医学教育カリキュラム検討会(第6回) 議事録

1.日時

平成21年4月3日(金曜日)16時~18時

2.場所

文部科学省3F2特別会議室

3.議題

  1. 関係者からのヒアリング(臨床研修医の立場から 1.立花蘭(札幌医科大学) 2.吉村俊太郎(順天堂大学))
  2. これまでの主な意見の整理(案)
  3. その他

4.出席者

委員

荒川委員、飯沼委員、石川委員、小川委員、北村委員、水田委員、田中委員、辻本委員、寺尾委員、平出委員、平野委員、福田委員、吉田委員、吉村委員

5.議事録

 ○荒川座長  それでは、時間でございますので、これから医学教育カリキュラム検討会第6回を開きます。

 今日は2名の臨床研修医の先生においでいただいておりますので、ヒアリングをして、そして議論を行いたいと思っております。

 最初に事務局から、今日の委員の出欠状況の報告と配付資料の確認をお願いいたします。

○樋口医学教育課長補佐  本日は、どうもありがとうございました。まず、委員の出席状況でございますけれども、出席状況につきましては、お手元にございます資料のとおりでございます。南先生がおくれて来られるか、やむを得ない場合はご欠席というようなご連絡が来てございます。

 なお、本日の配付資料につきまして確認させていただきます。お手元に、まず議事次第に続きまして、資料1といたしまして、前回の検討会の概要、それから、資料2といたしまして、医学教育カリキュラム検討会「これまでの主な意見の整理」と、さらに別冊としまして、その主な意見の詳細版、それから、参考資料としまして、吉田委員ご提出の資料がございます。

 以上でございます。何か過不足等ございましたらお申しつけください。

○荒川座長  よろしいでしょうか。それでは、きょうは、今のお話のように、きょうのお話は大きく2つございます。1つは、初期臨床研修を受けている先生方をお二人お呼びいたしました。札幌医科大学臨床研修医の立花先生と、それから、順天堂大学の臨床研修医の吉村先生のお二人でございます。お二人とも平成13年以降の新しい医学教育システムの中で卒業されまして、そして医学・医療を志すきっかけ、あるいは現在、あるいは将来の指針の中で、医学教育が与えた効果、あるいは卒業者の立場から見た医学教育の改善点、こんなことについて意見を賜りたいと思っております。その後で、この検討会におきます取りまとめにつきまして、これからの意見を整理していきたいと思っております。

 それでは、まずお二人の先生から、それぞれ10分ぐらいをめどにプレゼンテーションをお願いします。そして議論したいと思います。

 最初に立花先生、よろしくお願いします。

○立花発表者  札幌医科大学研修医の立花です。よろしくお願いいたします。

 いただいた資料で、1番から6番までテーマが振ってあったので、それに沿ってお話ししていきたいと思っております。

 まず、自身が医師を志す理由、きっかけ、時期ということなんですけれども、私は、小学校5年生のときに、野口英世の伝記を読んで感動して、それで医師を志すことにしました。その後も、人体だとか生命に非常に興味を持ち、それで医師になりたいなとずっと思って今まできました。

 次に、みずからの将来の専門、地域医療への従事が決まっている場合は、その時期やきっかけということですが、私は、将来、精神科など主に心を扱う分野に進みたいというふうに考えております。このきっかけについてなんですが、それは高校1年生のときに、みずから落ち込んだり、人生についてちょっと悩むことがありまして、それで自分と同じような立場で悩んだり、困っている方を救いたいなというふうに思ったのがきっかけです。

 また、自分の周りに性同一性障害の方や、うつの友人がいまして、ほかに自殺で亡くなった友人もおります。それで、精神科的な疾患だとか、障害を抱える方に対して非常に強い共感を持っております。それで、自分でちょっと向いているかなというふうに思っていて、それで精神科を考えております。

 次に、卒業生の立場から見た医学教育の改善点ということなんですが、特に臨床研修との比較における卒前臨床実習の改善点ということなので、それについて、まずお話ししたいと思います。

○水田委員  問題点は皆さんはご存じなんですか。

○荒川座長  資料を用意してあります? なかったですか。

○立花発表者  資料といいますと、こちらのほうではなくてですか。

○荒川座長  何か先生自身がまとめたものは。

○立花発表者  済みません。何も配付資料などは用意しておりません。

○北村委員  6つのことを書いてあるという紙すら私たちはもらってないので、何を言っているかもわからないんですが。

○立花発表者  あっ、そうなんですか。

○荒川座長  わかりました。樋口さん、何かありますか。

○樋口医学教育課長補佐  済みません。お願いするに当たりまして、ご参考として項目をお示しいたしました。大きく3つほどに項目が分かれてございまして、1つは、ご自身が医学教育に入った段階で、その志を持ったきっかけや時期についてが1つの点でございます。それからもう1つは、今、進路が決まっておられるような場合、あるいは今後の進路を考えるに当たって、それを決めた時期、あるいはそのきっかけとなるものはどうかということでございます。それから、そうしたご自身の経験というものが1つの流れとしてございまして、もう一つの流れといたしましては、今ご自身が経験された医学教育を振り返って、その教育内容についての改善点、あるいはご自身が受けた教育の中でどのような点が心に残ったか、効果的であったかと、そういった点を参考として、きょうお越しいただく先生方のほうにはお示ししてございます。

○荒川座長  その点、事前に皆さんには言ってなかったので、ちょっと戸惑った。私も今初めて聞いたんですけど、じゃ、資料は用意しないということで、今の3番目の点は、先生が経験されて、今から振り返ってみて、卒前教育に対してどういう感じを持ったかということですので、じゃ、ひとつはっきりと、ゆっくりと話してください。お願いします。

○立花発表者  はい。ゆっくりとしゃべります。

○田中委員  何年に卒業されて、どこで研修したかとか、そういうこともちょっと教えていただけますか。

○立花発表者  はい。卒業は昨年の3月、私は札幌医科大学出身で、現在、札幌医科大学で研修しております。

○水田委員  20年の3月ですね。

○立花発表者  はい、そうです。

○荒川座長  じゃ、また後ほど先生に質問をさせていただきますので、今のこと、はっきりとおっしゃってください。お願いします。

○立花発表者  はい。それでは、まず臨床研修との比較における卒前臨床実習の改善点ということでお話ししたいと思います。

 まず、卒前臨床実習の問題点というのは、医師と比較して責任感を感じないということが問題点だと思っております。科にもよるんですが、もう少し学生時代にも、患者さんと責任を持ってじっくり向き合っていける形にしたほうがいいんじゃないかなと思っております。例えば教科書的な知識を詰め込むだけであれば、そういった実習ではなくて講義でもできるし、1人でも教科書を読んだりして勉強することができると思います。そのため、既に行っている科もあると思うんですが、毎日、まず患者さんと接してカルテを書かせるようにしたほうがいいと思います。また、私の大学は、学生は電子カルテに書き込むことができなくて、どうしてもモチベーションが下がるというか、実践的でないというふうに私は思っております。なので、例えば実際に医学生も医師同様、カルテに書き込みできるようにするとか、実際の臨床に近い形で経験させたほうがいいのではないかなと思っております。

 また、例えばレポート提出の課題として臨床実習で出されることがあるんですが、ただ電子カルテを見て、それを書き写して、はい、レポートというふうに提出するだけではなくて、実際に毎日患者さんとお会いしていく中で、学生自身が考えて、それでレポートとして書けるようなものを課題として出すようにしていくべきではないかなと考えております。

 次に、いただいていた項目では、共用試験や医師国家試験が医学部の教育の中に与えている影響ということであったので、それについてもちょっとお話ししたいと思います。

 これらの試験は2段階に分けて勉強するよい機会になっているんじゃないかなと思っております。知識を身につけないまま臨床実習に出るのは、非常に患者様に対して失礼なことであると思いますし、また、ちゃんとベースとなる知識がないまま臨床実習を始めても、結局よくわからないということで終わってしまうのではないかなと思います。また、国家試験も同様で、結局自分の興味のある科だけではなくて、興味のあまりない科も、広くいろいろな科の勉強をするいい機会になっているのではないかなと思います。

 また、大きく試験が学校の教育に与えている影響といえば、試験の形式が大きいんじゃないかなと思います。以前は、私の大学では記述式の試験が多かったんですが、CBTが始まってから、大半の科でその形式に準拠したようなマルチプル・チョイスの形になっております。また、自分自身は、学生時代、試験が記述式ではなくて、マルチプル・チョイスですごく楽でよかったなというふうに思っているんですが、それだけで果たして教育としていいのかなと思う部分があります。結局、知識の詰め込みになってしまうことが多くて、自分自身、学生が考えていくというような講義が少なかったんじゃないかなと思っております。

 次に、私自身が受けた医学教育の感想だとか、あと印象深かった講義や実習ということでポイントとしていただいているので、それについてもお話ししたいんですが、私自身は、講義される先生の考え方だとか、その哲学だとかを聞くので好きだったので、そういった講義が非常に印象深く残っています。多分、試験に直結するような知識だけ、予備校的な講義をされる先生もいらっしゃるんですが、それはそれで知識になると思いますし、それがすべて悪いというわけではないんですが、ただ、試験には役立つと思うんですが、後々、印象深く残っているかと聞かれると、あんまり印象に残ってないかなというふうに思っております。

 どういうふうに変えていったらいいかというと、講義によっては、最後にその講義の感想などを書かせるような授業もありました。それは非常に、後々自分の中でも、どういったことをそのとき感じたかなというのは、やっぱり文章にして書くと残りますし、また、その知識も自分の中で定着するんじゃないかなと思います。

 また、私の大学の法医学の講義では、幾つか最後に問題を出して、それをメールで回答させるといったことがありました。それで、それに対して先生が必ずフィードバックでメールを返してくれるといった講義がありまして、そういった形で何らかの形のフィードバックがあると非常に学生もやる気も出るし、知識としても定着するし、また、課題も出ているしで、ちゃんと考えるようになるんじゃないかなと思います。だから、講義で大事だと思うことは、一方的に講義をされる先生が、ただしゃべるんじゃなくて、学生もコミュニケーションできるというか、やっぱり双方向なやりとりがあると、教育として非常に有益なんじゃないかなと思っております。臨床実習の場も一緒で、ただ臨床実習で講義をされて、時間が来たから、はい、おしまいというんじゃなくて、やっぱり何らかのお互いにやりとりが、その教えてくださる先生ともそうですし、患者さんともちゃんとしたやりとりがあると、学生自身、非常に勉強になるんじゃないかなと思います。

 以上で、一応用意しておいたことをしゃべりました。

○荒川座長  はい。ただいま、昨年卒業されて、1年間研修をされた中で、学生時代を思い返して卒前教育のお話がありました。手元に資料がないのであれですが、先生方お聞きになって、立花先生にいろいろなことをお聞きしてみたいと思いますが、いかがでしょうか。

 私から手始めに、先生は札幌医科大学を卒業されて、母校で研修しようと思った何かありますか。

○立花発表者  まず、私は精神科に興味を持っておりまして、それと関連して、神経内科とか、そういったこともちょっと勉強したいなと思いました。それで、大学だと内科という単位で神経内科を選択することができるので、それで大学にしました。

○荒川座長  わかりました。じゃ、北村先生、お願いします。

○北村委員  東京大学の北村と申します。よろしくお願いします。

 先生の大学は、北海道の道民の税金でできている大学です。ご存じのように多くの大学で地域枠という定員増がありました。そういうことも踏まえて、先生が受けた教育の中で、さすが道立の学校の特徴が出ている、あるいは地域医療で、地域に尽くすというような心の教育を受けたとか、そういうようなご経験はありますか。

○立花発表者  そうですね。私の大学では特に地域医療総合医学講座という講座がありまして、そちらの講座が特に熱心に地域医療について教育しております。それで、ほかの大学とあまり比較はできないので、わからないんですが、結構、地域の現状だとか、実際にそういう講義があったりとかで、おそらく地域医療を志したいという人は多いんじゃないかなと思っております。

 私自身は、あんまり学生時代は地域医療には興味はなかったんですが、ただ、昨年、私が大学で研修する中で、4か月になるんですが、その地域医療総合医学講座のほうで研修をさせていただきました。実際に大学で総合診療科としてプライマリーケアみたいなことをしているんですが、私が見ていた中で、専門家の先生というのは、やはりどうしてもご自分の科の疾患しか見ないというか、ほかの専門の先生がいるので、そちらに任せてしまうことが多いように感じていて、なかなか全人的にその患者さんを見るというか、どうしても臓器別に、そこの患者さんの疾患の部分だけ大学病院では見ている部分が多いのかなというふうな印象を抱いています。学生時代に、地域医療総合医学講座の先生がそんなお話をされていたんですね。それを自分の昨年の研修を通して、実際に身をもって経験したなというふうに思いました。

○荒川座長  どうぞ、平出先生。

○平出委員  京都大学の平出と申します。非常にしっかりしておられるなと思って感心しました。先ほどご指摘があった、患者の方と向き合う実習、あるいは患者の方とやりとりがある実習の重要性を、2回強調されて、すばらしいことだと思います。私は、教育センターで教育のコーディネーションをしている者なんですが、現場の実習というのは、実態を知る機会はあるようでいて、なかなかないんですね。現場の先生方に、この間ワークショップで聞きましたら、大学によっては学生が電子カルテを写していて、患者さんのベッドサイドに行ってないという報告がありました。中には実習期間中一遍も行かなかった学生がいたと。それにもかかわらずプレゼンテーションをやると堂々とやるという話もあったんです。それは、先生が1年研修してみて、やっぱりあまりよくないというふうに思いますか。

○立花発表者  研修というか、学生時代の私の経験をお話しさせていただきますと、やはりそういった科はあるんですよ。それで、出る課題の形式にもよると思うんですが、科の方針によっては、例えばレポートをまとめる上で、実際に患者様にお話を聞きたいと言うと、えっという顔をされる科もあったりするんですね。それで、別に患者様と接するというのは、必ずしも患者様に対して何か侵襲的なことをさせていただくというんじゃなくて、お話をまず伺って、実際に接してみて、それで何か共感的に感じるということでもいいと思うんですよ。ただ、学生時代に私の周りにいた人だとか、あと実際に同期の研修医などを見ていて、なるべく患者様と接したくないと言っているような人がいるのも事実なんですね。

○平出委員  問題ですね。

○立花発表者  医学部に入る時点の話をしても仕方がないのかもしれないですが、どうしても人と接するのが好きではないけれども、偏差値が高くて、それで医学部に入ろうと思う方がたくさんいると思うんですね。そういった方をどういうふうに人とうまく接していけるようにするかというのをまず持っていかなければいけないというか、人を好きになるじゃないですけれども、もしかしたらそういった教育も必要なのかなと思っております。

○平出委員  ありがとうございます。

○荒川座長  平野先生、いかがですか。

○平野委員  大阪大学の平野ですけれども、立花先生、しっかりした考え方を持っておられると思います。その中で、知識のみを与える講義は、確かに試験には役に立つけれど、結局後で心に残るのは、どう言われたかはよく覚えていませんが、要するに考えるとか、心に響くような、そういう講義がよく残っていると。私も同感だと思います。

 最近、いろいろな知識が要求されて、医学部のカリキュラムをつくるときに非常にヘビーになってきて、コア・カリキュラムがだんだん充実する。コア・カリキュラムというのは、基本的には知識を与えるようなカリキュラムですね。基本的にはやっぱり医学部の教育というのは、そういう知識の切り売りであってはいけないと思います。知識は教科書に書いてあるし、辞書に書いてある。だから、必要に応じてそれを読めばいいと思います。講義では、教科書を読んで理解できるために必要な最低限の知識を教えるだけで十分だと思います。ようするに細かいことよりも全体像が理解で来るように講義をするのが重要です。知識の切り売りよりも、重要なのは、物事をどう考えるか、そういう研究者マインドも含めて、臨床医学に対しても、やはりいかに判断力、考える力を与えることが出来る教育こそが僕は大事だと思います。知識を与えるコア・カリキュラムと、考え方を教える講義というのは相反するところがありますが、両方必要な事も確かです。要はバランスが非常に大事だと思うのですが、そのあたりはどう思われますか。

 例えば極端な話、僕は教科書だけ与えておいて、あとは考える講義のみにしても大学の講義としてはいいと思います。そういう極端な考えの対局に、受験校みたいに、コア・カリキュラムのみ行うという考えもあります。今の若い人はどう思いますか。

○立花発表者  講義を聞いていた身としては、私の大学では1つの授業につき60分間の講義なんですが、ずっとそういう知識の詰め込みみたいなことをされると、どうしても退屈して集中できなくなってしまうんです、60分間ずっと。それってすごく効率が悪いことだなというふうに思っております。

 だからといって、その先生の考えることだとか、哲学をずっとお話しされて、それを聞くのは私はすごく楽しいんですけれども、それだとどうしても教育ではなくなってしまうということもあると思うので、知識として聞きたいことって教科書に載っていることだけじゃなくて、実際の臨床の場で、例えばこういったことに気をつけなくてはいけないとか、そういう例えばポイントだったりとか、できれば教科書に載ってないような、実際の臨床の場で重要なことだとかを聞けるといいのかなと思います。

 結局試験があるわけですから、教科書に載っている知識は講義で聞いたとしても、それだけで試験に対応できるわけではないので、それを考えると、その教科書に載っていることをお話しされるのもいいんですけれども、それだけじゃなくて、ほかの、教科書に載ってないようなことも、半分ぐらいとか、そんな感じでやっていくといいのかなというふうに思うんですけれども。

○田中委員  東京医科歯科大学の田中ですが、講義というのは出席をとるんですか。

○立花発表者  はい。とります。

○田中委員  みんなとるんですか。

○立花発表者  はい。全部の講義でとります。

○田中委員  ああ、そうなんですか。試験対策というのはあります? 何か試験対策委員会みたいなのが学生の中であって。

○立花発表者  あります。科目ごとに分かれていて。

○田中委員  それは、伝統みたいな感じですか。医科歯科にもありますけど。

○立花発表者  ここまでお話ししていいのかわからないですけれども、ちゃんと分かれていて、事前にその試験対策をつくってくれる人がいて、あと事前情報をちゃんと聞きに行ったりだとか、そういったお仕事があるので、やはり統一された試験じゃないというか、科によってはちょっと情報が漏れてくることもあったりだとかで、だから、あまり定期試験というと、実際の知識を本当に試しているのかなというふうに思う部分が多いですよね。

○田中委員  ありがとうございました。

○荒川座長  はい。じゃ、順番にいきましょう。水田先生から。

○水田委員  九州大学の水田です。先生のお考えはものすごく感じるところはあるんですけどね。ただ、先生が今、研修医になってみてね、もし先生が普通の知識がなくて、教科書的な講義がなくて、教科書を読むからいいと思っても、そういう知識が入ってなくて、本当に患者さんと向き合えると思います?

○立花発表者  教科書的なそういった講義は全くなくていいと言っているわけではなくて、ただ、今の現状では、それだけただ垂れ流しと言ったら失礼ですけれども、それだけぺらぺらっとしゃべって、はい、さようならという先生が結構多いように感じるので、それだったら、もうちょっとその先生のお考えを聞きたいなというのが私の意見です。それで実際に知識が入ってないと、もちろん患者様と接しても、何を言われてもわからないと思います。そのために、今、CBTがあって、臨床実習に出る前に、そういった知識を一通り身につけていますよという証明というか、一定の基準があるのかなというふうに私は考えております。

○水田委員  私の学年というのは九州大学でベッドサイドが始まった年なんですよね。それで随分、上級生とは違った教育を受けて、患者さんと1対1で話せたし、患者さんの診察とかも学生がどんどんできていたんですけどね。このごろはできないのかなと思うのと、それから、あなたたちもベッドサイドだったんですよね。ベッドサイドで患者さんを一人一人分け与えられたんでしょう。

○立花発表者  臨床実習の中でですね。はい。そうです。

○水田委員  そうですよね。それは、5年生のとき? 6年生のとき?

○立花発表者  5年生のときです。6年生のときは、実習はあるんですが、選択になっておりまして、自分の好きな科を2つ選んで、それぞれ1カ月ずつ回るようになっております。

○水田委員  そうですか。そこで、カルテとかを電子カルテに書き込めないわけ?

○立花発表者  私の大学では、学生は電子カルテは、閲覧はできますけれども、書き込めないようになっております。

○水田委員  書き込めないわけ? 今は、だけど、看護婦さんも、お医者さんも、学生さんも、みんな同じカルテじゃないんですかね。やっぱり大学によって違うんですね。

○立花発表者  そうですね。

○水田委員  わかりました。

○荒川座長  先生のお話は、九大では学生も電子カルテに書いているんですか。

○水田委員  全部書いています。そしてカードを持っています。

○荒川座長  では、飯沼先生。

○飯沼委員  先ほど、どうして札幌医大で研修をやられたかということを少しお話になったんだけど、もう一回教えてくれない?

○立花発表者  はい。

○飯沼委員  母校で研修を選ばれたということの理由をもう一回教えていただきたい。

○立花発表者  私は精神科医になりたいというふうに考えていて、私の大学は研修制度が2年間あるうちの、例えば2年とも大学でという形式もありますし、1年外に出て、2年目は中でとか。

○飯沼委員  そうしたら、プログラムがいいからということでしょうか。

○立花発表者  その中でも、私は2年間大学にしたというのは、まず大学の精神科を考えているということが1点と、あともう1つは、ちょっと関連するかなと思って神経内科の勉強をしたいなと思ったんですよね。それで大学だと神経内科を選択できるので。

○飯沼委員  そこから質問になるんだけど、先生のところは、ことしのマッチングの表から見ますと、母校の卒業生以外の人はほとんど研修をやられてない。ほとんどね。それで、日本中探してみても、そういう大学というのはあまりないんですよ。だから、6プラス2を、せっかく2をどこでやってもいいというふうにして、プログラムも日本中でいいプログラムがいっぱいあって、札幌医大はおそらくすごくいい大学だから先生は残られたんだと思うんだけど、際立って高いんですよね。何かその特色があるのかな。国立大学ではそういうところはほとんどない。公立大学でも、実は僕、日本医師会のそういうことの担当だものだから、全部あれを解析しました。そうしたら、ことしは100%母校ですよ、先生のところは。私立でも100%のところの学校はありますが、2割ぐらいしか母校の卒業生ではない大学もいっぱいあります。2割、3割のところでありましてね。先生のところは通算で8年間母校で勉強をするという、そういうスタイルなので、それはすごいメリットがあるのかなということが聞きたいんです。

○立花発表者  私の大学は、多分、ほかの大学だときっといろいろな地方から入ってくる人が入学する時点で多いと思うんですが、私の大学は、まず入学の時点で道内出身者が7割で、残りの3割が道外出身者となっております。だから、特に北海道の人って地元指向が多いんじゃないかなと私は考えているんですが、それで、また研修も道内に残りたいと思う人がたくさんいるんじゃないかなと考えています。大学のプログラムも結構柔軟に対応してくれるので、そういったことで大学に残って、北海道で研修っていうふうに考える人が多いんじゃないかと思います。

○辻本委員  2点お尋ねします。私は、患者の立場ということでここに参加している人間です。

 先ほどのお話の中で、既に研修医の方の動機の中に、なるべく患者と接したくないと言っている人がいるというお話がございまして驚きました。そういった方が医学教育の中で患者さんと向き合う実習が少なかったということなのかもしれないんですけれど、例えば、立花さんがそういう同期の方にどういうお声をかけるのか。学生時代に患者とやりとりをもっとしたほうが良いというお話がありましたけれど、地域医療総合医学講座で、立花さんは、学生時代に何を学び、どういうことを患者さんとのやりとりの中で感じ取ったかということを1つお聞きしたいんです。

 患者さんとのやりとりもさることながら、医学講座の中で、学生同士で、あるべき医療とか、患者さんとこういうふうに接するべきよねというような熱い議論というものがあったのかどうか。そういう議論があれば、同期の研修医の方にもおそらく声がかけられるんじゃないかと想像しながらお聞きしたので、患者とのやりとり以前に、講座の中などで学生同士のそういう熱い会話があったのかどうかということをまず1つお聞きしたいと思います。

 そして、それに関連する2つ目の質問ですけれど、医学入門などで幾つかの大学にお話をさせていただきに伺うと、学生さんが大きくいえば二極化しています。私の話はお昼寝する時間というふうに決めつけて、全く興味を示さない、患者の声なんか聞いてどうするみたいな、そういう顔をする人が一方にいて、そして、患者の声が聞けるというので、身を乗り出すようにして、一生懸命聞いてくれる人と二極化しているという印象を強く持っています。

 例えば総合医学講座で患者さんの声などを聞く機会があったとして、聞いた後に、学生同士が何かディスカッションというようなことがあったのか、つまり、教えられるだけじゃなくて、学生同士の高め合いの議論があったのかなかったのか、そのあたりをちょっと聞かせていただきたいと思います。

○立花発表者  まず、地域医療総合医学講座で学生時代にそういった接し方などを学んだかというお話をしたいんですが、そもそも私の大学は、大学で地域医療総合医学講座の実習はなくて、それぞれ地域に派遣されるような形になります。だから、大学病院ではなくて、ほかの学生と一緒じゃなくて、一人で、例えば北海道内の地域の病院だとか、札幌市内でも診療所だとか、そういったところに派遣されることになるので、あまり患者様に対する接し方みたいなことがほかの学生と議論になったりというのはないです。

 ただ、私自身が研修医として地域医学総合医学講座で研修したときには、先生方から結構、こういうふうに接したらいいよというフィードバックは受けるんですね。それですごく勉強になった部分が大きいかなと思います。

 また、おっしゃっていたように、例えば患者様と学生の臨床実習でもいいですが、そういったときに、学生同士で患者様に対する接し方を話す機会があるかというと、あまりないのが現実ですね。また、そういった患者様のお話だとか聞いて、またそのお話の後で学生同士で話す機会があるかというと、私の大学では特別そういう機会はとらないと思います。ただ、そういったお話を聞いて感想を書かせるとかはあるんじゃないかなと思うんですよね。それで、講義が終わった後で、友達同士で、そういう機会を設けているわけじゃないですが、こういうこともあるよねみたいな感じで話すことはあるかなというふうに思います。

○荒川座長  また後ほどお二人から話を聞きますので、ひとまずここで吉村先生にバトンタッチしましょう。お願いします。

○吉村発表者  平成20年に順天堂大学を卒業しまして、附属病院である順天堂練馬病院で研修させていただいております吉村と申します。

 まず1番目に、自身が医師を志す理由、きっかけ、時期ということですけれども、私は、漠然とですけれども、小さいころから医師になりたいというふうに思っていて、本当になろうと思ったのは、高校生ときに身内の死を体験してから医師になろうというふうに思いました。

 次に、みずからの将来の専門、地域医療への従事が決まっている場合はその時期やきっかけということですけれども、僕の場合は、卒業した時点で自分が何の医者になるかということはまだ決めてない状態だったので、そういう意味では、今のスーパーローテーションというのは僕にとってはとてもよかったかなと思います。今1年、内科、外科、救急というのを回りまして、一応自分の中では消化器の領域に進もうかなというふうに考えています。なので、僕の場合は、今のスーパーローテーションによって自分の行きたい分野を決めました。

 卒業生の立場から見た医学教育の改善点、卒前臨床研修実習の改善点ということについてですけれども、僕らの大学も1年生から4年生までは座学中心の講義を聞いて、それに対するテストという感じで、みんなと同じだと思うんです。僕は、そんな改善点というのは特にないと言ったらおかしいんですけれども、やっぱり座学を聞いて、それでテストをして、それについての質問に答えられるというのは必要なことだと思っているので、やっぱりそういう時間も必要だと思います。

 ただ、いきなりベッドサイドに出て、患者さんの前にぽんとやられても、やっぱり戸惑うことが多いと思うので、初めのころの段階から、患者さんと接する機会はなくとも、要は人と人とが話す機会というか、知らない人と話すという機会がなかなか与えられないと思うので、何でもいいんですけれども、例えば別に患者さんの前じゃなくても、看護実習みたいな感じで、看護師さんと接してみるだとか、あと、僕らの大学であったんですけれども、施設実習といって、老人ホームみたいなところに行って、お年寄りの人と、別にこちらが医療をするわけでも何でもないんですが、一緒に老人と会話する。あとは小児実習というのもありまして、親と暮らせない子どもが寝泊まりしているような施設に1週間ずっと行くんですけれども、それで子どもと話すとか――別に患者さんといきなりぽんと、じゃ、5年生の実習生になったから行きなさいというんではなくて、事前に1年生から、会話して感じるという、そういう機会を増やせたらいいのかなと思います。

 自身が受けた医学教育の感想、有益、印象的だった講義、実習というのは、今申し上げたのが僕が体験したことなんですが、ほかに例を挙げさせていただきますと、順天堂では、救急車に乗って救急隊と一緒に回るという実習もあるんです。今、よくたらい回しみたいなことが起きていると言われていますけれども、実際に自分が救急車に乗ってみて、実際にそういうことが起きているんだなというのを肌で感じることができたのは、すごく大切でしたし、ほかにも、老人ホームに行ったりだとか、小児実習だとか、いろんな職種の人とかかわる実習というのがとても僕の中では印象的でした。

 以上です。

○荒川座長  これからまた質問をしたいと思います。では、北村先生からいきましょうか。

○北村委員  東大の北村です。順天堂大学の教育に関して先生のほうから随分教えてもらったことがあって、感銘している点が2つあるんですね。1つは、学生になった途端に、体育学部の人と一緒に寮に全員が入ると。それで人間性が涵養されると先生はおっしゃっているので、本当かなというのが1つ。

 2つ目は、今度は6年生のときに、国家試験対策も兼ねて、グループで個室というか、グループ部屋があって、そこで自由にディスカッションしながら、グループダイナミックスを使った国家試験対策みたいな勉強会がやられていると。これでうちの国家試験の成績はいいんですと先生方はおっしゃっていたんですが、この2つの点、学生の立場から言ってどうでしょうか。

○吉村発表者  そうですね、たしか1年生のときには、さくらキャンパスといって体育学部の人と一緒に暮らすんですけれども、僕はもともとスポーツが好きだったので、根っからスポーツをやっている人たちと一緒に生活ができるというのはすごく楽しかったですし、同じ集団ではなくて、違う集団と交わるというのは本当に大切なことだなと思います。

 国家試験対策のことに関しては、大体10人ぐらいのグループが10個ぐらいに分かれて、一応決められた部屋で、全員が全員ではないんですけれども、卒業試験が3カ月ぐらいあるんですが、それが始まるころから国庫試験が終わるころまで、その部屋の中でみんなで10人ぐらい集まって勉強するというのが順天堂の昔からのスタイルなんです。

 個々で勉強していると、自分が何がわからないのか、何がわかっているのかというのがわからないという状況になると思うので、もちろん問題だけをやっていれば、与えられた問に関しては答えられるのかもしれないですけど、自分はここがわからないんだけどと言われて、例えば自分が質問したときもそうですし、質問されたときも、ああ、ここはわかっていなかったんだという、ほかのわからないことも見つかってきたりする。やっぱりそうやって話していく中で疑問点が増えて、お互いが高め合えるというか、お互いがさらに伸びていけるというメリットはあったんじゃないかなと思います。

○荒川座長  はい。じゃ、石川先生どうぞ。

○石川委員  保健医療科学院の石川といいます。すばらしいお話ありがとうございました。

 吉村先生のお話の中で、卒前に知らない人と話す機会を増やせたらよい、ということがありましたが、非常にいいところをつかんだなと思いました。知らない人というのは、もちろん患者さんということもありますけれども、卒業されてお気づきのように、同僚の先生、上司の先生、看護師の方や薬剤師の方など職員の方もそうだと思います。卒前に違う教育を受けてきた人が、同じ病院という場所で、良質で安全な医療を提供するという、、同じミッションを持ってやっていくというのは難しいことだと思ういます。先生は、卒前に救急隊の方や、病院内の違う職種の方などと色々な話をされておられますが、そういうことが、医師になられてから、チーム医療をやっていくということにかなり効果的だったと思われますか。

○吉村発表者  そうですね。じゃ、具体的にそれを知ることでどういう利益が出て、どういう効果が出たのか口で説明しろと言われても難しいんですが、そうやって違う職種の人と交わって、ああ、こういう仕事をしているんだなということを体験するだけでも、少なくとも視野は広がっているのかなというのはすごく感じます。

○石川委員  なるほど。おそらくOSCEや、医療面接で患者さんとの会話の仕方は、いろいろな勉強をされておられると思います。実際、医療の安全や質を確保するためには、患者さんとはもちろん、自分のまわりのスタッフとのコミュニケーションをよくとる必要があります。その点では学生時代に受けた、知らない人と話す機会という教育がよかったということですね。

○吉村発表者  はい。そう思います。

○石川委員  ありがとうございました。

○荒川座長  いかがでしょうか。吉村先生。

○吉村委員  吉村といいますけど、お二人のお話をお聞きしまして、学生のベッドサイドラーニングが、もっと患者さんを受け持ったりとか、実際に患者さんを診察したりとか、そういう機会が少し少ないような感じがしたんです。私たちは、できればもっと臨床実習を充実して、患者さんの受け持ちをして、実際に診察をして、一緒に検査に行ったりとか、そういうことを期待しないなと思っているんですけど、そういうことについてはどうでしょうかね。そういうことはとても難しいですか。それとも、もっとそういうことを――さっき進取的なことはあんまり望んでないとおっしゃったんですけど、あるいはもう少し進取的なことまでやりたいとか、そういうようなことは全くお考えになってないでしょうか。

○立花発表者  進取的なことということなんですけれども、患者様に許可をいただければ、させていただいてもいいのかなと思うんですが、触れ合うといった観点では必ずしもそういったことがすべでではないと思います。ただ、そういった例えば検査だとか、ちょっと進取的な手技とかも含めてさせていただけるなら、非常に勉強になって有益だなというふうに考えております。

○荒川座長  吉村先生はいかがでしょうか。

○吉村発表者  そうですね。僕も同じように進取的なこと、例えば点滴だったり、採血だったりというのをやらせていただくことは必ずしも必要ではないかなと思うんですが、学生で、ベッドサイドラーニンで実習でやることというのは、患者さんをまず把握して、カンファレンスだったらプレゼンテーションをして、一緒に回診について、一緒に検査に行ってという一連の流れは一緒に体験するんですけれども、やっぱりそれは、1日の流れを追っているだけで、その患者さんについて考える機会というのはあまり……。確かにカルテを見て、ふんふんと眺めるだけで時間が終わってしまったなという印象があります。

 ただ、一緒のチームでやって、こうすれば勉強になるなと思ったこととしては、その患者さんのことを考える時間を増やさないといけないので、ただ、今言ったような1日の流れを追うだけではできないので、やっぱり上の先生から、患者さんについて、おまえはどう思うんだという問いかけが必要だと思うんです。

 熱心な先生だと、チームの一員としては、僕はこう思うけれども、君はどう思うんだという意見を求める先生はいらっしゃるんですが、なかなかやっぱり、プレゼンテーションをしてみなさいと。これこれこういう状態で、今こういう治療をしています。はい、わかりましたという、その流れだけの先生も実際にはいて、やっぱりそういうふうにプレゼンテーションした後に、じゃ、君はどう思うんだと言われたときに、ああ、自分は考えていなかったんだなということを思い知らされることが何度かあって、じゃ、そういう問いかけに対して、じゃ、何をすればいいかといったら、やっぱり患者さんに話を聞きにいくしかないと思うんです。話を聞いてしっかり診察をしてということしかないので、まあ、それは学生の意気込み次第かもしれないんですけれども、やっぱりそうやって考えるチャンスを与えてあげられる指導というのもやっぱり大事かなと思います。

○荒川座長  今のお話で、大学によっては学生自身がカルテをつくって書くという実習をとっている大学もあるようなんですけど、お二人の大学では学生が書くことはなかったということで理解してよろしいでしょうか。

○吉村発表者  いや、僕の大学でも、確かにカルテを書くということはありました。

○荒川座長  そういう科もあるし、ないところもあると。じゃ、統一されてないわけですね。

○吉村発表者  はい。ないところもあります。

○荒川座長  そうですか。水田先生、その辺のことをお聞きになりたかったわけですね。

○水田委員  主治医につくわけですよね、学生さんも。

○吉村発表者  はい。

○水田委員  その先生と毎朝会って、きょうは何をしましょうとか、それから、また夕方に会って、きょうの反省とか、そういうことはしないんですか。そのときに、例えばあなたが患者さんにさわりたいとか、実際に患者さんの胸の音を聞きたいとかいう希望はできるはずなんですよね。それを言って、そんなことさせないなんて言ったら、それは教官が教育の仕方が間違っていると思うんですね。

○荒川座長  まあ、それはいろいろな雰囲気もあるから。

○水田委員  例えば婦人科など内診したいとか言っても、なかなかそれはさせてくれないと思うんですね、患者さんも。研修医でもちゃんとインフォームド・コンセントをとらないとだめですけどね。やはり主治医に、うるさいと言われるぐらいついてやれば、私はやっぱりそこはレスポンスで、いろいろ話はできるんじゃないかなと思う。だから、そうしてくれたほうがいいとか、なぜあなたはもっと早く言わないの。それはものすごく残念だと思う。

○福田副座長  私も先生と同じような感覚を持ったんですけれども、私たちここに集まっている人が何を目的にやっているかと言ったら、学生さんにきちんと勉強していただいて、質の高い医師として育っていくような共通の視点でやってきたんですね。いろいろな資料も分析してきましたけれども、私も感じたのは、実際に教育を受けている学生の人はどう思っているかというのが主たる焦点ではないんですね。どう見ているかというのをきょう初めてこういう公の場で話していただいて、大変ありがたかった。

 立花さんは札幌医科大学ですね。今井学長からは、プレゼンテーションを前のグループ会議でいただいていて、大変立派にやっていらっしゃるという話を聞いておりまして、それをきょう現実に学生の人から聞き出しました。実はいろいろな報告書とか調査とかやった場合に出てくるものは表面的にすぎないというのは前から感じておりまして、実際に大学の教科等で臨床実習の評価をするのはすごい大変。先生のところなんかしていただきましたけれども、表の資料から見えるものは内情を全然あらわしてないんですね。それを多くの先生方は気づいていらっしゃって、それをどうするかということがポイントになってくるんじゃないかと思っているんですね。ですから、いみじくも患者さんと接する視点を持ちたいというのは私ども願っているところであって、それをこれからどうやっていくかがポイントなので、貴重な体験をお話しいただいた。

 それから、2点目は、科によって相当違うというのも私ども把握しております。それは教員の考え方であるし、それから、教員の職務の多い少ない、あるいは内科・外科、水田先生がおっしゃったように、外科では当然ですよね。私どももそう思っていましたから、これは全然違うところがあるんだという。

○水田委員  ただ、一生懸命すると、学生からは嫌われるんですよ。あそこへ行ったら朝から晩までこき使われると言うんですよ。

○福田副座長  それから、一番驚きだったのは、学生同士で見ていて、多分お互いに評価しているんじゃないかと思うんですね。人とあれするのは嫌だという学生もかなりいるというのは大変なことで、これ、どうやって直していくか、我々もほんとうに大変で、その辺、医学生全体でどういうスタンスで入ってきているかという感じはありませんか。あなた方は立派だからここへ招かれているんだと思うんですよ。全体として自分たちはどう考えていらっしゃいますか。

○荒川座長  何かお答えが出ますかね。どうでしょう。

○立花発表者  発言していいですか。先ほどもお話ししたと思うんですが、やはり純粋に、とにかく医師になりたいなと思って医学部に入る方もいれば、どうしても偏差値で大学を決めてしまうので、それで一番難しいところに挑戦しようじゃないですけれども、そういった感じでやはり成績のいい人は医学部を目指す傾向が強いんじゃないかなというふうに思っています。

○寺尾委員  聞いていて、年とともに学ぶ感動がなくなってくるのかな。例えば看護実習でアーリー・エクスポージャーで、看護実習をやっている学生はほんとうにまじめに、感動しながら患者さんと話をしている。そして、次に解剖学の実習が終わって、火葬して、その骨を拾わせていただく。そのときに、火葬に立ち会った御家族と、献体をしてくださった方のありし日について半日語ることをしている。私はずっとそれにつき合っているんですけど、そのときの学生たちは、本当に生命の尊厳だとか、献体してくださった方に対する畏敬の念とか、そういうのを感じていることが体からにじみ出ている。それが今の話で、実習をやっていると、毎日の実習で流されていて、そこに感激・感動というのがなくなっちゃってる。それは我々が悪いんじゃないかと思いながら伺ったんだけれども、感動を連続的に与えていくということは、我々にとって大変難しいことだなというふうに感じたんですがね。どうすれば、あなたたちをずっとテンションの高い状況に持っていけるか。

○立花発表者  それは先生方から与えていただくものではなくて、やっぱりその人自身が見つけていくものなんじゃないかなと思うんです。ただ、どうしても、最初臨床の場に出る前は、例えばアーリー・エクスポージャーであったりだとか、ご遺族の方と接するだとか、そういう経験ってとにかくないので、まずそういったことで感動するということは大きいと思うんですが、だんだん臨床実習などで実際の臨床の場を見て、だんだん与えられるものが課題というふうにして認識されなくなるというか、そういったことがまず大きいんじゃないかなと思います。だから、解剖であっても、例えば解剖の試験があるから、それで頑張ろうとか、ご遺族の方の存在を忘れるじゃないですけれども、どうしても自分の課題、例えば臨床実習でもレポートを出さなきゃいけないから、それができればいいみたいな、どうしても回る科、回る科でそういう気持ちになってしまうというか、なかなかモチベーションを保つのは難しいんじゃないかなと思います。

 そして、やっぱり感動の場というのを、今自分で実際に研修医として研修していて思うんですが、やはりそれはみずから患者さんのところに飛び込んでいって、みずから接して感動を得るというか、それは人から与えてもらうものではないんじゃないかなというふうに私は感じております。

○荒川座長  わかりました。では、辻本さん。

○辻本委員  この検討会の議論で、結構大きくテーマとして浮上してきているのが、マナーの問題、5年生のときの臨床実習のベッドサイドマナーを、だれにどのように教えていただいているのか、そして、ちゃんと本当に教えてもらった実感がおありかどうか。そして、さらに研修医になって2年間現場にお出になったときに、学生時代に学んだことと、研修医になってから直面することで何がどう違って感じておられるか。マナーのことについてお二人にお聞きしたいと思います。

○立花発表者  じゃ、先に私、お話しします。マナーについてということなんですが、まず第1段階として、私の学校では、5年生で臨床実習に出る前に、講義として、常識なんだけどという形で、DVDなんかを見ながら先生が解説して、実際のマナーだとかを学んだ記憶があります。

その後、総合診療科で外の病院に行く前に、マナーについて、お話がありました。

 それで、実際に自分が研修医になってから感じたことは、患者さんに対する接し方が学生時代ってすごく固かったなというふうに思っていて、まあ、マナーを守ることもすごく大事ですし、今も、マナーを守るというのはすごく自分の中でも重要だなと思っているんですが、ただそれだけじゃなくて患者様と、やっぱり人対人ですから、無機質にただマナーを守ればいいんじゃなくて、ちょっとやわらかくというか、患者様が話しやすいようにしてあげるというか、そういった柔軟なつき合い方も必要なんじゃないかなと思っています。

 ただ、それはやっぱり、あまり学生時代に数をこなさないでそういうことをしようと思っても難しいと思うので、結局それは実際に医者になってからとか、場数を踏んで、だんだんそういうのは取得していくものなのかなと思うんです。

○荒川座長  吉村さん、一言。

○吉村発表者  僕らの大学では、1年生のときにマナーの講義みたいなのがありまして、接遇とはみたいなものから始まって、1年生は講義で終わるんですけれども、2年生になってから、2年生は佐倉からお茶の水に移動するんですが、毎週水曜日の午前中――毎週ではなかったかもしれないですけど、病院のいろいろなところに学生が散らばって、スーツを着て、ここに「案内」というワッペンをつけて、患者さんが何か疑問があったら、その「案内」とついている人のところに来て、これ、どうしたらいいんですかとか、そういうふうに案内係みたいなことを、させられると言ったらおかしいですけど、する機会がありまして、僕もそのときはさせられる感がたっぷりあったんですが、今思うと、そうやって知らない間に患者さんと接していましたし、コメディカルの人と接していましたし、そうやって毎週毎週トレーニングをさせられていました。

○辻本委員  多分ノウハウとかマニュアルではないと思うんです。向き合った目の前の人をどう大切に扱うかというのは、DVDで学ぶだけのことではないと思います。振り返ってみたときに、医学教育にいろいろと組み込んであるはずだと思うんですけれど、その実感はおありでしょうか。

○吉村発表者  そうですね。そのときはやっぱり僕も気づかなかったというか、何となくやっているというような感じでしたけれども、こうやって研修医になって、自分の大学の医学教育を見直す会みたいなものにも出席したことがあるんですが、それでやっぱり、ああ、あのときのこういう体験というのは、患者さんと接するときのマナーだとか、そういうところにつながっていたんだなというふうに、今考えるとほんとうにそう思いますね。

○荒川座長  ありがとうございました。どうぞ小川さん。

○小川委員  ちょっと論点を変えてもよろしいでしょうか。

○荒川座長  どうぞ。

○小川委員  お二人とも、今、研修まで行って、大体のことは医学教育をずっと経験してきたんですけれども、学習というのは繰り返しが必要だということは重々存じあげているんですが、ちょっと乱暴な言い方なんですけれども、例えば4年から5年に行くときに、CBTがあって、その到達目標と、それから、卒業したときに国家試験があって、国家試験の到達目標と、それから、臨床研修があって、その2年を終わったときの到達目標がほとんど同じことですよね。その繰り返しというのに関して、どうお考えになるかということがまず第1点。

○立花発表者  まず、到達目標が一緒だったということは、私は全部把握しているわけではなかったので、今知ったんですが、ただ、実際に医師免許を手にしてからだと、またできる手技の幅とかも変わりますよね。なので、到達目標が同じように書かれていても、実際に卒業する前の臨床実習での到達目標と、結局、医師免許を手にしてからの到達目標といっても、できることにはやっぱり幅があるから、違うんじゃないかなと私は思っているんですけど。

○小川委員  この間出た臨床研修制度に関する意見の取りまとめの臨床研修制度のあり方等に関する検討会を受けてこの委員会をやっているんですが、そのときに、医学生の移行への取り扱いをちゃんと決めるんですよということがその中に盛られているわけですね。ということは、例えば今の臨床研修をもっと前倒しにして、高度な技術に関することを学生実習の中でできるようになったらば、どう思いますか。

○立花発表者  高度な技術というと、例えばどういったことが……。

○小川委員  注射でもいいですけれども、今おっしゃったのは、医師国家試験を通って医師の免許を持ったからこういうことができるんだと。それは学生でももうちょっとできるんだったらば、今の臨床研修制度と同じことが学生実習の中でできるんじゃないかと私は考えているんですが、その辺はどうお考えでしょうか。

○立花発表者  できれば、学生時代に患者様に何か医療行為をするようにするというよりは、その手技を、例えば学生同士で練習する機会をもっと与えていただけるだとか、そっちのほうが役に立つんじゃないかなと思います。

○小川委員  あともう1点、これも前の委員会で、関連する制度の見直しという中で、国家試験の内容を見直すということが盛られているわけですが、今、私、思うに、せっかく4年生までの間に医学知識を学んで、そしてCBTを受けて到達目標をクリアして、臨床実習に行ったと。臨床実習は何をするところかというと、知識よりは態度と技能を修練するところで、それが終わったところで卒業して、国家試験を受けるときに、また4年生までの知識の部分が問われるから、再履修というか、復習をしなければいけないと。こういうところに今の制度の物すごいむだがあると私は思っているんですけど、その辺は、実際に経験をされた諸君たちの感覚としてはどうでしょうか。

○立花発表者  CBTで問われる知識と国家試験で問われる知識というのは――さっき、私、話がずれていたかもしれないですけど、到達目標が一緒だということなんですが、結局、勉強する幅が違うというか、CBTの前にやることといったら、例えば国家試験対策の本で必修問題をやるような形で、非常に基本的なことしか勉強しないんですよね。さらに国家試験対策としては、もっと幅広く、いろいろな科の内容をもっと詳しく、深く勉強していくという形なので、それがむだになるというよりは、CBT用に勉強した知識をベースとして、さらに国家試験対策としてもっと知識を増やしていくという形になると思うので、必ずしもむだにはならないんじゃないかなと私は考えます。

○荒川座長  吉村先生、いかがですか。

○吉村発表者  僕も決してむだにはならないと思うんですが、僕らが最初に共用試験というものを受けたんですけれども、正直受けたときには、その目的が何なのかということもあまりわからなかったですし、逆に今、その共用試験というものがどういうふうに扱われているんでしょうか。

○荒川座長  それは検討しましょう。やっぱりそういう疑問があるわけですね。でも、やっぱり共用試験は受けてよかったと。

○吉村発表者  それは受けてよかったと思います。

○荒川座長  わかりました。まだまだ聞きたいんですが、先がありますので。絶対聞きたいということがありましたら、どなたか。

○吉村委員  実は共用試験の成績と、それから、4年生の最後で多分進級試験というのがあると思うんです。それと卒業試験と国家試験の合否、これは非常に相関しているわけですよね。相関しているんですけれども、皆さん多分そうだと思うんですが、今お話をお伺いすると、共用試験の内容と国家試験とは全く違うんだということでしょうかね。つまり、私どもは、共用試験で基本的なことをやれば、あとはもっと臨床の実習の中で、知識も技術も技能も深めていただければというふうに考えているんですけれども、そうはなかなかいかないということでしょうか。これ、一番基本的なことだと思うんですけど。

○吉村発表者  僕の印象ですけれども、共用試験では一問一答という形式が多かったように思うんですが、国家試験の問題だとやっぱり一般問題と臨床問題に分かれていて、共用試験だと知っているか知らないかだけなんですけれども、国家試験の臨床問題だと、やっぱり知っているか知らないかだけでは解けない問題もあるので、違いはやっぱりあるかなとは思うんですが。

○荒川座長  学部の試験と国家試験のいろいろな問題があって、国家試験も大きく変わらなきゃいかんというのもあるんですが、そこらを含めて、じゃ、この辺でよろしいでしょうかね。

 それでは、この辺で、お二人の先生、どうもありがとうございました。もう一つの話に入りたいんですが、きょう、実は吉田先生から資料をいただいています。吉田先生、それをちょっとお話しいただきたいと思います。

○吉田委員  九州大学の吉田といいます。質問はしませんでしたが、お話は本当にありがとうございました。いろいろ伺えてためになりました。一言だけ感想を言わせていただくと、普段、私は学生とよく接しているので、お二人ともそれぞれご自分の大学の特徴である教育環境で学ばれ、そのまま研修医になられて、そのペースで学んでいかれているんだなと思いまして、とてもよかったなと思っています。

しかし、やはりここに来て発言するというのは、多分恐ろしいことじゃないかと思うんですね。学生と話していて、特に教育について意見を聞いて、改善の参考にしようとすると、最後に「いや、でも、こんな僕みたいじゃない人もいますから。」という話になることがとくある。ちらほらと自分以外の同級生の話も聞けますが、学ぶスタイルには多様性がある、そしてそのことを学生同士で自覚しているというふうにとらえています。

 済みません。じゃ、こちらの話にさせていただきますが、参考と書いてある資料をごらんいただきます。いろいろな委員の先生方が資料を持ってこられていたので、私も、ぜひこの機会に検討会でお話をさせていただきたいと思いまして、「医師のプロフェッショナリズムと医学教育」という題で、手持ちのスライドの中からの抜粋ですが、持ってきました。

 まず1枚目の下のものですが、これは、私がつくった図版なんですが、モデル・コア・カリキュラムと期を同じくして、診療参加型臨床実習への移行が促されたわけです。それまでの見学型実習から診療参加型に移行が促されたわけですけれども、その意義と、共用試験、医師国家試験がどういう位置づけになるかという図です。

 我々が受けてきた医学教育は、上のほうの三角印で、上方向が到達度なんですけれども、医学部に入学してから卒業するまでに教科書や文献的な知識がだんだん増えていくと。臨床実習は、見学型ですと、知識の使い方や技能や態度というのは身につかないので、上に書いてあるような形式になると。ちょっと極端な書き方をしています。

 下は診療参加型臨床実習、患者さんに接していろいろなことを学べます。技能と態度、それと現場における知識の使い方というのが、実習のときから学べるようになる。我々のときは、卒後研修のときに初めて一気に患者さんを持たされますので、いろんなことが同時に始まって、非常に目が回ったような気がします。それは外科の研修としては非常によかったなと今では思っています。

 診療参加型臨床実習というのは、もともと意義としては、技能や態度、それと知識の使い方を学部学生のころから学べるということで、医師国家試験は、今は知識だけ測定されていますけれど、以前はこれでよかったのかもしれないですが、技能や態度や知識の使い方といったことも今後は試験されないといけないのではないかなと考えています。共用試験というのは、以前であれば医師国家試験の位置に相当するもので、態度や技能についても、ある程度は現場に出る前学び、それを試験するということでOSCEが導入されたと考えています。1枚おめくりいただきまして、今のは前提の話なんですが、特に態度の部分なんですけれど、これは北村先生がおられる東京大学の教育センターの客員教授をされていたエレン・M・コズグローブ先生が当時、日本滞在中に書かれた本です。

 「21世紀米国医学教育の最前線」ということで、この中に「プロフェッショナリズム教育」という章がございまして、そこで挙げられているのが、ここの6つの項目です。それぞれ意味はおわかりになると思いますが、「倫理的な実践」であるとか、「内省/自己認識」というのは、自分はどれぐらい能力があるのか自己モニタリングができるということだと思います。あとは「行動に対する責任」、「患者さんへの敬意」、「チームワーク」、「社会的責任」というふうに挙げられています。

 この書籍の中に書かれているのは、その下の文献から引用されているんですけれども、2005年にニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに出ている論文で、このときに、臨床実習中に評価された、これは以前、この会でお話ししましたけれども、医学生時代の問題行動が、医師として懲戒処分を受けるような問題に結びついていたと。「無責任」や「批判を受け入れられず理屈っぽい」と記載された学生は、対象者と比べて医師になって懲戒処分を受ける確率が3倍高かったということ。

 それと、次の2枚目にいきますと、臨床実習前の行動との関係では、授業評価アンケートというのは、今はほぼ全大学で行われていると思いますが、これを書く学生と書かない学生がいるわけですけれど、これを記入しなかった学生が、将来的にプロフェッショナリズムにかかわる問題を起こしていた。あるいは予防接種、これも全員受けるようにということで大学が提供しているわけですが、何やかんや言って受けない学生が中に少数だけいるんですけれども、こういった学生も同様の問題を起こす可能性が高かった。

 3番目に、こういった臨床実習前に進んで無私の行いをしようとしないという、そういった態度の学生は、臨床に進んでから問題を起こす可能性が高いということで、クラークシップ(これは診療参加型臨床実習ですが)における評価が最もプロフェッショナリズムの問題を予測する力が強かったということです。卒後、医師になってから問題行動があるということを実習中に予測できるということをこの2つの論文は示しているわけです。ただ、日本の臨床実習がこういった面の評価をしているかどうかというところが非常に問題で、以前ですと、臨床実習は医局の勧誘という側面があったので、自分のところに来てほしいという学生はちゃんと評価していたんですね。そういう学生を医局誘っていたわけですから、これからは、そういった評価をきちんと学生に返していく必要があるんじゃないかと考えています。

 最後に、これも以前、この検討会でお話ししましたけれども、OSCEのコミュニケーションスキルの成績と、日本でいえば厚生労働省だと思いますけれども、医療監督機関に届けられた苦情と相関があると。これは医師国家試験のカナダのOSCEなんですが、コミュニケーションスキルの成績が予測できるという、そういった論文です。診療参加型臨床実習を導入して、きちんと学生を評価するということであれば、こういったことも評価していくし、今後、OSCEとその後の医師になってからどうかというところの観察や調査研究というのはしていくべきではないかというのが私の意見であります。

 もう一つ、きょうのお二人のお話を伺っていて、今、このプロフェッショナリズの話に結びつけられるものがあるとすると、それはやはりこの臨床実習に上がっていきなりこういうふうに言われても、これはもう遅いわけです。ですので、臨床実習に入る前のどこかの時点で、できれば入試ではじいてしまうのが一番いいんですけれど、ただ、今の入試を変えないのであれば、我々が医学教育の中で、低学年の段階で、この人は人と接するのが苦手であるとか、そうでないとかというのを評価して、苦手であるならば、そのままでは臨床には進めないということを示して、介入していく必要があるのではないかと思っています。以上です。

○荒川座長  どうもありがとうございました。ただいまのお話、どなたかご質問があれば受けますが、いかがでしょうか。

 それでは、今のお話も踏まえまして、これまで2月2日でしょうか、第1回が始まって6回、皆さんのご意見を踏まえながら検討しました。皆さんのお手元には、各委員からのいろいろなご意見もまとめてございます。一方、この検討会の最初の目的であります、来年始まります臨床研修プログラムの中でもって、この卒前プログラムをどうしようかという検討ですが、一応4月の中ごろをめどに中間としてまとめたいということが求められているわけでして、今後、これからその集約の作業に入りたいと思います。事務所と相談しまして、資料2のように、これまでの主な意見の整理の案を一応まとめました。これをまずちょっと説明をいただきまして、皆さんからご意見を賜りたいと思いますので、よろしいでしょうか。それではお願いします。

○樋口医学教育課長補佐  資料2をごらんいただきたいと思いますけれども、お示ししましたこれまでの主な意見の整理の案につきましては、別資料で10枚ほどの形で主な意見等という資料がございます。これは、これまで5回の検討会で委員の方々から寄せられた意見、それから、前回の会議までに書面でご提出いただいた先生方のご意見、それから、この検討会のきっかけとなっております臨床研修のあり方に関する検討会、2月18日の意見の取りまとめ、この辺の内容を記載してございますが、その中から、ある程度意見の一致している点等を集約いたしまして構成したのがこの資料2でございます。時間がございますので、簡単にご説明申し上げます。

 構成といたしましては、まず、1といたしまして課題認識、それから、2といたしまして基本的な考え方、3以降が各論という形でこの意見が整理できるんじゃないかということで検討しております。

 1の課題でございますが、まず今般のモデル・コア・カリキュラムの策定等で医学教育というものは着実に改善されているんだと。ただ、医師不足問題、地域や診療科の診療を担う医師の養成確保というのが非常に急務であること、それから、臨床研修制度については、その基本理念は達成されているが、医師不足問題が顕在化・加速のきっかけになったということ、こうした若手医師の不足、あるいは医療の高度化等で大学教員の多忙化があり、臨床参加型の実習への転換も不十分である。それから、同時に、研究業績の停滞、若手研究者の減少というのもやはり深刻である。そうした中で、卒前・卒後の改革というものがともに進められている中で、卒前・卒後教育をともに担う大学が、両者を一貫して見通して社会の要請にこたえる医学教育というものを改善していくことが必要であるということを課題として整理しております。

 その上で、考え方として4つの流れにまとめられるのではないかと思っておりますが、1つは診療参加型の実習の強化、その中でチーム医療として患者と接する機会、そして役割も持たせるということの中で、診断や治療を行う判断力を身につけさせるとともに、その後のキャリアの将来像というものを描けるようにするということが1つの柱ではないか。

 もう1つは、地域枠の設定を初めとする地域医療教育、そして地域医療を担う医師の養成というものが必要であること。3つ目は、そうしたことを実現する上でも、共用試験、医師国家試験が整合性を持って、それぞれの段階で求められる能力というものを適正に評価できるようなシステムを確立することが必要ではないか。4つ目といたしまして、そういう中でコアとなる内容を確実に修得させるとともに、大学の強みを生かした特色のある教育の展開を促進させるべきではないかという点でございます。

 それから、3つ目以降は各論でございますけれども、まずは、医学教育の内容につきましては、大きな流れとして6年次における臨床実習の形骸化はなくすべきではないか。そのために、臨床実習修了時の到達目標を明確化し、あるいは臨床実習の制度的な位置づけを明確化する。その中で、学生の医行為の明示のあり方についても見直しを検討していくべきだ。また、シミュレーション教育等の段階的・体系的な形で、いずれの分野でも診療参加型の臨床実習が行われるようにすべきだ。また、内科・外科といった基本科目の臨床実習の充実、あるいは全人的な総合診療能力の育成とともに、科目横断的な、例えば救急、周産期、精神医療というものにつきましては、流れがつかめるような形での臨床実習前からの体系的な教育が必要ではないかということ。

 それから、地域医療教育につきましては、6年間の医学教育全体の中で、さまざまな医療機関の連携、それから、地域の人々や患者の方々と接して声を聞く機会を通して、患者本位に立って、担い手としての使命感を醸成すべきではないか。

 そういう教養教育ということに関しましては、看護師をはじめとするさまざまな職種との協働、患者と接する機会、こうしたことでのコミュニケーション能力や職業的態度が重要であること、あるいは医学・医療全体をオーバービューする形での医学概論や医療政策も充実すべきではないか。それから、研究マインドの育成については、基礎と臨床の融合の中で、日々の診療の中で患者や疾患の分析を行っていく。あるいは自らの診断・技術等を常に検証して磨き続けるような態度が大事ではないか。

 あるいは特色のある教育という点では、選択制カリキュラムの充実と、そういう観点からのモデル・コア・カリキュラムの示し方の工夫が必要ではないか。

 それから、4番目といたしまして、臨床能力を評価するシステムという点についてでございますけれども、この点は、1つ目は臨床実習の成果とその評価を体系的に把握、蓄積できるようなシステムをつくって、それを臨床研修の採用時にも活用すべきではないか。

 また、先ほど臨床実習の制度的な位置づけの明確化ということを申しましたけれども、それとあわせて、全国的な水準で、患者と接する臨床実習開始前における共用試験の位置づけを明確化して、統一的な合格基準を設定してその質を担保する。あるいは合格者に対する証明書の発行などの措置も講ずるべきではないか。あるいは医師国家試験というものが、そうした共用試験の評価の適正化ということを前提とした上で、臨床能力の評価を重視したものになるようにする。あるいは各大学における臨床技能評価を実施していくことが臨床実習の充実のためには必要なのではないか。

 それから、次のページに移りまして、コミュニケーション能力や職業的態度という観点からは、地域医療や患者と接する機会にかかわるような学外の指導者の方に学生の評価に積極的にかかわっていただいて、そういった評価を多角的に行っていくべきではないか。

 入学者選抜においては、アドミッション・ポリシーを明確にして、きめ細かい面接やボランティア体験などの形で医師としての資質や目的意識の把握を行うべきではないか。

 あるいは地域医療の観点からは、地域枠の設定、あるいはそういった形を通して地域を担う明確な意思を持った学生を選抜する仕組みが重要であるということ。

 それから、5番目といたしまして、そういったことを実現していく体制的な面でございますけれども、まず指導体制といたしましては、地域や診療科の医療を担う医師の養成、あるいは研究者の養成という観点からは、今の選択制カリキュラムをより有効に使っていくということ、それとともに、例えば4年生とか、そういった上級年次の学生を対象とした専修コースというものも有効で、取り組みを推進すべきではないか。

 それから、臨床実習等の指導体制に関しましては、まず、体系的な実習を担保するための総括責任者を置いたり、実際チーム医療にかかわっているさまざまな職種の方々の参加で、診療科の横断的な企画・調整を行っていくシステムが必要なのではないか。あるいは臨床実習は大学病院を中心としながらも、学外の病院、診療所、大学、学会などとの連携協力、あるいは臨床教授などの活用を推進していく中で、関係者の方が実習内容やその評価基準の企画・実施に協働で取り組んでいくことが大事なのではないか。それから、大学というものは卒前・卒後、生涯教育を一貫して担うという観点から、さまざまな機関と連携しながら、キャリア形成の中核的な役割を果たしていくべきではないか。

 それから、こうしたことを実現するためにも、指導教員の充実を図ったり、あるいは事務的職員の配置などを通して教員の負担の軽減が必要なのではないか。また、教員の能力に関しましては、研究能力、研究業績に偏りがちな評価を改めて、教育能力、臨床能力の評価が必要なのではないか。あるいは体系的な教育課程を編成していく上では、ファカルティ・ディベロップメントの充実、これを、例えば今の臨床研修の指導の経験を生かしながら行っていくべきではないか。

 こうしたご意見に集約できるのではないかということでまとめさせていただいております。かなり総花的なことになっておりますけれども、こうしたことの中から、第1次報告という形で、より骨のついたような形でまとめていく際の材料として、本日はこの資料を提示しているわけでございます。

 以上でございます。

○荒川座長  どうもありがとうございました。臨床研修の見直しに端を発しまして、こういうふうにまとめて、これから卒前教育をどうしようかということで、先生方のご意見、あるいはいろいろなことを大まかにまとめたわけです。さらに、その前に、コア・カリキュラムが提示されているわけですので、これをどう実施するかということを踏まえまして、よりまた具体的な、例えば指針が要るかどうかということもございますし、さらに検討が要るかもしれませんが、ひとまずこういう方向性のたたき台ができたということでございます。これについて、あるいはこの構成も含めて皆さんからご意見を賜りたいと思っております。

 この1番、2番、3番、4番というふうに1つの筋道を通した形になっていますので、この構成について考えてみますと、最初にこういう課題がある、改善の方向はこうだということで、1番、2番が出ています。この辺から少しずつやってみたいと思うんですが、いかがでしょうか。どうぞ率直なご意見を賜りたいと思います。

 1番目は、臨床研修の委員会でも出されたことはちょっと載っておりますので、これは前からごらんになったと思いますが、いかがでしょうか。

○平野委員  医学教育カリキュラムに対してさまざまな意見を適切にまとめられていると思います。現状では多くの問題があって、改善しなければならない。それは当然なことですが、ここでちょっとやっぱり強調していただきたいのは、基本方針の部分に、基礎医学教育を重要視するという事を明記していただきたい。基礎医学教育、あるいは基礎医学研究は将来の日本の医学を考えると大変重要です。今は医療崩壊とか、目の前のことにとらわれがきで、どうしても即戦力ということで、卒前にそういう技術的なことなど、現在卒後に行われているようなことが、前倒しにして導入されようとしています。これは一歩間違うと、医学専門学校への道を歩む事にもなりかねません。即戦力的なことを重視するという、何となくそういうムードになっている。確かに目の前のことを解決するには、ある意味ではいいかもしれないけど、やはり長期的に見るとこれは日本の医療の将来にとっては非常に危惧すべき問題です。

 例えば結核というのは、昔は難病で、結核を宣言されたら死を意味していたんです。今では結核は治癒しうる病気になりました。これはやはり基礎医学が進んだからです。目の前のことは非常に大事です。しかし、医学教育カリキュラム検討委員会というからには、今日の医学をめぐって次のような課題が見られるというところに、確か5番目ぐらいに、“同時に、研究活動に関する時間確保が困難となり、研究業績の停滞、若手研究者の減少が深刻”と書いてありますけど、もっと積極的に、基礎医学教育を軽視すべきではない、あるいは基礎医学研究を重視すべきであるという文言を、やっぱり方向性としては入れていただきたいと思います。また2番目の、“検討に当たっては、次のような考え方で改善を図るべきではないか”という項目ですが、ここにも“基礎医学”というのはどこにも出てこなくて、確かに4番目に、“各大学の強みを生かした特色ある教育の展開を促進する”というようなことで、これは、“各大学の判断で基礎医学も重視する”と、解釈できなくもありませんが、やはり基礎医学教育、あるいは基礎医学研究というのは中長期的には大事であると明記していただきたいと思います。

○荒川座長  そのときに先生、よく言われますのは、僕らもそれは大賛成なんですけれども、オロジーばっかりこだわってと、そういうことを言いますね。

○平野委員  それはもちろん、方法論とか、基礎医学教育のやり方に関しては、いろいろ改善すべきことはあります。1番、2番の項目は、医学教育の基本方針を書いてあるわけです。そこに基礎医学教育、基礎医学研究重視を明記していただきたいという事です、各論としては皆さんの意見はごもっともです。もちろん、有限の人材と有限のお金とでどのようにして現状を改善出来るかははなはだ疑問ではありますが。書いてあることはごもっともなことで、このような点は改善していかなくてはなりませんが、やはり“基礎医学を重視するべきである”と、それは明確に書いておくべきでしょうね。財政や人材をすぐにも増やすことが出来なければ、そこは何らかの方法で、日本全体で分担するか何かしてでも……。医学研究を軽視して、目の前の医療崩壊だけに目を向けて即戦力の医者だけをつくるということになったら、今はいいかもしれませんが、10年、20年、30年後には非常に困ったことになると思うんです。

○福田副座長  その議論は前にもかなり強く出まして、基礎臨床という対立の構図はやっぱりちょっとまずいという議論があった。

○平野委員  いやいや、僕が基礎医学研究というのは、決して純粋な基礎医学のみを意味しているのではありません。基礎、臨床を含めた、医学を推進すると言う意味です。基礎医学を推進すれば、結局は臨床医学の発展につながりますし、基礎医学教育を重視すれば、考える臨床医、研究マインドな臨床医が多く排出し、基礎医学、臨床医学全体を含めた医療の水準があがるはずです。ただ学問を強調する為には、基礎医学重視というほうがいいとおもいます。

○福田副座長  ですから、それと臨床医学と対立の構図になっているんですね。だから、決してそういうことはなくて、やっぱり対象とする場面が生命科学の本質的なところをやるのと、それから臨床に直結したもの、こう分けるだけの話で、だから、その辺のところはもうちょっと枠を広く考えていただいて、臨床の人も研究をやらなきゃいけないんだから、医専をつくったらいいというのは、これは暴論でして、決して医専をつくるなんてだれも考えてない。もっとレベルの高い臨床医をつくらなきゃいけないということになっておりますので、そのために、この新しいモデル・コア・カリキュラムには、全面にその視点が入っていますから、決して戦時の医専をつくるという発想ではないスタンスでやっておりますので。

○平野委員  それは非常に重要な点だと思います。ただ、目の前のことに捕らわれて、いろいろなことを前倒しにしていくと、現在の医学教育予算や、教員の不足を考えると、どうしても、医学専門学校化する事が大変危惧されます。

○福田副座長  臨床実習と臨床研修の中身がダブっていたら、これは少し前倒しするのは当然な話であって、国家試験で例えば基礎系の問題がまだ出ているようだったら、これは共用試験でクリアすればいいんで、そういう図式も成り立ちますから、結局どこかでむだをなくしていって、それから、研究マインドをきちんと育成しながら医師になってもらいたい。それは、きょうお二方がおいでになりましたけれども、単純に一般臨床医だけではなくて、やっぱり研究マインドのきちんとした医師になってもらいたいというのが我々の、先生も多分同じだと思いますけれども、そういうふうに私ども、理解してやっておりますので。

○荒川座長  わかりました。どうぞ。

○水田委員  確かに先生がおっしゃったように、特に1番の問題を見ていますと、例えば1の2は、既に医師が不足しているところを何とかしなさいというのが、これが何で医学教育の問題になっていくのか、ここでそれを書いたらおかしいんじゃないですかね。地域医療とか、医師不足のため医師を養成・確保する方策、それが医学教育をめぐっての問題になるんですか。これは違うと思うんですけどね、こういうふうな書き方をするのは。医学教育というのはもう少し……、これだと医専と一緒じゃないですかね。だから、こういうのは出さないほうがいいんじゃないかということと、それから、全国の大学を全部同じように考えなくても、少し分担的なものをして、大学そのものというのはしないと、全部がピーッと行って、あっ、間違っていたと言って、またちょいと変わるようなやり方だとどうしようもないんじゃないかなと思うんですけどね。

○荒川座長  はい。それぞれ特徴はあると思いますが、基本的に医師を養成するということは共通していますね。

○水田委員  うん。それはそうです。

○荒川座長  その中で、今回は提言を受けてのものですから、相当の提言もあるわけですので、それは無視はできませんし、おっしゃることもよくわかりますので、じゃ、そこは上手に表現しないといけませんね。これは両方ありますので。

○福田副座長  先生のおっしゃることはわかります。教育の中から、例えば小児科、産科の状況を見ていただければ、進む人がいなくなって困るわけですね、はっきり言って。ですから、そういうところの教育はきっちりやるべきだというようなとらえ方でいいんじゃないでしょうか。こういうことだけやればいいということじゃないんだと。

○水田委員  今足りないから困るからということですか。

○福田副座長  いや、だから、そういう視点もきちんと入ってなきゃいけないでしょうという意味で、よろしいんじゃないでしょうか。

○水田委員  養成・確保、地域、地域となっているけど、何か……。

○福田副座長  これは議論のあるところですね。こういう専門家を学部から育てるというその発想は、先生がおっしゃるとおり医専の発想ですよ、はっきり言って。

○水田委員  そうですよ。

○福田副座長  そういうニュアンスでとらえないほうがいい。

○荒川座長  ですから、こういう緊急の問題を踏まえながらも、先生のおっしゃるようなことをどう持っていくか、基本的にはそんなに違いはないと思うんですよ、表現の違いだけであって。

○北村委員  私の意見にも書きましたし、荒川先生の意見の最初にも書かれていることで、入学選抜の問題に関して、選抜のテクニックじゃなくて、各大学の個性をあらわしたミッション、理念を出さないと、今おっしゃったように、80医科大学が金太郎飴みたいに同じカリキュラムで、同じような医者を育てればいいというものではないと思うんですね。もちろん80医科大学が全部基礎医学者を目指せばいいというものでもないと思うんですね。だから、この大学はこういう医者を育てたい、だからこういう人を求めると、そういうミッションをはっきり出して、それを支援するのが文科省であると、そういう理念をぜひ出してほしいんです。そのために入学選抜があるんだろうと思っています。

○福田副座長  ちょっと補足したいんですけど、このカリキュラムの功罪というのは確かにありますね。必要最小限のものは履修しなければいけない。ただ、それは各大学の判断の自由で、どういう形をとってもいいわけで、同じカリキュラムの内容にすることは決してないんですね、それは網羅されていればいい。ただ特色を出していただきたいというところで選択制のカリキュラムというのがきちんと位置づけられています。それから、授業のあり方ですら各大学の自由に設定されているわけですよ。決して強制的に同じカリキュラムでやっているわけではないんですね。ですから、内容が網羅されていればいいと。それで力をつければいいだけの話ですから。また、特色に従って選択制のカリキュラムをつくっていただければいい。これは基本の考えだと思います。諸外国ともに同じですよね、それは。

○田中委員  全然違う観点なんですけど、1から6の中にないもので、あったほうがいいのではないかと思うことがあって発言いたしますけれども、一定程度学生が留年していくわけですね、現実には。6年間で卒業しないということです。あそこの2人にもお聞きしたいぐらいですけれども、6年間で一緒に入学した人がどれぐらい卒業したかというと、どれぐらい卒業しました?

○荒川座長  いかがですか。100人入りますよね、1年目に。まあ、年も違うかもしれませんね。

○立花発表者  いや、上からおりていた方もいたので。

○田中委員  一緒に入学した人で、一緒に卒業した人。

○立花発表者  一緒に入学して一緒に卒業したのは、おそらく2、3名を除いて97名ぐらいだったと思います。

○田中委員  すばらしいですね。

○荒川座長  吉村先生、いかがですか。

○吉村発表者  3人下の学年に行きましたけれども。

○田中委員  それはすばらしい学校で、私は平成18年の調査を見たことがあるんですけれども、それは、極めてすばらしい学校が2つ選ばれたということであって、医科歯科大学を含めてもっと留年しているんです。そういう人たちが何で留年していくのかということを分析する必要があるんじゃないかと思うんですね。すばらしいカリキュラムをつくっても、それについてこれない人たちが一定程度いる。ゆとり教育を中学から受けた世代が入ってくるようになってきます。ですから、さっき辻本先生もおっしゃったように二極化していると。その二極化している陰の部分というと失礼ですけど、そういう部分の人たちにどう対応するかというのも、これからの医学教育の課題ではないかと思うんです。

○荒川座長  ほかにいかがでしょうか。

○水田委員  教育を考えるときに、必ずもう少し教官を増やすということを、ぜひどこかに……。どこかに書いてありましたけど、少しね。だけど、いまだに特に国立大学、法人ですけど、定削はきているんですよね、どんどんきているんですね。だから、そういうことは、むしろ増える方向に持っていくようにしないと、どうして教えるのかと言いたくなりますね。教える人たちも勉強しなきゃいけないんですよ。ですから、そういう立派な、いい指導者を育てることも大事ですから、定数を増やすということを少し考えていただくことも提言したほうがいいんじゃないかな。

○荒川座長  私は、それ書いたんですけど、それは裏腹がありまして、もう一つは現状の体制をいかに変えていくかと。現状を金科玉条のように変えないで、増やせ、増やせで通るのかということもやっぱり社会情勢でありますので、現状の体制はどうなんだということも踏まえながら増やしていくということでないと、なかなか通りにくい。今のままでいいかどうかということもありますし、両方だと思います。私もそれは書いたつもりですので、わかりました。

 ほかにいかがでしょうか。どうぞ小川先生。

○小川委員  今のご意見に私、大賛成なんですけれども、この中に盛られている意見につきましては、大変いいことが盛られているわけですが、このままでは絵にかいたもちで、やはり何かをやるときには、人と物と資金、これがつかなければ、いくら格好いいことを金科玉条のように言って網羅しても、結局だめなんですね。ですから、教育環境の改善とか、教員の勤務状況の改善だとか、あるいは前の委員会でも問題になって、すぐれた医師養成に必要な予算の拡充を図るということが盛られているわけで、これはやっぱり項目を別にして大項目として入れないと、理念ばかり先行しても現実がついていかないということになると思いますので、ぜひお願いします。

○荒川座長  その点は共通の意見だと思いますし、これは皆さんの意見をまとめましたので、じゃ、その先はどうだということはやっぱり必要なんじゃないでしょうかね。わかりました。

 それから、どうしても各大学の特徴がありますが、基本的に共通したものは何かということがあると思います。それから、なぜこの会が持たれたかというと、やっぱり臨床研修から来ていますので、それは触れざるを得ないところもありますから、そことどう整合するかということで、ご意見をお願いします。

 ほかにいかがでしょうか、どうぞ吉田先生。

○吉田委員  1枚目の裏、「8」の上のところに「教養教育の充実」と書いてあって、その内容が、チーム医療やコミュニケーションの教育、「9」のほうは、医学概論、医療政策と書いてあるんですが、これが教養教育とは思えないんですけれど。

○荒川座長  そうしますと、先生がおっしゃるのは、リベラルアーツをちゃんとやれということでしょうか。

○吉田委員  いや、やっぱりこれは医学部の専攻教育科目だと思います。ただ、臨床医学でもないし、基礎医学でもないですよね。

○荒川座長  タイトルがちょっと合わないということですね。

○吉田委員  はい。

○荒川座長  中身はいいでしょうか。

○吉田委員  中身はいいと思いますけれども、タイトルを「教養教育」と書くと、どこかと矛盾が出てくると思います。

○荒川座長  先生、ついでながら全体の構成はいかがですか。ここは皆さんに、全体の構成はどうかということをお聞きしたいんですけど。

○福田副座長  やっぱり研修制度のあり方の委員会の提言を受けて、学部教育は何をしなければいけないか、かなり具体的に書いてありますから、あそこに焦点を絞るのが1点。これはもうはっきり分かれますから、あそこに焦点を絞って、かなり現実的なことが書いてありますので、それが1点と、それを支える教育支援体制を何とかしてもらいたいと。さっき先生がおっしゃったように、大学での削減が続いていますよね。このまま教員をさらに削減すると、物理的に無理になる可能性が出てくる。そこの支援体制をちゃんとつくらないといけないので、これは国の責任だと思いますね、はっきり言って。それで現実的にできる焦点を絞るというのが一番簡単じゃないかと思います。それが実効性あるような形で資金配分を何とか考えていかないと、先々に当たって医師不足が解消できないというところを、現場の先生方のあれを見ているとつくづく考えさせられますね。

○荒川座長  小川先生がこの間の委員会でお話しされたのもそこだったと思いますね。ですから、全体をまとめると、どうしてもそこが多少ぼけますので、そこは上手に書き分けていただきたいと思います。それは、大学の共通のところだと思いますので、もちろん大学は全部違いますけれども、共通のところをどうするかということだと思いますので、なかなか難しいですけれども、ちょっとその辺を……。

○小川委員  全く先生のおっしゃるとおりで、全国の大学が同じ機能を持つ必要はないんだけれども、やはり医療者養成機関として存在しているわけですから、ミニマム・リクワイアメントというのは必ず必要で、その上で大学の特色を出していくということだと思うんですね。ですから、ここでディスカッションするのは、そのミニマム・リクワイアメントの部分は共通できっちりやりましょうと。その上に各大学の特徴を出して、いろいろなことをやりましょうということだと思うんです。

○荒川座長  今まで議論したからこそ、ここまできたわけでして、決してむだじゃなかったと思うんですけど、ほかに何かございませんか。

○平出委員  今の議論をお聞きしていると、まとめはかなり総花的にならざるを得ないけれども、臨床教育を担う人のサポートが重要というのは結構、委員の中の共通の重点項目となっていると考えられます。例えば臨床実習の評価がちゃんとできる人を養成して、その人たちに対しサポートをする。そういったようなところを報告の1つの目玉にしてもいいんじゃないかなと思います。また、臨床教授など学外の病院で実習の協力をしてくれる先生に対して、もう少し処遇をよくしないといけないんじゃないかということを荒川先生も書かれていますよね。これも、検討会メンバーのかなり共通の認識だというふうにしてもいいのではないかと思います。

○荒川座長  先生、もう一つお聞きしたいんですけど、きょうの若い先生方のお話の中でもありましたけれども、臨床研修の手技を学部でもって聞きましたときに、侵襲的なものに対しては必ずしも必要ないようなことをおっしゃっていますけど、その辺はどうなんでしょうか。

○平出委員  私が今聞いた範囲では、医療現場で医療サービスがどういうふうに生かされるのか学生が理解する、そういう実習ができるということが大事だというふうに解釈しました。学外へ行くと、社会人になることも要求されるわけですね、医療人になるだけじゃない。やはり学外に行くということの重要性を考慮すると、先生が強調されているように、学外で引き取ってくれる人たちに対してもサポートが必要だ。このことが目玉の1つにになるのかなというふうに感じました。

○荒川座長  例えばこの手技ができる、できないとか、その辺のところはあんまり……。

○平出委員  どうもそこら辺が現場の実習の目的ではないという理解でいいと思います。

○荒川座長  はい。そこを確認したかったわけで、わかりました。

○水田委員  技術とか注射とかは、本当にしたければ、自分たちでお互いにやったらいいんですよ。どの先生でも注射器ぐらいはくれるし、点滴だって、したければあげますよ。もう一つあれだったら、自分の太股を使ってどんどん注射したらいいんですよ。小さい細いのがなかなか入らないんですけどね、それは痛いから覚えますよ。だから、そういうことをすればいいんです。お互いにし合えばいい。

 それから、私は、医療者を育てるときに、教養教育の充実ということは絶対入れていただきたいと思うんです。これだけ医学教育といいますか、医師がちょっと崩壊しつつあるのは、教養学部がなくなったことだと思うんです、はっきり申し上げて。あれは絶対間違っていたんじゃないかなと思いますので、ぜひ、いい社会人、いい医療人になるためには、教養教育の重要性ということはきちんと入れていただきたいと思います。

○荒川座長  私も同感なんですけど、それに具体的に各大学がどう対応してくれるかということが非常に大事なことになってきますね。

○水田委員  どこでも今、全学教育でやっていると思うんですね。

○荒川座長  はい。それも各大学を回ってみますと、いろいろありましてね。東京大学には教養学部というのがちゃんと別にあると、これは北村先生が気にしていますが……。

 ほかにございませんか。どうぞ自由なご発言をお願いします。

○寺尾委員  制度上の改革、例えば国家試験の時期の問題とか、それから、クリニカルクラークシップに対してどのような許可を与えるかとか、そういう将来に向けた付言的なものも、やっぱりどこかに最後に付記すべきだと思います。そして人の増員についても。ただ現状の改革だけでは何か物足りないと思っています。

○荒川座長  ご意見の中には、目の前のことと、それから、中長期ということもございます。それから、理念のこともありますので、そこをじゃ、わかりやすくもう一遍書き直さないといけないと思います。難しいんですけれども、これはまたやらないといけないですね。

 辻本さん、何かございませんか。

○辻本委員  いえ、特には。

○荒川座長  ほかにはいかがでしょうか。

○吉村委員  やっぱり最初の理念といいますか、質の高い医療人、医師あるいは研究者の育成を図るということですよね。そのためのいろいろな改革になると思うんですけど、何かそこら辺のものが最初にあるといいんじゃないかなと思います。いきなり今、こういう課題がありますよとかいうことから始まっていますよね。

○荒川座長  書きぶりをもう少しその辺を考えてということですね。わかりました。確かに今、9期の問題が出てきたので、これをいきなり読まれて、医専かという反応もわからないではないですけれども、そこのところはなかなか難しいことです。ただ、多分共通の認識はあると思いますので、今、ご意見の中の強調したいところをわかりやすくするということも大事ですね。

○福田副座長  きょうお二方の研修医の方においでいただいたんですけれども、学生時代、教員の教育に対する評価は大学でされていましたでしょうか。

○立花発表者  評価の方法は、試験の前にマークシート形式で評価するというのはありました。

○福田副座長  それは改善にフィードバックされていましたでしょうか。

○立花発表者  うーん……。

○福田副座長  もう一人の先生にもお聞きしたいんですけど。

○吉村発表者  一応各授業が終わった後にアンケート用紙があって、何がおもしろかったのか、何がよくなかったのかということを書く紙はありました。

○福田副座長  有効に機能しているとお考えですか。

○吉村発表者  うーん。まあ、そう願います。(笑)

○福田副座長  研修のほうはいかがでしょうか。研修のほうも評価がありますね。

○吉村発表者  研修のほうもあります。その科が終わったごとに、指導がどうだったかというフィードバックはあります。

○荒川座長  樋口さん、大変ご苦労をいただいたんですが、何かご意見ございませんか。まとめたほうとして何か。

○樋口医学教育課長補佐  私どもとしては、反省点でございまして、委員の意見をまとめさせていただきましたので、若干平面的なところも多く、いろいろな意味でご批判、誤解も含めたご指摘もちょうだいしましたので、そういう意味ではやはり濃淡をつけて、きちっとストレスを置かなきゃいけないところと、あとはそれを担保するところをしっかりと書いていくということに気をつけながら、もっと骨太といいましょうか、骨のあるものにしていかなきゃいけないなと思っております。

○荒川座長  これまでの議事録と、それから、このぐらいの皆さんの意見が入っていますので、それをよくまとめていただいて、ご苦労はあるんですけれども、これは働き合いですので、皆さんのご意見を踏まえて、もう一遍、じゃ、これをやってみたいと思いますので、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。きょうは最初のことですので、きょうのご意見を踏まえて、またもう一遍やってみたいと思いますが、よろしいでしょうか。

○福田副座長  最後に、よくこれ、まとめていただいたと思いますし、それから、先生方のご意見も分極していて、それぞれの意見について今どうしたらいいのかということと、何に重点を置くかというのは、ちょっと焦点を絞っていただいて。

○荒川座長  そうですね。それから、寺尾さんがおっしゃったように、将来のことも踏まえて、それから、平野さんがおっしゃったことも踏まえて議論をしながら、今のここはこうだということでいったらいかがでしょうか。そして、今一番大事なことはどこだというようなことでいかがでしょうか。

○福田副座長  長期展望も、次はこうすべきだという順序立ても必要じゃないかと思いますので、その辺、ぜひよろしく。

○荒川座長  わかりました。それでよろしいでしょうか。

 それではそろそろ時間でございますが、この際もう一言というのがございましたら、どなたかいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

○福田副座長  せっかくだから学生の皆さんに。

○荒川座長  あっ、そうそう。ちょっと今の議論について、皆さんのご意見も聞かせてください。率直な意見をひとつ。吉村さん、いかがですか。

○福田副座長  学生のときを振り返ってでも、研究医を今やっていながらでも結構ですから、ぜひ意見を言ってください。遠慮なく。

○立花発表者  こういうことを申し上げるのもあれなんですが、ここに書いてある細かいことを議論するよりも、もうちょっと中身を議論していただきたいなというのが1点。

○荒川座長  例えばもうちょっと中身というのは。

○立花発表者  この書き方がどうこうとかではなくて。

○荒川座長  わかりました。吉村さん、何か。

○吉村発表者  学生のころは、確かにこういう会があって、カリキュラムがどんどん変わっていっているという実感が全くなくて、初めてこの部屋へ入って本当にびっくりした感じだったんですが、こうやって何回も検討会が開かれてカリキュラムができているんだなって体験できただけでも、すごく意味のあることだったと思うので、これをぜひ形のあるものに反映していただいて、後輩たちに受け継いでいただければと思います。

○荒川座長  どうもありがとうございました。それではこのあたりでよろしいですか。はい。じゃ、どうもありがとうございました。

 

 

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