第3期中期目標期間における国立大学法人運営費交付金の在り方に関する検討会(第5回) 議事録

1.日時

平成27年1月29日(木曜日)14時~16時

2.場所

文部科学省3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 関係者からのヒアリング
  2. 討議
  3. その他

4.出席者

委員

須藤座長、有川座長代理、上山委員、海部委員、北山委員、熊平委員、小林委員、鈴木委員、山本廣基委員、山本眞樹夫委員

文部科学省

吉田高等教育局長、義本大臣官房審議官(高等教育担当)、常盤研究振興局長、安藤大臣官房審議官(研究振興担当)、豊岡国立大学法人支援課長、木村学術機関課長、鈴木学術研究助成課長、吉田国立大学法人支援課企画官、瀬戸学術機関課学術研究調整官、手島大学病院支援室長

オブザーバー

林准教授(大学評価・学位授与機構)

5.議事録

【須藤座長】  所定の時刻となりましたので、第5回第3期中期目標期間における国立大学法人運営費交付金の在り方に関する検討会を開催いたします。委員の皆様方におかれましては、御多忙中にもかかわらず本検討会に御出席いただきまして、ありがとうございます。
  本日は、前回に引き続きまして、評価の在り方に関する御意見を専門家の方よりお聞きすることとしております。独立行政法人大学評価・学位授与機構におきまして大学の評価等を専門として研究されている林隆之准教授にお越しいただいております。なお、林准教授は都合により1時間ほどで中座する予定でございますので、最初に林准教授より御発表をお願いしたいと存じます。
  早速ですが、林准教授、御発表のほど、よろしくお願いいたします。
【林准教授】  御紹介ありがとうございます。林でございます。
  私からは各国の運営費交付金に相当するようなブロックグラントの配分方法について、資料1を用いての御説明をさせていただきたいと思います。
事前にお断りしておきますが、必ずしも、これまでの本検討会の議論に即した形というよりは、一般的な参考情報として、ほかの国ではこういうことになっているということを御紹介させていただくものとお考えいただければと思います。
  1枚おめくりいただきますと、話の概略というページがございます。2ページ以降は各国の話で少し細かいところもありますので、話のポイントをまとめさせていただきました。
  現在、多くの国で運営費交付金を透明あるいは競争的に配分するような傾向があるということです。その交付金を一括とはいいながらも幾つかの内部構造を設定し、計算をして配分する国も多くある。また、主に研究活動向けの交付金では、指標とピアレビューに基づくような配分をしている国がある。更にフルエコノミックコストを測定し、補塡するものを検討する。このフルエコノミックコストについては、また後ほど御説明申し上げたいと思います。
  3ページ、大学への資金の種類でございます。これはOECDのレポートから引用したものでございますが、大学という機関に向けての公的資金の考え方を整理したものとして示したものです。
  大きくいいますと、まず政府からの資金として機関単位のコアファンディング、これが運営費交付金に相当するものでございます。それプラス、特にOECD各国で今、別の枠組みとして重視されている、その下にあるような卓越拠点資金、Research Excellence Initiativesでございます。これは日本でいえば21世紀COEプログラム、グローバルCOEプログラム、あるいは研究大学強化促進費という、卓越した研究活動を行っている機関に対して投資するような資金で、運営費交付金とは別に配分しているということで、一つの項目として整理されています。
  それ以外にも、その下ですが、プロジェクト型資金ということで、これは日本でいえば運営費交付金の中の特別経費という5年程度の計画を立てて、それに対してお金を出すようなものです。それからフルエコノミックコストの回収ということで、外部資金では配分されていない外部資金によって研究活動を行っている教員の人件費や光熱水費などの間接経費もあります。
  このような概念に加えて、更にその下の大学独自資金ということで、授業料や研究成果の商業化などの収入を大学が拡大し得るような政策、あるいは企業からの投資やチャリティー、慈善団体からの資金に税制優遇措置などで公的な政策をとって拡大していく。これが現在の大学への資金の考え方でございます。
  本日、私が御紹介しますのは、上のところのコアファンディング、運営費交付金というオレンジ色に塗ってあるところです。見ていただくと分かると思いますが、インプットに関する算定式や交渉など実績に基づかずに配分するようなブロックファンドと、実績に基づく資金配分があり、その中でも指標に基づいて配分するもの、ピアレビューに基づいて配分するもの、あるいは個人単位のピアレビューに基づいて配分するものと、種類があります。
  これらに加えて、各種の資金についてのポートフォリオを各国で考えています。
  更に1枚おめくりいただきますと、資金の中でも研究向けの交付金を実績配分している国は現在増えていますということで、これもOECDのレポートから引用しています。上からイギリス、スペインとありますが、多くの国で実績に基づいた配分をしています。
  一番下の記号のところ書いていますが、イギリスや香港、オーストラリア、ニュージーランド、スペイン、イタリアは、ピアレビューで人が評価するプロセスを経て配分をしている。それ以外の国では研究費や大学院生数などの指標に基づく配分をしている。
  このようなレポートの中では、余り大きくない国では、評価者をそろえることが難しいのでピアレビューを行いにくく、指標によって配分するような傾向があるという分析もされています。
  ここまでが各国の全体状況ですが、ここからは各国の状況について説明をさせていただきたいと思います。
  まず、英国、その中でもイングランドです。イングランドには、高等教育資金配分機構という機関があり、そこが配分を行っています。そこでは教育、研究、知識移転などの活動ごとに、算定式を作って配分をしています。ただし、教育や研究の中にも様々な項目を立てているのですが、算定式で配分し、大学がその使途をどうするかは、一定のガイドラインの下で各大学の自由であり、各大学のプライオリティーに基づいて使うことができる仕組みをとっています。
  その下の円グラフが2014年から15年の配分額ですが、教育向けが41%、研究向けが40%、知識移転向けが4%、それから共同機関・イニシアティブ費が15%という状況でございます。
  1枚おめくりいただきまして、イギリスは特に教育向けの運営費交付金については、かなりほかの国と違う、特徴的な政策があります。機関単位で交付金を配分していたのですが、それを大幅に削減して、授業料の上限を3倍程度に上昇させる。授業料が上昇すると、学生は授業料を払えませんので、学生向けのローンを整備する。学生が就職して、お金を返すことができるほどの給与が得られるようになったらそれを返すという仕組みにしています。そうであれば授業料を多く払うので、学生が確かな情報の下で大学を選ばなければいけない。すると、教育情報の公開が整備されて、卒業後何年かたつと平均給与はどのぐらいになっているかというような調査も公表されています。
  図を見ていただくと分かりますが、一番下の青色のところが教育向けの運営費交付金です。見ていただきますと、2015年まで大きく減っております。そのかわりに緑色の学生が払う授業料が、増えています。
  次は、教育費は減っているのですが、その教育費をどういう形で算定して配分しているかということです。一番上の旧制度での入学生への教育費というのは、先ほど申し上げた政策の変更が行われる前の学生のことです。今は、その下にある新制度での入学生への教育費ということになります。ここでは、先ほど申し上げましたように学生の授業料を上げて授業料で払ってもらうのですが、ただ教育費用が高く、授業料だけでは不十分な教育活動に対して、例えば医学や実験科学の学部生、大学院生を対象としたような形で、機関単位の教育向け運営費交付金を配分しています。
  配分の仕方は、その横になりますが、分野別で価格帯というものを作りまして、それに学生数や、予算総数に基づく一律係数、これは現在1ですが、それらを掛け合わせる形で算定をして配分をしています。
  さらに、その下にあるように学生の機会向上ということで、恵まれない立場の学生の入学促進、障害者の入学促進、高大連携のネットワーク等々。教育費は一括の交付金であるのですが、算定はそれぞれ項目立てをした上で、配分しているということでございます。
  次の8ページが、研究費の配分です。研究費については、横のグラフでいうと緑色のMainstream QRという項目の配分です。これは後ほど御説明しますが、大学の研究評価という非常に大掛かりな評価作業をした後に配分しているものです。
  図でいうと灰色のところですけれども、QR research degree programme supervisionということで、一定以上の研究力がある大学の大学院生に向けた指導経費があります。それは大学院生数や分野のコスト、それから大学評価の結果を掛け合わせるような形で配分しています。
  それから、その下にQR charity support fundということで、慈善団体からの研究費です。イギリスはウェルカム・トラスト等のチャリティーからの研究費が多いのですが、大学に対して十分なフルエコノミックコストが払われていませんので、それを補塡するような仕組みです。更にQR business research elementということで、産学連携を補助するような資金です。
  研究費に関しましても、このように幾つか項目立てをした上で、それぞれについて算定式で配っているということになります。
  さらに、9ページでございますが、先ほど緑色のMainstream QRというのが大掛かりな評価で配っていると申し上げましたが、それがREF2014というものでございます。これが先月12月に結果が出たばかりの評価ですが、どういうものかと申しますと、各大学が分野ごとに、スタッフの数や、教員1人当たり4点までの研究業績、研究が社会的、経済的なインパクトを出した事例などの書類を提出し、採点表で段階評価をします。例えば研究業績は4スターから1スターまであります。研究のインパクトに関しても同じように4段階判定、研究環境についても4段階判定。その判定の合計値を出して全体的な評価結果を出すという作業をしています。
  またおめくりいただきますと配分の方法がございますが、今申し上げましたように、大学の学科単位です。分野別ですので学科相当なのですが、学科単位で4段階の評価を行った後に、下の表をウェイトの係数として配分をするということです。
  例えば1スターから4スターまでありますが、2スター以降は2012から13年以降と書いてある列のとおりゼロです。4段階判定で2以下の学科には研究向けの交付金は配られない。こういう形で、選択的に、評価結果が高いところにお金を出すような仕組みをイギリスはとっております。
  イギリスのガイドラインに必ず書いてあるのですが、運営費交付金相当のものを薄く広く配っていては、トップの大学が国際競争に勝ち抜けないので、優れた大学が国際的に互角に戦えるような基盤の資金を確実に確保するために選択的に集中させていく。そういうフィロソフィーの下で、こういう作業をしているということです。
  次の配分額ですが、ここは割愛させていただきます。
  おめくりいただきますと、12ページ、その他ということで、知識移転や施設費、共同機関費等もそれぞれについて配分の仕方が決まっています。
  更に13ページです。このような評価を行っていますので、大学の研究戦略にも確実に影響しております。例えばマンチェスター大学は、大学の研究戦略というレポートのような研究戦略文書を作っているのですが、そのKPIの一つとして、3ポツの質というところですけれども、70%のスタッフ、教員が、先ほどの大学評価の上位2段階に判定されるということを目標値として挙げています。
  Research Active Staffという大学評価のために業績を提出する教員を大学は選んで提出しなければいけないのですが、ウォーリック大学は、その選定を、大学の中で時間を掛けて行っています。
  こういう形で、研究評価が制度化されていますので、大学はその枠組みの中で競争して、研究力を上げるとともに資金を獲得すると、そういう競争の枠組みができているのがイギリスです。
  次ですが、14ページが、オーストラリアです。同じアングロサクソンですが、やや違うところがありまして、教育費に関してはCommonwealth Grant Schemeということで、学生数によるベーシックなグラントや医学部生の追加資金等々、幾つかの項目で配っています。
  一つの特徴はその下ですが、Mission-based compactという、大学と連邦政府の3年間の契約を結んでいます。日本でいえば中期目標・中期計画に相当します。やや違うのが、その契約書の文書を見ていただくとすぐ分かるのですが、国の教育政策、研究政策、イノベーション政策の目標がまず書いてあり、それに対して各大学がどういう形で貢献するかという形の戦略を設定する。そこには基本的なPerformance Indicatorが設定されていて、2011年から2013年のところでは、そのPerformance Indicatorが達成されていると追加配分されるような資金部分も設定されているということです。
  15ページになります。研究のところはどうかということですけれども、研究ブロックグラントと呼んでいますが、オーストラリアも、イギリスとも同じで、中で項目を立てております。
  上から、オーストラリア出身の大学院生に対する奨学金。これは個人向けではなくて、大学が奨学金を配分できるように大学に対して配るお金です。それから、国際的な大学院生への奨学金。それから研究訓練資金ということで、博士課程の研究活動のためのお金。それから共同研究ということで、産学連携等の研究活動の支援をするためのお金。それから研究のインフラ。
  そして注目が必要なのは、この研究卓越性の持続という項目ですけれども、閾値(いきち)2のところが、間接経費部分の連邦政府からの競争的資金とその研究のために教員がエフォートをどれほど割いているかというところで配る部分と、それからイギリスと同様に研究評価を行って配分するような部分と、その2種類で設定されています。
  ですので、オーストラリアも、研究評価と各種の指標で研究向けの交付金を配っているということになります。
  おめくりいただきますと、16ページがオーストラリアでやっている研究評価、Excellence in Research for Australiaです。そこでは八つの委員会がございまして、大学が研究分野ごとに資料を提出して段階判定をされます。そこの下にある指標では、例えば質の指標ということで、研究成果の数、引用の数、ピアレビューの結果、それから研究の量ということで、研究成果の合計数であるとか研究収入、それから研究の応用ということで商業化の収入、それから認知の指標ということで、評判などが設定されています。一つのポイントは、指標がそのまま用いられるわけではなくて、指標を踏まえて委員会で段階判定をする方法でございます。
  なぜそうなのかといいますと、その次の17ページに図がございます。オーストラリアでは2000年代前半まで委員会方式ではなくて指標だけでお金を配分していました。90年代から、研究収入、大学院博士課程の学生数、研究の出版物等の三つで配分するようにしたところ、特に論文の数を収集しだしたときから、図でバツというところの線が急に増えています。そこがジャーナルのインパクトファクターが一番低いグループということで、あまり人に読まれないようなジャーナルに研究論文が多く出されるようになってしまいました。そうであれば、ちゃんと質を確認することを評価作業に入れなければいけないということで、先ほどのような委員会による評価が行われるようになりました。
  次が18ページ、フランスでございますが、フランスは2009年よりSYMPAモデルというモデルで配分をしています。これは教育費と研究費を65%と35%に分け、教育と研究の両方を活動によるものと実績によるものに分けています。教育の活動のところは学生数、研究の活動のところはアクティブな研究者数。実績のところは計算によるものと、交渉によるもの。フランスも国との契約がありますので、その2種類に分けて、その結果で配っています。
  特に研究の中の実績の計算によるというところですけれども、AERESによる研究ユニット評価による重み付け研究者数と書いています。12%と書いてあるところです。大学評価の機関が研究ユニットを4段階判定し、その結果に基づいて配分しています。
  更に次19ページ、ドイツでございます。ドイツは大学への交付金は連邦ではなくて州が責任を持って配分するようになっておりますので、州によって配分の方法は違うのですが、指標による実績配分を導入するというのが全体的な流れとなっております。
  ちょっと情報が古いので、もしかすると最近また変わっているかもしれませんが、バーデン・ヴュルテンベルク州では、2000年から2項目で増減をしています。ただし、削減は前年比1.5%までということで、急激にお金が減ることは大学の経営にとって大きな問題ですので、削減の限度を設定しているというところが重要なポイントでございます。
  それから、20ページのバイエルン州でございますが、40%の資金を次のモデルで配分ということです。ただ、人件費であるとか施設費というのは含まず、教育研究費のみを配分しています。
  使っている指標としては教授の数、職員の数、それから在学者の数。それから標準修業年限内の在学者と卒業者ということで、ドイツは昔から大学に長く在学する学生が多いことは政策課題ですので、このような指標を設定しています。
  それから、フンボルト奨学金の取得者数や研究の外部資金の獲得等にそれぞれ割合を定めて計算をしています。
  ただドイツの場合は、特に注目されているのはエクセレンス・イニシアチブというものです。先ほど申し上げましたように、大学に対する資金は州が出していますが、トップレベルの研究を推進し、ドイツの大学や研究機関の質を向上させるために、連邦政府が75%、州が25%を出すという形で、研究大学を選んでファンドをするようなことを行っています。
  実際には下にあるような三つのファンディングスキームがあり、博士課程学生向けのトレーニング等の若手研究者支援、それからクラスター、そして研究大学向けの長期戦略の策定を通じた研究支援というものがあります。
  おめくりいただきますと採択数が22ページにありますが、Institutional strategiesとして第1期に9件選び、年間1件当たり1,350万ユーロ配分しています。日本でも研究大学強化促進費という形で研究大学を選定することを数年前に行っていますが、予算規模でいえば、ドイツの10分の1ということで、10倍のお金をドイツの研究大学はもらい、その中で若手の育成や若手のノンアカデミックキャリアを育成するための教育等を構築している状況があります。
  そのような申請をして採択をされて行っているようなものの評価については、23ページ以降ございますが、今まで御説明していたような指標とは異なり、環境や戦略に重点を置いたような項目立てになっています。
  例えば2ポツで、全てのキャリア段階におけるトップ研究者の組織的な環境、研究組織の構造、インフラ、若手研究者の昇任、各種の学内組織の戦略、研究活動の教育への効果などを書かせる。これは実際には申請段階で書くわけですが、話を聞いた限りでは、第2期で選定されるときは、第1期の実績を書きますので、こういう枠組みで実際は評価がされている。そういう状況になっています。
  最後、アメリカでございます。前回もアメリカのお話があったとお聞きしていますので、非常に簡単でございますが御説明します。アメリカも各州で高等教育予算の配分方法が違いますが、この図は要求方法がフォーミュラ方式の計算式に基づいて行っているのか、それとも前年度比で増減させるのかと、そういう状況を示したものです。フォーミュラ方式で行っているのは緑色の7%、あるいはミックスですがフォーミュラ方式が強いものが黄色の19%というところでございます。前年度比で増減させる方式で行っているのは青い51%というところ、あるいは前年度比で増減させる方式が強いものがえんじ色の23%というところでございます。
  次の26ページですが、テネシー州ではしっかりとフォーミュラを作って配分をしてきているし、現在もしているのでよく参照されてきました。最近の傾向としては、今までは学生数のようなインプット重視の指標だったのが、ここにあるような単位取得状況や学位取得者数などのアウトプット、アウトカムの指標を重視したような形の方式に切り替えて配分するような傾向があるということです。
  大変駆け足でしたけれども、こういう形で各国は行っているということを情報提供させていただきました。
  1点最後、補足でございますが、フルエコノミックコストの測定です。イギリスでは2002年に財務省が行うspending reviewで、イギリスの中で研究プロジェクト経費、競争的資金が運営費交付金と比べて大きくなり過ぎてバランスを逸している、特に研究施設への助成が不足し、交付金によって研究プロジェクトを実施するための間接費を交付金の中から出さざるを得ないような状況があるが、それが限界に達していると、そういう議論がありました。日本も現在そういう状況の議論をしていると認識しております。
  イギリスの場合は99年に高等教育機関に活動基準原価計算方法のTRACというのを導入したのですが、それを2005年から精緻化して、研究プロジェクトのフルエコノミックコストを計測するようなことをしています。
  2005年から全ての大学はプロジェクトごとにフルエコノミックコスト、総経済費用をプロジェクト申請時に計算して資金配分機関に要求する。
  実際に総経済費用というのは、三つで構成されています。まず直接経費としてスタッフの給与や装置、試料、交通費など。次に直接配賦経費ということで、研究代表者の給与、施設費、当該研究プロジェクト以外にも共有されているような資源のコスト。最後に間接経費ということで大学の事務部門、研究室の秘書の人件費、図書館経費など。こういうものを総経済費用と呼んでいるのですが、それを毎年計測し、外部資金に申請するときは、それを踏まえて申請をするように切り替えたということです。
  ただし、上に書いていますが、現在も8割程度しか補塡されていない状況であるため、先ほど冒頭に申し上げました運営費交付金に相当するようなところからも補塡をしているということです。
  このようなフルエコノミックコスト概念はオーストラリア等でも行っていますし、もちろんアメリカでは昔から行っています。
最後のページですが、冒頭申し上げましたように、これまでの議論の流れとは少し異なるような事例も多かったかと思いますけれども、単純に各国事例だけを見る限りでは、いろいろな制度設計の仕方のオプションはあるだろうということでまとめさせていただきました。
  一つは、例えば運営費交付金の本体部分を、計算式であるとか実績であるとか、そういう形でより透明に配分することはあり得るだろうと。ただ、そこでは数%から数十%実績配分するとしても、激変緩和措置ということで、余り急激に変化がないような措置をとっているような国がある。
  それから、類型ごとに指標を設定するような方法が検討されているということをお聞きしておりますけれども、それだけではなく、例えば、交付金の中を幾つかの項目に分けて算定するということで、結果的に研究が強いところには研究向けの交付金が配分され、教育が強いところには教育向けの交付金が配分されると、そういうやり方もオプションとしてはあり得るだろうということです。
  その下ですが、フルエコノミックコストを測定するということで、外部研究資金の間接経費、そして運営費交付金の役割が明確化されることが、ほかの国では行われている。
  それからオーストラリア、あるいはフランスもそうですけれども、高等教育政策、科学技術イノベーション政策の目標指標と連動して指標を設定するという考え方もあります。
  その下は、ほかの国の事例ではないですが、日本では既に複数の評価による「評価疲れ」が多く聞かれていますので、評価であるとか指標設定を追加的にやるのではなくて再整理が必要ではないかということを書かせていただいています。先ほどイギリスの大学の例で見ましたように、競争の枠組みが決まると、大学はそれに向けてシンプルに動けますので、そういうことが他国の事例からは学べるのではないかということです。
  最後ですけれども、交付金という形ではなくて計画を提出して審査をするという、ドイツのエクセレンス・イニシアチブのような形でのプロジェクト型配分をするのであれば、進捗管理、そしてそこで見たような戦略や環境などに関するガバナンスに係るような評価指標を立てるのがオプションとして考えられるのではないかということです。
  以上でございます。
【須藤座長】  どうもありがとうございました。
  それでは、ただいまの林准教授の御発表に関しまして意見交換をしたいと思います。御質問、御意見等を、どなたからでも結構ですので、お願いいたします。有川委員、お願いします。
【有川座長代理】  よくまとまった調査についてお話しいただきまして、ありがとうございます。今日本が、特に国立大学等が直面している問題に関して、それぞれの国がうまく評価等の方法を工夫している、という印象を持ちました。
  それから、先生の方のお話にありましたように「評価疲れ」的なことがよく現場から聞こえてきます。評価については、よしあしは別として、ある種のプログラム化、ルーチン化がかなり進んできているようにも思います。特に教育に関するプログラムの審査や評価に見られます。一方で、そうしたプログラムの実施期間が比較的に短いということもあり、絶えず似たようなプログラムが考えられています。そうした中で事業の継続性をどう確保するかというのは難しい問題です。そのような点では実績に対するしっかりした評価をするなど、合理性のあるようなスキームを考え、それでカバーできないところや新しい取組をしっかり評価するなりすればいいと思います。しかし、プログラムということですと、やはり新たに申請し、審査し評価することが基本であるようにも感じました。
  そういうことであれば、評価疲れというようなことではなく、もう少し前向きに、意欲的に、国際競争にもちゃんと勝てるような取組が、それぞれの大学でなされるのではないか。そういったようなことが、今日御紹介いただいた中では、十分にできているのではないかということを感じた次第です。
【須藤座長】  ありがとうございました。林先生、今の件、何かありますか。
【林准教授】  おっしゃっていただいたとおりでございます。冒頭の3ページでOECDの整理をお示ししましたが、やはり有川委員におっしゃっていただいたように、運営費交付金によって、まず安定的な資金を確保するとともに、今、冒頭で注目されていると申し上げました卓越拠点資金のような、競争的だけれども大きめのお金を用意することで、そこで例えば若手の学生も比較的中長期に雇用され、国際的に優れた研究者も集まりやすいような形をとっているということで、あまり小さくて短期のものではない形で運営費交付金も卓越拠点資金も、そういうものを作ることが各国で取り組まれているというのが現状なのかなと思っています。
【須藤座長】  ありがとうございました。それでは上山委員、お願いいたします。
【上山委員】  大変綿密な調査で、いろいろ学ばせていただきました。イギリスの方法というのはとても日本に大きな影響を与えてきているので、これについて、ちょっと林先生の御意見を聞きたいと思います。
  特に11ページです。研究のブロックグラントの配分累積割合と書いてありますが、トップをオックスフォードにして122の大学が並んでいて、このブロックグラントというのは、これはHEFCEからのお金ですよね。オックスフォードやケンブリッジなどの有名どころのいいところというのは、HEFCEからのブロックグラントはほとんど配分されていないわけですよね。
  ですが、ケンブリッジも自分で、ファブリケーションとかエグザミネーションをして相当大きな収益を上げていて、林先生も御発言されましたけれども、ウェルカム・トラストが年間、6億から7億ポンドほどのお金を、特にライフサイエンス系にばらまいています。そういう民間の財団からの補助金と、自分で稼ぐお金と、それから民間からの寄附。これらがかなりの部分を占めるようになっていて、むしろ有名でない地域の大学の方が、このHEFCEのお金に頼らざるを得なくなっているという感じでしょうか。
【林准教授】  11ページの累積割合というのが、おっしゃっていただいたように、一番左のオックスフォードがHEFCEからの研究向けブロックグラントの10%を12年から13年の1年間もらっていて、次のケンブリッジが、そのオックスフォードとの差分、ここでいうと9%、8%ぐらいですけれども、それをもらっているということです。
  この図でよく指摘されるのは、インペリアル・カレッジ・ロンドンまでの、わずか4大学で30%が集中しすぎているのではないかと、逆にそういう議論になります。更に50%までで10大学である。ということで、集中がどうかという議論はあります。
  ただ、お話の中でもさせていただきましたように、政策の考え方としては、幾らでも集中させろということではなくて、トップの大学が世界と互角に戦える環境を確実に整備するためにはこうだと、そういう発想です。
  それから、先ほど上山委員もウェルカム・トラストのお話をしていただきましたけれども、実際には、このHEFCEからの研究部分のブロックグラントは大学全体の収入のわずか5%でしかありません。研究費だけで見ても、研究費の中の22%でしかありません。なので、残りの78%は競争的資金であるとか、チャリティーであるとか、そういうところから入ってきていますので、そういうところはちょっと日本とはまた違う状況なのかなと思っております。
【須藤座長】  上山委員、何かございますか。
【上山委員】  やはりイギリスも財務状況が徐々に悪くなって、先ほども少しありましたが、全部のフルコストのうちの80%しか保障されないと。これを100%にしろという議論は随分あるわけです。しかし、やっと80%まで来ているという状態なので、結局、限られた原資を、どういう形で最も効率的に配分するかをずっと考えてきているという意味では、とても日本と似ていると思います。
  割とヨーロッパの大学というと、非常に公的な部分が強く、公的なサポートが完全にあるようなイメージが流布している感じもあります。今、林先生がおっしゃったように、実は、民間の様々なところからのお金も含め、マルチファンディングで大学環境を整えている。そうしないと、実際、良い研究大学は世界で戦えない状態になっているということだと思います。
  日本の国立大学も、例えば寄附をもらって、その寄附を自分のところで運用するような能力は全くないですよね。そういうことは認められていないし、寄附の税制も日本の場合、非常に限定されている。したがって、入ってくる収入のファンディングが、ほとんど限定された公的な資金になった上で、更にそれを使って評価でやれというと、手足を縛られたままでむちを打たれているような評価になりかねないですよね。
  評価は本当にやるべきだとは思うのですが、その評価をするときに、活動をしっかりと認めた上で、この非常に厳しい評価を課すというのであれば、個々の大学の強みにつながっていくと思います。そういう意味で、入り口が一つしかないような状態で、そこでやったものを全て競争的に評価だけで資金を提供していくとなると、大学側は本当に厳しくなってくるだろう。特に地方の大学は厳しくなってくるだろうなという感じを持ちますね。
【須藤座長】  ありがとうございました。それでは海部委員、お願いします。
【海部委員】  今、上山委員がおっしゃったことに非常に賛成です。私も実は評価についていろいろ考えたことがあるのですが、大変参考になるし、私もいろいろ教わることができました。やはり、背景にある各国における大学の財政状況というものを一つ下敷きにしないと、方法だけを見て、あれがいい、これがいいというのは非常に危ないというのは今おっしゃったとおりだと思います。
  ですので、私は日本でも評価ということは大事だと思いますが、評価疲れと言われたことにも非常に同感です。どうするかは、やはり全体的に考えるべきだと思います。それに加えて、日本の場合、やはり国の財政が圧倒的に多いという実態を踏まえると、評価によって大きな差別化を図るのは非常に危険であると。そのことは是非、十分お考えいただきたいと思っています。私は、ある程度の方向性を出す上での評価は必要とは思っております。
  私自身の興味からして一つ質問したかったのはドイツの例ですが、連邦がトップレベルの研究の推進をするために州に更に加えて、75%基金を出すようなシステムがあるという、そこは面白いところだと思っているのですが、これは全体的な研究への投資、政府投資というか公的投資の中でいうと、どれぐらいの割合になるものでしょうか。
【林准教授】  すみません。手元に数字がありません。
【海部委員】  そうですか。分かりました。
  私自身は日本のように研究への投資が多様でないところでは、個別に競争させることは非常に危険であるということは前から申し上げているとおりです。そうすると全体的な方向性が見失われてしまうわけです。そのことを、日本の場合どうすれば具体的にできるかということについては、またいろいろと私としても発言をしたいと思っております。
【須藤座長】  ありがとうございました。それでは小林委員、お願いします。
【小林委員】  限られた時間で、なかなか各国の全体像を申し上げるのは難しくて、林先生に非常にコンパクトにまとめていただいたので、本当はもっと時間を掛けて議論すべきだと思いますが、なかなか時間的に難しいので、とりようによっては、誤解されるようなこともあるのではないかと思われる点だけ幾つか申し上げたいと思います。
  例えば25ページで、アメリカの高等教育予算の要求方式について、これは飽くまでも日本でいう、国立大学の運営費交付金部分だけの話であって、研究資金は全く別に競争的に配られているわけです。しかもフォーミュラファンディングというと、いかにも評価に基づいているように見えますが、現実の問題としては、学生数であるとかそういったものに基づくフォーミュラというのが大部分です。
  その次に御紹介になったテネシー州は、パフォーマンス・インディケーターによるファンディングで、非常に有名な例ですが、これを採用している州は、実は非常に少ない。全体としてはアメリカの場合、州立大学については、飽くまで評価によってファンディングをしているところはそれほど多くないかと思います。
イギリスの例ですが、イギリスのファンディングは非常に複雑なので、簡単に申し上げるのは難しいですが、教育にしても、研究にしても、市場型で動かしているというのはおっしゃるとおりです。特に研究に関しては完全に市場型で動いていますので、それで世界のトップ大学を作るという方式でやっていることは間違いないわけです。
  それから教育については、これは以前も申し上げましたが、授業料を3倍に値上げし、それで大学は教育費については賄ってくださいという方式で、学生が大学を選択するという形で競争をさせる。そういう形で、いい大学には学生がたくさん集まり、そうでない大学は学生が来ないという形での競争をするのがイギリスの基本的な考え方で、こういう意味では市場的です。
  ただ、少し説明があったと思いますが、7ページのところです。一つだけ例としてお話ししておきます。学生の教育機会の向上という、これはWidening Participationというプログラムですが、今のような競争をさせるためには競争はフェアでなければいけないので、経済的に恵まれた学生とそうでない学生が対等に競争することはできないわけです。そういうことへの配慮をして、給付奨学金や、低所得層の学生などを入れた大学には、ファンディングを強化し、定員を付けるなど、多様な方法をしているのです。
  そういった様々な配慮があって競争は成り立つわけですので、ただ単に競争させればいい、自由放任にやらせればいいというものではない。そういう配慮をイギリスは非常に行っておりますので、その辺は見習うべきことだろうと思っております。
  以上です。
【須藤座長】  ありがとうございました。それでは熊平委員、お願いします。
【熊平委員】  評価疲れというお話もありましたが、交付金を配分する立場からすると確かに評価の基準ですが、大学の立場からすると、本来、競争力を上げるために評価をしていくということだと思います。その際に、評価基準はインセンティブに、ある意味ならなければならないはずだと思います。
  お話を伺っていると、大きくは三つの視点があって、一つは学生数のようなインプット、それからKPIのようなアウトプット、そしてガバナンスなどの環境要因というのがある。この三つの視点で皆さんは評価を、ポートフォリオといろいろ違っていますけれども、やっていらっしゃるということも分かりました。日本がこれから大学を強くしていかなくてはならないということが前提ですので、その三つの視点の違いというか、何が一番競争力を高めるのに優位かとか、特性があるとかということがあれば、少し教えていただければと思います。
  以上です。
【須藤座長】  林先生、ございますか。
【林准教授】  大変難しいところですが、一つの最近の流れとしては、今までおっしゃっていただいたようにインプットです。インプットも日本だと学生定員を見ていたりしますけれども、そうではなくて、実数としての学生数、どれだけ集められているかであるとか、そういうところを見るようになってきています。また、アウトプット、アウトカムということで、学位授与状況であるとか、そういうところを見るようになってきています。流れとしてはインプットよりもアウトプット、アウトカムを見るような流れができていると思います。
  その上で、環境やガバナンスをどれほど見るかというのは各国によって、考え方が違うと思いますけれども、特に環境のところを評価がしづらいということもあります。イギリスですと、たしか20%ぐらいだったと思いますが、研究のファンディングで環境も見ていたりします。そこまでできないところは、インプットではありますが競争的である外部競争資金をどれだけ集めているかに比例配分させるような形で、作業としては簡単に配分するような形になっている。
  ですので、特に環境やガバナンスは評価でも、認証評価などの大学の基盤を見るようなところはとても重視するのですが、ファンディングというところでは、どこまで見ていくかというのは、評価作業のやりやすさとかとも関わってくるのかなと思います。
  以上です。
【須藤座長】  よろしいですか。それでは鈴木委員、お願いします。
【鈴木委員】  ありがとうございました。私は地方にいる立場ですので、1点御質問させていただきたいと思います。今回のこの検討会の議論の中で、機能強化の方向性において地域活性化ということが一つの議題となっていて、それを何らか評価していこうというのが、議論の一つの方向だと思うのですが。今日御紹介いただいた中では、州がこの評価にコミットしているような国とかはあるものの、この評価の項目の中に、その地域との関係とか地域との連携のことに関するものは出ていなかったのかなと見受けられたのですが、もし、そういうことを行っているところで、それが別にマジョリティーでなくてもいいので、御存じだったら教えていただきたいと思います。また、仮にこういうところでやっていないとすると、日本が初めてそういう、地域に関することを評価で加えていくという今回の制度改正になるのかなと、思ったりしているわけですが、いかがでしょうか。
【須藤座長】  林先生、お願いします。
【林准教授】  そうですね。確かに地域に関して目指すような形ではないのですが、例えば知識移転。イギリスですと、研究でも知識移転が別項目に立っていて、その中で地域と企業との関係などが出てきてはいるだろうと思います。それほど明確な形では出ていません。
  今回、お話ししませんでしたけれども、先ほど小林先生もおっしゃっていただいたアメリカの競争的資金のところで、例えば競争的資金獲得額が低い州に対してNSFはEPSCoRという形で別のファンドを作ってお金を出していたりします。そういう形で、逆に競争的資金がとれていないところの州の産学連携を誘因するようなファンドというのは、こういう交付金とは別の形でも出ているような事例は、すぐ思い付くところではあります。
【鈴木委員】  ありがとうございます。
【須藤座長】  林先生は、15時に中座されますので、短くお願いいたします。
【北山委員】  資料の4ページに、各国において運営費交付金を実績配分し始めた年が書かれていますが、これと関連して、アメリカやヨーロッパにおける大学の実績に係る情報公開について教えてください。今回の議論でも、評価項目がいろいろと示されていますが、これらの国では、大学に関する情報の多くが公開され、評価に利用されているということでしょうか。日本でも大学ポートレートが始まりましたが、情報公開の内容はまだ十分ではないと思いますので、その辺の状況がお分かりでしたら教えてください。
【須藤座長】  お願いいたします。
【林准教授】  大学ポートレートについては、私が所属している大学評価・学位授与機構も、その運用に関わっています。ポートレート開発のときに、私もほかの国を実は調べました。例えば、イギリスではHESAという、高等教育統計機構がデータをとっていて、それがまさに、イギリスの運営費交付金の学生数であるとか外部資金の額にそのまま使われています。そういうものはイギリスですとUnistatsという形で、学生向けに公表するものにも使われています。ファンディングにも使われていますし、学生向けの情報としても使われています。そういうものがしっかりとデータベースとして作られているのが、ほかの国の状況であると認識しています。
【須藤座長】  ありがとうございました。少し時間をオーバーしてしまいましたが、林先生はこれから別の御予定がございますので、ここで退席されます。どうもありがとうございました。
  またこの件は別途、後で議論の時間をとりたいと思います。
  その前に、事務局から配付資料の説明をお願いいたします。


(事務局より資料2について説明)


【須藤座長】  ありがとうございました。
  議論に入る前に、私からお断りといいますか。前回の検討会で、次回は指標を事務局で整理して、今までの議論を反映した指標を具体的に提示して、更に議論していこうということを申し上げました。しかしながら、今この資料2を見ていただきますと、いろいろな御意見が出ていますので、一応この四角の中に書いてございますが、まだ具体的な指標を整理してこの場に提示するほど議論が深まっていないと思います。今回はもう少しフリーなディスカッションをしようということで、前回お約束しました項目は次回以降に回したいと思っておりますので、その辺、御了解いただきたいと思います。
  先ほどの林先生のお話も含めまして、ここからは、この指標、この辺の資料を少し頭に置いていただいて、なるべくこの四角の小さなものを大きくするような御意見、伺えればと思います。自由に時間まで議論したいと思いますので、お願いいたします。では上山委員、お願いいたします。
【上山委員】  今日ここに配られている資料の中で、前から思っていることに関係することが一つあります。それは寄附優遇税制の話です。これは多分アメリカだけではなく、どの国でもそうだと思いますけれども。先ほどイギリスのケンブリッジの話をしましたけれども、大学へのドネーションがどんどん増えてきているのは、大学のマルチなファンディングの所得を確保しなければならなくなってきて、その中で、この寄附というのは公共性の高い法人の役割をサポートするにはとてもいいシステムになってきたと思います。
  これは専門的に調べたわけではないのですが、アメリカの研究大学の財務を見ていると、80年代ぐらいから90年代にかけて、大学に対する寄附が拡大をしていく。その中で多分一番大きな役割をするのは、土地とか株式のような評価性の資産を大学に寄附するということだと思います。
  大学も株式を受け取ることに関しては非常に強い抵抗がかつてはあったのですが、90年代には、特にベンチャー、スタートアップ企業の株式を受け取るということがほぼ認められるようになってきました。そうすると、本当に紙くずみたいな株券が、上場すると膨大な資産に化けるということがあります。建物もそうですし、土地もそうです。それから株式のような評価性で、要するに価格が変動するようなものの寄附が増えてくるのです。
  そのときの税制がキャピタルゲインといいますか、その増えた、個人が持っている自分の株式のキャピタルゲイン金額と、それからさらには、その株式そのものの市場評価、両方ともが所得から控除される。つまり、大金持ちの人たちにとってみると、ある意味では税逃れの形にはなるわけです。
  したがって、アメリカの中でも、それはお金持ち優遇の政策であるという批判は強かった。一方で公的な、大学や美術館など非常に公共性の高い活動をしているような組織については、公的なお金だけには頼れない。そういう寄附の役割を非常に強く意識してくると、たとえそれが税制上は少し問題あるかもしれないけれども、そういうことを促進していこうという空気が強くなってきたと思います。
  日本は翻って、所得控除を認められてはいます。しかし、先ほど言ったようなキャピタルゲインのところはみなし控除制度か何かで一部認められてはいるものの、本体の価格全体については認められていないようですし、この税制をかなりいじることによって、国立大学も含めた大学法人に関する寄附を促していけるような政策というのがあるのではないかなとは思っています。
  これは多分、財務当局の人たちとの折衝になるでしょうが、これほど公的なお金が窮迫してくると、やはり民間のところから、どういう形か、大学のようなところに資金を導入するスキームのようなことを考える時期に来ているのではないかなと思っております。
【須藤座長】  ありがとうございました。事務局から何かございますか。参考資料1の下の方だと思いますけれども。
【事務局】  ありがとうございます。御指摘のように、例えば株式などにつきましては、現在、国立大学法人につきましては学校法人と違いまして、いわゆる余裕金をどのような形で運用するかというときに、安定資産に限った運用をせよということになってございます。今後その扱いをどうしていくかということについては課題であろうかと思っています。
  これまでに税制改正を要望してまいったものが参考資料の下、個人からの寄附というところでございます。先ほど御説明申し上げましたように、私学、学校法人では、これが一部導入をされております。その導入がされてから、対象となっている学校法人の個人寄附が非常に大きく増えているという実績もあると伺っております。
  一方、国立大学法人に関しましては、この所得控除と税額控除の選択制が制度として導入されていません。これは各国立大学、また国立大学協会からも是非この所得税の特例という形で、学校法人が導入しているようなものと同じにしてほしいという要望もございまして、かねて要望しているわけでございますが、残念ながら今までのところ認められておりません。私どもは引き続き是非実現するように頑張ってまいりたいと思っています。
  それから上山先生、アメリカもかつて非常に政府の資金が厳しい時代があって、資金の多様化が重要で、しかもそれを乗り越えて今があるというお話が前回もございましたので、そういうことも含めて様々な資金の多様化ということにつきましても考えてまいりたいと思っております。
【須藤座長】  この問題は直接運営費交付金とは違いますが、密接に関わってまいりますので、何らかの形で、この委員会としても附帯事項のようにして反映していきたいと思います。
  それでは、小林委員からお願いします。
【小林委員】  今の話ですけれど、文部科学省の委託事業で、数年前にアメリカの資産運用について調べまして、国立大学の資産運用について一部緩和していただいたということがありました。ただ、今の御説明のように、まだまだ全体としては非常に厳しいわけです。それから寄附についても、現物の土地とか、それから株式についてかなり制限があり、そういった点をどう考えていくかというのは、かなり重要な問題だろうと思っています。
  ただ、アメリカの場合も、私が聞いたある大学の話ですけれど、広大な土地を寄附してもらったら、その土地が汚染されていて実は全然駄目だったとか、そういうこともありますので、大学にどれくらい判断力があるかという問題にもなってきます。当然ですが資産運用なり寄附というものにはリスクもありますので、そのあたりをどう勘案していくかということは十分考えていく必要があると思います。
  ただ方向性としては、私は寄附とか基金をこれから拡大していく、財源を多様化していくということは必要であると思っております。
  その上でもう一つ評価の問題ですけれど、参考を見て、今まで議論として出てきていないなと思うのは、今日のイギリスの話ではないですが、学生に対する支援とか、そういった観点が余り出てきていない。先ほど申し上げましたように、イギリスの場合、アメリカもそうですけれど、一番大きな大学のミッションの一つになっています。日本も国立大学は国民に教育機会を提供するというのは大きなミッションになっておりますので、その辺で学生に対する支援についての項目が要るのではないかと思います。
  それから、IRについては資料の上山委員提案の指標の中にも含まれていますが、これからますます重要になっていくと思いますので、そのあたりのことはもう少し細かく見ていく必要があると思います。
  それから、先ほどもありましたけれど、大学情報の公開です。透明性を確保しているかどうかということ、あるいは説明責任をどれくらい果たしているかということ。これは国立大学にとっては一番重要なことの一つだと思いますので、こういったことについても、これからの議論に加えていただければと思います。
  以上です。
【須藤座長】  ありがとうございました。それでは山本委員、お願いします。
【山本(眞)委員】  私の方から3点お聞きしたいことと要望があります。
  一つは税制の問題ですが、個人の場合は、このような控除を受けるには、やはり確定申告をしなければならないので、サラリーマンにとっては保険料と同じように年末調整で行うことができると非常に簡便化するのではないかなと思います。その辺も考慮していただきたい。
  もう一つは、今日、林先生からお伺いし、大変参考になりましたが、イギリスにしても、ほかの国にしても、国家戦略として、やはりトップの研究大学を育てるという観点が非常に重視されているような気がします。この場では三つの機能分化、あるいは機能強化ということで議論していますけれども、それがどういう形で指標になって出てくるのかというのは、今、聞いた限りでは、指標によって、地方の小規模、文科系の大学は切り捨てられるのではないかと、そういう危惧を抱きます。
  もう一つ、これは瑣末(さまつ)なことですけれども、今日お配りいただいた学長裁量経費で5%、一般運営費交付金のうちの、いわゆる係数対象事業費の5%を学長裁量経費と27年度予算にするというのは、どうも3期以降の係数Bが5%になることの含みがあるのかどうか。この辺をお伺いしたいと思います。
【須藤座長】  それでは、事務局からお願いします。
【事務局】  回答します。この検討会の中で、第3期においては学長の資源再配分のための経費を設けてはどうかということ議論がございまして、これは飽くまで第3期の時点の話を御検討いただき、その際にはどのようなスパン、どのような手法で、どう評価するかということも含めて今後の検討課題でございますが、いずれにしても今後そういう経費が設けられ、また評価の対象になっていくという流れがございます。来年度の予算の中で、今申し上げましたような5%の学長裁量経費を設けさせていただいたということでございますが、飽くまで、これは先導的な取組といいますか、この5%という高さについても、それが第3期の評価付きの資金として、その5%が適当かどうかということも含めて、各大学におきまして、ちょっと試行的に取り組んでいただきたいということで入れさせていただいたものでございます。この5%は、第3期にどうするかと直接リンクするということではないものと思っています。
  もう1点、昨年の通常国会で大学のガバナンス法案が成立されまして、今年の4月1日から施行されます。各大学は、学長のリーダーシップがより発揮できるような規程改正を今行っていただいています。こういった形で制度面での学長リーダーシップの基盤ができていくということで、あわせて、これは試行ではございますけれども、財政面でもそれが後押しできるような形で導入させていただく。それを来年、28年度からの実施に向けて、どういう形で高さも含めて考えるかという参考にも十分させていただきたいということで入れさせていただいています。
【須藤座長】  ありがとうございました。事務局からお願いします。
【事務局】  今、確定申告の件がございましたけれども、状況だけ御説明申し上げます。省内でも、そういった寄附を進めていく上で、やはり確定申告を考えるべきではないかという意見は確かにございます。ただ一方で、その作業自体は、今度は企業の方にお願いすることになります。そういったものをどういう形で進めていくのがいいのかという意味で、いろいろな御意見があるということもございますので、確定申告についても、どういう形ができるのかどうかについては、我々としても考えなければいけない状況ではあるということでございます。
【須藤座長】  それでは鈴木委員、お願いいたします。
【鈴木委員】  ありがとうございます。今日は若干各論の話をするのかなと思って、各論のことの準備をしてまいりましたので、各論の話をさせていただきます。恐縮です。
  今、地方創生とかいう話になっていて、地方から見れば、もちろん全力で取り組んでいくわけです。人口減少の一つの大きな要因が社会減であって、そのときに進学のときと就職のときというフェーズがあります。我々は、今、県内で若者たちに就職してほしいなということを働き掛けているわけでありますけれども、そのためには県内の中小企業などの魅力みたいなものを学生たちによく知ってもらうということが、まず大事なことだと思っています。
  今日各論で準備してきたのは、私がこれまでのプレゼンの中でも申し上げましたが、地域の貢献や地域の人材育成についての一つの指標で、こういうものを加えていただくといいなと思うのは、インターンシップの学生の参加率みたいなものはあったらいいのではないかなと思っています。文部科学省が平成25年度に出された調査によれば、単位認定を行うインターンシップを行っている大学は既に70%ぐらいあるが、実際に参加している学生の率は、2.2%と極めて低い。大学側、大学院側は準備してくれているのに参加をしているのは2.2%と低迷しているので、これは私たち地方や地方の中小企業側から見ても、実際に参加する学生がもっと増えていくことが地域にとっては有り難いことです。そういうことが指標化されていくと、地域の経済界や地域の地方創生を図っていく我々としては有り難いなと思っているのが1点です。
  もう1点は、私はこれまで大学ごとに指標を設定するのがあってもいいのではないかということを言わせていただいてきましたが、その際には、できれば学部とか学科単位で、きめ細かに設定できる方がいいのではないかと思っています。これは私が最初から一貫して申し上げさせていただいている、地域のステークホルダーのニーズに応えているかどうかということを大事にしてほしいということです。全学でもちろん共通項目はあってもいいですけれども、やはり医学部なら医学部、農学部なら農学部で、それぞれステークホルダーが異なり、そのニーズの応え方が違うと思いますので、そういうきめ細かな設定ができるような仕組みだと有り難いなと思います。また、先ほど小林委員がおっしゃった情報開示、すごく大事だと思うのですが、そういうことが情報開示されていれば、地域の人もよく分かるし、学長の裁量経費をこの学部には、この学科にはこういうふうに配分したという説明の説得力にもなると思いますし、そういうきめ細かな設定ができると有り難いなと思います。
  各論の話で申し訳ないです。
【須藤座長】  いえ、各論でも参考になりますので、出していただきたいと思います。今の御発言で、インターンシップの件で、各地域の大学への参加をもう少し多くするという意味でよろしいでしょうか。
【鈴木委員】  大学ではなく学生自体の参加です。
【須藤座長】  学生が地域の会社に参加する。
【鈴木委員】  そうです。それが我々としてはベストですけれども、まず、そもそもインターンシップに参加する学生が増えてこないといけないと思います。
【須藤座長】  どちらかというと大きな会社の方にインターンシップに来る、それですと、今のお話とちょっと違うのかなと思いました。
【鈴木委員】  そうですね。更に言えば、地元の企業にインターンシップした学生の率となれば更にベストですけれども。いろいろな指標の設定の仕方があろうかと思いますが。
【須藤座長】  分かりました。ありがとうございます。
【有川座長代理】  私がいた大学では、会社に行くように、自分の大学の事務に学生がインターンシップに来ています。県庁の場合、いかがですか。
【鈴木委員】  受け入れています。
【須藤座長】  では山本委員、お願いします。
【山本(廣)委員】  多くの委員がもうおっしゃったことなので、繰り返しのようになりますが、そういう考え方を持っている委員が1人でも多い方が力になるかなということで、あえて言わせていただきます。
  その前に今のインターンシップですけれども、これは後で言う話とちょっと関連しますが、インターンシップが今キャリア教育というような形の中で、もちろん大学としてはそういう制度を作っているのですが、学生サイドから見ると、就職に有利になるのではないかなどの思わくが、どうしてもあるかなと。今、鈴木委員が言われて、三重や島根あたりもそうかもしれませんが、地元に非常に面白い、ユニークな企業があり、そういったところと大学としても協定などを結びながらインターンシップを行っていますけれども、学生が行かない。これは、そういうところにインセンティブが生まれるような政策を行うことが国としても何か必要かなと思います。
  私は政策のことは門外漢ですけれども。これは先ほど上山委員も海部委員もおっしゃいましたが、公的ファンディングが非常に高い比率である中で、やはり、プライベートファンディングのようなことがどんどん増えるような政策が必要かなと思います。先ほどの税制の問題は全くダイレクトで分かりやすいですが、それ以外にも何か、工夫をしていただいて、そういうものが増えるような政策が必要かなと思います。
  現在大学の運営費交付金の比率というのは、圧倒的に大学の中でそれぞれ高いわけですから、ここのところを、またそれぞれの大学で取り合いをしようということではなくて、自助努力で増やしていけると、そういう政策が何か必要になるかなと思います。
  それからもう1点、今日林先生からお話があって、先ほど小林委員もおっしゃいましたが、教育の面でいくと、学生の機会向上は非常に重要だと思います。さっき経済的にというお話がありましたが、もう一遍。この林先生の資料にもありますが、障害者配慮の部分で、こういったことは国が政策として行っているわけですから、それを裏付けるためのファンディングといいますか、そういうものも非常に重要ではないかと思います。
  研究の方の評価は割と分かりやすいといいますか、難しい部分ももちろんありますけれども、教育をどう評価していくかという部分は非常に難しい。そこで本当にいい教育がされたかということになってくると、なかなか直ちに結果が出ない話です。したがって、グッドプラクティスみたいなものを、どれだけ数をやっているかとか、いろいろなプランを提示できているとか、そういったことも是非、教育の評価についても十分に議論する必要があるのかなと思います。
  以上です。
【須藤座長】  ありがとうございました。それでは海部委員、お願いいたします。
【海部委員】  私、前回欠席をしましたので、そういう議論がされたかどうかということも含めて申し上げます。先ほど御報告いただいた中にもありましたが、既に大学に対する評価は得られていると。その上で、そのことが及ぼしているポジティブな影響は一体何なのかという、私は本当をいうとそういうフォローアップをもっとしっかり見たいなと思っています。
  いずれにせよデータは随分蓄積されているし、やり方も確立してきている面もありますが、その評価と、ここで言われている評価との関係は、私はいまだに分かりません。そのことについては議論されて、何か整理がされているのでしょうか。
【須藤座長】  いえ、まだしていません。
【海部委員】  だとしますと、私は個々の評価項目の議論をする以前の問題として、どう評価するのかという、そこの整理をしていただかないと、いろいろ意見も言いにくいなという気はします。
  今回この資料2を拝見しまして、幾つかの評価についての視点が書かれております。それぞれ大事なことと思います。しかし、私は、やはり、今やられている大学評価のシステムと全くパラレルに、全く新しい評価ができるというのは、ちょっと考えられないと思います。
  もう一つは、大学評価の場合も、いわば運営のマネジメントの評価と、研究評価と二つに大きく分かれておりますが、それについても、同じ疑問が提示されています。どうするのかと。特に研究評価をどう行った上でやるのかと。
  今までの議論は主に運営に関する機構改革ということを中心にした議論がされていますので、どちらかというと、そういう機能強化のための重点支援をどう評価するかという話が中心のようには思いますけれども、その点もはっきりさせないといけない。
  研究の国際的トップレベルを目指すといった、そういうことについて評価してくれという大学に対しては、どういう評価をするのですかというあたりが今、非常に漠然としております。その辺については、私は是非それを出していただいた上で、少し具体的な議論に入るべきではないかと思いますが、いかがでしょう。
【須藤座長】  実は今のような話がございまして、具体的に、例えば研究を試行する大学についてはどういう評価をすべきか。その辺の御意見を、本当はこの場で是非出していただいて、それを参考に事務局でまとめようということになっています。もしその辺で具体的なお考えがありましたら、この場で是非発言していただきたいです。
【海部委員】  もしそうだとしますと、現在行われている評価を無視した議論というのは、やはり、やりにくいと思います。ですから、そういう評価機構のお考えなり、現在やられている評価をまとめることは必要です。そこまでをこの場ですぐお願いというわけにいかないとしましても、やはり何らかの、現在やられている評価をまとめた上で、こういう新しい問題をやるとしたらどうすればいいかと、そういう方向性は、まずは私はお示しいただきたいものだと思います。
【須藤座長】  事務局の方は、何かございますか。
【事務局】  そういった御意見も含めて様々御提案いただければ有り難いと思っております。おっしゃっていただいていることは、例えば現在行われております国立大学法人評価と、ここでの評価ということかと思います。
  現在の国立大学法人の評価につきましては、中期目標・中期計画に定められたことを前提としまして、年度ごとの状況を見ます。これも、もう各委員の先生方、御案内のとおりですが、期間が終わって、教育研究につきましては大学評価・学位授与機構で専門評価を行っていただいているという形をとっております。
  今回御議論いただいている点につきましては、大きくは二つあると思っております。一つは重点支援という係数Aと資料では書かせていただいているような部分、それから学長裁量ということで係数Bと書かせていただいているような部分でございますけれども、各大学の果たすべき役割は本当に多様なものがあるというのがまず前提としてございます。その多様な取組につきましては中期目標・中期計画において記載をされ、それは全面的に教育研究も含めて評価していくということになろうかと思いますので、その大学評価の考え方は、これからも変わらないと思います。
  一方で、ここで行っております年度ごと、あるいは2年、3年に1回かも分かりませんが、これは各大学が、例えば一つの類型をお選びいただいて、重点支援を受けるという重点支援の枠組みを三つ示していただいています。そういった形で重点支援をしていく、その重点支援を受けたところに対して、どのような評価をして、その後の予算を変動させるかということ。また、学長のリーダーシップに関しましては、どのような取組がなされているかという実績を見ながら、それを何年か後の予算にどのように反映していくかということですので、ある意味、方向性は大学法人の評価と同じ方向を向いているだろうなと思いつつ、必ずしも同一のものでもないのかなと思っております。改めて資料を提示の上、御議論いただくべきことかも分かりませんが、2つの評価がぴったりと合うものでは、またないのかなと思っております。
  そういう観点から、大学法人の評価とはまた違う視点もあり得るということで御議論いただければ有り難いと思っております。
【須藤座長】  では海部委員、お願いいたします。
【海部委員】  それはそのとおりですけれども、資料を見ますと、いろいろな評価項目が既にたくさん提案されているわけです。どう整理すればいいか途方に暮れるぐらいのものです。
  実際に今おっしゃったように大学の評価については行っているものがあるので、そちらではどういう項目が評価されているのかということを、やはり御提示いただきたいと思います。その上で、しかも、中期目標・中期計画で3年ごとであるとか、6年ごとであるとか、どういう性格があるから、ここではこういうことをやるべきである。しかしながら、大学評価について既に出されている項目で、しかもある程度の、ここでは何年ごとの評価をするべきかという議論もありますが、3年ごとの評価であれば、そういう評価を引用していくことは十分できるはずです。
  ですので、その役割分担をしっかり分けた上で、そちらではできないことをここでやるということを、まず明示していただきたいと思います。そうすれば、どういうことが特に重要かということが、もう少し議論できます。今のようにすると、全部評価をやり直せみたいな話になっていて、これは整理できないというのが私の印象です。
【須藤座長】  おっしゃること、よく分かりますので、現在の評価ではどういう項目を、どうのようにやっているかというのを、やはり少し整理して、それに、この議論を含めて、何を評価するべきかという議論に持っていきたいと思います。その辺の整理をしてから、またこの場に御提示したいと思います。今日は提示してありませんので、その辺、頭に置いていただいて、どんどん議論していただきたいと思います。
  北山委員、お願いします。
【北山委員】  私が委員長を務めている国立大学法人評価委員会では、各国立大学が作る中期計画の進捗状況を1年ごとに評価しています。また、私学も含めた全大学が対象となる認証評価制度、こちらは法令などへの適合性を確認するという性格が強いのですが、国立大学はこちらも対象になります。あわせて、国立大学自身による自己点検・評価とその結果の公開も必要とされています。
  それぞれのために別々に資料を作ることは、大学にとって負担が大きいため、こうした評価をうまく整理できないかと思っています。先ほども触れた情報公開を徹底的に見直し、その活用を進めることによる代用も考えられると思います。
  また、評価の項目、情報開示の内容という観点でも、評価のためだけではなく、学生を含む全てのステークホルダーが、それぞれ必要とする情報にアクセスできるところまで踏み込むべきだと思います。
  あわせて、評価の主体を、現在の国立大学法人評価委員会と整理統合することも考えられます。評価基準が複数あるのも不自然なので、そういった点の整理も必要だと思います。
  また、鈴木委員から御指摘のあったインターンに関して申し上げますと、2.2%という学生参加率は、医師や教師になるための実習のような、資格取得に必要なインターンを除いたものだと思いますが、以前、インターンへの参加を希望する学生の数に比べて、受入れ企業が少ないという課題もあると文部科学省の方にお伺いしたことがあります。文部科学省でも、インターン促進のための補助事業の予算を措置するなど、いろいろ取り組んでおられますし、最近の例ですと、海外留学支援制度のトビタテ!留学JAPANに新設された地域人材コースでは、地域の産官学が主体となって海外留学と地元企業でのインターンを組み合わせたプログラムを作られるなど、インターンに参加する学生を増やす取り組みをやっておられると聞いています。
  それから、教育資金の全体的な問題についても、一言申し上げます。去年、下村文部科学大臣主催の勉強会で、高等教育と就学前教育、つまり公財政支出が薄い部分を拡充するための財源をどう確保するかについて議論しました。当時は文部科学省レベルで行っていましたが、今は、教育再生実行会議の分科会に場を移して議論しています。結論が出るのは、少し先の話になりますが、そういった状況であるという点についても申し添えておきます。
  以上です。
【須藤座長】  ありがとうございました。お願いいたします。
【事務局】  今の北山委員のお話に関連して、今のアップデートの状況を申し上げます。インターンシップはどう定義するかという問題については、企業で研修して、そこで様々なことを実質に学ぶだけではなくて、今お話ありましたように、例えば海外での短期で留学するとか、あるいは地域でのボランティア活動も含めて、いわゆる学外でのいろいろな経験を深めていくことということで、私どもとしては捉えさせていただいております。
  大学設置基準を改正させていただきまして、いわゆるアカデミックカレンダーについては15週を基本とするだけでなく、10週という形にして、例えば4学期制などという形で、まとまった形での長期の、いわゆる授業を受けない期間も設定することがかなり重大になりますので、そのようなことも生かしながら取組を進めていこうということでございます。
  特に日本の場合はインターンシップの数が少ないだけではなくて、むしろ期間が数日しかなく、欧米の国に比べて、短いという問題がありますので、長期的なインターンシップを、そういうアカデミックカレンダーの学期も活用してやっていこうということで今、政策を進めているところでございます。
  インターンシップの受入先を開拓する、あるいは受入先と学生間に入って調整するようなコーディネーターの人材が非常に少ないという問題もありますので、それの予算を付けるという形で現在、取組を試行という形で広めています。
  この問題については、教育再生実行会議におきましても幅広い議論を行っていただいているところでございますので、場合によっては提言があれば、それを含めて更に議論を深めていくということについては、方向性として考えているところでございます。
【須藤座長】  鈴木委員、お願いします。
【鈴木委員】  今、おっしゃったように、やはり、インターンシップの重要性というのは、そのインターンシップをどう定義するかとかにかかわらず、多くの学生が学外でそういう経験を積むことに意義を認めていますし、それに対して、先ほど山本委員にも補足していただきましたけれども、政策的誘引をとった方がいいということも、恐らく多くの人たちのコンセンサスであるとするならば、是非こういう評価においても活用してほしいと私は思います。先ほど北山委員におっしゃっていただいた医師とか教師の特定資格の部分についても9.6%ですので、2.2と9.6で、単位認定の部分については、いずれにしても1桁台の学生の参加にとどまっているわけです。
  私はもともと、別に何か昔そういう仕事に携わったからどうこうとか関係なく、地域の人間として、地域の中小企業の皆さんたちは、私は何か反論する形になって申し訳ないですが、北山委員がおっしゃっていただいたほどに企業が受け入れたくないということは地域においてはあまりなくて、むしろ受け入れたいけれども、学生の皆さんにどうアプローチしていいかわからない。そういう意味では、先ほどおっしゃったコーディネーターの重要性は非常に高いと思います。私どもも実はトビタテ!留学JAPANも挑戦させていただこうと、いろいろ御相談もさせていただいているところです。
  なので、今の実勢からいっても比較的、文部科学省の政策的誘導や企業の皆さんの受け入れてもいいよという土壌も広まりつつも、まだまだ学生の参加が進んでいないので、是非こういう政策誘引を総動員するということで、一つの選択肢で挙げると有り難いなと思います。
【須藤座長】  ありがとうございました。では上山委員からお願いいたします。
【上山委員】  今出てきている話題に関して少しだけ考えることを申し上げますと、週末、シンガポール国立大学にシンポジウム出席のために行ってきたのですが、いろいろな話を聞いて、非常に興味深いことを聞きました。とても面白いなと思ったのは、これだけグローバルになっている研究教育のマーケットの中で、ほかの国の中のベンチマークがどうなっているかというのを結構調べているのです。バークレーと、それからほかの私立大学にも依頼をして、例えば教員の給与や学生と教員との比率など様々な項目に関して、競争的になってきているアメリカの中で公的な役割をしているような私立大学と、研究大学型が、どういう基準で動いているかということを調べてもらい、アドバイスをしてもらっている。その上で、これぐらいのレベルで研究教育の指標を確保しないと、なかなか競争はできないなということを確認した上で自らの大学の経営を評価していく形をとっていると。とても面白いやり方だなと思いました。
  もう一つ面白いなと思ったのは、地域との関わりにも関わっているのですが、大学の財務の1つの方法として、例えば研究者が民間の企業から寄附金なり、あるいは共同研究費なりを1ドル受け取ると、公的資金がそれに3ドル付いてくると。つまり、公的資金をたくさん得るためには民間の資金を手に入れなければいけないと、そういうインセンティブ構造を作っています。そうすると確かに、研究資金の3分の1ではあるものの民間の資金を手に入れようとする動きが出てくると。それによって民間の企業との間の対話が生まれ、ある意味ではローカルなところのコネクションも生まれてくると、そういうことを考えているのです。
  シンガポールは500万人ちょっとの小さな国ですし、ある意味では独裁国家なので、割とそういうことをトップダウンできる国ではあるとはいうものの、そのローカルな経済に関して大学が果たしていく一つのインセンティブな在り方として、例えば地方のところで民間の企業と関わって何かやってくると公的資金をそれに付与するという形で、それをサポートするようなやり方もあるだろうと思います。それが公的なものを担保しながら民間との関わりを強くしていくと、そういう政策のやり方もあるのだろうなと思いました。
  もう一つ申し上げたいのは、大学のバジェットのことをちゃんとやった方がいいなと本当に思います。日本の大学のバジェッティング・システムが、旧態依然のお小遣い帳みたいな形でしかできていないからです。恐らく、その中でたくさんの無駄もあり、そして本来なら使えるはずであるものが使えなくなっているという形もあって、このバジェットのやり方を、やはり海外の例を見ながら、コンサルティング的に教えてもらうということもやった方がいい、そういう時期に来ているなと思います。
  シンガポール国立大学は、もう2008年ぐらいから、アメリカの重立った研究大学バジェットのオフィスの人たちを呼んでコンサルティングをやって、自分のところのバジェットの組み方を徹底的に洗い直してもらうということをやっています。そういうことをやることによって、大学のマネジメントとガバナンスは効率的になって、今の予算でも、もしかすると非常にもっと戦略的なことができるというきっかけが出てくると思います。そのようなことを政府がやるべきなのか、それぞれの個々の大学にそれを求めるのか、それは分かりませんが、それを私はした方がいいなと思っています。
【須藤座長】  ありがとうございました。熊平委員、お願いします。
【熊平委員】  3点ございます。まず一つは、今回の評価がこれまでと何が違うかというところです。やはり、変革ビジョンがあるというところ、ここからスタートしているというところが、前向きに捉えれば違うのだろうと思っています。ビジョンがあって、計画があって、実行力があるということを見なくてはならない。実行力のところで当然、信ぴょう性ということになりますので、過去の実績とか、KPIとか、いろいろな話になってくるだろうなと思います。なので、この変革ビジョンがどうなのかというところが加わっていることが大きいなと感じております。 評価されてやるものでもなく、ビジョンですという話です。
  それに関連しまして、最近ハーバード・ビジネス・スクールが、これから5年間に10億ドルを寄附で集めるキャンペーンを始めているという話をしたいと思います。ビジネス・スクールのディーンが世界中をそのために回っておりまして、1月7日には日本にも来ております。これだけの大金を、何でという話です。しかし、彼らとしては非常な危機意識なのです。これから100年後に生き延びられるかという話をしています。
  なぜそういうことになるかといいますと、2050年には85%の人口が途上国に住むわけです。ですので、経済の中心はもはやアメリカではなく、先進国ではなく途上国に変わると。そういう中で、米国ボストンにあるビジネス・スクールが生き延びられるかという話で、既に6割近くが海外のケースになっているそうですが、これはますます増えてくるという中で、存続を懸けてファンドレイジングしているという話です。
  それを聞いているとビジョンが本気で、それでみんながお金を出していくと、そういう構造がありますので、そのビジョンの本気度をどうやって評価するのですかという話も実はあるなと思います。
  それに関連して、12月に教育再生会議のメンバーでもいらっしゃる品川女子学院の漆先生と一緒にオランダに行ってまいりまして、小学校の監督をしているところを見に行きました。オランダの小学校は6年生までの教育は比較的自由ですが、6年生の段階で、ある一定レベルの学力が付いていないと卒業できないという仕組みになっており、それを第三者的に監査して監督しているという人たちがいました。
  その方たちの話を聞いていると、先ほどの評価疲れは全くなくて、学校と一緒に子供たちのために、いい教育を実現するために、その評価をし、改善を促し、そして良い教育が実現すると、そのような流れになっていて、すばらしいなと思いました。私も大学で認証評価を受けた経験があるので、ふっと日本の評価のことを思い出すと、あっ、そうはならないなと思いました。
  今回のこういう一連の評価の話は、評価をする側も、される側も、このビジョンを実現するために、共に進んでいくようなマインドのシフトみたいなものが起きないと、いつまでも評価されるとか、どうやってお金をとってこようかとかいう話になってしまって、なかなかビジョンに到達できないのではないかなと思います。地方の小規模の大学も、ビジョンを作れば、みんな応援すると思いますし、お金も外からとってきてもいいと思いますし、何かちょっとそういうパラダイムシフトが起きればいいなと思いました。
  以上です。
【須藤座長】  ありがとうございました。時間も残り少なくなりましたが、何かございますか。上山委員、お願いいたします。
【上山委員】  さっきの寄附の話ですけれども、スタンフォードが43億ドル集めました。4,300億ですね。僕は前に大阪大学に関わったときにビジョンの話はしたのですが、アメリカの大学の学長の役割はファンドレイジングなのです。そのためにビジョンを作るのです。しかも、そこに非常に綿密なシナリオとエビデンスに基づいたビジョンを作る。したがって、自分の大学はどれぐらいリソースを持っているか、どれぐらい人間を抱えているか、そのようなしっかりとしたエビデンスに基づいた長期のシナリオを書く。極端なケース、普通、それから良くないケース、それぞれのケースを想定したビジョンを書いて、そしてファンドレイジングをするということなので、大学の中のことを分からない限り、そういうことはできません。それを作るとファンドが集まるというおいしい面もあるので、やろうとするわけです。
  それを、あまり結果が伴わないのにビジョンを作れといっても、誰も作りたがりません。そのことが大学の財務を好転させるという、ちゃんとした目的に合致しているならば必死になって作るということなのだと思います。そういう構造を早く作ってほしいなと思っています。
【須藤座長】  ありがとうございました。熊平委員、上山委員からビジョン、インセンティブ、そのようなものをしっかりと作れば付いてくるのではないかという発言もありました。その前に海部委員、あるいは北山委員からありました、今の評価されているところをもう1回ちゃんと評価して、評価を評価して、何が今評価されていて、この新しい考え方の下に、何をしなくてはならないのかをきちんと整理しなければならないなというのも感じましたので、その辺はなるべく早い時期に整理して、この場に御提示して、また議論していただこうと思います。
  では、本日はここまでにしたいと思います。どうもありがとうございました。


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