【資料2】「インターンシップの普及及び質的充実のための推進方策について」意見のとりまとめ(たたき台)

- 目次 -

1.はじめに

2.量的充実のための方策
・大学の取組の活性化
・企業等における意義
・専門人材の養成・確保
・大学と産業界を調整する仕組み
・報酬等

3.質的充実のための方策
・大学教育における位置付けの明確化
・単位化の効果
・インターンシップの評価
・事前・事後教育の重要性
・多様な形態のインターンシップの推進
・インターシップに類似する体験活動
・海外インターンシップ
 ・外国人留学生のインターンシップ

4.その他
・学生の参加状況の把握

5.「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」の見直し

 

1.はじめに

  •  インターンシップは、学生が自己の職業適性や将来設計について考える機会となり、主体的な職業選択や高い職業意識の育成が図られるとともに、大学における学修と社会での経験を結びつけることで、学生の大学における学修の深化や新たな学習意欲の喚起につながる有益な取り組みである。
  •  特に大学や産業の国際競争力強化の観点から、大学は次代を支える人材育成のために大きな役割を果たすことが期待されており、その中でインターンシップは学生が産業や社会についての実践的な知見を深める機会を提供するものと考えられる。
  •  このため、インターンシップの一層の量的・質的充実を図ることが、我が国の創造的な人材育成の観点から喫緊の課題である。
  •  平成23年1月には、中央教育審議会において、幼児期の教育から高等教育までを通したキャリア教育・職業教育の在り方について答申が行われた(「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」)。
  •  また、平成23年4月には、大学設置基準が改正され、すべての大学において,教育課程内外を通じて学生の社会的・職業的自立に関する指導等に取り組むこととし,そのための体制整備を行うこととされた。
  •  我が国のキャリア教育・職業教育の推進に向けたインターンシップの量的・質的充実を図るため、文部科学省は、経済産業省、厚生労働省との連携を強化し、インターンシップに参画する学生、大学、企業等の三者全てが恩恵を享受できるよう、その一層の推進に努める必要がある。
  •  大学においては、各専門分野の教育内容と、キャリア教育及びインターンシップが密接に結びつく体系的な教育が構築される必要がある。

2.量的充実のための方策

(大学の取組の活性化)

  •  インターシップは、産学連携教育の一環として行われるものであり、基本的には大学が主体者となるものである。このため、大学の積極的な関与が必要である。
  •  大学の教職員に対し、インターンシップの重要性の理解を進めるためには、インターンシップが学生の専門教育の学修を深めるための主体的な学修を促すプログラムである点を明確にする必要がある。また、人文社会学系学部を中心に学部間での取組の差も埋めていく必要がある。
  •  インターンシップは、学内のインターンシップを担当する教職員だけで完結するものではなく、学部や研究科の教職員も含めた大学の教職員全体として取り組むことが必要である。また、大学の学部・研究科等の組織の枠を越えた連携・協力体制を整備することが重要であり、学長等のリーダーシップが期待される。
  •  さらに、インターンシップに関する専門的知見や経験を有する教職員を養成・確保することが重要であり、そのためには、大学教職員が企業等で就業経験を積むこともインターンシップへの理解を深める上で有益と考えられる。

(企業等における意義)

  •  企業等にとっては、学生を受け入れることにより、CSRや社会貢献としての評価を得ることができる。また、学生に受入れ企業等に関する研究を行わせることで、企業等にも有益な情報が提供される効果がある。さらに、若手社員の少ない企業等において若年社員が学生を指導することを通じて、自ら業務内容を再認識し、業務に対する理解を深化させるという企業等の若年者研修としての意義も考えられる。
  •  インターンシップの普及のためには、特に中小企業等における受入れを拡大することが重要な鍵となることから、中小企業等のインセンティブを高める施策が重要であり、中小企業等の魅力発信としての活用の意義についても明確化する必要がある。
  •  インターンシップを通じて自社のような業態や業種についての理解を深め、就業を促進することが可能となる意義が認められ、また、学生にとっても結果的に最適な就職先を見つけることができるきっかけとなりうる意義も認められる。

(専門人材の養成・確保)

  •  大学、学生及び企業等の間に立ち、インターンシップの受け入れ先を開拓したり、企業側ニーズを把握し、プロジェクト設計を行ったり、学生に対しメンター的に指示したり、学生の主体性を伸ばすコーディネーターの役割が重要である。
  •  コーディネーターとなり得る人材としては、大学教職員、商工会議所等の経営指導員、地方金融機関のスタッフ、各地のインターンシップ推進協議会のスタッフ、インターンシップに関係する企業やNPOのスタッフ等が考えられる。
  •  上記の人材が社会的に認知されるよう、コーディネーターとして認定される仕組みを検討する必要がある。また、コーディネーターの位置づけの明確化及びコーディネーター同士が定期的に全国各地の好事例を学び高め合う場が必要である。
  •  コーディネーターに対する研修機会の提供により資質の向上を図るとともに、コーディネーターの身分保障や学内の位置付けについても検討すべき。

(大学と産業界を調整する仕組み)

  •  地域におけるインターンシップに関する状況を把握しつつ、インターンシップに関する大学等のニーズと地域産業界とのニーズのマッチングを行うなど、大学と産業界を調整するための仕組みを構築する必要がある。
  •  この仕組みにより、地域内の受入企業等の開拓が推進されるとともに、地域内の学生のインターンシップの申し込みを取りまとめて企業側に提示することが可能となる。その際、受入企業等のデータベース化や、学生の申込みや企業等の受入可否決定通知をWeb上でシステム化することも考えられる。
  •  一方、学生の多くが、自らの適性・志向等が明確でないまま就職活動時期を迎え、結果として未就職の者が高水準で推移している状況を踏まえ、上記仕組みを活用し、学生に対して、キャリア教育から就職まで一貫して支援する体制を強化する必要がある。

(報酬等)

  •  インターンシップの普及拡大を図っていくためには、報酬を得た上でインターンシップを行うことの有効性にも留意が必要である。特に、長期のインターンシップの場合には、報酬を得ることにより学生の参加を促す効果が考えられる。また、実際に雇用されることで、学生の責任感が高まる効果も考えられる。
  •  一方、インターンシップの名を借りて学生を低賃金の労働力として扱うような事例も見受けられる。このような場合は大学への相談を呼びかけ、問題がある場合は大学として適切な助言を行うことが必要である。

3.質的充実のための方策

(大学教育における位置付けの明確化)

  •  インターンシップについては、一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てるキャリア教育としての意義が強い形態(キャリア教育型)と、専攻分野の知識・技能を深化するための専門教育としての側面が強い形態(専門教育型)がある。
  •  後者については、インターンシップを専門教育の一環として位置づけた上で、専門教育における学生の学修を深めることを目的として、サービス・ラーニングやPBL、ボランティア等とともに学生の主体的な学修を促すプログラムとして捉えるべきである。このような専門教育と密接に結びついたインターンシップについては学位の構成要件との整合性を考慮する必要がある。
  •  前者の場合であっても、インターンシップを専門教育から切り離されたものとして考えるのではなく、専門教育との関係を考慮する必要がある。かかる観点から、大学はキャリア教育としての位置づけを明確にしたうえで、学内の関係者の連携・協力が進むよう一層積極的に関与する必要がある。
  •  インターンシップにおける教育的側面を確保することは大学の責務であり、大学の側から企業等に対し、教育効果の高いインターンシップ・プログラム設計や運営方法を積極的に提案する必要がある。
  •  いずれにしても学生にとっては進路を考える重要な機会であることに留意する必要がある。

(単位化の効果)

  •  インターンシップを大学の単位に組み込むことは、大学教育とのつながりが明確になることや、事前・事後教育の充実が図られる等、インターンシップの教育的効果を高め、学生が大学における教育内容をより深く理解できるというメリットがあるという観点から、望ましいと考えられる。
  •  ただし、学位の構成要件との関係について十分な検討が必要であり、また単位化によりかえって不必要な教育内容を生じさせない工夫が必要。

(インターンシップの評価)

  •  インターンシップの教育効果を評価する手法を開発し、優良なインターンシップ・プログラムを評価する仕組みを構築することが有益と考えられる。
  •  学生のインターンシップの成果の評価について、企業にとって大学毎に異なる対応が必要な現状を改め、インターンシップを受け入れやすくするため、共通の評価フォーマット等の開発・普及を行う必要がある。

(事前・事後教育の重要性)

  •  インターンシップでは、事前教育においてインターンシップに参加する目的を明確化するとともに、専門教育との関連性を意識させることが重要である。また、事後教育において大学における自己の学修とのつながりを意識させることが必要である。
  •  なお、大学を経由しないでインターンシップに参加する学生に対しても、事前・事後教育の機会を提供する等のサポート体制の構築が有益である。
  •  学部と大学院別、文系と理系の分野別、短期と中長期の期間別、実施対象地域別(国内及び海外)などを考慮した具体的なプログラムを策定し、質的向上に注力することが必要である。

(多様な形態のインターンシップの推進)

  •  現在のインターンシップは夏期休業中に1週間~2週間程度集中的に実施するものが最も多く、学生のキャリア教育の一環として機能しているところであるが、教育効果をより一層高める観点からは、週1日の通いなどの定期的な参加による実施を含め、1ヶ月以上の中長期のインターンシップの効果についても考慮されるべき。
  •  その際、企業等のみで長期間実習を行う方法だけでなく、米国で実施されているコーオプ教育のように、大学での講義と企業等での実習を繰り返す方法も有効と考えられる。
  •  学生が働く目的を考え自己成長を促す長期の有給インターンシップを産学の連携により推進することも考えられる。また、有給とすることで学生の責任感が高まる効果も考えられる。
  •  大学院レベルの技術系のインターンシップに関しては、産学連携の共同研究との関連付けも有効と考えられる。
  •  短期であっても大学と産業界(特に中小企業)と双方にとって有益な連携を可能とする取組(PBLの応用等)の追究を行う必要がある。
  •  学生に受け入れ企業等に関する研究を行わせるインターンシップや、若手社員が学生を指導することにより企業等の若年者研修としての意義を持たせるインターンシップも有効ではないか。(再掲)

(インターシップに類似する体験活動)

  •  特定の資格取得を目的として実施する教育実習、医療実習、看護実習等は、インターンシップの定義「学生が在学中に自らの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を行うこと」に当てはまることから、積極的に評価することも考えられるのではないか。
  •  就職活動中の学生が参加する就職直結型「インターンシップ」は、企業がより深く学生を見ることができ、学生が企業の内情を理解した上での志望が可能となることから、有益ではないか。
  •  課題解決型ワークショップやPBL型インターンシップの拡大も考えられるのではないか。
  •  ボランティアなどの体験活動、PBL、サービス・ラーニングなどは、その体験内容が職業意識の育成等につながる場合、インターンシップと同様に意義のある取組と考えられるのではないか。
  •  企業外の施設や企業内会議室等で行われるPBLやサービス・ラーニングなどであっても、複数の多様な企業等関係者とのコミュニケーションを一定程度経験し、活動内容が企業等活動という文脈に即したものである場合、インターンシップと同等の就業体験と捉えることも考えられるのではないか。
  •  地域の企業等が研修施設等において、一定のテーマに基づき合同で「インターンシップ」を行うことも考えられるのではないか。
  •  企業から就職内定後、研修課題を与えられる場合が想定され、そのような研修課題と大学教育を整合的に再編成する取組として、就職内定後の有報酬「インターンシップ」が考えられるのではないか。
  •  学生に報酬等を支給するアルバイト等の就業体験については、学生自らの専攻と関連し、大学等における教育課程として位置付けた事前・事後教育等を実施することにより、大学が実施するインターンシップと同等に捉えることも考えられる。
  •  アルバイトと大学における学習をプログラムの中で統合する「日本版デュアル・システム」(学生の立場と研修を受ける労働者の立場の二重性)が考えられるのではないか。
  •  専門教育と関係した実践現場での学習として、インターンシップ、サービス・ラーニングなどの体験活動を、「職業統合的学習※ (Work Integrated Learning:WIL)」という包括的な概念として捉えてはどうか。 
    ※ WILとは、豪州の大学において導入・実践が進められている学習方法論であり、産業界との連携の下、各専門分野の学問体系に基づく大学教育のカリキュラムと実践的・実務的な就業体験とを統合させた教育である。
     (出典:平成23年度文部科学省「先導的大学改革推進委託事業」報告書「国内外における産学連携によるキャリア教育・専門教育の推進に関する実態調査」)
  •  海外留学などの大学外での「地域・職場の現場での学習」に相当するものについても、キャリア教育・職業教育の一環として位置付けられる場合は、インターンシップと同等の取組と位置付けられるのではないか。

(海外インターンシップ)

  •  グローバル人材育成の観点から、海外インターンシップのプログラムの開発・普及を推進する必要がある。その際、海外連携大学における語学研修の実施や、日系企業等現地法人との連携によるプログラムが有効である。なお、海外インターンシップについては、リスク管理、学生へのフォローなど、国内インターンシップ以上に手厚い対応が必要である。
  •  日本人学生が海外留学中に行う海外インターンシップを推進することも必要である。

(外国人留学生のインターンシップ)

  •  優秀な外国人留学生を確保するため、日本企業/日系企業による外国人留学生を対象としたインターンシップの実施を促進すべきではないか。

4.その他

(学生の参加状況の把握)

  •  学生が大学を経由せずに参加するインターンシップについても、大学による学生への調査や企業等への抽出調査等により把握に努める必要がある。
  •  インターンシップを一層推進する観点からは、学生の参加状況を把握した上で、たとえばインターンシップに参加する学生の数等の目標設定を行うことが有益と考えられる。
  •  目標設定に当たっては、大学の専門分野によってはインターンシップの実施が困難な分野もあることに留意が必要である。

5.「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」の見直し

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高等教育局専門教育課教育振興係