体系的なキャリア教育・職業教育の推進に向けたインターンシップの更なる充実に関する調査研究協力者会議(第5回) 議事要旨

1.日時

平成25年6月17日(月曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文化庁第1会議室(旧文部省庁舎2階)

3.出席者

委員

稲永委員、荻上委員、加藤委員、剣持委員、正田委員、田籠委員、続橋委員、古屋委員、宮川委員、吉原委員、吉本委員、渡辺委員

文部科学省

内藤専門教育課長、小林企画官、児玉専門教育課長補佐、杉江専門官、小栗教育振興係長、辻学生・留学生課長補佐

オブザーバー

吉田厚生労働省若年雇用対策室室長補佐、中島経済産業省産業人材政策室室長補佐

4.議事要旨

議事の概要:
議題1及び2について事務局からの資料説明及び意見交換があった。要旨は以下のとおり(○:委員、●:事務局)

(議題1について)
※資料2について事務局より説明

○議論が収斂(しゅうれん)されてきているように思う。このたたき台のように拡散してしまうと、必ずしも量的充実や質的充実に分けられなくなる。
まず、教育機関の中での位置付け、単位化あるいは事前・事後学習の在り方というようなことが質的充実・向上のために必要だというような意見にかなり収斂(しゅうれん)されてきているのではないか。
 次に、質と量のセットのものについては、「量的充実のための方策」の専門人材と大学と産業界を調整する仕組みが分けられないものだと思うが、専門人材(=産学連携コーディネーター)というものが非常に重要で、これから本格的に国として育てていかなければならないという議論になっていた。
 最後は完全に量的なもの。純粋に量的なものとしては最後の方にありますが実習であるとか、就職直結型であるとか、あるいはPBLであるとか、海外、日本人ではなく留学生を対象にしたもの等々、多様なインターンシップを拡大・発展させていくというということが誠に量的な拡大につながっていく。
このたたき台では、議論が拡散してしまう。

○政府として、約半分の学生を卒業前にインターンシップに参加することについて、どの程度の規模で、何年で、どのくらい行くのか、というある程度のスケジュール感というものを定める必要があるのではないか。
学生何人に対してコーディネーターが一人必要なのかということも深め、量の拡大と質というものを両面で考えなければ成立しない。

○私は結構ネガティブな意見を出したが、この資料にはあまり載っていない。
 政府で定められているインターンシップ体験率の数値目標について、本当にそれがリアリティあるのか、現場をつかさどっている人間としては疑問である。インターンシップだけが学生が社会的成長を遂げるための唯一のツールではない。インターンシップを含めたキャリア教育というものがしっかりと根ざす方策を議論しなければならない。インターンシップだけを切り取ってそこだけ展開するということには疑問がある。
 日本という国は新卒一括採用という雇用体系をずっと採り続けており、採用直結にすると、インターンシップはまさに青田買いの野戦場と化してしまう。経団連では「三省合意を崩してまでインターンシップを採用直結型に持って行くことは反対である」という意見があるので、そこは我々も真摯に受け止めて考えていかないといけない。

○企業における意義というものがある、資料では三つの項目しか書かれていない上、具体的にどうすればいいのかということが全く読み取れなくて、企業等における意義というものがすごく貧弱に見える。今、インターンシップ参加者数が増えないのは、企業の方で受け入れたいというところが圧倒的に少なすぎるからだと思う。

○採用直結型とは、その選考開始時期以降に、選考を兼ねたインターンシップを実施したらどうかというもの。前回のリファレンスにも中堅・中小ないしはベンチャー創出というのは書かれているが、そこに対してインターンシップは普及していかなかった。選考開始可能以降のインターンシップに採用直結という、インターンシップ推進の一つの可能性を残すべきだろう。採用直結型インターンシップというキーワードを取り去ってはどうか。

○前提条件を入れたらいいのではないか。「採用選考等の手法としてこういうことも考えられうる」としてはどうか。

○採用選考時のときに併せてそういうインターンシップと捉えてやっていくのは良い。

○学生の気持ちを変えて中堅・中小企業に向かわせることは本当に大変。採用直結も選考に近くなっていく時期であれば大きな問題にはならない。

○大学、協力者である企業、それから参加者である学生、この三者の中で、大学は、どういうスタンスで教育の中でインターンシップをやっていくのかを学内、企業、学生に伝えるという作業がまず必要。専門教育の充実のための位置づけと同時に、学生と社会との接点が生まれ、その経験がキャリア教育という形で果たされていくという位置付けなのではないか。
大学の中にコーディネーターだけいればいいということではなくて、コーディネーターが力を発揮できるような大学全体の管理体制、組織、リーダーシップというものも必要であるというメッセージを大学へ送るということが重要。専門人材が動けるだけの体制であるとか、インターンシップ実施の大学の方針、実施組織というものがあってこそ専門人材が生きてくる。大学側のいろいろな役職、特に上級の管理職の方々への研修も必要である。

○資料2の構成として、1が「はじめに」で、2が「量的な方策」、3が「質的な方策」になっています。2として「インターンシップの現状と課題」と書いて、その以下のところから2に該当するものを整理して、極めて具体的な方策を量・質について記載した方がわかりやすい。
○三省合意に戻りませんか。十数年前に発行されたものに対して、十数年間何が行われてきて、現状がどう変わってきたか、どういう改善をしていかなければならないかということを明らかにして、これとこれをうまく対比してあげれば大分赤入れが進むのではないか。

○大学側は、インターンシップはどこでもやりたくてしょうがないが、企業に受け入れてもらえない。なぜ学生はインターンシップに参加したいのかいうと、いかないと就職できないと思い込んでいるから。学科でも全員学生に行かせたいけれども、受入先の開拓、プログラム開発ができていないという現状があるから。理由、目的は何であれ、インターンシップは行かせなければと思い込んでいる大学は国公私立を問わず、圧倒的に多い。この平成9年の三省合意を現状に合わせて変えていくということが必要である。そのためには、今、インターンシップの現状はどうなっている、何が課題なのかというのをきちんと表に出しておく必要があって、数字的なものではなくて、質的にもきちんと出していく必要があるのではないか。インターンシップの位置付けとして、プログラム開発とか、コーディネーターを雇用するとか、現状に合わせて現場が取り組めるようにしていった方が、議論が無駄にならない。アクティブ・ラーニングやらとインターンシップ(の意味)について、似ているもので非なるものは、たくさんあるので、そういう点をはっきりさせておかないと、大学現場に行ったときに混乱してしまう。

○とりまとめの構成として、まず現状分析をきちんとして、それから何が課題であるかということを明確にして、それに対して何をなすべきかということを記載することになろうか。

●“はじめに”の後に“現状と課題”、それからどんな取組を実施してきたか、そこに現状の課題に入れたあとで、それを踏まえた個々の取組というような形とし、むしろ、大学の取組、企業の取組、組織、人、それから、バリエーションという形で整理した方がわかりやすい。三省合意について、何を盛り込むのかは、最終的には文部科学省、経済産業省、厚生労働省の三省で決めいくが、本会議では、現在の三省合意に沿った議論を頂き、三省合意の状況とどう違うのかといったことを取りまとめた後、それを踏まえて、行政文書にしていくことになる。

○現状では、三省合意のときには想像できなかったようなものが実際展開している。例えば、PBL、サービス・ラーニングはどう考えるのか。このような職業統合的な学習について議論の中で、その量的な充実ということも出てくるのだろう。このインターンシップという言葉以外のものも少し議論をした方がいい。

○学生の主体的な学習を促す体験的な、実践的な取組というようなところでやらないとカバーという議論は出てこない。確かにサービス・ラーニングであるとか、PBLとか教育方法論として、一緒にはできないものだと思う。ただ、似て非なる方法論でもって何をいうかというようなことをもう少し意識しながら、議論する必要がある。

○高専の場合、卒業生は大部分が産業界に行くので、産業界は高専、あるいは教育機関から“もの(卒業生)”をもらっているのだから、企業がインターンシップを受け入れることで、学生を成長させるということが企業へのメリットになる。これを最初の“はじめに”というところに入れた方がいいのではないか。学生を成長させる、それから企業人も時代に応じて新しい知識を学ぶというその相互関係を少し、強く意識して、インターンシップを考えた方がいいのではないか。

○実践型で身体を動かすようなプログラムと境がなくなってきていて、こんな時代に『インターンシップの推進に当たっての基本的考え方』をまとめられるのか。やはりインターンシップだけを取り上げるのは無理があるのではないか。

○企業に参加してもらわなければならないインターンシップについては、三省合意が必要になる。教育の充実のために大学として考えて決めることと、三省合意で決めなければならないことを分ける必要があるのではないか。

○三省合意では、インターンシップについて広く捉えるということで、教育目的によっていろいろな形が出てくることが想定されていたのであろうから、それは各大学で責任を持ち、主体性を持って企画・運営していくのがよいのではないか。

○世の中で議論されるのは、企業との関係で言うと、教育というよりは就職とか採用、人材確保に議論が偏っている。
 大学のスタンスとしては、その中のインターンシップ、職場に行くものについてはこんなふうに我々は考える、というところを大学側がしっかりと出すことが重要である。

○「インターンシップの推進に当たっての産学連携教育の考え方」というような表現で、産学連携の仕方、あるいはそこに学生がどう関わってくるのか、三者の関係に特化して議論すればいいのではないか。
就職活動後ろ倒し等、多少、「基本的な」考え方よりも「応用的な」あるいは「具体的な」論点の合意をしてほしい。

○平成9年はキャリア教育という考え方や就業力育成という言葉があまり入ってきておらず、PBLとかサービス・ラーニングとかはごく一部の先生が、変わり者がやっていた時代だった。本来のインターンシップというのは、「就業力」ではなく、「職業人」としての職業生活をきちんと全うするために必要な、基礎的なものを現場に行って、先輩や何かを通して体得する、習ってくるという要素が強いのではないか。それが平成9年の際はもっと広げられてしまい、今の学生が社会と切り離されているというふうに感じる。職業体験をすることで、職業人になることがどういうことかについて思いきってそこに焦点を当てた方が他の活動との整合性というか、両立も可能になる。三省合意を改めるのであれば、やはり企業側のメリットや気持ちを考えると、来たらすぐに職業人らしくなっていてほしいということではないか。

○今回、産業界の意識改革をしなければならない。社会と一緒に、大学と一緒に、明日の人材を育てるのが産業界の責務であるということを雇用も含めてきちんともう一回うたっていかないといけない。

○PBLというスキームを入れることで、大学の中で行われるものと産業界の研修で行われるものは若干異なり、具体的なプロジェクトでやるので、少し実践力が身につく。産業界の人も参加して良い。高専のインターンシップもフルタイムで2、3週間受け入れるケースもあるけれども、座学で5日間、職場で5日間というのもあってもいい。

○100%となると、いろんなバリエーションを考えるので、全部が1色ではない。1週間に1回行くのを3か月続けるのもあれば、2週間ずっと行きっぱなしというのもある。

○きちんと産業界と教育界、誤解なく共有できるような言葉で表現していくということが重要である。

○過去、バブル期に早期離職者の増加が社会問題となったが、大学の教育の中で、いわれる学校教育と社会、現場との接続をしっかりやるという部分が希薄であったと考えられる。実際に社会の現場で働いておられる社会人と学生の差は一体何なのかということを彼ら自身に気づかせ、その差異を残りの大学生活で、教育をもう一回自分たちで奮起してもらう。いわゆる学生から、一旦社会に出て、また学生として大学の教育に戻ってくるというリンクを考えていくというのが、大学としては非常に教育上メリットがあったのであろう。
それと同時に、企業としては、バブル崩壊後、新規採用者が十分に採れていない。一般的な学生に理解してもらえない産業の中身についてインターンシップを通じて、理解をしてもらう機会提供ができるところから始まっていったのだろう。
 我々高等教育機関にいる人間たちが、次代を担う若者をどういうふうに職業人として旅出たせるかということを考えたときに、インターンシップの施策をどう取るか、というところに持って行くべきなのではないか。

○大学の教育内容、専門科目、専門教育の充実がないまま、職業人としての意識だけがあっても、これからの世の中で企業が本当に雇いたい人というのは、そういう人ではないのではないのか。専門教育を充実させるということは、大学にとって重要な課題なので、そこにインターンシップというものが関わらなければ意味がないのではないか。

●文部科学省の施策あるいは大学がやらなければいけないような取組に、まず話を広げ、その中で絞り込むような形が整理しやすい。
 施策についてはコーディネーターをどうするのか、あるいは組織をどうするのかということであり、これは私どもの宿題である。
 御意見を頂きたい話として、二つあるのは、キャリア教育型と専門教育型というふうにしていたのだが、今、問題なのは、人文社会科学系、特に、人文系。課題解決能力、汎用的な能力を育てるためにインターンシップを活用していこうという話があった。そこは整理が必要なのではないか。
 もう一つは、インターンシップの範囲について、文部科学省が推進するべき内容なのかどうか、類似する活動まで全て含めて同じような効果が得られるものなのかどうか、どこまで最終的に意見のとりまとめの中で書いていくのか、さらにはその中で三省合意として捉えていくのはどこまでなのか、ということは整理しなければならない。

(議題2について)
※事務局より資料4今後のスケジュール等について説明があり、各委員から追加の意見等は今週末までとしたい旨の連絡があった。

以上

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高等教育局専門教育課