体系的なキャリア教育・職業教育の推進に向けたインターンシップの更なる充実に関する調査研究協力者会議(第2回) 議事要旨

1.日時

平成25年3月14日(木曜日)17時00分~19時00分

2.場所

文部科学省16階16F特別会議室

3.出席者

委員

稲永委員、荻上委員、加藤委員、剣持委員、正田委員、田籠委員、続橋委員、古屋委員、宮川委員、吉原委員、吉本委員、渡辺委員

文部科学省

山野大臣官房審議官、内藤専門教育課長、児玉専門教育課課長補佐、杉江専門教育課専門官、小栗専門教育課教育振興係長、森山学生・留学生課課長補佐

オブザーバー

吉田厚生労働省若年雇用対策室室長補佐、廣瀬経済産業省人材政策室統括係長

4.議事要旨

議事の概要:
 荻上座長より会議の進め方等について説明があった後、事務局から配布資料に沿って説明。概要は以下のとおり。(○:委員、◇:事例発表者)。

 

(議題1について)
※資料1について、委員から説明
◇全学のキャリア教育を担当する立場から言うと、インターンシップをインターンシップだけで独立して取り組んではならないと考える。事前研修、事後研修をセットにして、真ん中に体験学習を持ってくる。事前研修を意識した科目を用意することによって、学生はインターンシップを体験し、大学に帰って来た後、ゼミで発表し、研究科の中で体験的な話をすることによって、先生に一種のインパクトを与えることになる。
 また、インターンシップが専門家だけの中で完結することのないように、インターンシップの事前学習として学部、研究科に広く関連科目が置かれる必要がある。事前研修の内容としては、最近の傾向だと、財務分析、つまり財務諸表を基にした分析を組み入れている。企業分析及び業界研究を事前に行うことにより、インターンシップ後に控えるOB、OG訪問の勧奨にもつながる。
 1,500人から2,000人ぐらいの立命館大学生が、短くても長くても単年度期間中にインターンシップに参加していると推計される。3回生の在籍者数は約7,000人なので、単純に割ると、21~29%の割合となる。四人に一人(25%)ぐらいが派遣実態と認識している。事前研修の履修生は約20%であり、全体の8割の学生は、直接的な事前研修を受けずにインターンシップに参加させているという実態がある。そこで近年、取り組み始めた一例が事前学習セミナーで、一昨年からスタートさせている。会社とは何か、業界とは何なのかということを『四季報』等を用い、しっかりと事前に調べあげる。
 短期インターンシップについて、一つの問題提起を行いたい。学生に聞くと、4日間のインターンシップでも、非常に丁寧につくり込んでいてくれて視野が広がったとの感想があるように、中身のあるインターンシップもあるようである。世の中を知るという意味でも、短期インターンシップもしっかりと育てていく必要がある。現状として日本型の充実した短期インターンシップを育む段階にあるのではないかということを提起したいと思う。今までのインターンシップの調査は多くが大学経由であり、立命館でも2割しか把握していない。残り8割の学生、つまり、インターンシップに参加しているのだけれども、何を体験しているのかわからない学生について、産業界を対象とした調査が必要になってくるのではないか。
 短期インターンシップでは、(1)インターンシップの事前・事後学習だけではなくて、関連するキャリア教育科目を必ず置き、教員の意識を高めることが必要である、(2)大学が捕捉できない多数のインターンシップ体験学生に向けて、特に事前に学びの機会を提供することが必要である、(3)日本型の短期で普及型のインターンシップ育成に向けて産業界における本格的な調査が必要である、という三つの提言をしたいと思う。
 長期インターンシップについて、期間は3か月から始まり、現在6か月になっている。半年間のうち実質3日間しか企業には受入れをお願いしない、コーオプ演習という半年間の長期インターンシップを展開している。
 企業と連携する秘訣は、課題の解決に役立つ情報を徹底的に調べあげることである。インターンシップ後に残った詳細なデータが、企業で非常に貴重な資料として十分活用できることにより、来年も是非組んでやろうという受入継続性を実現している。
 もう一つのポイントは、チーム構成で、文系理系の融合チームについて、理系課題に対して、製品の技術的なものを全く知らない素人の文系の学生や、マーケティングの発想を一生懸命導入する人社系の学生による発案が混じることによって、より魅力的な提案になるということを、企業側がいち早く見抜いたことがきっかけで、持続的に展開されている。大学院生をリーダーにして学部生四、五名の計五、六名のチームを編成している。コーオプ演習終了後には理想的でない結果が出たチームをあえて教材として、大学院生(リーダー)を呼んで体系的な話を聞きながら、次の年の教育手法に生かしていく。そのための評価手法としては、分類学(Taxonomy)を活用している。
 インターンシップを高度化する場合には専門性、長期性が重要になる。次に、反復性。つまり、大学の学びを中心とした反復往還が望ましい。また、キャリア教育科目を置いて、学生を通じて教員自身の意識を高める必要がある。最後に公共性・公益性の担保。つまり、お金を儲けること自体は社会を支える重要な活動であり本来、決して悪いことではない。むしろ、長い歴史を持つ会社は強い公共性・公益性が担保されているからこそ生き残っているという産業界の真の姿をきちんと印象付けることも、高度化の要素である。

 

(立命館大学における事例発表に対する意見等)
○分類学(Taxonomy)で評価するという話は大変興味深い。
◇分類学(Taxonomy)とは、他人と相談せず、きちんと自己、他者評価を行う相互評価方式である。
◇コーオプ演習の長期プログラムにおける課題としては、新規開拓する際の競合他社との関係。ライバルの会社と演習をやっていると、うちの会社と組んだときに情報が、学生の調査活動の中で漏れがあるのではないかとか、利害関係が発生するのではないかというようなナーバスな問題も出てくる。新規開拓する場合にはより密に話合いをする必要がある。

 

※資料2について、発表者から説明
◇湘北短期大学の設立について、昭和30年代以降の高度成長期に、地方の中学を卒業して集団就職してきた大勢の従業員のために高校をつくろうということで、まずソニー学園高等学校をつくり、40年代後半にはその役割を終えたということで、短期大学に発展して現在に至っている。設置学科は四つ。その内、情報メディア学科、総合ビジネス学科、生活プロデュース学科の三つの学科においてインターンシップを実施している。保育学科については、保育士や幼稚園教諭の資格取得のための実習を頻繁に実施しているが、資格取得ということが絡んでおり、カテゴリーが別となる。
 インターンシップの基本方針として、実際のビジネス現場で、プロフェッショナルに囲まれた仕事体験を通じて、総合的な能力向上のきっかけをつかむということ。
 短大なので、学生が入学してきて半年、1年生の夏休みが過ぎて後期、9月に入ると、すぐに就職活動、ガイダンスが本格的に始まる中で、インターンシップは1年生の夏休み、春休みの2月、3月が主な実施期間となっている。特に力を入れている点として、一つは、部分的ではなく全体像を理解すること。二つ目は、考えて判断して実行できる力。三つ目は、チームでメンバーとともに取り組んで成果を挙げること。
 特徴としては、事前学習授業「インターンシップリテラシー」をすべて月曜日の5時間目に、すべての学生が必ず履修できるように時間割の編成なども考えて設置している。今年度、インターンシップに参加できる学科の学生、定員が合計で380名。その中の延べ310名の学生が参加しており、学生のほとんどがインターンシップに行っているという状況である。
 2年生による活発な「インターンシップアシスタント」活動によって、2年生が1年生を指導することが、効果的であることがよくわかった。
 インターンシップセンターとして、専らインターンシップのみを取り扱う部門を設けている。学生はそこにオフィスコーディネーターという専任職員を常駐させ、そこに電話すれば必ず全部わかるというような体制を整えており、短大ならではの小回りのきく点が武器となっている。
 インターンシッププログラムの特徴的なものを3点挙げると、一つが、プレゼンテーション面接で、学生が5分間のプレゼンテーションを行い、引き続いてプレゼンテーションの内容についてカウンセラーから面接を受け、残りの時間は会場全体でフィードバックを行うといったもの。二つ目は、毎年6月、ソニー株式会社で行う株主総会で来場した株主を誘導したり、いろいろなことをサポートしたりする役で学生を参加させた。そこで会社と株主の力関係等について生身で経験できたというのは、非常に大きな効果があったと思う。三つ目は、2年生が1年生をサポートすること。
 今後の課題ということで4点ほど挙げる。一つ目は、人数拡大。インターンシップは正規科目だが、選択科目として位置づけており、最終的には選択であってもほぼ全員行くようなところまでやっていこうと考えている。二つ目は、新規実習先の積極的拡大。採用と切り離すことを前提に依頼することで企業とのつながりを保っている。採用のしがらみがないが故に受け入れてくれる企業が相当数ある。三つ目は、実習先担当者との連携強化。実習先の担当者と学生との交流の場を設けて、実習先での学生の姿だけではなくて、現代の学生を理解してもらうということを進めている。四つ目は、インターンシップの新たな位置付け。企業等の若手社員に学生を一人付けることで、その社員が教えながら自分の仕事を見直す、また、若年層研修の一環としてというのを明確に打ち出してくれている受入れ先の企業もある。
◇インターンシップに参加していない学生のカテゴリーの内訳としては、留学をするためのコースに所属しているという場合と資格取得に力を入れたいという学生が挙げられる。資格取得とインターンシップというのは両立できるものだから、学校を挙げて全員参加させることを最終目標として検討している。
◇インターンシップについては、アルバイト代のような時給は出ないし、交通費も原則全額学生負担で行っている。年明けの2月、3月に参加するインターンシップのため、交通費を貯めておくようにと言い渡して、学生によっては何万円ということになるが、準備をさせる。3週間ないし4週間の長期のインターンシップにいく学生については、10日間を超える11日目以降についての交通費を学校が負担し、部分的に、補塡を行っている。
◇通勤が不可能なホテルなどのインターンシップの場合は、実習先に負担をお願いしている。

 

※資料3について、発表者から説明
◇私自身は、中小企業経営者協会という経済団体に在籍している。設立経緯については、平成9年に三省一体となった方針が発表されたことをきっかけに九州、特に福岡で議論が生まれ、平成10年からインターンシップの試行がなされてきた。そして、平成12年8月に、前身である福岡県インターンシップ推進協議会を設立した。九州という広域で展開しなければならないという課題意識で名前を変更している。年間に800名ぐらいの学生のインターンシップを支援してきているところであるが、春は200名ぐらい、夏が600名、足して800名ぐらいである。3年生中心。
 事前研修会では、目的意識醸成を行う。期間は短いものや長いもの等様々あるが、このインターンシップでどうなりたいかという目的意識だけははっきり持ってもらうようにしている。
 標準的なインターンシップの実践例としては、約2週間、実働を入れると10日程度の例が一番多い。導入時に必ず経営トップもしくはそれに準ずるような方々が理念や創業期の話をしてもらうようお願いしている。「御社で言うお客様に近いところに一回接触させてください」というお願いや、ルーチンワークも遠慮なくやらせてくださいとお願いしている。また、導入とクロージングでしっかり学習の機会を設けるようお願いしている。
 プロジェクト型インターンシップの事例ということで、PBL型や実践型のインターンシップとして福岡中小企業経営者協会や地域の中小企業等に150人の学生に参加してもらった。
 インターンシップの議論だけではなくて、我々としては地域で若い人材を育てていくという、人材育成スキームとしてはある意味ねらいどおりになっている。
 福岡県内だけでも約12万人の学生がいて、我々がコーディネートできるのは約800名。
 事務局、運営スタッフは自活が方針なので、運営費を捻出することに苦労している。加盟大学から年会費10万円を拠出してもらい、1件のインターンシップが実施されると、受益者負担の考え方で1件当たり1万円拠出してもらい、これを運営資金としている。この1万円の出所については、歴史的にいうと大学に寄附をお願いしていたが、この10年ぐらいで大学の内情がいろいろ変わってきて、学生本人に「自分が希望するのであれば1万円出しなさい」という大学も3割程度あるというのが現状。
 それから、実践的インターンシップの中長期の導入については、まだ非常に苦しい状況であり、今後の検討課題である。学校側からは、「夏休み、春休み期間を越える、長期のインターンシップを学校としてなかなか推奨はできません」という話をよく聞く。
 中小企業では、採用とは関係ない方が整理しやすいと聞いている。
 大手企業では、CSRとしての参加により、若手従業員も活性化するので、いい反応を得ている。
 中小企業に展開する際には、企業側の経営ベースに何かしらのプラスになるつき合いがないと、受入れまでの交渉は終わってしまう。
 やる気のある企業は、学生を選ばせて欲しいとの要望がある。一番端的なのは面接をして「本当にやる気があるのか、本気なのかぐらいは確認させてくれ。」というものである。
 文部科学省、経済産業省、厚生労働省の三省一体となったインターンシップ推進について発信があると、大学との連携が非常にやりやすいところがあるので、是非そのような支援がほしい。
 地域的信頼性の高さというのは、私どもは経済団体で、地元で38年になる中小企業経営者協会というものがあるので、地域開拓ができている。
 課題としては、システム化が相当遅れていることが挙げられる。今後1,000人のインターン生のマッチング等をこなしていく中では、学生が直接Webの画面で申込ができたり、合否決定の通知ができたり、さらに欲を言えば、いわゆる評価も含めたことがデータベース化され、次につながるような地域で統一のシステムができると各大学でも手間が省けるのではないか。

 

(九州インターンシップ推進協議会における事例発表に対する意見等)
○推進協議会として、各加盟大学へ受入企業についての学内広報や、インターンシップに参加するにあたって学内選考を依頼しているのか。
◇28大学のうち、五、六大学は学内選考をきちんとしている。申し訳ないのが、学内選考までしたのに、それでも全体でみると応募枠からこぼれている学生がいて、結果的に落ちてしまう方もいる。
○インターンシップの単位認定及び成果物に対する認証・検証について、各加盟大学と九州インターンシップ推進協議会においてどのように取り扱われているのか。
◇約7割の大学において、インターンシップが単位認定されている。評価としては、企業に統一したフォーマットへ評価を書いてもらい、学校側にフィードバックし、そこで実態を把握して単位認定される仕組みになっている。

 

(議題2について)
事務局より今後の会議開催スケジュールについて、配布資料に沿って説明があった。

 

(以上)

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