資料2 動物用医薬品(生物学的製剤)の研究開発に関わる獣医師について

動物用医薬品(生物学的製剤)の研究開発に関わる獣医師について

1.開発現場における獣医師の役割

(1)基礎研究から実用化(製品開発・製造技術)に至るトランスレーショナルリサーチの主導に、獣医学的知識(微生物学、分子生物学、生化学、生理学、免疫学、病理学、実験動物学、毒性学、臨床学など)の多くが生かされている
(2)基礎研究段階での病原体(ウイルス、細菌、原虫など)の操作では、獣医学以外の履修者(分子生物学、生化学、微生物学などの専攻)でも活躍できるが、製品開発段階以降の対象動物を用いる安全性・有効性の評価では、宿主(動物)全体の観点から病態を正しく捉えることが出来る獣医学履修者の役割が大きい
(3)動物を用いる感染試験、野外で発生する疾病の病性鑑定などにおいては、疾病に対する基礎知識(微生物学、病理学、免疫学、実験動物学など)の他、獣医学領域の幅広い専門的知識(前記に加え、臨床学、公衆衛生学など)を必要とする
(4)臨床現場で動物の生理や疾病等に関する基礎的知識・意見が求められた場合に即応し、製品の選択や適正使用に関する啓蒙、学術情報などの提供ができる
(5)臨床現場で求められるニーズを科学的に分析して的確に評価し、研究企画、製品開発、学術支援などの多分野に還元できる能力を有する

2.開発現場における獣医師の課題

(1)獣医師法、薬事法、感染症法、カルタヘナ法など関連法規に関する教育の充実
(2)教科書的な知識・教育だけでなく、畜産現場や関連製造業に関する最新情報の習得(幅広い知識を学ぶ機会=卒後研修の必要性)
(3)疫学などの獣医統計学に関する教育の充実
(4)獣医学的知識と実践的語学力を兼ね備えたグローバルに活躍できる人材(技術者)の育成

3.動物用医薬品開発企業における獣医師確保策

(1)現状
 ・需要:2~5名/年(複数企業平均)
 ・募集:応募者は少なく、採用は容易でない
(2)確保策
 ・家畜感染症の予防に対する理解と重要性の認識(大学)
 ・学外研修による予防診断技術の基礎的知識の習得(大学・企業)
 ・修学資金の給付と待遇改善(企業)
 ・体系的生命科学を履修した高度専門職としての社会的処遇の改善

4.参考資料

(1)これまでの獣医学出身者の活動と需要状況について
 1)動物用医薬品(生物学的製剤)の研究開発に関する業務
  ・野外材料の血清学的検査
  ・野外症例の病性鑑定(病原体の分離・同定、病理検査)
  ・病原微生物の生物学的研究
  ・病原微生物の分類学的研究
  ・病原微生物の遺伝子工学的研究
  ・各種検査法の研究開発
  ・動物用医薬品(生物学的製剤)の製造技術開発・製品化
 2)動物用医薬品(生物学的製剤)の製造に関する業務
  ・製造管理者
  ・製造管理責任者
  ・品質管理責任者
  ・工程試験責任者
 3)動物用医薬品(生物学的製剤)の製造販売に関する業務
  ・総括製造販売責任者
  ・品質保証責任者(製造販売品品質管理(GQP)業務)
  ・安全管理責任者(製造販売後安全管理(GVP)業務)
  ・製造販売後調査(GPSP)に関する業務
  ・安全性に関する非臨床試験(GLP)に関する業務
  ・臨床試験(GCP)に関する業務
 4)その他全般的業務
  ・微生物等取扱安全管理に関する業務
  ・実験動物取扱安全管理に関する業務
  ・各種契約及び知的財産管理に関する業務
  ・販促活動及び学術活動に関する業務
  ・診療業務(指示書交付)

(2)今後の獣医学への要望
 ・医薬品開発等の非臨床的な業務に携わる業種に関する教育の充実
 ・企業等のグローバル展開に必須となる知識・語学力強化の教育の充実
 ・獣医学領域を中心とする企業戦略あるいはマネージメントに関する教育の導入
 ・獣医学領域を中心とする知的財産及びその管理等に関する教育の導入
 ・獣医学領域を中心とする試験結果分析に必要となる統計学に関する教育の充実
 ・獣医疫学に関する教育の充実
 ・産業動物(牛、豚及び鶏等)の臨床獣医不足解消のための対応
 
(文責 一般財団法人日本生物科学研究所 布谷鉄夫)

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