平成23年6月13日(月曜日)午後1時から午後3時まで
文部科学省3階 3F1特別会議室
安西 祐一郎、今井 浩三、片峰 茂、木場 弘子、栗原 敏、黒岩 義之、桑江 千鶴子、竹中 登一、丹生 裕子、永井 和之、中川 俊男、中村 孝志、西村 周三、森 民夫、矢崎 義雄、山本 修三(敬称略)
磯田高等教育局長、新木医学教育課長、植木視学官、玉上大学病院支援室長、小野医学教育課長補佐
(厚生労働省医政局)村田医事課長
【安西座長】 それでは、時間でございますので、検討会の第6回を開催させていただきます。
御多忙のところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
会議に入ります前に、この会議は冒頭より公開とさせていただきますので、それを御了承いただきますようお願い申し上げます。
今日は前回に引き続きまして、有識者の方からヒアリングを行わせていただきます。今日は、医療法人社団KNI理事長の北原茂実先生、東北大学総長補佐・大学院医学系研究科長・医学部長の山本雅之先生のお二人の方に、お忙しい中、お越しいただいております。御協力いただきまして、誠にありがとうございます。
2名の先生方から20分ずつお話を頂きまして、それぞれ簡単に質疑を行わせていただいて、その後自由討議とさせていただきたいと思います。
前々から申し上げておりますように、委員の皆様にも御発言いただく機会ということもございまして、委員の皆様の中に、今日御発言されたいということで資料を配付しておられる方もおられますので、またその折にいろいろ御説明いただければと思います。
それでは、事務局からお願いします。
【植木視学官】 配付資料の確認をさせていただきます。
まず、座席表、1枚紙でございますが、この後ろにこれも1枚紙で議事次第をお渡ししております。
続きまして、資料1といたしまして、北原理事長からヒアリングのための資料として、両面で4ページまでの資料でございます。
資料2といたしまして、東北大学の山本部長から、こちらは全体で12ページの資料をお配りしております。
次に、参考資料1といたしまして、今井委員から資料を頂いております。
参考資料2といたしまして、桑江委員から、両面で1枚紙をお配りしております。
参考資料3といたしまして、日本医師会の中川委員から、全部で12ページの資料をお配りしております。
最後ですが、参考資料4といたしまして、こちらは西村委員からの配付資料でございます。全部で31ページでございます。
以上、配付資料のほかに、机の上には北原理事長から、『「病院」がトヨタを超える日』ということで、講談社+α新書をお配りさせていただいているところでございます。
乱丁、落丁等ございましたら、お知らせいただければと思います。
以上でございます。
【安西座長】 何かご質問ありますでしょうか。
それでは、ヒアリングに移らせていただきます。
最初に、医療法人社団KNI理事長の北原茂実先生から、御意見を伺えればと思います。恐縮ですけれども、20分程度で御説明をお願い申し上げます。
【北原茂実氏】 発言の機会を与えていただきありがとうございます。今日、本をお渡ししたのは、基本的な私の考え方を最近ちょっと理由があって、本にまとめましたので、後でお暇な折にでも見ていただければ幸いに思います。
この資料1なんですが、これの順番で話をしますけど、内容的には余り大きな意味はないと思っていただいて結構です。
最初にちょっとお話ししておきたいのは、結論なんですけれども、私は医学部の定員増ということに関しては、現体制下では賛成できないというのが基本的な立場であります。やりようによっては私は、少ない少ないと言われていますが、実は医者は充足しているのではないかと考えている。ただ、いろんなシステムが変わったりとか、社会が変わったりすることによって、今後医者がどう変わるかということは分からないのですが、少なくとも今の時点において、医者を増やすことは危険なんではないかと考えているというのが私の立場であります。
本題に入る前に、最初にちょっとお伝えしておきたいことがあるんですが、私が今一番危惧しているのは、この国がまた、歴史的な誤りを犯しているような気が実はしています。何かというと、3月11日に震災があって、その後から私どもはずっと、東北の病院の支援と、あと最近は、経済産業省とか八王子市と組んで、女川町の復興プロジェクトというのを立ち上げています。その間に実は感じたことがあるんです。
それは、最初の時点で女川町長が頑張って復興させるんだということを言って、国会議員の皆さんなんかと組んで、実は女川町復興案というのをつくっているんです。そのときに彼は、牡鹿(おじか)半島の住民を引き入れて、女川町の1万だった人口を1万5,000にして、理想的な町をつくるということをうたっていました。
私はその状態から入っていたんですが、ずっと行っていて、最後に行ったのは6月の初めなんですが、何を感じたかというと、現実は女川町というのは、私は既に壊れてしまったと考えています。なぜかというと、1万の人口が1,000人亡くなって9,000人になったんです。実際は今何人いるかというと、避難所に1,300人ぐらい、避難所以外にわずかに残っていますが、恐らく全部合わせても3,000人いるかいないかの状態だと思います。
恐らく復興が長引いているために、やる気のある人たちが皆、女川を去ってしまったということがある。その一方で、避難住宅にいる方々はどうなってきたかというと、次第にやる気、生気をなくしているのが私の感覚であります。その避難所で、野菜が足りないとかいう話をしているんですが、山の裏に行くと実は幾らでも山菜があるとか、そういう状態であるにもかかわらず、自らそれを何とかしようという発想が、既に欠けてきているということを感じる。
そこで何を言いたいかというと、実は女川町の復興というのは可能なのかということなんです。このままいったら、あとこの状態が半年続いたら、恐らく住民のほとんど全てが女川町復興という気をなくすのじゃないかと思っています。
で、実は最近政府が何を言っているかというと、10兆、20兆のお金を復興にかけるんだ、そのために消費税をどうのこうのとか、復興財源をどうするかという議論がなされています。これが私は極めて危険な発想だと考えています。何をするべきなのか、本当にどこを復興させるのか、そのために幾らのコストがかかるのか。その現状を抜きにして何を言っているかというと、10兆、20兆かかる。これは誰の意見か分かりませんが、そういうことが独り歩きしている。そのために、じゃ、何を増税するか、そういうところまで行ってしまっている。
そういう議論の進め方というのは非常に疑問を感じています。一番初めにやらなきゃいけないことは何かというと、現実をいかにきちんと把握することができるかということ。その現実に基づいて、いかに理論的に戦略を構築することができるかということ。戦術というのはあくまでも最後の問題だと私は感じています。
それから、もう一つちょっとお話をしておきたいことは、この国で私が理解されていないと思っているのは、実は民主主義とは何かということが理解されていないと思っています。例えば、私はここに何て書いてあるかといったら、株式会社北原脳神経外科病院代表取締役社長と書いてありますが、私たちはこういう組織なんです。でなければ復興プロジェクトはできない。八王子のまちおこしはできない。海外事業はできない。要するに医療法人ではできないんです。したがってこういう会社を立ち上げました。
これはただし、日本の国内においては医療に携わることができない。なぜかというと、株式会社の医療参入が禁止されているからであります。それが本当に正しいのかどうかということをちょっと考えてみる。なぜかというと、株式会社ってどうして生まれたか。西欧において商人たちが力を蓄え、ハンザ同盟をつくり、軍隊を養い、東インド会社をつくって、アジア貿易に乗り出した。その間に皇帝が倒れていった。
要するに、民主主義の発祥と株式会社の発祥というのは、実は同義であります。1人の力ではできないことを、皆でお金を出し合ってどうするかということが国家の始まりであり、自治の始まりであり、民主主義の始まりであると私は考えています。
そしてあともう一つあるんですけど、実はそれと時を同じくして、西欧では宗教改革が起こりました。これはカトリックからプロテスタントになって、お金を稼ぐのは悪いことではないという考え方が生まれた。これが西欧の実は市民革命であります。で、日本においては何が起こったかというと、江戸時代から何も変わっていない。士農工商の論理が生きていて、お金を稼ぐのは悪いことだとか、あとはお上のおっしゃるとおり、実はそういう風土がいまだに生き残っているのが日本だと私は考えています。
一つ分かってほしいのは、税金とは何かという考え方なんです。税金というのは取られたものでもないし、あげたものでもない。というのは、我々が市長を選挙する、市議会議員の選挙をするとき、市長というのはCEOであります。市議会議員は役員であります。税金というのは皆がお金を出し合って、自分たちの目的を達成するために投資しているものであります。
したがって何が問われているかというと、使い道ではなくて利回りだと私は考えています。市長、市議会議員、あるいは国会議員でも首相でもそうですが、何を問われているかというと、皆の委託を受けて、税金というものをどう使って、国民あるいは市民に対してどう還元するかというのが本当の仕事だと私は考えています。
という考え方であると、もとに戻りますが、果たして東北の復興ということ、10兆、20兆お金をかけて復興ということは正しいかどうかです。現地の人たちは全てを失い、そして高齢者です。この人たちに対して、堤防をつくり、高台に住宅をつくったときに、果たしてこれはリターンがあるのかないのか。リターンがないとするならば、この国は莫大な損失をこうむることになります。それは今までこの国がやってきたことです。
例えば、東南アジアに大量のODAをまく。ただしそのODAによって、国民はリターンを受けていない。そういうことをいつまでも続ければ、この国はもたないということが、私の基本的な発想としてあります。ですから、ここでお話ししたかったことは何かというと、医学部の定員も同じことでありまして、基本的には今のプロセス、要するに現状をきちんと認識するということ、それから論理的に対策を練るということ、それがあって初めて、その後の戦術的な問題に入れるんだということを考えないと、大きな過ちを犯すんだろうと私は感じています。
その最初のA)というところに入りますが、適正な医学部入学定員をどう考えるかということでありますが、まず、医師の数が足りない主張の根拠がどこにあるのかということであります。全てを合理的に考えた上で本当に足りないのかどうかということは、きちんと議論されてからです。どんな意見でも言うのは簡単なんです。例えば医学部を増やす。私は大賛成であります。なぜかというと、私は病院の経営者ですから、医師が増えて医師の給与が値崩れを起こせば、誰が得をするかというと私が得をする。
ただし、そんな単純な議論でいいのかどうかということをきちんと考えなきゃいけない。いろんな方がいろんな立場でいろんなことを言う。それはある程度、一面的なものにならざるを得ない。そういうことを総合して考えたときに、本当に何が正しいのかということをよく考えてほしいということであります。
私は先日ちょっと脳外科の学会で、面白い光景に出会ったんですが、脳外科学会の重鎮、名誉教授が皆集まって何を言っているかというと、女性医師の勤務条件を考えようと。女性医師が産休、育休をとるとか、子育てのために辞めてしまえば、若手の医者に対して非常に負担がかかる。だから女性医師の就業条件を考えろと。私はそれを見て思ったんですけど、その前にやることがあるだろうと。
なぜかというと、昔のようにベテランの医者、50歳、60歳の医者が楽をしていてはいけないんじゃないか。もうそういう時代なんじゃないか。そういうことをよく考えないで、若手が働けばいいという発想は、根本的にずれているんじゃないかと感じました。そういうことも含めて、適切な判断をしなきゃいけないということだと思います。
あと、よく言われるのが、OECD加盟国と比較ということなんですが、これは本質的に条件が全く違う国と比較しても、本当は私は全く意味がないんだと感じています。それは医療の体制も違えば、保険体制も違えば、民族が違う、疾病構造も違う。違うところを比較して何の意味があるのかということも、いま一度考える必要があると考えています。
さて、その下ですけど、一筋縄ではいかない未来予想と書いてありますが、私はもう一つ感じていることがあって、私たちが海外事業をやっているときに、最近多くの企業が私たちのところに来ます。なぜかというと、日本にいることに危機を感じているんです。大企業がこぞって東南アジアに進出、特にカンボジア、ラオス、ミャンマーあたりを狙っているということを感じます。もしもそういうことが起こったら、企業だとか、あるいは労働者とかが国内を脱出するような状態になったら、あるいは増税によって、今起こっていますが、高齢者がラオスに移るようなことが起こったら、果たしてこの国の人口はどうなるか、産業構造はどうなるか。全てが変わる。
全てが変わったときに、果たして医学部定員を増員したらどうなるのか、そこまできちんと考えなきゃいけないと思うんです。富裕層が逃げ出して、人口が減少して、税収、保険料収入が減少した国で、果たして医師の増員が可能なのかどうかということを、ちゃんと考えなきゃいけないというのが私の考え方であります。
もう一つ、下に流砂現象にどう対応するかと書いてありますが、今何が起こっているかというと、情報革命が起こって、情報を発信する、受け取ることが自由になりました。今までは砂粒に水をかけて固めて砂上の楼閣、お城をつくっていた。ところがそういうドグマが崩れて、全ての国民が自由に動けるようになった結果、何が起こったかというと、さらさらと流砂のように砂が動いてしまう。
ですから一枚岩に見えたアラブが崩壊してきた。中国も崩壊しかかっている。日本はどうかというと、内閣がもたなくなった。それが現状だと思うんです。その中において一体どんな論理がこの国を動かすことができるのかということを、きちんと考える必要があるかと私は思っている。今は全てが変わるときなのであって、もう大胆に踏み込んで、全てのことを根底から変えるということを考えるべきだと思っています。
その下、B)ですが、医学部入学定員を増やすことは可能かということなんですが、医療供給システムをそのままにして定員は増やしても、医師は増えずに教育コストがかさむだけです。なぜかというと、一昨年ですが、マッキンゼーが東大医学部の学生に対して就職の説明会に来た。100人の学生のうち、実は40人近くが参加しているんです。現実問題として、医者にならなかった学生も結構出ました。今年も私のかわいがっていた学生が、医者にならないという決断をしています。
なぜかというと、医者という仕事に余り夢を感じられなくなったから。そういう現状を放置しておいて、幾ら医者を養成してみたところで、基本的に医者が増えると私は感じられない。ですから、財源をそのままにして医者を増やせば医者の給料が減るだけ。そういうこともちゃんと考えなきゃいけない。じゃ、どこからその財源を持ってくるのか。そういうことも含めて、本当にそれが可能なのかどうかという議論をしてほしいと思っています。
それからその下。そもそも増員は必要かという議論でありますが、これは最初のところに書いてありますが、コーカサス&沖縄の不思議というのがありまして、なぜかというと、はるか昔からコーカサスは、実は平均寿命が90歳ぐらいです。沖縄の戦前も寿命が実は非常に長かったんです。現在はどうかというと、沖縄の寿命はどんどん短くなっています。これはなぜかというと、食生活や環境による変化であります。
では、昔90歳まで長生きして、皆が働いていたコーカサスと沖縄において、脳ドックがあったか、がんドックがあったか、高度救急救命センターがあったか。何もない。じゃ、医者が増えたら、本当に国民というのは元気になって健康になるのか、もう一度考えましょう。
これに関しては、もう一つ面白いデータがあります。スカンジナビアでやられた共同研究ですが、ランダマイズスタディーで1万人、1万人のグループをつくります。全部同じ健康診断をします。Aグループに関しては全て異常があったら補正します。薬を使い、食事をコントロールし、たばこをやめさせる。Bグループに関しては、いかに異常があっても大丈夫、大丈夫と励まし続ける。10年経(た)ったときにどちらの死亡率が高かったかというと、先のグループの方が死亡率が高かった。
そういうことも含めて、今の医療というものが本質的にどういうものであるかも考える必要がある、私はそう考えています。ですからそもそも増員が必要かということを考えたときに、ちょっと疑問もあるというのも本当であります。ここで重要なことは、自然も社会もその土地の絶妙なバランスの上に成り立っているのであって、それを人為的に力ずくで変えようとしても、決してそうはいかない。そうじゃなくて、事実に素直に目を向ける。そしてそれに従っていくことも大切だということが、今度の震災で我々が学んだことじゃないかと思います。
さて、もうちょっと下に行きますと、いかにも異常な医療職の養成数と書いてあります。ここは医師の数を議論していますが、実はこの国で養成されている看護師の数は約7万人であります。あとは介護福祉士が2万5,000人であります。両方合わせると10万人。ところが、15歳以下の子供の人数は1,690万人しかいません。1学年110万人しかいないんです。財源を考えた場合、110万人の子供の中で、10万人が看護・介護職になる、9,000人が医者になるという国が、本当に成立するのかどうかということ。そういうことは、きちんと考え直す必要があると思います。
医師の不均衡分布というのが問題になって、要するに都市部に集まっちゃうということです。いろんなことがありますが、基本的にそれって何かというと、無駄な統制、規制によって生まれていると私は感じるんです。本来は地方に行って働きたい人とかいろんな医者がいると思うんです。ただそれが自由な判断でできないということが、本当は一番大きな問題じゃないかと私は感じています。
さて、今何を考えるべきかということなんですが、要するに何をしなきゃいけないかというと、医者の定数を考える前に、医療の在り方とか、社会の在り方を、もう一度原点に戻って考えてみよう、そして本当に必要な医者とか医療職というのがどれだけ要るのかということを考えた方がいいんじゃないかということが、私の考え方であります。
その下、八王子まちおこしと書いてありますが、これは比較的どうでもいいです。どうでもいいんですが、我々は何をやっているかというと、八王子において医療費がかからないまち、病気にならないまち、医者が要らないまちというのをつくっています。これは本の中に書いてありますので、お暇なときに読んでいただければと思います。
その下、医療の海外展開ということでありますが、医療の海外展開として最近問題になっているのは、インバウンドのメディカル・ツーリズムがありますが、これはやってはいけない。なぜやってはいけないかというと、インバウンドのメディカル・ツーリズムで社会、世界に貢献した国というのはないんです。
実はタイにおいて何が起こっているかというと、お金儲(もう)けの集団がはびこって、外国人の富裕層、それからあとは自国の金持ちだけを相手にした医療を展開した結果、国民の95%が真っ当な医療を受けられなくなっている。なおかつ今度は、周辺の国に触手を伸ばしてそこから富裕層を連れてくるので、周りの国もどんどん貧しくなってくる。
日本はそれと同じことをしようとしています。同じことというのは、中国、ロシアの富裕層を連れてくる。そういうことが道義的、論理的に許されるのかどうかということ。今日の私に対する質問は恐らく、医療の海外展開というものは、医者のニーズを増やすかどうかということだと思うんですが、私はインバウンドのメディカル・ツーリズムというのは絶対に成立しないし、させてはいけないと考えています。
私が仕掛けているのはアウトバウンドのメディカル・ツーリズムで、相手の国に行き、相手の国の患者さんを治療し、相手の国の医療職を育て、その過程でシステムを売るだとか、教育をするだとか、機械を売って、何がしかのリターンが得られればそれでよしとするのが私の考え方であります。
その場合、実は医療者の定員は増やす必要はない。例えばアウトバウンドの場合は、はっきり言って定年退職されるような大学の教授とかが、今我々にいっぱい接触してきます。大学を辞めてももうちょっと教えたいとか、もうちょっと意味のある仕事をしたいということで接触されてきている。これに対してJICAがお金を出すような話にもなっています。
ですからそういうことで済むでしょうし、国内でインバウンドをやるときは、富裕層を連れてくるんではなくて、日本在住の外国人に対して医療を提供していく。そういうことが必要ですし、そのためには東南アジアから招いてきた研修生を通訳として使っていくとか、そういうことが大事になるんだろうと私は考えている。それは医師の定員増ということに結びつかないと思う。本来、医療というのは地産地消であるべきというのが私の考え方であります。
さて、医療の海外展開は、今後の医療専門職の需給に影響するか。ですからこれは影響しないというのが私の考え方であります。
その下、カンボジアプロジェクトなんですが、ちょっと時間が過ぎてきているので急ぎますが、カンボジアプロジェクトというのは、今年から我々が7年をかけて、カンボジアに総合医科大学、大学院、それから1,000床規模の病院をつくるということで、今日本のいろいろな企業とか、それからあとは経済産業省、外務省の支援を受けています。今年の6月ぐらいから順次着工していこうかと考えております。
これはいろんな意味があるんですが、我々がやるのは何かというと、グリーンホスピタルだと。要するに、エコ技術を全て満載し、日本の産業技術とか医療技術を全て網羅した、高度先進病院をカンボジアにつくって、これをASEANの中に広げていこうと。それで相手国の社会立国だとか社会開発、医療立国とか、あとは日本の医療産業の救済に働かせようということが、このプロジェクトのもとであります。
さて、その次に医学部定員をどうのこうの論じる前にするべきことがあるというのは、ここを読んでいただくと分かりますが、自由化して産業化して自立させない限り、医療の将来はないということなんです。将来のない分野に人材を投入することはできないんです。ですからまず、医学部の定員をどうのこうのする前に、医療がどうあるべきかということをきちんと議論してほしい。
最後に近くなってきましたが、医療を救うために文科省に今何をしていただきたいか。これは突拍子もない意見と思われるかもしれませんが、一応私の主張として聞いていただきたいんですが、実は小学校、中学校、高校において、もうちょっとまともな社会の教育、医療教育ということをしてほしいんです。例えば子供が頭を打ったときはどうするのか、老人がどうなったらどうするのか、何科に行くべきか、どういうことを考えるべきか、そういうことをきちんと教えなきゃいけない。
あともう一つは、例えば保険システムだとか医療というものはどうなっているのか、そういうことを社会の時間にきちんと教えなきゃいけないです。そういう認識がないために何が起こっているかというと、日々医者は苦労しているんであります。なぜかというと、何でCTを撮ってくれない、何でMRIを撮ってくれないから始まって、ありとあらゆる理不尽な要求が来ます。これは教育がきちんとしていないからであります。ということを考えただけで、医者の負担というのは私はかなり減ると本当は感じています。
その次、医療職養成課程の全面的な見直し。これは意味があることなので、ここだけちょっと聞いてほしいんですが、私は医学部は全て総合医科大学であるべきだと思っています。総合医科大学というのは、医学部と保健学部をつくります。医学部は6年間、保健学部は5年間。両方とも共通した基礎教養課程を置きます。これは2年間で学部の差はなく自由です。医学部に関しては何かというと、医学科、薬学科、歯学科の三つが医学部に属します。基本的には同じ教育をして、それでどの単位をとるかによって職種が分かれている。
これで何ができるかというと、私が主張したいのは、薬剤師に簡単な診断権と、それから処方権を与えるということであります。これによって解決される問題はかなりある。それからあともう一つは、保健学部は全員看護学科を必修にする。その後どの単位をとるかによって、看護師でありながら検査技師になる、看護師でありながら放射線技師になる。そういう体制にすることによって、医療の安全は増します。と同時に看護師不足だとかいうことが解消される。そういうことを考えていかない限り、こういう定数の不足だとかいう問題は解決しないんじゃないかというのが私の考え方であります。
あと最後、カンボジアプロジェクトというのは、我々は総合医科大学をつくることを考えていますので、是非興味ある皆さんに参画していただけるといいと思っています。
最後にちょっと著書と書いてありますが、今回本をお配りしたので、お暇なときにでも読んでいただければ有り難いと思います。
ですから私が最後に主張したいことは何かというと、定数だけを議論しても始まらないんです。どんな環境下でどれだけの医者が必要かということが大事ですから、医療そのもの、社会そのものの在り方を1から考え直さないで、最初に定数の議論をするということは、私は危険なんじゃないかと感じています。それが今日の議論であります。
ありがとうございました。
【安西座長】 ありがとうございました。時間を守っていただきましてありがとうございます。
それでは、東北大学総長補佐で、大学院医学系研究科長・医学部長の山本雅之先生から、やはり20分程度で御意見を伺えればと思います。よろしくお願いいたします。
【山本雅之氏】 このような機会を頂いて、どうもありがとうございます。私は、今日は震災からの復興と医学部定員の話、さらに、我が国の医学部の国際競争力という話をさせていただきます。お手元のパワーポイントの資料及びパワーポイントが画面に出ております。どうぞ御覧になってください。
次のスライドをお願いします。これはちょっと暗い写真になっていますけれども、ちょうど3月11日の夜です。私どもの医学部は非常に揺れまして、それでもう建物の中にいられないので、構成員が皆体育館に避難した様子です。この夜は雪が降ってきて、寒くて厳しい思いをしました。
次のスライドをお願いします。厳しい思いをしたのは医学部の私どもだけではなくて、これは皆東北大の先輩がつくった病院なのですけれども、赤で示してありますような病院は沿岸部の病院で、ほとんど流されてしまいました。それでそこにありますように、幸いにして残った基幹病院、気仙沼市立病院と石巻日赤病院、これらが大車輪で活動しました。
それで、私どものところは、地震の次の日から、医療支援チームをそちらに派遣して、避難所、それから病院の復旧に協力をしてまいりました。
次のスライドをお願いします。それで、すぐに困ったことは、物流が途絶えましたので、食べ物が入ってこない。それから生活物資も入ってこないということです。救援に行っている私どもの医学チームは、お店の前に並んで買い出しするわけにいきませんので、皆飢えてきています。それから東北大病院の備蓄も尽きていて、患者さんに食べさせるものもなくなる心配が出てきました。そこで、全国の医学部の皆さん、それから関係者の皆さんに緊急に御支援をお願いして、支援物資を積んだトラックをチャーターして道路を走らせました。これは荷物を受け取っている様子です。
このような荷物が救援に当たっている医師の生活を支えました。それから公的な支援が入るのに時間がかかりましたので、最初の2週間ほどは、避難所に行く医療チームにたくさんの物資を持たせて、支援に当たっていました。全国の皆さんから大変温かい御支援を頂きました。支援を頂いた皆様に、この場を借りてお礼を申し上げます。
次をお願いします。それで、私ども医学部も復興しなければいけないというので、災害対策本部をつくり、復興案をいろんな形で進めております。大体三つのことをやろうかと思っているのですけれども、どうしても研究者の流出、それから医師の流出が起きますので、それを補うような優れた医師・研究者を、積極的に招聘しなければいけないだろうと思います。それから崩壊した地域医療を支える医療系の人材を育成していく、ここが今日のお話をさせていただきたいところです。さらに、東北大学の医学部・医学系研究科が失速してしまうようでは、東北地方の復興はあり得ないと思いますので、最先端研究拠点を形成して、それで復興に当たりたいと考えております。
次のスライドをお願いします。それで、復興に向かって最初の5年間にやらなきゃいけないこととして、三つほどのポイントがあるかなと思っています。それは地域医療システムの再構築で、具体的には壊れてしまった医療施設の復旧ということです。これに向かっては医師、それから高度医療人の不足がやはり問題になるだろうと思います。
医療系の人間はどうかというと、私どもの東北大学医学部の関係者だけでも66人の医師が職場をなくしました。それで多くの方が離職をされていかれます。そういうことを見ていて、医師・医療系人材を育成して、それで医師、高度医療人の不足に対応しなければいけないだろうと考えているのですけれども、ここに一つの問題点があります。
それから、後ほど簡単に、研修医マッチング制度の改善ということを以前から東北地方の問題意識として持っているということを申し上げたいと思います。
次のスライドをお願いします。それで、東北大の医学部・医学系研究科としてはこんなことに取り組んでいるということがここに書いてあります。第1に、地域医療総合研修センター、これは被災して病院を失った医師の受入先になろうというようなプロジェクトです。それから、第2に時限をつけた医学科の定員増です。20名の定員増を10年間行い、200人の医者を養成することを私どもでお引受けしようかと計画しています。飽くまでこれは時限的であるということを申し上げたいと思います。
それから、第3に地域保健支援センター、これは流されてしまった保健所機能の支援です。そのほか、ここにありますようなことを病院とも協力してやっていこうと考えています。
次のスライドをお願いします。大震災による医師と医療施設の喪失というのはもう現実です。厳しいものがあります。解決すべき課題として、やはり医療人の流出による震災地域の医療崩壊を何とかしなければいけない。東北大の医学部・医学系研究科として何ができるのか。これを考えてみました。
もちろん地域医療システムの再構築に協力するということなのですけれども、これは自治体や厚労省、総務省の皆さんと一緒にやらなければいけないことだと考えています。
そこで、やはり大切なのは医師と医療系職業人を育成して、それで足りないところを補うということが重要ではないかと思います。この目的では、やはり既存の医学部や大学病院を重点強化していくことが大切なことではないかと考えています。
次のスライドをお願いします。私どもは、医師と医療系職業人の養成に力を入れて取り組んでいるのですけれども、この目的では、既存の医学部や大学病院を重点強化することが大切であると思います。メリットとして、やはり即効性もありますし、それから効率化を追求できると思います。それから何か起きたときに、すぐに対応できるということもあると思います。
それで、今回、私どもの医学科の定員の増を図りたいと考えています。あわせて、高度医療系職業人の教育コースを充実していくこと、さらに、国際化教育への対応もやらなければいけないと考えています。御参考までに、右下に諸外国の医学部定員の実情という一つの表をお示しいたします。日本は医学部定員8,900人と出ていますけれども、つい二、三年前まではこれは8,000人ほどで、そこに医学部が80ありましたので、大体医学部の定員は100ということになっています。
それで韓国や台湾は大体似たようなものなので、東アジアの医学部というのはこんな形なのですけれども、アメリカ、カナダはそれぞれ150人ほど、それからイギリスになりますと188人平均です。それからドイツ。私どもの医学部はドイツのゲッチンゲン大学を模範にしてつくった医学部なのですけれども、ここは8,000人の定員に対して医学校が36校しかない。更にオランダに行くと医学校は8校しかないのです。結局のところ、諸外国の医学校の定員というのは非常に多いわけです。ドイツのリューベック大学の医学部長が友人で、よく話をするのですけれども、常にリューベック大学の医学部は、同じホルシュタイン州にある、キール大学の医学部と合併しろというプレッシャーがかかっている。36校しかないのに、更に合併しろと言われているというのです。
それからイギリスでは皆さんがご存じのように、GKTという新しい医学部があります。GKTというのはガイズ・ホスピタルとキングズ・カレッジと、セント・トーマス・ホスピタルの医学部が三つ合わさって、定員が360人という非常に大きな医学部を形成しています。これは研究、それから教育の面で資源の活用ができるということで、新しい方向性を示しているものだと考えています。
それで、イタリア、フランス、ポーランドの例も調べてみたのですけれども、大体100人から300人の間で、大学の規模によって医学部の入学定員が違うということです。我が国は大体同じようなサイズの医学部を、一県一医大構想というのでつくってきたということで、効率化の点で非常に遅れているのではないかと私は考えています。
次のスライドをお願いします。それでは翻って、東北大の医学部の卒業者数はどうかというので少し調べてきました。ここを見ていただくと、昭和48年に医師不足ということがかなり言われまして、120人に定員を増やしました。それまでは100人だったので、48年の人たちが卒業するのは黄色い矢印で示しました昭和54年ですので、そこから卒業生が増え出すわけです。しかし、その1年前に179人が卒業したクラスがございます。
それは教養課程から専門課程に進むときに、授業料値上げに反対するストライキをして、ほとんど全員留年したクラスです。したがって、その一つ前の年は、前年の留年生だけが専門課程に進学した学年になります。その次の年も139人でした。ここで申し上げたいのは、私は今回現行定員120人に更に20人を加えて、東北大の医学部定員を臨時的に140人にすることを御提案しているのですけれども、私たちはこういういろんな要因による在学生の増減に対応しながら、医学教育をやってきた歴史があるということです。
次をお願いします。ところで、東北大の医学部とそれから医学系研究科で一つ力を入れていることがございます。それは医学系修士課程を充実させて、医療系の高度専門職業人教育に注力するということです。御覧いただきますように、医学系の修士課程だけで92人の定員を引き受けております。友好的にやっている医工学研究科にも私どもの教員を出していますので、100名を超える修士課程の学生を受け入れて、それで医療系高度専門職業人を養成しているわけです。
次をお願いします。それでどんなふうにしているかということなのですけれども、私が医学部長になってすぐに、医科学修士コースの定員がそれまで20人だったのですけど、これを40人に増やしました。従来は医学系の教育・研究者の養成に特化していた修士課程を、医療系の高度職業人や企業人、行政専門職、国家公務員にも対応できるような人材養成コースにしていこう、修士課程の充実を通して新しい医学系研究科のミッションを探ろうと考えたわけです。
保健学専攻もちょうど同じようなときに設置されました。24名の定員です。それから障害科学専攻が28名で、全体で92名ですけれども、これらの課程を柔軟に使って医療系の高度専門職業人を養成して、医療人過疎の解消に努めたいと考えているわけです。
実際に医学物理士は、修士の資格として昨年から募集を開始しました。それから臨床研究支援者、いわゆるクリニカル・リサーチ・コーディネーター、CRCですけれども、これは今年度から募集を始めました。専門看護師は今年やろうと思ったのですけど、うまくいかなかったので、来年しっかりやろうと思っています。それから保健師は平成27年に修士としての養成に切り替えようと考えています。その他、ナース・プラクティショナーや遺伝カウンセラー、臨床心理士、メディカルクラーク、それからメディカルインフォマティシャン、更にメディカルイラストレーターなども、こういう形で養成していきたいと考えています。
次をお願いします。話を戻して、定員増計画なのですけれども、医学科の定員を10年の時限をつけて20名増員したいと考えています。10年間で200人です。その背景的な説明がそこに書いてあるのですけれども、次からのスライドで、少し詳しく御説明したいと思います。
次をお願いします。人口当たりの医師数というのを見てみますと、東日本で医師数が足りないわけです。人口急増地帯の茨城や埼玉、千葉というところ、それから中京圏を除くと、東北地方はやっぱり全国平均よりも医師数がかなり低いのです。
次をお願いします。それで、どれくらい足りないかというので、少し計算をしてみたのですけれども、東北地方の人口は大体1,077万。これを日本の総人口で割りますと、大体人口は8.4%です。医学部定員数は23年度のデータで計算しますと8,923人で、これに0.84を掛けますと、750人ほどの定員があると、東北地方は日本の平均的になるだろうと。それで現行の医学部定員は730人ですので、20人足りないので、今回私どもが20人増やしたらちょうどいいぐらいになるかなというところも、こんな計算から出てきます。
ただ、これで無視していけないのは、私どもが養成した医学部の学生というのは、マッチングをするとまず間違いなくある割合で、首都圏の方に行きますので、実際にはこれは表面的な数字で、もっとずっと足りないということを申し上げたいと思います。
次をお願いします。それで、地域医療の充足について何が一番大切かということを調べてみました。艮陵協議会という組織があります。これは私どもの先輩がつくった病院を中心に、東北地方の基幹病院が100病院ほど加盟しています。52病院からアンケートの結果を頂いたのですけれども、これをみますと、一番地域医療にとって必要なのは医学部の定員増、医師数増加をやってくれというのが、この人たちの願いであるという形で出ております。
次をお願いします。それで、私どもも対応しなければいけないというので、東北大の医学部は順次定員増を図ってまいりました。2009年の100名から2011年度は120名にまで増やして、主要国立大学の中では一番数の多い大学になっています。それでその人たちが東北地方に残ってほしい、宮城県の奨学金を受けてほしいというので、これは村井知事が医学部の教室に来て、今年の1月、震災のちょっと前ですけれども、宮城県で一緒に医者をやってくれという説明会をしたときの写真です。
次をお願いします。それで、こういうことをやっていたときに、少し興味深いデータに突き当たりました。私どもの医学部に東北地方から入学してくる学生は、大体入学者総数の30%です。ところが、卒業するときに東北地方の研修病院とマッチした人が65%。首都圏に出たのですけれども、初期研修が終わって帰ってくる人まで入れると、70%強の私どもの卒業生が、仙台を中心に東北地方で仕事をしています。こう考えてみますと、私どもの医学部定員を増やすことが、東北地方で働く医者の数を増やすのに、一番力があるんではないのかなと考えています。
次をお願いします。それで先ほど簡単に、研修医のマッチング制度のことを申し上げました。これは今、厚労省の方でも見直しを始めたというのを、先日の国立大学医学部長会議でお伺いしたのですけれども、卒業生が8,000人しかいないところに募集定員が1万人あります。そうすると、都市部の5,000人の枠は全部埋まりますけれども、地方の5,000人の枠は3,000人しかマッチしないということで、自動的に2,000人足りないことになります。背景には、若手医師にとっての都市部の医療の魅力や震災風評、こういうこともあるでしょう。宮城県のデータですと72%ほどの充足率ですけれども、これを東北地方のデータにしてみますと、50%ぐらいしか充足していませんので、こういう点で非常にアンバランスが出ていて、ここには何らかの対応が必要だと考えています。
次をお願いします。皆さん御存じのように、アメリカの外国人向けの医師国家試験United States Medical Licensing Examinationというものがあります。これが去年の9月から、ECFMGというところで認証した医学部の卒業生、在学生しか受験させないようにするということを出してきたわけです。そこには、この背景に書いてあるような事情があるのですけれども、我が国で現行のECFMGが求める基準によって認証された医学部は一つもありません。こういうことを通して考えてみると、私は我が国の既存の医学部の基盤を強化して、国際的に通用するような医学校として仕立て上げていくことが、非常に大切と考えています。
次をお願いします。それで、東北大学の医学部というのは、世界最高水準の研究を追求するのが一方にあり、更に一方では東北地方の地域医療に責任を持つという立場で、これは車の両輪としてやっていく必要があることだと。どちらか一つが欠けても、やっぱり医学生の教育に至っては不十分であると考えています。
それで、これは医学科のカリキュラムでお示ししているのですけれども、1年生から6年生まで赤で示したところが地域医療実習です。2年生のときの地域体験実習には、市内の開業医、それから小規模な病院を中心に61病院に協力を頂いています。それから5年生、6年生では長期に実習に行くようにしています。
次のスライドを見ていただくと、これは災害に関する特別講義などを行い、次を見ていただきますと、もう一枚送っていただきますと、19年度からたまたまトリアージ訓練などをしていましたので、今回の災害に対して、少し準備ができていたかなと考えています。こういうことが医学校の教育として非常に重要だと考えております。
スライドをお願いします。まとめとして少し申し上げたいと思います。東北地方には以前から医師不足・医療過疎地域が多く存在していました。それで東日本大震災によってそれが加速しています。東北大学の医学部では、従来手厚い地域医療実習教育を実施してきました。また、3年前からは20名の医学科定員の増員を行いました。同時に医学系修士課程の充実に注力して、医療系高度専門職業人の養成を通して、医療の高度化と医師の働きやすい環境づくりの推進を行ってまいりました。
東日本大震災による医師喪失・不足に対応する目的で、10年間の時限つきで本学医学科定員の20名増を提案したいと思います。これは震災への対応ということで行いたいと考えています。諸外国の医学部定員には150から200名のものが多い。医学教育と研究の高度化・効率化の面からも、我が国は医学部定員を増やすとともに、その基盤強化を進めるべきであると考えます。
有事の際には、医学部定員を臨時に増加させて、医師供給増の要請に対応する事が合理的であると考えます。即効性に優れ、また、減少フェーズに対応しやすいという点があると思います。東北大学医学部の歴史を見ても、179人や139名のクラスが存在していて、私たちは種々の要因による在学生の増減に耐えながら、医学教育を実施してきた経験があります。
我が国は、今後ECFMGなどから要求される国際基準にこたえるためにも、既設医学部の教育・研究基盤の重点的な強化に取り組むべきであり、一方医学部側は、定員増など社会からの要請に全力でこたえる必要があると考えています。
私の説明は以上です。
【安西座長】 ありがとうございました。これも大変貴重な御意見、抱負を頂きまして、感謝を申し上げたいと思います。
それでは自由討議に入らせていただきますが、北原先生、また山本先生の御意見への御質問、あるいは御意見も含めまして、まずいただければと思います。
はい、西村委員、どうぞ。
【西村委員】 質問をさせていただきたいんですが、北原先生、ちょっと大変失礼な質問になるかもしれません。というのは、先生の御意見のかなりの箇所について私は賛同しますので、余計に失礼な質問をさせていただきます。しかし内容的には北原先生、山本先生に、同じような内容の質問をさせていただきます。
本当に大変失礼な言い方でお許し願いたいんですが、北原先生の御主張は、先ほど日本に民主主義の風土が育っていないとおっしゃいました。恐らく先生のこの御意見は、10年経(た)ってもこの日本の国の多数を支配する意見にならないんではないかと私は危惧します。私は医師ではありませんが、何十年こういう研究をやってきて、先生の御意見と同じ主張をする医師の方は例外であるという話をされました。例えば株式会社を認める、あるいは自由化をするといった内容のことについて。私は先生の民主主義ということに対する御見解について、大変失礼な言い方ですが、未熟なんではないかという意見を持ちます。
しかしそのことを絡めて、以上失礼な言い方ですが、本題に入ります。それは先生が4ページ、これは山本先生も是非御覧いただきたいんですが、医療職養成課程の全面的見直しということをおっしゃっています。今先生は、医療の自由化ということを相当おっしゃいましたが、この箇所は一見すると、医療は自由化するが、教育の方は自由化しないというイメージでお書きになっているのかどうかということを知りたいわけです。
先生が言っておられることは、一々私は大変いい方向だと思います。例えば薬学出身者にも処方の権限を与えるというような。しかし恐らくこれは、これまでの長い経過で、日本でこういうことを説得できなかったから、今こういう状況にあると考えておりまして、質問は、[4]は特に難しいんですが、[1]から[3]は、一部の大学がこういうことをすることを認めるという御趣旨でおっしゃっているのか、日本中の医科大学についてこういうことをすべきだとおっしゃっているのか、そのあたりがちょっとはっきりしないので、是非御意見を伺いたい。
すいません、同じく実は山本先生も、先ほど高度医療職業人の話をされました。今大学の中でいろんな分野の学生を一緒にして、職業人を養成するための相互乗り入れの教育が進んでいるということは、よく承知しております。しかし資格制度をいじらないで――今の例を挙げると薬学の処方の話です――あるいはもっと正確に言うと、実は北原先生の御意見の一番もとは、アメリカのフリードマンという学者が、免許制度の見直しということをもう50年前から言っておりまして、アメリカではかなり説得力のある議論として進んできたわけです。
しかし北原先生がおっしゃったように、日本ではそういうことは論外であるという雰囲気でありました。結論を言うと、お医者さんの中の世界でもできないんじゃないかと。高度医療職業人もやっぱり、資格制度と連動させて議論しないと難しいんじゃないかという質問です。
【安西座長】 ありがとうございます。それでは北原先生と山本先生から一言ずつお願いします。
【北原茂実氏】 そうでしょうね。私は実はこれをいつから言っているかというと、フリードマンさんはどうでもいいんですけど、私はもう30年前からこれを主張しています。実は恐らく世界で一番初めにクリティカルパスをつくったのは私だと思っています。なぜかというと32年前に、入院の日付を入れると、手術の日から術後の点滴、退院するまで全部決まるというものをつくりました。それから輸液の約束処方化も全てやりました。コンピューターがない時代だったのでそれが必要だったんです。
そのときに実は厚労省と大変なやりとりがありました。なぜかというと、厚労省は何と言うかというと、患者の状態は一人一人違っているにもかかわらず、こんなことができるはずがないということで、猛反発を受けまして、私と理論闘争として何て言われたかというと、最後は、先生、私たちは別に医療の話をしているんじゃない、私たちは保険の話をしているんだと言われました。そういうことがあった。じゃ、その実、後から何が起こったかというと、現実にそのクリティカルパスの問題にせよ、何にせよ、我々が考えたとおりになってきていると私は思っています。
実は国民皆保険の廃止ということは、私はもう病院をつくる前からずっと主張しています。かなりの抵抗があるのは承知の上です。ですから今回私は本を出した。何のために本を出しているかというと、これはカンボジアプロジェクトのためなんですが、実は相当の批判というのを承知の上で出したんです。でも現実では何が起こっているかというと、この本はかなり売れました。
それであともう一つは、陰ではどうか知りませんけど、ネットで調べても、私のところに来るメールの内容を見ても、実は批判的な意見はほとんどない。逆に、今ありとあらゆるところから、一緒に働きたいという医者とか看護師の応募が急速に増えたということと、あとは医療産業が、かなり我々と一緒に仕事をするようになったといういきさつがあります。
なぜかということを考えなきゃいけないんですが、どんなに反対しようが、恐らく経済学的な原則は曲げられませんと私は考えています。ですから例えば、もう少子高齢化してきたら財源がなくなるのは当然ですね。じゃ、国民皆保険に最後まで執着すると何が起こるかということですが、御存じのとおり日本の医療の前に、医療産業はほとんど崩壊しました。
なぜかというと、MRI、CTに関して見ると、MRI、CTをつくるメーカーは世界の6社のうち日本に3社あるんです。実は島津はつくらなくなりました。日立はGEに買収されます。東芝が買収攻勢をかけられます。これが実態であります。薬は1の輸出に対して、輸入が10の割合になってしまっています。医療機械もほとんどできなくなっています。なぜかというと、これは保険によって診療報酬点数で抑制したからであります。
当たり前ですが、カンボジアに比べても日本ではCT、MRIの撮影金額が半分なんです。そうなってくると何が起こるかというと、開発コストがとれないので、じゃ、どうなるかというと、当然メーカーは開発しなくなる。そういうことが起こってくる。これは実は再生医療に関してもそうです。
【西村委員】 それは拝見すれば分かりますので。
【北原茂実氏】 いいですが、今の質問に対して言うならば、申し訳ないけれども、私は日本国民はそれほど愚かではないと思っています。さっきもお話ししましたが、今は社会が変わる時期です。社会が大幅に変わる。恐らく歴史的に見れば、今の時代というのは明治維新、それから戦後と同じぐらいの変動が世界に起こるだろうと思っています。であれば、日本が変わらないということは私はないと思っていますし、それはこの20年の歴史の中で、私の言うことに対して耳を傾ける人が出てきたということそのものが、私にとっては非常に大きなことだと思っています。
あともう一点。それからあと、最後のことなんです。じゃ、それを全部の医学部に対して強制するのかどうかということですが、別にこの案を全部強制するつもりはありません。はっきり言って、私は一案としてこれを提案しています。これは非常に重要なことなんですが、過度の専門化というのは、医療事故の増加と、あとは医療費の留(とど)まることのない増加を招きます。
これをお話ししておきますが、アメリカでNSTが生まれました。これを皆評価していますが、実は一番大きな問題は、アメリカで最近救命救急チームというのができました。なぜ救命救急チームができたか。大学病院の中にできた。日本の救命救急は救急患者に対してのチームです。ところがアメリカの救命救急は何をしているかというと、大学病院の中の事故に対する救命救急チームです。
それはなぜできたかというと、医者のほとんどが救命蘇生ができない。看護師もできない。挿管もできない。過度の分化の関係でそうなったんです。ですからコールを押せば、チームが集合できるようにというシステムを考えた。その結果何が起こったかというと、大学病院の中で死亡する患者の数が半分に減っている。恐らくこのまま放っておくと何が起こるかというと、日本でどういう議論になるかというと、アメリカにはこんな優れたシステムがある、NSTと同じです、そういうことが起こってくるんだろうなと私は思っています。
ですから、いろんなことを考えてそうなんですけど、過度の専門化というのは私は抑制するべきだと思っているんです。そういう方向性を示したいからこそ、こういうことをお話ししているんだということであります。
【安西座長】 ありがとうございます。
山本先生。
【山本雅之氏】 どうもありがとうございます。西村委員の御質問の趣旨は、資格制度をどうつくっていくのかと。私はこのレジュメの6ページ目に2枚のスライドを出してあるのですけれども、こういういろんな資格をつくっていって、本当は医者がやらなくてもいいようなところを、高度の専門性を持って実施してくれる人を養成していくことで、医師不足、医療過疎と言われているところに対して、そうじゃないという状態をつくっていくことが大切だということを申し上げたいと思います。
資格制度のことを話しますと、大体資格というのは、今大きく医療の体制が変わっていく中で、こういう専門性を持った人たちが、例えば学会認定で、若しくは必要性の認定でこう進んでいくときに、最終的には国家資格になるような形でもまれていくものである、それの入り口をつくっているのだと考えるべきだと思います。
一例を挙げますと医学物理士、これは放射線治療のときに、ちゃんと線量計算して、必要な量を必要なところに当てる、物理学ができる医療系の職業人なのですけれども、これは放射線治療学の学会認定です。医学物理士という正式な学会認定の資格があって、これを目指して学生が入学してきて、しかも工学部の先生たちに物理学を教えてもらい、私どもが医学を教えて、それで有資格者が出ていきます。
それから臨床研究支援者も非常に必要で、電子カルテが普及していって、地方の病院で臨床研究をしようと思っていて、電子カルテにデータをマイニングして、そこから取り出してきて、そこに意味あるものをとろうと思ったときに、実際にお医者さんだけではできない、やっぱり臨床研究を支援してくれる人が必要なのだと考えます。
下の方にメディカルクラークと書きましたけれども、私はメディカルクラークも修士の資格として是非養成したいと思っています。こういうふうに医療を取り巻く専門性の高い職業人を養成していくことで、医者が足りないと言っているのは、実は医者がやらなくてもいい仕事を押しつけているから足りなくなって、しかもスピリットがダウンしているのだということに対して対応していくことは大切であると思います。私たちは高度医療系専門職業人を養成して、医療人の過疎の解消にチャレンジしていくような、そういう時期に来ているのだと思います。資格は後からついてくるものだと私は考えています。
【安西座長】 ありがとうございます。今日は15時までということになっておりまして、延長なしということだそうでございますので、申し訳ありませんが、端的にご質問等もお願いできればと思います。
また、それじゃ、永井委員に頂いて、それで今日は4人の方が御発言されたいということがありますので、そちらも順不同にいたしますので、お手を挙げていただければと思います。永井委員、まず。
【永井委員】 まず、北原先生、大変面白い、面白いと言っては大変失礼ですけれども、御意見を伺いました。一つ先生のいろんな問題点、いわば医師を増加させるということの根拠がある意味で変数みたいなもので、必ずしも絶対的なものではないというところはよく理解できるし、共感も覚えるんですけれども、積極的に医師増加にノーという根拠が、ちょっとまだ分かりにくかったというところがございまして、端的に先生の立場で言えば、もっと自由化して医師をどんどん増やしてもいいではないかと、いきそうなものだと思ったんですけれども、ノーという結論の部分が分からなかったということ。
それから山本先生の場合、東北大のこの震災と、それから地域性から言う定員増というところはよく理解できるんですけれども、今問題にしている、全国的な規模における一般的な医師増加ということに関してのポイントというと、どうも外国では定員の大規模なところで医療教育をして、医師養成をして、そこにおける効率性だとかいろんな多様な教育、そういったものが図れるんだというところが、一般論としては定員増をある意味では容認されるのかなと思ったんですけど、それでよろしいのかどうか。
以上であります。
【安西座長】 じゃ、北原先生、お願いします。
【北原茂実氏】 現場の考えとして、医者の仕事というのが全然合理化されていないんです。例えば私は思うんですけど、電子カルテというのは自動診断機能を持っているべきだと本当は思うんです。ですから、うちは今何を開発しているかというと、iPadを持ってきて、今日は何で受診されましたかと全部クリックしていくと、最終的にありがとうございましたと。それがどこへ飛んでいくかというと、電子カルテに飛んでいって、ここで推定診断と鑑別診断と検査が全部出てくる、そういうシステムを今我々はつくっています。こういうものができてくることによって、医者がやる仕事、看護師がやる仕事って実はかなり楽になるんです。
であるにもかかわらずそういうことをしないで、電子カルテで何をやっているかというと、保険診療点数がとれるかとれないかとか、余計なところへ入っていくわけです。そういうことをやっていると医者の仕事は実は楽にならない。ですから全体のコストということを考えたときに、基本的には、やっぱり合理化できるものは徹底して合理化するのが先であろうと私は考えているということです。
その合理化した上で、じゃ、あと求められているものは何かということなんです。そういうことが全部合理化された上で、本当に医者が足りないかどうかということに関しては、私は疑問に思っています。ほかのことに関しては、実は医療職以外のスタッフができる仕事というのはかなり多いんじゃないかというのが、私の感覚としてあるんです。
たとえも言いますけど、うちの病院では健康と生活のためのネットワークをつくっています。これは、今晩あなたが食べるべきおかずに至るまで情報を流すことができます。誰がやっているかというと、実は栄養士とか看護師で、産休、育休に入っている連中であります。これがネットワークの管理をしている。そういうことができることによって、実は医師の仕事というのはかなり合理化することができる。そういうことをやらないと、コストだけが上がっていくんだろうなと私は感じているんです。
ですから、無制限にコストをかけていいんであれば、それは一向にかまわない。しかし35兆円しか医療費を使ってはいけないという議論がなされるんであれば、それはかなり無理があるんじゃないかなというのが私の考え方です。
【安西座長】 山本先生、お願いします。
【山本雅之氏】 永井先生、的確な質問ありがとうございます。私は医学部の定員に関しては、ここ3年間で既に1,000人近くを増やしているということでは、かなり増えてきたと考えています。ただ今回の震災や、それから私どものいる東北地方は、やはり医者が足りないと考えています。
それで医者を増やす方策としてどんなことがよいかというときに、小さな医学部でやるよりも医学部の定員を増やす方が理にかなっていると思います。既設の医学部の定員を増やすということは、医者が余ってきた、過剰だという局面が必ず来るわけですけれども、そのときには今度は定員を減らせばいいわけです。これは私どもの医学部でも100人、120人、また100人に戻り、今120人から今度は140人と移転する。ちょうどアコーディオンのようにその定員を動かしていくことが、合理的ではないかと思います。
それで、定員の点についての御質問は、かなり全国的に定員増を図ってきましたので、基本的にはもう十分であると思います。ただ、東北地方はまだ足りない。今回の震災で更に足りないところに拍車がかかりましたので、少し頑張って定員増をしなければいけないかなと考えている、そういうことを申し上げました。
【安西座長】 ありがとうございました。
それでは、今井委員、桑江委員、中川委員、西村委員から資料が出されております。じゃ、今井委員から、時間がちょっと限られておりますので、申し訳ありませんが、何分というのは事務局から言っているらしいんですけれども、それでよろしくお願いします。
【今井委員】 皆様のお手元に参考資料1というのがあろうかと思います。ただいまお二方のお話を受けまして、大変興味あるお話で、特に山本先生の東北大学の震災に対して、それでなくてもこの会で何度も述べていますが、東日本は医師数が非常に足りない、比較的西の方が多い。といっても全国結論的には足りないわけですけど、それについて20人増やされてというのは非常に重要なことだと思います。
私はもうちょっと全国レベルでの話を少しさせていただきたいんですが、結論は、2035年という今から25年後を想定いたしまして、そことの比較で、医療ニーズがやはり非常に高まるということをお話ししたいと思います。
では次をお願いします。
【安西座長】 すいません。5分以内でということになっているかと思いますので、よろしくお願いします。
【今井委員】 ああ、そうですね。分かりました。
じゃ、ここでまとめたとおり、2035年、20%でございます。一番のポイントは、高齢者、死亡者、患者数が35年に激増するということです。医師数は増加しますが高齢医師が多いということで、60歳未満の医師はそんなに増えない。それから第2のポイントは、医師が過重労働の状態であると。この状態ではとても気の毒ですし、患者さんにも結局悪いということであります。それからいろんなイノベーションの方の医師も絶対的に足りないということでございます。
次をお願いします。これは人口ピラミッドですが、35年にずっと上の方が伸びているのがお分かりだと思うんですが、次をお願いします。65歳以上人口が大変増えまして、このシミュレーションを見ていただくと、65歳以上人口が2035年で1.27、約30%増えるということです。これは前から申し上げているとおり。75歳以上に至っては1.57。57%人口が増える。死亡数も42%増える。
はい、お願いします。これが各県の死亡数の変化なんですが、御覧になりますように、25年後にはどの県も1.4倍以上、1.5に近いぐらい死亡数が増加して、医療ニーズは明らかに高まるわけでありまして、これに対応することを考えていかなきゃいけない。
次をお願いします。これは医療費なので、同じことですが、65歳以上で非常に大きな医療費がかかっている。これは20年度のデータでありますが。
はい、お願いします。そこの部分にお金がかかる、あるいは医師が必要だということになりまして、年間医療費はそのように、国民1人当たり30%増。
はい、次をお願いします。がんでも38%死亡数が増えます。右側の一番下です。
次をお願いします。循環器は左の入院を見ていただきますと20%増える。脳梗塞も28%増える。認知症は33%増えるということで、はい、次をお願いします。
一方、それを診る医師たちはどうかというと、ここにありますようにこういう割合になっています。
次をお願いします。こうなっていまして、医師数は今山本先生もおっしゃったように定員を増やしたので、増えるんですが、私のポイントは、60歳未満の医師は18%しか増えないわけです。むしろ増えるのは65歳以上でありまして、2.43になる。
次をお願いします。これをちょっと分かりやすく言いますと、2010年は青でありまして、60歳以上のところは35年にはそっちが増えるのであって、実際にアクティブに患者さんを診てくださる医師は、必ずしもたくさん増えていない。十数%にとどまる。ここが重要です。
さらに、これは非常にタイトな時間で、皆さん、もう過労死寸前で働いている。これを何とかしないと国民にメリットは行きません。
次をお願いします。これを国際比較すると明らかなように、時間はもうこんなに週に70時間も働いている。右側は女性医師です。この状態で女性が増えてくるわけですから、この状態を改善しないで35年は乗り越えられないわけです。
次をお願いします。そうしますと、死亡数で見てみますと、労働時間をきちっと60時間、せめてアメリカ並み、欧米並みにすると、もうそれだけで関東全体で1.37です。つまり、今より37%増員が必要となります。東北地方も新潟を入れて1.17。これだけ人数を増やさないとやっていけないということでありまして、日本全体でも30%近く増やさなきゃいけない。
48時間制限に至っては1.65とか1.42という、すごく恐ろしい数字が出ているわけで、つまりきちんと患者さんを診ようとして、当直もきちんとしていけば、そのぐらいの医師数が必要なんです。そこを認識すべきであると思います。
次をお願いします。これは私が前学長をしておりました札幌医大なんですが、先ほど山本先生からお話がありましたように、どのぐらい残るか非常に重要で、札幌医大は85%地元に残ります。そういう状況になっております。
次をお願いします。大学があるというのはすごく大事なことでありまして、この北海道で赤いところ、これは旭川医大と、札幌のところは北大、札幌医大。そういうふうに大学があるということで、あるエリアをカバーできる。でも青いところを見てください。北海道では道東とか南の方、そういうところは非常に少ないわけでありまして、そういう意味からもちゃんと是正していかないと、これから35年を乗り切れないと思います。
次をお願いします。これは結論で、医療ニーズは20%以上増加します。その中身は高齢者、死亡者、患者数が激増するということです。医師は増加するけれども高齢医師が激増して、労働過重は直らないので、ここをきちっとするには医師増が必要であるということです。地元定着率は非常に重要です。イノベーションをちゃんとやって、日本の輸出を増やしていくにはこれが非常に重要だと考えています。定員増と新発想の医学部の新設、これが必要だろうと思います。
以上でございます。
【安西座長】 ありがとうございました。
それではあと、桑江委員、中川委員、西村委員から資料が出ておりますけれども、どなたでも結構です。
【中川委員】 私の資料についてはもう少し時間をとって御説明させていただきたいと考えておりますので、次回に回させていただこうと思いますが、よろしいですか。
【安西座長】 5分というのは大体ということではありますけれども、私の立場上、やはりもしこうやって委員の皆様から、例えばスライドまで含めてお話しいただくのであれば、全ての委員にそういう機会は与えられるべきだと。もちろんやる必要はないんですけど、そういうことでありますので、余り長い時間をお一人の委員にとっていただくのはどうかなと思うということでございます。ですから、今日お話しいただいて、次回またということでも結構です。
【中川委員】 それでは、次に回させていただきます。
【安西座長】 それでも結構です。ほかには。どうぞ。
【西村委員】 私、5分でやります。いいですか。私は5分以上しゃべったので、今から5分。2時17分から22分まで。すいません、資料をちょっと、スライドをお願いします。
そんな複雑な話はしておりません。すごく簡単な話で、2ページを御覧いただくと、今、政府では社会保障改革検討本部というのが設けられまして、そこで2015年と25年を見越した財源の話が議論されております。結論だけ言うと、かなり医療費は抑制ぎみのシナリオで、2015年プラスあと4兆円ぐらい、2025年、今申しているのは6ページ、約14兆円要りますよという話が出ております。
しかし9ページを御覧いただくと、私の意見が書いてございまして、基本的にはこれは、経済成長率は2%程度を見越して言っております。結論を先に言うと、成長率を2%に維持していくということは、私はなかなか難しいんじゃないかと。そうすると、やっぱりかなり医師の数にも影響を与える、なかなか難しい問題が発生するんじゃないでしょうかというところが結論でございます。
その結論に関しては13ページに書いてございまして、私はもちろん長期的に見て、日本の経済がこれから成長しないという、すごい悲観論を述べるつもりはございません。例えば外需依存型の成長は、将来かなり期待できると思います。しかしすごく単純な計算で、これは時間があったらもうちょっと。この想定を私が考えているわけではないので、それだけは誤解のないように願いたいんですが、例えば年1%の成長を想定して、医師数の伸びを現行どおりとすれば、平均の医師所得は2015年の時点では、トータルとして10%程度減らざるを得ないんじゃないかというのが私の結論でございます。
ただし、誤解のないように願いたいのは、非常に難しいのは、ここ当分震災の影響もあり、日本の経済の見通しはかなり厳しいものがございます。したがって、すごく常識的に考えると、国民の皆さんの収入、所得もかなり低下するという危険性もある。そういう状況を想定して、医師の所得も下がるということを申しておるわけで、いろんな間の関係としては議論がございますので、どうか私がこれで医師の数を増やすことが反対だと申しているのではないということは、誤解のないように願いたいと思います。
ただ、いろんな議論がございますが、19ページ以降は、実は国土交通省が発表された、これは大変興味深い資料でございますので、御紹介したいと思っていまして、2050年を想定した、いろんなかなりびっくりするような予測をしておられます。例えば例を挙げますと、22ページ、居住地域の2割が無居住化、つまり誰も住んでおられない地域ができると。逆に、首都圏を中心に東京圏に人口が集中し、そこの高齢化がすごい勢いで進むというような予測をしておられます。簡単に言うと、一番の驚くべきポイントは今のような内容でございますが、これも是非お願いしたいと思うのは、これは2050年の話でございます。
結論はさっき申した冒頭に戻りますが、これは北原先生の御意見とも一緒で、本当に今大きな転換期でありますので、予測が大変難しいような状況でございます。そういう意味で逆に、北原先生の御意見に賛成する面もありまして、それはやっぱり何かこの国が成長をやっていけるような仕組みで、成長に対する批判もあって、今回特に震災以降、もう成長はしなくてもよくて、経済的な豊かさはやめて心の、という議論ももちろんありますが、実はその経済という言葉は大変ある意味難しいものでございまして、経済というと何か物質的な豊かさを指す議論がございますが、私はそれは違うと。
いろんな意味の精神的な豊かさを支える基礎としての経済がございますので、できましたら北原先生の御指摘も踏まえて、これからやっぱりどういうことを考えたらいいかということを申し上げたいと思っておりまして、また別途書面で、そういうことについての御報告を皆さんに出させていただきたいと思っております。
以上です、どうも。
【安西座長】 端的にまとめていただきましてありがとうございます。
それでは桑江委員、お願いします。
【桑江委員】 遅れまして申し訳ございませんでした。5分いただけるということでしたので、非常に短い資料ですので、ちょっと読ませていただきたいと思います。
今までの先生方のお話が非常に俯瞰(ふかん)的な、大御所から見たいろいろなものだと。大局的な見地からの御意見を非常に伺ってまいりましたけれども、私は今、一番ミクロな目で見ているかもとは思うんですけれども、最も足りないと言われております産科医療の現場におりますので、そこから考えたことをちょっと提言させていただいと思うのと、やはり今の日本の医療制度そのものは、現場にいましても非常にすばらしいと私は基本的には思っておりまして、皆保険制度にしても、特に公立の病院にいますと、どんなにお金がない人でもきちんとした医療を受けられるという、この日本の医療制度を何とか現実的な範囲で変えていきながら、医療崩壊あるいは医師不足を防いでいきたい、現実にのっとっていきたいなと思っておりますので、そういう立場から書かせていただきました。
医療の質は医師の質だと私は思っておりまして、国民が求める良質な医師を教育養成するためには、良質な教育環境及び一定数の疾患の数、患者様の数が必要であり、しかも将来にわたって経済的に持続可能な医療制度であることが求められていると思います。結局、人口比にして医師数の割合を一定にすることが現実的でありまして、またこの委員会では将来にわたり、何十年も先にわたって責任を持って医師数を決める必要があると認識しておりますので、提案としては、その年の生産人口数に一定の割合、例えばこれは1,000について3ということですが、その年の医学部定員数にするというのは現実的ではないかと。
ただし、医療の中身も変わりますし、国民の医療に対する要望も変わってくるということは十分あり得ることですので、これは5年と書きましたけれども、一定年度で見直しをするということで、またこの係数も、今これは1,000に対して3ですけれども見直すということが、数字的には一番リーズナブルではないかと思っております。
皆様の御指摘のように、このままではいずれ過剰になるということは、ある意味火を見るより明らかですので、どこかで現実的に減らしていく必要性がございます。それは先ほどの東北大学の山本先生がおっしゃったように、既存の医学部の増減で調節するのが現実的だと思っております。
現状の医師不足問題ですが、きっかけは福島県立大野病院の母体死亡事件であり、都立墨東病院における脳内出血妊婦搬送問題で、いずれも産科でありました。産科医療の特徴というのは、いつ産まれるか分からないんです。しかも急変する。そういった分娩に対して24時間365日、大量出血を伴う緊急手術に対処しなければならないということでございます。
福島県立大野病院の産婦人科の常勤医師は、たった1人でした。都立墨東病院の産婦人科医師は、2人当直体制にもかかわらず、常勤は5人、出たての研修医2人しかおりませんでした。大野病院の先生はかわりの医師が来なければ、御自分の休みもとれず、墨東病院の医師は、1月に10回の当直をこなしてようやく成り立っていた現場です。こういった医療現場で産科の事故は起こりました。
医師不足は常勤医師1からないし3人以下で、24時間365日、分娩や救急疾患対応しなくてはならない部分に起こっているのでありまして、地域の医師不足も同じ構図で説明できます。産婦人科学会のこのときの調査では、医師1人で行っているところが4分の1、3人以下が60%ぐらい占めておりました。
常勤医師定数2、3人以下の公的病院の医師不足は、北海道はじめ、広い土地に人口が少ない地域での共通の問題です。非人間的な労働環境に耐えられない医師と、いつでもどこでも高度専門的医療を受けたいと希望する、現場とのミスマッチがもたらしているものでございます。現状をそのままにして、たとえ医師数を大幅に増やしても、そういう現場に医師は充足しないと私は考えますので、単に医師だけ増やしても私たちが楽になるとは思えないということで、慎重な医学部新設への態度をとらせていただいております。
つまり医師不足というのは病院勤務医の不足でありまして、しかも少数医師で24時間365日の医療を担う現場の医師不足なんです。ここがやはり偏在という形になっております。
必要なところに必要な待遇とポストをつくっていただきたい。医師が仕事をしながら人間的な普通の生活ができなくては、その現場の医療は成り立ちません。その指標として、女性医師が妊娠・出産しても、継続して働き続けることができるかどうかということがあります。日本は国連の指標では、女性の地位が多くの発展途上国よりも低く、女性の社会的進出が阻まれております。
今後女性の能力を活用できるかどうかは、国の存続にも関わってくる重要な問題であると私は思っております。女性医師が3割を占める医療は、その特殊性によって継続的就労は困難で、泣きながら現場を去っていく医師が絶えませんが、解決を目指すための、その先駆的な役割を担っていると私たち女性医師は考えて、現状を変えるために努力しております。
少なくとも週に1度の当直(夜勤)をするとして、24時間365日、いつでも医療を提供する現場には、週に1度当直、月に4回と仮定しても最低8人は必要です。ですが、その地域にそれだけの医師を必要とする医療ニーズがあるのかどうか、医療経済的に可能かどうか、将来にわたって持続する医療を提供するためには、地域として選択と集中が必要だと思いますが、それが可能かどうか、アクセス・コスト・クオリティー、この三つは満たせないということになっておりますが、ある程度今満たせているのが日本だと思うんですが、どれをとってどれを我慢するか、アクセスはIT技術、あるいはドクターヘリなどによる代替手段が可能かどうか、医療提供体制として検討する必要があると思います。
ですので、基礎医学の医師不足も、待遇改善、ポストの確保、研修制度の見直しの中で人材の確保はできると思いますし、製薬会社への医師の就職及び医療イノベーションへの就職も、魅力があれば当然解決していくとは思いますが、こういう分野に必要なのは、何千人といった単位の医師ではありません。やっぱり臨床のニーズに比較して少数の医師で充足するだろうと思います。
これは今後の問題として、団塊世代の高齢化や平均寿命の延びについて、医療の需要増加に関しましては皆さんのおっしゃるとおりですが、一時的な時代の要請でありますが、今後在宅医療の推進、寝たきり老人の防止策、痴呆(ちほう)症に対するグループホームの充実など、介護や保健の分野と協働で解決していく問題も多いと思います。
医師を増やす対策だけで国民が満足する医療になるのかどうか、自宅で看取(みと)られることを希望している人も多くございます。医師でなければならないとは限りませんし、家族の看取(みと)りもあって然(しか)るべきだろうと思います。寿命で亡くなっていく方に、いつでも同じ急性期医療を提供することが必ずしもよいとは限りません。医療のニーズも国民のニーズも変化していくこともあるでしょうし、それに対してのその時代に合った医療を提供するということに関しては、非常にフレキシビリティーが必要と思っております。
私にも個人的に、95歳の父がおりまして、日に日に衰弱していきますが、これは寿命ということを考えると、私は急性期医療を必ずしも望むものではないので、やはり俯瞰(ふかん)的な御意見はもちろん大切ですけれども、現場のニーズとして特にその2番目の、どこに不足しているか、それはどうやったら解決するかということを考えていただければと思いまして、資料提供させていただきました。ありがとうございました。
【安西座長】 ありがとうございました。今、委員の皆様からもいろいろ御意見を頂きまして、これから先ほどのお二人の先生方の御意見も含めて、意見交換の時間にしたいと思います。
中川委員におかれましては、次回にでも今回提出していただいた資料を御説明していただく時間をとらせていただきますけれども、よろしゅうございますでしょうか。皆様よろしければ、私としては結構でございます。よろしいですか。
【中川委員】 いろんな経緯も説明しつつ御理解いただいて、それに対する委員の間のディスカッションをしていただきたいと考えておりますので、次回そうしていただければ。よろしくお願いいたします。
【安西座長】 ありがとうございました。そうさせていただきます。立場上といいますか、私としても是非、委員の皆様の意見交換の場にさせていただければと思いますので、よろしく御協力のほど、お願い申し上げます。中川委員の件につきましては、資料も含めて次回、時間をとらせていただければと思います。よろしくお願い申し上げます。
それではどなたでも結構です。山本委員、どうぞ。
【山本委員】 北原先生と山本先生にそれぞれ御質問させていただきたいと思います。お二人とも大変すばらしいお話をしていただいてありがとうございました。
北原先生の方は、現実をちゃんと把握して、論理的な対策を立てて、それから戦略をつくれ、こういうお話でございましたけれども、そのとおりだと思います。今日のお話は、私も若いころ一生懸命考えたようなことがたくさんございましたけれども、質問は一つです。3ページの国民皆保険の廃止ということがございます。これに関しての質問ですが、今、世界のどこの国を見ても、何らかの医療保険システムを国として持っていると思います。
例えばイギリスだったら国民保険法を国が持っていますし、それは嫌だという人は自分でプライベートの医療機関を選択して医療を受けるというシステムになっています。それから北欧の各国は、医療は全部国で税金でカバーするという形をとっています。アメリカもメディケアとメディケイドの二つの保険があって、今プラスもう一つ皆保険をしようというので、大変国民の抵抗に遭っておりますけれども、そういう中で日本は国民皆保険をやってきました。これを廃止するといった場合に、やはりセーフティーネットとしての部分、高齢者とかあるいは弱者というものに対する仕組み、これもどこの国でも持っているわけですけれども、これに対するカバーの考え方をお教えいただきたいというのが、北原先生に対する質問でございます。
それから、山本先生に対しましては、20名の学生を増やしていくと指導者も増やす必要があるだろうと考えます。20名というとそれなりの指導者がやっぱり必要になってきますが、指導者の質を考慮に入れ、その人数をどう確保していくのかということが、お話に出なかったような気がしますので、そこをお教えいただきたいということが1点です。
それから、5ページの表で、これは質問というよりは、私の理解を申し上げたいと思いますけれども、医学部定員の実情というので、医学教育期間が書いてございます。日本が6年でアメリカが4年と書いてございますけれども、これに説明がないと知らない人はちょっと誤解するので、アメリカの4年というのは、飽くまで普通の大学でリベラルアーツを勉強して、その上で4年の専門教育を受けるんだと。ですから医者になるのに都合8年と私は理解しています。
そういう意味で言いますと、例えば6年制という日本の医学部を卒業して、アメリカへ行って医学部大学院に入りたいといったときに、実は断られた学生を何人か知っております。というのは、日本の医学部はアメリカに比べ、2年間教育が足りないからだめというのが理由でした。そういうことのちょっと誤解があるといけないなと思って、一言だけ申し上げておきます。
そして、本来大学というものの使命は、私自身が考えていることは、やはり次代の日本の医療を背負う人、あるいは次代の世界の医療を背負っていく人を育成する、これが一番の大きな使命であり、それ以上のものはないんだろうと思っております。
そうした意味で、やはり教育と研究というものがメインになると思っております。地域医療というものは飽くまで地域の医療ニーズに対して、現在非常に不備である地域の医療資源の配分を、どう新しく再配分するかという問題でございますので、そうすると、その部分はやはり地域の行政機関の役割が非常に大きい。それから地域の住民の考え方が非常に大きい。大学としてはやはり、人材育成ということが一番大きなポイントではないのかなと、そんなふうに考えておりますので、先生、何かコメントをお願いいたします。
【北原茂実氏】 皆保険を廃止しろというのは、別にこれはアピールするためにそう言っているだけなんです。なぜかというと、皆保険というものは本当に矛盾がないシステムかどうかなんです。今セーフティーネットとおっしゃいましたけれども、皆保険はセーフティーネットではありません。なぜかというと、医療費を定額にしていくという考え方は金持ちにとって有利なシステムであって、貧困層にとっては有利なシステムではない。
現実問題として、東大阪のデータがありますけれども、26%が国民健康保険から追い出された。なぜかというと、保険料を払わなかったら国民健康保険の資格を取り上げられます。ということであれば、本当に貧しい人の医療保険がない。これはこの前NHKが特集していましたけど、現実には医療を受けることを拒否して死んでいる人が出てきていることがあります。セーフティーネットではないんです。
あともう一つ重要な問題は、これは保険と言っているから保険と思っていますが、保険ではありません。なぜかというと、保険の定義というのは多くの人がお金を出し合って、困っているときに給付を受けられるというのが保険の条件です。しかしそうではない。これは賦課方式ですから、今の若い人たちが一生懸命お金を払って高齢者の医療を支えます。ところが実際に自分たちが病気になる時代になったら、財源が全くないという可能性が今度はあるわけです。お金を払い続けるにもかかわらず、自分がもらえる保障がないということであれば、それは保険ではない。
あともう一つは、給付と反対給付の関係があります。もしも例えば本当に保険だというんだったら、一定の保障を受けるために全員が同じお金を払うはずなんですが、これはそうじゃなくて、お金持ちがたくさん払うという形なんです。ということは、逆に言うとこれは税金なんです。明らかにシステムとしては税金です。それを明確にしないから何が起こるか、皆保険と言っているから何が起こるかというと、とんでもない議論が出てくるわけです。何かというと、消費税を医療目的税として値上げする。あり得ません。
なぜかというと、国民健康保険はもともと税金です。国民健康保険税です。それに医療目的として消費税を加えるんであれば、一つの目的で二つの税金が成立することになります。これは法律からいって許されることではない。じゃ、そこまで行っちゃったら結局何が起こるのかといったら、これは高福祉高負担にほかならないんです。要するに、税金を上げてどうやって医療をカバーするのかという責任。一方お金がある人に対しては、もうちょっとお金を払ってください。高齢者がお金を払ってくれない。1,500兆の金融資産をため込んでいてもらったら、社会が回らないということになるわけです。
先ほど私は民主主義が分かっていないという議論がありましたが、実はこれは誰も説得することができない。なぜかといったら小選挙区制だからであります。高齢者の意に沿わないことを言えば何が起こるかといったら、自分は当選することができない。したがってこれは、誰も猫の首に鈴がつけられないということで、こういう議論になっていると私は考えています。
さっきからいろんな意見がありますが、医者を増やすのはいいです。さっきから私は同じことを言っています。じゃ、その財源はどうするのかという話であります。とすると、財源を増やさなきゃいけないんだったら、何らかの形で持ってこなきゃいけない。これは保険であれ、税金であれ、何でもいいんです。これを誰かが説得しなきゃいけないということであります。
実際はそれはできていない。それができていない証拠に、今この国の国民は、医療というのはどうなっているか、保険というのがどうなっているかさえ分からない国民が圧倒的に多い。それをきちんとしなきゃいけないだろうということが、もともと私の議論であります。
【山本雅之氏】 安西先生、よろしいでしょうか。
的確な3点の御質問、本当にありがとうございます。本当に3点目など、私が申し上げたいようなことだったと思います。
それでまず、指導体制は大丈夫かという点について。私は今日のお話の中で、定員を増やすのだったらこういう仕組みがいいのではないか、私どものところはもう医学校の数は十分足りていますので、アコーディオンのように、やっぱり既設の医学部の定員を変化させながら、それを強化していくことが大切だということを申し上げました。
それで指導体制のことなのですけれども、新しい医学部をつくるということと、それから、既存の医学部の定員を増やして供給を増やすということの間での、投資をどれだけするかについてはかなりの違いがあって、しかも私どもの医学部は研究中心、研究第一主義ですので、研究に回っているスタッフや卒業生で臨床教授という形で教育に貢献してくれる方々がおられます。それでも20人増やすということになれば、それは指導体制の面で御支援をお願いすることはあると思うのですけれども、新たにゼロから始めるところよりも、はるかに経済効率よくいけるだろうということを申し上げたいと思います。
それから、諸外国の定員が多いということを申し上げましたけれども、やはりそこには医学部同士、医学校同士での最先端研究や、臨床研究をめぐっての切磋琢磨(せっさたくま)があるのだということを申し上げたいと思います。
それで我が国の医学部が、全世界的に見て圧倒的に勝っているかというと、そういうことではなくて、今本当にぎりぎりのところで切磋琢磨(せっさたくま)している。東北大学はランキング等でも世界の100位に食い込もうと、というか、総長は30位になれと言っているのですけど、なかなかそうはいかないので、そういうところで頑張ろうと思っているところですので、やっぱり有事のときに協力します。逆に、私どもは頑張りますので御支援をよろしくお願いしますという形でお話をさせていただきたいと思います。
それからメディカルスクールの点の御指摘、大変ありがとうございます。確かにアメリカは、大学を卒業して大学院としての医学部をやっている。一方、私どもはいわゆるヨーロッパ制で、ドイツやそれからイギリスに似せて、6年制の医学部をやっています。一長一短はあると思うのですけど、私は個人的には、6年で医者がつくれるという点、それから比較的リサーチマインドを持った医者をつくりやすいという点では、今ヨーロッパ型、日本型のシステムに優位性があるのではないのかなと考えています。
3点目ですけれども、地域医療の問題というのは実に自治体の問題、それから厚労省の問題であって、大学医学部は関係ないじゃないか、極端な言い方をすると、医学部の教授が地域医療を支配するからろくなことが起きないのだという議論が行われた時期があったと思います。私はそうではなくて、私どもの大学もそうなのですけれども、東北地方の地域医療を支えるために、先輩がいろんなところに行って病院をつくり、そしてそこに私どもの医学部が応援に行って、地域医療をつくってきたという歴史ではないかと思っています。
ですから、もちろん人事に介入するとか、「白い巨塔」だというようなことを言っているわけではなくて、やはり医師養成機関として私たちが貢献する必要があると思います。さらに、医者は技量が大切ですので、単に医師免許を取ったからといって役に立つものではなくて、何年にもわたる研修をしなければいけない。研修に対しても私ども医学部が貢献していきますので、地域医療に対してやはり一定の貢献をしていく責任があるのではないか、そういう観点から発言をしていこうと考えております。
的確な御指摘、ありがとうございます。
【安西座長】 ありがとうございました。
どうぞ、矢崎委員。先ほどからの今井委員、桑江委員、また西村委員の御意見等に対しても含めてでも結構でございます。
【矢崎委員】 医師数というのは、やはり全国の医療ニーズの推計に基づいて算出されるのが基本でございますが、やはり我が国の医療の在り方、あるいは地域医療の在り方を基本に議論して、そしてすなわちどのような医師をどのように育成していくかという方向性を、この委員会でまとめることを、国民は期待しているんではないかと思っております。
北原委員が非常にまとめてクリアカットにお示ししましたが、この多くの部分は医学部定員だけではなくて、それにまつわるいろいろ含めての議論でございまして、その多くは厚労省の所管事項にかかわるのが極めて多いので、この議論が厚生行政にどう生かされるかというのは、副大臣の政治力にお願いするしかないかと思います。文科省として今何をなすべきかということが、ここではやっぱり一番大事なポイントじゃないかと思うんです。
本当に北原委員の言われたフリーアクセスの問題。やっぱり住民の方は、CTとかMRIが整った病院がいい病院だという間違った意識があって、どの病院もそういうCT、MRIをどんどん使うから診療報酬が低くなるというようなこともあります。また、フリーアクセスの問題は健康教育でもある程度解決できます。それでこれからの高齢化社会で自己責任というのは重要です。やはり大人になってからでは無理なので、小中高生ぐらいから、いかに健康を守って、そして自分が病気になったときにはどうすべきかというのを、あるいは高齢で人生の終えんを迎えたときに、個人の尊厳をどう保つかというのも、子供時代から教育しないとなかなか無理なので、文科省の方々には、少なくともテレビでサプリの広告ばかりして、健康はお金で買えるみたいな風潮は止めにしてもらいたいと思っています。何かそういう意味で、健康に対する正しい知識というか普及が、我が国では十分されていないんではないか。やはりそういうところから教育というのはしっかりしていただかないと、高齢化社会を乗り切るのは難しいんではないか。
それからもう一つの点は、医療職養成課程のお話がありまして、これは山本先生も触れられて、これは厚労省に強く規制緩和といいますか、今まで医師がピラミッド型で医療を行っていましたけれど、高齢化になりますと、やはり地域でシームレスに完結した、医療から介護までのシステムをつくらないといけませんので、そこに人材を活用するにはどうしたらいいかと。従来の業務分担では賄えないので、やはりプラットフォーム型で、皆で協力しながら責任も皆で持ちながらやっていかないと、なかなか難しい。
そこには責任の所在をどうするかとか、そういう意見が医療界の方から強いと思いますけれども、やはり今のままの医療職をそのまま活用するということではなくて、教育をしっかりして質を高めた上で、そういう領域に広げていただきたい。
ですから、本当に山本先生のそういう広い意味の医学教育といいますか、医療教育が、全国的に広まればいいんではないかと思いますし、また一方では、こういう目的の新しい医学教育を考える。従来の医学部教育ですと、診療科でやはり縦割り制になってしまって、総合的なところがいかないので、そういう目を持った医学部教育もいいんではないかということで、是非幅を持たせた、内容に踏み込んだ議論をいただければ大変有り難い。
【安西座長】 どうぞ、今井委員。
【今井委員】 矢崎先生からお話しいただきまして、私は山本先生のお話に基本的に賛成なんですが、ただ日本が抱えている問題というのはやはり、例えば新しいお薬なんかはなかなか日本から出てこないで、ほとんど輸入ですね。輸入超過になっていて、それが国の赤字を生んでいるという実態があります。もう車のことや電気のことで、日本が立ち行かなくなりつつあるという現状がありますので、こういったことも考えると、今までの医学部の在り方というので、本当にこのポイントを乗り越えていけるのかということも、やはり考えていかなきゃならないと思うんです。
もちろん地域医療もやります、研究もやります、教育はもっと大事ですと、どこもそういうふうにずっと努力してきたわけですが、国民の皆様のところにそれが届いていっていないという実態もあるわけでありまして、だからもっと何とかならないのかという話だと私は理解しています。
そうすると、もうちょっと大きく考えて、今の枠組みで人数を既存の医学部だけで増やして、本当にうまくいくのかどうかということには、私はちょっと疑問がありますので、もうちょっと新しい枠組みも含めて考えていくことが重要なのではないかと。何回も言っていますが、東西格差もあるし、それから足りない場所がかなりはっきりしているわけですから、そういうところは変える必要がある。財源の問題はもちろんあります。これは大事なんですが、財源というのは医師の数で決まるんじゃなくて、医療ニーズはあるわけですから、亡くなる人は亡くなるわけです、35%も増えるわけですから。それでお金がかかるのはしようがないわけです。それをどうするかということはもちろんあります。
しかし、現状で医師の数を制限したから、じゃ、亡くなる人が減るのかというと、そういうことはないわけで、医療を求める人は35年までどんどん増え続けるわけです。ですからそれに、医師の数を増やさないで合わせていくというのはかなり無理があるので、増やすと。増やすとすればどういう方向でやっていくのがいいかということで、私はずっと述べさせていただいているつもりですので、ちょっと一言意見とさせていただきます。
【安西座長】 ありがとうございます。ほかに。
【永井委員】 よろしいですか。
【安西座長】 どうぞ。
【永井委員】 そういうふうに医療専門職全般を通じて医師の問題を考えるということであれば、広い意味での医療費の再配分ということも考えないと、現実的にならないんではないかと思われるんですけれども、医薬のみならず、看護師、それからそのほかのいろいろなレントゲン技師等の、今、理学療法士と言いましたっけ、いろんな待遇。専門職、専門学校が増えていますけれども、非常に低い賃金ということがある意味では定評で、そこを出てもなかなかその職場に定着しない。
そういった意味では、医師の数というだけではなくて、そういう医師の専門職全般を議論するというならば、広い意味での医療費も全般的にどう再配分するのが適切なのか、そこまで考えないとならないんではないかという感想です。
【安西座長】 一応3時までと、時間のことばかり気にして申し訳ありませんけど、そういうことでございます。どうぞ。
【中村委員】 北原先生、山本先生の話、両方とも非常に、つい最近まで大学にいた者としては、いろんな意味で納得するところがあるんですけど、一つ山本先生の御意見の中で、20名増やすことに関して、僕自身は大学によってかなり質が違う、だから全ての大学は同じような形で機能できないという点から、東北大学が担っている役割の中で、東北4県全体をまとめて、それで東北大学に20という数字を出されてきていることに関して、20名を東北大学に持ってきて、20名が地域医療にそのまま、100名残りは従来の形でやって、20名の増員がうまくいくか、そのところに何か必要なのではないか。そのためにはむしろ、東北地域全体としての増員的なものを考える必要があるんじゃないかという印象が、ちょっとしたことです。
それで、特に大学の定員の枠が非常にドイツとかで多い。カナダでも大学によってかなり違うということは当然で、僕はそういうことで既存の大学を生かすということが非常に重要だろうということには納得しているんです。
それから今井先生のお話を聞いて、確かに高齢化して死亡される方の数が増えてくるということはよく分かるんですけれども、それが今の医療構造が変わる中で、同じような形で医師がそのまま負担するような形が必要なのかどうか。例えば80歳で亡くなる方、がんで亡くなる患者に、医師が関与しているところというのはそんなに多くないだろうと。看護とか、それからケースワーカーとか、いろんなことをやっていて、それをきちっと切り分けて。それは北原先生のお話と一緒なんですけれども、きれいに切り分けて、もっと自由に医療を負担させるような形にすれば、今の中で、本当にそのまま医師を増やしていかなければならない数になるんだろうかと、素朴な疑問として持っています。それが二つ目の質問なんです。
【山本雅之氏】 御指摘どうもありがとうございました。それで、中村先生もご存じのように、東北地方の医学部というのは皆ぎりぎりまで定員増をしてしまって、弘前や秋田、山形は、もう125人の体制で医師養成をやっています。私が20人という数字の計算なんかを出したのは、ちょっとミスリーディングだったと思うのですけれども、私が申し上げたかったことは、今この未曾有(みぞう)の大震災で沿岸部医療が崩壊しているときに、即効性を持って医師を供給する余力があるのはどこかということです。それで私どもがもうぎりぎりの努力をして、医師教育のレベルを落とさず、東北大のレベルできちっと教育した人を輩出するために、最大限の努力をしてできるところはどのあたりかということで、この20人という数字を出した、そうご理解していただけると有り難いと思います。
【今井委員】 安西先生、よろしいですか。私も聞かれたので。
中村委員からの御質問にお答えしますけれども、先生がおっしゃるように私のポイントは、今の医療で35年になると、高齢者が非常に増えて、亡くなる方も三十数%増えるというのを、今の医師の数で今の体制でやるとすれば、ああいうことになりますよということです。もちろん看護ですとか、ほかのメディカルスタッフの方がだんだん増えていらっしゃると思いますので、だんだんに医療形態は変わってまいりますし、それは合わせていくことが必要だと。
でもそれを言い出すと、もっとニーズが高まるかもしれないし、いろんな問題がありますので、ちょっと複雑になりますので、先生の御意見には反対はしませんが、私のポイントはその比較で、今と35年とを比較すると、医師数にするとそれだけ必要だと。しかも今の過重労働というそのことをそのままにしたままでも、三十数%重荷になりますよということを申し上げているわけです。
そういう意味ですので、だから今後医療の体制をどんどん変えていくということには、別に私は反対しませんし、私としてもいろんな方を育ててきた経験がありますので、もちろんそれは大事なことだと。保健師さんだとかいろんなところと手を組みながらやっていく、これは非常に重要なことだと思います。ポイントは、国民が亡くなっていくわけですから、そこにどう医療を提供するかという観点で述べているわけでございます。
【中村委員】 それは逆に言ったら、一つの枠的な、要するに経済的な予算の枠がある中で、医療というのは多分変わるんだろう、変えられるんだろうという感じがしていて、それで僕自身は、例えばここの最初のときに、浜松医大の脳外科の先生がお話になって、浜松に幾つか脳外科があって、そこで何名手術しているかといったら、一つの脳外科のクリニックの中で、月4名か5名だったという話をされていて。月それだけのところで脳外科が四つに分かれるんだったら、一つか二つに集めてやる方が、地域のセンター的なものとしては当然だろうという感じがするんです。
要するに、亡くなる方がこれから30%増えれば、医者は30%増える必要がある。僕はむしろ質の問題で、どのような医者を育てるかということが重要な話で。
【今井委員】 それはもう全くおっしゃるとおりで、質は非常に重要なんですが、医師数が足りなくなるのも事実なので、それに対応する必要があるだろうということを申しております。過重労働のままではいけないということ。そうすると女性もなかなかきついですよね。そういう立場で申し上げているにすぎません。どうぞ御理解をお願いします。
【安西座長】 どうぞ。
【中川委員】 今井先生、先生のお話を聞いて、今日の先生の資料も拝見しましたけれども、医師不足があるところには医学部を新しくつくればいいということですよね、先生がおっしゃることは、論理的に無理があるんですよ。それで将来的に病気が増えるとかいうことをおっしゃいますけれども、今の医師不足の現状は絶対数の不足と偏在だということは、一致した見方だと思うんです。
医師数の手当ては直近の4年間で1,300人増やしたので、まず中長期的には手当てはできたろう、次は偏在の解消を議論するべきだろうと思うんですが、先生のお話では全くそれが出ないんですよね。先生の推薦の前回の上先生もそうでしたが、将来的に歯学部のように、あれだけ過剰にもしなったらどうするんだということに関してのお答えは一切ないんです。このことを避けて、この議論はできないなと私は思うんですが、もう今時間がないようですので、次回、先生、是非そのお答えを下さい。
【今井委員】 安西先生、すみません、よろしいですか。
【安西座長】 どうぞ。
【今井委員】 それこそ論理に飛躍があるわけで、歯科の先生方は仕事内容も異なるのに何故一緒にされてるのでしょう。私は別に歯科のことを言っているわけではないので。国民が病気になっていく、そしてある年代になると亡くなっていくということを踏まえて、どういう対応をしたらいいのかということを述べているわけで、別に歯科医のお話をしているわけではありません。
それから、お金というのは別に医師が増えるからかかるわけではなくて、医療全体にかかっていくわけですよね。ですからそこは、ちょっと誤解しないでいただきたいと思います。
【中川委員】 私は、歯科と医科が根本的に違うとは思っていませんが、歯科は命に関わらないからあれだけの過剰になって、いわゆる失業も出て。医学部も定員割れしても、それはいいということですか。
【今井委員】 いえいえ。ですから先生、私は歯科の話は全くしていませんので。そういう場でもありませんので。
【中川委員】 歯科のように、歯学部のようになったらどうするんですかというお答えがないということを申し上げたんです。
【今井委員】 それはおかしな議論で、私は根拠を述べて、医師数が必要だということを述べているわけで、別に歯科との比較で言っているわけではありません。誤解しないでください。
【中川委員】 まあ、次にやりましょう。
【今井委員】 それは歯学の方にお聞きしたらいいんじゃないですか。
【中川委員】 時間がないようですので。
【安西座長】 それでは大変申し訳ありませんが、今日はこのあたりにさせていただきます。ちょうど議論が盛り上がったというと申し訳ありませんけれども、そういうところで申し訳ありません。
【北原茂実氏】 座長、最後にちょっと、30秒だけ話していいですか。
【安西座長】 じゃ、15秒だけ。
【北原茂実氏】 ちょっと一瞬だけ。ずっと伺っていて、私はいつも思うんですけど、一つ抜けていると感じたのは、実は国民の視点なんです。要するに、国民がどういう医療を望んでいるかという議論が全然されていないということが、ちょっと引っかかりました。それを考えないで、要するに提供する側(がわ)だけでこういうものが必要だろう、だからこうだという話をしていても意味がないということは一つ。
【安西座長】 ありがとうございました。
今日は北原先生、また山本先生から大変貴重なお話を伺いました。また、何人かの委員の方々から御意見も特に伺いました。次回、続けさせていただければと思います。今、最後にありましたように、やはり国民目線ということは、この会議としては大変大事なところだということは認識しております。こちらからもいろいろポイントがあるんでありますけれども、それは次回にお話をこちらからもさせていただくことにいたします。今日は貴重な御意見を頂きまして、ありがとうございました。
ずっとヒアリングをやってまいりましたけれども、だんだんやはりこの委員の中でもって議論を詰めると。毎回申し上げておりますけど、そういう時期に来ておりますので、どうぞ御協力のほど、お願い申し上げます。
それでは、事務局。
【植木視学官】 はい、かしこまりました。次回、第7回の検討会でございますけれども、7月7日木曜日の14時半から17時まで。で、場所がこちらではございませんで、全国町村議員会館、これは半蔵門駅の近くにあるんですが、そちらの方の2階の会議室をとっております。後ほど御案内の際に、地図等のアクセスも併せて御案内をいたします。よろしくお願いいたします。
【安西座長】 よろしくお願い申し上げます。また、委員の皆様、御意見が別途ありましたら事務局の方へお寄せくださいますようにお願い申し上げます。特にございますでしょうか。
それでは、本日はここまでにさせていただきます。お忙しいところ、ありがとうございました。
医師養成係
電話番号:03-5253-4111(内3682)