資料1‐3 今後の試行実施に向けた課題について

1 試行試験の内容についての論点

今回の試行試験の出題方針

  • 「共通的な到達目標モデル(第二次案修正案)(以下、「到達目標モデル」)」及び問題作成担当者が所属する法科大学院における到達目標を参照しつつ、未修1年次学生にとって必要とされるべき問題を出題。
  • これまでに実施された試験との比較・検証をあわせて行うことが有益であると考えられるため、各科目の一定数の問題については、過去の法学既修者試験で出題された問題を使用。

試行試験の難易度についての課題

  • 総受験者の平均点は、217.61点(350点満点・得点率62.2%)となっており、仮に平均的な層の学生が試行試験を受験したものと仮定した場合、試験結果は概ね良好であったと考えられる。
  • 到達目標モデルは3年間の法科大学院の学修によって到達すべき目標・水準を示すものであることから、今回の試行試験では、到達目標モデルの中でもとりわけ基礎的な理解の確認に留意して難易度を設定して出題したが、やや発展的・応用的な問題については正答率が低い傾向が見られた。
  • 確認試験を、法科大学院の学修において当然に修得すべき内容を確認する試験として位置づけるのであれば、やや出題水準を下げ、もっぱら基礎的な知識・思考力を問うべきとの理解もあり得る。

試行試験の問題形式等ついての課題

  • 基礎的な知識の確認とともに、一定の知識を前提とした思考力を確認するためには、正誤式問題と多肢選択式問題を併用する必要があると思われるが、両者のバランス(昨年度は2:1)については、今後、試行を重ねることで慎重に検討する必要がある。
  • 今回の試行試験では、憲法・刑法は各30問、民法は45問とし、各科目とも出題範囲を限定しなかったが、当該問題数によっても、各科目の全般的な理解を確認することは可能であると思われる。
  • 解答時間については、未回答の問題がそれほど多くなかったことから、大幅な不足はないと思われる。
  • マークシートによる解答方式では、発展的・応用的な思考能力を具体的に確認するには限界があるが、基本的な知識や思考力を確認することは十分に可能であると思われる。

2 試行試験の実施上の課題についての論点

参加学生の情報の取扱いについての課題

  • 今回の試行試験では、試験結果を成績評価等に流用されるのではないかとの懸念に対応するため、個別の受験者に関する採点結果の情報を法科大学院が知り得ないような対応を施している。
  • これは、学生が萎縮することなく受験する観点からは適切な対応とも言える一方で、法科大学院の学修成績と関連づけた分析の実施や、学生への適切な指導のためには、情報開示が望ましいとも考えられる。
  • この点については、情報管理を徹底できる実施体制の確保等と併せて、参加法科大学院からの意見を聴取するなどして、更に検討をする必要がある。

参加学生へのフィードバックの在り方についての課題

  • 試行試験を受験した学生に対しては、所属する法科大学院を通じて全体の試験結果の概要、各科目の設問ごとの正解、正答率の一覧、得点分布表などのデータが公表されており、これらにより、参加学生は全国規模での学修到達度を確認することができるようになっている。
  • また、今回の出題は判例・学説の基本的な知識を問う問題がほとんどであったが、学生の復習の促進等の観点から、解説等の配布について、今後更に検討する必要がある。

3 当面の実施体制についての論点

実施方針の策定についての課題

  • 今回の試行試験では、出題形式や問題数、個人情報の取り扱い、障がいを有する者に対する配慮等の実施細目についても、問題作成者を中心に検討が行われた。
  • 質の高い試行試験の実施のためには、問題作成者が作問に集中できる環境を構築することが望ましいため、法科大学院として試行試験の実施体制が組織化されるまでの当面の間については、3大学のみならず、文部科学省が実施方針・実施細目等の作成に一定の役割を果たすことも必要ではないかと考えられる。

試験問題の正当性についての課題

  • 確認試験の問題作成は公共性の高い職務であると考えられることから、文部科学省又は公共性の高い団体において問題作成者を推薦・委嘱するなど、問題作成者に公的な立場を与えることにより、試験問題の正当性を担保することが必要ではないかと考えられる。

 注)当該文書は、「法科大学院共通到達度確認試験(仮称)の試行に関する調査研究」報告書や関係者からの意見聴取を踏まえ、事務局の責任においてまとめたものである。

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(高等教育局専門教育課専門職大学院室法科大学院係)