今後の医学部入学定員の在り方等に関する検討会(第7回) 議事録

1.日時

平成23年7月7日(木曜日)午後2時30分から午後5時まで

2.場所

全国町村議員会館2階会議室

3.議題

  1. 自由討議
  2. その他

4.出席者

委員

安西 祐一郎、片峰 茂、木場 弘子、栗原 敏、黒岩 義之、桑江 千鶴子、真田 弘美、妙中 義之、丹生 裕子、永井 和之、中川 俊男、中村 孝志、西村 周三、矢崎 義雄、山本 修三(敬称略)

文部科学省

鈴木文部科学副大臣、磯田高等教育局長、新木医学教育課長、医学教育課植木視学官、玉上大学病院支援室長、小野医学教育課長補佐

オブザーバー

(厚生労働省医政局)村田医事課長

5.議事録

 【安西座長】  それでは、始めさせていただきます。お忙しいところ、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。会議に入ります前に、この会議は冒頭より公開とさせていただいております。よろしくお願い申し上げます。
 それから、議事に先立ちまして、委員の交代について御報告を申し上げます。坂本委員から辞任のお申出がありまして、真田弘美委員に御出席いただくということになりました。真田委員から一言御挨拶をお願いします。

【真田委員】  真田でございます。坂本すがが看護協会協会長に就任いたしました関係で、私、副会長の真田と交代いたしました。不慣れではございますが、どうぞよろしくお願いいたします。

【安西座長】  ありがとうございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 今日はヒアリングはありませんで、委員の皆様の間でもって今までのことを踏まえまして討議を行っていただくということを予定しております。前回の会議で委員の皆様に御了解を既に頂いておりますけれども、中川委員の御説明をまずしていただければと思っております。その御説明の後、質疑応答を行わせていただいて、それから事務局から資料配付させていただいている、その説明を事務局の方でしてもらいます。その後、自由討議とさせていただければと思います。今日は、片峰委員からも資料が出ておりますので、片峰委員からは自由討議のときに話をいただければと思っております。
 それでは、中川委員のお話の前に、事務局からまず資料の確認をお願いします。

【植木視学官】  配付資料の確認をさせていただきます。1枚目、座席表、1枚物でございます。2枚目に第7回、今回の検討会の議事次第の1枚物をお入れしております。次に、これも1枚物でございますけれども、本日の委員の御出欠の一覧でございます。
 続きまして、資料1といたしまして中川委員から御提出の医師養成についての日本医師会の提案というワンセットでございます。次に資料2といたしまして、長崎大学、片峰委員からの保健医療分野における長崎大学の国際戦略という1セットの資料。続きまして資料3といたしまして、これまでの検討会において出された主な御意見(第6回終了時点)という3枚物の資料でございます。続きまして資料4-1、更に御意見を頂きたい論点ということで1枚物の資料でございます。その次に横でございますけれども、資料4-2、御意見を頂きたい点に関する参考資料、ワンセットの資料でございます。最後に参考資料1といたしまして、医師国家試験改善検討部会からの報告書の全文をおつけしております。乱丁・落丁等ございましたら教えていただければと思います。
 以上でございます。

【安西座長】  よろしいでしょうか。それでは、まず中川委員からお話をいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【中川委員】  ありがとうございます。それでは、資料1をお願いいたします。これは1月28日の第2回の本検討会で提案させていただきましたものを、その後、47都道府県医師会、日本病院会、全日病などの4病院団体、それから、全国医学部長病院長会議、全国大学医師会連絡協議会の役員の皆様など多数の方からたくさんの御意見を頂きました。それに基づいて修正しました。全医療界からの意見を集約してつくったという思いがございます。これは医師養成について、それを向上することと、医師偏在の解消の第一歩になればという思いを込めております。
 まず、1枚おめくりください。目次でございますが、医学部教育と臨床研修制度の二つの柱になっております。もう1枚おめくりいただいて1ページです。まず、医学部教育について提案させていただきます。医学部の1年生から4年生までなのですが、これは3ページの図の1.1を御覧になりながらお願いしたいのですが、まず高校の学習の繰り返しにならないように一般教養科目の在り方を見直して、大学6年間を通じたリベラル・アーツ教育によって医師としての資質を涵養(かんよう)するとしました。医学については、医学教育モデル・コア・カリキュラム、大学独自のカリキュラムを尊重しつつ、1年生から基礎医学、臨床医学、社会医学の履修を積極的に取り入れて臨床医学教育の一環として介護や福祉との連携も視野に入れた演習、見学実習、ボランティア活動を実施するというものです。
 医学部4年生の終了時なのですが、CBT、OSCEを課し、各大学が合格者に今までの見学型ではなくて参加型臨床実習の参加資格を与えるというものです。現在、実施されております共用試験では大学独自に合格基準を設定しているのですが、全国統一の判定基準の導入を目指したいと思います。参加型臨床実習の内容は、モデル・コア・カリキュラムを尊重し、学習内容は医道審議会医師分科会医師臨床研修部会等でフォローし、文部科学省と厚生労働省が連携して参加型臨床実習の水準向上のために必要な支援を行っていくというものです。
 次、2ページをお願いします。医学部の5年生、6年生なのですが、見学型ではなくて参加型の臨床実習を行う。参加型臨床実習というのは、CBT、OSCEに合格し、医師国家資格の取得を目指す学生が指導教員のもとで医療チームの一員として患者の診察、診断、治療などに参加する実習とするというものです。また、5年生終了時又は6年生のときに指導教員や地域医療の代表者等により一般面接を行って、医師になるための必要な援助といいますか、指導を行っていくといたしました。この面接は、いわゆる落とすためのものではないという意味でございます。
 指導教員については、現場では非常に不足しているという声をたくさん聞きます。日本医師会は、指導教員の確保と指導力の向上のために国に対して十分な財源の手当てと対策を求めます。医学生については、必ず指導教員のもとで参加型の臨床実習を行うのですが、医療事故に遭遇するのではないかという不安もございます。参加型臨床実習を行う医学生の公的身分保障を求めていくとともに、学研災や付帯賠責等の加入を推進したいと思っております。
 次に4ページ目には基本的臨床手技の到達目標としてモデル・コア・カリキュラム、それから、5ページには臨床実習における医学生の医行為の違法性の阻却についての資料でございます。
 次に6ページをお願いいたします。医師国家試験についてなのですが、現在、医学部6年生は知識問題を含む医師国家試験対策に多くの時間を割いています。しかし、医学知識については、現在、おおむね4年生修了時に受験するCBTでも高度な内容が課されています。そこで、日本医師会は医学知識のみの評価は4年生終了時のCBTの1回に絞り込んで、以降は臨床実習によって培われた能力の評価に特化することを提案したいと思います。
 医師国家試験の内容としては、上級OSCEに相当するものとして、医学部5年、6年の参加型臨床実習を通じて取得した深い医学知識及び技能に基づいてプライマリ・ケアを中心に適切な臨床推論が行えるかどうかを客観的に評価する。また、もし国家試験に不合格になった場合なのですが、そういう方は出身大学の参加型臨床実習に引き続き参加できる仕組みを検討してはどうかと思います。6ページの下のところに臨床研修制度の基本的な方向性を書きました。これは2000年11月の基本三原則なのですが、今後もこの三原則は堅持すべきと考えております。
 7ページに移りますが、臨床研修制度の基本的な方向性として4点です。まず、一つ目は基本的なプライマリ・ケア能力を獲得し、地域医療を担うことができる医師を養成するため、地域社会で充実した研修体制を整備すること。二つ目として、研修希望者数と全国の臨床研修員の募集定員数をおおむね一致させる。都道府県の募集定員は人口や地理的条件など地域の実情を踏まえて設定する。三つ目なのですが、臨床研修医が単なる労働力として位置づけられることなく研修に専念できる環境を整備する。最後に臨床研修医の研修先における給与水準を一定の範囲にするということで、注7を御覧ください。例えば2007年採用の1年次研修医の給与が最大1,075万円、平均413万円となっていますが、2年次研修医はこのときに最大1,373万円にもなるところがあります。医師になってすぐにこういう高額な給与をもらうことは問題であろうと考えます。
 次に8ページを御覧ください。研修プログラムです。9ページの図2.1にそれをまとめてありますが、臨床研修の1年目はプライマリ・ケア能力の獲得に一定の目途をつけることを目指し、内科、救急医療、地域医療、精神科を必修として約1年間研修する。それぞれの必修科においては介護、福祉との連携も視野に入れる。2年目は将来専門としたい診療科のプライマリ・ケアを中心に研修するというものです。もし専門科が決まっていなければ、1年目に引き続き多くの診療科を巡回することも可能にするというものです。
 最後に10ページから11ページなのですが、ここが一番重要だと考えております。研修システムなんです。12ページにその概念図がありますが、まず医師研修機構というものを都道府県ごとに設置する。各都道府県の医師研修機構を束ねる全国医師研修機構連絡協議会を設置する。この連絡協議会は人口や地理的条件など地域の実情を踏まえて研修希望者数と全国の臨床研修医の募集定員数がおおむね一致するよう都道府県ごとの臨床研修医募集定員数を設定する。
 二つ目、各都道府県の医師研修機構は、全国医師研修機構連絡協議会が設定した当該都道府県ごとの募集定員数をもとに当該都道府県下の研修病院における臨床研修医募集定員数を調整する。
 3番目、各都道府県の医師研修機構は、当該都道府県の医師会、行政、住民代表、大学、大学以外の臨床研修病院で構成し、次のような機能を担う。地域で特色ある研修プログラムの検討・提案。当該都道府県の基幹型、協力型臨床研修病院、研修協力施設の登録、当該都道府県の研修病院の研修内容のフォロー、研修水準の向上・支援。
 次に2.ですが、臨床研修センターというものを設置する。これは各大学に設置するのですが、まず一つ目、研修希望者は原則として出身大学の臨床研修センターに登録し、研修先についての希望を提出する。研修希望先の地域は問わない。11ページ、各大学の臨床研修センターは、研修希望者と面談し、研修希望先を確認する。必要があれば臨床研修センターがアドバイスを行い、研修先を選定する。研修先に応募した結果、希望がかなわなかった場合、改めて臨床研修センターが研修希望者と相談し調整する。三つ目、臨床研修病院は、臨床研修医がどの大学の臨床研修センターに所属しているかも含めて、都道府県の医師研修機構に臨床研修医の受入れ状況を報告するというもので、12ページの概念図でございます。
 最後のこの「出身大学の臨床研修センターに登録し」というところは、現在、民間医局と呼ばれている民間の医師紹介業者に登録している医師が数千名と言われています。そこでいわゆる根なし草という、余りよろしくない表現で非常に問題になることが起きていますので、それを解消するということも含めてこういう提案をさせていただきました。ありがとうございました。

【安西座長】  ありがとうございました。
 大変具体的な提案を頂きましたけれども、質問、あるいは御意見があれば委員の方からいただければと思いますが、いかがでしょうか。どうぞ。

【丹生委員】  県立柏原病院の小児科を守る会の丹生です。いつも皆様、先生方のお話を聞かせていただき、私自身、勉強をさせてもらっている次第でございます。今の中川委員のお話、本当によいアイディアばかりだなと私なりに感じております。この中で1点、質問させていただきたいのですが、10ページ、研修システムの中の一番下の2.の臨床研修センター、(1)、最後の「研修希望先の地域は問わない」と明記されているわけですが、その意図、どのような思いでそのような文章を入れられたかというところをもう少し説明していただきたいと思います。

【中川委員】  1月28日の第2回の本検討会でこういう発表をしたものが、臨床研修は医学部がある当該都道府県で原則として行うとしたんです。それは偏在解消策の一つとして、大都市だとか、有名病院だとか、給料の高いところに集中しないということを目指したのですが、全国の先生方、医療関係者から非常に反対が多くて、自由に研修先を選ぶということはちゃんと担保してあげるべきではないかということで、こういうふうに修正しました。それでは、そうやってしまうと、これが偏在の解消の第一歩になるのかという御意見もございますが、そこで問題は、ここに書かせていただきました研修希望者数と募集定員数、この数をおおむね一致させるというところがポイントです。このおおむね一致させることによって、11ページの(2)にありますが、希望してもかなわないというところも当然出てきて、結果的に偏在解消につながるのではないかと思っております。よろしいでしょうか。

【丹生委員】  はい。ありがとうございました。

【安西座長】  ありがとうございました。
 ほかには御質問、御意見ありますでしょうか。

【桑江委員】  私も中川先生の方からこれを頂いたときに、非常にすばらしいアイディアだとは感じておりまして、少しマイナーなことかもしれませんけれども、こうしたらもっとすばらしくなるのではないかと思うことを少しお話しさせていただきたいのが、一つは、今お話があったように全国の研修の人数を一致させるということが、初めは少し自由度が狭くなるのではないかということで引っかかったのですけれども、先日の東北大学の先生のお話によりますと、結局、定数よりも多くすれば、その分だけ都会に行くだけで、地方に流れないということをおっしゃっていらしたので、それはそのとおりだなと思いまして、ある程度やはり自分の希望を通すためには努力をしていただくということも必要かなと思いまして、それは非常に納得いたしました。
 それで、もう一つ、研修病院の質が、どうして都会に流れるかというところが、現場から少し言わせていただきますと、地方には地方なりのローカルルールが非常に多くて働きにくいというところが実際問題あるわけですね。そうすると、ある程度努力しなくても研修医の先生方が来るというような研修病院ということになったときに、果たしてその研修病院での研修の質が担保されるのか。ある程度競争原理が働くからこそ、それは先ほどの給与の問題もあるのですけれども、ある程度金額を高くしてきてもらおうという努力の一つかなと思っておりますけれども、どうやったらそこで質が担保できるのかということの病院側の努力をどのようにして担保していくかというのは非常に問題で、若い先生方は、ある意味で患者さんが多く来てきちんと指導してくれるところに行きたいわけです。
 それが患者さんの数が少ない、あるいはきちんとした指導が受けられない、あるいはパターナリズムが色濃く残っている、そういうところで前回、少し前にお話しさせていただきましたように、女性医師などは色濃く女性蔑視が残っているような地方では働きにくいといった声もございます。ですので、努力してもなかなか自分の希望がかなわないときに、一応、その大学に残れるか。そういう担保が必要かと思うのと、研修病院の質を奨励、指導、なるべく医者の中で担保していきたいなということが一つございます。
 あと、将来的に専門医制度というのがやっぱりネックになっていまして、キャリアプランの中でです。その初期研修をやったところでそのままいられれば一番いいと思うのですが、ある程度専門医制度を乗り越えていくためには、そこの専門研修施設ではないとだめということで、例えば産婦人科ですと、普通の産科婦人科の専門医をとった後の例えば母体胎児専門医をとろうと思いますと、周産期センターというところに3年以上いないといけないんですね。そうすると、都道府県の中には周産期センターがないところがあるんです。そうすると、その地域で残って周産期の専門医にはなれないという決定的な問題とかもあるので、病院側の努力をどのようにして担保していくのかというのが一つお聞きしたいのと、あと、内科と同時に外科系が1年目のところにないので、できたら外科を入れていただけると、これは小さなことかもしれませんが、有り難いなと思って、でも、全体的には大変すばらしいと思います。

【中川委員】  ありがとうございます。まず、10ページを御覧いただきたいのですが、この1.の医師研修機構という役割が非常に大きく重要である提案です。それで、その医師研修機構の役割、(3)のところに当該都道府県の研修病院の研修内容のフォローとか、研修水準の向上・支援というのがあります。研修機構の最重要の仕事は全国の連絡協議会が全都道府県の臨床研修医募集定員数を決めることです。そのときに研修病院の質だとか、レベルだとか、内容とかがすごく関係しますので、そういうことも含めて決めていくのだということです。
 これは研修場所を、医学部が所在する当該都道府県に原則として限定しなかったのは、例えば千葉県であるとか、静岡県であるとか、人口が非常に多くて医学部が一つしかないところは一体どうするのだという御意見もございました。全くそのとおりですね。かつ臨床研修病院としては非常に評価の高い病院もございますから、そういうところも含めてこの医師研修機構連絡協議会で決めるということで、仕事がものすごく多くなると思いますけれども、ここが重要な役割になってきます。よろしいでしょうか。

【安西座長】  ありがとうございました。
 ほかによろしいでしょうか。

【黒岩委員】  全国医学部長病院長会議の黒岩でございます。今、中川先生の御意見、基本的に私たちとしても賛同するところでございます。卒前、卒後の一貫教育で医師養成の方向性を改革していくということと、それから、6年生の臨床実習の空洞化を改革していくということは、従来、私たち全国医学部長病院長会議におきましても同様に主張してきたところでございます。
 それで、問題点といたしましては9ページでございますが、2年目から既に将来専門とする診療科に入るという点です。こういたしますと現在は、いわゆる自分の専門を決めるのが卒業して2年の研修、あるいは1年半ぐらいの研修が終わったところぐらいで、将来、自分がどこに進むかということを一人一人が決めるという、そういうシステムでありますが、これを見ますと卒業して1年経(た)ったところで自分が眼科に進むかとか、皮膚科に進むかとか、そういうことをある程度決めるということでございます。このところは現在のシステムよりもかなり前倒しになるということになります。これが実現できるためには、中川先生がおっしゃっているような、現在の卒後の1年目の研修でやっているものを6年生の方に少し内容的に、実質的に移行していく、そういうようなことも並行しておこなっていくということが必要と思います。基本的には私たちもそういう方向性に賛成でありますが、ただ、この自分の専門を決めるのが卒業して1年経(た)ったところがいいのか、1年半ぐらいのところがいいのか、2年経(た)ったところがいいのか、ここら辺のところはもう少し議論の余地があるのではないかと思います。
それからあと、大学における帰学率の問題、出身大学にどれだけ戻るかという問題について、臨床研修がスタートした後、帰学率が低下している大学と低下していない大学があるわけでございます。その帰学率を維持するためにはどうしたらいいのかという、そういう努力といいますか、各大学が魅力を高めていくということを並行していかなければいけないということは、当然のことだと思いますけれども、付け加えなければいけないことかと思っております。

【中川委員】  ありがとうございます。簡単にお答えします。臨床研修が1年終わったときに専門科を決めるというのは、5年生、6年生の参加型臨床実習がある程度順調に根付けば、これは決められるのだろうと思います。少し前倒しで決めるべきだと申し上げるのは、教える方も、それから、研修を受ける方も、将来この科には来ないとか、教える方もどうせ来ないのだろうと思うと、どうも身が入らないという声が実は少なからず聞こえているんですよ。将来の自分の専門とする診療科が決まれば、両方とももっと身が入るだろうという思いも込めて、こういう提案をさせていただきました。

【栗原委員】  よろしいですか。

【安西座長】  はい。

【栗原委員】  研修病院の質が問題になると思います。先ほどもそのようなご意見がありましたが、研修指定病院で多くの症例を経験できるか。ベッド数が一つの目安になるということで、基準が決められています。また、その病院に指導者としての資質を持った医師がいるかどうか。これは非常に重要な問題だと思います。
 それからもう一つは、研修が終わったときの評価の基準と体制が重要と思います。多分、医師研修機構が評価されるのではないかと理解していますが。
 もう1点、今のマッチング制度との整合性をどのようにされるのか。大変いいアイディアだと思うのですが、これらの点について、もし具体的にお考えがあったらお聞かせいただきたいと思います。

【中川委員】  最後のマッチングの方ですけれども、これは既得権益との戦いになると思うんですよ。それを何とか突破口を開いてやっていかないとならない。かなりハードルが高いと思いますけれども、偏在の解消に結びつけましょうよという医療界の全体的な合意をとりつける努力をしなければならないなと思います。
【栗原委員】  それと、今のようなシステムで若い医師が全国的に散らばって研修するのは結構ですが、研修後、どうやって医師として研鑽(けんさん)しキャリアパスを作っていくのか心配です。生涯学習システムを考えていかないと、質の高い医療システムができないのではないかと懸念しております。

【安西座長】  ありがとうございました。
 それでは、自由討議の時間をかなりとってありますので、中川委員に対する御質問、あるいは御意見もそちらの方でももちろん結構でありますので、そうさせていただければと思います。前回までの検討会で大変多くの貴重な御意見を頂いてまいりました。それらの意見につきまして事務局側でもってまとめてもらっております。また、これから御意見を頂きたい論点等々もまとめておりますので、事務局からそれらについて簡単に説明をお願いして、その後、自由討議に移らせていただきます。
 それでは、事務局にお願いします。

【植木視学官】  御説明申し上げます。これまで委員の方々はもちろんのこと、ヒアリングさせていただいた先生方にも医学部の入学定員を始め、これに関連する諸問題について非常に多岐にわたる御意見をちょうだいしております。その様々な御意見を座長の御示唆のもとで事務的に整理しましたのがお配りしている資料3、これまでの検討会において出された主な御意見でございます。ここでは御意見を大きく四つに分けまして、そのそれぞれについて主な御意見を幾つか具体的にお示ししております。その際、御発言の趣旨を損なわない範囲の最低限の修正にとどめております。
 まず、1.の医師の数や質に関する論点といたしまして、例えば(1)として医師数の推計につきましては、病気が多くなる65歳以上の人口は今後増加していくことを考慮に入れるべき、あるいは需要は予測できないことを前提に定期的に医師の定数を見直していく仕組みをつくるべきなど。(2)の将来の医療ニーズにつきましては、将来的には若い人が減って高齢者が増え、ケアの内容が変わってくる。かつては開業医が担当していた看取(みと)りは病院の勤務医が行うようになってきているなど。(3)として財政、社会保障につきましては地域のニーズを議論した上で国民の税金としてどこまで払うのか。地域のお金でどこまでやるのかという議論をしていくことが必要、など。(4)として定員増に伴う質の問題につきましては、留年生が増えつつあるなど、医学生の学力低下という問題を考えなければならないなど。(5)として、医学教育の改革につきましては、多様なニーズがこの10年くらいで出ており、医学部も機能的な分化をしていく必要がある。アメリカ型のメディカルスクールについては賛否両論があるなど。(6)、今後の定員増につきましては、既存の医学部の体制を強化しながら、医学部定員増で対応していくべき。2022年以降は医師が余ってくると推計されており、この余った医師をどうするのか、我々は将来にも責任を持たなければならない、など。(7)の新設による対応につきましては、既存の医学部の入学定員を増やしているが、教員も増えておらず、周りの施設もないという状況であり、この対応を現場に強いるのは限界があり、医学部を新設すべき。医学部が東西に偏在しているため、医学部を東日本に新設すべき。医学部を新設してから医師が働くようになるまで時間がかかることを考えると、教員などを増強しながら今の医学部の定員増で対応して医師を育ていくべき。将来的に医師数が過剰になった場合を考えると、既存の医学部の定員数の調整でやっていくべき。医学部新設は到底考えられないなどの御意見を頂いております。
 次に2.といたしまして医師の配置システム等に関する論点といたしましては、(1)地域偏在につきましては、地域偏在の問題では人口に加えて面積も考慮していくべき。同じ県内でも相当の格差があり、都道府県ごとに見るだけでは不十分など。(2)の診療科偏在につきましては、救急や産婦人科、麻酔医が不足している。日本学術会議や日本医学会などのレベルで専門医の数と質の規制をしてほしいなど。(3)医師のキャリアパスにつきましては、地域で働く若手の医師に例えば専門医となれるようなキャリアパスを見せることで、地域医療へのモチベーションを働かせる必要がある、など。(4)の医師派遣システムの再構築につきましては、大学病院と地域、地域の基幹病院が密なネットワークをつくりながら、循環型の医師養成システムをつくっていくことが大事である。透明性を確保しながら地域の大学が医師派遣システムに関与していってほしいなど。(5)の医師の勤務環境の改善につきましては、勤務医の労働環境が過酷である。女性医師のワーク・ライフ・バランスが全く解決されていないなど。(6)の他の医療職種等との連携につきましては、医療クラークやコ・メディカルの方をできるだけ現場に増やして、医師や看護師をサポートできる体制が必要。医工連携とか、医療経済論とか、医療政策論とか、つまり、学際的分野の人材を養成することも医学部のミッションの一つであるなどの御意見を賜りました。
 続きまして3.新しい医療ニーズに関する論点としましては、例えば(1)として基礎研究やイノベーションを担う医師の養成につきましては、基礎研究医の待遇を改善する必要があり、研究ポストを拡充するとともに、研究費の将来の不安を解消することが必要など。(2)の国際貢献等、グローバルな視点で活躍する医師につきましては、海外の貧しい地域への医療提供など、医療における国際協力も必要な論点であるなど。(3)の総合診療能力を持った医師につきましては、地域で一通り大体の病気は治す、大体の相談には応じられるという医師を育てることをこれからの医学の一領域として認知していっていただきたいなどの御意見がございました。
 最後の4.これまでの取り組みの評価といたしましては、(1)として地域医療人材養成、すなわち地域枠等について、そして(2)として研究医養成につきまして、例えば地域枠というアイディアはよいことだ。地域にとどまるようなインセンティブが付与されるような地道な対策が必要だ。研究医となる医師の不足は深刻。臨床経験を持った医師が基礎研究に入ってくることができる環境が必要などの御意見を頂いております。
 以上のような整理をさせていただきました。これらを踏まえまして事務局として、もう少し議論を深めていただく必要があるのではないか、あるいはこれまでの議論では余り触れられていないために、今後、何らかの御意見を頂くべきではないかと思われる事項について、幾つか挙げさせていただきましたのが資料4-1の更に御意見を頂きたい論点でございます。まず、1点目の医学教育の改革についてでございますが、地域医療を担う医師養成のため、大学ではどのような教育を行うべきかとの観点でございまして、特に地域に定着する医師をどのように養成するか。あるいは地域ニーズの高い総合医の養成をどのように進めるか。その他、医学教育の質を高めるためにどのような改革が必要かという問題でございます。
 二つ目が医師派遣・確保につきまして、大学と自治体、関係機関が連携して医師の地域偏在を解消しつつ、一人一人がキャリアパスをつくり上げられる仕組みをどのように構築したらよいかという問題でございます。三つ目がグローバルな視点での医師養成につきまして、日本の医師が世界で活躍できるようにするためにどのような取り組みが必要かとの観点でございまして、特に国際標準に満たないと言われる臨床実習の充実など、国際的通用性のある人材養成について学際的な分野の人材養成につきましてであるとか、あるいは学際的な分野の人材育成をどのようにしたらよいか、あるいは医療における国際貢献をどうすべきかという問題でございます。最後に四つ目といたしまして研究医の養成につきましては、大学での基礎研究や企業での研究開発等を担う医師の育成、確保のためにどのような取り組みが必要かという観点でありまして、例えば卒後臨床研修との両立など研究医のキャリアパスをどのようにすべきかという問題でございます。
 次の資料4-2でございますけれども、今、1枚紙で申し上げました論点につきまして、御議論いただく際に御参考いただくために用意をいたしました関連データ等の資料でございます。時間の関係もあるため、ごく簡単に御説明申し上げます。まず、1ページでございますが、医学教育の改革についてということで地域枠等の状況でございます。医師の地域偏在の解消に期待される大学における地域枠等の導入は、当省で把握しております平成9年度以降、一貫して増加しておりまして、平成22年4月現在で、67大学で1,171人の募集人員となっております。
 次のページが大学別の地域枠の状況でございます。これは先ほどの地域枠等について、大学別の内訳を一覧にしたものでございます。
 3ページ、地域枠で入学した者の定着率でございます。こちらに挙げております6大学は従来地域枠等を導入しておりまして、地域枠等による学生が既に卒業している大学でございます。また、その多くは現在のような奨学金を出していない地域枠でございますけれども、いずれの大学におきましても卒業後の同一都道府県内への定着率は、その他の入学者が平均54%に対して地域枠等入学者は平均89%ということで、地域枠等入学者の定着率が高いということが分かります。
 4ページに参りますと、地域医療を担う医師養成のための教育ということで、旭川医科大学のように6年間を通じた全学生を対象とした地域医療教育などを行うということなど、各大学におきまして地域医療を担う医師を養成するために様々な工夫を凝らした取り組みが進められております。
 5ページが地域医療等に関する教育の実施状況でございます。地域医療に関する教育は、上の円グラフのブルーの部分でございます。この大部分の大学で実施されております。また、右下の円グラフがございますけれども、入学後、早期に実際に医療現場を体験する学習、いわゆるアーリー・イクスポージャでございますが、これは日数の違いはあるものの、全ての大学で1年次から行われております。
 6ページに参りますと、総合的な診療能力を持つ医師の養成ということで、地域医療につきましては専門に特化せず、総合的な診療能力を持つ総合医に対する期待が高うございます。左上のプライマリ・ケアというのは、一般的な診療において頻繁にかかわる疾病等に対応することでございますけれども、これは総合医には必須の分野でありますけれども、これを独立した授業科目として開設している大学が半数以上に上ります。また、総合医の養成につきましては、筑波大学の水戸地域医療教育センターが地域の病院と共同して積極的に取り組んでおります。また、右側に一覧にいたしましたとおり、複数の地方公共団体からも総合医の制度化、あるいは養成等について御要望を頂いております。
 7ページに参ります。学部教育の現状でございます。学生が臨床実習を始める前に知識や技能を評価する試験が共用試験でございまして、一つはCBT、これはコンピュータによる出題、あるいはすぐまた後ほど御説明申し上げますが、OSCEといった方法で試験をしております。CBTにつきましては多くの大学で進級の要件として利用しているものの、実はその合格基準は各大学が独自に設定しておりまして、まちまちであるという問題がございます。右側に記載しましたのは、医学部6年次の教育内容でございます。多くの大学では夏ごろ、大体7月を目途に講義や実習が全て終了しておりまして、その後は実際には医師国家試験の受験勉強に充てられているのではないかと推察されます。
 8ページに参りますと、OSCEでございますけれども、これは学生が模擬患者を相手に医療面接や診断等を行い、臨床能力を試す実技試験のことであります。臨床実習前のOSCEにつきましては、先ほどのCBTとセットで社団法人医療系大学間共用試験実施評価機構により大多数の大学で導入されておりますが、臨床実習後の各大学が行う卒前OSCEにつきましては、これを卒業要件としている大学は全体の4分の1程度にとどまっております。
 9ページに参りますと、医学部の教育の実施状況ということで、ここでは筑波大学を例にいたしまして、医学部の1年次から6年次までの学部教育の流れをまとめております。1年次から3年次にかけて医学の基礎を履修した後で、先ほどのCBT、あるいはOSCEといった共用試験を経て臨床技能学習に入りまして、6年次における総括的な学習や実習を経て最終的に医師国家試験を受けて医師免許を取得いたします。なお、他大学ではこの共用試験の実施時期、あるいは臨床実習の期間等が若干異なる場合がございます。
 10ページに参ります。医師国家試験の改善の方向でございます。厚生労働省に置かれております検討部会におきまして、医師国家試験の改善の方向について先月の9日に報告書が取りまとめられております。その中では試験内容につきまして臨床実習での学習に、より重きを置く方向が示される。それとともに試験にOSCEを導入することにつきましては、大学における実施状況を見ながら引き続き議論していくこととされております。
 11ページに参ります。こちらからは医師派遣・確保についてでございます。一つ目が地域医療支援センターの概要でございます。今年度から厚生労働省の事業として全国15カ所で先行的に実施することとされましたのが、この地域医療支援センターでございます。その目的は、都道府県が責任を持って医師の地域偏在の解消に取り組むコントロールタワーとして地域の医師不足病院の医師確保を図ることとされております。都道府県と大学等が密接に連携することで医師の地域偏在の是正が図られることが期待されるところでございます。
 12ページは、大学と地方公共団体、関係機関等との連携の事例でございます。医師派遣・確保のための取り組みは、この検討会でも御紹介いただきましたとおり、福島県立医科大学のように間接又は直接に医師をへき地の病院に派遣したり、千葉県のように医師はもちろん、患者も適宜循環させることで適切な医療体制を確立したりしている例がございます。
 13ページに参ります。女性医師等の復職支援の例でございます。出産、あるいは育児等で現場を離れた医師が復職する際の支援方策として東京医科歯科大学ほか、幾つかの大学等の例を挙げさせていただいております。
 14ページに参ります。研究医の養成についてでございますが、一つ目、研究医養成に関する現状でございます。左側のグラフのうち、特に折れ線グラフで示されておりますけれども、基礎系の博士課程入学者に占める医師免許取得者、いわゆるMDの割合が低下傾向にございます。右側は臨床医学論文数の経年変化でございますけれども、例えば2006年と2007年とを比較した場合に世界全体に対しまして日本では上げどまり、あるいは減少する傾向にございます。
 15ページに参りますと、基礎研究者の養成の課題ということで、基礎研究に携わる研究者が減少傾向にあることは、この検討会でも東京大学を例にいたしまして、清水医学研究科長(当時)から御紹介があったところでございます。
 16ページ、研究医枠による医学部定員増の取り組みでございます。医師免許を持つ基礎医学研究者の減少等に対応するために、平成22年度と23年度に合わせて23人の研究医枠による増員を実施しております。これを活用した取り組み例といたしまして、東京大学など幾つかの大学の取り組みを挙げさせていただいております。
 17ページに参ります。大学・大学院を一貫した教育プログラムの例でございます。従来の一般的な学年進行は、6年間の学部教育の終了時に国家試験を受けて医師免許、MDを取得した後で卒後の臨床研修、あるいは病院等における専門的な臨床研修を経て博士課程に進み、医学博士の学位、Ph.D.を取得しますけれども、その下のMD、Ph.D.コースでは学部4年次終了時点でまず博士課程に進みまして、医学博士の学位を取得した後で学部の5、6年次に進んで国家試験を受けて、ここで医師免許を取得する。
 あるいはその下の東京大学のように、学部の3年次から6年次にかけまして学部教育に並行して少人数特別教育を実施して医師免許を取得した後で、臨床研修に入る前に、まずは博士課程に進んで医学博士を取得させたり、あるいはその下の岡山大学のように学部の4年次から学部教育に並行してPre-ARTという博士課程の講義や研究を行い、卒後の臨床研修にも並行しまして博士課程の内容を履修させたりすることで、学部から大学院への進級を円滑にする工夫をしている例がございます。
 18ページに参ります。ここからはグローバルな視点での医師養成でございまして、国際的な教育の質保証ということで、アメリカのECFMGという、これは医師国家試験の審査団体からの通告でございますけれども、2023年から米国以外の医学部卒業生が米国で医師となるための国家試験の受験を米国の医科大学協会などの認証を受けた者にしか認めないということとされております。他方、日本の認証評価につきましては、その下に書いてありますが、大学教育全般に関することのみ評価制度が制度化されておりますけれども、医学教育に特化した評価は行われていない状況にあるため、この問題への対応は喫緊の課題でございます。
 19ページでございますが、各国の医師養成制度、これをごく簡単にまとめたものでございます。割愛させていただきます。
 20ページに参ります。臨床実習の状況についてでございます。右上の棒グラフにございますけれども、臨床実習の実施週数といたしましては、41週から50週が最多でございまして、多くの大学ではこれを5年次から6年次に行っております。国際標準の一つの目安として72週以上ということが言われておりますけれども、今後はより早期から臨床実習を行い、例えばできるだけこの臨床実習週数を増やして確保していく必要があろうかと考えられます。
 21ページ、最後のページでございますが、医科系大学において国際貢献は教育、研究、診療の全分野にわたって一定程度行っているというふうに認識されておりまして、その具体的な内容につきましても、教育面における学生の派遣、受入れ、あるいは海外での臨床実習など多岐にわたります。
 以上、事務局からの資料の御説明は以上でございます。

【安西座長】  ありがとうございました。
 それでは、今日は5時近くまで自由討議の時間とさせていただきます。今の事務局からの報告、また、先ほどの中川委員の御意見、御説明等々含めて御自由に御意見、御質問をいただければと思います。
 一言申し上げておきますと、医師の偏在、医師過疎の地域をどうするかということについて、名案がなかなか、これぞということはないのかもしれませんけれども、医師の数はこのままでいいのだという方向からはどうしてもやはり、地域の偏在をどうするかということにこたえなければいけないと思いますし、一方で、足りないのだ、もっと増やさなければいけないのだということの方からは、やはり偏在の多い方、大都会に固まっているということもありまして、そういうことをどうするのかということもありますし、医療費の問題もありまして、そういうことをシステムとして、何か1点だけこれをやりたいということではなくて、システムとして考えないといけないのではないかと思います。
 それから、医師のキャリアパスにつきましては、今ありましたように研究医、また、グローバルな医師の育成、あるいは医学部卒業生はいろいろな道があると思いますけれども、そういうことも含めて医学部外から見ますと、やはり医学の世界というのは、こう申し上げるとあれですけれども、閉じているというふうに見えざるを得ないので、そういうところも将来に向けて広がっていくように、医学部の教育につきましてもお考えいただければ有り難いなと思っております。
 もう一つ申し上げますと、地域枠について説明があり、これは個人的な意見でございますけれども、地域枠についてはちゃんといっているという雰囲気でありましたけれども、地域枠といっても、その地域枠出身の医師が本当にどこの何市、何町で働いているかということは分かっていないのではないかと思うんですね。その県にいるとか、そういうことは分かっていると思うのですけれども、県の中で偏在しているということが課題なので、地域枠が増えているから、もう偏在は解消しているのだという論拠にはならないのではないかと思われます。少し細かいことで申し訳ありませんけれども。
 それでは、皆様の方から是非御自由に御意見――もう一つ申し上げますと、副大臣はおられないですが、来年度に向けての概算要求ということもありますので、ある時点でもって中間のまとめというふうにしていかなければいけないと思います。できるだけ皆様の御意見を反映する形でやっていきたいと思いますので、どうぞ忌憚(きたん)のない御意見をいただければと思います。これで終わりにしますけれども、今までの検討会のこのまとめ、事務局でやってもらったのですけれども、自分が言ったのが抜けているとか、そういうことがありましたら、これもおっしゃっていただいて結構でございます。よろしくお願い申し上げます。どなたでも結構です。
 山本委員、どうぞ。

【山本委員】  今までの論点を整理して並べていただいて、よく分かりやすく御説明を頂きました。ありがとうございます。これまでの議論と今日のまとめの中で、このまま議論をしていくのに、議論の根拠になるものは何だろうなということをいつも考えてきたのですけれども、例えば医師が足りないということに関しまして、OECDのデータをもとに医師が足りないとか、あるいは地域偏在があるとか、科の偏在があるとかということを言っていますけれども、では、それは本当にどの程度、どのくらいあるのだといったようなデータはこれまでに出てきていないと思います。
 それから、今、座長がおっしゃったように県の中でも偏在がある。こうした問題も余り明確に出てきていない。この委員にさせていただいた以前から日本病院会として、地域医療再生のために、地域医療の実態をどう見える化しようかということに取り組んできました。しかし、プログラムの開発は、3.11対応のために少し遅れてしまいまして、やっと、まとまってきましたので、恐らく次回にはある程度のものが出せると思っております。その機会を頂きたいと思います。例えば医療の需要は予測できないというふうに論点整理の最初のところに書いてございますけれども、医療の需要が分からないままに医師を増やすなどということはあり得ないわけで、飽くまで患者さんがいて医師がいるわけですから、この地域の医療の需要はどうなっているのだということは、今までのデータ、たくさん厚生労働省、文部科学省にはありますので、こういうものを集めて、例えばGISに載せて地図情報としていろいろな組合せをすると、これが見えるようになってきます。
 そのようなプログラムを開発するのは重要なことだと考えます。医療情報についても、例えば人口動態とか罹患(りかん)率とか、あるいはレセプトからも患者さんの数とか疾患が出てきますし、そういうものをトレンドで変化を見える化し、そこから将来の予測もある程度考えることができる。また、医療の供給に関しましては、これは医師の数が今一番問題になっていますけれども、これも厚生労働省が2年に1回調査をして市町村単位で、トータルの数だけではなくて、専門科の数まで全部調査の数字があるわけです。これを集めて、それもトレンドで地図に載せて、その変化を見ることが大体できるようになってきました。そういうことを踏まえますと、地域医療が見える化され、そうしたものを踏まえて議論をすれば、より深まるのではないかと考えておりますので、次回、その機会を与えていただきたいと思います。

【安西座長】  ありがとうございました。
 次回に是非お話しいただければと思います。エビデンスベースでもって政策をつくっていくということは、確実にこれからの時代に大事でございますので、それは是非と思っております。事務局にも何とかデータをきちっと調べてもらいたいということは伝えておりますし、事務局も一生懸命やっております。ただ、なかなかきめの細かい地域のデータは、明日欲しいといってもなかなか難しいところはあるようでありますので、エビデンスをそろえるのと並行して仕組み、それをどういうふうにしていったらいいかという、そういう御意見は是非いただければと思っております。
 西村委員。

【西村委員】  今の山本委員の御指摘は大部分賛成なのですが、私個人としては一つ、今のお話に少し追加して、是非もう少し議論をというのを考えております。それは座長が最後におっしゃった話で、簡単に言うと地域枠を設定することの有効性と、それと総合医養成との関連。もちろん需要という観点から言うと、大変極端な話をすると、日本人の10人に1人ぐらいお医者さんになれば私たちの需要は満たされるという意味では、多ければ多いほどいいということはほぼ間違いないことで、しかし、それは非現実的であると思います。そうすると、どういうところが論点になるかというと、今回、外部のお話、ヒアリングをする中でやっぱり、総合医を養成することの意義というか、そこはもう少し突っ込んで、というのは、この先ほどの事務局の配られた6ページに地方公共団体からの要望がたくさん出ておりますが、たくさん「総合医」というワードが出てまいります。
 恐らくこれは実感的に、特に医師不足というのは、だから、これが論点でございますが、医師不足が総合医の養成によってある程度緩和されるのではないかという期待があるからこういう要望が出ていると私は推察いたします。そうすると、これは是非医師会のご報告との関連も中川委員にご指摘いただきたいのですが、もう少し突っ込んで医学部教育の中で総合医の養成に力点を置くかどうか。これはやっぱりもう少し突っ込んでやらないと、そんなことを期待してもらっても、そういうことをやっても不足はそんなに簡単には解消しないんだよということになるか、あるいは他方でやっぱり、こういう人を頑張って育成すると有効なのかという議論は、できたら先ほどの座長がおっしゃったことも含めて、例えばよく聞く話は自治医科大学の卒業生がうまくいっているという話も聞くし、同時に自治医大でやっても結果的には専門医志向となるのだというお話も聞きます。そのあたりもう少しデータがもし可能であれば欲しいし、私は個人的にはやっぱり、先ほどもあったように高齢者がかなり増える中で、専門性という深みをとるか、あるいはいろいろな病気を複合的にかかられた患者さんがわりとすぐにお医者さんと接することができて、そういうお医者さんの面倒を見てもらえるような状況をつくるか、これはやっぱりこれから高齢化の観点から言うと、これは素人の意見でございますので、間違っていたらお許し願いたいのですが、後者を重点的に養成するということが有効ではないかという印象を持っております。もちろん、これは私は専門外でありますので、そのあたりの議論は是非もう少し資料も、もしあれば出していただいて議論をしていただくと有り難いと思います。

【安西座長】  総合医の問題が今まで余り議論されてきませんでしたので、この御意見を頂きたい論点の中に含めてあります。これについても是非御意見を頂く。
 中川委員、どうぞ。
【中川委員】  総合医というものがたくさん出てきますけれども、総合医というものの定義が明確ではないんですよ。分かりやすく言うと、プライマリ・ケア能力を身につけた医師ということだと思います。都道府県の要望もきっとそうだと思います。それで、私の提出させてもらった資料1を御覧いただきたいのですが、例えば3ページの5年生、6年生から今までの見学型臨床実習から参加型臨床実習に変えるといって、この辺のところは今までは国家試験の準備ばっかりしていて実習はほとんど形だけということだったのですが、これを本格的に実現できれば、そして更に臨床研修の1年目、2年目でプライマリ・ケアということを中心に研修をすれば、相当程度のプライマリ・ケア能力を持った医師が育っていくのだろうと思います。
 あとは、いわゆる後期研修以降、自ら診療の中でプライマリ・ケア能力をそれぞれの医師が身につけていくのだろうと思うんですよ。そういうふうな形をむしろイメージした方がいいのではないかと。そして、今、もっと言わせていただければ、参加型臨床実習がうまくいくかどうかは、やっぱりこれは各大学医学部の教員数の数と質の充実なんです。副大臣がせっかくいらしたので少し申し上げたいのですが、そのためには財源的な手当てを十分にしていかないと、今、もう大学の先生方に聞くと本当に提案はいいけれども、人がいないんだ、財源もないんだという悲鳴が上がっています。この辺のところをまず解消するのが第一歩。
 もう一つ、更に申し上げたいのですが、国立大学の附属病院を例にとりますと、国立大学附属病院運営費交付金、これは2004年度に584億円あったのが、2010年度予算で187億円です。この前年比マイナス1%という仕組みが骨太の方針2006でつくられて、それをずっとやってきているわけですね。各大学病院はそれのために何をやったかというと、診療報酬収入をあげて経営をしているということになってきてしまったんです。それは国の政策がそういうふうに追い込んだんですね。大学の医学部はそういうことをやり出すと、いわゆる特定機能病院の、高度の医療の開発、研修、それから、教育といったものを担う機能を持つ病院が一般の民間病院と同じような土俵でやり出すということになると、これは将来、日本の医療にとっては大変なマイナス要因になると思うので、是非国の政策の転換として運営費交付金はもとに戻すという方向性に舵(かじ)を切っていただきたいなと思っています。

【安西座長】  ありがとうございました。
 どうぞ、片峰委員。

【片峰委員】  西村先生の論点なのですけれども、大学に関係している者としては、基本的には総合医と専門医というのは対立する概念ではないと思うんですね。医学部の出身の学生は基本的には二足のわらじを履くべきである。総合医としての能力も備えながら、やはり将来的にはどこか専門をずっと深く掘り下げる。そういう経験も絶対重要なわけですよね。そういった意味で僕は二足のわらじを履くというのが基本で、やはり医学教育の中で、中川先生も言われていましたようにプライマリ・ケアもきちっと教える。それから、専門のところもきちっと教える。更に卒業してある程度の年限は、もちろん後期の専門医になってから、やはりある程度専門で頑張らないと、きちっとした医者はできないんだろうと思うんですね。その後はやっぱり総合医として人生設計を描く方もおられるでしょう。専門医として専門分化していく方もおられるのだと思うんですね。
 その中で地域医療の問題を考えますと、長崎県の矢野先生が来て言われましたけれども、長崎県の離島みたいなところには小さな診療所がたくさんあるわけです。そこで当然、総合医なるものが要求される。お医者さんの数が1人しか2人しかいませんから、内科も見る、外科も見る、眼科も見る。本来それは不可能なわけですね。だけど、今の状況でそれが要求されるわけです。システムの問題が大きいと僕は思っていて、地域の医療システムを改善する必要があります。そういう小さな診療所ではプライマリ・ケアをきちっとやるけれども、少し専門がかったことは地域の中核病院がきちっと受け入れるだけのシステムをつくる。更に先端的な部分は、その上にある、今度は大規模病院がきちっと面倒を見る。そういう地域における医療システムを構築することが非常に大事なのではないかなと。もちろん、前提として、医学部では今どんどんと総合医としての教育もやっていますし、教育改善をどんどん進めていると思うんですけれども、最終的にはやっぱり地域医療システムの問題なのではないかなという気がしています。

【栗原委員】  今の御発言に私も非常に同感するところがあります。総合医、プライマリ・ケアなどいろいろ混乱していますが、今の医学教育は平成3年に6年一貫教育になり変わりました。欧米に比べて日本の医学生の卒業時の臨床能力がそれほど高くないので、是非これを改善したいということで6年一貫教育になって、臨床教育に重点が置かれてきたという経緯があります。その根底には、医師としての基本的診療能力を身につけるということがあります。それが総合的な医師としての診療能力につながってくると思います。医学教育はそのように改善されてきました。専門は卒業してからそれぞれの道を極(きわ)めるということで、更に臨床研修、更にその後にレジデント制、あるいは後期研修が設けられています。
 座長から先ほど医学の教育は少し閉じているのではないかというような御発言がありましたが、他の学部に比べるといろいろな意味で医学教育は改善、改革が行われていると思うのです。イギリスでは1年生のときから家庭医のところに行って実際に実習をさせるような教育をしています。もちろん、その家庭医の方も大学で研修を受けています。そのような臨床医育成を中心とした教育は好ましいと思いますが、しかし、それがあまり行き過ぎると病態のメカニズムを理解するための基礎医学に関する教育の時間が当然少なくなってきます。日本では、以前はどちらかというと学生時代は学問を教授し、卒業してから先輩の背中を見て臨床を学ぶというような教育体系でしたが、これを是正しようということで今日に至っているわけです。
 そのために先ほど話題になった共用試験が6年間の教育の中で臨床実習が始まる前の4年生で行われています。また、臨床実習も医行為を行う参加型実習が推奨されているというように改善されてきました。先ほどの片峰委員のお話のように、ある自分の専門を深めることによって総合的診療能力を更に高めるということも一つの道だろうと思います。また、その後、例えば循環器内科医、神経内科医、あるいは外科医といった専門医だけでなく、いわゆる総合診療医として活躍するという方が出てきてほしいと思います。いろいろ多様な道に対応できるキャリアパスを作っていくということが必要ではないかと私自身は感じております。

【安西座長】  閉じていると申し上げたのは、医学部はやはり人数的に言うと、ほかの分野に比べると少ないので、中のカリキュラムはかなりそろった、ほかの分野と比べるとですよ。そういうふうにはなっているのですけれども、申し上げたのはキャリアパスとしてみんな卒業したら同じようにこうなって、同じようにこうなってということがやはり多いのではないか。ほかの分野に比べますと、そういうふうに思われるということだけでございます。また、CBTとかOSCEについても、今までほとんどここで議論されておりませんで、そういうところも非常に大事だと思いますので、是非御意見いただければと思います。
 どうぞ、濵口先生。

【濵口委員】  議論を座長のおっしゃっておられた前半の地域枠の問題に少し戻したいと思います。個人の資質の問題とか、総合医とか、そこら辺の論点も必要ですけれども、この数年間、医療現場でトライしてきたことは、この地域枠を増やす。現場に定着させるという、この作業をやってきて、既に1,200名、枠を増やしているわけですね。これは、12大学分の定員を、増やしてきたわけです。3ページのデータを見ますと、各県に確かに定着している。これ、どこにいるかは分からないにしても、少なくとも県境を越えないところまでは持ってきているわけですね。そこまでの前進はあると思うんです。問題はこれをプラスと考えるのか、マイナスと考えるかという議論ではなくて、1,200名もこういう養成をしてきたわけですから、これをきちっと検証をして、もっと更に発展させていくというところにかなり重要なスタンドポイントがあるのではないか。
 大体、ここで出ている初期の例というのは、特に私、強調したいと思うんですけれども、ほとんど奨学金も出ていない時期の方々だと思うんですね。ですけれども、自発的に少なくとも県内にとどまっている。ですから、このシステムとしては非常に効率的に動いている部分があって、それが本当にへき地に行くかどうかということは次の問題だと思うのですけれども、もう一つのポイントは、これ、9年あるわけですね、奨学金を出す場合は大体。そうすると、今、1,200名が9年ですけれども、これをもう少し発展させて、例えばそれを15年でもきちっと働くようにすると1,200名が2,000名増やしたことにもなるし、更に3,000名増やすことにもなるわけですよね。
 ですから、今の問題点を解決するヒントの一つは、ここにあるはずなんですね。これをもう少し検証をきっちりして、それを否定的に考えるのではなくて、いかに充実させるような手当てをシステミックにできるか。より直接的に申し上げれば、財源の投資もきちっとやっていただいて、専門家の養成もきちっとやっていただいて、その兵站(へいたん)線が伸び切っているところを充足させるような作業が今必要なのではないかというふうに私は思っておりますが。

【安西座長】  先ほど地域枠のことを申し上げましたのは、地域枠がいけないと言っているわけでは決してありません。地域枠で卒業した医学生、卒業生がどこで働いているのかということについてのデータがないようなので、今、事務局にお願いして、それを調べていただくようにお願いしているところであります。私の感覚的なことで申し訳ありませんけれども、やはり県庁所在地等々にはかなり多く、そうでないところに非常に少ない、こういう構造があるのではないかと思われるんですね。ただ、そのデータがないので、それを調べてもらっております。

【中村委員】  二つのことで、今おっしゃっていた地域枠に関しては、確かに濵口先生が言われたように、最初の段階ではそんな奨学金とかなくてやってきました。それに対して、先ほど西村さんがおっしゃいました自治医大というのは最初から奨学金でやってきています。最近、自治医科大からの報告があってそれを少し見ているんですけれども、例えばデューティの時期に関しては6割ぐらいのドクターが、いわゆる山村過疎特別構成地域という過疎の地域やへき地医療地域のところに行っているんですね。それはデューティで行かされるので行くという形になるわけですけれども、6割は行っている。それが10年経(た)ってデューティが終わった後に、今、最初の1期生、2期生がどこにいるかというと、3割ぐらいがまだそういうところで仕事をしているということなんですね。
 僕は、そこに単に地域枠という形からもう一つ進んで、それをデューティとして行って、そこでの生き甲斐(がい)が持てるような形になっていくようなシステムというのが一つ要るのだろうと思います。地域枠が次のステップとして何かを持たせることで、多分、もう少し医師が地域に行かれるのではないかということが一つある。
 それからもう一つ、プライマリ・ケアの問題で、プライマリ・ケアができたら総合医かということがすごく気になるところなんですね。プライマリ・ケアというのは基礎的に医学教育の上でプライマリ・ケアを勉強させるということで1年間トレーニングするわけですけれども、今、総合医的な意味で言うと例えばホームドクターとか、総合診療といういろいろな言い方がありますね。大きな病院でも今、病院の中で総合診療的な観点が必要だということで、例えば専門に分かれてしまって、最初に来る患者さんを見たときに総合的な観点ではなくて、最初から非常に専門的な視点に入ってしまって見落とすところがあるのではないかということで総合診療が作られています。
 そういうものと、それから、地域で1人、2人でやっているようなところこそ総合医的な観点があると思うのですけれども、プライマリ・ケアのジェネラルな医者という意味ではなくて、その領域での総合医というのは、その地域にあったスペシャリティがある仕事だろうと思うんですね。だから、1年間プライマリ・ケアを研修でしたからといって、次の段階でそこでやれるわけではないので、それはそういう形で医学としてきちっと、どんなことが必要なのかということをトレーニングすることが必要で、そのための資格とか、それに対する見合った形での保険体系みたいなものが必要なのだろうという感じがしています。
 そういう意味で、研修医が1年間、2年間やったことでプライマリ・ケアを勉強することと、総合医ができていくということは少し違うのではないか。その辺の観点をきちっと分けておかないと、ある意味で研修医が終わった人がすぐ地域に行って医療をやれば、それが総合医になるのかというと、全然そんなことはないだろうという感じがしています。その辺が少し気になったところです。

【安西座長】  今日、そういう議論を頂いているので非常に有り難いのですけれども、医学教育の内容をどうするか、CBT、あるいはOSCE等々をやはりもっと広めていかなければいけないのではないかとか、そういう議論がベースにあるべきではないかと思いますし、私、地域枠が増えるといいなと思うのですけれども、本当に力のある総合医、定義はともかくとして、そういう若い人たちが増えてきていろいろな地域、いわゆる過疎と言われているところでも十分に働けるようになっていくといいなと思うのですが、それを実施するための仕組み、システムについてただ地域枠を増やす、それで本当にそういうふうに行けるのだという、そこのギャップというんでしょうか、それについて、もう少し御意見をいただければ有り難いということであります。

【西村委員】  少しだけ短く。

【安西座長】  はい。

【西村委員】  先ほどから医学部で教育に担当されている先生方と私が少し微妙に違って、中村先生は私に近いことをおっしゃったと思うので申し上げますと、いわゆるキーワードを言うと、テーラーメイド・エデュケーション、つまり、お医者さんの一人一人の将来の希望に添った違う教育をできるかどうかというところが論点ではないか。先ほどの話はやっぱり、例えば100人なら100人のお医者さんの卵が来て、その100人に全体としてどういう教育をするかという話だったと思うんです。
 しかし、地域枠というのを設定したら、その10人には10人に対するほかの90人とは違う教育、どういう教育をするかという話をやっぱり展開すべきであって、もちろん財源の問題があるので一人一人の要望にこたえるような教育はできないのはよく分かっておりますが、将来的にはお医者さんになりたい学生が入ってきて、将来、自分はこういうことをやりたいという希望を、それぞれの希望をかなえるような、希望に応じた教育をする体制を、もちろん、くどいようですが、お金がないのにできないというのは間違いなくて、しかも、先生もたくさん要るというのは分かっておりますが、そういうところは少し私が最初に申した論点で違うという御指摘がちょっとずれているのではないかと思いました。

【安西座長】  どうぞ。

【片峰委員】  その点は完璧に西村先生にアグリーします。地域枠もそうなんです。少し後で話しますけれども、熱帯医学研究医枠とか、今、うちがつくっているんですけれども、そういう18歳の子が持った志みたいな、非常に若い志ですよね、これをいかにして本物にして持続可能な志に持っていくか。これは非常に大事で、ここが一番問われているんだと思うんですね。そういった意味では、地域枠もそうだし、そういう特化した目標でとった学生たちにいかに差別化した教育をやって、将来期待される進路を歩ませることができるかが最大のポイントで、そこが医学部の教員たちに課せられているんだと思うんですね。そういった意味では地域枠をいかに差別化するかというところで解決の糸口が出てくるはずだと僕は考えています。

【安西座長】  どうぞ。

【桑江委員】  今の議論を伺っておりまして少し違和感があるなと思って、それは何だろうと思って、今、お話しさせていただきたいのですが、現場の臨床にいて感じることは、患者さんというのは総体丸ごと1人の人間で、精神的とか、肉体的とか、本当に総合、一つ丸ごとの人間で、これはもう本当に釈迦(しゃか)に説法だと思うのですが、総合医なのか、専門医なのかというのは、それが分かれるわけではなくて、それは対立することではないとおっしゃっていたのですが、恐らくそこで提供する医療は医者がいる場所によって違うだけだと思うんですね。
 例えば今、キャリアパスの話をさせていただいていたのは、どうしても若い人は地域医療と専門医というのを考えたときに、専門医の方が格好よかったりするもので、あるいはそこに経済的インセンティブがついてきたりするものですから、そちらを今まで目指すといったようなところが若干あるのですけれども、実際問題、例えば私は産婦人科ですけれども、産婦人科で女性の体を見ているときに、全てのことを知らないと、例えばおなかが痛いといったときに、最初から婦人科疾患と分かっているわけではないので、そこでやはり腸の、あるいは消化器か、何だろう、最終的には精神的なことも含めて総合的に見なくてはいけないわけですね。
 ですので、まあ、たまたま私が今いるのが基幹病院の専門科だというところだけであって、これが何人か、地域で開業されていらっしゃる先生は恐らくそこに来る患者さんの訴えを聞いたときに、それが最初から全身的なものなのか、専門的なものか、そこから恐らく鑑別されるということだと思うんです。そこでやっぱり自分のところではないというところに、次に紹介するところがあればいいわけで、最終的には医療提供体制の問題であって、最初から総合医、最初から専門医って分からないんですよ。ですから、地域で働かれる先生も、今どうして閉塞感があるかといいますと、そこへ行ったらそれっきりになってしまうのではないかという、そういった学生さんの気持ちがすごくあるわけですね。だから、最初から区別してしまうというのではなくて、やはり人間ってすごく変わるので、例えば私のところでもずっと周産期をやっていた。そうしたら、どうして脳性まひになるのだろう。やっぱりここは大学院へ行って研究したいという医者が出てくるわけですね。
 そうすると、多分、恐らく私はいい研究ができるだろうと思うわけで、その中には例えば国際貢献したい。国際貢献するためには、分娩で死ぬ方が多いので、国際的というか、発展途上国、まず、産婦人科をやりましょうという者もいるわけです。そうすると、いろいろな自分の長い人生、医者の人生の長いところで、先ほどおっしゃったテーラーメイド、一人一人の能力を最大限発揮してもらうことが本当にいいことだと思うので、その方が途中で研究をやりたければ研究をさせるし、全身的な患者さんを見たければ地域で1人でやってみる。1人でやるということは、ものすごい臨床の実力がないとできないことですね。ですから、ある程度自信がないと恐らくそういうところに行かないです。
 ですから、そこまでに例えばプライマリ・ケアの2年間やって分かるかというと全く分からない。誰かに指導してもらなくてはいけない。それはどこでやるか。通常は大学病院よりは基幹病院的な、患者さんがいっぱいいるところでたくさん症例を見て、それからやっと出ていくということだと思うので、ここでどうしても医療事故に関する裁判の問題がありますので、今、どうしても二の足を踏むといった状態がございます。ですけれども、自分の長い医者人生の中で変わっていくわけなのであって、それをうまく受皿にして、その方の能力を最大限発揮してもらうということが、国民が一番質のいい医療を受けられるということを考えたときに、余り細かく分けない方がいいのではないかと思うことと、将来的な行ったり来たりができるようにどう担保するかというのは非常に難しい問題だと思うので、それで先ほど中川委員のおっしゃっている民間医局に数千人という話になるわけですね。
 今までは大学医局が結構最後まで面倒を見てくれたという歴史がございますが、今やはり一般病院に半分行きますと、その後、どこへ行ったらいいか分からなくなってしまって、自分でも実際問題、臨床の実力がないときに漂ってしまうということがあるものですから、そうなったときに自分はここが足りないから、もう少しここを勉強したい。医者は一生、研修だとは思うのですけれども、そういうことをどうやって担保していくかという問題なのかなと思っておりますので、総合医とか専門医というのは、いる場所によるのではないかというのが私の考え方で、そこでずっと専門を見ていたけれども、やはり全身的に見たいと思えば総合医的な、あるいは不定期的なところに行って貢献してくれると思いますので、その点に関しては地域枠も同じことかと思っておりまして、ある程度そこのところでキャリアを積んでいって、ここに骨を埋めたいという先生が出てきやすいだろうということもあって、私は地域枠というのは非常にいいことだと思っております。
 以前、北海道の乙部町の町長がいらしてヒアリングされたときに、その後ちょっとお電話で話をすることがございまして、そのときに町長は、先生、病院は足りていると言うんですね。開業医の先生もいっぱいいる。いないところは公立病院で2人くらいでずっとやっているところの医者を私は一年の半分かけて探しているとおっしゃるわけですね。ですので、私は医者の立場から考えますと、2人で24時間、365日を担うのは辛(つら)過ぎる。そこにやっぱりある程度の人数を置くために、例えば北海道でしたらば41公立病院に1人か2人しか定員がないところにあと6人ずつやったって、たかだか240名の話であって、旭川医大の地域枠、72人が10年いたら720人で、札幌医大は35人が10年いたら350人で、足せば10年経(た)ったら1,000人いますので、恐らくその公立病院の方である程度人数を増やしていただければ充足してくるのではないかと思うので、比較的現場から見ると単純な話で、基幹病院の定数を増やしていただければいいのではないか。ここにお金をかけていただければかなりの部分、地域の問題は解決するのではないかなと感じておりましたので。
 以上です。

【安西座長】  ありがとうございました。
 中川委員、どうぞ。

【中川委員】  先生の今の発言はちょっと乱暴過ぎるような気がしますね。

【桑江委員】  そうですか。

【中川委員】  医者は強制的にあそこの病院に行きなさいということに将棋のコマみたくいかないんですよ。将来的に日本の医療は国公立病院を中心に立て直すことがいいのかどうか。民間医療機関もそれ以上に頑張っていますし、なぜ国公立病院が経営が悪く赤字で補助金も得ているということにも議論が広がりますから、余り広げ過ぎない方がいいのかなと思います。
 それから、地域枠の問題ですけれども、例えばこの資料の3ページの定着率が89%、一般枠が54%となっていますが、座長がおっしゃったように実態はどうなのか。そして、奨学金を出せばいい、もっと増やすべきだということは問題があると思います。事務局に是非お願いなのですが、奨学金を出す、出さないということは実は有効なのかどうか私は疑問だと思います。ほとんどの方が返してしまう。そして強制力なく動くということもありますしね。
 それから、日本医師会で全国の医学部を調べたことがあるのですが、地域枠の学生とほかの学生がカリキュラムが違うところがあるんですよ。これ、実は非常に問題が多くて、差別されているという感じを受けるという情報、データがあります。これは医師になる上で、医学生のときから差別感を持つといった深刻な問題も起きているようですから、単に地域枠を増やせば問題が解決の方に向かうというのは少し違うかなという気もしています。

【安西座長】  そうですね。ありがとうございました。
 山本委員、それから、矢崎委員。

【山本委員】  中川先生が当初おっしゃったように、総合医の定義というものが非常にはっきりしていない。いろいろな考え方があると思うのですが、私もちょっと皆さんと違うのかなという感じも持っています。私にとって総合医というのは専門医を補完するものであり、総合医は専門医に補完される。お互いに助け合う関係にあるのが総合医だろうと考えています。それをもう少し具体的に言うと、総合医は患者さんをトータルで見るのが総合医、専門医は特殊な部位や臓器の異常、特殊な疾患、そういうことに関して極めて高い能力を発揮するのが専門医、単純に言ってしまうとそういうことだろうと思います。そういうカテゴリーで考えますと、いろいろな総合医が出てくると思いますが、総合医の基本的な能力は、アメリカのジェネラル・プラクチッショナーに相当する物が要求されると思います。そうした意味で総合医が地域にいれば非常に地域は助かるだろうと思います。
 しかし、一方で、例えば私は外科をベースに救急、外傷をやってきました。この分野で多発外傷というのがありますが、多発外傷で脳がやられて、胸がやられて、肝臓が破裂するという外傷が来ます。すると脳外科の専門医が来て、胸部外科が来て、それから、腹部の専門医が来ます。この3人に任せて、それぞれが局所的な治療に終始したら、患者さんは亡くなります。外傷に本当に精通した人が、各専門家の意見、例えば頭に血腫があるから、今、水をたくさん入れ過ぎたら脳圧が上がるから入れるなとか、肝臓が破裂して、腹腔内に出血しているから、たくさん輸血、輸液を入れてくれという要望を、コントロールして患者さんをトータルに見て助けるというのが外傷の総合医なんです。そういうふうな意味では、いろいろな分野に総合医というのはあるとも考えられます。
 では総合医というのは基本的にはどういうものをアカデミックなバックとして持っているのか、これはなかなか難しいのですけれども、一つは、広く浅く医療全体を理解し、特に臓器相関の問題を非常によく知っているということが一つあると思います。それから、侵襲に対する知識が非常に高いということ。それから、エピデミオロジー、こうしたものに関する知識をしっかり持っている。こういうものが専門医に対応できる総合医の位置づけであり、総合医ももちろん高度の専門医と、そんなふうに考えております。

【安西座長】  ありがとうございます。
 矢崎委員にお願いします。

【矢崎委員】  まず、先ほど中川委員が国公立病院を特に力を入れる必要ないとおっしゃったんですけれども、国公立病院って国立病院と公立病院を一緒にしてくれたら困る。一口にまとめて言わないでと厚生労働省にも言っているんですよね。本当にその辺は自立、自弁でやっていますので、その辺は御理解いただきたいと思います。
 それで、もう一つは、中川先生のおっしゃった二つのポイント、重要なポイントは、OECDに比べて医師数が少ないと言われていますけれども、やはり指導教員というのがOECDに比べてものすごく少ないんですよね。それから、高等教育にかけている公費といいますか、それも非常に少ない。ですから、これを何とか政治のリーダーシップで、やっぱり大学の先生がエールを送って、政治家の先生と頑張っていかないと実現しないので、その点は是非よろしくお願いしたい。それから、医学をやりたいけれども経済力がないという人に対して、国はしっかりした奨学金制度を整備して、優秀な人材が医学界に入るようにしていただきたい。
 それから、もう1点、非常に賛同したのは医師国家試験、これは今までは一発勝負でやっているから、教育側も必死に対策するんですね。今、医師会の提言のようにプロセスで評価して、外国は大体そういう評価なんです。日本は一発勝負主義が好きなんですけれども、そういうプロセス評価でやるということが重要であって、これは日本の医学教育をものすごくよくすると思います。医師国家試験は厚生労働省の管轄ですが、問題をつくっているのは大学の先生なんですね。だから、大学の先生が意識改革して、こうやろうよと言ったら絶対、省庁関係なく国家試験の、やっぱりプロセス評価であって、単に一発勝負のものではないということで、これは大変すばらしい御提言だと思います。
 私は、病院経営者の立場から、山本先生が次回エビデンスを出してくださるというので、もう少し絞られた議論になると思いますが、私は今回、岩手県、宮城県のこの震災の被災地に、我々は延べ人数ですけれども、8,300人の人を送って、私も現地に行きましたけれども、もともと非常に高齢化の進んだところで医療密度がすごく低い地域なんですね。ここで我々が医師を派遣して、僕が心配したのは、未来永遠に派遣しなければならないのではないかと。すごく思い悩んだのですが、5月以降になりますと自治体の方々が地元の一般医療に関しては自信を持たれて、もう大変な思いで来てくださる必要はありませんから、地元で責任を持ってやりますからとおっしゃっていただいて、何かスムーズに我々は支援を収束する方へ持っていった。だけど、現場で感じているのは、やはり一般医療に対して、住民の方は、医師会の先生はものすごく頑張っておられますけれども、そこで身にしみて感じたのは病院機能の低下ですね。病院がないということをものすごく不安に思っておられます。
 そこで先ほどの中川先生と少し違うのは、そこでの公立病院の地域におけるセーフティネットの機能が公立病院、ものすごく低下しているんですね。だから、これは何とか機能強化をしていかないと、単に人数を増やすといってもなかなか医者が来てくれないということがあって、それで、我々の立場から地方の病院を見ますと、大きな病院は別ですけれども、今、総合医という話がありましたけれども、我々の病院は高度な専門家が何人来ても足りないわけですよね。自分たちのテリトリーが決まっているから。我々、例えば外科の総合医、そうしますと小さな病院では整形外科が1人とか2人しかいない。そのときに総合的な外科医がいて一緒になってチームで医療ができると、非常に少ない人数で地域の医療が回ると思うんですね。
 ですから、総合医と言うとプライマリ・ケアというふうにイコールしますけれども、先ほど桑江先生がおっしゃったように、あるいは山本先生が言われたように、自分のテリトリーでないところも十分分かるような専門医という切り口でもいいのではないかと思うんですね。ですから、そういう意味で、我々は医学教育は必ず専門医から入りますので、やっぱり専門医で、かつ総合医的な視点を持つ医学教育というのを今後是非やっていただきたい。それで、もしいろいろ指導教官を増やすとか、運営費交付金を回復するというようなときには、そういう取り組みをやったところに手厚くやっていただくような、そういう方策をとっていただくと少し、そういうインセンティブになるのではないか。例えば今の医学教育はすごく先生方の努力で変わっていますけれども、どうしてもやっぱり診療科単位なんですね。ですから、そこをもう少し融通するようなものができないか。
 それから、少し長くなってすみませんが、基礎医学教室に入る人が少ない。極端に少ないと言われますけれども、今の時代、解剖学とか病理学教室に入るという人は、まずほとんどいないと思います。そういうところに入る人はラボを中心に、ここの研究室はすごく面白い研究をしているからと基礎研究に入るんですね。ですから、病理学、生理学、そういうテリトリーで入ってくる人って、今の時代は生命科学全体を見ながらやっていますのでなかなか難しい。基礎研究者を多くするには、そういう生命科学全体をオーバーラップしたような部門で、それぞれの得意分野でやっていただくようなシステムを大学は是非つくっていただければということです。

【安西座長】  総合医、いろいろな定義があると思いますけれども、専門性を持った総合医というのでしょうか、そういう人たちを育てるのにこれは私、医学部ではない人間としての素朴な疑問だということでお聞きいただければと思いますが、大学病院の教授レベルの方で総合医と言われている方っておられるんですかね。みんな非常に専門的な感じがするのですけれども。

【中川委員】  総合診療科の教授はそういう。

【安西座長】  ああ、そういうのに。

【中川委員】  それ以外の教授は違うと言っていいと思います。

【安西座長】  違う。

【中川委員】  明確に言えます。

【安西座長】  これはちょっと挑発的な、議論のための議論で申し訳ないんですけれども、本気で総合医を大学の医学教育で育てていただくのであれば、やはり本気になって、もちろん人の手当て、財源手当は大事だと私も思いますけれども、その上でのことでしょうけれども、本当に大学、医学部教授の方々がその気になってもらわないと、という気が少しするんですね。
 どうぞ。議論のための議論のように聞こえて、これはまじめな議論なんです。

【栗原委員】  確かに座長がおっしゃるように、大学の附属病院というのは特定機能病院で専門科にかなり分かれているわけです。それから、ある一定の患者紹介率が求められるということもあります。しかし、例えば私立医科大学ですと分院を持っています。分院は初療の患者さんが多いので、総合診療能力の涵養(かんよう)には適しています。例えば私どもも分院を持っています。そこに総合内科、あるいは総合診療科、名前は違いますけれども、今おっしゃったような形での医療を実践していて、そこを卒前教育の段階で回るカリキュラムもあります。大学でも総合診療能力の涵養(かんよう)に努めているということを御理解いただきたいと思います。
 地域医療に関しては、1年生からいろいろな施設に学生を送って体験実習をやっています。例えば重度心身障害者の施設や在宅ケアのセンターなどに学生を行かせて、社会と医師との接点を早い時期に認識させるようにしています。これは教員の負担が大変大きいのです。まず適切な施設を教員が探さなくてはなりません。それから、1年生の学生は社会的マナーが未熟です。したがって、実習をやる前に施設に一度面談に行かせるようにしています。また、実習をやって、悪い評価がつくと教員が施設に確認に行きます。というように非常に手間がかかるのですが、学生に社会との接点を早く持たせることによって地域医療への関心が高まります。高学年になってベッドサイドラーニングが始まったときに、そういう経験をしてよかったという声が相当あります。
 研究医のことについて矢崎委員が発言されましたが、確かに面白い研究テーマがなければ研究者になろうとは思いません。したがって、いかに学生のモチベーションを高めるかが問題となります。現在、研究室配属ですとか早くから専門的な研究を経験しトレーニングをするようなコースが試みられています。医学教育の早い段階で学生に研究の面白さを体験させることが肝要だと思います。
 それからもう一つの問題は、大学院が終わって研究者になりたいと思っても定員枠があって入れないという場合があります。そのようなとき、私学ですと定員外の教員枠を持っていて、それを使って、例えば自学出身者で研究をやりたいという人がいたらば採用できるということもできます。定員枠がないから教室に入れないとなると研究者の道が閉ざされてしまいます。フレキシブルな仕組みが必要と思います。
 それからインセンティブですね。これも大学によっては、基礎教員に手当てをつけているところがあります。私の大学もごくわずかですが、基礎教員には手当てをつけています。このようなインセンティブも必要かと思います。

【安西座長】  御意見を頂きたい論点の中に研究医のことは書いてありまして、やはり医学部の卒業生がその先、研究の道に歩んでくれる、そういう人たちがある程度増えてくれるということはいいことではないかと思います。これは主観でありますけれども、やはりトランスレーショナル・リサーチとか、いろいろなことが増えてきているのと、臨床経験者でもって、それで研究者にスイッチしていかれた人たちで、研究者として名を成している人も随分おられまして、そういう道もあるかと思いますので、ただ、これも仕組みなので、今、栗原先生が言われたようないろいろなことを考えなければいけないかと思います。
 総合医につきましては、これは議論のための議論を余り繰り返すといけないのですけれども、大学の教授の方で本当に総合医がおられないと、若い人たちから見て、自分はもうそういうキャリアパスはないんだなということになるのではないか。そういうことはないということですね。
 どうぞ。

【中川委員】  先ほどから総合医という総合的な診療能力を持つ医師ということの議論ですけれども、どうも聞いているとスーパードクターをイメージしているのではないか。全ての診療科目について、患者さんを診れば何でも分かる総合医ということをイメージしているような議論になっているのではないかと少し思いました。そんなことはあり得ないので、やっぱりこれは一定程度のプライマリ・ケア能力をある程度深化したところのレベルが、今、例えば自治体から要望のある、いわゆる総合医だと思うのですけれども、そのこととスーパードクターと分けて考えないと、座長が言われたのはきっとスーパードクター的な総合的な診療能力を持つ医師だと思うんですけれども、少し無理かなという気はします。

【安西座長】  私は桑江先生が、また研究したくなったら、トレーニングしたくなったら大学へ戻ればいいと言われたので、でも、大学へ戻って本当にまたハイレベルのいわゆる総合医というんでしょうか、そういうことのトレーニングをさせてくれる場があるのかなということが少し外部としては気になったものですから。私、決して今議論されていることに反対ではもちろんありませんので、それは御理解ください。

【桑江委員】  すみません、少し補足させていただきます。分かりにくくて申し訳ございません。研究医というのが非常に大事で、ここがしっかりしていないと将来の医学の進歩はないだろうと思っておりまして、そこが今非常に少なかったり、論文が少なかったりしていること自体が由々(ゆゆ)しいことだと思っておりまして、私自身は臨床医ですが、やはり途中ですごく引っかかった患者さん、あるいはここはどうなっているんだろうと思ったときに研究ができたらどんなにいいだろうと思うことがあるわけですね。若い方はもっとそうだと思う。
 そういうときにどこかで研究に素直に行って、じゃあ、その先はもう根なし草になってしまうということが非常に一歩を踏み出せない1個の理由かなと思っておりまして、先ほどの大学院の定数もそうだと思うんですけれども、そちらの方で十分研究して、そちらで、もしかしたら本当に研究が好きで一生を捧(ささ)げるようになってくれるかもしれないし、それでも自分の能力の限界を感じて、もう1回臨床に戻りたいなと思ったときの場所があれば、贅沢(ぜいたく)かもしれないのですが、研究したいときに研究させてあげるということが非常に日本の医療の進歩、あるいは基礎のベースを膨らませるときに非常に大事で、臨床医ばかり養成しているのはよくない。そのときにどこかにきっかけがあるかとすると、やはり私たちから見ると大学というのは研究と教育をしていただきたい。していただくべきところでありましょうということで、そこで受け入れていただけると有り難いということが一つ。
 あと、若いときの方がモチベーションは高いわけで、今の初期臨床研修、2年間というのは、ある程度研究志向の方には少し長いのではないかという気が確かにいたします。それで各大学、いろいろ工夫されているのだなということは分かったのですけれども、だから、ここは本当に必要な必修だけやったら2年目は後からでもいいとか、細切れにできないかなと。1年目の必修だけやっておいたら、例えば2年目は将来、自分がなりたい科で研修するということですので、ここでもし研究に行ったときに、でも、やっぱり限界を感じて臨床をやりたいなと思ったときに、じゃあ、後から内科を1年やれば医者として働かせていただけるという感じで、少しフレキシビリティ、あるいは丁寧な対応があると若い人たちのキャリアは非常に膨らむだろうと思いますし、国際貢献したい医者は非常にたくさんいるんですね。若い方は本当にたくさんいる。
 東京都でも、島へ行きたい人と言うとたくさん手が挙がる。ただ、その後どうなってしまうんだろう。行った先、帰るところがないわけですよ。そうするとやはり二の足を踏むということがありまして、今日、更にいた大体御意見をというところでは、多分、これは私としては若い方はやりたい方はたくさんいると非常に実感しておりますので、そのうまい道筋をつくっていただくときに、じゃあ、どこがそのインセンティブをとっていただくかというとやはり大学かなと感じておりますので、少し発言させていただきました。

【安西座長】  失礼しました。ありがとうございました。
 今の国際的な場に出ていきたい若い人はたくさんいるのだと言われました。ちょうど片峰先生の方から資料が出ておりますので、国際グローバル人材育成といいましょうか、そちらの方の話だと思います。

【片峰委員】  資料2を準備させていただきました。御承知のとおり、現在のアフリカを中心にしまして、途上国には、貧困、あるいは飢餓、それから、重症な感染症の流行(りゅうこう)、あるいは非常に過酷な母と子を取り巻く状況等があります。これを今の国際社会が一致協力して何とかしようというのがトレンドでございまして、それは国連のミレニアム宣言等にもうたってあるわけです。この国が、じゃあ、その中で存在感を発揮し得ているのかというと極めて疑問があるところです。そのような領域で世界を舞台に活躍できるような保健医療分野の人材を育成していくことは医学教育の一つの重要な課題であろうということで、長崎大学の取り組みの現状を御紹介させていただくことにいたしました。
 本学は、非常に長い歴史と蓄積に基づきまして二つの代表的な教育研究領域を持っています。一つは熱帯病・感染症という領域で、もう一つは被ばく医療・放射線健康リスクという二つの分野なんですね。この二つの分野、いずれも実は対象となる疾患・患者が濃厚に存在するのが国外でございまして、もちろん感染症に関してはアフリカ、アジア等の熱帯地域ですね。それから、被ばく者に関しましては、もちろん広島、長崎がございますけれども、国外ではチェルノブイリ等の旧ソ連地域ということになります。長年の私たちの願望として、そこに居ついて教育研究をやる拠点が欲しいということを考えていたのですけれども、2000年以降、国際的に重要性が認識される中で文部科学省の支援等も頂きまして、アフリカとベトナム、それから、ベラルーシに本格的な教育研究拠点を設けました。
 アフリカのケニアとベトナムに関しましては、常駐で本学のスタッフが約10名、それと現地の雇用スタッフを含めますと数十名を擁する拠点ということになります。いずれも双方の国の国立研究所の敷地の中に設けてあります。ベラルーシに関しましては、常駐は1人なんですけれども、非常に頻繁に研究者が行くことで、活発に機能していまして、現在、本学の研究者が福島に入って、ここでの経験や蓄積を生かしてくれていると思っております。学長直轄の戦略本部という組織に、国際協力の現場に通暁したプロフェッショナルを中核人材として招聘(しょうへい)いたしまして、ここが拠点運営をマネージするという体制をとっています。
 ケニアですけれども、ナイロビというキャピタルに拠点がございます。ここを拠点にいたしまして様々な感染症に関する研究が行われておりますが、とりわけ西の方のスバ地区、ビクトリア湖という非常に大きな湖がございまして、その沿岸部なのですけれども、この地区と、それから、インド洋モンバサ周辺のクワレ、この地区に今それぞれ5万人規模のコホートを設定いたしまして、人口動態、あるいは感染症の流行(りゅうこう)状況などを把握した上で、様々な介入研究を展開しつつあります。更にこの拠点をベースにいたしまして、現在、本学の歯学と水産学などの医学以外の分野の研究も開始されようとしています。ここには現在、直近の3年間だけでも全国の医学部から約60名の学生が2週間から数か月にわたって研修に入っておりますし、大学院生もそのレベルが入っているということで、教育面でも非常に貢献していると考えております。
 ケニアとベトナムの拠点の中核となってこれを担っておりますのが、熱帯医学研究所という共同利用・共同研究拠点なんです。1940年からという非常に長い70年の歴史を持つ研究所ですが、重要なターニングポイントが1967年、従来の風土病研究所というのを熱帯医学研究所に改称したことなんですね。これは象徴的な意味合いがございまして、戦後、抗生物質が開発され、あるいは衛生環境が非常に改善する中で国内の風土病と言われるものはほとんど駆逐されました。その中でほかの大学の感染症関連の研究所は、いわゆる先端医学の方にシフトしていったのですが、この研究所だけは活躍の場を国外に求めたということで、熱帯医学研究所というふうに改称したわけであります。
 このとき以来、この熱帯医学研究所に全国から志の高い人材が集まりました。これが普通の人たちではないんですね。ちょっと変わった人ばかり。要するに高級ホテルのベッドで寝るよりもジャングルの中で野宿した方がはるかに快適であるという類の方々が全国から集まった。その方たちの一部が、やはり先ほど申しました拠点を維持する中核人材としてまだ頑張っていただいているということであります。
 そこで、問題意識です。要するにこの国の、いわゆる国際貢献人材は、個人の資質あるいは志というものに全面的に依拠して、辛うじて確保されてきたわけです。アフガニスタンやスーダン等で活躍されているNGOのお医者さんたちもそうですし、国境なき医師団みたいな人たちもそうですね。熱帯医学研究所もそうであったということであります。もう一つの観点は、国際貢献の現場では、いわゆる学位というのが非常に重要であることです。しかも、ブランド価値のある学位ですね。
 ロンドン、リバプール、マヒドンといった大学の熱帯医学校のPh.D.あるいはMPHの学位とか、ハーバード、ジョンス・ホプキンスの学位というのは非常に重宝されるんです。実際、我が国の志のある人材のかなりの部分が今こういった海外の学校に流れています。そのようなキャリアを積んだ日本人が、国際的に現在活躍しているということであります。そういう背景の中でどうしてもこの国の中で、自前の人材、あるいは教育システムをつくる必要がある。だから、従来は個人の資質とか、個人の志に全面的に依拠していた国際貢献人材を、国としてシステマティックに、意図的に、かつ戦略的に養成するという、そういう必要性があるのではないか、そういうシステムをつくる必要があるのではないかというのが、問題意識であります。
 そういった中で様々な人材育成システムを現在長崎大学では動かしています。1978年から熱帯医学研修コースという3か月間のコースをずっとやっておりますが、現在までに大体400名の修了生を出しております。2割程度がお医者さんだと思います。様々な場面で活躍されています。今世紀に入りましてから、先ほどのような問題意識の中で、いわゆるPh.D.あるいは修士、さらにはアンダーグラディエートというところで、様々な人材育成ユニットをシステムとしてつくろうということで、Ph.D.に関しましては新興感染症病態制御学系、あるいは放射線医療科学専攻というPh.D.の専攻を立ち上げました。更に近年は熱帯医学修士課程、これは医師のみを対象にした修士課程でございますが、これは全部英語でやっています。半数以上は海外からの留学生です。それに加えまして国際健康開発研究科、これは国際保健に特化したMPHが取れる本邦で初めてのシステムでございます。これも立ち上げた。
 さらに、これも非常にチャレンジングなのですが、医学部のAO入試枠で2008年からは国際医療保健枠として5名、更に今年度から熱帯医学研究医枠として5名を設定しました。要するにこれらのユニットを全部バーチャルに統合いたしますと、全体構成としてはロンドンやリバプールの熱帯医学校に匹敵するものが恐らくでき上がっているのだろうと思います。更に質、あるいは量、留学生の数も含めまして充実させる。その中で何とか海外の有名学校に匹敵するようなブランドを長崎につくり上げたいというのが私の願望でございます。こういった非常に特化した、しかし、この国として必要な人材を育成する仕組みを導入する、あるいはそれを充実・強化していくということも重要な観点ではないかと考えます。
 以上です。

【安西座長】  ありがとうございました。
 今の片峰委員の御説明も含めて、また御質問、御意見をいただければと思いますが。どうぞ。

【黒岩委員】  今、片峰先生の御発表を伺って特に感じたことでありますが、志を重視した医学教育といいますか、私もそういうことが非常に重要かと思います。それで、志とかマインドというのはなかなかカリキュラムの中ではシステミックに教えられない部分でありますが、今の医学生を見ていますと、自分が医師になるということに関する認識とか姿勢とか、そういうものが若い人たちでは少し変わってきているような感じを受けるんですね。これから入ってくる学生さんは学力ももちろん重要であります。しかし、志とか、姿勢とか、そういうものを評価したり、育成するのはなかなか難しいのですが、そういう志を持った優れた人を入れることができるような入学のアドミッションシステムが求められています。大学と高校と、今、高大連携という言葉がございます。本当の意味での高校と大学のコミュニケーションを十分とった形で、いい学生をとるということが非常に重要かと思いました。
 本日で7回目でありますけれども、この会議のミッションは言うまでもなく国民にとって質のいい医療を確立することで、柱としては二つあるかと思うんですね。卒前から卒後にかけて、本日も話題に出てきた国試の改革も含めた医学教育改革、あるいは医師養成のプロセスの改革ということが一つの柱。あともう一つは矢崎先生もおっしゃった病院機能の強化も含めた医療体制改革の問題です。この二つが大きな柱であるかと思います。それで、まず地域枠につきましては、1ページから3ページに六つの大学での直近の卒業生のデータが出ているわけでございますけれども、さらに、この辺に関しましては更に深い、突っ込んだ情報を是非出していただければと思います。また、地域医療支援センターに関しましても、ポイントは都道府県と大学との連携が円滑に行くかどうかというところかと思います。都道府県と大学との連携が実際に円滑にうまくいっているのかどうか、そこら辺のところに関しても是非情報がもらえればと思います。
 また、CBT、OSCEに関しましては、現在、個々の大学で個別にその判定等の基準を定めています。共用試験機構のもとにやっているCBTやOSCEをその大学だけではなくて、医療に携わるメンバーや一般の人たちにどういうことが行われているかという情報をさらに共有してもらい、また、社会の国民の一人一人も一体、共用試験ってどんなものなのかというようなことに関しても差し支えない範囲で情報が共有されることが必要かと思います。そうでないと、その共用試験のCBTやOSCEのオーソリティといいますか、価値というものを国民が十分認めない状況になるおそれがあります。それを通った学生さんが実際に国民に対して臨床実習で実際に診察するわけでございますので、CBTとOSCEというのはきちっとした試験なのだということをもっと国民にアピールすべきです。国民がCBT、OSCEを通ればある程度、上級医の指導のもとに、若い医師が育っていくために自分の体をあずけられるのだという安心感をつくり上げていくということが私たちの務めの一つではないかなと思います。
 それから、総合医のことに関しましては、基本的にはやはり専門医が総合的な全身を見られるような医師に育っていくための医学教育、あるいは医師養成の体制を整えていくということが最も重要でございます。実際に大学における総合内科、あるいは総合医の教育というのが今なかなかスムーズにいっていない。希望者も少ないという、それが現状です。
 それから、地域医療を支えるためには大学ができることとしては、大学の人的なリソースを強化していくということが重要であります。そのためには二つのポイントがあるかと思うのであります。一つは実際に大学の教育を受ける若い医師たちが生涯の教育のキャリアといいますか、臨床医としての生涯教育のキャリアが見えるような、そういうことが今の若い医師には求められていると思います。そういう青写真を大学が見せられるような、そういう臨床教育を大学ができるということ。あともう一つはやはり研究でありまして、大学院の教育を充実させて、すそ野の広い研究医を育てていけるような体制を大学がつくっていかないといけないと思います。
 そして、医学教育の改革につきましては、どういうものが改革にとって必要なニーズであるかということは、かなり今回の、これまでの7回の会議で出てきたと思うのであります。総合的な全身を診られる医師となるためのニーズを視野に入れた教育であるとか、あるいは留年生が増えてきております。そういうものに対する対応もできるような大学の医学教育といいますか、また地域の医療のニーズに合わせた医学教育をしなければいけない。そういうニーズというところが十分見えてきた、提示されてきたと思います。これで今までの3本柱、基本的な診療技術の改革、地域医療マインドの涵養(かんよう)、研究マインドの涵養(かんよう)という文部科学省の3本柱、これはそのまま、それを更に充実していく形で、今回出てきたニーズを踏まえた形で充実させていくことが重要なのかなと考えます。少し長くなりましたが。

【安西座長】  よろしいですか。

【黒岩委員】  はい。

【安西座長】  黒岩先生の言われることはそのとおりなんですけれども、それをどうやってやったらいいのという議論をしているので、ある程度そろそろ具体的にこういうやり方があるのではないかというのは、それは今日は随分頂いているので、本当に有り難いなと思いますけれども、もうそういうステップに来ておりますので、よろしく御協力のほどお願い申し上げます。
 どうぞ。

【木場委員】  ありがとうございます。私は医療の現場にも携わっておりませんし、医学教育にも携わっておりませんのでなかなか議論の内容が難しいと感じることもありまして、お隣の片峰先生によく通訳をしてもらいながら参加しております。素人的な観点で恐縮ですが、様々な資料を拝見して、まず私が非常に興味を持ったのは、労働力としての女性の医師の位置づけについてです。頂いた意見の中では全くワーク・ライフ・バランスが解決されていないという御指摘もあったり、あるいは妊娠・出産で立ち去ってしまうとあるのですけれども、これらのせっかく専門的な技能を持った女性たちが働きやすい環境をもっと整えることによって労働力が確保できないものか。もっと体制を整えればお医者さんが確保できるということになれば、今議論している定員の数にも影響を与えるのではないかと感じました。離職された方がどのぐらいで、出産しどの程度の人が戻っているのかデータがないので分からないのですが、戻りやすい環境をつくるということが非常に重要だと考えます。これは医学の現場だけではない話ですけれども、重要な労働力として検討すべきという感想として一つ持ちました。
 2番目ですけれども、私も新たに知りましたしCBTとかOSCEとか、いろいろな試験があるということでございますが、ここで疑問に思ったのが、合格基準というのが大学によってまちまちというふうになっているのですが、これはどうしてなのか。素朴な疑問として、先ほど来、権威のある試験ということであれば統一した方がよろしいのではないかなというふうに思いました。
 それから、最後は希望に近いのですが、OSCEなどというのは、実際にロールプレイング的に患者さんに見立てていろいろと対応するというようなことだと思うのですが、違っていたらごめんなさい。それをテストするのだと思うのですが、私の個人的な子供のときからの体験で言うと、いい先生というのはある程度、技術がいい先生はもちろんですけれども、コミュニケーション能力というのを非常に大事にしていただきたいなと思うのですね。私、中学、高校と慢性の喉の病気を三つぐらい持っていて、月に何回も耳鼻科に行っているのですが、その医師は、機械的な作業で人と目を合わせてくれないわけですよ。だから、道端で会っても、私が挨拶しても、顔を見てもわからない。きっと、喉とか鼻を見れば私だと分かるのでしょうが、5年も通っているのに顔も覚えてくれていなかったのかというのはどうかと。
 あるいは数年前に家族の者が脳の疾患で倒れて、説明してくれるのですが、CTのレントゲン画面の右と左って逆になるのですよね。その大前提を言わないで右が、右がと言っても全然、話と指しているものが合致していなくて伝わりませんでした。そういうことは現場に行ってからということもあるのでしょうが、もう少しコミュニケーション能力、相手から情報を引き出したり、打ち解けたり、あるいは難しいことを簡単に例えたり、分かりやすく伝えるというような、そういった能力をOSCEになるのか分かりませんが、学部のカリキュラムに取り入れていただきたいというのが患者としての希望でございます。
 以上です。ありがとうございました。

【安西座長】  ありがとうございました。
 貴重な御意見だと思いますが、特に女性医師の労働検討の問題というのは、問題点は指摘していただいていますけれども、なかなか具体的にどうしていくのかということはあるかと思いますので、それでは。

【濵口委員】  今の女性医師の問題、非常に大きな問題だと思います。医学部の大体3割から4割が今女性になっています。我々の世代ですと1割から2割でしたから、この人材を活用するかどうかで現場はすごく変わってくると思うのですけれども、幾つかハードルがございます。それは例えば子供をもうけたとき、それから、子供が病気になったとき、それから、小学校の低学年のとき、ここがハードル。それから、最後は介護なんですけれども、全体にシステミックなサポートかないんですね。それから、女性医師が個人的な幸福を得ようとすると結婚する相手はやっぱり医師が多いんです。お互いに非常にハードな生活をしておりまして、子供が病気になって熱を出しているのに誰も見る人がいなくて、人の子供の熱を治しているという状況がいっぱいあるんですね。
 この13ページのところ、調べていただいた資料の中に実例が幾つか出ているんですけれども、もっとシステミックな調査をやるべきと思います。これは先ほどの地域医療枠と同じレベルの重要な課題だと思うんですね。9,000人いて3割としたら3,000人の人材がいるわけですね。そこをどう活用するかということは、地域枠を活用するのと同じぐらいの重みがあると思いますので、これをどういうふうに政策的に具体化するか。幾つか具体的な点もあるのですが、夜間保育をやるとか、病児保育をやるとか、それから、小学校低学年のカバーをどうするか、それを地域全体で見ていくというシステムが出れば、女性医師も安心して働く。
 うちの大学の例を見ますと、例えば産婦人科は50代、60代は女性が10%なのですが、20代ですと実に70%いるんですね。30代になりますとこれが50%に減っていくんです。つまり、だんだん現場を離れていきます。それから、お産をやらなくなります。外科的な手術。そこをどうサポートするか。特に35歳の壁というのが明らかにありまして、それを超えればずっと勤務していただける。ほんの数年間のサポートが大きな劇的な効果を生むと思いますので、これはもう少し検討が要るのではないかと思います。

【安西座長】  ありがとうございました。事務局と相談させていただきます。
 どうぞ。

【桑江委員】  濵口先生、大変ありがとうございました。今のお話は、木場委員からも御提案があったことは、私もずっと小さいころから苦労してまいりましたので、余り日本の状況は変わっていない。私が医者になったときから余り変わっていないというのを実感しております。
 これは医者だけの問題ではございませんで、日本全体の問題でございます。それは日本の女性の地位は、ほとんどの発展途上国よりも下ですので、それは本当に日本の大きな問題なのですが、副大臣いらして大変恐縮なのですが、やはり政治の状況がなかなか女性をうまく活用するという方向に行きませんし、議員の方もなかなか女性という立場で御発言いただいている国会議員の方もなかなか少のうございまして、皆さん孤軍奮闘されている。医者に関しては、有り難いことに医師不足があったもので、特に産婦人科は医師不足かあったものですから、ここの40歳以下は女性が半分ですので、何とかこれを生かさなければ産婦人科医療は成り立たないということで、学会の上の方たちがある程度、気がついてくださったということで、ほかの科よりもある程度先駆けて問題に取り組んでいただいております。
 私たちとしては、今年、女性代議員が今まで370名中4人しかいなかったのが17名当選させたりとか、そういった方もやっているのですが、やはり具体的に目の前の女性が妊娠されたときに、これを何とかサポートしたいというのは現場の判断なのですが、一つは、しつこいようですが、やはり医者の数の問題で、例えばこれは5人いるところに1人妊娠されました、2人妊娠されましたといったら、ほかの3人は死ぬ思いをするわけですね。当直がその分カバーできないので。9人、10人いたら1人くらい妊娠して4か月産休をとったところで大丈夫なんですよ。ですから、ある程度の研修指定病院、急性期病院は医者の数がいれば何とかクリアできる。その方が戻ってくるまでみんな何とかなるわけですね。ですから、どうしてもそういった人数の多いところでトレーニングせざるを得ないです。
 最終的に思うのは、女性は、先ほどのお話にもありましたようにコミュニケーション能力という意味では優れた方も大変いらっしゃいますし、共感能力、相手の立場に立って考えるということは非常に優れた方も実際多いです。そうすると、今後、その活躍できる分野というのが、もしかしたら今までは余り顧みられなかったかもしれませんけれども、恐らく高齢者、65歳以上の方が今後どんどん増えてくる。そういうことで医療は非常に医療費も高くなってくるだろうという予測もあるのですけれども。
 しかし、皆さん、亡くなるときは在宅で、うちで死にたいよという方もいっぱいいらっしゃったときに、じゃあ、その在宅を支えるところに、御家庭のある女性医師が活用できないかとか、産婦人科の現場としては昼間だけでもお産をとってくれればいいよとか、一人一人丁寧にすくい上げていくことで何とか現場から変えていかざるを得ないのですが、そのもとになるところ、院内保育所に関しましては最近どんどん増やしていただいて大変有り難いと思っておりますが、お子さんが病気になったときには、今のところはなかなかカバーできることがないので、そういったことは公的病児保育だけでは無理で、やはりそれを見てくださるファミリーサポートの方ですとか、自治体によってはファミリーサポートをしっかりしてくれるところもありますけれども、最終的には肉親に頼らざるを得ないといったところがどうしても壁としてあります。
 ただ、少し有り難いのは、今までは妊娠したら、もう当直ができなかったら、あなたは駄目ですよ的な、そういった現場の指導医の冷たい目線があったのですが、それは徐々に改善されてまいりまして、おかげさまで、大きな声ではだんだん言えなくなってきたというのは非常に私たちの闘いの成果かとは思っておりますけれども、少しずつ、少しずつは変わっています。女性の能力を生かすということがこれからの日本にとっていいことばっかりで、悪いことないと思うんですね。介護、あるいは在宅といったところでは、雇用の確保もできますし、今、おうちで悶々(もんもん)としていらっしゃってなかなかエネルギーを発散できないでいる高学歴の女性の方、たくさんいらっしゃる。この女性の力を何とか生かしていく、その率先的な役割をやっぱり女性医師の活用で何とか切り開いていきたいなと思っていますので、今後とも引き続きよろしくお願いしたいと思います。
 あと、最後に一言、もったいないという意味では、国家試験に合格されていない1割の方が、この1回の知識を問うことができないということだけで、本当に医者としての能力がないのかなというのが私としては、もしかしたら知識偏重ではなくて、それは医学はどんどん進歩するので、そのときが常識なことでも後で引っくり返ることなんていっぱいあるわけで、そうすると多分、目の前の患者さんに対しては考える力の方がはるかに大事だと思っておりますので、このあたりを少し活用していただけると、少し医師不足に関しても光明が見えるのかなと思っております。長くなってすみません。

【安西座長】  女性医師の問題についてはまた議論させていただければと思いますが、医師を増やせば大丈夫だと言われると、今度、医師を増やす話に、どうするのかって、全部がリンクしているんですね。それを全部システムとして解決していかなければいけませんので、それは是非御理解いただければと思いました。
 それでは、今日御発言のない方お2人、それから、矢崎委員。少し時間が過ぎてしまいますけれども、最後に副大臣にお話しいただければと。永井委員と、手短に、申し訳ありません。

【妙中委員】  はい。分かりました。

【安西座長】  あと数分しかありませんので。

【妙中委員】  座長が最初の方で言われた医学は医学界で閉じているという話、そういう意味で先ほど片峰先生がお話しされたのは、国際貢献も含めてすごく重要なことだと思います。医学、医者が貢献すべきところは、患者さんを救うことももちろんそうなのですけれども、産業界等も含めて国の進む方向、保健医療も含めて、その方向はすごい大事だと思います。
 例えば例を挙げて言いますと、レギュラトリーサイエンス、薬事行政などもそうですけれども、ああいうのはこれまでの薬学部の先生方が薬を中心にということで、中心だったんですけれども、臨床経験を積んでおられるお医者さんが貢献できるところっていっぱい出てきているわけです。そういう意味からすると、例えばもう既に始まっていますけれども、省庁を超えた大学院の連携であるとか、そういうことである程度本当に能力を持っておられるお医者さんたちがこういうところにかなり貢献できるということは、もっといっぱいあると思うんです。
 それはもちろん連携大学院で解決できるのですけれども、研究医の養成なども同じようなことも含めて、そういう方々がキャリアパスをして医学部の中にもう一度戻ってこられるというようなことがすごい重要で、そういうことを組み込んでいければ、長崎の先生がお話しされたように、若い先生方にも刺激を与える。選択肢を増やしていけるということで、そういう意味で厚生労働省や経済産業省や総務省なんかとの連携の大学院でやったりとか、そういうようなことも今後は必要なのではないかなと思っております。
 以上です。

【安西座長】  ありがとうございました。
 では、真田委員。

【真田委員】  チーム医療のことに関して是非医学教育の中に入れていただきたいというのが私の要望でございます。現在、看護学部の方、看護学では200の大学があって、年間2,000人の修士の学生を出しております。それとともに日本看護協会で養成した専門看護師、認定看護師は1万人になりました。この時点でやはり医師の偏在、あるいは私どもの専門性の発揮ということを考えますと、看護師の能力をチーム医療の中で使っていただく方向性も教育の中で考えていただきたい。是非チーム医療に関しての医学教育も行っていただきたいと思います。
 以上です。

【安西座長】  ありがとうございました。
 永井委員。

【永井委員】  医師が足らない分野というのは地域医療と国際医療だというようなことのお話を伺った中で、その解消策として医師の養成で対応するというのが一つだと思うのですけれども、そのときに地域枠という中に更に社会人枠だとか、留学生枠を入れることが、その地域に定着する医師マインドの高い者をある意味では入れていく道になるのではないか。そのあたりの改革がどうなっているのかなという、それをもしやっていただければと。
 それからもう一つは、医療制度全体で対応するというのがもう一つの解決策だと思いますけれども、そういう中で先ほど公立病院、地域医療支援センター等の役割がありましたけれども、へき地等において、ある意味ではその過疎地において開業医として頑張る医師に対する、公的支援システムというのがどのぐらい考えられるのか。それから、桑江委員がおっしゃったように終身そこに土着しろというのはちょっと余りにも最初の決断が大き過ぎるのではないかという意味では、いろいろな転身をする道、又はそこにおいても更に最先端の医療の勉強ができるような支援スキーム、そういったものを構築してあげないと、余りにも島流しにあったような感じでの地域医療の担当者というのではかわいそうではないかということが今後検討するべき問題ではないかと思いました。

【安西座長】  ありがとうございました。
 医師が本当にきめ細かく地域に、きめの細かい意味での地域によって不足しているのか、足りているのか、将来はどうなのか、そういうエビデンス、データが非常に大事だと思いますのと、今おっしゃったような、あるいは先ほどからありますような仕組み、それをやっぱりきめ細かくつくっていかないといけないということもあるかと思います。その上で大きな流れというんでしょうか、これからのやはり医学教育と、それから、医師の人数を含めたキャリアパス、人材育成全体のことについて、ここがある意味責任を持って議論をしていく必要があると思っております。一応、社会人枠はあるんですよね。ちょっと長くなって申し訳ありませんが。多少は、今。

【新木医学教育課長】  社会人枠というか、学士編入学制度というのがございまして、大学によって若干ばらつきがありますが、5人とか10人とか持っている大学はございます。

【安西座長】  医学部の場合、留学生がほとんどいないのではないかと思います。それはちょっとまた別の話。
 では、矢崎委員。それで最後に副大臣にお願いします。

【矢崎委員】  女性医師の問題ですが、これは女性医師だけではなくて我が国全体の問題で、M字カーブというのは我が国特有の現象で、これをなくすというのがやっぱり基本的な方針だと思うんですね。それで、私が言う立場ではないかもしれませんけれども、今、政府と党の社会保障と税の一体改革案で、今まで高齢者の3経費で財源がずっと行っていたのを今度新たに子育てという大きな柱を入れて、そこで仕組みをつくろうという方針で、それには消費税の増額が必要なので、是非女性の方に賛成していただきたい。
 もう一つ、例えば幼保一元化というのは子育てで一番大事なところで、我々はずっと10年近く前から主張していたんですけれども、なかなかやっぱり省庁の縦割りのせいで実現しなかったのが、民主党政権になって省庁の縦割りをなくすということで文部科学省の御協力も得て、今、幼保一元化というのが、長年の念願が果たしてきたので、女性に対しての対策は一歩一歩進んで、抜本的に変えるというのは難しいので、財源の問題で是非消費税を女性が賛成していただくと有り難い。

【安西座長】  ありがとうございました。
 それでは、副大臣にお話しいただければと思います。

【鈴木副大臣】  もう時間が超過していますが、今日は大変多くの論点と大変いい議論がございましたので、若干お時間を頂いてお話をさせていただきたいと思います。
 まず、大学の指導体制の強化、それの財源の確保ということでございますが、全くおっしゃるとおりで、恐らく政権交代後、政策の方向性が劇的に変わったことの一つだと思っております。もちろんまだまだ足らないということは我々承知をいたしておりますけれども、私が副大臣になりましてからも大学病院及び医学部に対しては診療報酬ベースで七、八百億、補助金、運営費交付金ベースで200億、合わせまして1,000億ぐらい収入の改善が見られているのかなと。ただ、この10年間、余りにも過酷なことを国としては強いてまいりましたので、それが十分リカバーされていないという認識は持っておりますので、政権の方針を加速していきたいと思っております。その際にまさにこれを加速できるかどうかは、先ほど矢崎委員から言っていただきましたけれども、税と社会保障の改革が成功するかどうか。これが子育て支援についてということも含んでおりますけれども、やはり医療に対する財源をきちっと確保していくということがまさに今回の社会保障改革のメインの一つでございます。
 当然、そうなれば医療費の中に、広義の医療費の中に医療人材の育成のための経費ということも当然含まれるわけであります。もちろん、それを支える医療研究の経費というのも含まれるわけでありまして、そういうマクロの議論をきちっとしていきたい。それと、そもそも我が国の高等教育予算というのは対GDP比国費ベースで0.5%でございます。アメリカにおいても1.0%でございまして、あるいは民間企業からの拠出ベースで言っても日本は0.25%、GDP比ですね。アメリカは1.0%と、こういうことで、アメリカに比べて政府は2分の1、民間は4分の1ということであります。恐らく医学部だけでとりますと、もっとその差がつくのではないかなと思っております。アメリカの医学教育はやはり民間の資金にも相当程度支えられている。こうした社会、税の負担者、あるいは民間のドネーション、この両方の意味で国民の皆さんの理解というのは非常に必要ではないかなと思っています。
 ただ、加えて、その予算を確保した上で、それをより無駄なく効果的に使っていくという観点で是非お考えを頂きたいのは、あらゆるセクターが連携をするということでございます。それはもとより文部科学省、厚生労働省、総務省、経済産業省、こうした省庁間の壁を超えて、これも少なくとも2年前からかなり劇的に改善はしつつあるのではないかなと。私と大塚厚生労働副大臣は連絡を取り合わない日はない。毎日のように医療にかかわる話で連絡をとっていることは事実でございますので、そうしたことで、省の壁を超えていく。それで、そのことでどうしてもこれまでは大学、いわゆる文部科学省系の病院、そして厚生労働省系の国立病院、そして総務省といいますか、公立病院、そして厚生労働省はもちろん民間もやっているわけですけれども、そこの間の連携というものが必ずしも十分でなかった。あらゆる意味でですね。
 ここの点は、アフィリエートというコンセプトを、またアフィリエート・ホスピタルとか、アフィリエート・クリニックとかいうことも含めて、人材育成のところでもさらに拡大をしていけるのではないか。グッドプラクティスは出てきていると思いますので、これをもっと広げたい、あるいは深めたいと、こういう思いを持っております。先ほど栗原先生からお話がありましたけれども、まさに分院というのが、アフィリエートの分院的な機能、私も慈恵の教育はすばらしいなと思っておりまして、いわゆる偏在で不足しているという部分に慈恵の卒業生がかなり行っておられるというのも見て、非常にうまくいっているグッドプラクティスの一つだと思いますが、おっしゃるとおりアフィリエートとか、ブランチとか、そういうホスピタル、クリニックのネットワークをどういうふうにつくっていくのか。大学及びかなり拠点的な病院がそういうネットワークをつくっていただくということは大変大事だと思っております。
 それから今日、地域枠の御議論がございました。是非来年度に向けましてこの地域枠をどう更に発展をしていくのか。別に枠の数を増やすという意味で申し上げているのではなくて、濵口先生がおっしゃるようにそれをどう、より地域医療につなげていくのかという意味での発展ということで、それは何か施策を一歩踏み出していきたいなと。かなりの大学で、県下で御協力を頂く中で、地域医療支援的な機能については、拠点はできつつあると思います。
 これをいかにそうしたことにつなげていくか、充実、拡充をしていくかということだと思いますが、ここも桑江先生からお話がありましたけれども、やはり根なし草ではいかないわけで、どうやってローテーションということと、あとはネットワークによるバックアップという、まさにネットワークとローテーションというキーワード、それをオーガナイズ、アレンジをする地域医療センター機能を大学が地元のいろいろな行政及び医療関係者と協力してどう構築していくのか。これは厚生労働省もこういったことでいろいろなプロジェクトをやっておりますから、この連携をより密にしていくということで、この施策の点検をしていきたいと思っております。
 それから、あわせまして人材においても、教育人材についても100%教育にエネルギーを注(そそ)ぎ込んでいただく人が当然中心にいなければいけませんけれども、フェロー的な人たちというものを考えていきたい。コラボレートしていただく方々、そういう能力及びそういうマインドを持った方々というのは地域にいっぱいいらっしゃるので、その人たちをもっと積極的に活用できるような仕組みと、それに対するインセンティブというものを是非皆様方のお知恵も借りながら一歩踏み出していきたいと思っております。
 それで、今日、医学教育、卒前、卒後を含めました、いい御議論を頂いたと思っています。まさにプロセス評価、そして考える力、全くおっしゃるとおりで、そういう意味で医師国家試験についての御議論も厚生労働省でしていただいております。あるいは卒前教育、卒後教育の議論もしていただいていますので、この会としても是非御提言なりしていただければと思いますし、私どもも一緒に、ずっと厚生労働省の村田さんも参加していただいていますから、これはしていきたいと思います。私も多くの医学部を見させていただいて、6年生がもったいないなということを非常に思います。あの空白で2年分ぐらい、せっかくいいところまで来たのに少しロスして、またそれをリカバーするのに何か卒後臨床研修をやっているような感じもあって、1年の臨床空白で2年分ぐらいもったいないようなことになっているなというようなことを思いますので、何かいいつなぎができたらいいなと思います。
 それと、大学入学時のいわゆる偏差値と、医師国家試験の合格率というのは国立などは余り相関していない。これは望ましいことなのか、望ましくないことなのかよく分かりませんけれども、私も大学教育を全部見ているわけですが、医学部のいわゆる偏差値的な要求水準、現状は高過ぎると思います。一方で、その分、何か欠けている部分があるということも私も痛感いたしておりまして、ここはやはり入試改革ということは大いにしていただきたい。いわゆる学力というものは何なのか。要するに医学生としての必要な力というのは何なのか、あるいは医学を学ぶ力というものについての御議論は、もう一度していただいて、かつそのことをきちっと入学選考にも反映をしていただきたいと思います。
 最近、いろいろ総長とか学長にお会いしておりまして、これは医学部だけではないのですけれども、あらゆる入試を変えてくださいということを申し上げると、入試は学部自治であるというふうに総長の皆さんはおっしゃっておりますので、ということであれば、学部自治を発揮していただく余地はあるのかなと思います。その点も私どもは、当然、きめの細かい入試選考を行えば、それに対する手間といいますか、コストがかかることは十分承知しておりますので、コストを応援させていただくことで変わるのであれば、そのコストは私は十分安いコストだと思います。納税者の皆さんを説得するに足るだけの意味は、私はあると思っています。
 それで、今日は非常にいいキーワードを頂いたなと思いましたのは、テーラーメイド・エデュケーションというのは本当にそのとおりだと思います。志とそれにちゃんとテーラーメイドされたものがインタラクティブになっていくということで、その人たちが持っている志というのはどんどん膨らんで、そしてそれぞれの分野で非常に有意な人材を輩出するということではないかなと聞かせていただきました。留年率の問題、あるいは合格率の問題も結局、そもそものベーシックな学力が医学部生が劣るわけがないわけであって、つまりはやっぱり志が維持できないというところにあるのだろうと思います。したがって、そのための、これもいろいろグッドプラクティスはありますので、是非これを加速していただきたいと思います。
 それともう一つ、教育観、何か全て教育機関がサービス、教育サービスを学生に施すというモデルで考え過ぎているところに、この10年寄り過ぎてきているのではないかなと。私も大学教員をやっておりますけれども、学生同士の学び合いとか、私は斜めの関係ということを言っていますけれども、先輩、後輩、あるいはその先の斜めのいろいろなロールモデルに触れる。あるいは屋根瓦方式という言い方もあろうかもしれません。近いところは屋根瓦と言うのでしょうけれども、この10年先、20年先、30年先のこの自分の目標となるようなそれぞれの人たちとの出会い、絆(きずな)、そうした学びのコミュニティとして縦、横、斜めの非常に分厚い学習集団をどういうふうにオーガナイズするのか。もちろん縦のラインの予算のところをけちるというつもりはありません。そこは幹は太くしますけれども、併せてそういったことも考えていきたい。アフィリエートだとか、フェローだとかということともつながっていくと思っております。
 それから、診療科単位の学びから総合的な臨床、あるいは生命科学全般に対する、トライアル、チャレンジは私ども積極的に応援をしていきたいと思いますし、そういうことのきっかけになる今回の懇談会であってほしいなと思います。
 それと、これは私どもの出した資料にもございますけれども、医学教育の国際化ということはいろいろな観点から考えられなければいけないと思っております。留学生をもっと積極的に入れるということも国際化になると思います。と同時に片峰先生からお話がありました。大変すばらしいことだと思います。海外の医学教育機関とのジョイントであるとか、コラボレーションだとか、それは学位授与、あるいはマスターのカリキュラム、いろいろなことを協働につくり、あるいはそれをレシプロカルにするとか、こういうことも私どもとしては戦略的かつシステマティックに応援をしていきたい。これは医学部以外のところではダブルディグリーとか、ジョイントディグリー、今年度から相当推進いたしているところでありますので、医学部でも積極的にお考えいただきたいと思います。
 そのときに座長は中教審の大学分科会の部会長でもあられるわけですけれども、それぞれの医学部がそれぞれのミッションや機能について、よく考えていただきたい。僕は特化は無理だと思ってはいます。医学部は、地域医療人材、研究医療人材、あるいは国際医療人材、もっと言うと、医療ガバナンス、公衆衛生、あるいは予防、様々な人材について、特にそれぞれの県にとってみれば、その大学が全て負わなければいけないというケースもあると思いますが、しかし、どんな医学部でもいろいろな要素を全部フルフルでやるということは無理なので、その医学部の中でのポートフォリオ、それぞれの機能を、どういうウエートづけで戦略的にそれぞれの大学の文脈、置かれたミッションの中で再構築、再構成していただくかということも考えていただきたいと思いますし、いい意味での個性化といいますか、個別化、そしてそのときに各大学でフルフルできないとなったときに、連合大学院、連携大学院などを、研究領域を特化した連合大学院などは既に進んでいますけれども、もうどんどん進めていただきたいと思います、それ以外の観点でも医学部間の連携、協働、国内の連携、もちろん海外の連携、こうしたことも応援をすることも一歩踏み出していきたいと思っています。
 最後に女性の問題でございますが、もちろん我が国全体が、という御議論がございました。それに対して子ども手当等々、あるいは子ども政策の充実、それから、おかげさまで幼保一体化のレポートが7月6日にまとまりましたので、そういう意味で劇的な進歩を御期待したいという、矢崎先生からお話を頂いたとおりなのでございますが、ただ、私はその議論だけでは足らないと思っております。少なくとも、医学関係者がいる中で失礼ながら、私ももともとは労働法を勉強していたのですけれども、我が国の女性医師はM字にすらなっていないのではないか、逆V字ではないかということを申し上げたい。
 つまり、いわゆる一般の企業の女性の労働基本権、労働時間の問題、労働安全衛生の問題も、メンタルなことの安全衛生も含みますけれども、その基準からに比べて、医療業界は劣後しているという御認識は共有していただかないといけないと思います。少なくとも医学界でやっているような労働条件でやっている企業は、一部上場企業、一部上場ではなくても従業員300人以上の企業で1社もないということは反省の上、共有していただかないといけないと思います。私はずっとこの間、桑江先生といろいろ医療事故の問題とかも取り組んできましたけれども、この認識が私のような者から見ると極めて希薄だということは本気で共有していただかないとやっぱりいけないのではないか。日本全体の水準がOECDの下の方かもしれませんけれども、医学だけで見ればもっと下だということはですね。
 これは一女性の問題だけではなくて、真剣にワーク・ライフ・バランスのことを考えないと、男子学生だって、こんな業界と言ったら怒られますけれども、昔は猛烈で、もちろんステータスの高い仕事でありました。職業に貴賎(きせん)なしといえども、私は、医師というのは、あらゆる職業の中で、これほど貴い仕事はないというふうに若い人たちには常に言い続けています。しかし、物事には限度というのがあるので、昨今の先輩医師たちの過酷な労働状況、そして過酷ないろいろな訴訟環境、あるいはクレームの状況等々を見て、極めて若くて有意な高校生がこの分野への進出をためらっているという現実があるということをやはり医学関係者、私どもも含めて、もっと深く認識をすることが我が国の医療水準の維持、発展、そしてひいては国民医療の水準確保、維持、発展ということには不可欠ではないかなということを申し上げたいと思います。
 長くなりまして恐縮でございます。今日も大変すばらしい議論、ありがとうございました。

【安西座長】  ありがとうございました。
 大変たくさんの宿題も頂いたように思いますけれども、副大臣、この件、大変応援してくださっておりますので、中間まとめのような形をつくっていくことになると思いますが、是非国民の方々向けにアピールできる、これだというものがつくれていくといいなと思っております。

【中川委員】  確認なのですが、今、鈴木副大臣がおっしゃったことは、この検討会の報告書に方向性として反映されるんですか。

【安西座長】  そのこともこれから議論させていただければと思いますので、それはそういう意味でありますけれども。

【中川委員】  もしそうであれば、冒頭の方におっしゃっていただいた方が、我々もいろいろな考え方を申し上げられるのかなと思います。最後の締めでそう言われてしまうとちょっとどうかなと思うのですが。

【安西座長】  次回また続けられますので、それは御寛容にお願いいたします。また、今の副大臣の話を受けて御意見のおありになる方は、これは御遠慮なく事務局の方へメールでも結構ですのでお出しいただければと思います。次回につなげさせていただければと思います。全体としては医療費の問題があり、それから、もちろん今、最後に言われた労働環境等のこともあるかと思いますが、全部が重なった、お互いに関係し合ったことでありますので、そこを是非解きほぐしていい形のメッセージにしていければと思いますし、また、題は分かりませんけれども、中間まとめ的なことになると思いますけれども、その先があるということでありますので、それも御理解くださいますようにお願いします。副大臣の言われたことだからというわけではなく。

【鈴木副大臣】  今日の皆さんの御意見を聞かせていただいて、私なりに思った感想を申し上げたわけで、今日、冒頭に話せと言われれば、多分、また違った色合いのお話を申し上げたかと思います。もちろん最初に話すのも、中間で話すのも、終わりで話すのもあろうかと思いますが、そこは座長の議事の進行にお任せしているというつもりです。

【安西座長】  そうです。

【中川委員】  いや、感想ということであればそれで結構だと思います。

【安西座長】  副大臣が最後に言われたのは宿題だというふうに申し上げましたとおりで、次回また議論を続けさせていただければと思います。今日は大変忌憚(きたん)のないといいましょうか、貴重な御意見を頂きましてありがとうございました。事務局側も一生懸命やっておりますけれども、また頂いた御意見をまとめて、前回のまでは一応まとめさせていただいておりますけれども、それに加えて更に続けさせていただければと思います。次回については。

【植木視学官】  次回の日程につきましては、現在、調整中でございます。申し訳ありません。決まり次第、改めて御案内申し上げます。

【安西座長】  よろしいでしょうか。それでは、時間が過ぎておりますけれども、もちろん、今日の議事進行は私の方の責任でございますので、それも申し上げておきます。
 それでは、ここまでにさせていただきます。どうもありがとうございました。

お問合せ先

高等教育局医学教育課

医師養成係
電話番号:03-5253-4111(内線3683)