参考資料2 共通到達度確認試験等に関する調査検討経過報告

平成25年11月22日                   
  中央教育審議会大学分科会      
法科大学院特別委員会            
共通到達度確認試験等に関する
検討ワーキング・グループ         

 

1 共通到達度確認試験(仮称)の基本設計について

1.基本的考え方

  • 本年7月の法曹養成制度関係閣僚会議(以下「閣僚会議」という。)決定において、「文部科学省において、中教審の審議を踏まえ、法学未修者の教育の質の保証の観点から法科大学院が共通して客観的かつ厳格に進級判定を行う仕組みとして、「共通到達度確認試験(仮称)」の早期実現を目指すとともに、これを既修者にも活用できるものとしての基本設計・実施について、2年以内に検討を行う」とされたことを受け、本ワーキンググループにおいて調査検討した結果、以下の通り、共通到達度確認試験(仮称)(以下「確認試験」という。)の目的、内容、実施方法等の基本設計について示すこととする。
  • なお、確認試験は、プロセスとしての法曹養成の中核的機関である法科大学院において、その教育の質を客観的に担保していくための仕組みとして考えられるものである。このような認識の下、ここで示す基本設計については、確認試験が法科大学院の教育の質の向上に資するため、実際の教育現場において効率的かつ効果的に機能するものとなるよう、今後、可及的速やかに試行に着手することとし、その結果も踏まえて、本格的実施に向けた具体的な準備を行い、その過程において、適宜修正・変更を行うことを前提としているものである。

2.目的

  • 確認試験については、以下の2つの目的から実施することとする。

1法科大学院の教育課程において学修した内容に関し、各法科大学院が進級時に下記に掲げる学生の到達度等を確認し、その後の学修・進路指導や進級判定等に活用すること

    [2年次進級時]
  • 1年次の学修を通じて得られる基本的な「知識」及び「法的思考力」の修得の程度
  • 2年次以降の学修に対する「適性」
    [3年次進級時]
  • 2年次までの学修を通じて得られる「知識」及び、その知識を活用して課題を発見、分析、解決するために必要な「法的思考力」の修得の程度

2学生が全国規模の比較の中で自らの学修到達度を把握することを通じ、その後の学修の進め方等の判断材料として活用すること 
 

 3.試験の内容、実施方法等

(1)時期、対象者及び試験科目

  • 学修段階に応じた確認試験については、学生が上級年次に進級する際に試験を受験することを基本にしつつ、その実施時期、対象者、試験科目について本格実施に向けた試行を繰り返す中で、更に具体的に検討を進める。

    実施時期

    対象者

    試験科目

     1年次の学年末

     法学未修者コースの1年次在籍者

     憲法、民法、刑法(共通)

     2年次の学年末

     法学未修者コースの2年次在籍者
     法学既修者コースの1年次在籍者

     憲法、民法、刑法(共通)
     その他の科目
     (民事訴訟法、刑事訴訟法、商法、行政法)

  • 確認試験については、関係閣僚会議の決定に基づき、「法科大学院が共通して客観的かつ厳格に進級判定を行う仕組み」として設計することとし、試験の実施時期、対象者、試験科目は、上記の表に記すところを基本とする。
  • なお、具体的な制度設計については、今後の試行を通じて、試験の難易度を含めて、検証し、必要な検討を進める。その際、3年次の途中段階での実施や、試験科目の範囲をどうするか等についての意見があったことにも留意する。

 (2)試験の実施・位置付け等

  • 本格実施時においては、全ての法科大学院の学生が確認試験を受験することを原則とする。
  • 試験問題の作成や難易度の調整など、確認試験の実施に必要な作業に関し、全ての法科大学院の協力を得る体制を構築することを原則とする。その際、これまでの学内外の各種試験等での経験・蓄積を活用することが考えられる。
  • 試験結果については、当面、その後の学修・進路指導等の参考資料として活用することとなるが、試行等を通じて大学関係者の理解を得つつ、上記2.の目的に即して適切な活用を図る。
  • 確認試験の実施に伴い、各法科大学院が行うカリキュラム編成・授業科目の履修順序の変更等を必要以上にせまられないよう配慮することが必要である。

(3)試験の難易度

  • 確認試験の難易度は、法科大学院における共通的な到達目標モデルで示された内容を考慮しつつ、確認試験の目的に照らして適切なものとなるよう設定・調整を行う。その際、共通的な到達目標モデルが法科大学院の修了時点において共通に到達すべき目標を明らかにすることを目指したものであることを踏まえ、確認試験は、学修途上にある学生に対して実施されるものとして適切な難易度となるよう留意することが必要である。
  • 1年次の学年末と2年次の学年末の双方で実施する試験科目については、
     1出題範囲及び試験問題は共通とし、受験年次に応じて到達度の目標を分けて判定する方法
     2出題範囲は共通とするが、難易度の異なる試験を別途設定して、その到達度を判定する方法
     3出題範囲の異なる試験を別途設定して、それぞれの到達度を判定する方法
    が考えられるが、まずは、速やかな着手が可能となる1の方法により、1年次の確認試験の試行に着手しつつ、併せて2年次の確認試験の難易度を検討し、試行の状況に応じて、試験の難易度や出題の仕方について検討を行う。
  • また、各大学における学修の進度の差や各法律科目ごとの性質の違いを考慮すると、法律科目によって異なる試験の方法を取ることが適切である可能性もあることから、最終的にどのような方法を採用するかについては、試行の中で、更に具体的に検討を進める必要がある。

(4)試験方式

  • 確認試験の方式について、現在、類似する試験が先行して実施されている医学系等の事例として、試験問題の難易度調整・採点等の設定や、大学や学生の実施に係る自由度の確保などの観点から、コンピュータを活用した試験方式(CBT方式)が採用されているところである。コンピュータを活用した場合には、出題の仕方について、例えば以下のような方式を採用する可能性がある。
    • 知識を問う問題は、多肢選択形式・択一式を基本
    • 法的思考力を問う問題は、多肢選択形式・択一式、順次解答連問方式を基本
  • CBT方式には、上記の利点が考えられる一方で、多数のストック問題の作成や精選等の作業負担、コンピュータシステムの導入・維持管理の負担などの難点もあることを踏まえ、確認試験の方式については、法科大学院における教育の特性や受験者数の規模にも十分配慮しつつ、紙媒体による試験実施の可能性も含め、試行の中で、更に具体的に検討する必要がある。
  • このため、試行開始時点においては、まず、試験問題の作成・精選や難易度の調整方法などを検証するため、紙媒体等による簡易な試験方式により速やかに試行に着手することが現実的と考える。

(5)司法試験との関係

  • 確認試験の目的は上記2.に述べた通りであり、確認試験の実施と司法試験短答式試験の免除とは当然に関係づけられるものではなく、法科大学院における教育のあるべき姿と司法試験の試験科目の改正等の動向も踏まえつつ、例えば、2年次の学年末の確認試験の結果に応じて、一定の成績を達成した者には司法試験短答式試験を免除するなど、司法試験の短答式試験との具体的な関係づけの方法について法務省等関係省庁と連携しながら検討・整理する必要がある。その際、確認試験と司法試験短答式試験の制度趣旨の相違を考慮すると双方の試験科目が一致する必然性はないと考えられるが、司法試験との関係については、確認試験の試行の結果と司法試験の合格状況との関係等を検証・分析しながら、法科大学院における学修が過度に知識偏重なものとならないよう十分留意しつつ検討を行う必要がある。

(6)留意事項

  • 特に、法学未修者にとって、自身の到達度を把握することがその後の学修を進める際の一助となることや、教員にとって、全国的な水準の中で学生の学修状況を理解することがその後の教育の改善に向けた取組に繋がることなど、法学未修者教育の改善に資する効果的な手段としても活用されるよう留意する必要がある。
  • その際、法科大学院生の学修が、確認試験への対策に偏らないように、また、過度に知識偏重なものとならないように特に留意する必要がある。また、法学未修者の学修進度やその修得状況については、法学既修者としての認定を経た法学既修者とは異なることから、2年次の学年末に実施することが予定される確認試験においても、両者の差異に留意して、試行の実施や詳細な制度設計を行う必要がある。
  • また、試行を通じた確認試験制度の定着度合に応じ、確認試験と法科大学院統一適性試験や法学既修者認定試験の関係に関し、それぞれ機能・役割を比較考慮し、その在り方について改めて検討する必要がある。

4.本格実施に向けた試行について

  • 確認試験の具体化に当たっては、一定期間の「試行」による検証作業を通じて改善を図るサイクルが不可欠なことから、体制の在り方も含め、速やかに試行に向けた準備に着手する必要がある。 
    (試行を通じて準備・検証すべき主な事項)
    • 確認試験で判定すべき到達度の確認、共通理解
    • 確認試験の問題の作成、精選、難易度の調整
    • 確認試験の実施方法・実施時期の確認
    • 確認試験結果を学修指導・進路指導に活用する方法 等
  • その際、1年次の学年末と2年次の学年末の双方で実施する試験科目から試験の検討・実施に着手し、この試行結果等を踏まえ、更に他の法律科目の検討を進める必要がある。
  • 未修者教育の改善は喫緊の課題であり、1年次の学年末に実施する確認試験については、より早期に本格実施に移行できるようにすることが必要である。
  • また、試験問題の作成や確認試験の実施・準備の体制など、試行の準備段階から、法科大学院関係者を中核としつつ、法曹三者の理解と協力を得ながら進めることが必要である。

2 法学未修者が基本的な法律科目をより重点的に学ぶことを可能とするための仕組みについて

  • これまでも法律基本科目の指導の充実を図る観点から、特に、法学未修者1年次の法律基本科目の履修登録単位数を6単位まで増加できるよう平成22年に制度改正が行われているが、現在の法学未修者の学修状況にも配慮しつつ、法学未修者がこれまでより多く法律基本科目の履修が可能となるよう単位数の増加及び配当年次の在り方について見直しを検討することが考えられる。
  • また、多様な学修経験や実務経験・社会経験等を有する法学未修者には展開・先端科目群などの一部履修を軽減することなどの措置を講じることが考えられる。
  • あわせて、このような取組を適正に評価できるよう、法科大学院の授業科目群ごとの履修のバランスや実務家教員の授業の担当範囲などに関し、認証評価機関の評価基準等の見直しが行われるようにする必要がある。
  • 法学未修者の法律基本科目の学修理解を深めることに資するため、法学部や法学研究科など既存の教育研究組織が提供する授業科目を補習的に活用することが考えられる。

3 学生の適性等に応じ法曹以外への進路を目指す者に対する取組の充実について

  • 法科大学院修了後に、法学的素養を活かす公務や企業法務などの分野へ進むことを希望する者に対し、進路指導等を通じ、民間企業や地方公共団体等への就職支援の充実方策を検討し、実施する必要がある。
  • その際、法科大学院全体、また各法科大学院における取組として、エクスターンシップ等の授業を行う中で、民間企業や地方公共団体等とのネットワークを構築し、法科大学院教育の意義や内容を広く紹介し、「法務博士(専門職)」の社会的有用性が広く社会に認められることを目指すべきである。
  • 法科大学院入学者のうち、入学後の学修を通じて企業・官公庁など法曹以外の法律に関わる職種へ進むことを希望する者に対し、法科大学院在学中においても、きめ細やかな進路指導に努めること等の支援を行うことが必要である。その際、個々の学生の希望や適性に応じてより適切な教育を提供できる他の研究科(専攻)への転研究科(転専攻)の促進や、各大学の既存研究科等の授業科目を活用しながら、法曹以外の公務、民間向けの人材育成を行う新たなコースを設定することや法科大学院で培ったノウハウを活用した新たな教育組織への改組転換を図ることも考えられる。その際、その教育内容にふさわしい学位の在り方を検討することが必要である。

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