高等専門学校の充実に関する調査研究協力者会議(第6回) 議事要旨

1.日時

平成27年12月11日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省17階 17F1会議室

3.議題

  1. ヒアリングの実施について
  2. 論点整理について
  3. その他

4.出席者

委員

三島座長,内田委員,鎌土委員,萱島委員,輿委員,谷口委員,田原委員

文部科学省

常盤局長,佐野審議官,北山専門教育課長,関企画官,土生木視学官,山路課長補佐

オブザーバー

株式会社荏原製作所人材開発室服部室長

5.議事要旨

(委員:○,事務局:△)

議題(1)オブザーバーとして招聘した株式会社荏原製作所人材開発室服部室長から,発表があった。委員からの意見・質問は以下の通り

○:高専生を多く採用するようになったというが,どのような経緯があったのか。
服部氏:高専生の採用が減った時期があったが,それは,会社の経営方針が「事業の多角化」ということを掲げ,ものづくりだけではなく新エネルギー分野に事業を拡げ,アカデミックな大学院卒を多く採用することとしていたのではいかと考えられるが,現在では,機械メーカーとして回帰しており,高専卒若しくは高専を卒業後に大学等へ進学した者を多く採用するようにシフトしていっている。
○:一般的に高専生は英語が苦手であるという意見が聞かれるが,採用時に語学が弱いということを感じることがあるか。
服部氏:英語ができないということは余り問題視していない。英語が苦手だという新入社員をあえて海外ビジネスの部署に配属させることがあるが,英語はツールなので,すぐにできるようになる。そのため,採用時には全く気にしていない。
○:根拠のない劣等感を持っているのではないかと感じた高専卒の社員について,劣等感とは先生の教え方だと思う。学生と付き合っていく中で,克服できると感じている。教員の指導次第で劣等感を持つようにしていってしまっているのではないか。教員がエンカレッジしていけば劣等感はなくなる。改善していかないといけないと思う。
○:劣等感は教員の教え方のせいということか。
○:高専が感じているのは制度の上で大学の一つ下に位置づけられているということで,教員もそう意識してしまっている。そこを克服していかなければならない。
○:高専のいいところはたくさんある。そこを意識しないといけない。
○:差があるということではなく,ルートの違い,特色があるというところをプラスにだせればいいと思う。
○:処遇について,これまでの議論でも出ているのだが,高専卒は20歳,大学卒は22歳であり,2年遅れで同じカーブを描くと理解している。
服部氏:高専卒は各世代で活躍している。各世代で目立っている人,将来の役員候補に高専卒の割合が多い。現在役員で活躍している者もおり,キャリアモデルがあるというのが見えるのが良い。制度上平等だということよりも,実際にどうなのかというところが大事である。
○:新卒エンジニアの採用人数のグラフの中で,大学院卒はどれくらいいるか。また,採用時に大学院卒を多く採用するといったような方針があるか。
服部氏:棒グラフの白い部分に区切りがあるが,その上部が博士を含んだ大学院卒で,下部が大学卒である。
          採用時には荏原製作所で活躍できるかということが一番の判断材料。勿論(もちろん),それぞれの卒業段階の違いを考慮はするが,人で見ている。学部卒も修士も高専卒も同じ目で見る。面接も同一日に,修士,高専卒,学部卒を順不同で実施している。
○:工業高校卒業生の採用はどれくらいいるか。
服部氏:毎年20人くらい全国の高校からブルーカラーの採用をしている。能力と意欲と健康の掛け算で見るレベルは高い。伸び代が違う。ブルーカラーからホワイトカラーへ転換が課題。
○:会社によっては高専卒もそれと同じに扱われることがあって,これが問題。

議題(2)論点整理案について,事務局から説明ののち,意見交換がなされた。委員の意見・質問は以下の通り。

【修業年限・学位について】
  ○: 高専は特徴のある教育をやっている。7年制にしてしまってはぼやける。5年+2年の課程を維持して高専の強みを打ち出していくのが本筋。教育の内容や定員は中身に応じて備えなければならないが,社会の求める形に応じていけるよう,高専の特徴を鮮明にしていくべき。
  ○:現実として技術者は院卒にシフトし,高学歴化している。高専でもかなりの数が大学に行く。高専が通過点になっているのは制度上の問題ではないか。専攻科を正規の課程にして,7年間しっかり教育するのが大事。
  ○:高専は5年も地に足の着いた教育をしている。20歳で入って,企業の中で鍛えて,早く幹部になってほしい。いい人を早く鍛えたいという会社も多く,20歳で就職という選択肢もしっかりと残してほしい。
      20歳でいろいろな選択肢があるのは,学生にとっても良いのではないか。学生も5年間のうちに思いが変わる可能性がある。20歳で社会に出るオプションが残っていることは大事。
  ○:全部7年にしようとは考えていない,5年と併設するつもり。
  ○:専攻科部分はオプション教育ではなく,正規の課程にすべきか。
  ○:大学に短大を併設するような形と思っている。また7年制であっても,途中の5年でも出られるような制度も考えられる。
  ○:5年は残すべき。問題は専攻科である。設置基準もない,自ら学位も出せない。国際的にみると,工学の高等教育は22歳までの教育とみられているので,7年の教育課程を持っていないと高等教育機関としては通用しない。
  ○:高専のいいところは,早期に専門教育であることと,一貫教育であること。5年で教育が足りない実態があるから専攻科ができ,大学に進学している。5年と7年があることはそのニーズに応えるものではないか。
      技術的に可能なのかが次の問題になる。7なのか,5+2なのか,4+3なのか,7年間を極力切らず,一貫でどこまでやれるのか。
  ○:大学に入学する場合,高校までは基本教育,大学に入ってまた1,2年生で基本教育をやり,その後3・4年生で専門を学ぶ。実践教育は主として4年生の卒業研究だけ。
      高専は高校と同じ学年の段階から専門教育をやる。専攻科では融合教育やグローバル教育を行い,大学とは逆の順番になっている。ただし,インターンシップやグローバル教育などの基本教育の時間が不足している。
  ○:専攻科に,とって付けたものという印象はない。本科と専攻科を分けて考える必要はない。5年間しっかりやって,2年で好きなこと,違うことをやればいい。
      5+2年の課程で十分。学位は学位授与機構で出ているのだから,そこをしっかりやっておけばいい。
      5年と7年の併設には違和感がある。大学と同じと思われて,特徴を打ち出せなくなるのでは。もっと独自性を明確にすべき。
  ○:専攻科には設置基準がない。つまり,人と施設の保証がないということ。充実せよと言っても現実にはできない。
  ○:教育の中身については授与機構でしっかり理解していただければ良い。
  ○:自ら学位を出せない。準学士は単に称号である。
      外国人留学生から見ても,学位が取れないために敬遠されたり,卒業しても結局大学に進学してしまう。
  ○:自分たちでは学位を出せないということでなく,授与機構に申請すれば学位をもらえることを説明していけばいい。
  ○:学位授与機関という格の問題ということか。
  ○:大学は研究,知識・情報だけでなく,未知のものに着手することで学位を出しているということであれば,高専の専攻科がそれと同等の研究ができるかどうかがポイント。
  ○:そのとおり。専攻科は工学部の研究に近い。大学では学術,高専では応用・開発という違いはあるが,その点については授与機構は評価している。
      しかし,特例適用認定では,大学と同じように教員の研究論文が審査される。大学とは違う独自の方向性が必要なのではないか。
  ○:職業大学との区別もしていかなければならない。
      高専であることを明確にするために,授与機構の方が変わること,学位の基準を含めて高専らしさを保てるようにすることが筋ではないか。
  ○:専攻科の制度は,格が曖昧な状態。そこをきちんとできるのであれば,あるいは授与機構による学位の中身をきちんと整理できるのであれば,5+2の方が,高専の特徴ははっきりする。専攻科の位置付けもしっかりしたものになる。
  ○:この会議では,5+2を基本とする流れのような雰囲気だが,7年制の可能性も残していただきたい。5年と7年の併置にもメリットはある。
  ○:まだ結論は出ていない。
  ○:7年一貫の教育課程を設計できるメリットは大きい。例えば海外インターンなどを下の学年で実施することができる。
  ○:東工大では,学部卒業生の90%が進学する。高専では就職が6割,進学が4割。おっしゃる意味は分かる。5年と2年を連結した方が,カリキュラムも通して見られる。
  ○:4年,5年のときにインターンに出したって言い。インターンシップは専攻科でとリジッドに考える必要はないだろう。
  ○:中学から入ってくる段階で7年を選ぶ,というのは危険。2年次や3年次で7年コースを選べるような幅があっていい。
      大学では大卒より大学院卒にシフトしているが,高専を22歳で卒業する,そこに本当に需要があるのか。最初から7年の課程を作ってしまうのではなく,途中で選べるようにする方がいい。
      また,専攻科は現状20人くらいの規模。そこまでいろいろなことが考えられるのか。
○:複数の高専が連携して取り組む考え方もある。

【規模・配置について】
  ○:高専を縮小しようという考え方はないであろう。
  ○:九州を例に挙げれば,高専は地域の企業・産業の発展に大きく寄与している。地域・地場産業を支えるという観点からの配置が必要。人口減少に伴い学生が集まらなくなる,質が保てなくなるという点は考えなければならないが。
  ○:国の予算を増やすのは難しい。再配置も考えなければならないだろうか。
  ○:歴史的に言えば,国の政策のレベルで考えて配置されてきた。これからの時代は地域をどうするかが問われる。高専は概ね1県に1校配置されているので,地場産業に卒業生を送り込み,連携して世界企業に発展させるなど,地域創生の拠点になり得る点でも重要。
  ○:高専制度ができたとき,工業分野,機械工学科,電気工学科はインフラの整備のために作られた。北海道で言えば農業など,地域によっては「工業」を外してもいいのかもしれない。
  ○:商業高校と取組を進めている高専もあるが,ただものを作るのでなく,売れるものを作るという考え方に変わってくる。
  ○:高専の力を発揮するという観点からは,減らす方向はない。一方で,増やせるだけの国の予算はない。今の規模を維持しながら,地域の特色,新たな高専の特徴を出していくという方向なのだろう。
  ○:少し前の議論で,高専は高校と同じイメージでとらえられているように聞こえる。大学と連携するようなイメージもお考えに入れてほしい。
  ○:公立高専はいずれも大都市にあるが埼玉,神奈川など,首都圏周りには高専は未設置。国ではなくて県が作ることもありうるので山梨では工業高校を高専にしようという議論もあるようだが,県が新たな高専を作るのは財政的には厳しい。
  ○:大学との連携が大事。
  ○:地域企業の評価は高い。地域企業に長期インターンに行くと,企業で解決できなかった問題を学生が解決してしまうようなことが起きている。高専は地域活性化の拠点になる可能性を示す例である。
  ○:国立高専の組織形態についてはどうか。
  ○:外部資金の獲得には研究が大事だが,教育が忙しく時間外にしか研究ができない。しかし,裁量労働制が取れないことが大きな制約となっている。
  ○:今とは違う形態にできればいい。今のままではだめで,専攻科の組織を工夫する等して教員は裁量労働にしないと研究はできない。
  ○:国立大学のようにすることはできるのか。
  △:総務省と検討することになる。
  ○:予算について。運営費交付金の効率化係数はどのくらいかかっているのか。
  △:大学と同じ1%だが,一般管理費の物件費にのみ3%がかかっている。金額では毎年5千万円程度になる。
      一方で,財務当局からは,一般の独立行政法人にはない教育に対する配慮がなされている,と言われている。
  ○:高専では,競争的資金を獲得するのは大変。
  ○:専攻科の目的規定には,研究指導が入っているが,本科にはない。教育を行う,となっている。研究を目的にすると,法改正になるのか。
  ○:専攻科を充実していく中で うまく解決する方法を見い出すのが現実的ではないか。
(以上)

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