高等専門学校の充実に関する調査研究協力者会議(第3回) 議事要旨

1.日時

平成27年7月14日(火曜日)14時00分から16時00分

2.場所

文部科学省5階5F2会議室

3.議題

  1. ヒアリングの実施について
  2. 調査について
  3. その他

4.出席者

委員

三島座長,天羽副座長,石鍋委員,内田委員,大川委員,萱島委員,小島委員,斉藤委員,谷口委員,田原委員,馬場委員,棟方委員

文部科学省

北山専門教育課長,関専門教育課企画官,土生木視学官,山路専門教育課課長補佐

5.議事要旨

議題に先立って,事務局の人事異動について紹介があった。(○:委員,△:事務局)

 

議題(1)ヒアリングの実施について


萱島委員,内田委員,小島委員から,それぞれ資料1から資料3に基づき,発表があった。委員からの意見・質問は以下の通り。

[1]開発途上国における教育協力の現状の説明と今後の高等専門学校制度の海外展開に向けた示唆(萱島委員)

○:各国で実践的教育のニーズが高まっているとのこと。日本でも実践的教育のニーズが高まっているが,各国のニーズと日本のニーズとの違いはどのようなところにあるか。
萱島委員:共通するところがあるのではないかと思っている。共通しているのは,現場で役に立つ実践的技術者が求められているということ。今まで,開発途上国の関係者に高専の教育を見せたり,高専の先生が現地に行って活動したりする中で,高専への評価は高いが,評価されているのはこの点。一方で,開発途上国では資格や職階による分業が明確で,エンジニアが現場に足を運ばないという現実もある。
○:例えば,電子工学の技術者といったような特定の分野でのニーズが強いと思った方が良いのか。
萱島委員:JICAのプロジェクトでは電気電子の技術者へのニーズが多く,今までの実績は電気電子の技術者養成に集中していた。
○:高等専門学校とJICAの連携事業について,事業終了後のフォローアップは,どのようになっているか。
萱島委員:インドネシアとタイでは,それぞれの機関は自立してJICAの事業は終了し,協力に参加した高専や大学が連携協定を結ぶなどして独自に交流を続けている。トルコについては,終了したばかりであり,ベトナムは実施中。
○:日本のサポートが終わり,今後支援しなくても,それぞれの国で自立してそれぞれのやり方で事業を続けていけるようになっているということか。
萱島委員:いずれのプロジェクトの対象機関も自立して運営されており,それぞれの国内で他の教育機関への指導的役割やモデル的に機能を果たしていることが多い。
○:現地の国では,当該事業は文部科学省のような教育担当の政治機関で行っているか。
萱島委員:国によって異なる。教育省が所管している場合も,専門分野の技術官庁が所管している場合もある。技術教育の特徴として,所管が多くの官庁に分散し,統一的な政策や教育/訓練システムに欠けることが問題である。
○:国によって考え方が違うので,それに合わせて教育の在り方を整理しないといけない。
○:p1の開発途上国の技術教育の現状について,開発途上国はどの国を指しているのか。また,日本の教育制度に合わせて整理されていると思うが,各国の教育制度は異なっており,高専輸出については,現地のニーズと合わせていかないといけないと思うが。
萱島委員:OECDのDACが規定している「開発途上国」で整理している。高等教育が12年間の初中等教育の後に行われるのは多くの国で共通だが,技術教育は主に後期中等教育から高等教育の1~2年目の間で行われ多様である。日本でも専門学校や各種学校のような教育機関もあるように,所管機関,ルール,システム,目的が違う機関を含んでおり,実態は多様である。
○:高専として開発途上国だけと連携していくか,他の国をどのように考えていくか。国際化戦略を立てるのが重要だと考える。
萱島委員:JICAの事業は開発途上国が中心ではあるが,高専の活動の中では先進国との関係もある。高専の中でどのように国際化戦略を体系立てているかである。
○:国際協力をすることによって日本の学生にどのような貢献ができるか。また,高専の教員のうち何人くらいが事業に参加したのか,今後どのようにしていくか。
萱島委員:日本の学生に対しては,先進国と開発途上国を知ることで多様な世界を知ることができるということが挙げられる。また,高専の教員について,資料中に記載の専門家の人数は大学,高専の教員を含めた記載であり,最近は長期の教員の派遣は減少傾向である。また,高専教員の派遣は学校の休み期間が中心で,更に近年は教員が多忙になっていて,国際協力に向ける余力が減っているといわれている。
○:事業終了後に,親日派が多くなったなど日本との関係が発展していく状況があるのか。
萱島委員:JICAの事業で日本の高専教員が現地で活動していることや,日本で学位を取得した現地の教員も多く,協力対象の学校は大変親日的になっている。また,JICAの事業が終わっても,支援した高専と連携協定や教員とのつながりを持っていることなどで関係が続いている。

[2]国立高専の現状について(内田委員)

○:高専に関して,その制度を変えられるかということを含めて,重大な事項について多く説明があった。大学とどう違うかということや,高専とは何かということなど大変重要な話を含んでいると感じた。予算の件については,企業から資金を得られないかなど,根本的ないくつかの問題を考えないといけない。高専を機能分化して役割分担するのかとか,高専の数が多いのではないかというような議論になりかねない話もあって,多くの深刻な課題も含まれていて,改革についても制度的なものと教育の内容に関することと分けて考えないといけない。
○:教育の質が高いというブランドを大事にして,高専の独自性をどう出すか,国内や海外でどのように貢献するか。大学で行っている基礎研究ではなくて,日本の強さであるものづくり,つまり,研究を社会に出していくためにプロセス技術づくりが必要。技術立国と言われるからにはプロセス技術がしっかりしていなければならない。プロセス技術を高専の中で学べると,大学とは全く違うものが出来上がるのではないかと思う。ブロック制については支持しているが,求人など窓口を一元化するなど,制度の改革はまだまだできると感じている。
内田委員:教育機関の重要な点は,各地域に学校があることで近くで教育を受けられるという仕組みがひとつ挙げられる。各県に高専があることは県の価値を高めていると考える。求人票についてはブロック化してもよいと思う。地域から人材を吸い上げて,場合によっては,首都圏や各地に人材を輩出すること等,効率的になっていくと考える。
○:p9について,大学学部卒業生と専攻科修了生との比較について指標が0.5ずつなので,あまり差がないように見受けられる。また,p16について,民間企業であればとても大変な状況である。今後5年間のアクションプランがあるか。
内田委員:アクションプランは現在,議論の途中である。教育の質,特に実験研修は落とせないので教員の能力や数は必要なところ。それを減らさないようにどのようにしていくか。
○:国立大学は運営経費の一部は研究費で補えるが,教育系の大学と同様に高専は非常に厳しい。企業からの資金を受け入れられればよいが。何らかの形で他から資金を受け入れられるような仕組みを作らないと。
○:国立大学では現在経営のために利益を生む事業をできないか検討しているところ。
○:説明の中で大変重要な課題が紹介されているが,専攻科の位置づけ,学位授与権,高専の中での教育,といった具体的な内容というのは,制度設計に係る大きな問題に当たるが,今後,協力者会議の中で話し合っていくことになるか。
○:高専をどのようにしていくかということが大事であり,現在の在り方も含めて,これらの課題も議論していくことになると考えている。

[3]私立高専の現状について(小島委員)

○:入試の倍率,卒業生の進路状況など国立と同様であるか。
小島委員:学生が定員を割ることはない。卒業生の進路決定率は95%くらいである。入口と出口に問題はない。教育に係る資金についての問題は私立にもある。
○:社会の要請に対して対応が早いということだったが,社会に対して柔軟に対応できるということについて国立と私立との違いはあるのだろうか。
小島委員:私立高専は一つ一つの学校が単体であり,学校法人,理事会の決定事項によって対応できるので,フットワークが軽いとはいえると思う。
○:教員のうち,どれくらいの人数が博士号を持っているか。
小島委員:45%くらいである。
○:教える技術のベースとして博士号を持っていることが重要なのか。
小島委員:高等教育機関としてのレベルを維持しなければならないことや,高度な教育を行う上で重要であるといえるのではないだろうか。
○:博士号を持っていれば(教える技術がなくても)よいということではないが,大学ではレベルを測る一つの基準として博士号を持っていることが最低限必要であるという考え方である。一方では,それに代わる実務教員もいる。
○:産業が変わっても対応できるというのが高専の強みである。地域から実務家を教員として積極的に雇用してもいいのではないか。
○:教員については設置基準で決まっている。国立大学でも設置基準を緩めるという議論も出てきている。基準が現状に即していない面もあるが,特に高専のように産業の変化に対応できるような教員がもっといてもよいのかなと思う。
○:工学は基礎が占める重要性が非常に大きい。また,最先端の技術に関わるときや,大学との連携,学会との連携などで博士号を持つ教員の必要性は高い。先進諸国で話をするときには博士号を持っているかもってないかで対応してくれる相手が全く違ってくるように,世界標準のような問題もある。ヨーロッパでの職業教育でも博士号が必要とされている。日本では,職業教育の議論の中では博士号はいらないという意見もあるが,北欧では博士号を持った上で社会的経験も持っていないと主要教員になれないということもある。博士号を持つということが絶対ではないが,全く不要ということでも困る。
○:地域に博士号を持った人を集めるのは大変だが,企業をリタイアした実務家は多く集まると思う。地域の実務家を高専に迎えていくと人件費も抑えられるのではないか。博士号を持っていないと対外的に難しいのは,ごく一部の人たちではないかと思う。
○:いろいろな考え方があると思う。例えばアメリカのある企業で,発明では博士号を持っていない人の方がたくさん出していると言われている。しかし,それでも研究開発に携わる人は博士号を持つことが必要条件とされている。博士号を持つ人は考え方や論理の組み立て方,情報の整理の仕方,人との情報共有の仕方などの点で世界標準的な訓練がされているためと思われる。
○:p11,p14,p15に記載されているように,ものづくりについて企業からの評価が低いということが意外であった。
○:調査においては,「ものづくり」という言葉がどのような意味で質問され,どのような意味で回答されたかがよくわかるように,調査をかける上では,「ものづくり」をどのように捉えて,そのように回答したかをわかるようにすることが大切である。

 

議題(2)調査について


前回の会議において審議された調査の実施について,事務局から資料4に基づき,調査項目の案について説明があった。委員からの意見・質問は以下の通り。

○:高専の強みがどこにあるのかわかるような項目を入れられないか。特に,各高専がそれぞれの強みをどのように認識しているのかがわかるとよい
○:中学校では,多くは1年次から高校や大学などの進路について調べる授業があり,3年次には進路が決定していることが多い。高専のPRは1年次を中心にして,情報が広まるようにすることが良い。

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