資料1 第2回共通到達度確認試験試行試験の基本的な方向性(案)

平成27年7月6日
共通到達度確認試験システムの構築に向けた調査検討会議

はじめに

  • 共通到達度確認試験(仮称)(以下、「確認試験」という。)については、中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会(以下、「特別委員会」という。)のもとに設けられた「法学未修者教育の充実のための検討ワーキング・グループ(平成24年)」において、未修者教育の質保証を図る観点から構想されたものであるが、平成25年7月の関係閣僚会議決定においても、これを既修者にも適用できるものとして、その基本設計を検討することとされたところである。
  • その後、特別委員会のもとに設けられた「共通到達度確認試験等に関する検討ワーキング・グループ(平成25年)」(以下、「中教審WG」という。)において基本設計が示され、また、昨年11月に文部科学省から公表した法科大学院の総合的な改善方策においては、確認試験の平成30年度の本格実施を視野に、平成26年度から4回の試行を実施することとしたところである。
  • 本調査検討会議では、確認試験の本格実施までの間、試行を重ねることでその内容を発展させていくため、本年3月に実施された第1回試行試験により得られた課題を踏まえつつ、今年度の試行試験の大局的な方向性を以下のとおり取りまとめることとする。

1.第2回試行試験の主目的

  • 全4回(26~29年度)が予定されている試行試験の2回目であることを踏まえ、今回の試行を通じて検証・分析すべき主な点を以下のとおりとする。
    • 1年次学生と2年次学生とを対象とし、全ての法科大学院生が到達すべき学修の水準を確認するための試験内容・実施方式等について
    • 試験実施後に教員がその後の学修・進路指導に活用するための情報把握や、学生自身がその後の学修の進め方等の判断材料として活用するための情報発信のあり方について
  • 本格実施の際に法科大学院全体が実施主体となることを念頭に置きながら、文部科学省も実施体制の構築に関与することとする。

考え方

  • 基本設計に示されているとおり、確認試験は、
    1. 法科大学院の教育課程において学修した内容に関し、各法科大学院が進級時に学生の到達度等を確認し、その後の学修指導等に活用すること
    2. 学生が全国規模の比較の中で自らの学修到達度を把握することを通じ、その後の学修の進め方等の判断材料として活用すること
    の2点を目的としており、これらの目的を踏まえて確認試験が効果的に機能するものとなるよう、本格実施に向けて試行を重ねていく必要がある。
  • 本年度の試行試験は全4回が予定されている中の2回目であることから、上記のとおり検証・分析すべき課題を重点化することで、本格実施に向けた課題を効率的・効果的に検証することとする。
  • また、本格実施が行われるまでに、法科大学院が自律的に試験の企画・運営を行うことができるよう、他学部等で実施されている共用試験も参考にしながら、第2回試行試験については、文部科学省が実施方針・実施細目等の作成に一定の役割を果たすこととする。

2.対象者・試験科目

  • 対象者は、1年次(法学未修者コース)及び2年次(法学未修者コース及び法学既修者コース)の学生とする。
  • 試験科目は、1年次・2年次とも、憲法・民法・刑法の3科目とする。

考え方

  • 法学未修者の質保証を早急に進める観点からは、第1回試行試験と同様に1年次学生に対象を限定することも考えられるが、平成30年度からの本格実施を視野に入れると、今年度から対象者を2年次学生にも拡大する必要がある。
  • 試験科目については、第1回試行試験と同様に憲法・民法・刑法の3科目とし、精度を高めていくこととするが、第3回試行試験において他の科目(商法、民事訴訟法、刑事訴訟法、行政法)について試験を実施することを念頭に、本調査検討会議において当該科目の試行試験の在り方を継続して検討する。

3.出題範囲・難易度

  • 第2回目の試行となる今回の試験については、1年次学生と2年次学生で同一の問題を使用することを原則とする。
  • 今後の検証に資するよう、出題範囲を限定せず、難易度を含め多様な問題を出題することとする。
  • 今年度の作問に当たっては、司法試験短答式試験との難易度の差異の在り方については特段考慮せず、法科大学院の教育課程や到達目標モデルに即した問題とすることとする。

考え方

  • 第2回試行試験では、基本設計において示された到達度の水準を踏まえつつ、2年次までの学修を通じて到達すべき学修の水準を確認するために適切な問題の在り方を検討する必要がある。
  • また、本格実施までには、年次により問題を分けることの是非、確認試験と各法科大学院において実施される学年末試験との役割分担、「共通的な到達目標モデル(第二次案修正案)」との関係性など、出題範囲や難易度等に関して解決すべき課題があるところ、今後、本調査検討会議においてその検証が行えるよう、試行を通じて必要な情報を整理しておくことが望ましい。
  • そのため、今回の試行試験については、1年次学生と2年次学生で同一の問題を使用することを原則とするとともに、問題の内容としては、思考力を確認する問題を含め多様なものとし、所属するコースや年次毎に結果を分析することとする。また、検証の参考となるよう、前回試行試験の結果も参照し、過度に難しい問題とならないよう留意しつつ、問題の難易度の多様性にも配慮することとする(「4.受験者情報の把握・取扱い」も参照)。
  • なお、「法曹養成制度改革の更なる推進について(平成27年6月30日 法曹養成制度改革推進会議)」では、将来的に確認試験の結果に応じて司法試験短答式試験を免除することを想定することについても記載されており、本格実施の際にはこのことについても十分配慮する必要がある。

4.受験者情報の把握・取扱い

  • 各問題の難易度等の適切性を検証できるよう、試行試験の問題ごとに、
    • 法学未修者・1年次
    • 法学未修者・2年次
    • 法学既修者・2年次
    に区別して正答率等を把握するとともに、個人情報の取扱に留意しつつ、個別の受験者の情報を各法科大学院に伝達することとする。
  • ただし、試行段階にあることを考慮し、今年度の試行結果は受験者の進級判定に活用せず、確認試験の結果分析のみに使用することとする。

考え方

  • 確認試験の本格実施に向けて、精緻な分析を行うためには、個人情報の保護に配慮しつつも、確認試験の結果と法科大学院の学修状況等との関係性を整理するため、「受験者個々の試験結果に関する情報(以下、「受験者情報」という。)を把握することが必要になる。
  • 更に、将来的な司法試験短答式試験の免除も想定しつつ、司法試験の合格状況も含めた相関関係を分析できるようにすることが必要である。
  • そのため、情報セキュリティに十分に留意した上で、受験者情報を各法科大学院に適切に伝達することとする。
  • 特に、受験者情報については、確認試験の結果分析に用いること以外の用途には使用できないのは当然のことであり、進級判定への活用等に流用されることがないよう、十分な管理を行うものとする。
  • なお、試験結果の公表については、これを進級判定等に流用するとの誤解を学生に与えないようにするため、4月に行うことも含め、時期を検討する必要があると考えられる。

5.実施方式

  • 第2回試行試験については、各法科大学院共通の日程で、年度末に実施する。
  • 解答方式はマークシート方式とする。

考え方

  • 第2回試行試験については、本年度末(平成28年1月~3月)に実施することとし、学事日程や進級判定への活用の観点から適切な日程を検証するものとする。日程については、各法科大学院から意向を聴取の上、可能な限り早期に実施日程を確定するものとする。
  • マークシートによる解答方式においても、基本的な知識や思考力については十分に確認可能であるが、発展的・応用的な思考能力については、問題作成の工夫のみで十分に確認可能となるかは検証が必要となる。
  • そのため、今年度の試行試験はマークシート方式による実施を継続し、学修到達度の判定が可能かどうか、難易度や出題範囲とセットで検証を行うこととする。
  • また、CBT形式については、問題作成量が膨大となり負担が相当に増加すること、かかる経費と収入との関係等解決すべき課題が多いことから、第2回試行試験の結果や将来的な運営主体の在り方と併せて検討することとする。

6.試験結果の活用(情報発信)

  • 試験実施後の適切な時期に、各設問の解説や全体分布等の情報を公表することとする。

考え方

  • 受験者が試験結果をその後の学修に適切に活用していくためには、全国レベルにおける得点分布等とともに、各設問における対象となる年次などの出題趣旨や背景、問題の解説等についても発信していくことが必要であると考えられる。
  • また、実際に指導にあたる教員にとっても、学修の盲点等を把握し、その後の学修指導に活かせるようにするため、誤答傾向等を整理できるようにしておくことが必要であると考えられる。
  • そのため、第2回試行試験の解説を作成する際には、実際の作業負担を考慮しつつ、上記2点を満たせる試験結果の公表の在り方について検討を行うものとする。また、学修定着度に課題がある学生についても、適切な形で復習が可能となる解説があることが望ましい。

7.その他

  • 第2回試行試験の問題作成等については、第1回試行試験により得られた成果や課題等の蓄積を活かすため、東京大学、京都大学、一橋大学を中核としつつ、各法科大学院の協力の下に実施するものとする。
  • また、実施方針や実施細目等については、本調査検討会議の下にワーキング・グループを設けて検討を進めていくものとする。
  • 今後の試験のあり方の検討に資するよう、試行試験に参加した学生・法科大学院からの意見を聴取することとする。

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高等教育局専門教育課専門職大学院室法科大学院係

(高等教育局専門教育課専門職大学院室法科大学院係)