資料6 獣医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議(第10回)議事概要,獣医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議(第11回)議事概要

獣医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議(第10回)議事概要

日時:平成25年2月26日(火曜日)10時00分~12時00分
場所:文部科学省6階6F1会議室
議題:1.獣医学教育の改善・充実について
  2.これまでの論点の整理について
  3.その他
出席者:委員)伊藤座長、酒井副座長、石黒委員、尾崎委員、廉林委員、金子委員、佐藤委員、菅沼委員、竹中委員、中山委員、三角委員、森川委員、山根委員、横尾委員、吉澤委員
発表者)愛媛県地域政策課長 高塚氏、愛媛県薬務衛生課技幹 白石氏、愛媛県中予家畜保健衛生所長 中谷氏、今治市総合政策部長 胡井氏
文部科学省)山野審議官、内藤専門教育課長、児玉専門教育課長補佐、畑専門教育課科学・技術教育係長

議事の概要:
事務局から配布資料についての確認があった後、以下のとおり議事が進行した。(○:委員・オブザーバー、●:発表者)。

(議題1について)
※ 資料1について、愛媛県より説明。
○ 愛媛県における畜産・水産業等の産業構造はどのようになっているのか。
● 愛媛県全体の産出額が1,262億円で、そのうち畜産の占める額は304億円(24%)。これは、四国では1位で、中四国では3位となっている。
○ 全国の飼養頭数から見ると、牛、豚ともに四国全県で2%から3%台。
○ 大学を新設したいというのは、国立ではないと思うが、県立や市立で検討しているのか。それとも私立でやられるのか。
● 今のところ、公立大学の検討はしておらず、私立を基本と考えている。
○ 先ほどの愛媛県からの説明の中で、宮崎県の例が出ていたが、現在は当初と若干状況が違っている。当時、家畜防疫員は確かに少なく、80名程度だったが、自助努力で改善されており、現在は250名程度となっている。
○ 全県で定員削減が行われているが、愛媛県の定員削減の中には、獣医師は含まれているのか。
● 獣医師も一時期削減の時期があったが、鳥インフルエンザや口蹄疫等の発生が全国であったことを受け、定員増が認められ、現時点では削減計画の中に獣医師は含まれていない。しかし、せっかく定員増を勝ち取ったのに、募集をしても入ってくる獣医師がいないというのが現状。
○ 身近に大学あるいは中核となる研究所が必要との点について、愛媛県には愛媛大学があり、農学部として特に水産系も一生懸命やられているが、そこへの設置ということも考えているのか。
● 具体的なアプローチはしていないが、候補の一つではある。
○ 愛媛県として、地域偏在を解消する方策はあるのか。
● 地域枠や奨学金制度を検討している。奨学金制度については、現在も実施をしているが、地域に大学ができれば高校生らの意識も変わってくると考えている。
○ 現状では、ほとんどの受験生は、国立大学1校と、獣医学系の全私立大学を受けており、結局、皆オールジャパンで考えていて、出身県という枠にはとらわれない動きがある。その場合、この趣旨からいうと、卒業生が四国で就職するのかどうか。それから、奨学金のお話もあったが、1,2年生では6年先の将来がわからないということで借り手が少なく、大体5,6年生になってから借り手が出てくる状況。
こうしたことを踏まえれば、例えば獣医系大学を作った際、四国出身者しか入学できないとかそういうことはあまりできないと思うが、何か具体的な対策があるのか。
● 現場の高校生の声を聞いていると、高い学力と両親の経済的な支援が必要であるということで、公平な入学の窓口があいているとはいえ、断念せざるを得ないというような声も聞く。そうした高校生が獣医師になりたいという夢をぜひ実現させるためにも、こういった取組にご理解を頂きたい。
○ 新設の際の一つの柱としてライフサイエンスやライフイノベーションを取り上げているが、四国全体を含めて、こういったライフサイエンス系の基盤がどのようになっているのか、あるいは、ライフサイエンス系の核となるような企業はどの程度あって、そういった企業からのバックアップがどの程度得られる可能性があるのか。
● 先ほど申し上げたように、愛媛県は水産県で、特に南部の地域は水産業が盛んとなっている。企業自体はさほど大きくはないが共同体を組織していて、自治体のバックアップのもと水産業を盛んにしていくことに取り組んでいる。地元愛媛大学も当然強力にバックアップしている。特に東南アジアに輸出する取組も盛んで、また、加工していくといった部分も当然ある。ただ、大きな企業というか、技術力の推進を担う企業が比較的少ないので、最新の技術力を付加していければと思っている。
○ 獣医学教育はライセンス教育であり、どこの大学を出でも、個人の希望でどこにでも行くことができる。そして、日本全国、16国公私立大学どこの大学を受けることもでき、規制はない。このため、一地方ではなく全体の獣医師像という観点から物事をとらえていく必要がある。
構造改革特区において規制緩和の提案を11回されているが、これらが認められなかった大きな原因はどこにあると考えるか。
● これまで認められなかったのは、オールジャパンで考えるべきというような考え方があるためであると思う。獣医学系大学の新設の話はずっとこの何十年と話し合われてきた問題で、既にこういう問題は解消しているべき話でなかろうかと思う。
今の流れというのは、どの技術屋もそうだが、最新の情報が流れ、高収入が得られる、そういった魅力あるところでないと人は集まらないというのが現実問題としてある。そうすると、それは都会であり、特に首都圈であると思う。偏在化が解消され各地域が均等に潤うようになるためには、少し視点を変えていくことが大事なのではないか。半世紀近くも獣医師養成大学の新設を認めない、閉鎖的で固定化された観点でやっていくと、10年・20年たっても、多分同じような議論がされていくように思う。
○ 今我々が考えているのは、獣医学系大学が多過ぎるのではないかということ。資料を見てもわかるように、国立などは定員が30名程度。それに対して、教員数を何十人も集めるということは、費用対効果で言えばかなり無駄があるのではないかということで何十年と議論してきた経緯があるので、四国に獣医系大学が無いからということで新設するためには、越えなければならないハードルが極めて高い。
また、四国に獣医師が非常に少ないということについては、数値が必要。各県・各地域における家畜単位に対して獣医師が何人いるか、また、人口比に対して何人いるか、総産出物に対して何人いるかということを各県・各地域で出さないと説得力がないので、そういうデータを集めてみた方が良いのではないか。
それから、四国が特化して処遇改善に向かっているとは余り感じることはできず、むしろ、他地域に比べ処遇が低いのではないかと感じている。愛媛県としても、四国としても、どういう自助努力をなさっているか。
今の学生は、本当に割り切っているので、畜産のために、日本のために頑張れなんていう精神論を述べたって通用しない。必ず出てくるのが、休みが幾つあるか、残業給与体系はどうなっているか、公務員というのはそういうことが決まっているので、これらがまずトップに来る。獣医師は、危険度は高いにもかかわらず、医師・歯科医師・薬剤師との給与差がはかり知れないので、努力をしないと若い人は確保できない。獣医学教育ももちろん大事だが、行き着くところは処遇という問題なので、各地が努力する必要がある。四国だけに行かないということではないと思うので、その点は、ぜひ、調査した方が良いのではないか。
● 処遇改善については県としても相当努力してきており、新採の手取りは初任給調整手当により1割5分位上がったと思うが、基本給については国家公務員の獣医師に準じているため、地方公共団体でいくら頑張ってもなかなか難しい。
○ 38県程で処遇改善をしており、多くの県で調整手当もついたが、時限のため10年で無くなる。それも、たかだか2万数千円から3万円。これが本当に努力した汗の結晶とは思えない。再雇用や採用年齢枠の延長等色々な努力が見られるが、根本的な改善とはとても思えない。やはり、県知事以下が自己改革をやっていかないと、いつまでたっても偏った職域というのは改善されず、根本的な解決には向かわない。
● 構造改革特区制度での提案が今まで認められなかったとの点について、まだ結論は出ておらず、実現に向けて検討を続けて頂いていると理解している。全国的な見地でいろいろとご検討頂き、何らかの答えを今年度頂けるものと考えている。また、認めないなら、認めない理由というのが当然あろうかと思う。
● 公務員の処遇というものは、納税者である国民・県民の皆様の理解を得られるかどうかが非常に重要。私たちは、日々住民の皆様と直接厳しいご意見をいただく中で仕事をしており、処遇に不満がある・給料が上がればそれでいいという学生では、なかなか公務員としての仕事はしていけない。
○ 農林水産省がまとめている41都道府県の整備計画によれば、今後10年の獣医師確保数について、四国4県の必要確保数は決して多くはない。どうしてなのか。全国的に見ると、北と南が多く、四国はむしろ平均より低い。要するに、あまり獣医師を確保する必要がないというような書き方をしている。
○ それに加え、今それぞれの大学に求人が来るが、北海道の場合の欠員は70名で、九州全体では60名位。四国全体だと20名ちょっと位。将来的にもそれだけの獣医師を必要としていないのではということになる。
● 先ほど、職員1人当たりの家畜単位を調べるべきとの話が出たが、やはり、九州の宮崎や鹿児島、あるいは北海道と比較すると、愛媛県の場合は、絶対的な家畜・家禽の頭数は少ないので、当然、必要とする獣医師数は少なくなっている。
ちなみに、愛媛県の場合は、今現在、畜産分野で4名の欠員。今後、豚の飼養頭数や鶏の飼養羽数が劇的に伸びることはなく、現状維持位だろうというというところがあるので、全体的な獣医師の需要というのは、そんなに大きく伸びびるものではないと予想されるが、現に畜産分野で不足している部分については充足する必要がある。
○ 全国的な中での獣医師の確保や獣医学教育の質的向上というのが本協力者会議では重要なポイント。四国に獣医師の確保が必要であるならば、そういった部分がもう少し数字として見えてくれば良いのだが、全国的に分析をした結果、そういう数字は見えてこなかった。
● 退職者分の欠員等を全て獣医師で充てるために必要な数字を計上して募集しても、実際の応募者・採用者数がそれに見合わない(全く足りない)ので、県の内部からは、もう少し現実的なことを考えたらどうか、他の職種で代替できないのか、という指摘が来る。このため、予め設定する必要獣医師数は、現実的に確保でき、実績作りができる数字にせざるを得ない。それが獣医師を必要としていないという数字として見られるのは、いささか心外。
○ 私立の獣医系大学がある地方においても、必要な獣医師数は充足できていない。つまり、大学を設置すれば獣医師を確保できる訳ではなく、これから解決しなければならないのは、獣医師の地域偏在の問題。処遇だけにこだわるわけではないが、処遇は魅力の一つであり、これは、獣医学系大学で6年間必要となる学費を計算すればわかる。
それから、四国4県から獣医学系大学に進学した卒業生が、県に帰っているのかどうか。この前処遇改善されたということで、県の職員に6名から7名合格しているが、他県からも来ているということで、出身県からはどれだけ、帰ってきて就職しているかということを調査しているか。
● 昨年、帰ってきた生徒は1名で、自県出身者がほとんどだったと思う。どこが地元かという話にもなるが、やはり愛媛にゆかりがないと愛媛に帰ってこないというのが地域の実情としてある。というのは、出身校が愛媛県内であれば、割と愛媛にゆかりがあるので帰ってきたりするが、本籍上は愛媛県で愛媛に縁もゆかりもない子は愛媛に魅力を感じないというのがあるので、一概に本籍地イコール出身県ととらえても、実態を少し反映しないのではないかという感覚がある。
○ 各私立大学には、かなりの数の愛媛県出身者がいる。それから、学生の動向としては、縁もゆかりもなくても、いわゆる志によって各県に住むということがあるので、指導する側の教育指導と、受け皿の側の各県による魅力ある説明・魅力ある待遇ということも重要ではないか。
○ 獣医系大学設置の必要性として、四国地域内での獣医師不足を第一に挙げているが、これはあまり積極的な理由にはならないのではないか。産業動物・公衆衛生コース、また、研究者養成コース等に特化したコースや、ライフイノベーションの拠点都市を目指すという説明があったが、そういったことを核にして地域を活性化すると考えているならば、それを重点的に考えていった方が良いのではないか。四国内獣医師の偏在問題というのは、議論としてはまた別になってくるのではないか。
● 獣医師確保の問題は今までずっと訴え続けてきたので議論が集中してしまうが、その他の観点も重要であり、特に獣医療の拠点という観点は重要。愛媛県には中央で学んで帰ってきた獣医師が多いが、開業獣医師も含め、技術の進展に対応する際に学び直す場がない。口蹄疫等が起きた場合にリーダーシップをとれるような大学とネットワークを構築し、県民の安全・安心、生命・身体を守る危機管理体制を作っておきたい。


(議題2について)
※ 資料2について、事務局より説明
(教育改革の進捗状況について)
○ 共同教育課程の推進について、学習する学生の立場を含めた検討が必要であり、学生をどちらかのキャンパスに集めることを引き続き検討するべき。
○ 3つ共同教育課程がスタートしてから既に1年経過するので、進捗状況の確認と問題点の検証をして、周知するべき。
○ 産業動物獣医療分野では、インターンシップを経験した学生は、そうでない学生に比べて産業動物獣医師として就職していく割合が高いという意見が出ているところ。東京大学と岐阜大学が基幹校となってやっているインターンシップは非常に有効な事業。来年度で終わる予定だが、今後もサポートが必要。

(伴侶動物獣医師、産業動物獣医師、公務員、研究職について)
○ 伴侶動物の飼育頭数について、平成20年をピークにして現在減少してきており、例えば犬の場合、平成20年に1,310万頭であったのが、平成23年には1,194万頭となっている。
○ 資料2の5ページに「入学して間もない学生」という記述があるが、入学して間もない学生の多くは産業動物のこと全く知らず、見たことも、触ったこともない。本文の趣旨は牛や豚等産業動物もいるという認識をして情報が入った段階のことだと思うで、表現を変えた方が良い。

(獣医師の計画的養成の在り方について)
※ 酒井委員より、資料4について説明。
○ 各大学の専任教員の考え方について、現在は、特任教員という形で8時間の先生方の数が結構増えているため、それも考慮したほうが良いのではないか。
○ 既に教員の充実を図っている大学もあるし、ハード面では立派な施設を備えている大学もあるので、教育の質保証をした大学には、それなりにインセンティブを与え、獣医学の発展に寄与してもらいたい。
○ 教育の質保証のためには、ST比が非常に重要であり、質の高い教員を早急に計画的に養成する必要がある。このことについては大学院教育の議論においても、議論する必要がある。
○ 教員は数だけ揃えれば良いのではなく、時間をかけて質の高い教員を養成する必要がある。
○ 現在、教員は全大学で600人程度だが、モデル・コア・カリキュラムを踏まえ、分野間のバランスも検討する必要がある。現在は基礎分野で200人程、臨床系で伴侶動物分野が200数十人程おり、公務員は100人程度、産業動物は70人程度しかいない。
産業動物は1人で技術を伝えることはできず、複数の教員で教える必要があるので、後継者育成は非常に重要。
○ モデル・コア・カリキュラムに合わせた教員配置は大事。これから第三者評価の議論がスタートしていくが、評価基準を定量化するためには、どの分野にどれだけの教員が必要なのかという議論をしっかりする必要がある。
○ 教員層が厚くないということについて、各大学の教員人事がかなり硬直化しており、自大学出身者の比率が高いことは反省点の一つ。
○ 大学の設置基準で求められているのは最低限の基準。教育の質を担保するためには、それ以上のところできちんと議論を進めることが肝心。また、認証評価の場合、どちらかというと設置基準に基づいて評価をしていくことになるが、それ以上のところでもきちんとすべき。
○ そろそろ獣医学科の大学設置基準を再考すべき。
○ 教員の専門性について昨年採ったアンケートでは、例えば、疫学や魚病、馬学等について、自大学では提供できない分野のある大学があることがわかった。それに対して、機構を作ったりしてはどうかとの提案等があったので、一時的な措置としてそういったことも検討したほうが良いのではないか。
○ 共同教育課程について、教員の総数がふえても分野の偏りがあったりするので、早急に改善に取りかかる必要がある。

(定員の在り方について)
○ 免許を持ちながらそれに従事しないというのは社会的な損失。
○ 免許を直接使っていなくとも大学で学んだことを生かしながら獣医学のアイデンティティ-を世の中に示しているのであれば、前向きに捉えても良いのではないか。  
教育・研究等高度な獣医師の知識を必要とする獣医師が全体の中でどれ位いるのかを調べてみたところ、大学・製薬企業等をいろいろ計算すると3,500人程度いる。
○ 獣医師会のデータでは、獣医事に全く関係のない職域についている人は、3,700人程度いると把握している。
○ 医師免許を持ちながら医師として従事していないのは0.2%位である一方、獣医師の場合は極端にその割合が多く、1.2%。
○ 獣医学系の大学は全国区になっており、全国から学生が集まり、全国に散っていくという状況。少し地域性があるところといえばそれはほとんど都会の中の地域大学。北海道であれば全国から集まって全国に散っていくし、九州もその傾向がある。地元に残るのは2割程度の状況。
○ 青森県には北里大学があるが、青森県には就職してくれないということで、昔あった農業高校から北里大学への地域枠を再び設けてくれないかという話があるが、地域枠の高校で上位の者を選抜してとっても、選抜者には畜産に戻ってくれる人がいないとのこと。

(大学院について)
○ 大学院では、自大学出身者、他大学出身者の割合は結抗しているとのことだが、国立と私立との間の学生の行き来はあるのか。
○ 私立から国立への動きはあるが、私立から国立国立から私立という動きは少しある程度。
○ 教員や学生の流動性を高めることは、偏在問題への解決にもなっていくので重要ではないか。
○ ライフサイエンス分野における獣医学研究者の活躍が期待されるとのことであるが、教員の養成もしていかないと、獣医学教育界全体の教員の層が薄くなっていく。
○ 大学院入学者の前職の状況を見ると、半数が社会人あるいは留学生となっている。学部卒業生の大学院進学者が増えれば、獣医学教育の後継者や企業に就職する者も増えることが考えられるため、学部卒業生の大学院進学率を高めることが重要。そのためには、安心して進学できるよう奨学金の充実等方策を検討する必要がある。
○ 大学院生が将来大学の教員になりたいと思うような環境の整備が必要。また、ティーチングアシスタント(TA)の有効活用も必要。大学院生にとっては経済的支援にもなるし、学生を教える体験にもなる。
○ 大学教員が魅力のある職業かということが一番の問題。労働契約法が改正されたことにより、5年を超えた有期雇用は無期雇用にしなければならなくなったが、それがために助教として雇わないでポスドクでしか雇わないという風潮があると聞く。若い世代に魅力的な職域では必ずしもなくなっている。

※ 資料2の各項目について追加意見のある場合は事務局に提出することとし、議事は終了した。

(了)

獣医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議(第11回)議事概要

日時:平成25年3月26日(火曜日) 10時00分~12時00分
場所:文部科学省5階 5F7会議室
議題:(1)これまでの議論の整理について
 (2)その他
出席者:委員)伊藤座長、酒井副座長、石黒委員、尾崎委員、廉林委員、金子委員、佐藤委員、菅沼委員、竹中委員、中山委員、政岡委員、三角委員、山根委員、横尾委員、吉澤委員
文部科学省)内藤専門教育課長、児玉専門教育課長補佐
議事の概要:
事務局から配布資料についての確認があった後、以下のとおり議事が進行した(○:委員、●:事務局・オブザーバー)。

(議題1について)
(P1~P5について)
○ P5では、「欧米の認証評価機関による認証の水準に到達することを目指すことが極めて重要な意味を持つものである」とのことであるが、これは具体的には、その水準に達することが目的であって、欧米の認証評価を受けなさいという意味ではないということでよいか。P3の「欧米のアクレディテーション獲得を目指した取組」との関係が不明瞭。
● P5の記述はまさにそのとおり。P3の「欧米のアクレディテーション獲得を目指した取組」は、この2月に文部科学省の大学改革評価推進事業として採択された、北海道大学、帯広畜産大学、山口大学、鹿児島大学におけるヨーロッパの認証評価を受けるためのプロジェクトを記述した。
● 帯広畜産大学の中に設置された国際認証推進室が司令塔になり認証評価を取得する努力をしており、それを分野別の第三者評価のほうに反映できれば、日本の全体の獣医学教育が向上するのではないかというのが、この5ページの最後の記述にまとめられている。
● P4下から2つ目のパラグラフの「獣医師法第17条の規定に対応し、獣医学生を参加型臨床実習に送り出す前提条件として」の部分について、趣旨に間違いはないが、第17条自体は獣医師でなければ診療行為を行ってはならないという規定であって、臨床型実習に送り出す前提条件が書いてあるわけではないため、「第17条の規定に対応し、」は省いて、「獣医学生に参加型臨床実習を行ってもらうために」とした方が正確ではないか。
○ P3の「【共同教育課程の推進】」について、共同化ばかりが強調されると均一化されていく印象になるので、各大学の連携だけでなく、従来から引き継がれている各大学の特色についても触れてはどうか。
○ 共同教育そのものが均一化を目的とはしておらず、それぞれの地域性を持たせ、各大学の特色を出した上でどう連携していくかという検討をしている。そうしたニュアンスを表現してもらいたい。
○ 参加型臨床実習について、産業動物臨床実習と伴侶動物臨床実習を行うためにどれだけの人材と設備が必要なのか詰め切れておらず、今現在全ての大学が持っている人材・設備では、おそらく困難ではないかと思っている。
  各大学が作ったガイドラインのうち、ステージ1については現在の教員数で何とかできるかもしれないが、ステージ2については現在の教員数・施設では絶対足りない。各大学の自助努力だけでは無理な状況になっているので、多方面・多角的な援助がどう構築されるべきなのかを議論するとともに、参加型臨床実習を行うに当たっての実態について、もう一度細かい調査をするべき。
○ 記述にあるこれまでの補助金は国立系大学のみが対象。私学も国立に追随して更に一段ハードルの高い設備にしようと自助努力をしているが、私学の体力からして限界がある。
● 8月の報告書で記載していた参加型臨床実習の実施に当たっての人員・設備の不足に関する記述を反映しきれていないので、それを反映した上で、この臨床教育の充実について書いていくような整理としたい。
  また、参加型臨床実習に関する詳細調査については、各大学の事情等もある中で統一的な調査を出来るのか、大学関係者間でも少し議論が必要な話であるため、この協力者会議の引き続きの課題とさせていただくかどうかについても、検討させて頂きたい。
P4の最後の「各大学による自助努力」の部分については、国立大学・私立大学ともに当てはまること。基本的にはこの部分よりも後段の「国による多方面からの支援も必要である」のほうに力点があるような話であると思っているので記述ぶりは検討したい。
○ モデル・コア・カリキュラムでは、参加型臨床実習の箇所だけ、現状では対応できないだろうとのことで他の項目に比べ総論的な書かれ方をしている。このことについて、臨床分野の関係者間では、獣医学教育の改善が進み第二、第三の改革となった際には見直しが必要であるとの議論がされている。
○ P3の下から4行目やP4の上から3行目の記述は抽象的な表現であるが、最初に本協力者会議で検討する際に、参加型臨床実習については設置基準を触らないとしたことを踏まえれば、抽象的な表現となっても仕方がない。しかし、P4の最後の部分の書きぶりは重要であり、具体的な書きぶりとしたほうが良い。
○ 国からの支援を得るのは非常に難しく、国立でもまずは診療報酬内でやりくりせよとのことなので、各大学の自助努力が前提でという形にしかならないのではないか。

(P6~P11について)
○ P6(1)の伴侶動物の飼育頭数の減少の箇所について、第22条届出の小動物担当獣医師数が20年位から横ばいで推移していると思うので、そのことについても加筆した方が良いのではないか。それから、「農業共済組合」という表記について、「農業共済団体」とした方が良い。
P7の2行目の「中央畜産会の調査によると、獣医学部に入学して間もない学生の多くは」という表現について、これは入学してすぐの学生というより、入学後に講義や実習で産業動物のことを知った学生という意味なので、文意が伝わるよう表現を工夫してもらいたい。
  また、次のパラグラフについて、毎年一定人数採用とあるが、現状では不可能なところが半数以上であるためこの表現を残すのであれば、「毎年」ではなくて一定の期間、5年とか10年に一遍とするなど、修正する必要がある。
○ P9「免許を持ちながら獣医療に従事していない者が相当数いることを考えるべきとの意見も示された」とあるが、獣医師免許を活用していなくても獣医学分野で活躍する者もいるので記述の工夫が必要。
○ 50年前は製薬企業に行った研究職獣医が30%位、産業動物に行ったのが30%位、公務員に行ったのが30%位で、当時は伴侶動物の獣医師は少なく、クラスで2人位しか開業していなかった。その後、伴侶動物獣医師が非常に増えて、薬理学をやっている人でも開業したりしていた。伴侶動物に人員がシフトした分だけライフサイエンスの中での獣医師の存在感が落ちている。
  昔の薬学部の方々は化学を非常に重視し生物学をほとんどやらなかったので、企業に入ると生物学にバックのある獣医師が非常に活躍していたが、その後、薬学教育が化学に加え生物学に非常に力を入れたので、どんどん企業にも入ってくるようになった。
  また、この30年で大学においても工学部等に生命科学の講座が非常に沢山できたが、そこでは薬学出身者が非常に多い一方、獣医師出身者で他分野で活躍している人は減っている。
薬剤師のここ10年での人員増には無防備だとの批判もあるが、結果的には今十分それでやれていて、広い分野で薬学出身者が活躍している。あまり数を増やし過ぎると、歯学部のようになってしまうという意見がよくあるが、歯学に関しては今までそれほど広い分野で活躍しておらず、診療のところだけで競争が発生しているからであり、この点について、他分野で活躍する獣医師にはあてはまらない。
無防備な入学定員の増やし方はいけないが、なるべく競争をなくそうとしていると、せっかくこれから獣医師が伸びる場所を我々が規制してしまうことになるのではないか。
産業動物獣医師についてはTPPの問題もあり予見不可能であるが、ライフサイエンス分野は、これから非常に伸びるので、その中に獣医師のしかるべき役割というのは相当あるのではないか。ライフサイエンス分野は、今後注目しておかなければいけない。
● P10の下から2つ目のパラグラフの地域枠に関する記述について、「地域枠」ではなく「職域枠」と表現するほうが適切ではないか。
○ 獣医学コミュニティーの内向きの意見という印象を持たれる書きぶりではなく、国民的な視野で獣医学を国民生活の向上にどうやったら役立てられるのかということがにじみ出てくるような書きぶりにすることが大事ではないか。
○ P8の2つ目のパラグラフ「毒性試験の作業が挙げられる」は「毒性試験への関与が挙げられる」としたほうがよい。
○ 定員を増やすと教育の質が低下するという考え方があるが、薬学部の例を見ていると、大学数が非常に増えたことで確かに定員割れや質の低下等の現象は出ているが、国家試験を受けて薬剤師になる1万1,000人位は、ほとんど昔とレベルが変わっていない。国家試験があれば一定の質は保証され、時代の要請に応え数も増え、社会的な地位・認知も得られて、政治家まで3,4人出てしまう位の大きな組織になってきている。獣医学についても、質が落ちることを心配して入学定員の制限を叫ぶべきではない。

(P12~P13について)
○ P9の「免許を持ちながら獣医療に従事していないものが相当数いる」との記述は、表現が消極的ではないか。例えば医師免許保持者が証券アナリストになったことでバイオ産業が発展していくこともあるのであるから、免許をとった人が獣医療に従事せず、ほかで新しい分野を開拓してくれるというのは、多様性のある社会においては悪いことではない。
○ 「免許を持ちながら獣医学とは無関係な仕事についている者の数が相当数いる」と書いたほうがはっきりするのではないか。
○ 他分野で活躍しているというのであれば賛成だが、3万5,000人の免許保持者中、4,000~5,000人が獣医療に従事していないという現状をどう考えるのか、という問題意識からこの文言になったのではないか。
○ 獣医療に従事していない4,000~5,000人のためにも、ダイバーシティーマネジメントやっていかないと、いつまでたっても男社会であって女性の活用が進まないのではないか。
● 学校の先生も含めた獣医事に全く就いていない人は4,000人程度で、その中には、就業の環境が整っていないため家庭に入って戻ってこられないといった女性の人数も含まれている。
○ 異業種に行った人材は、そこでまた活躍して、そのバックグラウンドを使ってくれるから何の問題もない。それよりも家庭に入った女性が活躍できないのが問題。
● 産休・育休等々女性の就業の環境整備については、都道府県でも大分進んできている。
● ここの記述は、女性の活躍の促進等といった形で修正させて頂きたい。
○ 3.の大学院の学位の取得者について、例えば薬学をはじめ他の分野と積極的に競争する人材である基礎がわずか62人となっており、こんなに少ないのは大きな問題。基礎分野の教員数が少ないかというと、決してそうではなく、かなり充足している。
○ 教員数は結構いるのに大学院生が基礎分野にシフトしない原因は、そういう分野に楽しい職場があること等について大学側のPRが足りないからではないか。産業動物獣医師への希望が少なかった時代に、積極的にPRすべきだとしたところ、大分変わってきた。
○ ライフサイエンス分野に行く学生が多い大学と少ない大学とがはっきりしており、教員に影響されている部分が大きいのではないかと感じる。
○ 基礎獣医やライフサイエンス等は畜産分野の研究者がかなり占めており、獣医学という領域にとどまらないで広く見れば、畜産分野の方からはかなりの進学者がいる。
○ 競争というよりも、共生という視点が重要なのではないか。獣医師は養成コストが非常に高い。例えばアニマルサイエンス等での基礎の獣医部分や応用動物科学の部分等では資格等がないので、獣医師である必要はない。獣医師でなければならない分野は獣医師がやり、畜産分野が戦後なし得てきたようなところについては、競争ではなくて共生という形でうまく使い分けていく。そういう視点が重要なのではないか。
○ 16国公私立大学の教員は、ほとんど獣医師が占めており、他学部に比べ、他分野出身の教員が少ないのではないか。最近、医学部でも理工学部等いろいろな分野から入ってきている。そういう面では、教員養成・教員募集の際に、もう少し意識的に様々な分野の教員に来てもらうことが、獣医学の活発化につながる。
○ 獣医学出身者が多いということと、自大学出身者が多いということと、男性が多いということで、日本の獣医系大学は後進国に近い。
○ そろそろ目を開いてもう少しグローバルな展開を考えていかないと対応できなくなってしまうのではないか。
○ 学部の定員が930名に対して、大学院の定員112名はあまりにも少な過ぎるが、大学院の定員を多くした場合には、大学院に進学後の出口を明確に用意しておかなければならない。

※ 資料1について、追加意見等の調整を含め座長一任とされ、国民からの意見募集を行うこととし、議事は終了した。

(了)

お問合せ先

高等教育局専門教育課