資料1 医学教育カリキュラム検討会(第3回)概要(案)

議事

地域や診療科に必要な医師を養成・確保するための方策について下記関係者にヒアリングを実施。

1.海野信也(北里大学医学部産婦人科学教授)
2.板橋家頭夫(昭和大学医学部小児科学教室主任教授)
3.横田俊平(横浜市立大学大学院発生成育小児医療学教授)

第3回の主な意見

(産婦人科・小児科・周産期医療の現状等)

・勤務医が減少し、過酷な勤務状況の先輩医師に教わる学生にすれば、そういう立場になりたくないと思うのはむしろ自然。資金を投入し、教員数を増やさないと解決にはならない。

・今の臨床現場は、産婦人科医に限らず、過重労働が問題。女性医師が働き続けられない環境であり、それが絶対的労働力の減少を招いている。外科系は壊滅状態。

・中核病院の勤務では、新生児医療とともに、小児救急を含めた両方をやらざるを得ない。特に地方に行けばその傾向は顕著。

・横浜では52病院の輪番制から、7病院に集中、小児科医を集約化。集約化することで小児科医が過重労働から開放される。多くの小児科医がいるために、そこでの臨床研修が非常にうまくいく、つまり教育システムとしての集約化ができた。

・大都会と郊外型、過疎地の医療がある。それぞれのモデルをつくっていくべき。

・産婦人科や小児科は患者の人生の根幹にとても近い部分での仕事であり、何か問題が発生した場合、その患者にとって非常に大きな問題となる。そういう問題が発生すること自体はある程度やむを得ないという認識を我々も持つべきであり、それを前提として制度をつくるべき。無過失補償制度については賛否両論あるが、診療分野によっては必要な制度であることを理解してほしい。

 

(診療参加型臨床実習の実施)

・5年生、6年生を通じてしっかり診療参加型で実習をすべき。実習から得るものが学生の身についた知識として将来につながる。

・診療参加型のしっかりとした臨床実習を行うためには、CBTを国家試験化、免許、資格に連動させるべき。国民の理解、国民の協力を得るにしても、免許や資格がなければ困難。「診療参加型の臨床実習を」というかけ声だけで、年々、後退しているのはその辺に原因がある。

・卒前医学教育に効果的な方策というのは、実質そういう処方せんはないと思うが、学生や研修医の話を聞くと診療科を選ぶ重要な要素は卒前教育。いかに診療科で面倒を見てもらったかというのは、実習自体が非常にハードであっても学生の心を動かす。

・資質の部分、態度面の評価を学生にフィードバックすべき。4年間、5年間医学部でやってきて、「無責任だから医師に向かない」と言われても潰しがきかない。低学年からそういう教育をしていく必要がある。

 

(臨床実習の評価)

・臨床実習をきちんと受けている学生の評価をすることが大事。欧米では国家試験がない国もあるが、その代わり、どんな症例、医療行為を経験したか、全部評価するようシステム化され、きちんと大学で評価している。国家試験を易しくすると同時に、医学部の中で臨床実習をきちんと評価するシステムを構築すべき。

・診療参加型臨床実習で一番評価すべき部分は、技能と態度の面。アメリカのデータでは、医師免許取得後、就職した後に訴えられる、あるいは卒業後、州から懲戒処分を受けるのは、診療参加型臨床実習、クリニカルクラークシップにおいて、「無責任だった」、「批判的なことを言われるとすぐ刃向かう」という評価を複数の指導医から受けた学生である率が高かった。

・州の医療機関(日本でいう厚生労働省)にくる苦情の発生率を調べたものでは、5年から12年観察しているが、学生のときコミュニケーションスキルが低かった人が医師になると、その後の苦情発生率が高いという結果がある。

 

(国家試験)

・国家試験が、難し過ぎることが卒前の臨床実習の形骸化につながっている。これを改善するために、国家試験の量及びもっと臨床に即した、臨床実習の内容に近い出題等について検討すべき。

・卒前教育が国家試験の予備校化しているのは問題。

 

(医学教育に関する問題点)

・日本の教育予算が少な過ぎる。

・文部科学省と厚生労働省との間で改革の一貫性が欠如している。

・私立医科大学の高額学納金が問題。

・診療参加型臨床実習にしても、アーリーエクスポージャーにしてもお金がかかる。臨床実習を充実させる、これは大学病院だけでやるべきではないという意見もあり、協力病院にお願いすることもある。そうすると十分な謝礼を払わなければいけないし、設備を整えていただく必要もある。屋根がわら方式といっても、医員など非常に待遇の悪い人たちが屋根がわらの3枚目ぐらいにいる。そういう人たちにインセンティブを与える必要もある。

・抜本的にシステムを変えないと、日本の医療は壊れてしまう。今は6年間の医学教育、2年間の初期研修、その後、小児科の場合は3年だが専門医研修。最初の8年間をもう少し整理すべき。

・学生に「教える」のではなくて、学生が「学ぶ」ということが重要。学ぶための実習をどうするかということに力を注ぐべき。

・学生、研修医への働きかけを強め、サマースクールのようなものを学会主導で実施し、その分野を目指そうという学生を全国から集めて交流させることが有効ではないか。

・共用試験の後になって、急に患者の協力を求めるよりも、アーリーエクスポージャーも含めて、あるいは共用試験の修了後、臨床実習に出る前の節目、節目で患者の声を聞くことに医学教育の中で取り組むべき。

 

(教員の配置)

・産婦人科の診療領域を支える人材養成ができていない。産婦人科に限らず外科系に共通の問題だが、診療部門の勤務条件を緩和する必要がある。教育費を増やすことにもつながるが、定員を増やすことが必要。

・卒前教育に専念する教員の配置が重要。教える側も十分な時間を割いてあげられないジレンマがある。学生も忙しそうにしている医師に声をかけられず、ただカルテを見て終わるという実習になりかねない。

・現行の小児科のドクターだけでは卒前教育が厳しいのであれば、小児に関連したほかの教官を卒前で、連携しながら教育できるのではないか。学生実習にあたり、小児専門看護師や医療相談室の方に協力してもらっているという例もある。

・教育専門の医師の定員を増やすべき。大学の中をもう少し充実しないと、このままでは日本の医学研究はだめになってしまう。

・卒後臨床研修制度から始まったことだが、基礎医学を選ぶ人が激減し、臨床医でも研究マインドどころか研究をする人がどんどん減っている。

・医療人を教育する大学病院に対しては、診療報酬上、ある程度インセンティブを与えて経営面をいい方向に持っていかない限り、人を維持することも困難。

・日本の医学部では、臨床医を中心に研究者から教育者、行政に携わる者までさまざまな分野の人材を養成しなければならない。

 

(医学教育に対する国民の理解)

・国民に医学教育の重要性を理解してもらうことが大事。

・国民に医学教育を理解してもらう前に、混沌とした医療の現状を理解してもらうべき。今は医学教育と医師不足の問題が混同されている。

・CBT、OSCEを前期の国家試験として位置づけて、国家試験を通った学生が患者を診ているということをオーソライズすべき。

・患者に対してどのような内容の実習、診療行為をするのかということを全国レベルで統一し、周知することも、診療参加型には欠かせない。

・各病院で実習の内容が気になる方々には視聴できる、あわせて、患者さんの権利等について理解していただく、身近に医学教育を感じていただくことが大事。

・実習で学んだことをきちんとクリアしているということを、国民にきちんと認識してもらうことが、信頼感を生む上で重要な要素。

・男子学生の実習、お産の見学ができないという現実がある。患者やお産される方々に断られることが多く、学生実習の自由度の確保については、特に産婦人科側から声を上げないといけない。

 

(総合診療医)

・プライマリケアと、すべての臨床医が獲得すべき基本的な能力が混同されている。将来、眼科、耳鼻科、心臓外科に行く人全てに持っていてほしい医学部教育、あるいは臨床研修後、これぐらいの能力は期待されるというところを学ぶのが最初の6年プラス2年。総合診療はその先にある、小児科の3年にほぼ相当する3年ないし4年が想定されている。これが日本にないというのは非常に問題。

 

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