学校法人会計基準の在り方に関する検討会(平成24年度)(第1回) 議事録

1.日時

平成24年8月28日(火曜日) 14時~16時

2.場所

文部科学省5F3会議室(東館5階)

3.議題

  1. 学校法人会計基準の在り方に関する検討について

4.出席者

委員

大橋委員、片山委員、工藤委員、桑田委員、佐野委員、鈴木委員、高橋委員、徳田委員、村山委員、森本委員、渡辺委員

文部科学省

小松私学部長、牛尾参事官、西山学校法人経営指導室長、岸本私学経営支援企画室長 ほか

5.議事録

【牛尾参事官】

 失礼いたします。定刻より若干早めですが、御予定いただいております先生方にはお集まりいただきましたので、始めさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 ただいまから第1回の学校法人会計基準の在り方に関する検討会を開催させていただきます。

 後ほど座長を選出していただきますけれども、それまでの間は私の方で進行をさせていただきます。

 本日でございますけれども、初回でございますので、今年の3月までに終えました論点整理の御紹介、それから委員の皆様から今日は自由な意見交換をしていただければと思っております。予定では16時終了としておりますけれども、一通りの意見交換が済みましたら、若干早めに終わる場合もあるかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。

 それから、冒頭でございますけれども、会議風景を写真撮影したいという希望がございますので、御協力をよろしくお願いいたします。公開でやっておりますので、よろしくお願いいたします。

 それではまず、開会に当たりまして、私学部長よりごあいさつをいたします。

【小松私学部長】 

 本日はまず、お忙しい中この検討会にお集まりいただき、また御協力いただきまして、まことにありがとうございます。

 今回の趣旨を簡単に御説明させていただきます。

 学校法人会計基準は昭和40年代からずっと定着して私立学校の振興を図ってきているわけでございますが、その間に常に様々な見直しはしておりますし、平成17年の改正も終わったわけでございます。基本金や計算書類の体系についてはそのときに、もう少し検討をしようということになりまして、それを受けて平成20年から、ちょっと震災の影響でお出しするのが遅くなりましたけれども、今年の春までに、いろいろな検討をしていただいて、論点の整理はやったという状態でございます。

 そこで、今回、当学校法人会計基準の在り方に関する検討会では、こうした経緯や論点の整理を踏まえた上で、会計基準についてどういうふうな点が改正等が必要かあるいは必要でないかという点で、こういったことを含めまして、具体的にどうしていこうという方向性の議論を深めていただきたいということを目的として先生方にお集まりいただきました。

 その際に、ポイントといたしまして、学校法人会計基準の考え方として基本的な考え方の蓄積があるんですけれども、1つは学校法人を取り巻く経営環境が大きく変化する中で、公教育を担う学校法人の経営状況を踏まえて社会に対する説明責任をどうするか。

 それから、その一つかもしれませんけれども、端的に言えばわかりやすくと、保護者等に対する説明責任と、その中で計算書類の表示をよりわかりやすくということが必要とされています。

 さらには、今の世界的な会計の動向の影響を受けておりまして、この影響は公益法人さんやあるいはその他の会計基準において様々な見直しが行われており、こういったものとのバランスの中でどうしていくか、こういった点が一つあろうかと思います。

 こうしたことを踏まえまして、当学校法人会計基準というのは、私立学校の特性と、あるべき姿というのをきちんと踏まえた上で、先ほど申し上げましたように外に向かってはわかりやすく、内に向かっては経営者の適切な経営判断に資するものということも考慮いたしまして、幅広い御意見を頂戴して議論を深められれば非常に有り難いなという趣旨でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【牛尾参事官】 

 それでは、本日は初回でございますので、出席の委員の皆様方の御紹介をさせていただきたいと思います。

 資料1に名簿がございますので、御覧いただければと思います。こちらの資料の記載の順に事務局の方から御紹介をさせていただきます。

【田辺専門官】 

 それでは、資料1に基づきまして御紹介の方をさせていただきます。

 (委員の紹介)

 それから、以上11名が委員の皆様でございますけれども、運営いたします事務局の方の御紹介の方もさせていただければと思ってございます。

 (事務局の紹介)

【牛尾参事官】 

 それでは続きまして、本検討会の座長の選出をしたいと思いますけれども、特段の御意見がなければ事務局から推薦をさせていただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。

 そうしましたら、私ども事務局といたしましては、この3月まで学校法人会計基準の諸課題に関する検討会において座長を務めていただきました立教大学の大橋先生にお願いしたいと考えております。よろしいでしょうか。ありがとうございます。

 それでは、早速で恐縮でございますが、座長をお願いしたいと思います。席の御移動の方をお願いできますでしょうか。

 それでは、ここからは大橋先生によろしくお願いいたします。

【大橋座長】 

 大橋でございます。

 私立学校が大きく変革し、それを取り巻く状況が変わってきています。そういう中で変えていくべきものは改革していかなければならないと。今、小松部長の方からお話がありましたけれども、そういう状況の中で会計基準が役割を果たす、そういう会計基準の導入を考えていく上で大切な会議だと思っております。先生方どうぞよろしくお願いします。

 それでは、会議がスムーズに運営されて、また座長が欠席した場合、役目を代行していただく座長代行を決めさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

 では、徳田委員にお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。よろしくお願いいたします。

 それでは、次ですけれども、議事に入ります。まず事務局から今日の資料の確認をお願いいたします。

【田辺専門官】 

 それでは、お手元の資料の確認をさせていただきます。

 一番上に、第1回議事次第となっているものがあるかと思います。その下に、今、皆さんを御紹介させていただいた資料1、協力者の名簿がついてございます。資料2ですが、この検討会の要項が資料2として1枚もので入ってございます。その次に、A4の両面刷り、結構分厚い冊子で資料3といたしまして、最初にお話のあった課題の整理が一式入ってございます。

 続いて、資料4といたしまして、主な論点と各会計基準の現状の比較になった1枚ものの資料が入ってございます。

 それから、最後に資料5として、学校法人会計基準の在り方に関する検討会の今後のスケジュールのイメージが入ってございます。

 以上、資料5まででございます。

【大橋座長】 

 検討会について、課題の整理、その報告に入りたいと思います。

 事務局より資料の御説明をお願いします。

【田辺専門官】 

 ちょうど一番分厚い冊子、真ん中の資料3に基づいて御説明をさせていただきたいと思っております。

 資料3のまず最後のページをあけていただけますでしょうか。見開きになっておりますが、左側のページに別紙といたしまして、前回の検討会の委員のメンバーが入ってございます。大橋先生から始まって日吉先生まで、全部で7名の委員でこの3月まで検討会を重ねてまいりました。7名のうち大橋先生、片山先生、佐野先生に関しましては、引き続きこの会議に御協力いただくということで、大変恐縮でございますが、引き続きよろしくお願いいたします。

 それから、右の方に審議経過となっておりますけれども、20年4月から、一番下の14回、24年3月まで、全部で14回、4年間にわたりまして論点の整理を粛々と進めてきたということでございます。これから内容を御説明いたしますが、この内容は基本的に飽くまで論点の整理でございまして、それぞれの課題についてのメリット、デメリットで、こういうふうにしたらいいという案がありますけれども、どちらか一方決めるのではなく、論点整理をした後の両論併記のような形になったのが、今回の基本的な姿勢で、つまり論点を整理したので、今後この会でどうしていくのかを決める上でのたたき台という位置づけだというふうに思っていただければいいのではないかと思います。

 それでは、中身について御説明させていただきます。

 今度は表の方を1枚おめくりいただきますと、目次というのがございます。「はじめに」から6まで目次が振ってございますが、主な論点は2番の基本金、それから3番の各計算書類の会計ですね、財務三表と言われる貸借、消費、資金、これらをどうするか、これが2つ目のテーマ。4と書いてあるその他がその他の課題ということで、大きく3つ課題を設けて検討してまいりました。

 最初の基本金についてなんですが、ちょっとページをめくっていただくと、次の両面、2ページです。真ん中あたりに、2.基本金の在り方についてが書いてございます。ちょっと読ませていただきます。学校法人が学校を運営していくために必要な基本的な資産は、学校が存立している限り、継続的に保持しなければならないものだと。これらの資産の金額を「基本金」という形で維持するという考え方は、学校法人会計においても最も特徴的なものの一つであるということで、ほかの会計基準にはない最大の特徴である「基本金」のことについてまずここで触れてもらって、その下、特徴というあたりですが、これらの基本財産を学校法人は永続的に教育研究活動を行えるような必要な校地や校舎等を健全にすることが必要であって、中長期的に収入と支出の均衡を図ることが大事ですということが書かれています。このことを実現するために基本金制度というのが取り入れられたという制度の導入の趣旨あたりがここらで整理をされてございます。

 それに対して、課題でございますけれども、右の方の3ページの中段あたりに、課題等に関する意見というのがありまして、3つほど骨子があって、一番上の2行目あたりですね。基本的には、この基本的な仕組み、基本金制度というのは維持すべきであるという意見がある一方で、一番下の丸ということですが、一定の資産を保持するという考え方は必ずしも基本金にこだわらなくてもできるんじゃないかという意見も一方ではございました。こういう意味でそれぞれの論点について、両論併記の形に大体なっているというイメージでこれから御説明してまいります。

 基本金の中の1号基本金が、その下、3ページの下段の方でございますけれども、これは建学当初若しくはその後土地や建物、校地、校舎等を取得したときの取得価額をちゃんと維持していくための構造が1号基本金でございます。その趣旨は、一番下にありますが、学校法人に必要な財産を永続的に保持するためであるということ、これが基本金の一番メインの特徴かなと思ってございます。

 1ページおめくりいただいて、これに対する課題の中で一番象徴的なのが、4ページの課題の3つ目でございますけれども、大学等の設置時の財産を1号基本金とするという考え方もあるんだけれども、一定の条件のもとで、もう自己所有じゃなくて、借用ということも設置基準上認められることになってきている以上、設置時の財産は維持すべき資産というメルクマールじゃなくなってきているんじゃないかという意見も一方ではあったように思います。

 課題等に関する意見でございますが、主要なところは一番上と下でございまして、一番上、私立学校法、大学設置基準等により必要な資産を継続的に保持することが要請されており、それを数値化するものとしては当然必要ではないかという意見がある一方で、一番下の丸でございますけれども、3行目あたり、法人の意思で財産処分することができるため、何をもって指定財産としていくのかということが若干あいまいになってきているという批判も一部で出てきているところでございます。このあたりが1号の主な論点だったかなというふうに思います。

 次に、4ページの一番下、2号基本金でございますが、これは将来1号となる基本金をあらかじめ理事会で決めて、計画的にお金を積んでおこうと。学校法人の計画的な施設整備計画に役に立っている基本金が2号なのかなという認識でありますけれども、これに対する課題として言われているのが、課題の一番最初、学校法人の理事会等の意思決定で組み入れできる部分が決まってしまう。1号は土地や建物を買ったという取引に基づいて決まるけれども、これは学校法人の理事会の意思決定で決まるというところが大きな特徴かなというふうに思われます。

 課題に対する意見でございますけれども、1号を維持するのであれば、計画的な施設設備計画という視点で、2号の意味はあるという御意見と、先ほどの理事会の意思決定である程度あいまいな部分、理事会の操作とは言いませんが、ある程度あいまいな部分が出てくるという批判が一部あったのではないかというふうに思ってございます。これが2号についての両論でございます。

 続いて、5ページの中段以降、3号基本金ですが、これはいわゆる目的を持った運用ファンド、奨学基金、研究基金、国際交流などの目的を持った運用ファンドのことを3号基本金と言っておりますけれども、これに対する課題として挙げられているのも、5ページ、下から3行目あたり、学校法人の理事会の意思決定で決まってしまう部分がやはりあるのではないかというあたりが課題として挙げられてございます。

 次に、6ページにいきまして、4号基本金でございます。4号基本金はランニングコストの1か月分というイメージでとらえられておりますけれども、特徴を言いますと、学校法人はやはり必要な運転資金をある程度常時維持していなければ、その運営が円滑にできないのではないかという意味で導入された制度でございますけれども、課題の1つ目、4号基本金に対応する現預金を現実に持っていない場合もありますし、緊急の場合にその資金を当てられるかどうかという意味では希薄化してきているんじゃないかという批判がある一方で、もともとの設置の趣旨もあるので、維持すべきという意見、両方あったようにこれについても思われます。

 ここまでが基本金でございます。

 続きまして、7ページ、各会計書類の体系ですが、財務三表をどうしようというのが7ページから始まります。

 (1)番、貸借対照表でございますけれども、学校法人の貸借対照表の一番大きな特徴は、2行目あたりにありますけれども、資産の評価を取得原価主義、買ったときの価額でやるというところでございます。勘定科目の並び方も土地や建物が重要ですので、固定資産を上に載せる、固定性配列法になっている、このあたりが大きな特徴だったのかなというふうに思っております。

 これに対する課題として挙げられている中で一番大きいのは、課題の2番目、取得原価主義を採用していることから、実際の資産の価額、時価の意味だろうかと思いますが、実際の資産の価格を反映していないんじゃないかという御批判があったように思います。このあたりが貸借対照表の大きな課題でございます。

 次に、8ページにまいりまして、消費収支計算書。消費収支計算書は企業の損益と違って、飽くまで収入と支出のバランスを見る計算書類であるというのが一番の特徴かなというふうに思ってございます。課題のところで挙げさせていただいておりますけれども、消費収支計算書は帰属収入から消費支出より先に基本金組入れ額を引くという手法をとっているんだけれども、この点だけがどうも学校法人特有の特徴としてわかりにくさが存在しているのではないかというふうに言われてございます。それに対する意見として、右側の9ページの丸ポツの3つ目あたりで、帰属収支差額から基本金を控除することにすれば、つまりいったん収支差額を出して、帰属収支差額というものから基本金を引くことにすれば明瞭になるんじゃないかという意見も出ていたように思います。

 もう1つの課題として挙げられているのが、8ページに戻りまして、消費収支計算書の区分経理の問題でございます。収入の中身は臨時的なものも、事業外のものも、いろいろな要素が1つに重なって入っておるので、外部報告目的を考えれば、臨時的なものと経常的なものを分けるなどの区分経理も必要なのではないかということで、9ページの方にも書かせていただきましたが、別紙の方で区分経理のイメージみたいなものも載せさせていただいているというところが消費収支の課題として挙げられているところでございます。

 1ページおめくりいただいて、10ページ、資金収支計算書、財務三表の最後でございますけれども、資金収支計算書でございます。ほかの会計基準は既にキャッシュフロー計算書というものを導入されておりますけれども、いずれも現金預金の動きを見るという点では共通しておるんですけれども、資金収支計算書はちゃんと活動を見るということですね。4月1日から3月31日までの期間の活動に合わせて、前受金や未収金、当期の活動に合わせて調整をした後の計算書類になっているというのが一番大きな特徴かなというふうに思っております。

 実際に各学校の事務に関して言えば、この資金収支計算書で予算を立てて執行しておるし、資金収支計算書で伝票を入力してほかの証票ができているところがほとんどだと思っていますので、これが基幹的な収支計算書になっているのではないかというふうに思われております。

 ただ一方で、キャッシュフロー計算書はほかの会計基準等で導入されてきているということで、これをどうするかが課題の1つとなっておるということですが、課題に対する意見、ちょっと読ませていただきます。

 4つありますが、一番上、学校法人は予算編成をする際、資金収支が有効だということが重要ということです。それから2つ目、資金収支計算書の作成について、一定規模以上の学校法人は資金収支に代えてキャッシュフローをつくるとかという、その規模区分で分けてもいいんじゃないかという意見も出ておりました。

 一番下の意見ですが、キャッシュフローを導入した場合、資金収支計算書を財務諸表に載せるのか、つまり両方残すのか、若しくは報告形式の方の事業報告書の中で予算対比にかわるものとしてキャッシュフロー計算書を入れていくのかというような残し方のやり方について意見が出ていたように思います。

 ここまでが財務三表の御説明でございます。

 ページを飛びまして、12ページ。それ以外の論点が12ページ以降に載せさせていただいておりますけれども、1つ目が(1)固定資産の減損でございます。貸借対照表のところでもお話ししたように、基本的に資産は取得原価主義でやるというのが学校会計の考え方でございますけれども、今、企業は減損会計という考え方が土地や建物等の有形固定資産についても導入されておりまして、将来、その土地や建物から生まれてくる収入が減ったときに、それを現在価値に置き直して、今の価格に戻したときに回収可能性が下がったならば、簿価を変えて、新しい時価に直すような収益性を判断した減損会計というものが企業では導入されておるところであるけれども、これを学校会計に入れるべきか否かということが論点になっておりました。

 課題のところに出されておりますけれども、課題の1つ目、学校法人においては、固定資産を有するのはそもそも利益追求じゃない、教育研究を行うためであり、設置基準等で教育に必要な財産が決まっておるのだから、それを収益性が下がったからといって下げるべきではないというのが1つ目の意見だったように思います。

 ただ、そうは言うものの、一番下の丸でございますけれども、例えば数年後に学校をやめてしまってもう使わないということがわかっているような資産があった場合、残った価格を償却できるような制度が今はないので、先ほどの企業会計そのものの減損ではなく、臨時償却、特別償却という言い方になるのかもしれませんが、そういった制度は一方で入れてもいいんじゃないか、そんな意見もあったように思われます。

 このあたりが固定資産の減損でございます。

 13ページにいきまして、(2)金融商品、今度は有価証券とか、仕組債とか、資産運用の話に入っていこうと思います。

 取得原価主義で評価していくんですけれども、例えば有価証券を持っておって、その価格が極端に下がって回復の見込みがない場合、50%程度とかという基準がございますけれども、そうなった場合は強制評価減する、取得原価主義の学校でも有価証券に関しては強制評価減というルールが今入ってございますけれども、それを更に企業のように進めて、例えば学校法人が株式等を持っていて、ちょっとでも金額が下がったり、逆に上がった場合も全部評価をし直すというのが企業等のルールでございますけれども、それを丸々学校会計に入れるべきかどうか、若しくは入れない場合、注記で済ますこともできるのではないか、リスク情報は何らかの形で必要ではないか的な意見がここについてはあったように思います。透明性の確保の観点からはどういうやり方が望ましいのかということをこの有価証券については求められていたような気がいたします。

 続きまして、14ページ、3番目でございますけれども、退職給付会計でございます。今、学校法人は退職給与引当金で、それ以外の会計は退職給付会計に移っておりますが、その違い、学校会計は期末日現在で今いる教職員の方々がみんな自己都合でやめたときに幾ら積むかというルールが退職給与引当金です。今の学校のルールでございます。企業等がやっているものは退職給付会計、これは年金の積立て不足等が背景で入ってきた制度というふうに聞いておりますが、ざっくり言いますと、今やめたときではなくて、将来やめたときにもらう退職金、いつやめるか、それぞれの確率等も計算して、今の価値に直したとき幾ら積んだらよいのというのが退職給付会計、やっぱり時価を考えた概念かと思いますが、ここまで学校会計に入れるべきかということがここでも論点になってまいりました。

 15ページの課題のあたりにも挙げさせていただいていますけれども、課題の2つ目あたりですかね、ほかの会計基準でも退職給付会計を入れておりますけれども、原則として従業員の数、学校に当てはめたら教職員の数が300人以上の学校法人に適用し、それ未満のところでは例外で簡便法もいいよということもありますので、幼稚園から大学まである学校の中で300人の教職員がいるところというのはそんなにないんじゃないかという意見があって、そもそも一部の学校のために入れる必要はどうかなという意見もありましたし、最後の方でお話ししますけれども、昨年度参事官通知という形で会計基準の統一の観点から、退職給与引当金ですけれども、期末要支給額の100%にすべて統一するというルールを導入させていただいたところでございますので、恐らく100%ルールで計算すれば、退職給付引当金よりも十分な金額が積まれているのではないかということもここではお話があったかなというふうに思ってございます。

 この辺が退職給付会計です。

 ページ飛びまして、16ページ、連結会計の話でございます。これは真ん中あたりの課題が一番整理がされておると思いますので、ここを読みますが、課題の1番目、学校法人はそもそも寄附行為でできておりますので、企業等と違って持分という概念がありませんので、基本的に企業会計の連結会計にはなじまないよということで、そもそも連結が要らないはずなんですけれども、課題等に関する意見の下から2つ目の丸あたりでございます。各学校法人間の資金の取引というものがありますので、その資金取引等に関して関係する学校法人の情報を注記するという形、系列法人、関係法人、学校間の取引についてであれば注記する必要があるのではないかという意見が出ていたように思います。

 続いて、17ページでございます。(5)番、継続法人の前提でございますけれども、こちらに関しては、特に注記するというルール、開示基準はない形でございますけれども、関連といたしまして、一番上に各会計基準の概要というのを載せさせていただいてございます。特に企業ですね。1年以内に倒産する可能性が極めて高い場合、その善後策等を一緒に載せてリスク情報として書いておくようなルールが、ざっくり言うと継続法人の前提だったかなというふうに考えられますけれども、それを学校法人に当てはめて導入すべきなんだろうかということでございます。

 一番端的にそれを示しているのが、課題の3つ目かなというふうに思います。企業の場合であれば貸借対照表日の翌日から1年以内に講ずるということですけれども、少なくとも1年は継続できるか検討を求められているが、学校法人の場合はこれをどう考えたらいいのか。ここでおっしゃっている意味は、恐らく大学であれば、いったん引き受けた以上、普通の学部は4年間その学生を教育しなければならないということになると、1年ではなく、基準は4年かもしれないし、大学院まで考えれば6年、幼稚園から大学まで一貫教育というところであれば、相当な年数を維持すると考えると、期末時点で本当にそういう基準が考えられるのかという意見も出ていたように思われます。ここが継続法人の前提でございます。

 最後に18ページですが、先ほどちょっとお話ししました会計方針の統一に関しては、退職給与引当金の100%計上、有価証券の評価方法を移動平均法にする、デリバティブの勘定科目、この3つについては既に参事官通知を出させていただいて、23決算、早いものは22決算からもう導入済みであるという整理が行われております。

 最後に、まとめになりますけれども、この課題の整理を踏まえて、下から6行目あたりですかね、これらの検討に当たっては、税制上の優遇措置を受けている公益性の高い法人であることを踏まえ、特に近年、少子化等の影響などにより経営困難傾向にある学校法人がふえている状況なども勘案し、当検討会による諸課題の議論や広く学校関係者の意見や理解を踏まえつつ整理することが求められるということで、今このような会を設けさせていただいているというふうに考えてございますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 以上で、事務局からの説明を終わります。

【大橋座長】

 今、論点を整理していただきましたけれども、何かご意見とか、御質問がございましたらお願いします。

【桑田委員】

 資料3の6ページの第4号基本金の課題等に対する意見で、第4号基本金を廃止すると、急激な基本金の修正を行う必要があるということですけれども、急激なというのがよくわからないのですが、どのようなイメージなのでしょうか。

【田辺専門官】

 この課題の整理のときのイメージは、やっぱり金額が大きいし、財務に及ぼす影響が大きくなってしまうという意味を込めて、こういうイメージで書かせていただきました。ちょっと書き方が適切ではなかったかもしれませんが、趣旨はそういう趣旨でございます。

【大橋座長】

 ほかにございますでしょうか。

【佐野委員】

 内容については今、事務方から御説明があったそのとおりだと思います。このとき議論の出だしとして話題になったことで、今回の検討会のスタートラインに着くときに話題になるんだろうと思うことをちょっと1点説明します。

 冒頭、部長からの御説明にありましたように、外に対してわかりやすく説明責任を果たすことと、内に向けては、経営者の適切な経営判断に資することを前提にしてというお話がございました。御承知のことながら、この学校法人会計基準は、資料3の課題の整理にもありますように、当初は補助金の公平配分ということを第一義的にして、そして事業の部門別の全容をわかりやすく見られるようにとのことで始まりました。それが昭和46年から平成16年の私立学校法改正まで延々と念頭に掲げられてきたわけですけれども、私立学校法の改正によって、財務情報の閲覧開示が義務付けられるようになって、この会計基準がよって立つ私立学校振興助成法と、それからその説明責任を求めた私立学校法との法的な整理がまたちょっとわかりにくくなったんです。会計基準の在り方を整理するに当たって、従来的と申しますか、当初あった会計基準に課せられた使命を念頭に置くのか。それともやはり社会が求めている学校法人という公共性の高い団体の説明責任を果たすべく基準として考えていくか。その辺の軸足をどこに置くのかということが、前回も話題になったと思っております。

 したがって、今回も今日の検討会設置の目的は説明責任を果たすということを第一義的に考えながら、会計基準をどうしていったらわかりやすく、かつ内的にも経営指標として見やすいものができるのかということを考えなきゃいけないのかなと思いました。

 それを果たすためには、多分法改正も含めたところで、例えば私立学校振興助成法に足を置くのか、私立学校法に足を置くのか、その辺のところも含めて本来は考えなきゃいけないのではないかと思います。軸足としてほとんどの学校法人が学校法人会計基準により会計を行うことを寄附行為で定めていることをもって、やはり正当に説明責任を果たす書類として、どんな会計書類がいいのかなということを、現在の会計基準を否定するわけではなく、作成者側がダブルスタンダードになってしまっては大変なことだと思いますので、その辺念頭に入れて議論をしていくべきだということです。これが前回の検討会でも最初のときに話題になったことというふうに記憶しています。

【大橋座長】

 ほかにございますでしょうか。

【片山委員】

 今、佐野委員の方からお話がありましたけれども、そのことはこの検討会を始めるに当たって、まずは確認をしてから進めていただきたいと思います。文科省の方はどういう方針でしょうか。

【小松私学部長】

 私立学校振興助成法自体は昭和50年にできましたけれども、当初あった会計基準に課せられた使命をもとにして今日まで継続的にどう学校法人の在り方をとらえるかという積み重ねを尊重することは大切です。

 ただもう1点は、今、いきなり改正の話をすることとは別としまして、これは従来においては私学助成というものと当たり前のように連動していますけれども、近年は学校法人のガバナンスそのものということについても、これはほかの法人と同じように、いろいろと現代化を図っていく必要があり、いろいろな改革が行われています。この中には財務情報の開示が社会的にはどういう方法が一番わかりやすいのか。財務情報の公開に一番わかりやすい方法はどのような形で、どのようにして多くの人が扱っている方法に近づけていくのかという意味において課題の整理の中でも十分考えていただく必要があるのだろうというふうに思います。

 それから、文部科学省としていえば、公共性が極めて高い学校法人として、補助金を受ける、あるいは税制の優遇を受ける、このことはセットになっておりますので、そのこととの結びつきは非常に重要な、そういう意味では今までと変わらない面なんですけれども、それに対する社会的な支持を獲得して、きちんとわかりやすくしていくことは、私学助成ということだけではなくて、学校法人への税制優遇など、学校法人の社会とのインターフェイスとして社会的な仕掛けと一緒に考えていかなければなりません。

 最後に1点、文部科学省としてのスタンスを申し上げますと、学校法人とこうした会計のもとになっている企業会計でございますけれども、収益を上げるのを前提とするのか、そうでないのか、あるいは経済的リターンを本来目的に組み込んだ事業体であるか、寄附として公のお金にした上で公共の事業を行う法人であるという、この違いで学校法人は明らかに後者ですが、ただ、そのことが必ず会計基準に直接には非常にたくさんの差というか、違いを生むかというと、学校法人も継続的に建物や環境や先生の雇用というのがあって、次の世代にも受け継がれていくという意味では、そのお金の流れや継続的に使われているかということを見るということは、収益力とか、リターンとは別の面から見てもかなり似通ったことが出てきます。したがいまして、その学校法人本来の在り方というのは堅持していく必要があるのだろうと私は思っていますが、だからといって、それが企業とは全然違うものにはならないと考えて、そういうことで御議論をお願いできればと思います。

【大橋座長】  

 よろしいでしょうか。

【田辺専門官】

 座長、すみません。渡辺委員がお見えになられましたので、御紹介を先にさせていただきます。日本アイ・ビー・エム株式会社顧問の渡辺先生でございます。

【渡辺委員】

 よろしくお願いします。前は会社の監査役をやっておりましたので、ただ学校の方の会計というのは全く素人でございますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【田辺専門官】

 これで11名全員出席いただきました。ありがとうございます。座長、よろしくお願いします。

【大橋座長】

 それでは、議事の4になりますか、課題の整理を踏まえた、主な論点を資料4にまとめておりますので、これを基に議論していきたいと思います。

【田辺専門官】

 それでは、資料4です。課題の整理を踏まえた主な論点と各会計基準の現状ということで、今までお話しした内容をほぼ一覧表にまとめた形ですけれども、こういう表があると今後議論する上で非常に便利かなと思ってつくらせていただいた資料でございます。

 縦軸が論点で、横軸が学校会計基準と国立、公益、企業との比較という形になってございます。

 一番上、資金収支か、キャッシュフローかといえば、学校が資金収支で、それ以外はキャッシュフローになっています。純粋に現金預金の動きか活動かというところの違いであります。

 次の消費収支計算書等は、名称は違って、目的はそれぞれ違えども、ほぼ収支状況を見る計算書類であることは変わらないが、区分経理という視点がまず一番大きく違うのではないかと思います。学校は区分経理が入っておらないけれども、それ以外はすべて入っています。制度自体、利益を目的にするのか、そうじゃないのか、違いはあれど、特徴的なのはそのあたりかなと思います。

 貸借対照表については、どの会計基準にも導入されているので、一応丸としておりますけれども、先ほど申し上げたとおり、取得原価主義なのか、時価主義なのかといういろいろな論点がむしろその下の各論の方で出てきますので、あえてここでは書きませんでした。

 基本となる財産は、学校会計は維持すべき資産として基本金という制度があります。それに対して国立大学は資本金、国の出資額、現物出資等も含めた出資額が資本金として元手になっているということです。公益法人の場合は寄附者からの基金であるとか、これに使ってくれよという意味では指定正味財産が維持すべき資産となっていると思います。企業の場合は、言うまでもなく、株主の出資額であるというように、ここが一番大きな違いなのではないかなと思っております。

 減損会計の有形固定資産については、先ほどお話ししたとおり、学校会計の方では今入れていない状態ですが、これをどうするのか。金融商品に関しては、評価替え、若しくは注記、それぞれいろいろやり方はあれども、どのような方法が望ましいのかを議論する必要があるのかなというところです。

 退職給付と退職給与に関しては、100%基準で期末要支給額方式と載っていますけれども、これでいいのかどうか。一部大手の法人等で独自に企業年金と同じような制度を持っていらっしゃるところがあります。それに対する手当を基準でやるのか、そうじゃない方法があるのか、そのあたりがここでの論点になるのかなと思います。

 連結会計に関して、基本的には要らないはずでございます。関連会社については注記でやれというのが今のルールでございますけれども、ここに先ほどの論点で出ていたように、学校法人間の取引についても加えるかどうかあたりが論点になるのではないかと思っております。

 継続法人の前提は、今は入っておりません。国立大学も入っていないんですけれども、これは当然国が財源措置を行うから入っていないという理由の違いがありますけれども、これを入れるべきか、入れないべきかということです。先ほど整理したような論点が出てくるのかと思っています。

 一応課題の整理を見やすくするという点で、こういったような表を提示させていただきまして、この後の皆さんの議論の参考にさせていただければと思います。以上で説明は終わらせていただきます。

【大橋座長】

 全体を非常に効果的にまとめていただいておりますが、どこから議論しましょうか。

【田辺専門官】

 そうですね、今回は一応初回でございますので、どこからということにこだわらず、全体の体系も含めて、各皆さんが持っている意見を頂戴できればというふうに思ってございますが、いかがでしょうか。

【大橋座長】

 そうしましょうか。それでは皆様どうぞ。

【工藤委員】

 どうしても学校法人の会計基準を論ずる場合に、いわゆる補助金の分配という部分がありますから、それこそ幼稚園、小学校、中高、いわゆる規模の小さい法人があって、一方で非常に大きい法人もあって、一緒に一つの会計基準を適用されるという部分があって、おのずと職員体制とか、そういってもできる範囲とできない範囲の差において顕著に格差があると思うんですね。ですから、そういう部分では、いわゆる学校数でいえば小規模な部分の数が多いので、その部分への配慮というものを踏まえた上での論議を進めていかないと、できる内容、できない内容というのがあると思うんですね。その点は是非配慮して検討していかなければならない部分ではないかなというふうに私は思っています。特に中高という立場の議論をさせていただく部分もありますので、その点について御理解していただいて、議論を進めていくということが大切じゃないかなというふうに考えております。

【大橋座長】

 大きな枠組みではひとつであっても、個々の部分ではかなり負担がかかる法人もありますね。

【片山委員】

 先ほど御説明いただいた資料4についてですけれども、公益法人のところの一番上で、キャッシュフロー計算書というのが出ていますよね。これは公益法人の会計基準が改正されて、収支計算書というのは、財務諸表から外したんですよね。

【田辺専門官】

 そうですね。

【片山委員】

 収支計算書は非営利法人の中では非常に重要なんだけれども、予算の管理というのは、それぞれ自由に法人の実態に合わせた予算決算をやればとそういうことで、名目上は収支計算書が財務諸表から外れているんですよね。ただ、キャッシュフロー計算書をつくれという部分もありますが、大規模法人ですよね。大規模法人に限定して、その場合はキャッシュフロー計算書をつくらなきゃいけない、そういうことですね。

 それから、ここの表には出ておりませんけれども、最近、非営利の分野で改正された社会福祉法人の会計基準というのが大幅に改正になりました。それで、資金収支計算書はそのまま残っているんですよね。だから、損益計算書、消費収支計算書に相当するのはたしか事業活動計算書という表になりますね。貸借対照表はそのまま残っていまして、財務諸表としては資金収支計算書、それから事業活動計算書、それから貸借対照表です。

 それで、ここにもある基本金があって、第1号から4号まで基本金が従来の会計基準ではありますけれども、基本金の定義というのは寄附に限定しています。寄附を受けたとき、経常的な寄附ではなくて、施設設備等のいわゆるひもがついた寄附金だけが基本金になり、それから第4号基本金というのは、ちょうど学校法人によると、学校法人の運転資金に相当する第4号基本金と同じような性格のもの  と思いますけれども、今回の改正では、第4号基本金は削除になっているんですよ。いろいろな個別の問題に関しては、こちらの方の学校法人の場合でも参考になる部分が多いと思うので、比較としては社会福祉法人の会計基準というのも入れた方がよいかと思います。

【大橋座長】

 よろしいでしょうか。それで、きょうは初めですので、なるべく皆さんに発言いただきたいのですけれども、途中で退席される御予定の村山先生に御意見をよろしくお願いします。

【村山委員】

 工藤委員の発言に尽きるわけでございますけれども、私立幼稚園は7,000を超える小規模な学校法人が全国にありますので、大学法人並みにやろうとはしているわけでございますけれども、何しろ各県知事部局によっては、経理の方法それ自体も違っているところがあるようなので、統計をとってしまうと、都道府県によよってばらつきが生じます。だからその辺のところを踏まえながら、わかりやすいような会計書類としていただくようよろしくお願いいたします。

【徳田委員】

 昔から企業との関係の議論ではいつもこういう財務諸表関係で違いは出てきます。今、活動体がどうなのかという議論が大切ですけれども、私なりに自分なりに理解した企業というのは利益を出して配当する、これが最大の目的であり、所有者はだれなのかという議論がありますけれども、そういう中で必ずしも固定資産を所有しなくても良いのが昨今の企業ですけれども、いろいろな経営の立て直しの際に、資産を売却し、合併やリストラとか、いろいろな手法を使って早くに企業を再生させるという手法を取るのが企業なんです。

 それから、施設の設備投資は明らかに収入増、収入に対するリターンを多くするのが企業活動だというふうに私は理解しています。これについては、また御意見があると思います。一方、学校法人はどうなのということを考えますと、大学の場合を考えますと、やはり受け入れた学生を大学は4年間、薬学は6年、医学部も6年、少なくともその期間は学生を育成するために保証しなければいけません。固定資産を持っていないと、教育・研究活動はできないという企業との違いがあります。そのほかに学校法人を解散する場合には、文科省とか、それから継続法人に財産を引き継ぐということで、やっぱり学校法人の予算制度というのが長く私立大学を維持するためには非常に大事なものであるというふうに私は認識しています。

 そういうことを含めますと、私が最近いろいろな外部の企業の方に話をするのは、企業の1年というのは、我々の4年間であり、財政計画という場合、基本は1年間で考えますけれども、その4倍、実際大学というのは4年の期間をかけて計画を考えるのです。根本的にはやっぱり人間の育成という役割の中において、会計業務を行っております。

【森本委員】

 先ほど佐野委員からもちょっとお話がありましたけれども、会計基準に従い会計処理を行うということが私立学校振興助成法に載っていますよね。ずっと前は私立学校法だったですけれども、あのときは私立学校振興助成法がなかった時代で、結局補助金関係が始まって流れが一つありながら、一方では情報を公開しようと私立学校法に書いてあって、収支計算書と書いてあることが何とかというのはどこにも書いていないですね。常識的にもこっちにしかないから、これを使うんでしょうというお話なんだけれども、これは資金収支のことを言っているのですか、消費収支のことを言っているのか、両方なんですか、どっちの計算書なんですかということすらありません。要はみんなが見てわかるようにするんだったら、一般企業的に見ると何が何だかわからないし、少なくとも収益があった時点で、そこから増資を先にしちゃって、決算をやったら損失が出ました、そんなばかみたいな決算というのはどうなのかとうちでも言われたことがあるんですね、会社関係の人から。だから、やっぱりそうすると、公開する以上はわからなきゃいけないのだから、だからその状況が違うという説明もどこかにあってもいいし、少なくとも、例えば校舎をつくって3か月たったら次につくりかえますなんていうことは、めちゃくちゃなことを考えたときにあり得ない話ですので、ですから結果的には60年使い切るかどうかは、私の経験上ちょっと無理かと思いますけれども、私が見ているところ、早くて壊して10年ですよね。うっかりすれば60年たってもまだ使っています。うちでも80年近いところもあるから、一般的なところのきれいな校舎をつくりましょうというところが、新築がいいのか、実は60年前につくったのをきれいに直して使っているというのと、どっちがいいのかということは、何か説明が必要かなというのがあります。

 それと、先ほど中高幼稚園の話がありましたけれども、実は一、二週間前、日本私立学校振興・共済事業団から今日の私学財政の幼稚園版が来まして、今、学校法人の数は全部で8,000くらいですが、うち5,000ちょっとが幼稚園法人で、中高法人、小学校法人、短大法人でも学生、生徒が全部で1,000人を切っているところが結構ありますから、そうすると、仮に1,000人とすると、非常にアバウトな数で言うと、教職員は10人でしょうと。そうすると、10人でやっていると、その中で経理のわかるのが必ず1人いるということはあり得ないから、小遣い帳的な決算はともかくとして、さもなければ会計士さんに監査してもらうというようなことを言いながら実は会計士自らつくってという実態からいうと、実質上会計業務をやっていないところがあるので、そうすると、いわゆる会計事務がこうだから、ちゃんとやって、小さいところは例外にしましょうというのは論理的におかしいので、大多数が小さいところだったら、大きいところだけ例外的に通常の範囲にプラスしてやりなさいというのが論理ではないかと思います。あなたのところはリーダーと言いながら、半分以上を除外しちゃうというのでは、普通のルールの決め方としてどうかと思います。

【高橋委員】

 学校法人会計監査に従事している立場から申し上げますと、幼稚園から大学法人まで、いろいろな立場の法人を見させていただいているわけなんですけれども、まだまだ現状の学校法人会計はよくできていると思うんですけれども、でも、長年これをやってきているにもかかわらず、まだまだ学校関係者、理解が不十分であったり、十分生かし切れていなかったりということが、本当に現場では多いです。

 その中で、よくわからないねと言われることが多い学校法人会計基準を見直すからには、是非わかりやすい、外部関係者から見てもそうですけれども、それをつくる側(そば)、利用する側(そば)の学校関係者から見ても、なるほどこれは改めて勉強し直そうと言うと変ですけれども、これは使っていかなければいけない基準なんだと、これはわかりやすく非常にいいというような方向を目指さないといけないんだろうなというふうに思っています。冒頭に元々の会計基準の目的について説明がありまして、説明責任を果たすというお話もありましたけれども、やはり社会から理解を得るためには、まずは学校関係者を中心にして使いたくなるというか、自信を持って説明できる、自分の学校の経営状況を自信を持って説明できるんだというような気持ちになるような制度にしていかなければいけないんじゃないかなというふうに思います。

【大橋座長】

 学校会計がわからない人や、私自身もずっと企業の会計を見ていると、ちょっと頭を切りかえて、それで整理し直すという、そういう作業が一段階必要だといいます。それから、基本的な性格が他の会計基準とは違うからそのことを大事にしなきゃいけないと思います。

【鈴木委員】

 最初に、学校法人会計基準の目的というものを、もう一段固めてみても良いかなと思いました。

 次に、学校経営のことですが、収益を目的にしているわけではないということはその通りですが、世の中の人は、収益性をもって、経営がどれほど健全かということをはかる共通言語にしていることも事実なわけです。したがって、財務内容というものを共通語で語っていただかないと、世の中の人にはわかりにくく、比較もできにくいわけです。例えば金融機関としても、企業に貸す場合と、学校に貸す場合とで、全く資金を分けているなら別ですが、同じ資金から出しているので、企業と学校の健全性、収益性をできるだけ同じ尺度で測りたいはずです。だから、学校法人が金融機関等から借入れすることはありえないということであればともかく、学校経営も立派な経済活動ですので、経済活動で使われている共通言語をきちんと使わなければ、何か起きたときに困ることになりかねません。そうした意味で、学校法人会計もできるだけ企業会計に近いもの、あるいは企業会計上必要があるものについては比較可能な状況にしておくという努力が求められていると感じました。

 さらに、例えば金融機関では、法律上、経営の健全性確保に加え、預金者保護ということも大事な視点になっているわけで、そうした意味でいうと、私立学校法のポイントの一つに、例えば学生あるいは生徒の保護という観点もあるはずではないかと思いました。

 それから、過去の金融危機の際に1つ大きな問題だったのは、それまでは金融機関を絶対つぶさないという大前提でやってきていたことで、これが問題解決の足かせになり、問題を大きくもしました。これは学校法人の場合も参考にされた方が良いかと思います。今回おまとめいただいたものの中に、学校経営の連続性確保ということが出てくるのですが、それはその通りですが、そこに拘(こだわ)り過ぎると必ずどこかに齟齬(そご)が生じかねないわけで、やはり出口を見据えた形で物事を考える必要があると思います。要するに、つぶすしかない場合にはつぶせるようになっていて初めて、モラルハザードがない、健全な学校経営が担保できるのではないかと思うわけです。実は、金融機関にこうした考え方が定着したのもそう昔のことではありません。

 もう1つ思いましたのは、会計基準というのは、例えば犬に例えますと、必ずしも胴体(経営活動)ではなくて、しっぽ(経営結果)だということです。したがって、しっぽが胴体を振り回してしまうようなことがあってはならないわけです。何が言いたいのかというと、まずは胴体の健全性や成長を図ることが先決であり、しっぽである財務会計処理はその結果として決まるものですから、とにかく透明性をきちんと確保しつつ済々と実行することが肝要であるということです。意図的に狙っているわけではないにしろ、仮に、会計基準の良しあしや透明性の違いで経営実態の適正判断を過ごさせることがあれば、しっぽが胴体を振り回すことになるわけで、これは回避すべきです。また逆に、学校法人会計基準を企業会計基準に近づけることで、健全な学校本体の運営がおかしくなるという懸念があれば、それはあってはならないことであり、そうならないような手立てをしっかり構築すべきです。いずれにしろ、共通言語を採用可能なところはできるだけ共通言語にした方が良いのではないかと思います。更に言えば、会計基準に余り過大な期待を持たせない方が良いようにも思います。

【大橋座長】

 ありがとうございました。

【渡辺委員】

 先ほどは皆さんの方から、大学から幼稚園まで、大規模法人からそうでもない中小法人までというお話がありましたけれども、企業も同じように、圧倒的に数が多いのは中小零細企業なんですね。企業会計とか、いろいろなことを言っていますけれども、例えば企業を見ますと、公開会社と非公開会社、それから規模の大会社とそうでない会社、幾つかグループに分かれておりまして、ガバナンスの体制が、法が求めるガバナンス体制なんかもかなり違っているんですね。今回、学校法人の会計ということで議論が始まるわけですけれども、私はちょっと見ていても、例えば企業の1,000人ぐらい社員がいるところで、本当に経理がわかっている人間がどれぐらいいるかというと、意外に少ないんですね。それから、小さくて上場していなければ会計監査人も置かなくてもよかったりとか、そういうところもあったりして、かなり大小については法もサポートしているというのが実態なんですね。

 今回、学校法人も私はセグメンテーションをして議論してもいいのではないかなと思います。本来どうあるべきかみたいなところは、大規模、又は大学の学校法人に限定して議論するということです。同時に議論すると、やっぱり下の方に引っ張られて、なかなかベストプラクティスな議論ができないということもあるかと思うので、一案としては少しセグメンテーションをして、極端なことを言うと、非常に小さい規模のところについて今回は何も変えないという選択があってもいいのではないかというふうに私は思っています。そうしないと、新しい基準をつくった場合、そこをサポートしていただける、自分のところで調達できないところが大部分だと思いますので、外の力をかりるにしても、非常に数が少ないのではないかというふうに思いますので、幾つか、上の方のセグメンテーションで少し実際に走って、そういう人たち、サポートできる人たちが増えてきた段階で、一番下のところの層を、何年か先でもいいので、徐々にやっていくということが実際あってもいいのではないかなというふうには思っています。

【桑田委員】

 学校法人の消費収支計算書、これについては区分経理が必要なのではないかと思います。今回の本学の決算において簿価で計上していた土地を売ったので、かなり資産売却差額が出ました。ただそれが今、消費収支計算書では他の取引と一緒になっていますので、それはやっぱり区分経理してやっていかなければということとなるかと思います。

 ただ、区分経理をすると、先ほどからも話が出ていますけれども、特に大規模校の場合、本業の黒字というのはかなりに出てきますが、それは当然ながら資本である施設の充実とか、将来の内部留保になりますので、実務者の立場から言うと、余り本業のところで黒字が出てくると、学納金が高いのではないかというふうに思われるという心配があります。ただ、本業の収支がどうであるかという観点から言うと、やっぱり消費収支については区分経理が必要なのではないかと思います。

 あと、先ほど第4号基本金を廃止すると、急激な基本金の修正を行う必要があるという話が出て、何かと思ったのですけれども、第4号基本金というのは、社会福祉法人の事例で第4号基本金に相当するものが廃止されたということがあって、この第4号基本金について、私はもう必要ないのではないかなと思います。

 あと、減損会計のところは、これはやる必要はないと思っていますけれども、私どもの事例から言うと、バブルのときの買ったグラウンドが、体育授業のために買ったんですけれども、体育が必修でなくなり、基本金からも外そうということになりました。バブルのときに買ったので、時価とかなり差額があったのですけれども、会計士の方からは基本金から外すのであれば減損にしなさいということが実際にありましたので、減損会計をやる場合は、基本金から外す場合は考え方の一つの基準になるのではないかと思います。

 あとは、最後の継続企業の原則につきましては、企業のように急に収益が上がるということはありませんし、風評被害のおそれもありますので、これについても必要はないと思います。

【佐野委員】

 企業と違って、先ほど他の委員からもありましたが、わかりにくいというのは、情報公開がされていなかったことがあると考えられます。つまりほかの学校さんの決算書類を見るチャンスというのがなかったんですね。最近でこそホームページに掲載される事業報告書で公表されていますが、そういう意味から、先ほど健全性を図る共通言語という話がありましたけれども、共通言語として社会的に見た事業体の活動をあらわす様式自体も学校毎(ごと)に特徴があり、ほかの学校と比較もできません、形、フォーマットが違うからです。それから、例えば貸借対照表については、まぁいいんですけれども、消費収支計算書などは、収入がざっと並んで、それから難しいんだよと先輩から教えられた基本金がでてくると、もう、あぁ難しいと思って勉強しなくなっちゃう。そういったことで、やっぱりわかりにくいというのは、勉強しにくい、とっつきにくい、比較ができない、その辺から結びつくのだろうなと思っています。よくよく見れば結構わかりやすい、シンプルな基準ですが。今の企業会計は複雑化して、基本概念が変わるような形になってきつつあるものから比べると、一方ではおくれているとか、変化がないという批判もありますけれども、別の見方をすると、わかりやすいということが分かるはずだと思うんです。ただ、残念なことに、やっぱり情報公開ということがされていません。今も公開ではなくて、閲覧開示ということで、特に法的に利害関係のあるものに限ってしか見ることができません。この辺はやっぱり私学の閉鎖性と言われるところで、もっとこれをオープンにして、わかりやすいと言いますか、オープンにすることによって社会の批判をあびながら、どうやったら説明できるのか、学校自身がどうやって社会的に説明したらわかってもらえるのかという工夫を重ねると、今の基準でもある程度のことは、批判をかわすことはできるのだと思います。そこにやっぱり常識的に他の会計とのある程度の整合性を図りつつ、私学の基準の検討もしなければならないと思います。それから収入が限られている、少子化というような中で、資金確保が難しくなっている一方で、同じ学校という名前があるが故に、資金構造の違う国立大学との比較可能性を求められています。そういったところを念頭に置きながら、様式についてはやっぱり説明しやすいものに変えていった方がいいかと思います。しかし、だからといって、個々の会計について、企業会 計に何でも右にならえではなくて、やっぱり学校という特性に合わせたものを、先人である企業会計の中からチョイスしたりして、やっぱり私学、学校法人の置かれている立場を第一に考えて、わかりやすいものし、かつ批判をあびられるようにオープンにしてはどうかと思います。

 今の基準では、規模の大小じゃなくて、補助金の額が1,000万円に満たない場合は公認会計士等の監査報告書を財務計算に関する書類に添付しなくてもよいということもありますので、共通事項の多い全国規模で考えていただこうとする大学と、それから小さいエリアで経営をする学校で基準の適用の仕方を考えていくこととなるかと思います。

【片山委員】

 学校法人は規模の違いがたくさんあるということですよね。それから、これまで学校法人の会計基準の見直しの中では、規模ごとに基準を変えるとかという、そういうスタンスは踏まなかったんですよね。ですから、今度のときにはそこら辺のところを考慮して、基本的な会計基準と簡便的な会計基準と分けるかどうか、それはまた議論が必要であると思います。

 現行の会計基準でわかりにくい、あるいはよく考えればわかりやすいんだと、いろいろあるかと思うんですけれども、もしかしたら、これからの会計基準のところでは、基本的にはわかりやすいということであれば、規模は余り考えなくても、今までよりも実務の面でもわかりやすくなるかもしれませんね。一般の人から見ますと、収支計算書というのが2本あるわけですよね。資金収支計算書と消費収支計算書の2本があって、会計の観点からいうと、収支計算書が2つはどうかということがあります。内容を見ると、消費収支計算書は損益計算書的なものですよね。だけども、消費収支計算書では収入支出という用語を使っているわけですよね。だから、一般の人からもわかりやすいという点からいうと、収支計算書という表示の財務諸表は1つにして、もう1つの方は別の表現に変えるというものも、一般の人から受け入れやすいという点からいうと、そういうことも考える必要があろうかと思います。

 それから、帰属収入というのがありますよね。しかし、学校法人以外の非営利法人会計では、帰属収入という表現は使っていませんよね。それから、消費収入、消費支出という、そういう用語も使っていないわけです。だから、そこら辺のところもわかりやすさというのを重視するという点からいうと、検討が必要かと思います。

【森本委員】

 今のお話が会計基準をやり始めて、本当にわからなかったんですね。そのときにやっぱりわからなかったのは基本金で、言葉として帰属収入というのは、どこかに帰属している収入だということはわかるけれども、具体的なイメージが全然わいてきませんでした。会計基準をよくよくそのとき見ていたら、収入があった段階で、基本金をそこから外しなさいというのがあって、例えば大科目レベルから外すんだったら、簡単に言うと、授業料・入学金は残しておくんだ、だけど施設費は外しますということです。寄附金の中でも特別寄附金は外しますとやっておいて、それを基本金にしておいて、それをプールしておいて、それで校舎をつくるというのだったらわかるんです。これはアメリカの大学の会計基準はそういうパターンだからそういうふうにすればいいんですけれども、この制度が始まったときに、うちの学校でもそうでしたけれども、うまく回らない。施設費をどうするか、それは日本じゅうで、全部とは言いませんけれども、相当の規模でやっていたはずなので、そうすると、消費収入が決まらなかったら支出が決まらないという構造はやっぱりおかしいんじゃないかということで、その辺は整理すべきじゃないかなと私は思っております。

 それから、この数年間で、認証評価の話がありましたけれども、ちょっと絡んでいるんですけれども、特に昨年度はしなければ駄目だという最後の年になってきたら、変なところですが、連結の話なんです。具体的に言うとまずいですけれども、納付金の額を超える雑収入があったんですね。そんなことはなくて、これは勘定科目の間違いだろうと思って、よく話を聞いていたら、貸した金が貸倒れになっていたのが返ってきちゃったんだと。そうしたら貸倒れにして落としちゃったのをお金が返ってきたら、普通の学校の人たちの雑収入で、本来の雑収入が何百もあればいいところで、そんな何千万なんてあり得ないし、億なんてことはあり得ないと思っていたら、結局勘定科目上そこにしか出しようがないといいます。そうなってくると、まずそんな貸倒れになるようなところに貸したのは、納付金の金額ぐらいのお金を学校法人が貸したところも問題だし、それから貸倒れが返ってきたことも問題だし、それを判断した理事長だか、財務理事だか、理事会だかの責任問題がむしろあるのではないかということです。財務諸表、計算書類だけを見ていて判断しろといったって、こんなの絶対わからなくて、グループと言われるものがあるなら、それを全部ぶつけて、せめて貸借関係を相殺して、例えばこちらは貸付けが落ちて消えているけれども、こっちも借入金でまだ残っているとか、これも数からいえば非常に少数の話なんですけれども、そんなようなことをちょっと整理したいなと思います。

 先ほど銀行の融資の話がありましたけれども、銀行から見放されちゃって、預金はできるが貸してくれなくなったところというのが幾つかあります。そうすると、銀行が金を貸してくれるかどうかの判断をするための書類をつくるというのも全くばかばかしい、つくっても意味がないからつくる気がしない、そういう感じになってくるので、やっぱり何らかの意味でこういうことをするためにはこの書類をつくる必要があるとか、こういうことをするときには先行をしておいて、極端な話、最低限度のところは現在のままでそっと持って行っていくというぐらいの整理の仕方もあるのかなと思います。

【大橋座長】

 枠組みを余り神経質に対応していると、全体の大きなものが見えなくなる、その辺もまたあると思います。

【工藤委員】

 やはり今、保護者も含めて、多くの人に説明する機会は多くなってきているわけです。そうした場合に、説明しやすいような形にするということも大事なんじゃないかなと思います。今の状態だと、いわゆる収入の方で基本金を引くという形になると、その部分を説明することにすごく時間を要してしまって、基本金そのものを更に説明していったらば、それだけでもってかなり膨大な時間がかかってしまいます。やはり少なくともそういった部分で、こちらが説明するにしてもわかりやすいような構造、そういったようなものにしていく必要があるのではないかなと思います。例えば寄附の問題にしても、区分会計をした場合に、寄附が私は人件費に使われてもいいと思っているんです。それはやはり私学の場合はそういった形でいい教育人を集めて教育していくことが重要であるからです。それに対して寄附をするという、そういった方法もあるわけであって、いわゆる特別寄附でない限りそれは人件費に回っていいわけです。区分会計をしてもそれもわかりやすく説明できるのだったらその意味もわかるわけです。ですから、合理的にどういう方向性で学校経営運営がされているのかと説明しやすいような計算書といったものにすることが大切だと思います。

 それと、私は日本私学研究所で5年ぐらい学校の経理に入った人たち、あるいは事務長さんたちに学校法人会計基準の研修会をする機会があったのですが、いわゆるどの方も異口同音に口をそろえて言うことは、やはり基本金の有無の構造、特に第2号基本金がある部分、いわゆる恣意性をわかって、これは決まるんじゃないか、そういったような部分はなかなか説明が具体的にしづらいという部分がありました。でも、学校というものにおいて理解すると、基本金の必要性というのがわかるわけで、そういった場合にどういう形でもってその項目を位置づけるかということを我々大いに論ずるべきではないかなというふうに感じています。

【森本委員】

 基本金のところで、消費収支計算書はふと見ると損益をあらわしているように見えるんですが、その中では使っちゃ駄目だよと称して引いちゃった部分があるわけなので、それがやっぱりわからないから、その辺はもうちょっとうまい構造があればと思っています。

 それから、第2号基本金のことでいいますと、第2号基本金を計上することができるところと、金がないからやりようによっては絶対できないところがあると思いますが、あれは変な言い方をすると、金が少し余って困ってきたところがひもつきにしておけばいいんだというような論理でできた部分があると私は感じています。そうすると、第2号基本金は必要だと言っているグループの法人と、あんなのはあったってなくたって自分に関係ないよという法人のところもあります。

 それから、第4号基本金は、あれも私学の経営者というのは資金繰りのことが全然わかっていないのがいるから、だから納付金と経理の金額で、納付金の方が多ければ払えると思っている経営者もいますが、収入の時期とは違いますから、そのためにある程度プールしておかなければ払うことはできなくなります。そのためにあれはわざわざ文部大臣が主な消費支出の1か月分だとしたところはあるんですけれども、あれも本来は学校法人が独自に考えるべきであって、自分のところは1か月だという論理があってもいいし、自分のところは2か月だという論理があったってかまわないと思うんですよね。教職員であれ、保護者であれ、きちっとうちはこうやっていますという言い方をすればそれでいいだけのことです。少なくとも第1、2、3号基本金と比べると、第4号基本金だけ全く違います。第4号基本金というのは運転資金です。だから運転資本金が基本金だというのは、普通考えると意味がないんです。

【大橋座長】

 前回も第4号基本金については否定的な意見が多かったですよね。

【佐野委員】

 前回は基本金の意味そのものを問う意見もあれば、維持すべきという意見もあり、両論併記されています。

【工藤委員】

 学校側が自由に選ぶことのできる部分というのは非常に自由の裁量性があって、いい部分があるように思えるんですが、場合によって、いわゆる中高とか、幼稚園とか、そういったところですと、各県単位で一つの処理の仕方が決められるんですけれども、そうした場合に逆に地方に行けば行くほど、私立の立場が東京や首都圏と違って弱くなるので、逆にルールに縛られてしまう可能性があるので、その部分については、今、森本先生が1か月も2か月も学校独自にというふうになっても、多分これは末端の地方へ行ってしまうと、もう1か月ですよとやられてしまって、その自由度が薄れてしまう、そういう可能性があると思うんですね。ですから、やはりそこら辺の部分とよくしん酌しながら決めていく必要があるんじゃないかなと思います。実際多くの都道府県においては私学の少ない地域においては、非常に私学がそういった部分の、本来的には私学が自由に裁量できると思ってやったことが、逆にできないというようなことがあります。このことに十分配慮する必要があるというふうに私は感じています。

【高橋委員】

 会計士としてはなるべくなら会計基準というのは1つであった方がいいなというか、1つであるべきだなと思います。大学から幼稚園まで一つの会計基準であるべきだなという気持ちと、一方で現実的に幼稚園は規模が明らかに違うので、今回どういう形でその辺を考えていくべきなのかなというのは、改めて議論しながら考えていきたいと思います。ただ、幼稚園だけは例えばこのままでいいですよというわけにはなかなかいかないので、その中で、学校現場が極力混乱しないように配慮を見ながら、全体が基本的には同じ基準で、ただし、若干これは大学法人であればスタッフがしっかりやってついていけるだろうという中で、大規模な学校法人についてはこういった形をとるべきだというようなこともちょっとあり得るのかなというふうには思っております。

【片山委員】

 前に小規模法人のところで問題になったのは、内訳表だとかも開示するというと、人件費がらみの情報が特定されてしまうと、そういう意見がありましたよね。

 別のことでいいですか。企業と比べれば、非営利の場合には将来のいろいろな計画や活動のための資金をあらかじめ用意をしておく必要があります。例えば減価償却をやりましても、企業の場合にはそういう資金を余り必要としないと思いますけれども、学校法人のような非営利なんかの場合には、将来の設備の更新のためには、減価償却費を計上したうちの一定の部分は、引当しておく、資金を拘束しておくということが必要だと思うんです。それで一般の人から見ると、学校法人がどれぐらい将来の活動のために資金を準備しているかというのがわからないという意見があったと思うんです。そのためには固定資産の部を有形固定資産、その他の固定資産と分けていますけれども、その中間ぐらいのところに特定資産の区分を設けて、その中に、例えば減価償却引当資産、施設整備等引当資産、特定目的引当資産等々を記載する様式を採用することも良いのではないかと考えます。

【鈴木委員】

 先ほどの会計基準の小規模法人への適用範囲について、以前、銀行から信用組合まで、償却の基準を統一しようとしましたら、信金と信用組合の方から厳し過ぎるとの話がありました。同一の基準でやられたら全部償却しなければならなくなる、経営が成り立ちませんというような話がありました。そういう経営主体によって状況は違うんだけれども、経理基準を統一しましょうということとした際に、信金、信組のところでそういうふうな問題が生じてきて、それは政策として別の手段でそれを助けるという話となりました。要するに共通言語のところを言語複数化するのではなくて、共通言語にして、それで一応結果を出すわけですけれども、それに対してどういうふうな判断をするのか、どういう政策的な補助をするのかというふうなことを別途考えていけばというふうなこともあります。

 今回のところもそういうことなのかなと思います。ただ、事務の手間とか何かを考えてみますと、そういう小さな法人については共通する部分もあるけれども、やらなくてもいいところの範囲の差も必要なのかなと思います。

【高橋委員】

 今おっしゃったように、知事所轄の学校法人については、先ほどからの議論もありますが、そういう形での対応は、今回はどうするつもりでしょうか。

【牛尾参事官】

 そこは御議論いただいた形がどうなるかにもよると思うんですけれども、大規模、小規模ということで分けるのか、あるいは所轄庁の違いで分けるのか、そういうことを含めた議論を、具体的な姿が見えてきた段階でまた行っていただくのがよいのではないかと思います。

【小松私学部長】

 今のお話でございますけれども、次回あたりから少し実態を踏まえて、これは頑張ればやれるかもしれないことと実行に時間がかかるであろうことを分けて考えていきたいと思います。

【大橋座長】

 それなりに枠組みが出されないと議論できないとこともあります。今、皆様方から頂いた論点を整理してたたき台を整理しまして、それで、次回、資料というかたちにして御議論いただきたいと思います。それでよろしいでしょうか。

【田辺専門官】

 次回以降の日程でございますけれども、最後の資料5というのがございます。検討会のスケジュール(案)ということで、本当に今の段階ではたたき台でつくらせていただいたものでございますけれども、1回目は今日のような議論をしていただいて、次に2回目の予定なんですが、委員の皆さんから頂いたデータの中で参加者が一番多いということで、9月24日月曜日の14時とさせていただきたいなと思っております。

 内容の中に、財務三表の体系丸1とか、丸2とか、その他の論点とか、書いてございますけれども、ある程度事務局の方で座長と相談の上、たたき台を出させていただきながら、この順番を問わず、長短を問わず、回数も議論によっては若干ふえるかもしれませんし、短くなるかもしれません。その辺の柔軟性を持ちながらやらせていただいて、基本12月までがこの委員会の委員の委嘱期間でございます。その後のスケジュールのイメージとして書かせていただいておるんですけれども、仮に12月までに議論が済めば、1月から3月までに省令改正の手続、省令でございますので、パブリックコメント等も必要だということで、この期間を置き、最低でも1年間は据置期間を置きたい、研修期間とさせていただきたいということで、考えていますが、もちろん改正の内容等によってはもっと長くなりますでしょうし、機関別、規模別、いろいろ分け方によってまた変わってくるかもしれません。その辺は柔軟に対応したいと思いますので、これは飽くまでイメージとしてお出ししているというふうにお考えいただければというふうに思ってございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【大橋座長】

 次回は9月24日、月曜日の14時からの開催となります。それではどうもありがとうございました。

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高等教育局私学部参事官付