絶滅危惧でいけば,例えば,線維であれば,国立でいくと,信州と京都工芸繊維ぐらいしか多分組織としてはないと思いますけれども,そういう協議体というところで,最先端の部分なのか,融合なのか,それから,そういう絶滅危惧の分野なのかということで,組むべき大学というか,そこも多分変わってくるというところもあるかと思いますので,そこについては,具体的な形でできるように,我々も検討したいと思っております。


【岸本共同座長】  いかがでしょうか。じゃ,山本さんが一番早かったので,山本さんからどうぞ。


【山本委員】  今,委員の御意見で,いろんなものがごちゃ混ぜだということをおっしゃって,それは非常に私も思います。いずれもお話をお伺いしていると,なるほど,それも大切だよねと感じます。しかも,そういうことを議論していく場として,こちらのワーキンググループは適切だというところもすごく分かるところですね。その意味で,やっぱりもう少し整理をしていただいた方がいいと思いました。今日お話を聞いて,どの資料もおもしろいですし,重要ということはすごく実感するんですけれども,これがそのまま全部報告書に詰め込むのはどうかなというのは,やっぱりすごく思います。
 以上です。


【岸本共同座長】  ありがとうございました。
 そうしましたら,辻委員,お願いいたします。


【辻委員】  山本さんと少し近いかもしれないんですけれども。今回の報告の中身も,行動計画の作成以前から継続的に実施しているもの,すなわち円卓会議は関係なく実施されていたものと,行動計画を作成したことによって始まったことが混ざっています。
だから行動計画がどの程度,進んでいるのかが分かりにくいように思います。
 円卓会議でも議論があったと思いますが,何らかのゴールとか目標とかを具体的に設定し分かりやすく整理したほうがいいように思います。これはいつまでにどこまでやるんだとか,何らかそういうことも含めて作っていくようにしないと,何となく見えづらい状態になって,円卓会議で決定したことに対しての推進状況が分かりやすくなると思います


【岸本共同座長】  ありがとうございます。
 じゃ,剣持さん。


【剣持委員】  大学協議体の性格にはとても興味があります。それで,先ほど委員の方から,「エンジニアリング」と「研究」の問題提起も出てきているわけですけれど,このようなことは,相当昔から議論されていますね。私自身は,いわゆる先端的なひらめきのある人の教育はなかなかできなくて,その人の資質に依存するところが多いと考えています。だから私たちが国の全体のマスを上げるためには,いわゆる超エリートではなく優秀なエンジニアをたくさん作るというところに特化するのが戦略かなと個人的には思っています。そういうようなことを,今度,この協議体で話せるようになったらいいと思います。
 それで,話があちこちに飛んで恐縮ですけれども,辻さんの話に関連しますが,履修履歴の活用ということについて,基本的に私はすごくいいことだと思っています。しかし例えば,医療の電子カルテでは,履歴を各自に持たせると,病院に行ったときに総合的に診療ができるということで,ああいうのを導入しようとしていますね。でもなかなか進みません。それから,マイナンバーにしても,抵抗勢力があってなかなかできないというような状況があります。こういう個人情報である履修履歴を個別に持たせるためには,このような社会的抵抗の解決方法を具体的に考える必要があります。このような問題を大学協議体のような場で話せるようになるといいと思います。
 それで,大学協議体の性格付けについては,こういうトップヘビーな団体,仕組みではなく,もっと若手の人が実質的にアイデアを出せるような場,2泊3日ぐらいの合宿をして,とことんこれらの問題を検討できるような活動にしないといけない。教育問題というのは,積年の課題ですよね。何十年も昔から言われているようなことに何とかブレークスルーを見つけるためには,若手の力を利用するといいのではと思いますので,是非,御検討いただけたらと思います。
 以上。


【岸本共同座長】  では,萩谷委員,どうぞ。


【萩谷委員】  私も先ほどの江村さんの御意見に非常に同感で,例えば,ソフトウェア産業といっても,非常に幅が広くて,最先端の技術を開発しているところもありますし,もうちょっと社会の基盤的なところで仕事をしているところもあると。
 前回からこちらに参加させていただいて,私の暗黙の認識としては,どうもRU11の対象の話ではないなという,そういう意識で,もうちょっと平均的な大学教育について議論しているのではないかというふうに暗黙に思っておりました。
 ただ,目的をはっきりさせるというのは非常に重要だと思います。それに従って,例えば,数理・情報の教育にしても,様々なやり方があって,前回,独立の学位プログラム,アディショナルな学位プログラムという話もありましたし,それから,今日は専門基礎教育の充実ということを主張させていただきました。
 専門基礎教育も,例えば,工学部共通でやるような教育もありますし,各学科の中で基礎的な教育としてやるということもあり得ると。それに更に加えて,全学的な共通教育もあるということで,様々な方向性があって,そういう方向性と,それから,最終的な教育の目的というものをマトリックス的に考えていくのが重要ではないかと思いました。


【岸本共同座長】  じゃ,先に永里委員からお願いいたします。


【永里共同座長】  皆さんの御意見,もっともなんです。それで,結局,案も出てきていますけれども,てんこ盛りになっているんです。てんこ盛りというのは,しょうがないと言ったらしょうがないんですけど,実は,江村さんの指摘するような問題点を含んでいるので,時間がかかるのです。間に合うかどうか分からないんですけど,各パーツに分けて,理系の方,工学系,エンジニアリング,それから,情報,ソフト,いろいろありますね。その中で,絶滅危惧学科なんていうのも出てきています。ここで盛られているてんこ盛りの中の各々の重要な部分を集めて,その部分部分の最適化を図るような答案にしていかなければいけないんだろうと思うんです。これは実務家のやり方です。
 ただ,これをやると,木を見て森を見ずというか,部分最適ばっかりになって,本来の目的の教育でこういうところが足りないというところは抜けてくるんで,それはそこでよく気を付けながらまとめなければいけないというのが私の考えなんです。


【岸本共同座長】  先生,いかがですか。


【関委員】  もうまとめる方向なので,余りあれだったんですけど。
 この中で,教育プログラムというか,もともとあったのが,産学のミスマッチというか,それは明確に,協議体を作るかとかは別ですけど,お互いにすり合わせをする部分が今まで圧倒的に欠けていたので,そういうのを恒常的にやらなくちゃいけないという意味で,何らかの仕組みを作らなければいけないというのは,もうこの全体の報告の中で重要な部分だと思うんですけれど。
 教育を変えていって,情報にしろ何にしろ,変えていったときの検証というか,質の保証というか,その部分はかなり重要で,何かやっても,先ほどから出ているMOOCもそうですし,辻さんがおっしゃられている仕組みも,結局,それが単にやったのではなくて,科目を取ったのではなくて,ある能力が身に付いているということとつながれるかというところはかなり重要な,評価をするところが重要なのではないかなと。そうしない限り,やってます,やったけど身に付いてませんみたいなことがずっと続くんじゃないかという危惧はありますので。実は,それはかなりテクニカルなことで,先ほどMOOCのときに申し上げたんですけど,MOOCをもっとちゃんと作り込むというのが本当は必要。それがあると,例えば,ロールプレイングゲームなんて,すごく文型はたくさんできているんですけれど,ああいうふうに,その人に合わせて課題が与えられて,本当にそこまで学んだかどうかということが分かるかどうかというのが求められているのではないかなと思うんですが,それは技術的,テクニカルに解決できることがあるんじゃないかなと思うんですけど。


【岸本共同座長】  どうぞ,江村委員。


【江村委員】  産業界とのミスマッチという議論で,領域の話がすごく出ていて,これは非常に重要なんですけど。私たちが求めている人材というものの,何を求めているかというものの問いかけをもう少し違う視点も入れていただきたいなと思うんですね。その分野が足りないとかという問題だけではなくて,どんな人材を求めているか。それは先程申し上げた研究分野でクリエイティビティを求めているのか,技術開発分野での技術力を求めているのか,そういう側のミスマッチかも見ることが重要だろうと思うのと,じゃ,産業界がもっと発信しなきゃいけないなというのがきっとあって,履修履歴の活用と言っていますけど,どの科目を取ったかというのが,それも大事なんですけど,私が最近非常に意識しているのは,できればダブルメジャーな学生を採りたいと言っても,全くいないんですよね。そういう人たちを作ってくださいと言っても,なかなかできないんだけど,アメリカの大学に聞くと,エレクトリカルエンジニアリングの学生にバイオの科目を1科目必修で取らせるみたいなことは,仕組み上できるわけですよね。企業側は,そういうふうに取っている人を求めていますという発信をしないといけないんだけど,そういうようなことを具体的にイメージした施策にしていくということをやらないと変わらないんじゃないかなというのが思いますので。
 履修履歴の意味も,もう一つは,さっきPBLの話があって,実は,日本の大学って,3年生ぐらいまではほとんど座学じゃないかと思うんですよね。それは合っているかどうか分からないんですけど。今,グローバルに見ると,18歳ぐらいで兵役に行って,サイバーセキュリティの最先端のことをやっているとか,そういう人たちが世の中で次のものを起こしているというふうに考えると,やっぱり履修履歴の中身の,今で言うと,学位を取るとか,論文を書くというようなもの,あるいは,インターンシップみたいなものというのをどのタイミングでやるかみたいなのは非常に重要になっていると思うんですけど,そういったことが,これは産業界のリクエストとしても出さないといけないし,そういうようなことも考える必要があるなと思います。
 もう1点が,MOOCの話とちょっと関係するんですけど,基礎科目としてのMOOCはいいんですが,実は,最先端の領域って教える人がいないという問題があるんですよね。そこが,だから,日本ってどうしても遅れていっちゃっているわけですけど,そういうところにMOOCみたいなものを使えないかというようなこともやはり考えていかないと,今,産学のギャップもあるんですけど,日本が遅れている分をどうやって取り戻すかというのもすごく考えなきゃいけないと思うので,その辺は私が今思っていることで,私たちもメッセージの仕方を,産業界としてももう一歩踏み込まないといけないかなと思います。


【岸本共同座長】  どうぞ。


【永里共同座長】  今のと関連しているんで。産業界が求めている人材というのは,やっぱりT字型の人間とか,あるいは,ダブルメジャーが必要で,今日御説明になっていないんですけど,東工大とか,多分,千葉大学もそうなんだろうと思うんですが,そういう方向に向かっているんですね。だから,心あるというか,意志のある学長がそっちの方向へ持ってきているということで,そこを加速するように政策当局はやったらいいんじゃないかなと思います。


【岸本共同座長】  ありがとうございます。ほかにはよろしいでしょうか。
 私の方からも,まず,半分感想的なことなんですけれども,このワーキングの課題,(1)のマル1,マル2について関係者の方がよく調べていただいたなと思います。日本の中でこれだけのことがたくさんやられているというのは,前から御存じの方もいらっしゃったかもしれませんけれども,相当いろんな試みがされているなと思いました。
 その反面,どの委員からも指摘がありましたように,少しばらばら感があって,統一感がなくて,どこを対象にしているのか分からない,あるいは,継続性がないかもしれないということで,相当なエネルギーは皆さんつぎ込んでいる,いろんなこともやっていい方向に向かっているんだけど,これをきちんとした結果に結び付けるのには,まだまだいろんな整理の仕方をしなきゃいけないんじゃないかなというふうなことなのかなと,まずは思いました。
 それで,この委員会で議論して,じゃ,どういう方向まで行けばいいのかというのは,ちょっとこの時間だと難しいですよね。むしろ,こういうのをまとめてみると,そういう課題が浮き彫りになっていますよ,今日ご発言いただいた委員の先生方がおっしゃっていたのは,皆さんそれぞれ重要なことなので,それをこの委員会のコメントみたいに付けられるといいのではないかなと。
 じゃ,それを解決するには,ここでの案は,大学協議体を作ろうというのが1つの案になっているんですけれども,そこがどんなふうになるのかくらいまでは議論できたらなとは思います。ただ,全ての大学が集まって一つの組織でというわけにはいかなそうですよね。何かあるターゲットを絞ってということで,先ほど萩谷委員からは,一般的な全国でまたがるような教育をやりましょうというような話もあれば,もう少し分野を絞ってリーダーとなるような人材をこういった中から育てるというようなこともあるし,どういう切り口があるのかも含めて整理して,それに対して協議体をどう作るかくらいまでを議論できるといいのかなと思いますが。
 私はそこまでぐらいの感想なんですけれども,更に加えて,委員の方々,何かコメントいただけると。産学で連携するには,どんな仕組み,どこを目標にやったらいいのかということで御発言いただけると,次のアイデアになるのかなと思いますが,いかがでしょうか。


【永里共同座長】  この案の中だったと思うんですけど,実は簡単ではない,いろんなニーズがあって,いろんなところで,実は一括りにできないというような文章がどこかにあったような気がしましたけど。


【岸本共同座長】  そうそう。


【永里共同座長】  ありましたよね。そういうことをどうやってまとめていくかです。


【岸本共同座長】  はい。だから,この報告書の案だと,(1)があって,(2)があって,(3)があって,まとめがなく終わっているように,これからまとめを作らなきゃいけないんですけれども,どうここのワーキングとしてまとめにするのかということかなと。できれば,まとめみたいなことが入っているといいかなと思いますけれども。


【江村委員】  先ほどから出ている,もう少し整理をちゃんとするというのをやった上で,中の資料を見てみると,いい事例が幾つも入っているわけじゃないですか。この括りの中ではこういうベストプラクティスみたいなのがありますというのを,その位置付けがクリアになって入っていると,見え方は随分変わるんじゃないかなと思うんですね。
 やっぱり物事って,いいものを作って,それを広げる以外に,現実的には起きなくて,みんなで「せいの」ってやろうと言っても,ほとんどそんなことは起きないので,やっぱり課題が整理されていて,そこに対して,こういう手は小さいけど始まっていますというのが見える形になれば,それで随分イメージが変わるんじゃないかなと思うんですけど。


【岸本共同座長】  そうですね。


【剣持委員】  私は,PDCAサイクルのアクションのところが完全に欠如していると思います。問題点はすごくよく分かり,その解決策もある程度は出ていますが,実際にはアクションに行く段階で障害がいろいろあって,そこが解決できていないから,実際に行動がなされていない。もう何十年も「産学連携が大事だ,大事だ。」と言っても,言ったきりになっている。そこのところをもう一つ回すための具体的なフレームワーク,あるいは,その問題点を解決するためのアイデア出し,そういうようなことをやれるような仕組みを提言していくのがいいのではと思います。
 それから,本当にスティーブ・ジョブズだとかビル・ゲイツのような人は,もしかしたら教育はできないんじゃないかな。アントレプレナーの教育なども進んでいますけど,ああいう人達は本当に教えられるのかと常に疑問に思っています。そうではなくて,僕らが今できることは,せいぜい何年後かにノーベル賞になるような研究をやりなさいと応援するだけかもしれないけれど,ビル・ゲイツの指導というのはなかなかできないのではというような気がしています。それはこの数年考えてはいますが,そこに踏み込むと泥沼になってしまうような気がしています。


【岸本共同座長】  どうぞ。


【辻委員】  私も今の意見に賛成です。ここを重点的にすすめましょう。というようなものを具体的に絞った方がいいように思います。
 そのようにポイントを絞って進めながら,実際に進めるにあたってこのような問題はあるんだとか,円卓会議で決まった以降,いろいろ動いてはいるんだけれども,この施策だけでは足らない部分がある,とかのような整理した議論ができるといいと思います。


【岸本共同座長】  私からは,これ,1年ぐらいの期間だけではだめで,やっぱり調査を続けていかなければ――今回,関先生のところでされたのも大変だと思いますけれども,経年的に見ていかないと,良くなったかって,教育ですから,明日からすぐ良くなるという話ではないので,剣持先生もおっしゃっていたけど,継続的に回るシステムを作らなきゃいけないんじゃないかなと思います。そういったあたりを,最初から成功するかどうか分からないんですけれども,やっぱり作って,産学の継続的な対話の場所で実行して,評価して,フィードバックするというのが必要じゃないかなと思います。
 それと,今回,情報系の話ですけれども,本当にどこの分野の人が足らないんだろうかと。実際にプログラムを作る人が足らないのか,もっと新しい産業になるようにイノベーションを起こしてくれるような,そういったことを考えてくれる人をもっと増やしたいのか,実際,どこなんでしょう。両方なんでしょうかね。


【永里共同座長】  いや,これは両方なんでしょう。だから,ソフトウェアの開発者もいれば,デザインの人もいれば,もうたくさん入っていて。それを全部情報系で一括りにしてやると,さっきみたいにちょっと分かりにくくなってくるんです。


【岸本共同座長】  そうですよね。


【永里共同座長】  だから,また繰り返しますけど,ある種の項目を作って,僕はパーツという言い方をしましたが,その項目項目において最適化を狙っていくようなこと,しかし,それだと,本来の目的から外れて部分最適で終わるという心配はあるんで,ここのところはちゃんと考えなきゃいけないと。


【岸本共同座長】  そうですね。


【剣持委員】  僕らは,部分最適をこういうワーキングなどでは考えるんですけど,全体を良くするように考えるのは日本の行政の責任だと思うんですね。


【永里共同座長】  そう思いますけど,円卓会議がそこじゃないかなと勝手に思ったものですから。


【剣持委員】  円卓会議か。そうか。


【江村委員】  調査を継続してやっていくというのは,本当に必要だと思うんですね。それで,今日お話を伺っていて,もっとこういうデータがあると良い,こういった項目があると良い,この辺がもうちょっと分解されて見られるといいなと思うような項目が幾つかあったりしたんですけど,そういったことを,ですから,せっかくやるのなら,フィードバックというか,同じ項目でやるのも大事なんですけど,その採り方をもうちょっと変えていただくことが必要かと思います。これは,目的に応じて調査の仕方やデータの採り方も変わってくるといういことを鑑みると,改善や工夫を重ねながら調査を継続するべきかと思います。そういうことをもう少しやっていくと,少しずつでもどんどん良くなっていくんじゃないかなと思います。


【岸本共同座長】  山本さん,いかがですか。


【山本委員】  ちょっと事務局に質問です。この情報・数理の分野が重要だというのはもちろん分かりますし,それについて書かれている状態だと思います。ただ,円卓会議のときには,情報・数理の話が一番ニーズが高いものとして出ていましたけど,もっと,それは工学,産業界のニーズ全般の中の一例であってという印象を持っていました。それが,今回は,これを見ると情報・数理の話が90%ぐらいになっています。どれも読んでいておもしろいですし,進んでいますし,必要です。ただ,それが最初に言っていたのとずれのようなものを少し感じたんですが,そんなことはないんでしょうかね。お願いします。


【福島企画官】  去年,円卓会議をやったときも調査をやっているんですけれども,そのときでもやはり一番ギャップの大きい分野というのが情報の分野であったということが1点と,それから,今の制度全体としても,やはり第4次産業革命といったような一連の施策の中で,やはり情報とか,数理,データサイエンスというのを重視しているということもありましたので,前回の会議の中で,このワーキングの中では,まずは情報・数理の部分について議論をしてはどうだろうかということで御提案をさせていただいたというところでございます。
 ただ,工学教育の中で課題になっているのは,もちろん,そこだけではなくて,ほかのものもございますし,円卓会議でいけば,例えば,自動車の燃焼の話とか,そういうのも円卓会議で出たと思いますけれども。そういう広範な分野はありますが,工学教育の全体の中身といいますか,どうしていくかというものについては,例えば,27ページの方で先ほど御紹介しましたけれども,大学における工学系教育の検討委員会の方で,その仕組みの部分とか,そういった部分では取り上げていきたいと思っています。
 ただ,この会議の中では,当面,情報についてまず議論できればということで,させていただいているというところでございます。


【岸本共同座長】  どうぞ。


【江村委員】  今のことを,情報・数理ということで簡単にやめちゃわない方がいいと思っていて。情報・数理と言ったときに,いわゆる従来のIT技術者というのかな,というふうに取っちゃうと,今の非常な課題って,産業界もずっと言っているんですけど,何とかインフォマティクスというのがどんどん出てきているわけですよ。ですから,マテリアルだったり,バイオだったり,最近だとインフラとかも言っていて,情報をどの分野に掛け算するかというのが,まさに第4次産業革命というのでは最も重要になっていて。そこには,例えば,建設系の会社の方に話をすると,人はいるんだけど,情報のことをその人たちに勉強させたいという,そういうニーズがすごくあって,そこが学び直しみたいな問題にまさに直結してくる話なので,情報と言ったときに,どこまでをカバーしているのかというのを,すごくはっきり議論することが非常に大事で。だから,今日のお話も,どちらかというと,従来のIT人材が足りないという話をしている感じを感覚的に受けちゃっているんですけど,結構クリティカルなところじゃないかなと思います。


【永里共同座長】  おっしゃるとおりなんですよ。そういう話は,実は第1回目でその話を出しているんです。


【江村委員】  そうですか。すみません。


【永里共同座長】  何とかインフォマティクス。まさしくそこをやらなきゃならないと。絶滅危惧学科なんかも,実はそういう観点から,そこで議論されなきゃいけないと,そういうことになっているんです。ですけど,強調なさったので,また皆さんが思い出してくれたと思います。
 それでは,お願いします。


【飯村室長】  先ほどの資料4の2ページを御覧いただければと思います。,円卓会議の行動計画自体は幅広くアクションプランについて記載されており,今回,1回目のフォローアップということで,全てのものを網羅的に深掘りするということよりも,特に関心の高いITですか,数理・情報と言ったらいいのかもしれませんけれども,そういうことを中心に1回目はやろうということで,人材需給ワーキングで議論を始めていただきました。そういう意味では,既にもういろんなものを,特に必要なものにまず絞って議論を開始したという経緯でございます。
 それから,この2ページ目なのですが,この事務局資料を今回用意するに当たって,様々な業界団体の方,あるいは,企業の方と意見交換させていただきまして,行動計画の中にでも幾つかアクションがありますが,2ページでいう縦軸の部分があるんじゃないかと。それは,例えば,リテラシーのようなものでもあり,あるいは,まず分野の専門知識の上に掛けるITみたいなものが求められている。さらに,その上では実践的能力。どちらかというと,下がコンピテンシーとかも含めて教育に近いところと,上が研究に近いところと。それで,そういう軸を立てて整理してみますと,行動計画の主要なところで,産業界がどういうふうにこのギャップを減らすために関わっていただけるかという意味では,寄附講座,講師派遣,教材提供というのは取り上げられています。この手法は,どちらかというと,教育の真ん中のところに当たるものが多いのではないかと。他方で,トップ人材,研究人材を育てるには,手法が少し違っていて,共同研究とか,中長期のインターンシップということで,違う手法で対応すべきだろうということで,少し整理してみますと,どちらかというと,こちらの行動計画フォローアップという話は,研究というよりも教育,中間層的なところをターゲットにしていると。しかも,今回,私どももそれをターゲットにしてフォローアップをしようとしているということでございます。少し絞らないと,余りに項目が多いものですから,そういう形でやりたいと思っております。
 それから,先ほど資料1でお示ししたような経済産業省から出した資料については,もう少し切り口が作れないか,細かくできないかということにトライしてみたいと思います。
 3ページ目に,このデータの母集団に関する説明がありますが,技術系は全部で1万サンプルぐらいですので,切り口によって,それが意味あるものになるかというのも含めまして,見てみたいと思います。
 その3ページ目の右下の角に最終学歴というのがありまして,ここで技術系の博士は280人ということですので,全体の1万人のうちの3%ぐらいの方なので,研究イコール博士にしていいかどうかは分かりませんが,調査上の切り口では,例えば,こういうところを切って,違う数字が見えないか,ほかの残りのサンプルと比較できないか,トライしてみたいと考えております。


【岸本共同座長】  ありがとうございます。
 時間がそろそろ押してきておりますけれども,あと残りの時間で何か御発言。


【剣持委員】  じゃ最後に一言。
 私,数理・情報系がなぜ優先されているかということについては,各個撃破でやるということが重要だという観点からも適切だと思っています。数理的な考えというのは工学の基礎になるもので,横串的だからいいですし,それから情報というのも,御案内のように,エネルギーの単位と情報の単位というのは同じ単位で,エントロピーで測られるということで,科学分野では共通的な要素と言えます。まずここから各個撃破していくというのは間違っていないなと思っております。
 以上。


【岸本共同座長】  うまくまとめていただきまして,ありがとうございます。
 それでは,まだ御意見いただきたいところもございますけれども,時間になりましたので,本日はここまでとさせていただきたいと思います。
 事務局より,次回の予定について御説明をお願いしたいと思います。


【福島企画官】  資料6を御覧いただければと思います。今後のスケジュールということで,横になっているものでございますけれども。本日は,この下の第2回の赤い丸の分,2月10日の分でございまして,次回は第3回ということで,3月29日水曜日の15時半からを予定しております。
 以上でございます。


【岸本共同座長】  それでは,本日,これで議事終了いたしましたので,終わりにしたいと思います。長時間にわたり御議論,どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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