獣医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議(平成23年度~)(第12回) 議事要旨

1.日時

平成25年9月17日(火曜日)14時~16時

2.場所

文部科学省16F1会議室

3.議題

  1. 今後検討が必要な論点について
  2. 国民からの意見募集の結果について
  3. 大学院教育の充実について
  4. 教育実施状況調査の追加調査の実施について
  5. その他

4.出席者

委員

伊藤座長、酒井座長代理、石黒委員、尾崎委員、榑林委員、佐藤委員、菅沼委員、中村委員、中山委員、平井委員、政岡委員、三角委員、村上委員、横尾委員

文部科学省

内藤専門教育課長、児玉専門教育課長補佐

オブザーバー

藁田農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課長、滝本厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課長

5.議事要旨

議事の概要:
議論に先立ち、座長から新委員及びオブザーバーについて紹介があった。事務局から配布資料についての確認があった後、以下のとおり議事が進行した(◯:委員、●:事務局・オブザーバー)。

 

(議題1について)
事務局より、資料2-1、2-2に基づき説明し、伊藤座長より、獣医学教育の改善の進捗状況について説明があったのち、共同教育課程については参考資料1-1、1-2に基づき石黒委員から説明があった。
○ 獣医学教育の改善について、最初はモデル・コア・カリキュラムを策定した。今年度にも一部改訂している。講義51科目、実習19科目となり、教科書を作る作業中。既に10冊の教科書は作成した。
共用試験については、獣医師法17条の違法性阻却のため、コンピューターベースの試験を行う取組。これから詰めの議論が始まるところ。
教育体制については、共同教育課程が開始。北大・帯畜、岩手・東京農工大、山口・鹿児島に加え、平成25年度からは、岐阜・鳥取でも始まった。
並行して、分野別第三者評価の取組として、大学評価・学位授与機構において、教育の質の保証に係る評価基準を作る議論が始まっているところ。
○ 岐阜大・鳥取大の共同教育課程のベースとなったのは、平成21年度から23年度にかけて、文部科学省の補助金により岐阜・鳥取・京産大で実施した「獣医・動物医科学系教育コンソーシアムによる社会の安全・安心に貢献する人材の育成」事業。岐阜・鳥取の共同教育課程は現在1年目で、導入科目を実施したところ。共同教育課程においては、教員移動型、学生移動型、遠隔教育により教育を実施していく。両大学内には、共同教育課程を取りまとめるためのセンターも設置し、大学間、あるいは学際的な教育の実施における調整を行っている。
○ 共同教育の取組については、国際水準の獣医学教育を実施したい、という考え。日本では、30名の学生に30人の教員、という規模。これが欧米だと、150人の教員に100~150名の学生、アジア各国の大学でも欧米並みの規模。

 

(議題2について)
事務局より、資料3に基づき国民からの意見募集の実施概要について報告があった後、意見交換。
○ P3によれば、55%が大学の新設に賛成とのことだが、本協力者会議が3月にとりまとめた「これまでの議論の整理」では、抑制方針は堅持すべきとの方針。国民からの意見募集で寄せられた意見はどの程度反映すべきか、そのあたりの取扱いはどうなっているのか。
● 尊重しなければならないもの。ただし、寄せられた意見が、協力者会議の「これまでの議論の整理」に記述された課題を正面から捉えたものであるかは、検証が必要。あくまで、これからの議論の下敷きとなるものである。
○ P3地方は獣医師不足とあるが、問題になっているのか。
○ 獣医師不足は、職域による。地方公務員では、北海道だと毎年70名程度募集、50名程度採用。九州でも同じような状況。産業動物獣医師の不足については、総じてかなり解消されている。
○ P3に「病院がいつも混雑している」とある。これは小動物のことだと思うが。
○ 大学のない県で不足があるという考えのもとの意見ではないかと思う。小動物獣医師については、地域偏在は解消済みで、これからはむしろ小動物の頭数が減少傾向になるとの認識。
● 意見募集においては、国民目線のもの、専門家のものなど、様々な意見がある。協力者会議の議論では、職域偏在はやや解消、地域偏在はまだ幾らかある、との認識。
○ P3に「危機管理が心配」とあるが、この理屈だと、全県に大学を作る必要があることになる。
○ P1の教育改善に関する意見を見て、野生動物に関する議論をやってこなかったな、とも思った。公衆衛生分野ということになると思うが、この部分も議論するべきだ。
○ P1にモデル・シミュレーターの話がある。これを活用すべき、という意見がある一方で、学生が動物に触れる機会を増やすべきだ、という相反する意見もある。
実習に入る前にシミュレーターを使う、その後実際の動物で実習するなど、教材の使い分けについては、もっと検討が必要。すべてをシミュレーターで代替するというのは難しい。
○ 欧米のように動物センターとも協力して、センターに集まる動物により例えば実習ができるようになれば、とも思うが、日本ではなかなか難しいところ。

 

(議題3について)
中山委員より、資料4に基づき東京大学における大学院教育の状況について説明があったのち、意見交換。
○ 東大についてのプレゼンではあるが、課題等は各大学に通じるものと思う。
○ 全体像をどう考えるべきか、きちんと整理する必要。日本の獣医系の大学院には3つのタイプがある。東大・北大などの研究に特化したタイプ、連合大学院、私立大学。また、地域性、教育内容等の特殊性もある。更に、共同教育課程の実施を受けて、連合大学の取扱いをどうするかについても検討が必要。
○ 大学院について考えるに際して、中央教育審議会の答申で、大学院のプラットフォーム化が言われている。大学院の充実については研究面だけでなく、教育面も考えるべきだ。
○ 平成17年と23年の大学院に関する答申で「たこつぼはやめて、幅広い教育を」ということが言われており、中山委員の資料でいう、研究科・学内横断的な部分のことや、コースワークのことなどがそれに当たる。大きい大学はある程度実現できるのでうらやましい。
○ 大学院生の進路として、民間企業は増えているのか。
○ 20年前と比べれば、増えている。
○ 教育の中で、そのような進路への動機づけをしているのか、あるいは、社会的なニーズに応じているものか。
○ 後者と思われる。学生は、この大学でこの研究をしたい、という考えよりは、どこに就職すればどのような待遇か、といったことに非常に敏感。
○ 教育内容において、企業に向かうような工夫はあるのか。
○ 特論の中で製薬企業の方を講師としてお呼びしたりすることもある。そのようなことがきっかけになることはあるかもしれない。
○ 東大以外の、他の大学ではどうか。
○ 学生の半分は現役の学生だが、残り半分は社会人入学と留学生で、修了後の進路は決まっている。現役学生の企業への就職は10~20%と低い。
○ 北大でも東大と傾向は似ている。3分の1程度が留学生で、修了後は帰国する。企業に行く人は少なくなってきたように思うが、企業からの求めも少なくなってきているように思う。企業では即戦力を求めている。
○ 大学院への志願者数の減は何が原因か。
○ 学生の進路に多様性がでてきたということではないか。例えば学部卒で医・薬系に進学・就職したり、あるいは海外に出て行ってしまうということかと感じている。
○ 定員を見ると超過はしているが、社会人、留学生を除くと、内部進学者はかなり少ない。ここを改善する必要がある。
○ 留学生と社会人は修了後の行き先が決まっている。
○ ところで、獣医学が農学の中にとどまるべきかどうか、メリット・デメリット等について根本的な議論ができないか。外国では、農学部から離れて獣医学の学位がある。日本の獣医学は農学の中から育ってきたが、国際化のことを考えるのなら、獣医学は農学から離れるべきではないか。
○ 学士については分野が700程度あり、整理がつかない状態。問題視はされているが、なかなか動かないというのが現状。
○ 欧米から見たときに、「国際水準を目指す」と言いながら獣医学が農学の一部という状況であり、今後整理が必要ではないか。現在、国立大学のミッション再定義が行われているかと思うが、獣医学を農学から独立させるべきとの議論はないのか。
● 大学が出す学位について、今は昔ほど厳しくないが、獣医については、獣医師を養成する課程に限って獣医学士を授与している。
国立大学のミッションの再定義において、農学部の中では、強みとして獣医学を出してくる大学と、出してきていない大学とがある。大学によっては生命、環境といった分野を強みとしているが、いずれも獣医学と関係がある。また、日本の農学分野には、経済から土木まで、あらゆるテーマにあらゆる専門の先生がおり、他国では余り見ない形となっている。ミッション再定義については、今後も会議の中で報告していきたい。
○ 建前とは別に現実として、日本の大学院の学位の認定基準は研究成果であり、実際はたこつぼ型の教育になってしまっている。中山委員の資料の「非寺子屋式」にするのが課題であるというのは同感。
● 博士人材が社会の様々な分野で活躍することは、イノベーション創出や社会とアカデミアの接続と言う意味で重要。文部科学省では、博士人材の活用について議論しているが、医・歯・薬・獣の博士人材については課程の構造が6年プラス4年になっているということもあり、あまり中心の議論となっていないので、獣医学分野の博士が様々な世界に進んでいくために何が必要なのか、御意見をいただければと思う。
○ 北大全体では、大学院の共通講義というものがある。獣医学研究科からは、人獣共通感染症に関する科目を提供している。しかし、受講者の多くは修士課程の学生であり、博士人材についてはスクーリングの文化が育っていない。リーディング大学院の事業では、博士課程のスクーリングを増やすことを考え、学内の関連施設と連携して2つのエキスパートコースを作った。いずれもスクーリングが中心だが、自分たちだけでは科目を提供することができない。今後はスクーリングを増やし、専門を修めると同時に、周辺領域も身につける形にしたい。
○ 医・薬・獣の学部教育も4年教育であるべきなのでは。欧米のように、獣医学の教育課程は6年なのか4年なのか、問われるときが来るのではないか。
○ 連合大学院と共同教育課程について整理をすべきという話があったが。
● 連合大学院と学部段階の共同教育課程で組合せが違うのでやりにくいという話があるが、それは個々の大学の問題。この会議では、全体的な大学院での教育について、まずは議論をお願いしたい。

 

(議題4について)
事務局から、追加調査の実施の提案と、調査票(案)の説明があった後、意見交換。
○ 学部卒業生の進路状況について、採用は年度の途中に一括であるが、配属先は4月に決まる。調査票ではそこまで問う形となっているが、大学が回答するのは少し難しいのではないか。前回調査の際にも、大学では聞き取り調査等をやった経緯もある。
● そういった点も含め意見をもらえればと思う。
○ 内容はこんなに細かかったのか。
● 昨年度の調査からは内容を減らしている。調査しても余り利用しなかったデータ等は設問を削除するなどした。
○ 学用患畜に関する調査の取り方については、この形では良いのか。これまでは、診察件数等も含めて聞いていたかと思う。
● 附属病院の診療能力ではなく、教育機能を聞く内容に特化した。
○ 学用患畜とすると、全国的にも数は少ない。収入としても数%の範囲になるのではないか。
○ 講義で診られる数、といった簡単な表現にすればよいのでは。
○ 「学用患畜」という言葉だと、教育に用いることを条件に診療費の一部を大学が軽減する枠のことを指し、その枠には制限がある。ただ、軽減の枠の外にも、学生の実習に利用している患畜がある。
○ 以前の調査では、専任教員が診療した数も非常勤教員が関わっている数も患畜数に含まれていた大学があったと思う。例えばNOSAIの先生が非常勤講師となっていると、その先生が見た患畜の数も全部入ってしまう。
● 「学生の実習に利用できる」と定義しているが、それでも誤解が出るようなので、訂正が必要。解釈にばらつきが出ないよう気を付けたが、訂正すべき点があれば御意見を頂きたい。

 

(議題5について)
事務局より平成26年度で概算要求している事業について説明。

※ 調査票(案)について追加意見のある場合は10月までに事務局に提出することとし、閉会した。

 

(以上)

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