高等専門学校の充実に関する調査研究協力者会議(第7回) 議事要旨

1.日時

平成28年1月12日(火曜日)15時00分~17時00分

2.場所

旧文部省庁舎第2会議室

3.議題

  1. ヒアリングの実施について
  2. 論点整理について
  3. その他

4.出席者

委員

三島座長,天羽委員,内田委員,鎌土委員,萱島委員,輿委員,小島委員,谷口委員,馬場委員,棟方委員

文部科学省

常盤局長,松尾審議官,北山専門教育課長,関企画官,土生木視学官,山路課長補佐

オブザーバー

野崎治子(株式会社堀場製作所ジュニアコーポレイトオフィサー),下畠学(福島印刷株式会社代表取締役社長)

5.議事要旨

(委員:○,事務局:△)

議事に先立ち事務局の異動が紹介された。

議題(1)ヒアリングについて
[1]オブザーバーとして招聘した野崎治子(株式会社堀場製作所ジュニアコーポレイトオフィサー)氏から,発表があった。委員からの意見・質問は以下の通り

○:高専生だからという弱点は何かあるか。
野崎氏:弱点というべきかどうかはわからないが,世間慣れしていないように見受けられる。学校からの推薦で来られる方が多く,就職活動を余りしていないので,自己分析をすることや様々な企業を見ることのチャンスが少ないのかと思う。結果として初心(うぶ)であるといえる。
○:高専を卒業して大学に進学した者について,大学の影響を受けているのか,高専の強みを活かしたままなのか,企業側から見てどうだろうか。
野崎氏:高専卒の経歴を活かした新卒者は増えているように思う。高専を卒業してその後大学院に進学している者については採用の際のアドバンテージとして積極的に採用している
○:高専生に聞くと,英語の力がないと思っているようだが,それは,会社で海外に出すなどすれば払しょくできるか。
野崎氏:その思い込みは払しょくできる。高専生は,おとなしいタイプとやんちゃなタイプと二極化していて,ロールモデルと言えないかもしれないが,やんちゃなタイプは勉強できなかった者が多い。やんちゃなタイプが何とかなっているのでおとなしいタイプも何とかなるだろう。また,ヨーロッパだけでなく中国にも転勤させている。中国は漢字文化なので,英語ができなくても大丈夫。「海外は大丈夫か」と聞くと「大丈夫です。」と回答してくれる。言葉はツールであって,相手が必要とするコンテンツを持っているかが重要なのではないかと思う。
○:私は英語力は,絶対に重要だと思っている。コンテンツをしっかり相手に伝えられるかどうかということだと思う。高専卒は技術センスがあって,「ものをつくる」というところまで考えがいかない。今後5年後10年後を考えると,企業でも,高専卒の技術者にもっといろいろな知識を積極的に教えていく必要があるのではないか。大卒と高専卒を見たときに,チャンスを与えた場合に,積極的に吸収するのびしろが,高専卒の方があると思う。高専卒の方がハングリーなので,是非チャンスを与えていったらいいじゃないかと思う。
野崎氏:入社してしまえば学歴は関係なくフラットである。海外研修は社内で公募している。高専卒であっても大学卒であっても,相手先が必要としている知識・技術等の伝えるべきコンテンツを持っているなら海外に出していこうという考え方である。
○:人材育成についてはどうか。
野崎氏:学歴に関係なく一緒にやっている。高専卒だということで本人が限界の意識を持つのであればそこで終わり。高専を出たことでこれだけの技術を身に付けたと考えるか,どうせ高専卒だからと考えるか。企業としてはその切替えをどう促していくかが大事なところである。海外への派遣者は持っている技術をアピールさせて選ぶ。
○:大卒と高専卒の同じ能力を持つものがいた場合,海外のポジションがあるときにどちらを出すか。
野崎氏:年齢的に若い方を出す。
○:同意できる部分が多かった。一歩前に出る力を持っているかという点は,高専卒に限った話ではない。企業での処遇は学歴によらず同じようなカーブを描くが,その一方で,本人のマインドによっては一歩前に出て行かない者もいる。したがっていろいろな場を与えて本人に選ばせることが重要ではないか。企業としても「高専出身だからこれが向いている」と決めつけないで活用していきたいと思う。高専出身者にもいろいろな人がいるので,何回もチャンスを与えることが必要かと思う。高専の学生には留年した人も含め,年の幅が広いという指摘は今までの議論はなかったように思い,新鮮だった。
野崎氏:ヒアリングした社員は,何歳も年が離れている人と一緒に机を並べたということだった。

[2]オブザーバーとして招聘した下畠学(福島印刷株式会社代表取締役)氏から,発表があった。委員からの意見・質問は以下の通り

○:高専生に苦手とされているリベラルアーツの中身を聞かせていただきたい。好奇心が残っていていろいろやろうという気持ちがあるものかどうなのか。
下畠氏:技術者として即戦力としてやっていくのであればリベラルアーツの問題はそんなに関係ないのかもしれないが,そこからリーダーになっていく人材になっていくためには,①幅広く人間味みたいなものが大事になってくる。自分で勉強できる準備が必要。②技術もITも複雑化している多様な解釈,多様につかいこなしていく段階で広い視野のバックボーンになる。何でもいいから一つ,基礎的な分野を超えた面白さをもみつけてくれると,違ったものを勉強するときに役立つ。 一つの専門分野しかできないことを乗り越えていくために必要。
○:教育課程ではなく先生の影響が大きいのだと思う。
○:ある分野のスペシャリストである深みを持った人間が横のことを一生懸命やることの「気付き」とかなり違う。スペシャリティを持った人の気づきはかなり違う。5年+2年を持ってもいいかなと思う。大学とは発想の仕方が全くちがう。
○:卒業生の状況について。同年代の中では大企業に行かれた方もいると思うが,違いはあるか。
下畠氏:潜在力でみると同じ。新しい状況に出会ったときに,一歩踏み出せるかというとことだけだと思う。高専卒だからということではない。
○:逆に高専卒だからよかったということはあるか。
下畠氏:自分に一つ得意なものがあってそれをどう活かしたらいいのかというところが評価になってくる。現在の若い人の中でも,大卒の方でそういうところがない人は,力を引き出してあげることは難しい。高専卒で,どんな能力を持っているのかがわかれば,その能力を引き出してあげられている。
○:優秀大学の採用が難しいと聞くが。
下畠氏:国立大学の工学部などの採用は難しい。

議題(2)論点整理案について,事務局から説明ののち,意見交換がなされた。委員の意見・質問は以下の通り。

○:この委員会でいろいろな方から意見を聞きながら15歳から始まる5年制の良さがわかってきた。5年で進路を選択できる方がいい。5+2を考えたときに大学と何が違うのかをクリアにしないといけない。専攻科で何をやるのか。グローバル化などの多様性をもった人材育成,縦の深めていき,もっと違った気づき,横の強みができるように,専攻科でやっていく。グローバル化に対応できる留学やインターンシップがもっとできるようにする。もう一つは,プロジェクト。大学とは違う地方に関係したもの。例えば地方で複数の専攻科を一つにまとめて良い教員を集めて,専攻科の設置基準をクリアにしていけば,違ったものになっていくと考える。大学がやっていることと差別化できるのではないかと。また,進路の選択肢があるところがよくて,専攻科のプログラムをしっかりすることがクリアになっていくのではないか。
○:5年+2年に賛成である。専攻科をどうするかが一番大事なポイントとなる。地域の大学と連携する専攻科もあっていいかなと思う。
○:教員の質を下げないで,高専の特色にプラスしていくと,ユニークな人材が育つのではないか。そこを目指していかないと。単純に7年にしたときに,大学とどこが違うのかというところが不明確になる。また,高専のよかったと評価いただいているところを強化していけば良いと思う。今まで出てきた良いところを評価していけば,よりよくなっていく。教員の質を考えていかないといけない。学生が自信を持っていないというのは,一つは教員の育て方の問題だと思う。高専の特徴を活かしながらよくしていく努力を続けるのが重要なのではないか。
○:5年で卒業する者には,準学士という称号が与えられるということであるが,どうだろうか。
○:短期大学は短期大学士という学位を受けることができるが,これと同じように,高等専門学校の卒業生も,きちんとした教育課程をやっているのだから,称号ではなくて学位を受けることができないかと思う。適切な名称の学位を得られるようにすることが必要。
○:学位を出せるようになった場合,高専で出すことができるのか,それとも,学位授与機構がだすことになるのか。
△:学位授与ができる機関は大学のみであるという国際的な理解がある中で,高専は大学ではないという整理がなされている。仮に高専が自ら学位を出せる制度設計をする場合は,高専を大学にするような制度改正が必要であり,それは難しいと考えている。
○:学位授与機構へ申請には,学生一人一人がかなりの金額を負担している。もし準学士の学位を制度化する場合,学生一人一人が準学士の学位を申請することになる。
○:学位授与機構で5年の過程を認めてもらって,自動的にそれぞれの高専で出せるようにならないのか。
○:学位の価値がどれくらいになるのかと感じる。準学士は,国際的な比較の中での価値はよくわからない。それが学位になったからといって国際的なレベルが上がるかどうかはわからない。
○:国際的な評価レベルについては,実力的な部分などを明確にして,その上での交渉となる。
○:学生がどこまで学位を重視するか。
○:高専がそもそも日本のほかにはない。
○:高専というだけで効果がある。効果を世界に理解していただくことが必要。
○:学位授与機構から特例適用認定を受けている高専は,学士の学位を出せるのか。
△:高専自らは出せないが,特例適用認定を受けた専攻科では,大学評価・学位授与機構で実施する審査の一部である試験に代えて,専攻科も含む学士課程教育に相当する4年間の学修の履修状況を学位授与機構で審査し,申請者(学生)の学力審査を,高等専門学校の専攻科と大学評価・学位授与機構との協働で行うこととしたものである。
○:審査料は学位授与機構に支払うのか。
○:学位は高専そのものから与えられるようになる必要があるのか,それとも現状の学位授与機構からの授与形態でよいのか。また学位のための審査料を学生本人が負担することなく,学位授与機構があまねく学生に学位を授与できるようになることが最適な解となるのか。
○:企業の方にヒアリングしていて,教育成果として大学より良いと言っていただいた。学位授与機構が教育課程を認めて,学位授与を認める方法を考えていただくのが正当ではないか。
○:本科の4年5年と専攻科の1年2年を大学とみなすようにできるか。
○:以前,本会議の議論で「5年+2年の2年の専攻科は,それまでの5年と同じ高専で同じことを学ぶべきではない」という趣旨の発言があったと記憶している。専攻科の2年を別のところに出て勉強すると,幅の広い,より魅力的な学生になるという指摘と理解している。それが大学とは違った高専としての魅力が出るということではないか。
○:海外の企業のインターンシップができれば,いろんなことができる。専攻科というものは大学とは違うブランドを。
○:技科大の存在を考慮しないといけない。また,よくよく考えると大学に編入学する学生が増えるのかなと。専攻科の良いところは,同じ研究室で2年学べるというところ。それがなくなると,大学に行こうかという意識を持つ可能性があるのではないかと思う。
○:いいプログラムを専攻科の中にしっかりつくることをしないといけない。一校が行うのではなく,地方で集まって作らないといけない。
○:魅力的な専攻科を作る必要があるということだろう。
○:国立大学法人と違って剰余金の繰越しができない。その年度ごとに処理しないといけない。自由度が高くなるといい。
△:剰余金の繰越しは制度上ではできる。
○:高専を国立大学法人化するという点についてはどうか。
△:「教育」「研究」の記載があるのは国立大学法人,高専は教育を行うことを目的とする学校制度である。
○:専攻科の目的には研究が入っているのか。
△:学校教育法に研究を指導するという記載がされている。
○:研究を行わないというのはあり得ない。外部資金を何とか得ようと努力している。様々な制約条件が外れればいいのだが。
○:足かせになっているものがあるならば,どうすればそれを外すことができるのか知恵を出さないといけない。
○:研究というのはどのような研究であるか。
○:学術研究ではなく,応用開発の研究をやっている。

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