医学教育カリキュラム検討会における主な意見等

医学教育カリキュラム検討会における主な意見等

検討会委員の第1回から第5回までの主な意見及び書面で提出された主な意見、並びに臨床研修制度のあり方等に関する検討会意見のとりまとめ(「臨床研修検討会」と記載)を記載

 

検討の背景・視点

(医学教育を取り巻く状況)

・医学部教育改革の動向と臨床研修制度が十分に連動しておらず、双方の教育・研修内容の間で調整が必要となっている(臨床研修検討会)

・臨床研修制度の導入以降、大学病院において臨床研修を受ける医師が大幅に減少し、また、専門の診療科を決定することが遅れたことも影響して、大学病院の若手医師が実質的に不足する状況となった。このため、大学病院が担ってきた地域の医療機関への医師派遣機能が低下し、地域における医師不足問題が顕在化・加速するきっかけとなった(臨床研修検討会)

・OSCEの全国的な導入などで学生の意欲は大変高まっている

・平成13年以来、既に全国80の医科大学全てにおいてモデルコアカリキュラムが導入され、膨大な医学知識の共通コア部分についての均てん化が図られ、また、平成17年以来、共用試験(CBT、OSCE) が本格導入され、見学型臨床実習から参加型臨床実習への転換が期待されているが未だ充分とはいえない

・教員の負荷が非常にかかり、学生もなかなか声をかけられず、ただカルテを見て終わるという実習になりかねない

・臨床現場の過重な労働環境が女性医師の離職、さらに絶対的労働力の減少を招き、産婦人科医のみならず外科系は壊滅的であり、研究分野の著しい停滞がこの数年起きている

・大学附属病院の診療現場では、時間を要する医療行為が増加する一方、患者への説明に要する時間や医療に関わる事務作業も増加し、医師達は過重労働により疲弊。現行の臨床研修制度の開始以降、大学における医師不足が著明になったが、これに同期して大学における研究力が著明に低下。臨床系の講座は他の病院からの医師派遣要請に応えざるを得ないため、大学自身が医師不足に陥り、先ず研究が犠牲になっている。次に犠牲になっているのが教育

(検討の視点)

・医学部教育改革の動向や専門医制度の検討の動向等を踏まえ、卒前・卒後の一貫した医師養成を目指して、臨床研修の質の向上及び学部教育の更なる充実を図る(臨床研修検討会)

・専門性と幅広い知識、その根底にある医師としての基本を、医学教育と卒後教育の中で、如何に一貫性を持って育成するか

・卒業して10年経てばその時に習った医学の常識が非常識になる。卒前教育と臨床研修、後期研修、大学院教育等には連続性があり、生涯教育の中で位置づけられなければならない

・医療崩壊と言われる中、5,6年生、低学年、初期教育それぞれの段階から何をすべきか、分けて議論すべき

・今回の改革は医学界だけじゃない形で進める必要がある

 

臨床教育

・臨床実習を始める医学生の質を担保するため、大学の共用試験の合格水準を標準化する方向で検討するとともに、産科や小児科、精神科など診療科の医師不足に対応し、身体面のみならず精神面も重視した全人的医療を進めるための臨床実習の充実を図るなど、医学教育のカリキュラムの見直しを行う(臨床研修検討会)

・臨床研修の到達目標の多くは、医学生の間に、診療チームの一員として実際に診療に参加させることによって達成できる内容。臨床実習の充実・強化を図ることにより、卒後臨床研修をより高度な内容とすることができる

(臨床実習の充実)

・参加意識を持って、責任を持って患者と接触し学生中に多様な医療現場に参加させることができるかを考える

・臨床実習を患者の協力を得ながら如何に有効に行うことができるかがポイント

・各大学で、臨床実習実施計画を見直し、見学型、模擬診療型、診療参加型に分け、段階を踏んで診療参加型になるようにする

・まとまった期間、ひとつの診療科に属して参加型実習を行うプログラムを設ける

・国家試験と共用試験で知識の面でいえば重複している部分はたくさんあるが、得た知識を何に使うのかということまで踏み込んで検討すべき

・医学教育の修了者に望むものは、自分1人で診られか、他の支援や他科へのコンサルトが必要か、今日帰してもいいか、今晩観察すべきかなどが判断できる人

・医療技術を与えるより実際に医師として職業的な知識・思考法・技能・態度の基本的な内容を学ぶ。そのために、チーム医療の実践ができ信頼されるコミュニケーション能力が重要

・“電子カルテを見るだけで、実際に患者を見ていない、担当患者を割り当てても一度も面会に行かなかったケースがあるなど見過ごせない問題が浮き彫りになった

・臨床実習の評価に関しては、実際に足しげく患者のもとにかよってコミュニケーションをとったか、チームの一員として何らかの役割を果たすことができたか、といった部分が卒前では重要である。資料にあるように、何ができるかというより、基本的な態度が重要

・学生に高度に侵襲的なことをさせる必要はなく、チームの一員として、実際に患者に接していろいろ推論していくことが大事

・臨床実習を効率的にできているところは看護師からの報告を受けてきちんと対応させている。これができているかどうかで実習がうまくいっているか分かる。チーム医療の教育ができていないところはチーム医療そのものができていないということ

(到達目標の明示)

・臨床実習の質を高めるには、臨床実習で履修すべき内容を規定し、到達目標を明確にさせる必要がある

・医学部を卒業する用件、あるいは国家試験の受験資格として、一定水準の診療手技、症例などを明確にした方が良い

・臨床実習の充実を図るためには、医学教育モデル・コア・カリキュラム、共用試験OSCE学習・評価項目、臨床研修到達目標等の卒前・卒後の知識・技能・態度の到達目標を統合整理する。また、臨床実習開始前、臨床実習中、臨床実習終了時(臨床研修開始時)さらに臨床研修修了時の各段階で備えるべき到達目標を明示

(医行為)

・患者に対してどのような内容の実習をするのか、診療行為をするのかを全国レベルで統一し知らしめることが不可欠

・医師法を改正し、学生実習段階で可能な医行為を明示することが望ましいが、相当な議論と法整備が必要であることから、当面、臨床実習を医療面接、診察、検査を総合した臨床推論のトレーニングと位置づけることが望ましい

・学生の医行為については、医療チーム内で十分認識、合意するとともに、患者の了解を得て患者から学ぶ視点を重要視した実習を主体とすることが必要である。また、十分なシミュレーション機器を用いた訓練も不可欠である。その上で臨床実習終了時の技能・態度の到達目標に沿った技能評価試験を導入することも必要である。EPOCに含める

・臨床実習における医療行為について、ガイドライン(水準が示されている)に従って行っているのであろうが、新しい水準(基準)を検討して良いのではないか

(基本的診療能力)

・アーリー・エクスポージャーをもっと系統的に全体として取り入れていくことが必要。初期治療、救急医療に関わる部分も少し入ってくると認識

・Early Exposureも大分進んできていますが、知識から始めるのではなくまず現場に先に行くことから始めるべき

・単発的にアーリー・エクスポージャーはあるが、本質的に資質を教育してこなかったのではないか

・プライマリケア重視は正しいが、危険があるので見学中心の診療科がある中で、学生は易きに流れ、プライマリケアだけでよしとする風潮が起こり、長期間の修練が必要な診療分野への新規専攻者の減少を招く

・COMMON DISEASEも大事だが重症患者のケアもできないと行けない

・守備範囲を狭く絞った専門診療に対して、予防からリハビリまで、また心身の両面に配慮する総合診療を医学教育に確立すべき

・少子高齢時代でニーズの高まる在宅医療や看取り、また生活圏内における予防医療などへの関心を高める教育の改善充実

・縦割りの臓器別診療のワクを越えて視野に入れ、「よく遭遇する問題」、「緊急な問題」、「重篤な問題」に優先順位を置いて臨床能力を獲得する

・医療全体の入口が救急。その後の急性期、リハビリがうまく機能しないと詰まる。緊急性を見分ける能力や救命蘇生などは重要。実習前に体系的な教育が必要

・救命蘇生の技術は学生のうちから身に付けておくべきであり、医師免許証の保持を絶対条件とはしていない医療的行為(消防士の気管内挿管など)は在学中の医師国家試験合格前に教えるべきで、少なくともシミュレーターで実習させる必要

・産婦人科は女性のセクシャリティに直接関わることへの抵抗感もあり、学生としては入りにくく、修得が難しい分野であるがゆえに、十分な知識を前提として医療現場でのExposureによる真の理解と抵抗感の除去が必要

・正常新生児・子どもの発達、生理、ケアの視点、母乳、育児の問題。その上で、ハイリスク新生児であるのかの予知、さらに、新生児蘇生法を学生のときに学ぶことは新生児医療に関心を持つために極めて重要

・産科と新生児科がリンク、少なくとも流れとして周産期医療を理解、体験してもらうような実習を積極的に導入していく

・臓器別だけでなく成長・発育というコンセプトを医学教育に取り入れる必要

・ロールプレイ、そして患者を受け持って、体験を共有させることで、精神疾患の人への偏見を除去する。これが全人的態度の修得につながる

・最初の段階から心身両面の教育を施し、精神を臓器の一つのように扱わない。循環器科と精神科が一緒にやってパニック障害を扱うことも有効

キャリア形成

・医療技術を与えるより実際に医師として職業的な知識・思考法・技能・態度の基本的な内容を学ぶ。そのために、チーム医療の実践ができる信頼されるコミュニケーション能力が重要卒前の段階で自分の具体的な将来像が描けていない学生がいる。6年間の中で、モデルとする教員、医師との出会いや、目指すべき人を見つける、探すことが必要

・診療科を選ぶ重要なキーは卒前教育と言う研修医は多い。いかに診療科で面倒を見てもらったかは、実習自体が非常にハードであっても学生の心を動かす。その意味でも診療参加型の実習は絶対に必要

 

地域医療教育

・医学部卒業生の地域定着を促進するため、各大学の実情に応じ、医学部入学における地域枠の拡大などの取組みを進める(臨床研修検討会)

・卒前教育で地域の魅力、地域医療の大事さを早い時期から理解してもらいながら、10年目までの早期に1つの配置経験が大切

・地域医療については、単に市中病院での実習をもって地域医療実習とするのではなく、全学生に山間・僻地・離島医療の実際を体験させることが必要

・地域枠で入学した学生など地域医療を目指す学生のため、地域の実態を体験する学習や総合的な診療を行う能力を伝授するプログラムなどを整備

・地域枠は、残りの学生は地域に行かなくてよいとの感覚を生む

 

基礎医学

・医学系大学には、生涯に亘って学習を継続できる、research mindを身に付けた、科学的思考のできる優れた医師を世に送り出す使命がある

・大半の学生が臨床知識さえ習得すればよいという偏った考えをもつ傾向を生じた(基礎医学知識の軽視)。また最近の医療崩壊は即戦力的な臨床研修重視への世論を盛り上げるという状態を招いている。一方、基礎医学の発達により生命現象・病気の成因などに関し、深い理解が進んでいるにもかかわらず、基礎医学教育体系がそれに対応していない現状もそれに拍車をかけた

・医学教育と医療行政、さらに基礎医学研究は互いに密接な関連があり、中長期的展望に立ち改革を進める必要がある。目先の医療崩壊に対する姑息的な対策を急ぐために、基礎的な医学教育や、基礎医学研究を疎かにするような事態を決して招いてはならない

・基礎医学の教育は、いたずらに「ology」を主張するのでなく、臨床医学との関連を視野に入れて、医師養成に必要な教育を心がけて欲しい

・医学部の正規の基礎、臨床医学教育カリキュラム以外に、授業時間外に希望者を対象とした基礎医学に対する理解を深めるカリキュラムをもうけるとともに、医学部卒業者で医学研究科博士課程へ進学する学生を対象として特別奨学金

・基礎医学に関しては、すべての面の最先端をすべての学生に教育しようとする時代ではなく、臨床医に必要な基礎医学の教育の側面と、研究者養成の側面を明確に分けて議論することが重要

教養教育・社会医学

・共用試験の後に急に患者の協力を求めるより、アーリー・エクスポージャーも含めて、節目、節目で織りに触れ、患者理解や患者との人間関係能力を高めるために患者の声を聞くことができないか。被害者感情をお持ちの方、患者の経験談や家族の看取りの体験、あるいは障害者の生の声などを今以上に医学教育に利用・活用すべき

・医療側も公の財であり、医師は卒業までに相当な公費を投じて育てる「公」の存在であるという認識が必要

・医師の使命は何かということの教育がなされていない

・社会人としての基本的マナーを身につけ、将来の医師たる自らの理想像を明確に描き、初心を誇りに抱き続けるプロフェッション育成のための初期教育の見直しと改善・充実

・倫理観は医師としての実践の中で身に付くものでもあるので、臨床実習のうちにむしろしっかりとした臨床内容を学ばせるべき

・教養教育は重要ではあるが、教養教育は生涯教育にも通じるので、むしろ6年間のうちで学生が自由に選択できるようにした方がよい

・コミュニケーション能力、患者の心を理解しよくわかる話をしてあげる教育が大切

・医者だけがすべてお山の大将の時代は終わっている。チーム医療、他職種への理解が必要

・良き友人と種々の活動を通じて苦楽をともにすることは、人として成長させ、一生の財産。医師を志す「人」の育成という視点も必要

・臨床医をはじめ様々な分野をオーバービューして、全体のマップを学生に示した上で選んでいくという過程が重要、日本では欠けていた部分

・人格の涵養し資するプログラムの導入を進めること。早期体験など単発的なもののみでなく、医学史や医療倫理、医学概論など体系的なプログラムを構築して教育すべき

・欧米並みに医療政策学講座を各大学に設置して、今日的問題や厚生労働省や都道府県などの医療行政の人材を供給することが最も大事

 

コア・カリキュラムのあり方

・コア・カリキュラムはよくできているが、医師国家試験のガイドラインも含めて、全体の量があまりに多く消化し切れないまま卒業しているのが現実

・コア・カリキュラムや国家試験のガイドラインによって、教える内容がかなり規定される中で本当に魅力のある指導ができるか苦しい

・80医科大学が全て同じカリキュラムである必要はない。医師として大切なコアな部分は必要だが、地域に根ざした大学や世界を目標に闘う大学などいろいろなタイプの教育が必要

 

医師として必要な能力・適性の評価

・卒前の臨床実習の充実の状況を踏まえながら、医学生の医行為の取扱いや国家試験の内容を見直す(臨床研修検討会)

・学生は目前の大きなハードルを常に意識しながら勉強するが、国家試験が非常に難しく、臨床実習の間を試験勉強に費やし、大多数の学生が卒業時点で専攻科を決める状況になくなり、卒前の臨床実習が無駄になっている可能性がある。国家試験のハードルを少し下げて、学内で判断するCBTのハードルを上げることでかなりの改善を期待

・共用試験については、1.社会的に認知された資格試験として位置付ける。2.合格基準を厳しくし、全国レベルに統一する。3.合格者には「スチューデントドクター(仮称)」などの資格を付与し、参加型臨床実習を可能とする資格とする。4.合格者に対する学生の医行為の基準を明確に定める。5.社会的な合意形成を図る。6.臨床実習の評価システムを確立する

・学生が臨床実習に専念できるようにするために、臨床研修のマッチング時期および国家試験の内容について検討することが必要

・アメリカは、学部、MS、インターン、レジデンシー、フェローシップ、就職の段階毎に「出願」が必要であり、試験、推薦状、学校の成績、EXTRCURRICULAR ACTIVITY、面接はほぼ同等のウェイト

(入学者選抜)

・アドミッションポリシーの明示を強く推し進めること。それも、それぞれの大学の理念に基づいた個性が伝わるものとする

・真に臨床医・医学研究者になりたいというモチベーションの高い学生を入学できるような入試制度になることを望む。現行の入試は偏差値が偏重され、人間性を正しく評価できていない欠点がある。少なくとも高校までに社会、経済、文学、語学などの教養教育を習得していることを入学の用件にするようにしたい。たとえばセンター試験を改善し、センター試験で受験する科目を増やすなどは実現可能な方策

(医師としての適性の評価)

・臨床医として適性を欠く学生がいることは、誰もが認識しているが、入学時の面接・論文、入学1年次の学習で判断できないだろうか。医師は公に奉仕する聖職であり、地域医療を担う義務があるという明確な認識と意志をもっているか、医療に不可欠なcommunication 能力をもっているか、近い将来もつことが出来るか、これらを見極める選抜が求められる

・入学前あるいは1年次early exposureにおいて、医療・保健・福祉施設等において、医療(看護)、介護などの体験実習を課して、医師と共にco-medical staffが評価することも有用

・多額の負担をして入学する学生の適性をふるいにかけるには相当な根拠が必要。また、逃げ道を用意しなければならない

・医学生も大人であり患者に被害があってはならないことを考えると、臨床に進ませるに際して厳格な進級判定をすべき

(共用試験)

・学生が臨床実習を行うに際して必要な知識、技能、倫理観を先ず試験する。次いで卒業時に於ける全国共通の到達目標を設定する事により国民の納得する医師としての総合的・平均的レベルを担保

・共用試験は8割はできるという前提で問題をつくっているが55%ぐらいを合格ラインにしている大学もあ

・CBT/OSCEを診療参加型臨床実習の開始要件とするため、高いレベルで全国一律の合格基準を設定することが望ましい。ただ、個々の学生の習熟度に差があることは否めないので、合格するまで何度でも受験できる仕組みに変えることが望ましい

・共用試験の利用状況、問題点を十分把握した上で、標準化に必要な改善すべき事項、レベルの設定、予想される弊害への対応、制度の法的根拠も含めて検討

(医行為を行う実習生の立場の明確化)

・医師法17条の規定が弾力的に運用される必要がある。例えば、仮免許を発行するなど、一定の能力を備えた医学生が医行為を行うことについて、国民の理解を得ることをはじめとした環境作りが不可欠

・共用試験合格者に対して、Student Physicianといった称号を全国統一的に与えること。大学においては、称号授与式などを挙行し、学生の自覚ならびに学内外の認知を進める

(国家試験)

・国家試験で4年生の共用試験までに教わっていた知識がまた問われ、6年生の教育が復習に費やされ、実質5年教育になっている

・専門医試験レベルの問題が多数出題されているなどあまりに難易度が高く、学生の負担が大きく、第6年次の臨床実習が形骸化するなど、医学教育に多大な影響

・イギリスはマッチングを成績で決め、ペーパーテストは25%だが、臨床実習中に経験した症例についての問題。臨床実習を一生懸命やると通るような試験問題に変えるべき

・難し過ぎることが卒前の臨床実習の形骸化につながっており、まず量の問題と、もっと臨床に即した症例問題とし、臨床実習との連続性を高めるべき

・CBTは基礎医学を含む医学的知識と医療倫理を問う試験として第1次医師国家試験として位置づけ、advanced OSCE、及び臨床的能力に関する試験を第2次医師国家試験として卒業時に行う。現行制度では、ことに6年次は、学生は試験対策に走り、十分な臨床教育が行われていないと言われているが、臨床実習に臨む学生の姿勢も一層積極的になる

・知識の整理は共用試験段階で評価していること(全国統一の合格基準の設定が前提)に国民的理解を得る活動を行い、症候を中心とした課題に絞り1日で終了するような形とすることが望ましい。また諸外国でも多く実施されている臨床技能(医療面接、診察手技)の試験を実施すべき

(臨床能力評価)

・国家試験かは別として、臨床能力を何らかの形で卒業時に各大学で評価するなどの形でシフトさせることが重要

・あまり高いレベルではなく実習をきちんとクリアしていることを、国民に認識してもらうことが信頼感を生む重要なプロセス。5年と6年では知識に大きな差があり、節目、節目できちんと評価をすることが絶対的に必要

・Advanced OSCEは、もちろん実施することは好ましいが、臨床実習の評価としては、ベッドサイドでの観察記録がやはり必要

・欧米ではポートフォリオによってどんな症例を経験し、どんな医療行為をしたか評価・OSCEもし、クリアしないと進めないシステムがある。臨床実習の評価をし、国民が安心して任せられる医者を育てることは非常に大事

・それぞれの段階の学生の体験・修得した技能等を記録し、証明するために、卒後臨床研修で用いられているEPOCシステムを有効利用することを検討

・学生の評価は、原則ポートフォリオ評価とし、一定の書式に基づいて経験症例や自己評価、指導者評価などを保存するシステムを構築すること。このポートフォリオは、単位認定だけでなく、研修医の採用試験や、その後のキャリアアップに使えるものとすること。実習の評価を最終日の口頭試問で行うのではなく、多方面からの観察評価を中心とすること

・臨床実習終了時の技能試験の仕組みを早急に明らかにすること。臨床実習終了時(卒業前)にOSCEによる技能試験を行うべきである。その際、実施主体(共用試験機構など)と学習到達目標を明らかにし、充分な試行期間をおく必要があることから、早急に枠組みを明らかにするべき

・臨床実習を評価する時間など今の教員にはなく、絵に描いた餅

 

医学教育に対する国民の理解と協力

・大学の教育理念を明らかにし、そのためには地域の人或いは患者さんにこういう協力をしてほしいというわかりやすくメッセージが必要

・国民に医学教育とはどんなことをやっているのかを伝えていない

・各病院でどういった内容の実習をしているか国民に見せてこなかったことも、大学病院でサンプルにされてしまうのではないかといった誤解の大きな要因。身近に医学教育を感じていただくことが大事

・大学病院は国民の医療に貢献する医師を養成する唯一の病院であること、教育の場として患者に協力をお願いしなければならないことを、文科省、大学が協力して国民に訴える運動を進めたい

 

教育体制

・現在の医学部6年制を4年制+2年制とする。4年次の共用試験に加え、面接や推薦状で臨床医学課程に進学する者を選抜し、何とかフィルタリングできる制度にする

・医学部を入学時から総合診療医コースと専門医コースなどコース別に分けるあるいは最後の2年間を分けるなどの工夫が必要

・自治医大をナンバースクールにして地方ブロックごとに1つという案も考えられる

・農村医科大学校を作り農村に特化した医療を教える農村医科大学校の設置も一つの方法

・第2の自治医科大学より各大学が自らが置かれた状況を踏まえて特色を出していくことが良い

 

指導体制

・教育要員の確保、教育予算の充実、学外教員の活用、臨床教授制度の充実等が不可欠

・必ず指導医がいるという説明をすると小さな納得は得られる。患者の納得、安心のためには指導体制、教育体制がしっかりしてきたことを示すことが一番の近道

(指導体制の充実)

・生涯学ぶことができるようなリサーチマインドを持った臨床医を育てたいが、今の大学の土壌の中で、医学が荒廃したとしか言いようの状況に陥っている。医師が疲弊しているので、教育専門の医師の定員を増やすことが必要

・研究も地域医療も求められる中教員は爆発寸前。そうした姿を見ている状況での若手医師の確保は非常に難しい

・大学病院の運営が要求される中で教育も求められる。診療報酬の話なのかもしれないが大学病院へのインセンティブが必要

・実習、Early exposureも金がかかり、屋根瓦も待遇が悪いのが現状。診療参加型臨床実習を充実させることを議論するとともに、財政的な裏づけが必要

・今こそ医学教育に大きな予算を配分するとともに、卒前臨床実習から卒後臨床研修も含めた一貫した教育課程を提示することにより、ゆとりある教育・指導体制を構築することが求められる

・教育予算が極めて少なく、臨床系教員の劣悪な環境。その中で、教育dutyとともに臨床dutyが増大し、研究活動は壊滅。診療部門の勤務条件の緩和が必要。定員を増やし臨床系教員のdutyの緩和が必要

(シミュレーター等の活用)

・診療技能の向上、侵襲的医行為等を実施する前提として、シミュレータやスキルスラボの活用

・シミュレーション教育も、エデュケーターの支援のもとに行われる体制により継続的に活用できる

(学外機関との連携、臨床教授の活用)

・本当にマンツーマンのチュートリアルとなると、学外にお願いする、あるいは客員教員にするなど、何らかの工夫が必要

・附属病院のスタッフ(教員)の負担がますます大きくり、一方、直ちに増員は望めない現状において、市中病院のstaffが臨床教授(客員教授、特任教授)として教育に参加しているが、教育カリキュラムの構築、臨床実習の実際、成績評価などについて、対等な立場で参加し「大学の教授」として誇りを持って仕事をしていただけるよう、処遇してほしい

・産婦人科へ進むか迷う学生は、個々の大学ではかなり少数派で孤立しているため、そうした学生を集めてサマースクールを実施したところ、同じ考えを持つ者が結構いることがわかり、産婦人科医へ導く大きなきっかけになった

(屋根瓦方式)

・上級生が下級生を教える。ワンウェイで教えるのではなくて、学生たちが勉強することで教員の負担も減る。こうした工夫も現状では必要

・テニュアの取得に教育業績も評価される。ただ、教授等高いレベルの教員はレジデントやフェローの指導を担い、学生の教育は、講師や非常勤のボランディアのスタッフが誇りをもって教えている

(職種間の協働)

・大学が臓器別の縦割りになっている

・学生実習が始まることや何時からどの患者を受け持つこと等の説明や紹介が看護職へはない

・コメディカルとのチーム医療を実践する上でも、計画段階から全職種参加で、診療科横断的な取り組みが必要

(全学的指導・責任体制)

・大学が臓器別の縦割りになっている

・内科学教育、内科診療が、臓器別・機能別に専門分化し、専門内科が置かれることは、高度先進医療を担う大学病院として避けられない流れである。一方、患者を人間として見(診)る全人的医療、総合診療、地域医療などの教育の重要性が改めて問われている現在、全ての内科が一体となって教育・診療にあたることが必須である

・診療科単位を超えた教育指導体制、統括責任者など、臨床実習の責任体制の確立

・臨床実習は、診療科単位ではなくブロックとして位置付けて態度教育を行っていく

(教育評価と指導能力の向上)

・教育をしている教員を評価する裏付けがないと長続きしない

・大学は研究、教育、診療あるいは社会貢献という柱があるが、教育の柱が余りにも細過ぎて評価されない。自分たちの後輩を育てるという態度、あるいは教育するための方法論などに関心を示さない教員を増やしても意味がない

・臨床実習に望む学生本人の姿勢にはもちろん、まずは臨床現場における指導医のマナーの確立と患者への説明がなにより重要

・臨床実習の指導者のための研修会を開催し、FDに努め、認定証などのシステム整備をすること。その際、大学教員で臨床研修指導者であるものの積極的な活用

(全学的指導・責任体制)

・各県の大学は、地域医療を支える使命を持っているが、優秀な地域出身者を入学させたところで、大学としての評価は、論文数など研究、科研費などの獲得などでされるので、大学はジレンマにある

・欧米ではMedical Councilによる医学部の評価がシステム化している。これにより、各医学部は水準が保たれている。本邦でも大学評価はあるが、内容的には医学教育の適正まで踏み込んでいるかどうか不案内である。とくに臨床実習の質の評価など、第三者としての評価を行い、改善すべき箇所があれば指導できる体制を充実することを望む

 

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高等教育局医学教育課