獣医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議(平成23年度~)(第11回) 議事要旨

1.日時

平成25年3月26日(火曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省5F7会議室

3.議題

  1. これまでの議論の整理について
  2. その他

4.出席者

委員

伊藤座長、酒井副座長、石黒委員、尾崎委員、廉林委員、金子委員、佐藤委員、菅沼委員、竹中委員、中山委員、政岡委員、三角委員、山根委員、横尾委員、吉澤委員

文部科学省

内藤専門教育課長、児玉専門教育課長補佐

オブザーバー

池田農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課長、滝本厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課長

5.議事要旨

議事の概要:
事務局から配布資料についての確認があった後、以下のとおり議事が進行した(○:委員、●:事務局・オブザーバー)。

 

(議題1について)
(P1~P5について)
○ P5では、「欧米の認証評価機関による認証の水準に到達することを目指すことが極めて重要な意味を持つものである」とのことであるが、これは具体的には、その水準に達することが目的であって、欧米の認証評価を受けなさいという意味ではないということでよいか。P3の「欧米のアクレディテーション獲得を目指した取組」との関係が不明瞭。
● P5の記述はまさにそのとおり。P3の「欧米のアクレディテーション獲得を目指した取組」は、この2月に文部科学省の大学改革評価推進事業として採択された、北海道大学、帯広畜産大学、山口大学、鹿児島大学におけるヨーロッパの認証評価を受けるためのプロジェクトを記述した。
● 帯広畜産大学の中に設置された国際認証推進室が司令塔になり認証評価を取得する努力をしており、それを分野別の第三者評価のほうに反映できれば、日本の全体の獣医学教育が向上するのではないかというのが、この5ページの最後の記述にまとめられている。
● P4下から2つ目のパラグラフの「獣医師法第17条の規定に対応し、獣医学生を参加型臨床実習に送り出す前提条件として」の部分について、趣旨に間違いはないが、第17条自体は獣医師でなければ診療行為を行ってはならないという規定であって、臨床型実習に送り出す前提条件が書いてあるわけではないため、「第17条の規定に対応し、」は省いて、「獣医学生に参加型臨床実習を行ってもらうために」とした方が正確ではないか。
○ P3の「【共同教育課程の推進】」について、共同化ばかりが強調されると均一化されていく印象になるので、各大学の連携だけでなく、従来から引き継がれている各大学の特色についても触れてはどうか。
○ 共同教育そのものが均一化を目的とはしておらず、それぞれの地域性を持たせ、各大学の特色を出した上でどう連携していくかという検討をしている。そうしたニュアンスを表現してもらいたい。
○ 参加型臨床実習について、産業動物臨床実習と伴侶動物臨床実習を行うためにどれだけの人材と設備が必要なのか詰め切れておらず、今現在全ての大学が持っている人材・設備では、おそらく困難ではないかと思っている。
  各大学が作ったガイドラインのうち、ステージ1については現在の教員数で何とかできるかもしれないが、ステージ2については現在の教員数・施設では絶対足りない。各大学の自助努力だけでは無理な状況になっているので、多方面・多角的な援助がどう構築されるべきなのかを議論するとともに、参加型臨床実習を行うに当たっての実態について、もう一度細かい調査をするべき。
○ 記述にあるこれまでの補助金は国立系大学のみが対象。私学も国立に追随して更に一段ハードルの高い設備にしようと自助努力をしているが、私学の体力からして限界がある。
● 8月の報告書で記載していた参加型臨床実習の実施に当たっての人員・設備の不足に関する記述を反映しきれていないので、それを反映した上で、この臨床教育の充実について書いていくような整理としたい。
  また、参加型臨床実習に関する詳細調査については、各大学の事情等もある中で統一的な調査を出来るのか、大学関係者間でも少し議論が必要な話であるため、この協力者会議の引き続きの課題とさせていただくかどうかについても、検討させて頂きたい。
P4の最後の「各大学による自助努力」の部分については、国立大学・私立大学ともに当てはまること。基本的にはこの部分よりも後段の「国による多方面からの支援も必要である」のほうに力点があるような話であると思っているので記述ぶりは検討したい。
○ モデル・コア・カリキュラムでは、参加型臨床実習の箇所だけ、現状では対応できないだろうとのことで他の項目に比べ総論的な書かれ方をしている。このことについて、臨床分野の関係者間では、獣医学教育の改善が進み第二、第三の改革となった際には見直しが必要であるとの議論がされている。
○ P3の下から4行目やP4の上から3行目の記述は抽象的な表現であるが、最初に本協力者会議で検討する際に、参加型臨床実習については設置基準を触らないとしたことを踏まえれば、抽象的な表現となっても仕方がない。しかし、P4の最後の部分の書きぶりは重要であり、具体的な書きぶりとしたほうが良い。
○ 国からの支援を得るのは非常に難しく、国立でもまずは診療報酬内でやりくりせよとのことなので、各大学の自助努力が前提でという形にしかならないのではないか。

(P6~P11について)
○ P6(1)の伴侶動物の飼育頭数の減少の箇所について、第22条届出の小動物担当獣医師数が20年位から横ばいで推移していると思うので、そのことについても加筆した方が良いのではないか。それから、「農業共済組合」という表記について、「農業共済団体」とした方が良い。
P7の2行目の「中央畜産会の調査によると、獣医学部に入学して間もない学生の多くは」という表現について、これは入学してすぐの学生というより、入学後に講義や実習で産業動物のことを知った学生という意味なので、文意が伝わるよう表現を工夫してもらいたい。
  また、次のパラグラフについて、毎年一定人数採用とあるが、現状では不可能なところが半数以上であるためこの表現を残すのであれば、「毎年」ではなくて一定の期間、5年とか10年に一遍とするなど、修正する必要がある。
○ P9「免許を持ちながら獣医療に従事していない者が相当数いることを考えるべきとの意見も示された」とあるが、獣医師免許を活用していなくても獣医学分野で活躍する者もいるので記述の工夫が必要。
○ 50年前は製薬企業に行った研究職獣医が30%位、産業動物に行ったのが30%位、公務員に行ったのが30%位で、当時は伴侶動物の獣医師は少なく、クラスで2人位しか開業していなかった。その後、伴侶動物獣医師が非常に増えて、薬理学をやっている人でも開業したりしていた。伴侶動物に人員がシフトした分だけライフサイエンスの中での獣医師の存在感が落ちている。
  昔の薬学部の方々は化学を非常に重視し生物学をほとんどやらなかったので、企業に入ると生物学にバックのある獣医師が非常に活躍していたが、その後、薬学教育が化学に加え生物学に非常に力を入れたので、どんどん企業にも入ってくるようになった。
  また、この30年で大学においても工学部等に生命科学の講座が非常に沢山できたが、そこでは薬学出身者が非常に多い一方、獣医師出身者で他分野で活躍している人は減っている。
薬剤師のここ10年での人員増には無防備だとの批判もあるが、結果的には今十分それでやれていて、広い分野で薬学出身者が活躍している。あまり数を増やし過ぎると、歯学部のようになってしまうという意見がよくあるが、歯学に関しては今までそれほど広い分野で活躍しておらず、診療のところだけで競争が発生しているからであり、この点について、他分野で活躍する獣医師にはあてはまらない。
無防備な入学定員の増やし方はいけないが、なるべく競争をなくそうとしていると、せっかくこれから獣医師が伸びる場所を我々が規制してしまうことになるのではないか。
産業動物獣医師についてはTPPの問題もあり予見不可能であるが、ライフサイエンス分野は、これから非常に伸びるので、その中に獣医師のしかるべき役割というのは相当あるのではないか。ライフサイエンス分野は、今後注目しておかなければいけない。
● P10の下から2つ目のパラグラフの地域枠に関する記述について、「地域枠」ではなく「職域枠」と表現するほうが適切ではないか。
○ 獣医学コミュニティーの内向きの意見という印象を持たれる書きぶりではなく、国民的な視野で獣医学を国民生活の向上にどうやったら役立てられるのかということがにじみ出てくるような書きぶりにすることが大事ではないか。
○ P8の2つ目のパラグラフ「毒性試験の作業が挙げられる」は「毒性試験への関与が挙げられる」としたほうがよい。
○ 定員を増やすと教育の質が低下するという考え方があるが、薬学部の例を見ていると、大学数が非常に増えたことで確かに定員割れや質の低下等の現象は出ているが、国家試験を受けて薬剤師になる1万1,000人位は、ほとんど昔とレベルが変わっていない。国家試験があれば一定の質は保証され、時代の要請に応え数も増え、社会的な地位・認知も得られて、政治家まで3・4人出てしまう位の大きな組織になってきている。獣医学についても、質が落ちることを心配して入学定員の制限を叫ぶべきではない。

(P12~P13について)
○ P9の「免許を持ちながら獣医療に従事していないものが相当数いる」との記述は、表現が消極的ではないか。例えば医師免許保持者が証券アナリストになったことでバイオ産業が発展していくこともあるのであるから、免許をとった人が獣医療に従事せず、ほかで新しい分野を開拓してくれるというのは、多様性のある社会においては悪いことではない。
○ 「免許を持ちながら獣医学とは無関係な仕事についている者の数が相当数いる」と書いたほうがはっきりするのではないか。
○ 他分野で活躍しているというのであれば賛成だが、3万5,000人の免許保持者中、4,000~5,000人が獣医療に従事していないという現状をどう考えるのか、という問題意識からこの文言になったのではないか。
○ 獣医療に従事していない4,000~5,000人のためにも、ダイバーシティーマネジメントやっていかないと、いつまでたっても男社会であって女性の活用が進まないのではないか。
● 学校の先生も含めた獣医事に全く就いていない人は4,000人程度で、その中には、就業の環境が整っていないため家庭に入って戻ってこられないといった女性の人数も含まれている。
○ 異業種に行った人材は、そこでまた活躍して、そのバックグラウンドを使ってくれるから何の問題もない。それよりも家庭に入った女性が活躍できないのが問題。
● 産休・育休等々女性の就業の環境整備については、都道府県でも大分進んできている。
● ここの記述は、女性の活躍の促進等といった形で修正させて頂きたい。
○ 3.の大学院の学位の取得者について、例えば薬学をはじめ他の分野と積極的に競争する人材である基礎がわずか62人となっており、こんなに少ないのは大きな問題。基礎分野の教員数が少ないかというと、決してそうではなく、かなり充足している。
○ 教員数は結構いるのに大学院生が基礎分野にシフトしない原因は、そういう分野に楽しい職場があること等について大学側のPRが足りないからではないか。産業動物獣医師への希望が少なかった時代に、積極的にPRすべきだとしたところ、大分変わってきた。
○ ライフサイエンス分野に行く学生が多い大学と少ない大学とがはっきりしており、教員に影響されている部分が大きいのではないかと感じる。
○ 基礎獣医やライフサイエンス等は畜産分野の研究者がかなり占めており、獣医学という領域にとどまらないで広く見れば、畜産分野の方からはかなりの進学者がいる。
○ 競争というよりも、共生という視点が重要なのではないか。獣医師は養成コストが非常に高い。例えばアニマルサイエンス等での基礎の獣医部分や応用動物科学の部分等では資格等がないので、獣医師である必要はない。獣医師でなければならない分野は獣医師がやり、畜産分野が戦後なし得てきたようなところについては、競争ではなくて共生という形でうまく使い分けていく。そういう視点が重要なのではないか。
○ 16国公私立大学の教員は、ほとんど獣医師が占めており、他学部に比べ、他分野出身の教員が少ないのではないか。最近、医学部でも理工学部等いろいろな分野から入ってきている。そういう面では、教員養成・教員募集の際に、もう少し意識的に様々な分野の教員に来てもらうことが、獣医学の活発化につながる。
○ 獣医学出身者が多いということと、自大学出身者が多いということと、男性が多いということで、日本の獣医系大学は後進国に近い。
○ そろそろ目を開いてもう少しグローバルな展開を考えていかないと対応できなくなってしまうのではないか。
○ 学部の定員が930名に対して、大学院の定員112名はあまりにも少な過ぎるが、大学院の定員を多くした場合には、大学院に進学後の出口を明確に用意しておかなければならない。

※ 資料1について、追加意見等の調整を含め座長一任とされ、国民からの意見募集を行うこととし、議事は終了した。

(以上)

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