地域や診療科に必要な医師を養成・確保するための方策について下記関係者にヒアリングを実施。
1.邉見公雄(全国自治体病院協議会長)
2.高橋勝貞(佐久総合病院介護老人保健施設長、初期研修プログラム責任者)
3.木村清志(島根県健康福祉部医師確保対策室長)
・医師の地域偏在については、二次医療圏ごとに必要な診療科の医師数を算出し、その合計で全国の必要医師数を出すというボトムアップ方式で決めるべき。その算出結果をマッチング材料とする。マッチングについて強制力をどこまで持たせるかについては、学会や団体の意見が必要。
・地域医療を支えるのは、若い医師とある程度経験を積んだ医師とどちらがよいか。東南アジアのように、若い医師に地域医療を義務化してもモチベーションが低く、やる気がないということにならないか。
・平成3年から6年一貫教育となり、医学部教育が変わった。農村医療も重要だが、医学部教育がどうあるべきかを検討すべき。
・自治医科大学の設置のときも俎上に上ったが、大学において農村に特化した医療ができるのかは疑問。
・「農村医科大学」という構想もあったが頓挫。ある領域に特化した医師を養成するのは非常に難しい。
・待遇改善も進んでいるが、金銭的なインセンティブで地域に根付かせるのは困難。
・自治医科大学も十分機能していない。卒後10年以上経って、50%以上が地元に残っている県は、新潟と岩手くらい。
・地域医療振興財団においては、マグネットホスピタルを作って対応している。
・医師の地域偏在の対策に地方自治体で対応するのは難しい。
・同一県内でも、県庁所在地とそれ以外の地域では年々格差が広がっている。
・地域に戻ってくる医師は卒後10年目以降、40代、定年前が多い。
・地域医療は全世代で担うべきであり、母校やその周辺に戻ってくるのが理想ではないか。
・最近は地域医療学講座等増えてきているが、大学の中で行うのは難しい。地域フィールド型がよい。教員が実習施設に出向いて指導するなど。
・地域医療の現場では勤務医の負担は増すばかりで、学生の指導にまで手が回らないとの反発が大きかったが、最近は、後々自分たちのためにもなることが分かり、協力的になってきている。
・アーリーエクスポージャーやマッチングの前に泊まりがけで地域医療の現場を見てもらうことは有効。クリニカルクラークシップでは医行為に制限があるが、卒前教育としては難しいことをする必要はない。
・カリキュラムも重要だが、指導者の熱意が一番大事。
・当初の大学医学部の設置目的は、地域の医師を増やすことにあったはず。学者の道に進むにしても地域マインドは必要。大学全体が地域医療に力を入れるべき。
・私立大学の学生に多くは、親が医療者であり将来どうなりたいか考えながら学習を進める。これに比して国立大学の学生は将来どうすればよいかとの相談が多いため、ある程度キャリアパスを示すことが必要。
・実際に現場で経験しなければ、地域で頑張っている医師の姿を伝えるのは難しいため、医師会にもっと協力してほしい。
・地域医療を考える場合、定着率より専門医養成に着目すべき。最近の傾向としては、外科等の技術系よりも訴訟リスクの少ない糖尿病や内分泌等が人気。
・専門医を取得するには、学会指定の大病院、少なくともその関連病院でなければならない。義務年限が明ければ地元を去るのも当然のようになっている。
・佐久総合病院で卒後臨床研修を実施する医師は、比較的地域医療に対するモチベーションが高いがやはり専門医志向がある。
・外科は以前は花形であったが、最近は2,3年に1人。
・3,4年前と比べ、研修医の研修病院に対するブランド意識が高まったように感じる。卒後臨床研修後すぐに出て行く研修医が増えた。臨床能力については特に変化を感じない。
・臨床能力は新制度導入前に比べ上がったのではないか。
・現在行われている地域枠や奨学金等については、効果があるのか疑問。
・全国的に医師不足が広がる中、個人的に医学生にコンタクトをとり、奨学金を全額肩代わりした上にさらに金銭の支給を提示し引き抜いている大学病院もある。
・国立大学医学部を卒業しても給料は低い。学士編入学がうまくいかないのも構造的な問題。
・島根大学医学部の入学試験は理系科目がなく特殊。理系が苦手な医学部志望の学生が全国から集まるため、当然地元出身者が少なく定着率も上がらない。
・島根県は進学校がなく、ゆとり教育の影響で高校生の学力も下がっている。このため、特徴的な入試を行い地元の学生を入学させようとしたが反対の結果となった。
・大学としては、地元の学生よりも学力の高い学生を選抜したいのではないか。
・国立大学法人化後5年経つが、大学病院の労基法違反は全く改善しない。医者として認知されていないのではないか。
・大学病院の医師についてもその県の医療を支えている者を評価すべきだが、現在は論文数や科研費で評価される。
・本年4月頃を目途に中間的なとりまとめ予定。
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