学生への経済的支援の在り方に関する検討会(第10回) 議事録

1.日時

平成26年4月21日(月曜日)15時~17時

2.場所

経済産業省別館11階 1115各省庁共用会議室
(東京都千代田区霞が関1-3-1)

3.議題

  1. 学生への経済的支援の在り方について

4.出席者

委員

相川委員、奥舎委員、小林委員、中村委員

杉野理事長代理(日本学生支援機構)、甲野理事(日本学生支援機構)、石矢奨学事業本部長(日本学生支援機構)

文部科学省

渡辺学生・留学生課長、田中学生・留学生課長補佐、渕村学生・留学生課長補佐

5.議事録

学生への経済的支援の在り方に関する検討会(第10回)
平成26年4月21日


【小林主査】  それでは,時間になりましたので,これから学生への経済的支援の在り方に関する検討会第10回を開催させていただきたいと思います。
 まだ高等教育局長と渡辺課長がお見えになっておりませんが,後から参加されるということなので,開催させていただきます。
 本日も日本学生支援機構の関係者の方が陪席しております。御了承いただきたいと思います。
 理事長代理と理事が新しく着任されましたので,一言御挨拶をお願いしたいと思います。
 まず,杉野理事長代理からよろしくお願いいたします。

【杉野理事長代理】  4月1日付けで日本学生支援機構の理事長代理を拝命いたしました杉野でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【小林主査】  ありがとうございました。
 では,次に,甲野理事,よろしくお願いいたします。

【甲野理事】  同じく4月1日付けで日本学生支援機構の奨学金を担当する理事として着任をいたしました甲野でございます。どうかよろしくお願いいたします。

【小林主査】  どうぞよろしくお願いします。
 それでは,議事を始めるに当たりまして,配付資料の確認を,事務局よりお願いいたします。

【田中課長補佐】  はい,失礼いたします。それでは,お手元資料の件でありますけれども,議事次第の方を御覧ください。
 本日の議事は,(1)学生等への経済的支援の制度それぞれの在り方について,次に(2)大学等奨学金事業に係る情報提供と理解の増進についてを予定しておりますが,それに相当するものとして,資料の1及び資料の2を準備させていただいております。その他資料の3に,今後の「当面の検討会の日程について」,また,参考資料には,前回配付した「今後の議論を行うに当たっての視点」をお配りさせていただいております。また,委員の先生方におかれましては机上に簡単なシミュレーションを置いておりますので,そちらも御確認ください。
 以上であります。

【小林主査】  どうもありがとうございました。4月に入り新年度に入りましたので,いろいろ変更もありましたし,また,委員の方々もなかなか年度初めでお忙しいところで,本日は人数が少ないので,じっくり審議したいと思います。申し遅れましたが,参加していただいた委員の皆様,どうもありがとうございます。
 さて,本日から2回ほど個別の論点について検討して,最後に取りまとめを行いたいと考えておりますので,本日はその第1回で,今までの総復習といいますか,論点を挙げていくということになるかと思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。
 では,議題の1として,学生等への経済的支援の制度それぞれの在り方について,議題の2は大学等奨学金事業に係る情報提供と理解の増進について,これまでいろいろ議論してまいりましたが,それぞれもう一回,論点を整理していきたいと思います。
 では,まず,議題の1の学生等の経済的支援の制度それぞれの在り方についての検討を行いたいと思います。事務局より資料1で説明をよろしくお願いいたします。

【田中課長補佐】  はい,失礼いたします。それでは,お手元資料の1を御覧ください。また併せまして,参考資料を本日お配りしておりますが,こちらも御覧ください。
 ただいま主査の方からお話がありましたけれども,まず,この参考資料の方を御覧ください。灰色網かけになっている部分(ホームページ掲載配付資料では下線部分)について,御確認いただけるかと思いますけれども,表裏それぞれ1か所ずつというところであります。本日,個別の論点ということで議論をしていただきたいと考えていますのが,この網かけ(下線)の論点というところでございます。
 一つ目は,2にあります「学生への経済的支援の制度それぞれの在り方について」,二つ目は,裏側に書いてあります「奨学金についての情報提供と理解増進について」,本日はこの2本立てということでございます。
 最初のセクションでございますけれども,「学生への経済的支援の制度それぞれの在り方について」ということで,この資料の1を作成させていただきました。この資料1にあります1「背景」,2「論点」でございますが,これは先日お配りした参考資料の方からそのまま写しをしているものでございます。簡単に御説明しますと,まず「背景」ということで,丸の一つ目でございますが,端的に申しますと,現在の学生等への経済的支援というのは,JASSOの奨学金あるいは民間の給付型奨学金,その他授業料減免など,複数のメニューによって行われているという現状があります。
 このような複数のメニューによって成り立っている学生支援,これはそれぞれどのような役割あるいは理念において行っていくべきなのかということを,「背景」として掲げさせていただいているところでございます。
 また,2でございますが,前回も簡単に議論を頂いたところでありますが,こちらの方で「論点」を幾つか挙げさせていただきました。
 一つ目といたしまして,そもそも学生支援の制度,これはシンプルあるいは複数の手法によってきめ細かく行っていくべきなのか。
 二つ目といたしまして,各個別の学生支援のメニューについては,今後どのような観点でなされていくべきなのか。
 また3番目といたしまして,給付的支援の充実については,どういうようなシークエンスで,どういうような順番で,どのターゲットから,あるいはどういうようなスパンで行っていくべきなのかということを記載させていただいております。
 引き続きまして,3番でございます。「各学生等への経済的支援の制度に関しての整理」で,個別の学生支援メニューの主なものについて幾つか整理をさせていただきました。具体的には,1から3まででございます。
 まず,1では,貸与型奨学金についての各種返還免除制度ということであります。現在,JASSOの行っている奨学金についての返還免除制度については,ここで掲げています業績優秀者の返還免除制度というものが運用されているところでございます。概要については既に皆様御案内のところかと思いますが,大学院で専攻する学問分野での顕著な成績,発見・発明等の業績を総合的に評価することで,我が国のあらゆる分野で活躍し,発展に貢献する中核的人材を育成すると,こういった目的を掲げて制度を運用しているところでございます。
 また,これについてのメリット・デメリット,これまでの議論もありますけれども,ここを改めて簡単に整理をさせていただきました。まず,メリットでございます。メリットということで,学修に係るインセンティブの付与。要は,大学院においてしっかりと勉強していただく,学問に対してのインセンティブの付与ということは教育的な効果は高いところです。また,事後的に免除されるか否かということが判定されますので,その判定に至るまでに学生側としてはしっかり勉強しないと,免除になるかどうか分からないという観点からは,返還免除を受けるためにしっかり勉強するという動機付けになるのではないかということは挙げられるかと考えています。
 1枚おめくりいただきまして,デメリットでございますが,これはまさにその裏腹の話でございます。貸与時に免除が受けられるという保証がないことから,予見可能性に欠ける。自分は本当にその免除を受けられるか,受けられないか,それがまさに大学院での勉強の経過によって判定されるということにありますから,ここにも記載させていただいておりますように,とりわけ借金を背負うことを回避する傾向にある低所得者が恩恵を受けられない可能性があると。低所得者の方はできるだけ借金を背負いたくないと考える傾向があるということがありますので,そういった借金を背負うかどうかが将来的にふたを開けてみないと分からないということは,低所得世帯の人々にとっては,免除を受けられない可能性があるということはネガティブな要素になるのではないかということを掲げさせていただいております。
 また,固有の論点ということでありますけれども,大まかに二つ掲げさせていただきました。
 まず一つ目,博士課程への進学のインセンティブの付与のため,博士課程の進学者については,一旦,修士課程の段階で判定の機会を付与すべきではないかといったことが考えられるかと思います。博士5年まで行くときには,5年の最後の成績だけで全てを判断するのではなくて,博士課程に進学する際にも,一旦,修士課程の段階で免除かどうかを判断するというだけでも,借金を負うことへの不安感の大きさが変わってくるということもありますので,そういった形で一度だけではなく二度,複数回にわたって判定をしてもいいのではないかということで掲げさせていただきました。
 またもう一つ,これは中間まとめでも言われておりますが,現在認められている大学院生のみでなくて,学部段階,その他の学種まで制度の適用範囲を広げるのかということを掲げさせていただきました。その際に考えるべき点といたしましては,学校側において選考のための基準あるいは体制をどのようにして整えていくべきなのか。学部段階までの評価ということになると,非常にバラエティーに富んでいるというようなことも考えられるかと思いますが,適正で公正な選考ができるのか,あるいはそのための体制というのはしっかりとできるのかという観点で記述をさせていただいております。
 また,この実績についてですが,平成23年度貸与終了者に係る平成24年度の免除実績ということで,9,048人,おおむね1万人,125億円の実績があるということをデータとして記述をさせていただいております。
 また,ここから先は参考ではございますが,過去に実施されていた奨学金の返還を免除する制度ということで2点掲げさせていただいております。
 一つ目は,御案内のとおりでございますが,教育・研究職返還免除制度ということでありまして,社会的要請の強い教職あるいは研究職に一定期間従事した場合については,奨学金の返還を全部又は一部免除するというような制度でございます。冒頭申し上げましたように,これは既に廃止されているものでございます。前回も少しお話にもありましたけれども,平成16年度には全面的に廃止されております。そのときの理由といたしましては,特定の職のみを優遇することの不公平感,あるいは人材の誘導効果の減少ということを理由に廃止されております。その一方で,現行の業績優秀者返還免除制度ということで新たに制度の運用が開始されているという関係になっております。
 ちなみに実績ということですけれども,この参考の部分でございます。制度が廃止されました平成9年度,これは学部段階でございますが,そのとき,1万940人の方々がこの制度の恩恵を受けていた。あるいは,平成15年度の大学院まで含めてのタイミングでありますと,これは3,527名。それぞれ137億円,59億円というような額が免除をされていたということでございます。
 次のページでございます。もう一つの返還免除制度ということでございますが,特別貸与返還免除制度というものも以前は運用がありました。概要ということでございますが,特に優秀な素質・能力を持ちながら,経済的に著しく進学が困難な者に対して奨学金を貸与していたというものでございます。具体的には,一般貸与と特別貸与ということで額が2種類設定されていたところでございますが,特別貸与を受けていた者については,そのうちの一般貸与に相当する額を返還すれば,その上乗せ部分である特別貸与分については返還を免除していたということであります。
 また,この廃止の理由というところでございますが,一般貸与と特別貸与の貸与額の差が僅少になったため,一般貸与に一本化するということで全体の貸与額の増加を図ったということに伴いまして,昭和59年度から廃止されております。なお,昭和59年度は,無利子奨学金に加えて,新たに有利子の奨学金を創設した年で,それに合わせてこの特別貸与の制度については廃止されたということとなっております。
 ここまでが返還の免除についての論点でございます。
 引き続きまして,授業料減免についてでございます。御案内のとおりでございますので,概要については割愛をさせていただきます。
 メリット・デメリットということで,それぞれ2点,1点お示しさせていただきました。
 まずメリットということでございますが,修学段階において減免を受けられることから,予見可能性が高いという,先ほどの議論と同じことでございます。
 また,奨学的観点のウェイトが高いということがありますので,奨学金の返還の免除,現行の業績優秀者返還免除制度に比して,経済的に困難な者への支援に効果的ではないか。制度の設計次第ではございますが,基本的な考え方ということで授業料減免については奨学的観点のウェイトが高いということで,経済的に困難な者への支援についてはこちらの方は有効ではないかということはあります。
 また,デメリットということでございますが,これは先ほどの業績優秀者返還免除制度のメリットと裏腹の話でございます。事前に減免を受けられることに伴って,奨学金の返還の免除に比して学業へのインセンティブの付与の側面が弱くなると。これも制度の設計の仕方にもよりますが,先に減免を受けられるということでありますので,先にもらってしまったら後はそんなに頑張らなくてもいいと考えてしまうことがあり得るのではないかということで,記載をさせていただいております。
 また,固有の論点ということでここに記載させていただいておりますのは,おおむね二つということでございます。
 まず一つ,授業料減免の財源,これは学校種によって異なるということです。これは前回,前々回のお話などに少し出てまいりましたが,学校種によって異なるということから,これを差異のない形で支援すべきなのか。あるいは,そもそも設置形態が異なるということを踏まえて,それぞれ異なる形で支援をすべきかという点があると思います。括弧書きの中に現状の体制について記述をさせていただきました。国立大学については,運営費交付金の中でこれを支援する。また,私立大学については,私立大学経常費補助金の中で2分の1の補助。公立大学については,地方財政措置を通じて支援をしている。また最後に,専修学校については,財政的な支援は国からは出ていないというように,学校種ごとにまちまちというような体制になっているところであります。
 1枚おめくりいただきまして,最後,予算でございます。23年度から25年度,26年度,公立学校についてはまだ数字は出ていないところでございますが,それぞれの人数,それから額について記載をさせていただきました。詳細については御覧いただければと思いますので,説明の方は割愛をさせていただきます。
 最後に給付型奨学金でございますが,概要については端的に返還不要の奨学金を修学時に給付するとなってございます。
 また,メリット・デメリットということで,それぞれ,3点あるいは2点記載をさせていただきました。
 メリットについては,これまで言われていた話ではございますが,修学段階において給付を受けられることから,事後的な返還免除に比して予見の可能性は高いということが言えるのではないかと思います。
 また,二つ目といたしまして,これも先ほど出てきたメリットではございますが,借金を背負うことを回避する傾向にある低所得者への支援としては,まさに給付ということでございますので,有効ではないか。借金を負わなくて済むということであれば,低所得者に対してもこれを忌避することは当然ないということでございます。
 また,これも制度設計にもよりますが,設置者あるいは学校種を問わず,共通した給付的な支援の導入が可能ではないかという点もメリットして考えてございます。
 引き続きデメリットでございますが,現行の貸与型奨学金と比して財政的な負担が大きくなる,これはもう言わずもがなということなので,詳細は割愛いたします。
 また,加えて,これも先ほど出てきたメリットと裏腹なところでございます。事前に給付を受けられることに伴い,奨学金の返還の免除に比して,学業へのインセンティブの付与の側面がどうしても弱くなるということはあるのではないかということが言えるかと存じます。
 また,これの実績は当然ないのでございますが,少々シミュレーションといった形で,本日,委員の先生方のお手元には数字を御用意させていただきました。机上配付資料と書いてある1枚物を御覧いただければと思います。給付型奨学金に係る予算のシミュレーションの例でございますが,現行の無利子奨学金,これを基準といたしまして,実際にパターンA,B,Cということで,経済的な困難度合いという観点,あとは成績がどれだけ優秀かという観点,この2本の考え方の順列組合せでやった場合にどれぐらいの規模になるかというものでございます。便宜上,考えられるものということで,パターンA,B,Cとまずここで記載をさせていただきました。
 パターンAでは,極めて経済的に困難であって,特に優秀な者について給付をすると。現行の無利子奨学金を給付している対象者から相当絞り込んだ形ということでございますが,その場合であれば,人数として約6.3万人になるのではないか。
 パターンBでは,現行の無利子奨学金に比してもう少し経済的に困難である者,あるいは特に優秀な者ということで,成績要件をパターンAに比して若干緩めた場合は,約11.3万人に対して給付がなされるという形になります。
 最後,パターンCでございますが,家計については,パターンAと同様に極めて経済的に困難ということで設定をする。その上で学校の成績の基準ということについては,現行の無利子奨学金よりも若干厳しめということで,優秀な者に給付ということでございますが,そうした場合は約9.4万人ということでございます。
 それぞれ380億円,678億円,564億円というような規模になるのではないかと試算をしております。ちなみに,この額については,冒頭の四角囲いの中に書いておりますが,仮に月額5万円という形で給付した場合ということのシミュレーションということでございます。それぞれ参考のところにも書きましたけれども,一番家計の厳しい,あるいは成績が厳しいといった場合はパターンAの6.3万人,あるいは現行の無利子奨学金と同程度ということで,これを全部給付型に切り替えるという場合は,当然,現行の無利子の41.6万人と同じ人数が入ってくるということでございますが,これは順列組合せの世界でございますので,こういった規模感になるということを御参考までにお示しさせていただきました。
 説明につきましては以上でございます。よろしくお願いいたします。

【小林主査】  ありがとうございました。
 最初に,「背景」ということと「論点」ということで少し大きな,そもそも学生支援とはどういうことを背景として行われているのかというようなことがありまして,それに関する論点が3つほど出され,あとは個別に幾つか,現行の返還免除あるいは授業料減免,それに,今のところは高等教育に関してはない給付型の奨学金というようなことで御説明があったわけですけれど,議論の前に,これは最後に申し上げることかもしれませんが,学生への経済的支援はそもそも何のためにかということを少し私の方からもう一回整理したいと思います。
 口頭で申し訳ないのですが,一つは,やはり教育の機会均等という,これは憲法,教育基本法に載っている一番大きな問題でありまして,これは個人の点に関して言えば,格差の是正や公正に関する問題と考えられるのですが,それに対して社会全体から見ますと,やはり有為な人材のロスを防ぐというような効率的な観点も含まれているということでありまして,これは育英という観点です。人材のロスを防ぐという意味と,それから奨学,機会の均等を広げるという意味と,二つあるかと思います。これが奨学金あるいは学生支援の一番大きな意味だろうと思いますが,最近,各国で,これにもう少し,特に貸与奨学金について意味合いが変わってきたのは,教育費の負担を軽減するという観点が加わってきたということであります。各国とも教育費の負担が非常に重い。日本も非常に重いわけですので,これは今申し上げた基準だけですと教育費の負担が非常に重たい層,特に中低所得層の負担というものが大きくなっているので,それを軽減するために特に貸与奨学金論というものが出てきたというような経緯があります。
 それから3番目に,意外と忘れられているのですが,もともとの意味としてやはり学生生活を支援するということで,学生の修学を支援するということでありまして,日本の場合,ほとんど卒業できますので余り大きな問題にはならないのですが,中退や,あるいはアルバイトに精を出して学業が不振になってしまうということで卒業できないということに対する学生生活への支援というような意味合いが入ってきています。
 この3つが非常に大きな学生の経済的支援の意味だろうというように思っておりますので,そのあたりを念頭に置いて議論していただければと思います。
 最初に,少しずつ区切って議論を進めていただきたいと思いますが,2の「論点」というところです。そもそも学生支援の制度は,今後,シンプルな形でなされるべきか。あるいは,これまでのようにいろんなメニューがあるというのがむしろいいと考えていくのか。つまりそれぞれ別々に貸与型奨学金,授業料減免,あるいは返還免除というものを,個別に進めていくのがいいのではないかと。あるいは,もう少しこの部分は充実させるけど,この部分は現行でいい,あるいはもう少し軽くていいのではないかというような整理をするなど,このあたりの論点について少し御意見をお伺いしたいと思いますが,いかがでしょうか。少し話が大きな論点になりますが,各国ともこういった制度が複雑になっているというのは,本日の次の議題でありますが,情報提供というような意味合いからいっても非常に問題になっているということがあります。シンプルにやっている国は余りないのですが,オーストラリアがそれに近く,それ以外のイギリスやアメリカは非常に複雑な学生の経済的支援の仕組みを作っていますので,それが学生の理解が得られないという問題を生じさせているということでありますので,シンプルな方がいいのではないかというような論点が出てきたわけですが,いかがでしょうか。

【奥舎委員】  よろしいでしょうか。

【小林主査】  どうぞ。

【奥舎委員】  個別の多種多様性,やはり今は多種多様に選択肢がたくさんあった方がいいと思います。いろんな制度があって,商品は好きな部分をピックアップできると。生徒が高校時代にこういう商品はピックアップできるということで,多種多様はあっていいのですが,一番問題になるのは,商品がたくさんあった場合のいわゆる情報公開や広報体制が十分でないということ。周知徹底できなかった場合には非常に不公平感が助長されると思います。ですから,今みたいな商品はたくさんあってもいいが,情報提供については均一化・平準化できる体制をしていただきたい。それでないと,利用する者はたくさん利用する,全く知らない者は利用できない,知らなかったということで,非常に不公平感が助長されると思います。

【小林主査】  ありがとうございました。本日の2番目の論点でまたもう一回取り上げたいと思いますが,おっしゃるとおり,私たちも幾つか調査を行っていますが,やはり知っている人と知らない人の差が非常に大きいです。中には日本学生支援機構の奨学金そのものの存在を知らないという人もいるわけで,あるいは知っていても詳しく知らない,第一種と第二種の違いもよく分からないなど,いろいろな問題があります。ですから,そのあたりのことをどのように考えていくかということですが,特に相川先生,高校の立場から御意見を頂ければと思います。

【相川委員】  そうですね,先ほどの意見と似た形になると思いますが,やはり受ける学生側からしたらいろいろな間口があるということは助かる。例えばこれが1本ですよって,この1本に当てはまらない学生は外れてしまうわけですよね。だから,複数あることによって救われる学生もあるという考えもできるのかなという。あとは次の論点の情報提供の部分になるのかなと。ただ,余り複数になっても,本当に手続的に要するものというか,事務手続的なもの複雑さも出てくるでしょうし,借りる生徒・学生の方がきちんと理解できているかどうかという,そんなこともあるので,まずはシンプルなものというのは何がシンプルなのというところをきちんと押さえた上で,枝が少し付くということが必要なのかなと感じます。

【小林主査】  ありがとうございました。シンプルというのは確かにどういう意味かというのは難しいところがありまして,例えば授業料減免と給付型奨学金というのを,学生からするとほとんど同じようなものですが,全然違う形になっているわけです。ですから,そういうことをどのように整理していくかということも一つだろうと思いますが,例えば学生への経済的支援というのは一つの仕組みとしてあって,その中にいろいろあります,というようなことも考えられるとは思います。ただ,現行の仕組みだと一つの仕組みとしてまとめるのは非常に難しいわけです。先ほど事務局から説明ありましたように,いろいろなところが様々な形で支援を行っていますから,それを統合することがシンプルと言えるのかどうかというのは一つの問題だろうと思います。
 それからもう一つ,私から付け加えさせていただきますと,これも何回かここで御紹介しましたが,アメリカの大学ではアウォードレターというのがありまして,大学側が一番いいパッケージを選んで作成してくれるという仕組みを持っています。アメリカの学生支援は,非常に複雑になっていますから,学生にとって一番有利なものから順番に大学側が,大学に入った場合にはこういう形で学生支援を受けられますというアウォード,つまり報奨をどういう形で与えるかということについての手紙が来るわけです。学生はそれを大学選びの基準とすることができるわけで,これは大学入学以前に来ますから,それも一つの仕組みだと思いますが,アメリカの場合,それでもなお複雑過ぎるという意見もあるくらいです。日本では全くそういう仕組みがないわけですから,そのあたりをどう考えておくかということがあるかと思います。
 それから,イギリスのスチューデント・ローンズ・カンパニーでいいますと,スチューデント・ローンだけではなくて給付型奨学金も行っているわけですけれども,今,大体800人体制でコールセンターがあって,いろんな学生からの問合せを受けている。一番多いのが,どういう奨学金があって,どういう仕組みになっているかということだということで,それくらいの体制を組んでやっているということなのですけど,それで95%は大体何かしらの応答を受けられるというようなことでやっているということを聞いてきたのですが,日本の場合,JASSOも非常に頑張ってやっていただいていると思いますが,なかなかそこまでの体制は組めていないと思いますので,どうしても高校の先生や大学あるいは専門学校の先生の負担というのが非常に大きくなっているということもあります。ですから,そういったいろいろな問題が入ってくると思いますが,中村先生,いかがでしょうか。

【中村委員】  これは,原資があれば,もちろん広くやっていただくのが有り難いかなと思います。ただ,今の日本学生支援機構の貸与制度の中において,どこまで本来の趣旨を学校生活の中に生かしてくれる学生たちであるのか。奨学金を受けられることが当たり前だよという見方の中においては決して教育的ではないだろう。これは何回もお話ししていますが,やはり学生が学校生活をこの奨学金で支えてもらっているということを自覚し,感謝の念を持てるような制度であっていただきたい。その次に,原資があれば入学時の支援,若しくは学校生活の中のインセンティブがあるような効果的なところを網羅していただければ,これにこしたことはありません。今後も検討を要すのは,社会的貢献度を考慮するときに,どこまで,どのような選考方法で,それを今後どの学校種の中でそれぞれの対応の仕方ができるのかというところで,これが今後,非常に大きなポイントになってくるのかなと思います。よろしくお願いします。

【小林主査】  ありがとうございました。これも何回もここで議論になったことですが,公的な負担をするということは,それだけ社会に対して還元するのだということも中に含まれているということです。ただ,そのあたりのことがどこまで,今,国民といいますか,そういった恩恵を受けている人たちに伝わっているかということも余り明確ではないという,これも何回かここで議論されたことだろうと思います。
 皆さんの御意見ですと,大体,極端に単純な制度にしてそれでいいのかということではなくて,やはり現行のいろんなオプションがあるのは,学生の選択の多様性という意味では非常に望ましいのですが,逆に選択の複雑性という問題が伴いますので,後半で議論する情報の提供,あるいは単に情報提供するのではなく,もう少しガイダンスや,あるいは教育的配慮といいますか,感謝の念を持ってもらうことなど,そういうことも含めて議論するべきだということでよろしいでしょうか。
 では,少し個別の論点に参りたいと思いますが,初めに,これは主に大学院のことになるわけですけれど,現在,業績優秀者免除ということが行われています。この制度については2004年に日本学生支援機構ができるときに制度が変更されたのですが,これについてはいろいろな意見あります。特に一つの問題点は,固有の論点というところでありますように,貸与を終了してからでないと免除を受けられるか分からないということで,予見可能性が非常に低いわけです。しかも,相対的な競争になります。現在は貸与終了者の3割で,全額免除が1割,半額免除が2割だということになりますと,自分が幾ら優秀であっても,ほかの人がもっと優秀だったらもらえないという,そういう仕組みになっていますので,こういうような仕組みでいいのかということがあります。それから,免除されるのは飽くまで大学院段階だけであって,学部のときに借りた分は免除されないという問題があります。このあたり,どのようにお考えでしょうか。特に奥舎先生,大学の立場から。

【奥舎委員】  私どもの大学は,この間,修士課程を創ったばかりなので,少し認識が浅いのですが,非常に難しいと思います。前原委員が以前言われたことを印象的に覚えているのですが,学部まで広げて,いわゆる恩賞的な,表彰的なものにした奨学金というのを言われたのですが,私個人では,やはりそういう形で大学院生については持っていった方がいいのではないかと思っております。ただ,ここにあるようにデメリットは確かにあるわけですが,大学院へ行って院生になり学問を研究するということは,もし免除という結果にならなくても,奨学金の該当者にならなかったとしても,学生はそれで満足じゃないのでしょうか。

【小林主査】  背景として少し申し上げますと,これも以前,示したと思いますが,大学院への進学者が全体として増えていないというか,減少傾向にあるということがあります。特に人文社会系が減っているということです。その中でも特に博士課程進学者について問題が大きいということでありまして,その一つの理由が,経済的な負担が大きいという問題です。最大の理由はやはり就職問題だろうと思いますけれど,それに次いで経済的な負担が大きいという問題でありまして,そうしますと,これももう少し細かく議論しなければいけません。例えば工学部ですと,今,修士課程まで進むというのは非常に多くなっておりますので,それで就職するというのが普通になっていますから,同じ修士課程といってもかなり性格が違っている。あるいは専門職大学院と研究型の従来の大学院というのも違っています。アメリカの場合は,このあたりはきちんと区別を付けて学生支援をしているわけですが,日本の場合は今のところ,大学院であれば全て同じ形でやっているわけです。ですから,そのあたりのことをどう考えるかという,これもかなり難しい問題ですが,バックグラウンドにあるのは,そういった大学院に進学する人間がこのままでは,特に優秀な人間が減ってしまうのではないかという問題です。これもエビデンスが明確にあるわけではないですが,量的には間違いなく減っていますし,優秀な人間が進学してこなくなるのではないかと,そういう問題です。ですから,そのあたり,いかがでしょうか。直接大学院をお持ちでないかもしれませんけど,御意見として伺えればと思いますが。

【相川委員】  これは,修士課程へ進む学生が,今,減っているという現状があると。これはもうトータル的に見て確実に減っているということなので,それを食い止めるためにこの奨学金の免除制度を活用してということでしょうか。

【小林主査】  今の仕組みですと,先ほど申しましたように,貸与を終了した後でないと免除されるかどうかが分からないのです。そうすると,進学時に奨学金を借りるのは,非常にリスクが大きいわけです。そのあたりのことをもう少し予見可能性を高める方がいいのではないかという議論が前にありました。

【相川委員】  その辺は上に進むに当たって,やはり学生もそうですし,保護者としても,自分の子供が奨学金を受けられるのか,受けられないのかということが分からない状態の中で,サポートできる保護者の経済事情があればいいですけれども,そうでない状況の子供が上に行きたいと言っても,なかなか自分のところの経済事情ではサポートできないという保護者がいるわけです。そういう生徒がいるとすれば,先に受けられるというのが分かっていた方が安心できる。ただ,デメリットのところで借金を背負うこと,ネガティブな要素というか,その辺を先ほど御説明いただきましたが,やはり修士課程,博士課程へ行くという学生はそれなりに意識的なものを持って臨んでいると私は思いたいのです。思いたい。ごめんなさい,思っていますと言った方がいいのでしょうけど,思いたいのです。ですから,そういう学生さん,生徒,子供たちに対して,やはりきちんとした支援というのが先にあっても私はいいのではないかなというふうには感じていますけれども。

【小林主査】  ありがとうございます。今の形だと,おっしゃるとおり全く予見可能性がないのですよ。ですから,そのあたりがかなり問題だろうというふうに思いますが,いかがでしょうか,中村先生。

【中村委員】  この奨学金の目的が大学院進学者を増やすことにあるのか,また,大学の教育の質及びそこで学ぶ学生の質を高めていくという位置付けなのか,主たる目的の方向付けが必要ではないですか。実際,方向性としては,できれば修士へ行ったならば博士課程までというルートは,日本の将来を託すことのできる人材づくりという意味で,期待感は大きくなることは確かだと思います。学生,生徒だけでなく,社会人の学び直しの方々にも予見可能性の手段を提供いただき,修士から博士課程へというルートをより身近に選択できる進路の一つにしていただきたい。

【田中課長補佐】  よろしいですか。

【小林主査】  はい,どうぞ。

【田中課長補佐】  参考ですけれども,ファクトのデータとして,大学院の在籍者数の推移を少し御紹介させていただきたいと思いますが,例えば平成3年度の修士課程と博士課程を合わせた在籍者数の実績が,約9万9,000人です。これが約10年たって平成12年度になった際には約20万5,000人,修士,博士の合計でございます。そこから18年度,19年度,20年度は,おおむね26万人前後で推移をし,直近で一番多かったのが平成23年度で27万3,000人という実績になっております。平成3年度と平成12年度を比べると約2.1倍,平成3年度と平成24年度を比べると約2.7倍という形で,基本的には増加をしている。最近のトレンドとしては増えている傾向だけれども,傾きはそんなに強くはないというような形になっていると思います。
 以上です。

【小林主査】  そのとおりですが,ただ,理系と人文社会系とかなり違うのです。実は人文社会系が減っていて,理系は増えているという,その中で全体としては少し減っているという,そういう構図だろうと思います。それが一つの問題と,それから,今おっしゃったように,平成3年から非常に大規模な増加をして,今,説明がありましたように非常に急激に増えたのです。その結果として逆に就職難などいろんな問題が起きてきたという,ほかの問題も入っていますので,なかなか一筋縄ではいかないところがあるのですが,ただ,その中で現行の仕組みだけでいいのかというのが少しここで議論したいことだということであります。
 更に補足して言いますと,例えば学術振興会とか様々な形でほかの援助も入っています。TAやRAなどです。ですから,そのあたりも先ほどの議論と少し重なりますが,いろんなオプションがあった方がいいということの中で,ただ,日本学生支援機構の奨学金だけは返還しなければいけない。7割の人は返さなければいけないという仕組みでいいのかと,そういうような議論になると思います。

【中村委員】  社会的貢献度はどうなのかということですが,専門学校や厚生労働省の養成施設等におきましては,教員の免許だけだと指定履修科目教員として採用されないというところもございまして,修士,博士課程を修了して実務何年というような資格を有してないと,指定科目の教員資格となりません。特に,医療系や歴史の浅い福祉,介護分野等において,是非,先生の中の先生になれる人,上級専門人材を養成してくれるような課程になってくれると有り難いです。この辺の社会的貢献度というところにおきまして,先ほどの国策の中におけるルートが欲しいと思います。

【相川委員】  社会的貢献度というのは,何をもって社会的貢献度と判断するのかという,それこそ専門的な教職課程だとか,そういう職業だけが社会的貢献しているという考えは,私は違うと思いますけれども。ですから,そのラインをどこでどう引くのかというところも,この社会的貢献度というところがすごく曖昧だなという印象です。

【中村委員】  一言足りなかったのですが,私は,教職だけじゃなくて,専門知識としての一例を挙げました。

【相川委員】  そうだと思います。

【中村委員】  社会福祉系,医療系なども考えられると思います。

【相川委員】  そうですね,ええ。

【小林主査】  そのあたりも確かに論点として詰めなければいけないことだろうと思いますが,これは,アメリカやオーストラリアがいいという意味ではないのですが,一つの考え方として申し上げますと,比較的社会的貢献度が高くて,かつ収入が低いところを応援するというような考え方をとっているのです。どういうことかといいますと,基礎研究であるとか,先ほど言いました研究所とか,あるいは大学の研究ですね,そういうところは割と社会的貢献が高くて,かつそれほど収入が高くない。ですから,そこは応援しましょうと。しかし,専門職の大学院であるとか,これも社会的貢献は高いわけですけれど,収入も比較的高いだろう。ですから,そういうところは応援しなくていいという,そういう考え方をとっているのはオーストラリアやアメリカの仕組みですが,それも一つの参考になるのではないかという気はいたします。
 ただ,そういう場合,日本は,先ほど申し上げましたように大学院で全く区別を付けない平等主義でやっていますので,そうしますと,専門職大学院と研究型の大学院と違うということがいいのかという,そういう別の議論が少し出てきてしまいます。ですから,そのあたりが難しいところで,もう少し論点を詰めなければいけないと思っています。
 先生のところの修士は何の大学ですか。

【奥舎委員】  看護です。

【小林主査】  このあたり,看護も専門職に近いですが,もちろん,看護という研究も要るわけです。ですから,そのあたりをどう考えるかという,そういう問題もありますので,本日は時間の関係で,そういった論点が幾つかまた出てきているということを少し整理しておきたいと思います。
 次に,特別貸与返還免除制度について,これも廃止されてしまったわけですが,先ほど事務局から説明があったとおりですが,上乗せして,返す分は一般と同じでいいという,そういう仕組みでした。こういったような仕組みを新たに作るのはどうかという御提案があればということですけれど,それとも,この廃止になった理由のように,今更こういうものは特に要らないのではないかという意見も当然あるかと思いますので,そのあたりの御意見を頂ければと思いますが,いかがでしょうか。

【相川委員】  高校生が奨学金を借りるときに,確かに過去,返済しなくてもいいものがあった。しかし,今はそれがなくなって,大学進学するに当たって有利子の奨学金の事業があることによって,所得がある程度ある世帯の高校生,卒業するときの段階で親の所得が十分にある学生でも,親の方で「ちゃんと自分の学費は自分で賄いなさい」ということで,そこの家族での,親子での話で,「有利子を活用して学びなさい」と,そういう声をよく聞きます。ですから,有利子の事業があるということ自体は,そういう子供たちにとっても,親の負担も,ある程度の収入はあっても,やはり負担の軽減にはなっているというので,私は有利子の奨学金の事業ができたということに対しては――それも金額的に選べるわけですよね。月に幾ら借りるということが選べるわけで,それは子供の自覚にもなっているし,いい制度だなというふうに私は見てきました。

【小林主査】  昭和59年からできたのが有利子制度ということで,現在は第二種奨学金になるわけですが,現在,これが大幅に拡大しているわけですが,特別貸与というのはその前ですので,無利子のときです。無利子で,ですから返す分を,上乗せして貸しますが,一部,一般貸与と同じだけしか返さなくていいと。つまり,一部給付になっているわけです。こういう制度がかつてあったわけですが,それはもう時代に合わないとお考えなのかどうかということなのです。

【奥舎委員】  特別貸与という制度にしたら,復刻版みたいになりますね。

【小林主査】  ええ,そういうことになります。

【奥舎委員】  それを誰が認定するのか,基準はどうか,どういう制度に持っていくのか,一から考えていかなければならないし,これについて,もしそういう提案やこの委員会で一定の方向を出したら,これは深い議論になって大変なことになっていくというのは事実です。あえてこの特別貸与というのを私は考える必要ないと思います。それよりは,平準化して,一般貸与で大勢の方が奨学金の恩恵を受けられるという方向の方がいいと思いますが。

【小林主査】  奥舎先生が言われたような理由で多分廃止になったと思うのですけれども。そうだとすると,あえてここでまたそれを復活させるという理由は余り考えにくいということでしょうか。ありがとうございました。これは最後の給付型の問題もかなり似たようなところがありますので,またそれと併せて考えてみたいと思います。
 次に,授業料減免制度ですけれど,これは日本学生支援機構というわけではないのですが,やはり学生への経済的支援として非常に大きな意味を持っておりまして,というのは,給付型に実質的にはなるわけですので,そういう意味では非常に学生にとっては意味が大きい制度だと思います。ただ,問題は,下のところに固有の論点ということで書いてありますが,何回か議論いたしましたように,全く学校種によって在り方が違っているということなのです。公立についてはヒアリングでもお聞きしましたが,更に都道府県によっても在り方が全然違っているという,こういうことでいいのだろうかというのが一つの論点だったわけです。授業料減免制度を持っている専門学校についても現在は1件だけですよね。そういうような在り方でいいのかということが論点だったのですが,これについてはいかがでしょうか。

【奥舎委員】  例を示します。今,国立大学法人は全国の86法人あるのが全て一緒で,53万5,800円という授業料基準が示されています。本当に学生のことをそれぞれ考えていくなら,大学ごとに幾らかの斟酌(しんしゃく)が入ってもいいはずですが,全国一律。こうした国立大学法人を見習って,公立大学も大学の学生は授業料一律です。私のところは地理的条件が悪いことで,48万6,000円で,授業料は低く5万円落としているんです。それは地理的条件が,交通の便が悪いということでそうしているのですが,授業料の基準を示すということの不公平感というのは,法人化したら例えば授業料減免も,これは画一化するのが普通で,授業料の減免のパーセンテージは,公立大学の中,ある県立大学のヒアリング額は2%でしたね。北九州市立大学は10%超えていると。教育の機会均等を考えた場合に,授業料の減免のパーセンテージについては,国立大学法人は全部一緒,授業料も一緒,公立大学はみんなばらばらということになった場合に,学生から徴収する授業料だけは一定の基準でみんな一緒だけれども,授業料減免という恩恵は違うと。何か不公平感をすごく感じるというのがあります。公立大学の立場から見た場合。そこらの改善策は,もちろん公立大学も83校,短期大学も17校ありますが,みんなばらばらになってやっている。一定の学生の恩恵を受ける基準的なものは何か欲しいなというのを私は思っています。

【小林主査】  法人化する前から国立大学も独自の奨学金制度というのはあることはあるのです。ですから,そういう意味では大学によってばらばらなところもあるのですが,今,奥舎先生が言われたように,運営費交付金の中に授業料減免分として入ってくる額としては一律であって,それがその分だけ授業料減免に充ててくださいということで来るわけです。それにほとんどの国立大学は従っているということだろうと思います。ところが,公立大学についてはそれがないし,地方交付税交付金の方で入ってくるといっても実質的には地方公共団体によってばらばらになってしまっている。それがそういうことでいいのだろうかということだろうと思います。加えて私立大学についても2分の1補助ですし,それを使う,使わないは大学の自由になってしまっている。専門学校については先ほど申し上げたとおりで,国としては全くない。都道府県についても1件しかないと,そういう状況であるということですが,いかがでしょうか。

【中村委員】  1件だけです。県によって財政規模の違いが大きく反映されるところで,専門学校が運営費補助金の中から学校単位で奨学金制度を創設しております。例えば当法人の場合ですと,遠隔地から通ってくる学生や,下宿せざるを得ない学生,兄弟で在学している学生への支援を行っております。本格的に奨学金制度を創設するには,他の学校種と比較して,経営母体は小さく,原資が不足しております。その辺を御理解いただけるならば,是非まず国が呼び水として地方交付税の中にその分も考慮いただいて,各県がそこの部分に県費の補塡をしていただければ有り難いと思います。現状なかなか学校ごとに補助率も異なる運営費補助という枠の中でのことですから非常に底が浅く,国が期待しているような授業料減免策まで行き着かないのが現状です。

【小林主査】  明示的な形ではここに書いていませんでしたが,確かにもう一つは私学助成という問題がありまして,これが形としては授業料を下げている面があります。助成がなければ,その分だけ授業料を上げる可能性が高いわけですから。それが私立大学の場合には国から行い,専門学校の場合には都道府県で行われているということで,またこれが違っているという,非常に複雑な話になっています。そのあたり,どう整理するかという問題だろうと思います。
 相川先生,いかがでしょうか。

【相川委員】  保護者側から見たら,例えば国からこういう財政措置が来ているけれども,その県の財政事情によって本来こちらに回すべき財政措置が回っていないというところがまず問題だと思います。財政措置を講じているのであれば,俗に言われるひも付きみたいな感じで,最低ラインのこの金額は,きちんと授業料減免で使ってくださいというような基準がなければ,地方の財政の格差や私学の格差で全然学生にとって恩恵とはならないというふうに感じます。ですから,最低限この金額はというもののラインが引けるのかどうかは気になるところです。それがなければ,公立大の財政措置も大事だけれども,県によってはもっとこっちの違う方に使うということがまかり通ってしまうわけですよね。どこかできちんとしたラインを引かないとお金が行くべきところに行かないという現象が,いろんな分野で起きていますよね。

【小林主査】  ええ,ほかの部分も起きている。

【相川委員】  学生の支援という視点で考えたら,やはりここについては最低でもこのラインはというものがあった方がいいのかなという気はします。それができるかどうか分からないですけれど,本当にいろんな分野で行くべきところに必要なお金が行かないというようなことが起きているので。

【小林主査】  おっしゃるとおりだと思います。この問題もそう簡単にいく問題ではありませんが,方向性としては余りにもばらばらというのは不公平があるということだと思います。できるだけそういった不公平感がないような形で,どういう方法をとるかは今後いろいろ検討しなければいけないと思います。授業料減免については,格差を是正していく方向で考えていきたいという方向性でよろしいでしょうか。
(「はい」の声あり)
【小林主査】  ありがとうございました。
 それから最後は,ここでもずっと出てきた論点ですけれど,給付型の奨学金です。これは先ほど事務局から説明があったとおり,財政的な負担が大きいということで,裏返して言いますと,財政的な負担を小さくしようと思うと少額になる,あるいは少人数にならざるを得ないという,そういう問題があるわけです。ですから,そのあたりのことをどう考えるか。ただ,ヒアリングでも,給付型奨学金を創設してほしいという意見は一番強く出されておりましたし,これについてはここでもずっと給付型奨学金が要るのだということで議論が進んできたと思うのですが,いかがでしょうか。

【奥舎委員】  是非取りかかりでもいいから創っていただきたいと思います。

【小林主査】  取りかかりというのは,とにかく制度を創ると。

【奥舎委員】  そうです。

【小林主査】  いかがでしょうか。

【相川委員】  この検討会そのものの大きなところは,ここだったように思います。これから給付型奨学金をやっていこうということになると,どういう形,どういうシステムで,どういう基準でという,いろんな議論がまたあるのは承知の上ですけれども,この給付型奨学金を待望しているというか,熱望しているところだと思います。私もそれは是非何らかの形で進めていただければとは思うのです。

【小林主査】  中村先生,いかがですか。

【中村委員】  これも原資の問題だと思います。

【相川委員】  そうです。

【中村委員】  財政が厳しい中で,どこに原資を求めるか分かりませんけれど,日本国民として教育を受けることのできる権利は平等なのですから,受ける者の権利として,設置者や学校種による格差差別のない中での制度設計を,声を大にしてお願いしたいです。

【小林主査】  これは,ずっと懸案中の懸案だったわけで,ただ,現実の場合,私もほかのいろんな文科省等の会議でこういうことは言っているのですが,なかなか実現しないということがあります。特に財政当局の方からいうと,ない袖は振れないという話になってしまうわけで,そのあたりが一番難しいところです。もう少し理論武装といいますか,説得材料が必要です。財政当局が問題ではなくて,納税者を納得させないと,つまり,なぜ学生等へお金を渡すのかということをきちんと説明できないと,やはり税金を使うというわけにはいかないというのが財政当局の立場ですので,そのあたりは是非これからもここで検討していきたいと思います。特にこの点について,事務局から何かございますか。給付型奨学金について。平成26年度は概算要求では出さなかったようですが。

【渡辺課長】   小林先生のおっしゃったとおりだと思います。多分ここにいる,テーブルに座っている方,傍聴されている方も含め,皆さん,何とかして給付型奨学金を実現したいという思いだと思います。今国会でも随分,奨学金については与野党問わず質問がありましたし,それに対して大臣も前向きな答弁をしていますが,財務大臣から言われているのは,やはり財源に限りがある中で給付型は対象者が減らざるを得ないということです。今,奨学金は貸与して返還するお金で回っているわけです。無利子奨学金だけに限って言うと,今年度予算では全体事業規模3,000億円に対して返還金が2,300億円と少しなので,国費は,政府貸付けの部分ですけれど,700億円でしかありません。要するに,700億円の政府貸付けで3,000億円規模の事業を行っている。それで40数万人に無利子奨学金の貸与をしています。当然これが渡しきりになってくると,人数はどうしても減らざるを得ないというのが財務大臣の答弁です。最後は,まさに小林先生がおっしゃったように,納税者に対してどう説明できるかです。我々が幾ら財務省を説得したところで,財務省は最終的には,納税者に対してどう説明するかということですし,それから最後は本当に国民が皆,給付型を推すということであれば,それは財源も含めて理解が得られると思います。ですから理屈やプライオリティーは必要だと思います。みんなに対して個人的な給付ということではなく,どういう層に対して最初に給付をすべきなのかという議論も併せて必要だと思います。

【奥舎委員】  私はまずは制度設計の企画が必要だと思っています。現実的な制度設計の提案書ですね。結局内容が,この制度なら給付型奨学金制度を創ってもいいよと100人中95人までが納得できる内容でしたらオーケーなわけでしょう。そういった企画提案を具体的に研究することだけでも始めてほしいのはありますね。例えば育英型,いわゆるボランティアでも,地域福祉学科のことでも,看護でも,全てにわたっていろんな分野で考えられる,これなら学生・生徒には給付型奨学金を月1万円でも支給してもいいぞという内容があればいいと思うのですが,是非その提案を作っていただきたいと思います。

【小林主査】  ありがとうございます。これは是非もう少しきちんとしたものを考えていきたいと思っていますけど,一つは,給付型という制度をとにかく創ることが重要だというのは非常に重要な御提案だと思います。その場合にはかなり限られたものにならざるを得ないかもしれませんが,それでもそれが必要だということです。
 給付型の議論において一つ言われているのは,やはりローン負担が重過ぎるということです。そうしますと,非常に経済的な条件が厳しい人たちの中ではやはり進学しないというようなことが起きる。そういう人たちはやはり給付型奨学金でないと救えないのではないかというのが基本的な議論ですけれど,そのあたり,日本でそういう人がどれくらいいるかなど,もう少しリアリティーのある議論をしないとなかなか納得できないと思います。本日示していただいたシミュレーションは,かなり大規模なものを想定しているわけですけれど,もう少し絞ったらどういうことになるか,そういう点を,これからもう少し詰めていきたいというふうに思います。ありがとうございました。
 そうしましたら,時間を大分使いましたので,次の論点の情報提供について,また事務局から資料の説明をお願いいたします。

【田中課長補佐】  はい,失礼いたします。次の議題でございますが,資料の2を御覧いただければと思います。奨学金についての情報提供と理解の増進についてです。資料のたて付けといたしましては,「背景」,「論点」,「参考」という構成で裏表1枚の資料,それとその後ろに,この「参考」のベースになった「奨学金の延滞者に関する属性調査」の結果の概要をお付けしております。これはJASSOで調査をしているものでございます。奨学金の延滞者あるいは無延滞者に対して具体の状況等々についてアンケートをした結果を公表している資料です。3「参考」のところは,その公表資料の簡単な抜粋ということで付けさせていただきました。
 「背景」と「論点」でございますが,これは先ほども申し上げましたように,前回お配りしたものを右から左に引き写しているというもので,簡単に御説明いたします。まず「背景」では,高等教育段階の進学率は上昇となっていて,奨学金の貸与者も拡大。そういった中で,ここでも記述しているように,多額の借入れを行った場合は返還の負担が大きくなる。有利子については利子の返還も必要。こういった奨学金に関する周辺の情報についてどのように周知を図っていくべきなのか,そういった方策をどう考えるべきなのかということがあります。
 「論点」は,ここに二つありますが,御覧いただければと思いますので,詳細は割愛させていただきます。
 3番目に,「参考」ということで,申し上げましたように,後ろに付けております「平成24年度奨学金の延滞者に関する属性調査」の結果からの抜粋を付けさせていただきました。大きく5点ほどトピックを挙げさせていただきました。
 まず一つ目,奨学金申請時の書類を作成したのは誰かということでございます。申込書は誰が書いたのかということでございますが,延滞者では,「親(又は祖父母あるいは家族)」と回答した者が一番割合が高いということで,37.9%。一方で,無延滞者については,「本人」が書きましたと,自分で書きましたとお答えいただいているのが57.9%,約6割ということでございます。延滞者の方は本人がコミットしている割合は37.5%ということで,若干低くなっているということが傾向として見られるのではないかという点がまず一つでございます。
 二つ目は,誰に奨学金の申請を勧められたかでございます。その前の問いで,奨学金の申請を勧められたかどうかという問いがあり,その中で「奨学金の申請を勧められた」と回答した者について,数を見たものです。延滞者においては,「学校の先生や職員」と回答した者の割合が一番高く46.4%。一方で無延滞者では,「親(又は祖父母等の家族,親戚)」が75.5%で一番高いということでございます。延滞者について見ると,学校の先生や職員から勧められていたケース,そういったところからの情報提供を受けて奨学金を借りようと判断していたというような形が大きいのではないかというところでございます。
 3番目は,返還義務をいつ知ったかでございます。延滞者,無延滞者ともに,「貸与の手続を行う前」と回答している割合が一番高いです。無延滞者については90.6%と,非常に高い割合になっておりますが,延滞者については54.7%と,やはり無延滞者に比して低い数値となっております。特徴的な数字,数字の大きかったものを延滞者について挙げていますが,「貸与の手続中」に知ったとお答えいただいているのが12.6%で,逆に無延滞者では5%です。また,「延滞の督促を受けてから」とお答えいただいているのが,延滞者は8.1%,一方で無延滞者については,0.2%ということでございます。
 4番目が,猶予制度の認知の状況でございます。猶予制度を「知らなかった」と回答している者については,延滞者と無延滞者でそんなに大きい数字の開きはございません。ただし,両者とも半数以上が認知をしていないという結果が出ております。具体的に,無延滞者については53%,延滞者については57.1%,半数以上が知らないというような結果が出ているところでございます。
 最後に,猶予の制度をどこから知ったかということでございますが,これについては,延滞者は「機構からの通知」が最も多いというところでございます。一方で,無延滞者については「「返還のてびき」を読んで」という者が最も多いということでございます。延滞者について最も多い「機構からの通知で」とお答えいただいているのは42.5%,無延滞者で「「返還のてびき」を読んで」というふうにお答えいただいているのは68.7%です。その他の数字はここに記載のとおりです。
 雑駁(ざっぱく)ではございますが,説明は以上でございます。

【小林主査】  ありがとうございました。「延滞者に関する属性調査」については,いろんな論点がありますが,本日の情報提供との関係でいいますと,そもそも返すことを知らなかったという人がかなりいるということが分かってきたわけです。手続中ということは既にもう手続に入ってしまっているわけですから,借りる前の段階で知らなかったということですが,実は延滞者の場合,これが半数に近いというのは,やはり非常に問題がある数字ではないかと思っております。
 それを含めて,では情報提供をどのようにして行っていったらいいか。日本学生支援機構でもいろいろな形で情報提供を行っているわけですけれど,第8回の日本弁護士連合会の方の話でも,返還者は十分には知らないということが非常に言われていました。そのあたりのギャップをどう考えるかという問題だと思います。ただ,これもなかなか論点として難しいのは,では現在の高校や大学にこれ以上の負担を求めることができるのかどうかということがあるので,そのあたりを含めて御自由に御意見を頂ければと思います。この重要性については先ほどからいろいろ御議論あったので,これは論をまたないと思います。ですから,具体的にどう進めていくかというあたり,もう少し御議論いただければと思いますが,いかがでしょうか。
 中村先生,アンケートなどで専門学校の学生に聞くと,専門学校はかなり丁寧にやっているという学生は多いです。つまり,専門学校に入ってから日本学生支援機構奨学金の存在を知ったという学生が結構多いのです。そのあたり,専門学校の方はかなり丁寧にやられていると思うのですが。

【中村委員】  その前に質問ですけれど,申請書を作成するのは本人だという決まりは今,ないのですか。親が書いてもそれはオーケーなのですか。

【小林主査】  というか,誰が書いたか分からない。

【中村委員】  自筆と書いてありますよね。

【石矢奨学事業本部長】  ネットでの申込みということになりますので,そこはどなたが入力されているのか,ちょっとそこまでは分からないというのが現状です。

【中村委員】  本人が記入することというのは書いてないのですか。

【小林主査】  制度としては自筆を求めているのではないのですか。

【石矢奨学事業本部長】  返還誓約書等については自筆です。

【小林主査】  自筆ですね。

【中村委員】  まず,本人自筆で本人の意思で借用するということを根本的に募集要項の中でうたってほしいと思います。これだけでも,この奨学金借用に当たっての趣旨の理解や借りすぎ防止,返還延滞等が解消されてくるポイントではないでしょうか。

【渡辺課長】  若干補足しますと,これは,昨年度までなかった設問です。これと返還義務をいつ知ったかという設問は,私も見て,ショックだったというか,逆にターゲットがフォーカスできたと思います。特に今年度から新規採用において,無利子奨学金は在学採用よりも予約採用の数を増やしました。予約採用を増やしたということは,高校生の段階で採用される人が増えたはずです。つまりそれは逆に,高校生に対してもきちんとこれは貸与だということを教育しないといけないということです。今,田中補佐から説明しましたけれども,3の返還義務をいつ知ったかという設問ですが,私はこれを延滞者は半分以上知っていたと見ることはできず,無延滞者は9割知っているのに延滞者は5割しか知らないということに,衝撃を受けました。あえてその反対で言うと,ここに対して集中的に注力すればいいということで,恐らく予約採用の段階できちんと教育が必要だと思います。例えば,今,JASSOは地方自治体から要請があれば職員を派遣して説明会を行い,多分,教育委員会や高校の先生たちに対してこういう講義をしているという実態はあるはずです。大学で各地に散らばっていくので,奨学生の出身の都道府県までさかのぼらないといけないのでデータ集計に時間がかかりますけれど,都道府県単位でも延滞状態に差があるのだったら,その自治体に対して重点的にJASSOの職員を派遣して,学校の先生に対してきちんと教育していくということを地道にやっていかないといけないと思います。生徒に直接というのは数多くできませんから,恐らくそういったレベルで個別につぶしていく必要があると思います。大学についても,個別に延滞状況というのは全部違うわけですから,そうであれば,よくないと考えられる学校に対して集中的に,学校団体とも連携しながら,学生に対するJASSOの奨学金に関する教育をやっていく必要があると思います。
 今,新規返還者の返還状況でいうと,96%までは1年目はきちんと返還しています。でも,その残り4%を何とかするのが大変です。この結果の後ろの方に出ていますけど,確かに延滞者と無延滞者を比べると,延滞者の方が年収レベルで少し低いですが,それでも300万円以上の方というのが一定数はいます。そういう人は,いわば,返還できるのに返還していないのかもしれない。

【中村委員】  教育委員会と私学協会と両方にアプローチはかけていただいているのですか。私立の高校に情報が流れるような文科省からの通達というのは,都道府県の教育委員会から私学の方には通達されているのですか。

【渡辺課長】  高校への予約採用の通知等は,今は文科省から直接送付していないはずなので,それは日本学生支援機構の方から通知が送られます。

【石矢奨学事業本部長】  予約採用の通知等は,機構から直接高校に通知します。

【中村委員】  学校は,私立,公立を問わず。

【石矢奨学事業本部長】  はい,募集をかけており,全校へ通知しています。ところで,先ほどの申込みをする主体ですけれども,これは貸与を希望する人が申し込むことになっていますから,学生が申し込むことになります。

【中村委員】  親が申し込みたかったら申し込んでもいいのですか。

【石矢奨学事業本部長】  いえ,これは,貸与を希望する人ですから,これは原則実際に奨学金を借りる本人ということになります。

【中村委員】  それは本人って明記されているのですか。

【石矢奨学事業本部長】  貸与を希望する人という説明ですので,本人ということになります。

【中村委員】  いえ,ですが,家庭として親が奨学金の貸与を受けることを希望している可能性もあるんですよね。多分その方が多いと思いますよ。だから親が記入するということも,これは大いにあります。

【石矢奨学事業本部長】  「奨学金の延滞者に関する属性調査」では,延滞者の中で奨学金を申し込んだのは親だったという回答が少し多くなっています。延滞は「自分が借りている」という意識が少ないのも原因の一つだと思います。

【中村委員】  申請書に親が書きますと,もちろん主語が違ってくるのです。学生が書きますと「私は」で,親が書きますと「うちの息子が」となるわけです。それで親が学生本人に代わって書いているということがわかります。「うちの収入が」というところで始まって,親が主体になってしまいます。時間がないと思いますので,本学における状況を話します。まず「予約採用の確認」ですが,入学選考受験前,4月から9月頃の学校説明会において,「高校の方から予約採用という制度も聞きましたか」と必ず聞いています。そうすると「知らない」という親が半分ぐらいいます。それは生徒が悪いのか,高校教員の連絡ミスなのか,ここはちょっと調べたことがないものですから分からないのですけれども。半分ぐらいの確率で予約採用を「知らない」ということで,専門学校の説明会に来たところで,日本学生支援機構が実施する国の制度もありますので,是非御活用いただきたいというようなお話も,パンフレットを配付し,説明させていただき,「是非高校の先生方に保護者の方から,担任経由で構いませんので,アプローチしてみてください。三者面談等の機会の中でお話しされてもいいですね」と指導しております。公私問わず,各学校の校長宛てだけでは駄目なんですね。校長だけではなく,例えば進路室宛てとか学年主任宛てぐらいに通知を頂きますと,生徒のところまで行きやすくなるのかなということだと思います。
 加えて,専門学校におきましては,大学と違うのは,コンパクトな入学者数ですから,徹底した指導をしやすい環境にあります。そこで,入学前の3月下旬に,入学許可者を対象としましたオリエンテーションを開催し,予約採用者も含み,日本学生支援機構の奨学金や他の奨学金等の貸与内容を周知します。その上で奨学金貸与希望者には家庭の同意を求め,入学式直後のオリエンテーションにおいて申請者のための説明会を開催し,借用できることによって学校生活を送れることに感謝の念を持ち,後輩にもその手段を提供することができるようにするためにも,社会に出て働くことによって得られる対価で返還する義務があることを周知した上で申請を受理しております。また,卒業年度の各種奨学金借用学生には,卒業式前の2月下旬に「返還についての説明会」を開催し,返還の周知を図り,手続の提出書類についての指導をします。この平成26年度からは学校ホームページや同窓会のシステム等で奨学生だった卒業生に返還についての呼びかけを始めました。

【小林主査】  ありがとうございました。
 どうぞ。

【相川委員】  この「奨学金の延滞者に関する属性調査」というのは毎年やっているんですね。

【小林主査】  はい。

【石矢奨学事業本部長】  はい,毎年やっています。

【相川委員】  では,そのデータは,こういう状態,こういう現象が起きていますよということを学校にフィードバックしているのですか。

【石矢奨学事業本部長】  これは,ホームページでこの結果を公開しております。

【相川委員】  ホームページというのは本当にオープンな公開の仕方ですけれども,こういう現実がありますということを,まず,子供が借りる,保護者が借りるというところに説明するには,学校が窓口になると思います。ですから,そういう手続のしおりを送っていただくときに,この抜粋でもいいのでフェードバックし,「ホームページにあります」で止めるのではなくて,もう一歩,こういう結果がありますという,こういう結果が出ていますということをまず知らないと駄目だと思います。

【奥舎委員】  相川委員が言われるとおりだと思います。ただ,「ホームページで発表しているからどうぞ見てください」という形だったら,やはり周知徹底は非常に難しい。この間,中村先生が言われましたが,ある学生の父親が奨学金を丸取りして生活費に充てていたんですね。

【中村委員】  そうなんですよ。

【奥舎委員】  授業料が入らないので呼び出したら,生徒本人は奨学金をもらっていることさえ知らない。それで二人に来ていただいて,今は奨学金を立て替えてとりあえず授業に入れたのですが,現実それは親が書いているわけです。先ほどの御指摘のとおりです。だから,私のところもそういうことがないように職員は一生懸命説明会をして,「機構の奨学金はこうなっている。教育ローンだし,有利子の場合は利子もあり,仮に月8万円で4年間だと500万円近い金を卒業するとき背負っていく。ハンディを背負って出るんですよ」ということを教え込んでいます。だけど,現実にはそれを全く知らない家庭もあります。

【石矢奨学事業本部長】  機構としては,まず,高校に対する通知として,制度変更があれば通知は必ず出します。今年は3月7日付けで奨学生の募集に係る変更点を通知し,そういった通知文の中で特に「生徒への指導及び保護者への周知のお願い」ということで,決して奨学金はもらうものではないですよと。借りるものなんですよと,こういうコーナーを設けまして学校宛てに通知しています。その後に正式に「予約採用の採用候補者の推薦について依頼」ということで,今年の4月7日に学校に送っております。ここの中でも,借り過ぎに注意するようにとか,決してもらうものではなく返す義務がありますというようなことは,指導していただくよう学校に伝えています。

【渡辺課長】  いえ,それは分かっています。分かっていますが,結果が伴ってないから,それはどうにかしなければいけないという議論をしているのです。幾ら今も周知していると言っても現状の調査結果のデータはそうなってないのですから,プラスアルファのことをしなければいけません。

【奥舎委員】  努力されたのが表に表れてないから寂しいんですよ。私はそう思います。一生懸命努力されているんですけど。

【石矢奨学事業本部長】  返還誓約書も,学校の窓口を通じて御本人が受け取って,それから親御さんとか連帯保証人の印鑑証明や所得証明等を付けて出すことになっていますから,それを御本人が知らなかったというのはちょっと考えられないと思います。

【奥舎委員】  いえ,いますよ,中には。

【小林主査】  18歳ですから,予約採用の申込みということになると,まだ,未成年なのです。ですから,どこまで理解ができているかというと,やはりかなり疑問だと思います。

【相川委員】  高校のときの奨学金を借りるときでも,入学の説明会というのが3月の末にあって,そこでこういう制度がありますというふうに一度アナウンスする。そこは保護者と子供が一緒の場でアナウンスをする。そしてなおかつ,今度は進路を決める時期になって担任と本人と親と話をする。そして,学校には必ず進路指導主事がいるのでそこに進路の先生が加わって,こういう制度がありますよという話をする。だから,その進路の先生がこういうことを把握していなければいけないわけです。こうやって返すんですということを。これぐらい借りたらこうやって返すという,やはり具体的なものを生徒や,親に示していかないと,ぼんやりとしている。「あ,借りられるんだ」みたいな感覚でしかないとすれば,もう少し保護者の方も私たちも危機感を持ってきちんと聞いて,子供にも伝えて,こうなるんだよって。それでも借りて進学したいかどうかという,そんな選択について話合いがされる。それが例えば猶予制度を知らなかったという人が半分もいるということになると,では,現場の先生方がこういう制度を知らないで説明が漏れているのかということになります。都道府県単位の教育委員会で進路担当の先生方に向けた説明会もしていただいているという話も聞いたことがあります。ただしそれは,希望する都道府県,自治体のところに行っていただいているというように,全部の都道府県ではないと思います。進路指導の先生も長くやっている方もいれば,人事ですから代わるわけです。代わったときに初めてこういうことを学んでいただければいいですけれども,気が付いたら1年過ぎて知らないままというのがたくさんあるんですよ。だから,そういうところで,私学も公立も全部合わせて進路指導の先生方に対しての説明会を各自治体がきちんと年度初めにやっていただくというところは,最低,私はお願いしたいところだなと思います。ここはもう必須ではないかと思います。なぜなら,「知らない」って半分もいるのですよ,半分。これは一生懸命やっていただかなければ。

【渡辺課長】  返還猶予の制度は,むしろ大学や専門学校の卒業前に,卒業したらきちんと返還が必要ですよということをもう一回周知するチャンスがあります。多分,猶予制度や減額返還といったものは,高校の借りる段階というよりは,むしろ大学なりで返還の前に説明することの方が効果は高いのではないかと思います。

【相川委員】  そうですね。だから,高校で少し話をして,大学でも更に話をしてと,両輪でいかないとなかなか,分かっているようで分かってない子供たちが,今,増えていると思います。

【奥舎委員】  今,相川先生が言われたとおり,どんな組織でもいろんな職員がいます。私どもの大学でもいろんな職員がいますけど,高校でもいろいろ,軽い人もいるし,流す人もいるし,真剣に子供のことを考える人もいます。でも,それを解決するのはもう機構のPRと努力しかないですよね,はっきり言いまして。本当にこれまでかというぐらいしっかりお願いしたいと思います。特に校長なんかは現場から遠いこともありますので。

【相川委員】  機構さんには全国の方でも総会があるときに資料を配付していただいたり,全国の大会,1万人の保護者が集まる大会のときに資料を配付していただいたりということで,いろんな工夫をしていただいています。しかし,資料は大会のときに頂いても,この資料をゆっくり見てというところまで到達するかどうか,そこなんですよ。そこをどうするかというところです。私たちも全国の総会のときはきちんと,全国の各県の会長が来ているので,こういう資料ですよ,こうこうこうでと時間がとれれば説明をしていただくということができますが,全国大会とかというと,資料は封筒の中に入っていて,持ち帰って,後でどれだけの保護者が最後までその資料に目を通すかというのはちょっと疑問があるんですね。でも,あえてそれでも私は資料の配付を機構さんにお願いしているのです。こういう資料も配付していますということを各県でPRしていく方法の一つとして。ですから,あらゆる手段で努力していただいておりますけれども,なおかつ,こういう数値が出ているということはどこに問題があるのでしょうか。

【渡辺課長】  例えば高校で言うと,機構が要請のあった県に行って説明しているのでは足りないと思います。そこは県としての意識が高いから,当然返還率もいいはずです。逆だと思います。

【小林主査】  それですが,例えば全国の進路指導主事を集めるなんてことはできないのですか,文科省は。初中局でそういうことをやってないのですか。

【渡辺課長】  いえ,やっていると思います。

【小林主査】  そういうところで説明をすればいいのではないでしょうか。

【奥舎委員】  利用すればいいと思います。

【小林主査】  ええ。それで,その県の進路指導主事の先生が今度は県に帰って各高校の先生に説明するという体制を作っていただければ,大分改善できると思います。

【中村委員】  その辺がまた公私間で対応が違っていて,なかなか難しいところです。公立と私立で100%同じ通達を読んでくれているのかというと,「読んでない」という確率が非常に高いです。

【小林主査】  先ほど少し言いましたけれど,イギリスでもこの問題は同じように大きな問題になっているので議論されていますが,情報提供だけではやっぱり不十分だというのはもうかなり言われています。ですから,ガイダンスとかアドバイスとか,そこまで含めてもう少し手を尽くさないと,この問題は解決しないということが言われています。この問題はイギリスとか中国で非常に大きくなっています。また,アメリカでは,連邦政府給付奨学金に申込みさえすればもらえる資格のある者のうち,2割ぐらいの人は申し込むことすらしないという調査結果もあります。というのはそもそも連邦学生支援制度を知らないからという問題があって,それが問題になったわけですけれど,日本でも実はこういう形で相当あるのではないかということです。少し性格が違いますけれど。この「延滞者に関する属性調査」というのは,私も最初から関わっていましたが,JASSOの御努力で随分いい調査になったと思っていますが,これは延滞している人が回答しているのです。ということは,延滞している人の中でもかなり良質な人です。そうでない人はそもそもこんな調査に回答しませんので。それで,その良質な人の中でさえ知らないという人がこれだけいるということですから,回答していない延滞者の人はもっと知らない人が更に多くいると考えるべきです。ですから,この問題はそういう意味ではすごく深刻な問題なので,今までできることはやられていると思いますが,それ以上にもう少し,JASSOだけの努力ではなくて,今言いましたように文科省でもやれることがあればやっていただきたいし,都道府県の教育委員会なりほかのところにもお願いしなければいけないのではないかと思います。

【中村委員】  やはりこれ,大変かもしれませんけど,窓口になる日本学生支援機構だけでなくて,文科省でもなくて,各学校間の意識だと思います。学校がどのようにこれを理解してくれて,学生・生徒に対して周知するのか,ここだと思いますね。あとは,予約という制度は非常に有り難い制度ですけれども,予約時と進学先との説明の段階におけるギャップがあると思いますね。そこをいかに埋めていくのか。これによって大分改善されてくるのではないかと思います。

【奥舎委員】  はっきり言って,返還義務をいつ知ったかというパーセンテージが,「貸与手続中」は12.6%で,「督促を受けてから」は8.1%でしょう。20%以上の人は,これはやっぱり学校がしっかり教えてないからということも言えるわけですよね。7割方。どうすればいいのでしょう。難しいところだと思います。

【石矢奨学事業本部長】  年に一度,進級する前の10月頃から適格認定を行いますが,そのときに貸与額通知書というのを学生さんに渡します。その中には貸与総額,返還金は幾らで,返還月額は幾らですよというのをきちんと示して通知として渡しております。その上で月額変更するのだったら変更してください,そのまま続けるのだったら継続願を出してくださいというような手続を,奨学生としての適格性も含め,毎年,確認のためにやっています。

【中村委員】  それは先ほどと一緒で,文面で幾らやっても,読むか読まないか,読んだ人も理解するか,しないかだと思います。

【甲野理事】  よろしいでしょうか。

【小林主査】  どうぞ。

【甲野理事】  機構の奨学金ですので,機構が責任を持って奨学金を受けようとする方々に広報しなければならないのは当然のことでございます。私どもとしても,先ほど少し説明もさせていただきましたけれども,いろんな機会を通じて返さなければいけないですとか,猶予がありますとか,そうした制度に関する周知をしてきました。それでも,まだ足りないということですので,そこのところは,私も来たばかりで,どれほどのことができるのかということをもう少し見極めなければいけませんけれども,まだ改善すべきところは改善するなどして一生懸命やらせていただきたいと思っております。
 ただ,機構自体も職員の数やマンパワーにも限界がございますし,伝えなければならないポイントというのは考えてみるとほかにもいろいろありますが,返さなければいけないものだということ,大変なときには猶予などのセーフティーネットも用意されていることというようなことかと思いますので,そうしたような部分につきましては,日頃から学生あるいは生徒に接しておられる学校現場の方々にも十分周知をしていただける事柄かなとも思わないでもありません。そうした学校の現場と協力しながらやっていくということでなければいけないのではないかなと思います。そうしたことから,機構としては今後も周知には努めてまいりたいと思いますけれども,是非学校と,あるいは教育委員会や行政と連携しながらこれをやることが一番効果的なのかなと,ちょっと感想ですけれど,思いましたので,発言させていただきました。

【小林主査】  ありがとうございました。
 ここでもう一つ議論になったのは,機構には寄附でできた基金というのがあって,それを使って基金のガイドを作るというようなことをされているということがあります。確かに機構は今,独法として非常に大変な時期に来ているということもこちらは十分認識していますので,なかなか機構だけの努力で手を広げるというのは難しいと思います。そうすると,そういった基金を使うなり,NPOとかそういった組織を作るということも可能性としては考えていいのではないかと思います。民間の奨学団体についても連絡会などはなく,インフォーマルな不定期の話合いは持たれているというようなことはお聞きしましたけど,なかなかそういった横の連携がないままに動いていますので,そういう面を含めてもう少し,こういった今までのやり方ではないやり方を考えていただかないとなかなか難しいのではないかというのは,一つ,今まで出てきた議論です。ですから,そのあたりをもう少し詰めていかなければいけないのではないかと思います。
 これは,私は何回も提案していて,余り評判がよろしくないですが。今まで以上に,奨学生に負担を強いるという形になりますけれど,諸外国の例でいうと,手数料を取ったり利子に上乗せしたりとか,みんなで助け合うというようなことでやっているような例もありますので,そういったことも含めて考えてもいいのではないかと思うのです。非常に少ない額でも相当なことができるのではないかと考えますので,そのあたりも含めてもう一回検討してもいいのかなと思います。今のままでいきますと,やはり学生本人にとっても気の毒なことになりますし,ロスとしても非常に大きなものになってしまっています。情報の改善で,相当できることがあると,本日皆さんから御意見がありましたので,もう少し具体的なやり方も,考えてみたいと思います。
 ほかに御意見ございませんでしょうか。今の点でも,それから本日全体のことについてでも結構ですが。どうぞ。

【相川委員】  先ほど渡辺課長が話した,延滞している学生さんの都道府県レベルでの把握というか,そういう形はできますよね。

【小林主査】  できます。

【相川委員】  できますよね。延滞者が多い県に集中的に周知していただくということですね。

【渡辺課長】  仮にそうであれば,先ほど理事がおっしゃいましたけど,JASSOのマンパワーが足りないからこそ,広く薄くではなくて,やはりまずきちんとデータを調べて,集中的にフォーカスして対策をとるべきところというのははっきりさせるべきだと思います。今までと同じことをこれまで以上に広げても,返還状況はこれまで以上によくならないのですから。これまでそういう分析すらないのです。この結果を見たら,何をすべきか非常に明らかです。私は,JASSOに,これを見た上でどういう対策をとり得るのか,まず案を考えるように依頼しました。こういう検討会の場などを通じて議論していて,できるものから順番にやっていくということかもしれませんが,JASSOとしても考えていくべきことです。ここまで調査をやってかなりはっきりした結果が出てきているのですから,このデータを基にどう対策をとるかというのはいろんな考えがあると思います。先ほど私が申し上げたような都道府県単位の調査では,本当に差が出るか分からないですけれど,分析の仕方によってはかなりばらつきが出ると思うのです。ですから,そういうものに対してどういうアクションを起こすのかということを,やはりJASSOは考えていくべきだと思います。

【相川委員】  私が少しだけ気になったのは,データ的に都道府県単位で出たときに,延滞すること自体は決して褒められることではないですが,そのデータで地方の格差みたいなものが出て,延滞しようと思ってしているわけではなく職に就けなくて収入がなくてというような構造も出るのかなというところです。そのデータを出すときにはとても慎重に取り扱わないと,違う方向で見られるのも少し気になるところだったので。ただ,渡辺課長がおっしゃるように,どこがどれくらい延滞しているのか,どの辺にいる人たちがというのは分析すべきだと思います。

【渡辺課長】  これは別に公表を前提としているということではなくて,むしろ奨学金全体を健全に運営していくということが前提ですから,JASSOとしてどういう対策を打つかというための基礎データという意味だと思います。おっしゃったように,延滞というのはやはり収入と,その後の就職の問題までも含めてあります。今年度からは返還猶予制度の運用改善がなされていますが,さっきの調査結果にあったように,50%は返還猶予制度を知らないという状態があるので,やはり制度をきちんと知ってもらうということ,きちんと周知するというアクションを起こすためのバックデータという扱いです。ですから,それをそのまま公表するという意味ではありません。

【相川委員】  分かりました。

【小林主査】  どうぞ。

【甲野理事】  どういう形でこうした基本的な事実を奨学生が知るかということを考えた場合には,例えばJASSOからこういう説明があったと。それから,高校でもこのような説明があった。親はこういうことを知っていなければならなくて,知ったと。大学に入ったときもこういう説明があったというような形で,総合的に見て,定着させるプロセスといいますか,それをやることによってほとんど全員が知ることになるようなことを考えていくということが,恐らく必要なのではないかと,私の個人的な見解ですけれども,思います。私どもJASSOは,独立行政法人として国から奨学金の交付などについて使命を受けて,それを実施している部隊ですので,私どもが考えられることとしては,JASSOとして何ができるかです。それは私どもとして考えるのは必要ですし,実施することはできますが,先ほどのような形でもう少し網羅的に総合的に考えるということになりますと,大学自身の御協力も必要ですし,また,教育委員会ですとか行政も関わった形でそれに取り組むということを認識するという必要もあると思うのです。私どもとして,そのようなアイデアもあるということは提示できるかもしれませんけれども,実際にそれを判断していく,あるいはそれを形に作るということになりますと,独立行政法人としての枠を超えるといいますか,どこまで申し上げていいのか判断に迷うというようなところもあったりします。ですから,私どもとしては,できる限り,自分たちのできることはいろいろ考えますけれども,そこを超えた部分ということにつきましては,ほかのいろんな方々,特に行政の方々とも連携をしながら一緒に考えていくということが必要なのかなというように思っております。

【奥舎委員】  その法人を超えた部分というのはどういうことですか,例えば。

【甲野理事】  例えば,大学として奨学金を受けるためには,このような使命,このようなことをやらなければいけないというような形にしますとか,あるいは,高校の現場ということになりますと,恐らく高校に直接私どもが行くというよりも,教育委員会を通して行政として対応していただくということも必要になってくると思います。そのようなことになってきますと,JASSOのみでなく,行政としても対応していただくということが必要になってくると思います。

【渡辺課長】  いえ,本日のこの場というのは文科省が主催している会議の場にJASSOの方が来ていただいてやっているわけです。当然,文科省としても全てをJASSOに委ねるということではなく,連携してやっていくものです。

【奥舎委員】  一緒にやっているんですよ。

【小林主査】  ただ,今までのいろいろな経緯があります。例えば延滞者調査にしても,先ほど少し申し上げましたけれど,この調査は本当に何回も重ねていくうちにやっと使えるような状態になってきたという部分はあります。実は地域別の分析も最初の頃にやっていましたが,確かに差があります。ですから,そのあたりの分析について,どうするかというのはもう少し検討課題でもあります。私の方も委託事業で同じような調査をやっていますので,その結果ももう少し活用してもらうことを考えなければいけないと思います。
 先ほど申し上げましたように,もしJASSOで限界があるのでしたら,これは学生支援を日本全体でどう考えるかという話であり,JASSOだけの話ではないので,ほかのこともいろいろ考えていいのではないかと思います。ただ,本日,非常に大きな問題があるということは十分御理解いただけたと思います。今までは余り情報提供という問題は,大きな問題としては出されてこなかったと思いますけれど,かなりはっきり出てきたと思います。これからもう少し具体的にどうするかということを,かなり制約があることも事実なので,その中でどうしていくか考えていきたいと思います。
 ほかにいかがでしょうか。個別論点でもう一つ大きな論点としては,所得連動型をどうするかという問題を次回取り上げますが,この問題は本日いろんな御意見が出ましたので,整理をして,時間があれば次回も,また御提示したいと思っていますが,いかがでしょうか。次回に向けてでも結構ですが,何かこういう論点も少し必要ではないかというようなことがございましたら,御提案いただけますか。

【奥舎委員】  私は1点だけあります。

【小林主査】  はい,どうぞ。

【奥舎委員】  奨学金の3万から12万の貸与月額は,幅があり過ぎると思います。職種,専門職とか研究職とか大まかな範疇(はんちゅう)でいいと思いますが,上限額の設定は是非考えていただきたいと思っております。

【小林主査】  現在でも,医学はもっと借りられるという仕組みになっています。

【奥舎委員】  そうですね。

【小林主査】  そのあたり,どういう上限額を設定するかという御指摘を奥舎先生から何回も頂いていますので,また検討したいと思います。

【奥舎委員】  看護の学生ばかりでなく,地域福祉学科もそうですが,4年間で500万円近いハンディを背負ってから卒業させて社会へ出す場合,この子は本当にやっていけるのだろうかというようなことを,私は感じます。病院等に勤めて,要するに本当に天職になればいいですけれど,やっていけるのかなというのを本当に感じたりしますので,ある程度は上限額があった方がいいのではないかと思いますが。

【小林主査】  ありがとうございました。
 ほかによろしいでしょうか。そうしましたら,次回の日程等について事務局からよろしくお願いいたします。

【田中課長補佐】  はい,失礼いたします。お手元の資料の3を御覧いただければと存じます。「当面の検討会の日程について」ですが,次回の第11回は,来月,5月26日の3時から5時を予定しております。場所は,文科省の建物の方に再度戻りまして,15F特別会議室を予定しております。第11回は,本日の参考資料の網かけ(下線)部分以外の論点でございますが,今ほど先生からお話がありましたように,所得連動返還型の話,それから一層の返還困難者対策の話,それから今お話のありました奨学金の上限額や,前回も話が出ました奨学団体の連携とか,そういったお話について議論いただければと考えております。
 その後,第12回は,6月16日を予定しています。ここから最終的な報告書の内容の方に入っていくかと思いますけれども,できればこのあたりで骨子等々お示しできればと考えております。
 以上です。

【小林主査】  ありがとうございました。
 委員の方々から何かございますか。よろしいでしょうか。
 それでは,第10回の学生への経済的支援の在り方に関する検討会をこれで閉めさせていただきます。本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――

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