独立行政法人日本学生支援機構の在り方に関する有識者検討会 第1ワーキンググループ(第2回) 議事録

1.日時

平成24年6月20日(水曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省旧庁舎 文化庁特別会議室(5階)

3.議題

  1. 関係機関等に対するヒアリング
  2. 奨学金事業に関する論点整理
  3. 今後の奨学金貸与事業について
  4. その他

4.出席者

委員

池尾委員、小林委員、松本委員、新野氏(大森委員代理)

文部科学省

奈良大臣官房審議官、松尾学生・留学生課長、辻学生・留学生課長補佐、保立学生・留学生課長補佐

オブザーバー

髙塩理事長代理(日本学生支援機構)、月岡理事(日本学生支援機構)、石矢奨学事業本部長(日本学生支援機構)、鮫島債権管理部長(日本学生支援機構)、藤江政策企画部長(日本学生支援機構)

5.議事録

 【小林主査】
 それでは,時間になりましたので,ただいまから独立行政法人日本学生支援機構の在り方に関する有識者検討会第1ワーキンググループを開催いたしたいと思います。
 皆様には台風の後,大変なときにもかかわらず御参集いただきまして,まことにありがとうございます。 今日の議事は,奨学金事業に関する関係機関からのヒアリングを行った後,奨学金事業に関する論点整理を行います。それから,論点整理を踏まえた今後の奨学金事業について御検討いただくということになっております。
 配付資料につきましては,議事次第のとおりとなっております。過不足がありましたら事務局まで,議事の途中でも結構ですので,遠慮なくお知らせいただければと思います。
 議事に先立ちまして,本日の会議の公開についてお諮りしたいと思います。事前に御案内させていただきましたとおり,本日は関係機関等からのヒアリングにおいて,個別具体の事例を取りあげることといたしております。公にすることによって各機関の業務に支障を来す恐れがある事柄が含まれていることを考慮し,会議の全部を非公開とし,資料及び議事録については差し支えない範囲で公開するということにしたいと思いますが,よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【小林主査】
 ありがとうございました。それでは,本日の会議全体は非公開とする,会議資料と本日の会議の議事録は,差し支えのない範囲で公開する,ということといたしたいと思います。
 それでは,議事に入ります。最初の議事は関係機関等に対するヒアリングです。実は私にもヒアリングが行われますので,私を含めまして三人の方からヒアリングを行うことといたしまして,ヒアリング時間は,質疑応答も含めまして一人あたり20分――大体発表10分,質疑応答10分ということを予定しております。
 それでは,まず初めに東京家政大学教育学生支援センター学生支援課長榎本様より,資料に基づき御説明をいただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

【榎本課長】
 東京家政大学学生支援センターの榎本と申します。よろしくどうぞお願いいたします。
 資料でございますけれども,「関係機関等からのヒアリングについて(第1ワーキンググループ)」,こちらのとじ込み資料の2枚目からが,私が用意させていただきました資料でございます。
 扉がございまして,1ページ目を御覧ください。まず,東京家政大学ですが,東京都板橋区にございます女子大でございまして,家政学部と人文学部の2学部構成になっております。学生数は約5,000名ということで,女子大の中では中堅規模の大学かなというふうに思っております。
 本学では,日本学生支援機構をはじめ地方自治体,それから財団法人等の外部奨学金のほかに独自の奨学金というものを持っておりまして,外部奨学金と合わせまして学生の支援につなげているという状況でございます。本学の独自奨学金に関しましては,資料の3ページ及び4ページに一覧にしてまとめてございます。御覧いただけますでしょうか。
 まず,1枚目でございますが,独自奨学金のうち,本学の法人名は渡辺学園と申しますので,渡辺学園奨学金という大きなくくりで,本学の元教授等の退職金等の寄附金を原資とした奨学金が主でございますが,そういうような奨学金を総称しまして渡辺学園奨学金というふうに申しております。
 3ページにお示ししてございますのが渡辺学園奨学金の詳細でございます。ちょっと話が分かりづらいのですが,渡辺学園奨学金という大きな奨学金の中にさらに,この表の一番上にございます渡辺学園奨学金というものがあるということでございまして,以下,遠藤,鶴田,木曽山等々の奨学金があるということでございます。この渡辺学園奨学金に関しましてはすべて給付でございまして,ほとんどのものが対象学年は全学年という形になっております。支給対象学生数はそこにお示ししてあるとおりでございまして,1件当たりの支給額は,御覧いただきますとおり,高額のもので一時金で12万,それから後は5万円というような金額でございます。選考基準に関しましては,そこにお示ししてありますとおり,家計を50点,学力45点,それから人物5点の合計100点という形で,総合点によって申込者の上位から採用していくということでございます。
 その中で一つだけ少し毛色が違う奨学金がございまして,真ん中より少し下のところに幅が広く取ってあります,後援会奨学金というのがございます。こちらは一時金の12万円という給付型の奨学金でございますが,この奨学金だけは申込制ではなく,こちらは前年度の学力を基準とし,学力上位の者を大学のほうで選出しまして選考するというような,非申込制の奨学金になっているということでございます。
 それから3ページの表の下のほうの部分でございますが,こちらは留学生を対象とした奨学金ということでございます。やはり支給額に関しましては12万円と5万円というようなことで,選考基準はそこにお示ししたとおり,日本人学生の奨学金に準じたような形になっております。
 1ページに戻らせていただきますけれども,そういう奨学金がございまして,これは従来からある奨学金ということでございますが,1ページの下のほう,【点検・評価】というところで書かせていただきましたが,本学の独自奨学金につきましては,支給ということで返還の義務はないということではございますけれども,額が一時金としましては十分とは言えないのかなというふうに思っております。将来的には基金等を合算し,新たな奨学金ということも考えてはいますけれども,先ほど申し上げたとおり,本学独自奨学金は退職されました先生方の寄附金ということで運営をさせていただいているというような部分がございまして,統合した場合,寄附をされた先生方の御意志をどのような形で残していけるのかというようなことが少し問題になっておりまして,課題となっているところでございます。
 1枚おめくりいただきまして,4ページを御覧いただけますでしょうか。本学東京家政大学は平成23年に開学130周年を迎えました。これを機に幾つかの奨学金を設立しまして,奨学金の充実を図ったということでございます。4ページの表の上から四つの奨学金でございますが,こちらが130周年を記念して平成23年及び今年度,平成24年に新たに設立しました奨学金制度でございます。上から,新入生の特待生奨学金。2番目が,1番目の新入生に対して,在学生を対象としました特待生奨学金。3番目は松井正子奨学金。それから,東京家政大学130周年記念特別奨学金というような形でございます。
 上の二つでございますが,こちらは支給額を見ていただきたいのですけれども,新入生が36万円,特待生が,大学が37万円というような形になっております。これはちょうど半期学納金ということになっております。ですので,一応給付型ということにはなっておりますけれども,こちらの奨学金に関しましては学費減免制度という形になるのかなと思っております。新入生の特待生奨学金は入学試験の成績を元に,優秀な者に給付するというものでございます。在学生のほうの特待生奨学金に関しましては,前年度のGPAを使わせていただいていまして,それぞれの学科のGPAが優秀な学生を私どもの事務方が選出いたしまして,それを学科のほうで選考していただくという形の奨学金になっているということでございます。
 松井正子奨学金に関しましては,本学の大学院に進学予定の学生ということで,将来,教育職員になることを志望する者を対象とした奨学金でございます。それから,家政大学の130周年記念特別奨学金。こちらに関しましては地方出身者ということ。本学は各都道府県に卒業生の支部というものがございまして,全国を九つのブロックに分けまして,そのブロックから各1名選出するということで,地方出身者を支援するというような趣旨で設けた新しい奨学金でございます。
 次の後援会ドリームプラン奨学金。少し毛色が違った奨学金でございまして,学生の保護者と教職員の組織でございます後援会というところの寄附金により,社会的に有意義でオリジナリティあふれる計画を実現するために,1計画30万円を限度として助成するというようなものでございます。
 それから下の二つでございます。1ページでも少し述べさせていただきましたが,本学は給付型の奨学金だけではなく,貸与奨学金を2種類持っております。
 渡辺学園貸与奨学金は,試験等によって,卒業要件を満たしたにもかかわらず学費未納により除籍になる学生を対象としまして,成績,人物,それから就職先等々を総合的に判断して年間授業料相当額を貸与するというものでございます。そして,卒業後5年以内に年賦または半年賦の方法により返還していただくというものでございます。
 最後でございますけれども,渡辺学園在学生貸与奨学金。こちらは,最前の卒業学年を対象とした貸与奨学金を在学生のほうに拡大したというものでございまして,やはり試験等により,進級要件を満たしたにもかかわらず学費未納により除籍になってしまう学生の救済措置ということで設立した奨学金でございます。こちらのほうは限度額がございまして,上限50万円ということでございますので,年間学費が,本学の場合,大体74万円から76万円ということになりますので,その差額の分に関しましてはお納めいただいて,それを条件としまして50万円を御融資するというものでございます。
 こういう形で日本学生支援機構をはじめとする外部の奨学金と相まって学生を支援しているというような状況でございます。
 東京家政大学の現状としましては以上でございます。

【小林主査】
 どうもありがとうございました。非常に多様な種類の給付あるいは貸与の奨学金をお持ちということです。まず10分程度,御質問あるいは御意見をいただけたらと思いますが,いかがでしょうか。

【池尾委員】
 いいですか。

【小林主査】
 どうぞ。

【池尾委員】
 在学生本人というより父兄ですか,父兄の平均的な所得水準であるとか,在学生の経済的特徴みたいなことを少し補足で御説明いただけますかね。

【榎本課長】
 そうですね…。家計の状況ということで。

【池尾委員】
 はい。

【榎本課長】
 平均的に,平均年収がどのくらいかというところまでの数値ははっきりしたものは持っておりませんですが,そうですね…。

【池尾委員】
 だから,比較的裕福な家庭の子女が多いのか,必ずしもそうではなくて,かなり厳しい家計からの出身者の割合も無視できないぐらい高いという感じなのかとか,その程度で結構です。 

【榎本課長】
 そうですね,特に裕福なほうとか,あとかなり貧困層に偏っているとかという傾向は見受けられないところでございますけれども,割と平均的というようなところだというふうには理解しておるのですけれども,かなり複雑な家庭状況の学生であるとか母子家庭の学生等はかなり家計状況が厳しいというのは,採用等の面接等をしまして非常に感じているところがございます。

【池尾委員】
 だから,そういう厳しい状況に置かれている学生の比率というか数と,独自に用意されている奨学金のキャパシティとが釣り合っているのか,厳しい状況に置かれている学生のほうがどうしても上回るような傾向が強いのかということです。

【榎本課長】
 本学の独自奨学金は,先ほど御説明したとおり,一時金で12万円というようなものと,あとは一時金5万円というものでございますが,昔は12万円というのは毎月学生に1万円ずつ支給していたというようなものらしいですね。窓口で学生に受領印を押させて1万円ずつ支給したと。これはかなり,50年以上前からやっていることでございまして,50年以上前の1万円と今の1万円ですとかなり金銭感覚は違うのですが,今はそういう形で,お小遣い程度といったらあれですけれども,そういう性格の奨学金になっています。
 4月に新入生で奨学金を希望する学生を集めまして,本学では大きく分けて二つの奨学金を受けられますよという説明をいたします。一つは日本学生支援機構の奨学金で,これは採用された場合には,月々決められた額の奨学金があなた自身の口座に毎月振り込まれます。ただし,卒業した後に長い期間をかけて返していくのですよというような説明をします。そこまでは必要ないという学生さんは,東京家政大学でこういう一時金的な奨学金がございますというような説明をして,どちらにするかは御両親と相談して決めてくださいというような説明会を行っているということですので,本学独自奨学金は貧困層の家計を補助するというまでには至っていないというふうに理解しております。

【小林主査】
 よろしいですか。ほかには。

【新野氏(大森委員代理)】
 1点御質問させていただきたいのですが。
 日本学生支援機構の奨学金の紹介について、今御説明いただいたのですけれども,卒業された後に,実際に貸与された奨学金について,学生さんとしては就職してから返済が始まるかと思うのですが,いわゆる日本学生支援機構と大学側との連携とはどういう形でやられているのでしょうか。それから,実際,今やられている中で何か課題というのでしょうか,問題点みたいな形で認識されていることが,もし,おありになりましたら御紹介いただきたいのですけれども。

【榎本課長】
 はい。卒業後の返還ということになりますと,現状としましては,大学は学生の在学中のところまでということで,在学中に返還のための口座をきちんと開設するというところまでの指導ということをしております。当然,返済・未納になりますと,個人信用機関に個人情報が提供され,そういうことになると後々ローンが組めなくなったりすることもありますよというような指導を在学中にはしております。ただし,卒業後になりますと,今の制度では大学のほうが返還についてサジェスチョンするとかというシステムにはなっていないものですから,日本学生支援機構さんのほうが卒業生と直接やりとりするというシステムになっているということでございます。

【新野氏(大森委員代理)】
 実際には就職されて転居されたりする学生さんがかなりいらっしゃると思うのですけれども,住所の変更とか,そういった形についての御指導等はしていらっしゃるのでしょうか。

【榎本課長】
 ええ。在学中に,卒業学年の学生を集めて卒業後のことを説明するわけですけれども,その中に,転居のときの届け出はこれだというような説明等もしております。

【新野氏(大森委員代理)】
 そういう意味でいうと,機構との連携という観点で,特に今何か問題点とかといったことはございませんでしょうか。

【榎本課長】
 特別にはございません。

【新野氏(大森委員代理)】
 わかりました。ありがとうございます。

【小林主査】
 逆に,何か今,日本学生支援機構の奨学金で特に課題とか大学側から見てですけれど,注文とかございましたら。

【榎本課長】
 そうですね。課題というよりも,毎年,採用された学生は,次年度継続するためには,自分でどういう生活を1年間送ってきたか報告するという,適格認定と申しますけれども,そういう制度がございまして,学生にインターネットで入力させて,大学側はそれに成績を付加しまして日本学生支援機構さんのほうに送るわけです。
 日本学生支援機構の奨学金というのは多分に教育的側面というものがございまして,これは非常に大事なものだというふうに思っております。適格認定でございますね。適格認定の中で,成績がふるわない学生というのも見えてくるわけなのですが,成績がふるわない内容というのが,よくよく見てみるといろいろな理由で学校に来てないというような状況が見えたりします。そういう場面におきましては,学科の先生方。本学はクラス担任制を敷いておりますので,クラス担任の先生にそういう状況を提供したり,また逆に先生のほうから情報を提供してもらって,なるべく早い段階で,不登校というようなことがあれば,見つけて軌道修正等に生かしていっているというようなことでございます。
 適格認定に関しましては,大学としては結構手間がかかることではあるのですけれども,これは教育的側面からしまして非常に重要なものだと認識しております。

【小林主査】
 どうもありがとうございました。
 では,時間になりましたので,榎本課長,どうもありがとうございました。
 では続きまして,日本政策金融公庫国民生活衛生業務部部長,澤岡様より資料に基づき御説明をお願いいたします。

【澤岡部長】
 日本政策金融公庫の澤岡でございます。どうぞよろしくお願いします。
 早速,資料に基づきまして,私どもの国の教育ローンの概要につきまして御説明をさせていただきます。
 1ページを御覧ください。日本政策金融公庫は,下の括弧の中の四つの政府系金融機関が統合しまして平成20年10月に発足したことは御承知のことと思いますが,このたび御説明させていただく国の教育ローンは国民生活事業で取り扱っている貸付制度でございます。
 国民生活事業の主な業務は小規模事業者向けの事業資金とこの教育ローンの融資でございますが,融資実績を金額ベースで見ますと事業資金が93%,教育資金が6%と,事業資金の融資が圧倒的に多いのが特徴でございます。国の教育ローンは,家計の経済負担の軽減などを図る目的で昭和54年に取り扱いを開始し,これまでに480万人を超える取り扱い実績がございまして,多くの皆様に御利用いただいております。私ども日本公庫の152の店舗のほかに,代理店となっている銀行,信用金庫など,全国で587の金融機関でもお取り扱いをいたしております。
 2ページを御覧ください。奨学金との比較でございますが,国の教育ローンは学生一人当たりの貸付限度が300万円,貸付利率は固定,返済期間が15年以内となっておりますが,御利用できる方を制限するため,所得制限を設けていることが特徴でございます。
 奨学金との違いは,大きく三つございます。一つ目は貸付対象者の違いでございます。奨学金は学生本人への貸与ですが,国の教育ローンは主に保護者に貸し付けをしております。二つ目は与信判断の有無でございます。私どもは返済力などの審査がありますので,結果として御希望に添えないケースがございます。三つ目は利用者の資金ニーズの違いでございます。奨学金は月々の貸与でございますので,入学前や入学後のまとまった資金需要には対応できませんが,国の教育ローンは一括融資になりますので,そうしたまとまった資金に対応ができます。基本的に,教育ローンと奨学金とは性格も違いますし,制度の設計も異なりますので単純には比較はできませんが,利率,保証料,所得制限などは,奨学金のほうが利用しやすい条件になっているのではないでしょうか。私ども公庫の貸付利率は調達金利,11年財投金利でございますが,それに事務経費と信用コストなどを加え,収支相償となるように設定をしております。
 3ページを御覧ください。融資実績でございますが,御覧のとおり,最近は減少を続けております。23年度の融資実績は,線で示しておりますが,1,577億円。貸付残高は棒グラフですが,8,694億円となっております。平成13年の特殊法人等整理合理化計画の議論の中では,民間にできることはできるだけ民間にゆだねること。18年の行革推進法の議論の中では,低所得者の資金需要に配慮しつつ貸付の対象の範囲を縮小することなどとされ,この間に2度の所得制限の引き下げを行い,規模の縮小を図ってきました。この結果ですが,貸し付けはピーク時の半分程度まで減少しております。
 次を御覧ください。お申し込みから融資までの流れでございます。お申し込みは公庫の支店などで年中受け付けており,合格発表前でもお申し込みはできます。通常,申し込みから融資の決定までは10日程度,融資の実行までは20日程度かかります。お申し込みには,こちらの説明資料に掲載している1から6の書類が必要になります。審査でございますが,御提出いただいた書類に基づきまして,まず,所得制限を超えていないかなどの申し込み資格要件のチェックと本人確認を行い,お使い途や必要金額の妥当性,返済見通しなどの審査を行います。審査に当たりましては,民間金融機関と同様に個人信用情報も活用しますが,公庫の場合は個人信用情報や収入の多い・少ないだけではなく,公共料金や家賃,それからローンのお支払い状況などを預金通帳などで確認することで,家計の収支状況を把握,今後の収支見通しなども十分に踏まえ,総合的に与信判断をするようにしております。
 続きまして,機関保証制度でございます。国の教育ローンには,専門の保証機関として公益財団法人教育資金融資保証基金がございます。私どもの制度開始に合わせ,昭和53年12月に設立されました。保証料は融資金から一括して徴収しており,保証料率は年1.3%となっております。23年12月期の保証実績でございますが,保証件数が10万1千件,国の教育ローンのうち,82.5%が基金の保証付となっており,保証残高は6,823億円となります。
 最後になりますが,日本政策金融公庫の債権回収に対するとらえ方や対応について,参考までに御説明させていただきます。当然のことですが,債権回収業務は入口の与信判断と密接な関係にありまして,デフォルトが増える場合は与信判断が適正に行われていない可能性があるとのとらえ方をします。日本公庫は,民間金融機関のように利益を追求する機関ではありませんが,収支相償となることが求められておりますので,常にデフォルトの発生をコントロールしていく必要がございます。そのために日ごろから審査方法の高度化を進めており,そのことがお客様の要望に応え,ひいては政策性の発揮にもつながるものと考えております。
 以上,説明を終了させていただきます。

【小林主査】
 どうもありがとうございました。今の御説明に対して御質問等ございますでしょうか。

【池尾委員】
 よろしいですか。 

【小林主査】
 どうぞ。

【池尾委員】
 最後のところですけれども,代位弁済を受けた後,保証基金のほうに移るわけですよね。その後,保証基金はどういう回収活動をすることになるのですか。

【澤岡部長】
 保証基金は全国に8カ所拠点がございまして,そちらには債権回収のスキルのある方を配置しまして,お客様の実態に合わせて,実情を聞いて督促活動をしております。代位弁済になった債権ですので,大量に回収ができるというわけではございませんけれど,少額ながら返済が続いている債務者が多いと聞いております。もちろん,回収ができずに償却する債権もございます。保証基金でも引き続き回収業務を行うということになっております。

【池尾委員】
 ということですね。

【小林主査】
 よろしいでしょうか,ほかには。どうぞ。

【新野氏(大森委員代理)】
 奨学金のところの大きな論点として,奨学金と教育ローンは少し性格が違うということで,私は民間の金融機関の立場で前回のワーキングでも同じような趣旨の説明をさせていただきました。今回の議論で大きな論点の中で,例えば奨学金の貸与事業というのを民間にゆだねるという話は,例えば国のほうで利子補給をする,あるいは国のほうで公的保証をするという形で,奨学金事業自体を国の運営から民間に完全に移したらどうかということで,今までそういった形の意見が出ていたというふうに私も認識はしているのですけれども,そういった御意見についてはどのようにお考えになりますでしょうか。

【澤岡部長】
 奨学金事業を民間に移すということですか。

【新野氏(大森委員代理)】
 はい。

【澤岡部長】
 その質問に対して私どもからこうしたほうがいいよという,そういうお答えは,この場ではできかねると思うのですけれども。

【新野氏(大森委員代理)】
 逆にいいますと,技術的な話とか考え方として,何か困難に感じるところはございますでしょうか。

【澤岡部長】
 融資と奨学金では性格が,まず,異なります。融資の場合はどうしても審査がございますので,例えば私どもが奨学金と教育ローンを二つ,仮に持ったとした場合に,奨学金は利用できますけど融資はできません,そういった形でお客さんに理解が得られるのだろうかなと思います。そもそも性格が違いますので,ローンと一緒になるのはいかがなものなのかなという思いはございます。

【新野氏(大森委員代理)】
 ありがとうございます。私も前回,同じ回答をさせていただいています。どうもありがとうございます。

【小林主査】
 よろしいですか。

【池尾委員】
 ちょっといいですか。

【小林主査】
 どうぞ。

【池尾委員】
 日本学生支援機構の奨学金貸与事業も原資は財投なのですね。

【澤岡部長】
 そうです。

【池尾委員】
 だから,やはりそれは毀損させてはいけない資金なわけですから,そこは,ある意味,同じ規律が働かないといけないような気がするのですが。奨学金の原資が一般会計から来ていればいいのですけれども,そうじゃないものですから,どうなのかといえば,これはヒアリングでお聞きすることじゃないかもしれないですが。

【澤岡部長】
 まあ,何とも。

【小林主査】
 すみません。まだまだお聞きしたいことはあるのですけれど,時間も来ておりますので,どうもありがとうございます。
 それでは,三人目は私のほうから,諸外国の事情ということで簡単に御紹介いたしたいと思います。
 資料は,その次にあります「各国の奨学金と高等教育の費用負担のあり方」というものでありまして,資料としてたくさんつけておりますが,今日はそのうちで何点かだけ御紹介させていただきます。主に,教育費の負担というものの考え方が各国によって違うということ,それによって教育費の負担の在り方,授業料とか奨学金の在り方が異なるということ。それから,かなり現実的な,実践的な問題として,各国で今注目されている所得連動型ローンというような考え方について,御紹介したいと思います。
 それからもう一つ,前回もお話ししましたが,ここでも問題になっている民間委託の件について,各国がどのような状況かということをお話ししておきたいと思います。
 はじめに3ページを御覧ください。教育費の負担とその背景にある教育機関ということで,これはやはり,各国がどういうふうに授業料,奨学金を考えているかということの一番基礎であります。公的負担をするというのは,これは福祉国家的な考え方でありまして,民主党が言う,教育は社会が支えるという考え方ですね。これは北欧諸国に強く見られる考え方でありまして,高等教育を含めすべて授業料はなし,生活費についてはほとんどの場合,給付奨学金あるいはローンで賄うという,ほとんど教育に個人がお金をかけないという考え方です。
 それに対して私的負担は,教育は個人のためという考え方が元にありまして,この場合,家族主義と,それから個人主義ということに分かれるわけです。家族主義というのは親の負担というふうに考えていただいていいと思いますが,これは日本,中国,韓国などに非常に強い考え方,あるいは南ヨーロッパの一部にもこういった考え方があります。それに対しまして,学生本人が負担するという考え方が強いのはアングロサクソン系の諸国――アメリカ,イギリス,オーストラリア,ニュージーランドといったような国です。
 それを図示したのが次の4ページです。ただ,だんだん公的な負担が重くなってきますと,スウェーデンのような一部の国を除きまして,公的負担で支えるというのが非常に難しくなりますので,次第に本人負担主義に移っているというのが現在の大きなトレンドです。
 以下,少し飛ばしまして,12ページを御覧ください。実際に家計の教育費負担を軽減するには,今日も出てきましたが,いろんな方法があるわけです。授業料を取らない,あるいは非常に低い授業料にするというのが一番よくとられる方法ですが,それ以外に給付奨学金,あるいは貸与奨学金,あるいは子育て支援とかワークスタディというようなさまざまな手法がとられるわけです。
 次の13ページのところ,これは改めて申すまでもないことかもわかりませんが,奨学金というのは学生への経済的支援でありますが,その目的は教育機会の均等でありまして,これは個人にとって非常に重要なことなのですけれど,社会全体としても,有為な人材の損失を防止するという意味で非常に重要な役割を果たしているわけです。この場合,授業料と合わせて考えるということが非常に重要なことになります。以下,授業料については今日は時間の関係で省略いたしまして,ここでは授業料と奨学金を合わせて考えることが非常に重要だということだけ強調しておきます。
 23ページ目にまいりまして,現在,主な国でとられている政策というのは,非常に大きくいいますと,学生によって異なる戦略をとっているということです。つまり,非常に高授業料を支払う意思のある学生からはフルコストを徴収するが,大学の望む学生には逆に高い奨学金を出す――この場合,給付奨学金です。低所得層には公立大学の低授業料でありますとか,あるいは国立大学で授業料のない国,ヨーロッパなどのようなやり方をとる場合もあるし,政府の給付奨学金というものを出すわけですね。中所得層には貸与奨学金で教育費負担の軽減を図る。
 もう一つ大きな最近の特徴といたしましては,費用が大きく将来の期待所得の大きい職業につく可能性の高い専攻,少し持って回った言い方ですけど,具体的にいえば法律とか医学とかビジネススクールなど,こういったものにはローンで対応するというのが非常に一般的な方法になっているわけです。
 以下,24ページはアメリカの授業料と,それから25ページは学生支援がどのように変わってきたかということです。24ページにアメリカの主な連邦政府の奨学金を挙げました。連邦政府だけでこれだけの給付奨学金あるいはローンというものがあります。ただし,政府保証民間金融機関ローンというものはオバマ政権で廃止されています。ローンの手数料は,現在1%取られています。
 これについては,28ページのところを御覧いただきたいのですが,実はこの背景にありますのは,2000年代後半に大学と学生ローン機関の癒着などの問題が多発します。こういったことはローンスキャンダルといわれたわけですけれど,このため高等教育の将来委員会,通称,教育庁長官の名前をとってスペリングス委員会報告といわれていますが,これが2006年に出まして,ここで連邦学生支援制度の改革を提唱したわけです。
 それに基づきまして,29ページ目になりますが,オバマ政権の学生支援政策といたしまして2010年に法律が通過いたしまして,大統領が署名いたします。ここで,先ほど申しましたように政府保証民間ローンというものを廃止して,政府が直接ローンを学生に貸すという方針に変えまして,これは非常に大きな連邦奨学金制度の改革だというふうにいわれております。それから,今まで民間に対して出していた補助金の部分を給付奨学金,あるいはパーキンズ・ローンというような別の連邦ローンに出すというような改革を行っております。
 次に,飛びますが,35ページを御覧ください。これは,現在,各国の貸与奨学金に非常に大きな影響を与えているオーストラリアの高等教育コントリビューション・スキームといわれているもので,授業料相当額を卒業後,後払いをするという方法です。支払額は所得によって決定というようになっていますけれど,これがいわゆる所得連動型といわれる根拠です。ただ,ここでオーストラリア独自でおもしろいのは,専攻による異なる価格設定がなされていまして,これは必ずしもコストに応じていないということであります。例えば,バンド3は法律,歯学,医学,獣医学などとなっております。法律は教育コストは安いわけですけれど,これは将来の見込み所得が非常に高くなるということで,たくさん貢献してくださいという,そういうスキームになっているわけです。以下,ヨーロッパのことは少し飛ばしまして,中国・韓国についてのところを見ていただきたい。
 49ページのスライドを御覧ください。今申しましたように,ローンの回収スキームとして注目されているのが所得連動型と呼ばれるものでありまして,卒業後の所得に応じて支払う方式で,イギリスだと所得の,大体0から3.6%程度。先ほど申しましたオーストラリアのHECSでは所得の0から8%程度ということでありまして,所得が最低額以下の場合には返済を猶予すると。日本円に直して大体300万円程度です。一定期間や一定年齢で返済を免除するという仕組みもありまして,イギリスの場合には大体25年返済して,残額があればそれは帳消しにするというルールがあります。所得から源泉徴収される場合も多いのですが,これは方法的な問題ですので,必ずしも必須ではありません。実質的には無利子でありまして,ただし,インフレスライドで返済の総額自体は上がっていくという,こういう仕組みです。
 51ページに各国の主な所得変動型のローンというものを挙げておきました。それぞれ考え方が若干違いますので,それぞれの国の特徴に応じてかなり違った仕組みになっているということがわかると思います。アメリカの場合には所得基礎返済型ローン(Income based Repayment)というものがありまして,所得から最低の猶予額を引いた額に,所得と家族の人数に応じて0から15%の返済額を納めるというわけで,家族人数が入っているというのが大きな特徴です。先ほど申しました源泉徴収ではなくて,小切手等で支払う。ただ非常に注目されるのは,25年間返済を続けて残額があった場合,あるいは公的サービスに10年間勤めた場合には,残りの返済額は免除されるという仕組みになっております。
 あともう一つだけ。52ページですが,日本にないもので一定の条件を満たしたときの返済免除という制度が各国いずれも組み込まれております。時間の関係で詳しくは申し上げられませんが,いずれの国でも返済の免除というのはかなり広範に行われていますが,日本では,御存じのように日本学生支援機構奨学金は大学院生の一部だけですので,そこがかなり違っているところであります。
 今日は時間の関係であまり詳しくは御説明できませんので,あと10分程度ございますので,もしございましたら質疑で御説明したいと思います。
 簡単ですが,以上です。質問等ございましたらお願いいたします。

【池尾委員】
 質問ではないのですけれど,要するにスチューデント(学生)ローンですよね。スチューデントローンに関して,私も,保証よりも直貸しのほうがコスト的に安くつくという見方については何の異議もないです。けれども,結局,スチューデントローンでしょうということを1回目は申し上げたかっただけのことで。
 それで,ローンの回収方式という形で御紹介になっていますけれども,要するに金融の契約の場合,通常の意味でのローン,負債(デット)です。従って,定額の返済を約束する形の貸し借りが一つ。それから出資のような形で,成果が上がればたくさん返すけれども,成果が乏しければリターンは我慢してくださいというエクイティ型。デット型とエクイティ型があって,スチューデントローンというのは伝統的にデット型なのですけれども,ちょっとエクイティの要素も入れたほうがいいのでないかということ。要するに,ローンをもらって,その後成功して高所得になった人からは,たくさん返してもらう。そうすることによって,そんなに所得があげられなかった人の返済額を少し低くしてあげる。従って,集団全体としてはちゃんと採算というか釣り合うようにするのだけれども,それは一人一人について均等に,将来所得の多寡にかかわらず返済を求めるのではなくて,将来所得の多寡に準ずる形でやるというのが,ある種,望ましいのでないかという,そういうアイディアが,御紹介があったようにあると思うのです。その種のアイディアというのは,経済学者としては非常にある意味わかりやすいアイディアで,おもしろいアイディアだと。それで,その種のアイディアをジンガレスという経済学者が『ニューヨーク・タイムズ』の記事に書いていたのでお送りしておいたと思うのですけれども。
 我が国ではそういう発想を取り込むというのはまだ難しいところがあるかもしれませんが,でも考え方としては,積極的にそういうことを考えていってもいいのでないかというふうに私も思いますという,御質問というより意見です。

【小林主査】
 おっしゃるとおりで,一種のリスクのプールなのです。全体で,大きくいえば,平たくいえば互助会的な発想なのです。それが一つ。
 それから,オーストラリアの場合,コントリビューションと言っているところがみそで,今,池尾先生が言われたように,まさしく,所得が多いからたくさん返してください,コントリビュートしてくださいという発想なのですね。ですから,必ずしも授業料だということは,オーストラリア政府は公式には言わないわけです。その辺が,ですから,今おっしゃられたような考え方に立っているということです。

【池尾委員】
 その場合,そういうスキームをやるときの最大の問題点は所得を把握するということが必要で,源泉徴収制度があれば,国税当局とかがそれをやってくれれば所得の把握という問題がクリアできるでしょうということですね。

【小林主査】
 おっしゃるとおりです。これはオーストラリアで1989年から導入されるのですが,その導入した理論家はオーストラリアの経済学者のブルース・チャップマンという方なのですが,彼が一番苦労したのは,国税局を納得させるということだということだったそうです。
 どうぞ。

【松尾課長】
 1点だけ質問なのですけれども,今,池尾先生,小林先生が言われた,所得に応じて,すごくリターンの多い人からはたくさん取るというのは,これは発想として私たちもありかと思うのですけれども,そのときに,オーストラリアとかイギリス,アメリカというのは,例えば借りた金額が400万円だとしたときに,所得が多い人はそれ以上返すという仕組みでしょうか。

【小林主査】
 いえ。

【松尾課長】
 ではないですよね。やはり,アッパーで借りた分だけ返す。

【小林主査】
 借りた分だけ,もちろん返して,たくさん返せばすぐ返済が終わってしまって。

【松尾課長】
 ということですよね。

【小林主査】
 大体,HECSの場合だと,平均すると7年ぐらいで返済が終わるということです。かなり率が高いので,イギリスはもっと長くかかって,しかも返済し切れないという可能性も,イギリスの場合は高くて,まだ制度的に始まって時間がたっていなくて,60歳になる人がいないので見込みなのですけれども,3割ぐらいは回収不可能であるという予測も出ています。

【池尾委員】
 だから,受け入れられるかどうかという問題はありますけれども,論理的に可能な制度設計であれば,例えば1.5倍まで払ってもらうとか2倍まで払ってもらう。2倍払ってもらう人がいれば,事実上,免除になる人も大分増やせるということで。

【松尾課長】
 そうですね。こっちで返せなければこっちでということですよね。

【池尾委員】
 成功したのであれば2倍ぐらいまで払ってくださいよ,ということですね。あるいは,金利を非常に高く設定すれば,事実上,似た効果を上げられます。

【小林主査】
 松尾課長が言われているのは,大卒税という考え方がありまして、これは,卒業したら常にずっと払い続けるわけですから,所得が多ければ多いほどずっと払わなければいけない,借りた以上に払っていくという,そういう考え方です。大卒税は,イギリスで一時期そういうことを言われましたけど,世界各国で導入している国は,今のところはありません。それはやはりいろいろと問題が大きいだろうということなのです。
 よろしいでしょうか。それでは,ちょうど時間になっておりますので,ヒアリングを終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

 ヒアリング 了

【小林主査】
 それでは,これまでの議論やヒアリング等を含めまして,奨学金貸与事業に関する論点整理を行いたいと思います。事務局より資料の説明,よろしくお願いいたします。

【辻課長補佐】
 資料番号1でございます。「日本学生支援機構の在り方に関する有識者検討会第1WGにおける論点整理」の(案)でございます。これまで検討会,親会議や前回のワーキンググループでの御意見などを踏まえまして整理をいたしました。
 まず,奨学金事業に関する事項として,債権回収の在り方を挙げております。その中で考えられるのは,金融的手法に着目した回収促進策の在り方,これらは独立行政法人の見直しの中でも議論されている点でございます。二つ目が,延滞者の状況を調査・分析するなど調査・分析機能の在り方について,三つ目が債権管理の在り方。債権の償却,延滞金,保証料と機関保証制度の関係でございますが,こういったことが論点としてが考えられるのではないかと思います。
 2点目といたしましては,学校との連携でございます。先ほどヒアリングでもございましたけれども,適格認定の在り方,これにつきましては教育指導の充実という観点から,成績低迷者などへの奨学生としての適格性の判断や貸与金額の指導といったものを,より厳格に行うことなどが考えられるかと思います。
 次のページ,裏面を御覧ください。学校との連携の論点の二つ目でございますけれども,奨学金制度に関する理解の促進ということで,適時,的確な情報発信・提供といったこと,三つ目といたしまして,その他,学校との連携,これは主に役割分担といった点での在り方についてが,論点として考えられるのではないかということでございます。
 3点目といたしまして,新たなニーズ・制度等への対応ということで,一つ目ですけれども,大学等が実施する授業料減免など他の経済的支援の動向も踏まえた効果的な奨学金事業の在り方,給付型というようなものの導入が必要だという御意見が,前回も数多く挙げられておりますけれども,それも含めての在り方についてでございます。括弧書きの中ですが,例えば入学前に奨学金貸与の可否がわかる「予約採用」,これは現在の日本学生支援機構の奨学金でもそういった仕組みはございますけど,これを増やすなどして安心して進学できるような環境の整備,学生の予見性を高める支援の方策等が考えられるのではないかということでございます。
 二つ目といたしましては,いわゆるマイナンバー法によります「社会保障・税番号制度」の導入に伴う対応でございます。返還者の収入に応じた債権回収とか,あとは制度を通じて得られた情報の適切な管理などがあるかと思います。先ほど小林先生からも御紹介のありました所得連動返済型も,この制度の関連での対応になろうかと思います。
 次に,3ページ目でございます。これらの論点を踏まえました組織の在り方に関する検討課題といたしまして,一つ目として,類似する他業種・機関との役割の明確化(他主体への一部業務移管の可能性の存否)といったこと。二つ目といたしまして,奨学金貸与事業を安定的かつ持続可能なものとする組織の在り方。多数の小口債券と個人情報を長期間管理するという特性がございますが,そういった法人としてのガバナンスの強化・効率化を図るなどの組織の在り方といった点が考えられるというようなことでございます。
 説明は以上でございます。

【小林主査】
 ありがとうございました。そのほかの資料についてはよろしいですか。

【辻課長補佐】
 続けて,では,よろしいですか。

【小林主査】
はい。よろしくお願いします。

【辻課長補佐】
 続きまして,資料2でございます。この資料は前回のワーキンググループでもお出しした資料なのですけれども,前回の第1ワーキンググループで御質問があった件ですとか,そういったことに対応して資料を幾つか追加しております。追加したところだけかいつまんで御説明いたしますが,資料2の24ページでございます。
 これは,先ほどの論点整理でもございましたけれども,奨学金制度に関する学生への情報提供ということで,日本学生支援機構と学校,奨学金利用者の関係を図示したもので,こういった機会を通じて申込時や貸与終了時など適時の情報提供に努めているということで,理解促進を図っているという内容をお示ししたものでございます。
 続きまして,26ページでございます。先ほどの論点整理でも挙げておりますけれども,機関保証制度の保証料の算出方法でございます。かなり細かい資料になりますので詳細は割愛いたしますが,基本的にはこのイメージ図,右側にもございますように,返還残高に対しまして,日本学生支援機構の奨学金におけます機関保証制度の場合は,基準年率0.693%を掛けて算出した保証料の総額を,貸与期間,例えば大学生ですと学部4年間の貸与期間中に,毎月に振り込む奨学金から保証料を差し引いて徴収しているというような特徴があろうかと思います。
 続きまして,28ページでございます。学校との連携のところでも挙がっておりました適格認定の実施状況の詳細な資料をおつけいたしました。ここでは,例えば経済面での指導ということで,2にもございますように,指導による貸与月額の減額変更ということで,貸与額を減らした者は何名いるのかということで数字をとっております。必要最小限の貸与月額へ変更するよう指導を行ったのが,対象者が約3万6,800人おりまして,そのうち貸与月額を指導に基づいて減額した者が約2,100人おります。率にすると5.7%というような状況でございます。
 続きまして,30ページは,その適格認定のスケジュールをそれぞれの手続きの流れでお示ししたものでございます。詳細は省略いたします。
 続きまして,33ページと34ページでございます。奨学金返還の際の延滞金の在り方等についても質問,御意見がございましたので,資料をおつけしております。日本学生支援機構の場合は,返還期日を過ぎるごとに延滞している割賦金の額に対して年10%の割合で延滞金が付加されます。
 例えば,真ん中の点線囲みのところにございますけれども,無利子の奨学金で,卒業後返還を開始して,10月27日が引き落とし日なのですけれども,そこを期日として割賦金の残金から延滞した場合で計算しますとこのようなイメージになります。貸与総額が約307万円の返還の際の割賦金の額は,月々1万4,222円を返還していただくことになります。この場合で,例えば10月27日の初回の引き落とし日に振替不能になりますと,次の振替不能2回目,下のほうを御覧ください,真ん中のあたりでございますが,次の11月27日に2回目の引き落としをかけますが,そこで延滞1カ月ということで,10月の割賦元金のところに年10%のうちの,簡単にいいますとおよそ12分の1の割合で延滞金がかかるということで,右を御覧いただきますと,延滞が続く限り,これが積み重なっていくわけです。12月27日まで引き落としができなかった場合は,延滞金の額はトータル353円ということになります。
 34ページの資料は,これは返還金の充当順位――返還金の中で利息が発生する奨学金の場合の充当順位をお示ししたものです。延滞した場合,裁判に要する経費が発生している場合ですけれども,まず費用を充当しまして,その次に延滞金,そして利息付き奨学金の場合は利息,そして割賦金の残金の順で充当されるということになります。下のような,少し細かい図で恐縮なのですが,こういったイメージで,割賦金ごとに延滞金に充当されていくということになります。例えばこれは,平成23年10月27日から1年間延滞した場合ですと,延滞金の合計額は,真ん中の点線囲みもございますように,9,240円という額になります。
 続きまして,39,40ページは奨学金事業自体の民間金融機関等への委託等が論点として挙がっておりますけれども,現在,日本学生支援機構の,特に返還金回収業務で外部委託を推進しているという現状をお示しした資料でございます。39ページは,返還者数,貸付残高が年々増える中で,国からの運営費交付金が削減される,さらに,独立行政法人ですので職員の合理化も求められるという中で,回収率は着実に上がっているということで,業務の効率化・合理化を図っているというところでございます。
 40ページは外部委託の推進状況ということで,簡単に申し上げますと,一番上でございますけれども,大量定型処理,単純大量業務処理,債権回収といった面での例えば専門性の活用,現在,マンパワー等の関係で日本学生支援機構が実施できなかった部分についての外部委託といったようなことを進めております。中でも,一番下にございますが,日本学生支援機構につきましては外部委託を進めつつも,企画・立案と,責任と判断を要する折衝,機構としての意思決定が伴う業務などは機構が行うといったような整理をしております。
 資料2は以上でございます。
 続きまして,もう1枚の資料は返還金回収関係の実績ということで,日本学生支援機構の延滞債権の延滞年数別構成を御説明する資料でございまして,これは日本学生支援機構の未回収額の内訳を細かく分析した資料でございます。これは月岡理事から御説明をいただくということで聞いておりますので,よろしくお願いいたします。

【月岡理事】
 前回,機構の回収のことにつきまして御質問がありましたが,きちんとした数字を元に御説明ができませんでしたので,資料をお配りしてございます。
 そこにございますのは延滞債権の延滞年数別の構成となっておりますけれども,これと同時に,今日お配りしてございます資料の37ページのあたりも少し御覧いただきながら説明させていただきたいと思います。
 まず,機構の回収状況でございます。機構が貸与しております奨学金の返還につきましては,これはすべて割賦での返還ということで,現時点では月賦,月払いになっております。各割賦には返還期日が毎月ついているわけでございますけれども,それを年単位にまとめますと,年ごとに返還額が割り振られてまいります。この当年度に割り振られた額をすべて回収すれば延滞は生じることがありません。その際には当年度分の回収は100%,総回収率も100%になります。
 現在,当年度分の回収率は95%になっております。それは資料37ページの真ん中あたりですが,表と図の境目あたりに当年度計1+2とありまして,そこに94.7%とありますように,当年度分の回収率は95%となっておりまして,順調にこの部分は改善されてきております。また,過年度の期日分というのも回収をしておりまして,それは期首延滞者分の延滞と書いた3のところでございますけれども,22年度で113億円回収いたしております。この回収分と,当年度分の95%の残り,100%から5%分の差がありますけれども,この差を相殺すると考えますと,実質的な当年度の回収率は98%程度というふうになっていると考えております。このように,当年度の回収率は,総回収率で示されています80何%ではなくて95%,あるいは96%,97%,そういったところに来ているのではないかというふうに考えております。
 次に,今日お配りしてございます返還関係実績と書いた図でございます。これを見ていただきますとおわかりのように,金額で見ますと延滞が長い債権が中心でございます。延滞8年以上の債権が41.7%となっております。他方,債権数で見ますと延滞が短い債権が中心となっておりまして,延滞1年未満のところで52.2%,19万債権となっております。実はさらにその中で9万7千債権が延滞一月未満,つまり,振替不能1回だけだったというものでございます。こういった振替不能1回目のものは,大体,翌月に7割から8割解消されますので,延滞債権は30数万債権あるように見えますけれども,実際はもっと少ない債権が延滞の中心となっているということでございます。
 したがいまして,私どもは延滞をさせないということと,それから延滞しても早期に解消させるということと,延滞している者には繰り返しコンタクトして返還を促すという,そういった姿勢で取り組んでおりまして,おかげさまで23年度におきましては予定の目標を達成することができたという状況になっているところでございます。
 簡単でございますが,以上でございます。

【小林主査】
 ありがとうございました。

【辻課長補佐】
 それでは続きまして,資料3でございます。第1ワーキンググループの報告書の骨子(案)でございます。次回,第3回でこのワーキンググループとしての報告を取りまとめることになりますけれども,その骨子の案をお示ししたものでございます。
 構成といたしましては,1点目といたしまして,日本学生支援機構の奨学金貸与事業についてということで,一つ目に奨学金貸与事業の概要,二つ目に,奨学金貸与事業に対するこれまでの指摘,対応状況,三つ目に,検討の経緯などをまず記載するということで考えております。
 2点目に日本学生支援機構の奨学金貸与事業に関する課題と対応策ということで,(1)奨学金貸与事業に関する課題,特に金融事業としての側面に着目した見直し(一部業務の更なる委託等)について,(2)課題に対する対応策について,(3)今後の課題についてといったことで整理をしております。
 3.ですが,日本学生線機構の奨学金貸与事業に関する組織の在り方ということについてこちらでまとめたいと考えております。
 続きまして,資料4ですが,これは前回の第1ワーキンググループの議論の主なポイントを整理させていただきました。今後の御検討の御参考にしていただければと存じます。
 簡単ですが,以上でございます。

【小林主査】
 ありがとうございました。それでは,資料の論点整理(案),資料1と,報告書の骨子(案),資料3につきまして特に御意見等ございましたら,よろしくお願いいたします。

【池尾委員】
 いいですか。

【小林主査】
 はい。どうぞ。

【池尾委員】
 資料1ですけれども,前回も申し上げましたけど,本来的には給付型の奨学金が充実されることが理想的で,望ましいのですが,それが財政事情等から難しいときに,だからといって貸与型がそのかわりになるのかという問題はありまして,貸与型の規模が年々拡大してきているという事実はあるのですが,それがほんとうに適正なものなのかどうかという,規模についても論点の中の一つとして当然あり得るというか,論点としてはあると思うので,貸与事業の規模というのも,新たなニーズに応えていくとかそういうことに加えて,既存の事業の規模が果たしてほんとうに適正なのか,あるいは可能性としてはもっと大きくしたほうがいいということもあるのかもしれないですけれども,そのあたり論点としてはやはりあるのではないかというふうに思います。

【小林主査】
 第一種と第二種とあるということが大きな特徴なわけですけど,なかなか第一種が増やせないというようなことがありまして第二種が増えてきてきたというような経緯があるかと思いますが,その辺が果たして妥当だったかどうかということですね。このワーキンググループでは給付型奨学金が必要だということはどの委員の方も申し上げてこられましたし,それから親委員会のほうでもそういう意見はかなり出てきたと思いますので,やはり今池尾先生が言われたように,本来的には,国の事業としては給付型奨学金というのが必要であると。しかし,やむを得ない事情で貸与型奨学金になっているということは,入れていただいたほうがいいかなと思いますね。
 ほかにいかがでしょうか。

【松本委員】
 貸与型か給付型かの問題というのは,やはりこれからの大きな奨学金制度全体の課題なのでしょうけど,その中で今の第一種・第二種という制度は,それはそれなりの役割を持っていますし,あとは原資をどう配分可能かという問題。現在の第一種・第二種の制度を前提に,非常に乱暴に言えば,第二種的なものはかなり抑えてでもその上に,許される範囲の給付型を導入してみると。それが何%ぐらいがいいかどうかというのは何とも,今いただいているデータその他ではわかりませんけれども,イメージとしてはそのような感じの給付型の導入というのがぜひ図れるといい。ただしこれは,給付型に選ばれる学生さんたちの選考の基準の問題等々,やはりもう少し突っ込んだ検討をしないと,安易にやってしまってはいけない問題なのだろうと思います。

【小林主査】
 そうですね。おっしゃるとおり受給の基準ですね,これを明確にするということがかなり重要であると思います。特に給付型の場合は,当然渡し切りになりますので,公平感とかそういった点からして十分な受給基準をつくっておかないと,後で国民を納得させられないということにもなるかと思いますので,その辺は非常に重要な御指摘だろうと思います。
 ほかにいかがでしょう。どうぞ。

【松尾課長】
 給付型について言うと,現実問題,昨年,文部科学省で給付型を要求させていただいて,そのときには学力基準と収入基準で議論したのですけれども,その中でもいろいろ財務省との間でもありましたし,党との間でいろいろありましたのは育英的な観点。要するに,成績のいい人に給付するのか,それとも経済的に困難な人に給付するのか。つまり給付型の給付という言葉の中にいろいろな思いを持っている方々が相当おられて,ほんとうにどちらでどう行くのかというのは,給付という言葉,ワーディングは一緒なのですけれども,相当思想的に違ったというのがありました。その辺は,検討するときに我々は育英と奨学のどちらでやっていくのかというのはよくよく判断の要るところ。あとは,渡し切りで最初でやるのか返還免除で後でやるのか,もしやるとすればそこら辺は制度設計を,その辺は相当慎重に議論していく必要が,多分あるのではないかと。去年のいろんな折衝の過程での印象でございます。

【小林主査】
 今日御紹介できなかったのですけど,各国の場合もそれはいろいろな考え方がありまして,いわゆるメリットベースに行う優秀者対象の奨学金を持っている国というのも中国とかアメリカとかありますし。アメリカの場合,ブッシュ政権がかなりそれを入れたのですけれど,現在のオバマ政権はそれにあまり力を入れないというような違いがあります。
 日本の大きな特徴は両基準の併用なのです。これはもう明治以来ずっと,育英と奨学と両方の基準を併用しているというのは,これは世界の国の中ではかなりユニークだと思いますし,多分,それが日本の実情に一番合った方式なのかもしれないと思います。
 ほかにいかがでしょうか。
 特に最初のところで,金融的な手法を必要に応じて導入するということが,もともとの閣議決定のときに特に入っていたと思うのですが,それについては,なかなか金融的手法というのが難しいというのがどうもいろいろ出てきたのですが,新野さん,特にございますでしょうか。

【新野氏(大森委員代理)】
 そうですね。先ほど澤岡さんもおっしゃっていたのですけれども,もともと貸し付けのところ,融資の段階での審査があるなしというところで,まず,奨学金のところは審査がないということはいかんともしがたい。仮に,では,そこを審査したらどうかというふうな御質問があるかもしれませんけれども,対象者が学生さんという形になりますと,ある意味でいうと収入のない方ということになります。現状,我々がそういうノウハウを持っているかといわれると,無資力の学生さんで,ある意味で出世払いみたいな方に融資をするということについてのノウハウは,恐らく民間でもないと思われます。
 それから債権管理です。回収のところでいいますと,今,民間でやっているような金融的な手法というのは既に個人信用情報機関に登録をするとか,あるいは債権管理当たって一部外部委託を民間に行うということで,既にやられているようですので,そういった意味で,確かに回収率――先ほど御説明ありましたけど,過去のストックの部分のデッドストックみたいなところを除けば,フローのところでいいますとある程度,いわゆる金融的な手法というのは導入ができているのではないかというふうには感じています。

【小林主査】
 御質問ですが,私が感じているのは,奨学生の状況についての把握というのがなかなかできないという問題があります。所得ももちろんですが,それ以外の経済状況とか債務がどのぐらいあるかとかですね。そういう場合,民間の金融機関の方はどのような状況の把握をされているのでしょうか。

【新野氏(大森委員代理)】
 民間の場合は,そういう意味でいうと,まず貸し付けをした後にすぐに,翌月から返済が始まるという形になります。貸し出しをするときに,まず入口の段階できちっとした形で審査をします。それをベースにお客様の属性を全部把握した上で,貸せる方かどうかという判断をした上で貸し付けをします。早い段階では,毎月毎月返済がありますので,ここにもあるように入金が遅延したということで,最初の間はすぐにコンタクトが取れるという状態になりますけれども,奨学金の場合は貸し付けをした後,返済が始まるのが,卒業後ということになりますと,その間の,いわゆる貸し付けをしている学生さんの状況を把握する手段がないというところがやはりあります。
 先ほど東京家政大学の方にも少し御質問したんですけれども,出口のところ,まさに就職する段階でいかに学生さんの,いわゆる債務者の状況ですが,どういう形で把握できるのかというところはやはり大きなポイントになるかと思います。ここの部分がないとすると,出口のところの管理のところについてもかなり困難になるかなという気がいたします。
 そういう意味では,就職してから毎月毎月返済をするということでは状況はつかみやすいのかもしれませんけれども,その段階で貸し付けを受けられた方の属性状態が,ある意味でいうと最新のものにリフレッシュされてないと,把握のしようがなくなってしまうというところがあると思いますので,出口の段階できちっと学生さんの状況を把握するというのが大前提になると思います。

【小林主査】
 例えばですね,所得を毎年把握するというようなことは,一つの可能性としてはあり得ると思います。先ほど出た所得連動型の場合はこれが一番基礎になるわけです。現実問題としては,例えば,毎年奨学生の方に源泉徴収票を出してくださいというのは言いにくいし,手数も大変ですから,そういうやり方は今のところは現実でないような気もしますが,将来,マイナンバー制とかが入ってくれば所得の把握というのはその段階で可能になりますから,それは一つの在り方として考えられてもいいかなという気はいたします。
 ほかにいかがでしょうか。大体金融的な手法ということでは,やるべきことはやっているというふうに考えてよろしいでしょうか。

【新野氏(大森委員代理)】
 そうですね。債権管理のところでは,先ほど事務局の方から御説明のあったとおり,機構自身の体制というのも,職員数もどんどん減らされているというと少し言い方がよくないのかもしれませんけど,減ってきている状況の中で,自前でやるということについての限界も,多分おありなのではないかという気はいたします。
 そういった中で,さらに委託をするような可能性があるのかどうか。あり得るとしたら例えば調査のようなところでしょう。こういったところは,我々も実際には,保証会社に代弁してもらった後に,保証会社のほうでは債務者の状況を調査するための調査業務みたいなことを別に委託して,ある意味で所在を確認してもらうことをやったりはしています。そういったところは非常に手間暇がかかるところなので,場合によっては可能性があるかもしれませんし,前回の議論でも少し出ていましたけれども,これだけの長い期間をずっと債権管理をやっていること自体がむしろ無駄ではないかという議論もあります。さきほど池尾先生からも御質問があったとおり,在庫一掃というタイミングが10年でいいのかという議論も,場合によってはあるかもしれないです。我々の感覚からすると,無担保の債権を10年たって回収できるかというのは,ほとんど至難のわざだと思います。

【松尾課長】
 ちなみにですが,判断の期間をもっと短くするとすると,何年ぐらいが想定されますでしょうか。

【新野氏(大森委員代理)】
 正直,我々のところは延滞半年ぐらいまでで代弁を終えていまして,その後,求償権という形で債権が移管した後,ある意味でいうと1事業年度の中で見極めをつけるという感じがあります。

【松尾課長】
 1年ですか。

【新野氏(大森委員代理)】
 1年以内,あるいは長くても1年半です。訴訟になってしまったりとかというものはありますが,例えば債務否認みたいなものですね,こういったものは少し引きずる可能性はありますけれども,正直,債権を長く抱えているよりは,バルクセールという言い方をしていますけれども,債権をまとめて売却するという形でオフバランス化をするような形もとっております。原資が税金だということを考えると,そういうやり方というのはどうなのかという気がしますけれども,これだけの債権を長い期間やっていることのコストというのを積算すると,場合によってはそちらのほうが国民負担は少ないのではないかという気はいたします。

【小林主査】
 以前,先ほど話のあった有識者会議で試算してもらうと,大体8年を超えると,もう回収コストのほうが高くなってしまうということで,一応,めどとして8年というのを出したのですけど,それが多分,限界だろうというふうに思います。
 ありがとうございました。この辺は,ですから,先ほど国の教育ローンでも委託調査というようなことをされているということがありましたので,可能性としてはあり得る。しかし,現実の問題としてはコストがかなりかかりますから,そこまでやるかどうかも含めて検討する必要があるというようなことだろうと思います。

【月岡理事】
 機関保証に関しては,代位弁済をする前に訪問調査をするということが保証機関との間で交わされておりますので,私どものほうで一応,登録された住所のところに出かけていってということは,これは委託でやりまして,そこにいなければ住所調査をしてまた探してということを私どものところでやって,保証機関に持っていっているという状況です。保証機関との関係では,延滞九月を過ぎたあたりからそういう代位弁済のための手続きに入りまして,大体十三月を越えたところで,書類が整いましたら持っていってということで,最近では大体十六月ぐらいが平均的なところじゃないのかなと思っております。ただ,100%代弁していただけるわけではない,調査が足りないとかですね,そういったこともありまして。

【小林主査】
 ありがとうございました。いろいろな対応策をこれから考えていかなければならないと思いますけれど,金融的手法については今お伺いしたとおりだと思うのですが,学校との連携という2番目のポイントですね,これについてはいかがでしょうか。可能性として何かほかにやり得ることといいますか。
 私のほうからは,アメリカで行われていることを少し御紹介したいのですが。大学で入学時と卒業時にオリエンテーションをするのが義務になっています。アメリカの場合は特にローン負担が今非常に問題になっていますので,大学は必ず説明会を開くと。問題は今,高校でそれをやるべきかどうかということが議論になっているそうです。高校は州の管轄あるいはその下のカウンティの管轄ですので,そこまではなかなか連邦政府としては踏み切れないようですが,こういったことは可能性としてあり得るのかということが一つです。
 それから,現在,大学ポートレートのほうで議論を進めていますので,ここに奨学金の状況とかそういったことについてもできるだけ情報を載せてもらうというのも,一つの情報提供としては考えられるのではないかというふうに思います。
 今日のお話で家政大学の榎本課長が,有効に使われている点として,適格認定が非常に有効に機能しているというお話でしたので,これは先ほど来の議論で,成績がよくて卒業すれば,それなりに将来も就職して返せる見込みが高いということでありますので,こういった点は非常にこれからも重要であろうと思いますけれど,この辺の仕組みをもう少し大学側と連携していくというようなことを考えてもいいような気がいたします。
 事務の問題については今回あまり出せなかったのですが,これについては,今なかなかすぐには結論が出るような問題ではないと思いますけど,前に議論になったのは,大学側の事務負担と,それからJASSO側の事務負担をどういうふうに考えていくかということは,論点としてはあり得るという話だったと思うのですが。 

【松本委員】
 前回も少し申し上げたのですけど,この適格認定というのは,これからいろいろ給付型や何かを考える上でも大事な一つの論点だと思われます。ただ,相当大幅な改善といいますか,そこまで各大学にお願いできるかという問題もあるのでしょうけれども,もう少し何か。今の段階は,あなたは大学生活を続けられますかみたいなポイントだろうと思いますが,これは最低限,大事なことですが,それプラス,今どのぐらいの充実した大学生活を送っているか、学業成績はどうかということが把握できると,そのデータというのはいろんなものに使えるのではないかなと考えます。

【小林主査】
 奨学生が社会に出て活躍するということが究極的な,何というか,税金の使い方としては望ましいことだろうと思います。

【松本委員】
 そういうものがあると,例えば一気に給付型までに行かなくても,その前段階的な返還免除の制度ですとかね。返還免除も別に全額ではなくて。

【松尾課長】
 一部とか。

【松本委員】
 ええ。10%でも50%でもいいと思うのですけど,そういうように絶えずインセンティブを与えながら奨学金が動いていくというような感じが出てくるのでないかなと思いますけど。

【小林主査】
 ありがとうございました。あと,新たなニーズ,制度等への対応ということで幾つか論点が出されておりますが,これについてはいかがでしょうか。あるいはそれ以外の点でも結構ですが。

【池尾委員】
 ちょっといいですか。

【小林主査】
 どうぞ。

【池尾委員】
 少し乱暴なのですが,2ページの一番上のところの制度に対する理解を促進ということですが,これは名称だけでも,奨学金貸与事業という名称はやはりミスリーディングの可能性があって,大学生ぐらいであればしっかり中身を理解してくださいということにはなるかもしれないのですけれども,やはり奨学ローンとか学生ローンという名前にしたほうが絶対に誤解は少なくなるというふうに思うんですね。本質はやっぱりローンなのだから,ただ奨学という性質は当然あるローンですということで,奨学金貸与事業という名称のまま,制度に対して深く理解してもらおうというのは難しいのではないでしょうか,非常に乱暴なことを言って申しわけないですけど。奨学ローンとか学生ローンとかいう名前にしたほうが,理解は明らかに進むというふうに思います。

【小林主査】
 具体的にいいますと,スチューデントローンという言い方なのですね,先ほどもありましたけど。それに関して,中国は明確に区別していまして,奨学金というのは給付なのです。だから,貸与奨学金というのは中国語ではおかしな言い方で,貸款と呼びます。ローンのそのままの訳ですけど,明確に区別しています。日本の場合はこれが,給付奨学金がなかったということが国際的にみると変則的な形になっているのではないかということで,名称についてはこれはいろいろな歴史的な経緯がありますから検討する必要はあるかとは思いますけれど,もうそろそろ考えてもいいときに来ているかもしれません。

【松尾課長】
 ここはですね,多分,名称というのは名は体をあらわすということで,今の政治状況下,あるいはその中でいけるかどうかということ。それから,これも実は去年財務省ともいろいろ折衝したときに,無利子・有利子で,貸与ではあるのですけれども,例えば第一種奨学金には政府の無利子の貸付金が入っていて,第二種奨学金には在学中の利子補給が入っているのですね。そうすると,これは財務省的な観点でいうと,その部分は少なくとも政府として補てんをしているわけで,その部分は給付的要素がありますよねというようなこともありまして,ここは検討を要します。我々の気持ちは,スチューデントローンではあるものの,では,完全に給付的要素がないかというと,そこはこのようなこともありまして。

【池尾委員】
 それはもちろんそうです。だから補助金付きローンなのです。

【松尾課長】
 そうですよね。だから私たちは,給付型奨学金を導入したい気持ちがあるので,これは給付ではないですと言っているのですが,なかなか厳しい。

【小林主査】
 先ほど申し上げたように,オーストラリアはそういう言い方は絶対にしなくて独自の呼び方をするわけですけれど,イギリスの場合は利子補給をしていますけれども明確にローンと言っていますし,アメリカの場合も利子補給は少ないのですけれどローンという言い方をしますので,国際的にみると,大体ローンという言い方が定着しているかと思います。

【月岡理事】
 利子補給からは離れますけれども,返還の義務があることを自覚しているかという問いが適格認定の中であるわけです。それで,継続願の様式の中で自覚をしていないというところを選択すると,次年度の継続は認められないというふうになっておりますので,少なくともそういうふうな制度を導入した数年前からこちらにおいて,返還の義務を知らなかったというふうに言う人はあってはならないはずだと,まず思っております。
 とにかく高校からの予約の段階も含めまして,これが貸与であるということの意識の徹底とか返還の話も随分繰り返ししておりまして,奨学金を借りる前から,基本的にはこれは返さなければならないものであるということを理解しているという割合は上がってきているのではないかと思います。高校生を対象にしていた奨学金については,自分が借りていたということすら知らないと。実際,証書を見せると,これは全部親の字だ,私ではないということで,親からそういったお金を1円ももらってないので,絶対に返還しないといって頑張る人とかがいたわけです。それは,都道府県に移管しましたので,そういった年齢の若い人を対象にしたものはなくなっておりますから,制度に対する理解というのは相当進んでいるのではないかなと思っております。
 それから後,特に有利子の場合に懸念するのは,利息をつけて返しているので,この奨学金事業の運営費は私が負担しているというふうに思っている学生さんとか,あるいは場合によっては学校の方とかがいる可能性もあるわけでして,これが,さきほどの話じゃないですけど,ローンでございますと,明らかにこれは自分がお客様でお金を借りてあげているという,そういうふうな理解になってしまわないか――今の日本の風潮の中でですね。そういったことが非常に懸念される。かえって返還がどんどん悪くなっていってしまうということを懸念するというところがございます。

【小林主査】
 それは,ですからいろんな議論が必要であると思います。大日本育英会から数えると,もう70年近く奨学金という名前でやってきたわけですから,それをどうするかというのはかなり大きな問題だろうとは思いますけれど,ただ,検討することは必要な時期に来ているのではないかという気がいたします。
 それ以外に,ガバナンスの問題をあまり議論できなかったのですけれど,これはとにかく非常に厳しい状況にあるということは間違いないわけで,職員が減っていく中で,ガバナンスを強化するという難しい課題になっているかと思いますが,いかがでしょうか。
 私は,前から申し上げている点ですけれど,今日も出ましたけれど,奨学生のときに状況を把握するという仕組みをもう少しつくっていただきたいということ。ただ,日本学生支援機構は民間金融機関そのものではないですし,限界もあると思いますから,そこのところはうまくアウトソーシングするということも考えることが必要ではないかと思います。ただ,長期的なこういった統計とか,それから調査というものをどういうふうに考えていくかということは,ぜひこれから強化していく必要があるというふうに考えております。
 ほかにいかがでしょうか。大体これで,次は報告書のまとめという形になると思います。今日の論点が大体固まれば,これで報告書という形になるかと思いますので,抜け落ちている点とか。

【池尾委員】
 そうしたら,念のためのまた繰り返しですけれども,貸与事業を続けていくのであれば,返済方式に関して,先ほどあったように所得に連動して,高所得になった人からは割り増しを取って,その分,実質的に返済を軽減する層を増やすと。それで,ある種,給付型に近いような効果を強めるという,そういう工夫は積極的に考えるということをぜひ盛り込んだほうがいいというふうに思います。

【小林主査】
 はい。ありがとうございます。

【松本委員】
 そうですね。

【小林主査】
 これは今日は簡単に御紹介しましたけれど,各国,それぞれの実情に応じて形を変えて行っていますので,日本の場合,どういう形が一番いいのかというのは,これから制度設計を十分考えていく必要があるかと思います。例えばアメリカの場合ですと,はじめはIRS,日本でいう国税庁ですね,それの源泉徴収票というのは別に取っていたのですけれど,現在ではもう連動して,本人が申告する必要はなくて,自動的にIRSから送られてくるという仕組みに変えていますので,非常に正確に所得の把握ができるような仕組みがつくられています。オーストラリアの場合でいいますと,徴収も源泉徴収ですので,ローンとはいわないですが,貢献分の返済も源泉徴収ですので,海外に出ている人以外は徴収漏れがないというような仕組みをつくっていますので,そういった点も参考にしていくことが必要ではないかと思います。
 いかがでしょうか。もうそろそろ時間になりますが,よろしいでしょうか。
 ありがとうございました。もしも今日,時間の関係で御意見がいただけなかった場合には,またメール等で事務局にお寄せいただければと思います。
 今日の御意見で大体論点は出たかと思いますので,資料3に従いまして報告書を作成していき,次回御審議していただきたいと思います。
 では,今後のスケジュールについて,事務局からお願いいたします。

【辻課長補佐】
 資料5でございます。
 第3回の第1ワーキンググループが7月31日(火曜日)の14時から16時で予定しております。それまでに第1ワーキンググループの報告書の案を作成して,委員の先生方に御確認いただくというような流れになると思います。第3回で第1ワーキンググループ報告書を取りまとめます。その後ですが,在り方検討会のいわゆる親会議が8月21日(火曜日)に予定されております。その親会議の最終回が9月12日(水曜日)で,ここで検討会報告書を取りまとめられればというスケジュールで考えております。
 以上でございます。

【小林主査】
 ありがとうございました。今の点について,あるいはほかの点について何か御質問等ございますでしょうか。
 それでは,以上で独立行政法人日本学生支援機構の在り方に対する有識者検討会の第1ワーキンググループの第2回を閉じさせていただきます。次回は7月31日ですので,どうぞよろしくお願いいたします。
 本日はどうもありがとうございました。

 ―― 了 ――

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