医学教育カリキュラム検討会(第5回) 議事録

1.日時

平成21年3月23日(月曜日)16時~18時

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.議題

  1. 関係者からのヒアリング(1.諸外国との医学教育の比較について 2.診療科等の医療を担う医師の養成について)
  2. その他

4.出席者

委員

荒川委員、石川委員、小川委員、北村委員、田中委員、寺尾委員、名川委員、奈良委員、伴委員、平出委員、福田委員、南委員、吉田委員、吉村委員

5.議事録

○荒川座長  それでは、ちょっと遅れた方もおられますが、時間も過ぎましたので、これから第5回の医学教育カリキュラム検討会を開きます。

 今日は3人の先生方からいろいろな分野においてヒアリングを聞きたいと思っております。

 最初に、事務局から、今日の委員の方々の出欠状況と配付資料の確認をお願いいたします。

○樋口医学教育課長補佐  本日は、お忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございます。本日の出席委員につきましては、机上に配付しているとおりでございますが、北村先生と名川先生が若干遅れぎみとはいう状況でございます。

 配付資料の確認をさせていただきます。お手元、議事次第をめくっていただいた後に、資料1といたしまして、前回の検討会の概要案、それから、資料2から4といたしまして、今回ヒアリングをお願いいたします先生方からご提出いただきました資料。それから、伴先生からご提出の資料がその後ろについてございます。現在、なお、議事録につきまして、各委員の先生方からの修正意見等をちょうだいして取りまとめてございます。終了後、速やかにホームページへの掲載をさせていただきますので、お願いいたします。

 資料の過不足等、ございますでしょうか。

 よろしゅうございますでしょうか。

○荒川座長  どうもありがとうございました。

 それでは、今日は議事が2つあります。1つは、諸外国におきます医学教育の事例あるいは動向をもとに、卒前教育に何が求められるかというようなことにつきまして、岡田先生、奈良先生にお話しいただくということ。それから、もう1つは、これまで診療科等を担う医師の養成につきまして、今までヒアリングをやった診療科の医療のを聞いたわけですが、これにつきまして、ヒアリングの総括を名川先生にお願いしたいと思っております。

 お一方、10分ぐらいをめどに、ひとつお話し願いたいと思っております。

 それでは、最初に、外国の医学教育についてお聞きしようということで、まず、岡田先生、よろしくお願いします。杏林大学医学研究科准教授でおられます。よろしくお願いします。

○岡田発表者  初めまして、杏林大学眼科の岡田と申します。

 始める前に、資料2は、私がもう12年前に書いた眼科の雑誌のエッセイですけれども、後で参考になるかなと思ってお配りいただくことにいたしました。

 あと、私の経歴は、スライドのプリントの最後の1枚に入っておりますけれども、書いてあるとおり、ハワイ生まれで、大学からずっとresidencyまでボストンでやってから、16年前に日本に来ました。ハワイ生まれですので、ハワイとして最近ちょっと話題になっているのは、ご存じの方がいらっしゃると思うんですけれども、今のアメリカの大統領、バラク・オバマもハワイ出身でございます。偶然に私の高校の同級生ですので、昔、彼をバーリーと呼んでいましたので、バーリーと同じぐらい英語が上手だと自信を持っておりますけれども、日本語は少しレベルが落ちるので、ご了承いただきたいと思います。

 では、始めさせていただきたいと思います。

 今日は、樋口様から、医学教育の卒前の教育についてお話しするようにと言われましたので、ほんとうは研修制度についていっぱい言いたいことがあるんですけれども、今日は卒前のお話に注目したいと思うんです。

 このスライドは、図で大ざっぱに、これは留年しないで普通に医学教育に進むことで、どのぐらいの年齢でどのぐらいのところにいるかということのスライドですけれども、日本のほうは左側に書いてあるとおりですので、6年間で医学部を卒業して、2年間の前期研修、3年間の後期研修。右側は主な試験を書いてあります。最近は4年生のComputer Based TestあるいはOSCEもあります。

 右側はアメリカのシステム。ご存じの方が多いんですけれども、まず4年制大学を卒業してから4年間のmedical schoolに入り直して、それから1年間internshipで、眼科医ですから、よく眼科のところでこういう話をするので、眼科は3年間のresidency、それからすぐに就職する、あるいは開業する方が多いんですけれども、もっと専門的な勉強をするためにfellowshipをさらにやる。

 右側は主な試験を書いてあるんですけれども、入学試験以外は、目立つのは試験がまず多いということです。医師試験は2日間のパート1とパート2、1日のパート3、3回に分かれているものです。眼科residencyの場合は、毎年試験があるんです。この試験は、専門試験の筆記試験と全く同じ試験を同じ日に眼科のレジデントも受ける試験です。専門試験はまた2つに分かれているんですけれども、筆記試験をパスしてから、またさらに面接試験があります。あと、眼科の場合は、更新試験も10年ごとにあります。

 米国の医学教育を10分でまとめるとするととても難しいので、6つの特徴を選びました。1つは、学生は4年制のliberal arts大学で学び、well-rounded、すなわちよいバランスの人間をまず目指す。その後医学の道を選ぶ人がmedical schoolに入ろうとすることです。

 2番目は、出願プロセスでは、コミュニケーション能力、倫理観が重視されているということですので、これらは教育科目にも入っています。

 3番目は、試験回数は多いんですけれども、最低限の知識を確認するためですので、ウエートが実は低いということ。後でもうちょっと説明します。

 4番目は、出願回数も多い。そうすると、競争させられちゃうシステムですので、みんなずっと頑張らなければいけない。

 5番目は、medical schoolのclinical clerkshipsでは、臨床行為が認可されている。これはもうよく知られていることです。

 6番目は、段階的な制度で、複数の大学や病院を経験する機会があるということです。

 1つ、もうちょっと詳しく説明したいんですけれども、まず1番目のwell-roundedの学生を医師へということですけれども、まず、4年制大学を卒業しなければいけないので、ほかに就職する社会人という意味合いで、わりとまじめな学生が次にmedical schoolに入るということで、そういうwell-rounded、バランスのよい人を医者にするという制度にはなっています。学費のために学生ローンを組む学生も実は半分以上ですので、かなり自分の努力で自分を医者にするという意識は高いと思いますので、結果的には、学生が早く成熟し、professionalismの感覚を持つことになります。

 2番目は、コミュニケーション、倫理を重視しているということですけれども、出願の段階では、面接や推薦状がかなりウエートを持っていますので、コミュニケーション力の高い学生を最初から選ぼうとするんです。medical schoolのとき、例えば練習の問診とか診察などがいろいろあったりするんですけれども、最初からできる学生を選ぶというシステムです。学問に関する倫理は高校から教えられている、例えば盗作はいけないとか、処罰することもあるし、medical schoolでは、さらに医学の倫理を教えることにはなっております。生涯教育の科目にも入っていますので、全体的には、医療現場にふさわしい医師を養成するシステムという考えで、こういうコミュニケーション能力、倫理観が重視されています。

 3番目は、試験の位置づけですけれども、これは、さまざまの段階でたくさんの試験があります。だけれども、相対的なウエートは実は低い。あくまでも勉強を促進するためであり、最低限の知識を確認するという意味合いになっています。

 共通試験以外は、大学レベルで学期中の試験、ミニ試験、クイズというんですけれども、もうしょっちゅうあるものですので、勉強を促進するためには重要と思われているんですけれども、これはすべてではないということです。

 4番は、段階的に出願するんですけれども、4年制大学に入るため、medical schoolに入るため、internshipに入るため、residencyに入るため、fellowshipに入るため、就職するため、各段階で出願が必要です。そうすると、毎回自分のやったことをアピールしなければいけないので、なぜ医師になりたい、そういう気持ちも確認する場面にもなると思います。先ほど申し上げたように、試験がすべてではないというのは、出願のプロセスでは、試験以外には推薦状、学校の成績、extracurricular activitiesというのはボランティア活動や部活動など、あと面接、ほぼ同等のウエートですので、試験がどんなによくても、それだけではHarvard medical schoolに入れるわけではないので、全体がよくないといけないということですので、競争を促進して、医師になる動機を高めるためには、こういう出願は結構大事な役割でして、次から次にハードルを与えて頑張らせるシステムです。

 5番は、これは皆様はよくご存じだと思うんですけれども、臨床行為が学生でも認められているということですので、高度な卒前実習訓練ができるシステムです。

 6番は、複数の大学、施設を経験する、これも有名な話です。私の場合はずっと1つの大学、ハーバードにいたんですけれども、例外ですので、ほとんどの方が全部の段階で違うところに移ったりするので。アメリカは国が広いので、イーストコーストからウエストコーストに行って、あっちこっちに行ったりするので、それがほんとうは普通です。大学側、病院側も、外部の人材を入れて外の考えを取り込むチャンスになって、全体的には、こういうような人材流動が促進され、全国の医学教育を均質化する働きにはなります。

 では、日本の卒前医学教育の現実、ここで言う必要はないんですが、まとめますが、米国に比較すると教員がやっぱり少ない。1人の教員には臨床、研究、病院経営の補助までの役割も期待されているという、たくさん仕事を抱えています。あと、医学教育の予算が少なく、将来増額するのも、期待はちょっと難しい。

 次は、6年制大学教育の大幅な制度変更は多分望めない。日本の研修制度に合わせる必要がある。こういうような現状があるので、私の個人的な考えでは、現在のシステムの中で、何とか効率のよい改革を行うしかない。

 教員の数についてですけれども、右側は私のHarvard medical school、母校ですけれども、比較するのは杏林大学だったらかわいそう過ぎるので、東大にしたんです。常勤の数は、東大はやっぱり少ないんですね。これはウエブサイトのオフィシャルなデータですので、多少ずれているかもしれないんですけれども、やっぱり少ないんです。Harvard medical schoolは10の附属病院を持っているので、そういう人たちも全部教員に入っちゃうんですけれども、やっぱりそのぐらいの規模で学生を実際に教えていますから、教員、学生の比率は、東大は0.54に対して、Harvard medical schoolは11.1です。

 下はちょっと余談ですけれども、女性の割合は、アメリカは全体的に多いので、Harvard medical schoolも45%でした。

 年間の学費も、これは国立と私立のHarvard medical schoolを比較するのはあまり意味がないので、下に小さい字で慶応義塾大学と書いてあるんですけれども、これだと多分Harvard medical schoolとそう変わらないので、やっぱり1人の医者をつくるためには、とてもたくさん投資しなければいけないということがこれでわかる。これはもちろん、大学のほうの投資とか、社会全体の投資は含まれていない数字です。ですけれども、これもこのグループに見せるのは恐縮ですけれども、日本は医学教育だけではない、教育全体に投資する金額はGDPの割合としては少ない。これはprivate publicのお金全部のコストですけれども、2008年のOECDのFactbookからとってきたグラフですが、日本はGDPの4.8%です。このグラフの左のほうなんですが、少ないです。トップは実はアイスランドなんですけれども、その次は米国7.4%。これは驚いたんですけれども、すぐ隣は韓国です。3番目は韓国です。隣の国で似ている面がすごく多いのに、これだけはすごく違うなとびっくりしました。OECDの平均は7.4%ですので、いかに日本が教育には投資していないということが一目でわかることです。

 最初の図に戻りますけれども、アメリカの4年制大学とmedical schoolを合わせたこの8年間を日本の医学部の6年間でやっているんじゃないかと思うんですが、私の目から見れば、とても無理なことです。医学部の5、6年生が今クラークシップで眼科に回ってくるし、見ていると、私がmedical schoolの3年目と4年目のクラークシップでやったことと、とても遠い存在というよりは、全然違うんですね。むしろ前期研修医がやっていることはアメリカのmedical schoolでやっていることに近いと思うので、このモデルをもうやめて、9年間アメリカで、要するに4年制大学、medical school、internship入れて9年間やっていることは、日本ではこの8年間、医学部プラス前期研修でやっていることに合わせようとしたほうがまだ現実的じゃないかと思うんです。同じ年齢では、大体residencyからスタートするので、専門的な勉強がスタートできるので、やっていることは、大体同じ時期にはアメリカと日本では同じなんですから、ただ、あまり無理やりに医学部で全部、アメリカの大学の中でやろうとしていることはしないほうがもしかしたらいいかもしれないと思います。

 あともう1つなんですけれども、医学部入学の段階で、日本は1回のフィルターで医師になる学生を選んでいるんですね。アメリカは、まず4年制大学、それから、medical schoolにも出願するので、2回フィルターされているんです。医師にふさわしい学生をどうやって選抜するのがいいかというのをちょっと考えていたら、これはただディスカッションを惹起するためのものですけれども、ちょっと提案をつくったので。例えば現在の医学部6年制から4年間プラス2年間とする。ほかの学部と同様に、例えば法学部に入学すると、その人は弁護士になる保証が何もないということと同じように、医学部に入学しても医師になるとは限らないシステムにする。入学の時点では決まらないということです。

 4年次の共通試験に加えて、面接、推薦状など、コミュニケーション能力、倫理観など、そういうものを評価するものも入れて、最後の臨床医学課程にする者を選抜する。これで勉強や競争も促進され、医行為への意識も高まると思います。

 4年制医学部を卒業する者も出てくるんですけれども、その方たちは普通に就職すればいい。医学の知識が詳しい人がほかの業界に、例えばマスコミとかバイオテクノロジー、ITなどのビジネス、政府などにも就職すると、医学、医療の社会的な理解も深まるんではないかと期待があると思います。

 以上です。ありがとうございます。(拍手)

○荒川座長  どうもありがとうございました。それでは、ちょっと時間をいただきまして、これから岡田先生にご質問なりご意見がありましたら、お願いいたします。いかがでしょうか。

○奈良委員  東京医科歯科大学の奈良ですけれども、どうもありがとうございました。

 1点確認したいというか、教えていただきたいんですけれども、よくアメリカの学生と日本の学生の大きな違いは、アメリカのほうがマチュアであると。4年間上に行っていますから、マチュアなのは当然だと思いますけれども、先生は両方の学生をごらんになって、マチュアリティーの問題といいますか、どのような印象をお持ちでしょうか。

○岡田発表者  そうですね。ただ、この問題は医学部の学生に限らないことなんですね。一般の大学生でも同じだと思うので。1つは、親からまだ離れていない生活で、大体皆さん大学に行くことが多いんですね。もちろん全部ではないんですけれども、多いパターンですので、それも関係すると思うんですが、医学部に関しては、やはり前に1回大学を卒業して、自分の同級生がみんなもう就職している、あるいはロースクールに行ったり、ビジネススクールに行ったり、いろいろ道を選んでいますよね。場合によって、結婚したり、子供もできたりしている生活になっているので、そういう大人の社会でメディカルスクールに入れるという考え、雰囲気ができ上がっているので、それは日本の事情と大分違うので。だから、日本の学生は、同じマチュアリティーを期待するのはやっぱり難しいと思うんですけれども、何とか頑張らせるためには、マチュアリティー、もうちょっと早く身につけるためには、医学部在学中の制度をつくらなきゃいけないかなと思っています。

○荒川座長  どうぞ。

○田中委員  同じく医科歯科大学の田中といいますが、ちょっと確認なんですけれども、卒業した後、1年目のインターンなんですが、医科歯科大学はハーバードと提携しているので、ハーバードの学生が来たり、行ったりするんですけれども、最近1年目というのは、こういうインターナルメディスンとか、そういうふうなものと限らなくて、専門をやることもあるんじゃないでしょうか。どうでしょうか。

○岡田発表者  一般的には、わりと医学では全般の勉強ができるものは基本だと思うので。例えば眼科あるいは皮膚科とか、そういうちょっと専門的な分野に進む人は、大体内科、外科、小児科です。ただ、たまに病理を1年やるとか、そういうのは一応許されてはいるんですけれども、あまり一般的ではないので、やっぱり医者としては、まず、例えば道にだれか倒れている人がいれば、そのぐらいの助けができる医者の知識がないといけないというのが一般的だと思うので、絶対というルールは特にないんです。

 あと、もう1つはインターンシップの1年間中はずっと同じ内科をやるんです。いろいろローテートはしていないので、やはり1つの科に所属すると、もちろんそこで責任を持つことになるので、ただ、内科ではこの病棟を3カ月、内科から救急外来へ派遣している内科医も3カ月やるとか、ICを3カ月やるとか、そのぐらいは少しローテーションというのはあるんですけれども、でも、ずっと内科の中ですので。

○田中委員  了解しました。

○荒川座長  ほかにいかがでしょうか。平出先生、お願いします。

○平出委員  京都大学の平出です。大変感銘を受けました。全くおっしゃっていることはすばらしいと思います。6年制を例えば4年プラス2年にするという考えには全く賛成です。4年間で終了する方に対する意味だけではなく、MD-phDコースへ行く方にも意味があります。研究者養成というすごく積極的な意味もあり得ると思うんです。

○岡田発表者  そうですね。

○平出委員  それで、1つ別なトピックで教えていただきたいんですけれども、教員のことをおっしゃいましたね。実は、韓国もそうなのですが、今、臨床教育のデューティーは大変なので、教育のデューティーについては別なサラリーを枠組みをつくっていますね。アメリカでもそのようにやっていると思うんです。その辺の日本との違いというのを教えていただければありがたいと思います。

○岡田発表者  サラリーの面は、大学勤務の医師は随分日本とアメリカは違うんです。ここでは、その話に入るとまたすごく奥が深いか問題が大きいんですけれども、確かに教育の分も一応テニュアとか次のポジションを得るためにはかなり評価されている分ですので、ちゃんとやっていないと、例えばアシスタント・プロフェッサーからアソシエイト・プロフェッサーになれないとか、最後にプロフェッサー、あるいはチェアマン、やっぱりちゃんと教育に貢献していないといけないんですけれども、ただ、わりと高いレベルの先生は、教育するのはメディカル・スクールではなくて、やっぱりレジデントかフェローなんですね。また、メディカル・スクールは既に大勢教員がいるので、メディカル・スクールの授業で講義するのが、あまり上のレベルの人たちではなく、結構下に大勢アシスタント・プロフェッサー、あるいはインストラクター、アメリカは普通就職するとまずはアシスタント・プロフェッサーだけど、ハーバードはインストラクター・ラバーがあるんです。その人たちも大勢いるし、あと、非常勤のスタッフも結構大勢いるので、その人たちも貢献しています。ただでやっているんですけれども、やっぱりメディカル・スクールで教えるのは名誉なことというので、みんな喜んでボランティアしてくださるんです。

○平出委員  わかりました。

○荒川座長  ほかにいかがでしょうか。どうぞ、小川先生。

○小川委員  岩手医大の小川でございます。大変すばらしいご発表をいただきました。1目のスライドで、パート1、パート2、パート3というのは、これはいわゆるステップ1、ステップ2、ステップ3というのと同じですか。

○岡田発表者  そうです。これ、ちょっとMEからUSMに直したところで、パート1、ステップ1にしたほうがいいんですけれども、昔はMB、MEだったので。そうですね。

○小川委員  そうですか。今、ステップ1でいいですね。

○岡田発表者  ステップ1と呼ぶことになっています。

○小川委員  それで、パート1というかステップ1は、メディカル・スクールの2年制が終わるときに、3年制にいくときにやるんですか。この時期ですけれども。

○岡田発表者  大体2年制の終わりぐらいです。ただ、それは上の学に進学するための条件では特にないんです。ただ、ステップ1をパスしないとステップ2は受けられないというのは事実ですので。

○小川委員  ステップ2は4年卒業時ですか。

○岡田発表者  4年卒業する前です。

○小川委員  前ですね。それで、ステップ3というのはインターンになってから。

○岡田発表者  の終わりごろ。

○小川委員  終わりごろ。

○岡田発表者  そうです。

○小川委員  それから、もう1点お願いしたいのは、次の2のスライドの5番目なのですが、クリニカル・クラークシップでは臨床行為が許可されていると。これは、許可をしているところはどこですか。ガバメントですか。

○岡田発表者  いや、大学病院であれば、それはちょっと法律上はどうなっているかよくわからないんです。調べれば多分答えが出てくるんですけれども、ただ、そういう臨床行為は、学生は大学病院の施設じゃないとできないことです。

○小川委員  大学病院の施設だけですよね。

○岡田発表者  そうです。そこだけでは一応認可されていると思いますのです。もちろん指導者のもとで。

○小川委員  それはもちろんそうだと思うんです。

○岡田発表者  そうですね。

○小川委員  日本では医師法、あるいは医療法がありますので、これはアメリカも同じだと思うんですけれども、多分臨床行為が許可されているということに関しては、その辺と連動してはいるんだろうなと思うのですが、もしわかったら後ででも結構ですから教えていただけると。

○岡田発表者  これはやっぱり法律を調べないとすぐにはお答えできないんですけれども、教育の一部としてこういう処置の教育とかも、要するに教育の中には入っているという考えはあると思いますので。

○小川委員  あと、最後にもう1点だけ。資料2で、先生のお書きになったものの右側の4年制大学というところで、まずアメリカはundergraduate schoolですから、4年制の大学に行かなければならないというところに、これはきちんと書いていただいているのですが、4年制といってもリベラル・アーツの大学ですよね。日本にはリベラル・アーツをやっている大学は1校もないんですね。

○岡田発表者  そうですね。それも書いてあるんですけれども、日本は何々学部に入学するので、それも後で出てくるものなんですけれども、アメリカでは何かの分野に専攻する、Concentrate major、あるいは、major、major in何とかというのがあるんですけれども、最初から学部にずっといるわけではないので、やっぱりこういうジェネラルな教育は非常に大事だという考えです。

 それは日本とはまた状況が違うことがここに説明してありますので。

○小川委員  ありがとうございます。

○荒川座長  どうぞ。

○吉村委員  吉村といいますけど、ありがとうございました。5番目のスライドですかね。クリニカル・クラークシップで主に内科、外科、小児科のローテーションと書いてありますけれども、これは、例えば救急に行ったりとか、あるいはほかのマイナーと言われるような……。

○岡田発表者  時間があったらもう少し説明しようと思ったんですけれども、必修は大きい内科、しかも長いんです。内科は必ず3カ月、外科は3カ月、小児科は3カ月。ただし、内科のローテーションの中、クリニカル・クラークシップの中では、救急外来についている内科の先生もいるし、あと、当直も内科の研修医と一緒に学生とするので、そこで救急外来から入院してくる、例えば小児科のクリニカル・クラークシップですと、小児科のインターンと一緒に当直して、学生が救急外来に入院してくる小児の患者を診察するんです。しかも、先に診察させてもらえるので、もちろん救急外来の医者の診察がもう終わっているので、だれも医者が診ていないことはないんですけれども、学生が入院の段階で病棟医、すなわちインターンと一緒に行くんですけれども、先に診察をして、ちゃんとカルテを記載するんです。それも認可されているシステムですけれども、必ずインターンも問診から全部やって、2人のノートがカルテに載るんです。2人も翌日の病棟のラウンドに新しく入院した患者した患者さんをプレジデントするので、学生がプレジデントするのが普通ですので。

○吉村委員  もう1ついいですか。

○荒川座長  はい。

○吉村委員  もう1つ、今日、たまたま午前中の会議で、ちょうどロンドン大学、日本人の方ですけれども、卒業して、ロンドンの研修を受けて日本に帰られた方がいらっしゃいまして、そのときに、いわゆるGPになるために、例えば1年生のときから週1回午前中だけ近所のGPのところに行くとか、そしてだんだん、5年、6年になるとほんとうに患者さんを診るようになるとか、そういう動機づけといいましょうか、そんなことをやっていると聞いたんですけれども、アメリカではそういうことは。

○岡田発表者  アメリカでもやっているのですが、私が卒業したのはもう20年前ですので、そのときはまだあまり取り組んでなかったんです。それから、どんどんそれも入れるようにはなっていますので、ハーバードでもやっていると思うんですけれども、ただ、詳しいことはわからないのですが。

○吉村委員  もう1つ、ちょっといいですか。

○荒川座長  ちょっと時間があるので、後でまた総合的にやりますのでお願いします。

○吉村委員  失礼しました。

○荒川座長  また後ほど一緒にやりましょう。

 それでは、奈良先生からお願いします。

○奈良委員  東京医科歯科大学の奈良でございます。私たちは、平成19年度から20年度にかけまして、文科省の先導的大学改革推進委託事業を受けまして、世界10カ国を回ってまいりました。28大学と保健省だとか、あるいはメディカル・カウンシル5施設を回ってまいりまして、今日はそれをご報告しようと思うんですけれども、ただ、28大学すべてを当然10分間でご報告できませんので、お手元に薄青色の冊子がありますから、それを後でごらんいただければと思っております。

 28大学あるんですけれども、どこ1つとして同じようなシステムで教えているところはないというところでありますので、医学教育はほんとうにどれがいいのかということはなかなか難しい問題であろうかと思います。

 今日は、主に卒前教育というのが重点でありますので、教育のシステムの外観だとか、あるいは入学、教育カリキュラム、教育の技法、評価、あるいは研究者の育成をどうやっているかということを、私が見てきたものをお話ししたいと思っております。

 海外の医学教育システムは、大きく分けると3つに分けることができます。1つは日本型というふうに書かせていただきましたけれども、高校を卒業した学生が医学部に入学して、5年間教育するところもあれば7年があるということで、そこに書いていますような国がこのシステムでありました。

 2番目がアメリカ型でありまして、今、岡田先生からご説明がありましたけれども、学士を入学させて4年間の教育を行う。アメリカだとかカナダが該当いたします。それから、両方のシステムをとっている国がありまして、併存型と書かせていただきましたけれども、私が見た中ではオートラリア、イングランド、アイルランド、韓国が該当いたしております。

 それぞれの教育のシステムのサマリーはこちらの表にありますので、これもすべてご説明するわけにはいきませんので、後でご参考にしていただければと思って、一応用意してございます。

 さて、まず最初に日本型医学教育システムとありますが、日本型と言いながら、日本のシステムをご紹介する必要はありませんで、ここでは主にドイツの医学教育システムをご紹介したいと思っています。

 ここでは、当然ながら高校の卒業者を医学部で教育いたしますし、入学の選抜ですけれども、これは日本では各大学における個別筆記試験というのに重点を置いているわけですけれども、私が見た限りでは、ほかの国ではむしろ高校時の成績だとか、あるいは全国共通の試験でもって入学を決めている。しかも、おもしろいことに、国によっては入学する大学も国が決定するというところがあります。すべてではないにしても、例えば入学定員の半分は国が決定するようなところもありました。

 医学部の教育というのは5年から7年でありますが、海外の諸国では、ほとんどが臨床医学教育を重視しておりまして、日本ではいわゆる教養教育というのがありますけれども、それは極めて短期間しかやっていませんし、あるいは行っていない大学もございました。

 さて、これからドイツのお話をさせていただきたいと思いますが、ドイツのシステムでは医学部は6年間ありますけれども、最初の2年間が主に、いわゆる基礎医学といいますか、前臨床教育でありまして、ここでまず国家試験が1回あります。あとは臨床教育とか、クラークシップを経た後、6年間で国家試験を受けて、その後トレーニングを受けて医師になるというようなシステムであります。

 ドイツでは、6年間の医学教育でありますが、1校だけが私立でありますが、あとはすべて政府所管でありますので学費は要らないということになっています。非常におもしろいことに、春に入学する学生と秋に入学する学生と2つありまして、結構1学年の人数が多くて、例えば後でお示しするシャリティ大学なんていうのは600人というふうに非常に大きな大学であります。女子学生の比率は年々増えておりまして、約半数であるということでありました。

 日本はドイツの医学教育を見習ったわけですが、ドイツでも教育力というのは非常に短くなっておりまして、1年目の前期のみというところがほとんどでありますし、その中でも、特に化学、生物学、あるいは物理学が必修でありますが、従来は総合大学でありますとそれぞれ専門の教師が教えたわけでして、今ではそういったあまり先端的なそれぞれの学問体系は必要ないので、医学部の教員が教える。例えば、化学であれば生化学の教員が教えているというようなことであります。

 一方で、リベラル・アーツも必要だということで、これは6年間の教育の中で希望した時期に選択できるようなシステムを持たせているところがありました。ドイツでは学士編入学だとか、あるいは4年制のメディカル・スクールは導入されていないし、当面はそういった予定はないということでありました。

 さて、入学でありますけれども、ご承知のように、ドイツではギムナジウムというところを卒業した後、アビトゥーア試験というのを受けまして、これが共通試験でありますが、これの成績に応じて医学部に入ることができます。

 さて、ドイツの医学教育の概略でありますが、先ほど申しましたように6年間ありますが、最初の2年間、これは典型的なひな形でありまして、すべての大学がそういうわけではありません。2年間は前臨床課程で解剖学とか生理学、生化学というものを学習することになっています。

 それから、3年から5年にかけては病理学、薬理学、内科学、外科学といったものを履修して、6年目には主に臨床実習を行って国家試験を受けるというようなことでやっております。

 これがドイツの旧来型であります。ところが、ドイツでも2000年ちょっと前ぐらいから、おそらく東西ドイツの融合に合わせてですけれども、極めて医学教育が改革されております。その典型的な例といたしまして、シャリティ大学というのがあります。シャリティ大学というのは、私も変な名前だなと思ったのですが、東ドイツのフンボルト大学、それから、ベルリン自由大学が統合した形で新しい大学をつくったということでありまして、シャリティというのはフランス語のチャリティーを模した名前だそうであります。

 ここでやっていることが非常におもしろいといいますか、ユニークですのでご紹介したいと思いますが、いわゆるHモデルと書いてあるのはHistoricalだと思いますけれども、これは旧来型のドイツの教育システムでございまして、これも現在でも走っているわけですが、一方では、新しいNモデル、Newモデルを行っております。これはどういうことかといいますと、入学したら最初から少人数に分けてしまって、PBLを中心にした実施を行います。

 それから、旧来型では、まず基礎医学を学んでから臨床ということで、セオリーとプラクティスが段階的でありますけれども、こちらのほうでは理論と技能が最初から統合した形でありますし、また、診療科別というんじゃなくて、分野も統合した形であります。それから、臨床技能の習得に重点を置いていまして、スキルスラボを用いたシミュレーション教育だとか、あるいはSPを用いたコミュニケーションスキルを身につけるということ。それから、患者との早期接触を行ったり、吉村先生からもご質問がありましたけれども、GPを育てるために、GPのもとで最初から内科とか小児科に外で学ぶというようなこともやっております。それから、評価でありますけれども、MCQで知識を問うんですけれども、OSCEでもって臨床技能を評価しているということも特徴であります。

 ドイツでは、2年修了した時点で1回目の国家試験があるわけですけれども、シャリティ大学については、ほかの大学とカリキュラムが違いますのでこれは免除されていて、6年後に国家試験を受けるということなっています。これまでに2回ぐらい卒業生がありますけれども、最初はこのヒストリカルなモデルと新しいモデルにそんなに差はなかったんですけれども、新しいものではニューモデルのほうが成績がいいということになっているそうであります。

 ちなみに、Nモデルのほうは、学生もこちらで教育を受けたいということで殺到しているわけですが、シャリティ大学は1学年600名でありますけれども、現時点では63名だけがこのモデル。つまり、1グループが7名で、9グループしかつくれないということで、パイロット的にやっているわけですけれども、近いうちにこのニューモデルについて評価を行って、おそらくこちらのほうに今後シフトしていくんじゃないかというようなことでありました。

 このリフォームド・コースのカリキュラムをここにお示ししていますが、前半は臓器別ですね。Locomotion、Cardio-vascular、Emergencyもここに入っていますね。それから呼吸器だとか、こういった形で臓器別のブロックごとでありますが、以降は人生の時期ごとにベビーから始まって学童期、成人というような形での教育を行っています。最終は臨床実習ということでカリキュラムがございます。

 次がアメリカ型であります。アメリカ型は既に岡田先生から詳しくご説明がありましたので、あえて詳しくは申しませんで、ただ、私が2点だけアメリカの医学教育で学んできたことをご紹介したいと思います。

 その1点は、シミュレーション教育であります。これはネバダ大学の例でありますけれども、これはスタンという愛称で用いているマネキンでありますが、これが非常に精巧でありまして、心肺機能がコンピューター上に出てくる。例えば血圧だとか、ハートレイトとか呼吸数、これがすべて出てまいります。これが学生です。この方が教員でチューターでありますし、この方はテクニシャン。2人ともこのスキルスラボラトリーの専任の教員であります。

 この人形が患者役でありますけれども、実はシナリオがつくられておりまして、私が見たときには、この方は腹痛で来院したという設定の患者さんでありました。こちら側に、窓越しに教員が入って、これはマジックミラーで向こうからは見えない、こちらからは見えるというだけでありますが、このシナリオにのっとって、教員というのは医師でありますから、非常に臨場感あふれて、いきなり「うぅ、うぅ」と嘆いて、腹痛でありますから、学生が「どうしたのですか」「いつからですか」といろいろ聞いてもなかなか答えないようなことで、非常にリアリティーに富んだ教育を行っておりまして、実際、処置をすることができるんです。例えば血圧が下がっている場合には、バーコードで薬剤を投入して、どのぐらい投与すると変わるとかいうこともシミュレーターを使ってできていることであります。

 それから、もう1つが岡田先生もご説明になった点でありますけれども、これはスタンフォード大学の例でありますけれども、複数の学位を取得するというのがスタンフォードでよくやられております。アメリカでは4年制の教育でありますけれども、スタンフォードでは4年間で卒業した学生が29%しかいないというようなことであります。3分の1を切っているわけです。というのは、留年したかというとそうではありませんで、医学部に在籍中にいろいろなところへ行っているわけです。例えばエンジニアリングの学校に行くとか、ビジネス・スクールに行くとか、ロー・スクールに行くと。こういったところへ行ってきて、そしてダブルディグリーを取って戻ってくる。大体40%ぐらいが卒業時点でMDプラスほかの学位を取ることで複数の学位を取得している。研究活動も極めて活発であるということで、我々日本の教育にも参考になるかと思って、一応ご紹介しました。

 それから、3点目が、高卒の入学者と学士の入学者を両方とも教育するというシステムがあります。これにも幾つかのタイプがありまして、1つは国内で高卒入学者だけを教育する大学と、学士だけを入学する大学というのがあるというところ。それから、同じ大学で両方の卒業生を受け入れている大学があるということで、一律ではありません。高卒者に対しては、5年ないし6年間の医学部教育でありますが、学士入学者に対しては一般的な4年間の医学部教育を行っております。

 たまたま同じ大学で両方のシステムがあるところでは、卒業の時点では成績にはほとんど差がない。つまり、どのシステムでも医師に育てるには問題ないということでありましたが、一般的な印象としては、学士入学で入学してきた学生のほうが勉学意欲が旺盛で熱心であるというようなことを言っておりました。

 その例でありますけれども、これはオーストラリアの例でありますが、オーストラリアでは高校卒業生に対しては5年ないし6年間の医学部教育であります。一方、学士に対しては4年間の教育であります。こういったシステムをとっているのは、イギリスだとかアイルランド、韓国が5年のところであります。

 これからオーストラリアの例を示したいと思っておりますけれども、オーストラリアとニュージーランドが合わせて21校、オセアニアの医学部。医学部長会議なんかも両方一緒にやっておりますので、まとめているようでありますが、オーストラリアには19校ありますが、高卒のみのところが7校、学士のみが10校、2校が併存しているところということであります。

 入学者の要件につきましても、高卒者に対しては高校在籍中の成績と、それから全国共通試験、プラス面接で入学者を決定する。学士については、学位を取った大学での成績プラス全国の共通試験、面接ということで入れておるようであります。

 さて、カリキュラムでありますが、これはメルボルン大学の例でありますけれども、こちらは高卒に対しては6年間の教育で、学士については4年半ということです。この1年間が、実はメルボルン大学では1年間、例えば学生に自由な研究をさせる。研究室に行って研究をするとか、あるいは海外に出ていろいろな勉強をしてくる。私どもの医科歯科大学にもメルボルン大学から来た学生がいましたが、いろいろなところへ出て経験を積んでくるということをやっています。ちょうどこの期間が学士に対してはないということでありますし、最初の半年間がスキップしているようなコースでありました。ですから、学生にとっては比較的入りやすいシステムであります。ただ、残念ながら学士の人たちは、これができないというのが非常に残念であるというようなことを言っておりました。

 オーストラリアでも、シドニー大学のカリキュラムの例でありますが、これは学士入学しかない大学でありますが、こちらではブロック制をとっているところがほとんどであります。

 さて、海外から見て、日本の医学教育をここで振り返ってみたいと思うんですけれども、たまたま東大の客員教授で来られた、北村先生のところに来られたと思うのですが、ノエル先生が帰られるときに、「日本の医学教育はガラパゴスである」というふうにおっしゃって帰ったということがありました。また、慶應に来ていたピッツバーグ大学のラオ先生は、非常に「日本の医学教育の中でも、特に臨床技能教育が著しく劣っている」というようなことを言って帰っておられます。

 似たような話があるなと思い出したんですけれども、20年ほど前に現役のメジャーリーガーのボブ・ホーナーが来たときに、帰るときに「地球の裏側にはbaseballではない、変な野球というスポーツがあった」というふうに帰っていますけれども、そんなように見られているのかなと思いました。

 なぜそういうことを言われるかといいますと、日本の医学教育も随分変わってきていますけれども、残念ながら、やはりまだ講義中心であるということ。しかも、欠席したり、遅刻したり、居眠りする学生があるということです。私どもの大学にもアメリカ人の客員教授が来ていますけれども、彼が最初の講義を担当したときにびっくりしたことは、居眠りする学生がいるということです。非常に不思議というかけげんな顔をしたのを覚えております。それから、日本では、残念ながら講座の縦割り、講座間の乖離がありますので、重複した教育が行われたり、かえって漏れがあったりするような欠点があります。

 それから、臨床実習は、今では診療参加型といいながら、やはりどちらかというとまだまだ教員の数が少ないということもありますけれども、見学型が中心であるということです。

 それから、試験につきましても、まだ大項目の筆記試験があったりというようなことがあろうかと思います。海外の医学教育がすべて進んでいるわけじゃなくて、日本の医学教育もいい点がたくさんあるわけですけれども、28大学を見るとこういった特徴があるかと思います。

 知識面につきましては、少人数のテュートリアル教育が活発に行われていますし、基礎臨床統合型カリキュラムで、ブロック制だとかハイブリッドの教育を行っている。成人学習理論に基づいた自己学習を進めていますし、そのためにはe-ラーニングという整備をしているということがあります。

 それから、臨床能力の教育が非常に盛んでありまして、入学した当初から導入しておりますし、また、コミュニケーションスキルだとか、あるいは診察技法の訓練。そのためにはSPsを活用したり、あるいはシミュレーション教育を活発にやっている。臨床実習は参加型であるということです。

 そうはいいながらも、研究者の育成にもつながっておりますし、アメリカでもMD-PhDというコースがありましたけれども、ドイツでもMD-PhDというコースがあるというふうに研究を行っていますし、メルボルンの例を出しましたけれども、選択コースがあって、1年間は自由な研究をやるということです。それから、国際交流が極めて活発でありまして、学生が自由に海外へ行ってきて勉強するということをやっておったというところであります。

 以上、ほんとうに駆け足でご紹介させていただきましたけれども、私が見てきた海外の医学教育をご紹介させていただきました。どうもありがとうございました。

○荒川座長  どうもありがとうございました。

 それでは、ちょっと時間をいただきまして、これはひとつご質問がありましたらお願いいたします。いかがでしょうか。どなたでも結構ですが。

 私が入試センターにおりましたときに、今、入試センターの研究部では、医学部の入試について研究しているわけでして、殊に共通試験をいっぱいやっていまして、そのときに国際シンポジウムをやりまして、たまたまイギリスとオーストラリアと韓国の人のをやったのですが、そのときに、3カ国の先生とも口をそろえて、なぜ学士入学に我々が踏み切ったかというと、やはり医師になる人間の成熟度、そういうことを注視しているんだということをおっしゃいましたが、そんなことはやはり先生もお感じになったんでしょうか。

○奈良委員  そういう点もあるかと思いますし、先ほど岡田先生が説明したのもそういう観点ですけれども、ただ、高卒者を医学部に、ほんとうに行きたいというモチベーションが高い学生は、若いうちから教育すればなりますので、必ずしも私は高卒者が悪いというわけじゃなくて、高卒者を入学させることはいいことだと思います。

 ただ、例えば入学させる入試制度だとか、入試センターのこともありますけれども、医学部に入学してからいきなりリベラルアーツを教えるんじゃなくて、もっと若い段階から教えて、そういったちゃんと鍛えられた学生を入学させるような入試を考えたほうがいいと思います。

○荒川座長  多分日本の中等教育に大きな問題があるということですよね。そこが難しい。

○奈良委員  はい。それを書いていただきたいと思っています。アメリカでもおもしろかったことは、MCATというのは大学に入学するための試験ですけれども、MCATに合格するのに、アメリカでも予備校があるんです。ですから、それはアメリカも日本も変わらないじゃないかと思ったんですけれども。

○岡田発表者  あるんですけれども、そんなに重要な試験ではないんです。

○荒川座長  どなたかございますか。はい、どうぞ。

○北村委員  東京大学の北村です。東京大学の客員教授のノエル先生のことを少し追加します。

 彼が日本の医学教育をガラパゴスと表現したのはそのとおりだと思います。ただ、ここに書かれているほど悪いことばかりでもなく、それなりにいいところもあるというので、要するに文化、伝統が隔離された中で独自の発展をしているという意味でもガラパゴスということで、決して頭ごなしに否定したわけではありません。

 そして、文脈から言うと、教育のリフォームのことについて言いたかったんです。どういうことかというと、どこかの国のコピーをそのまま持ってくればいいというものではなくて、ガラパゴス的発展をした国であれば、その文化、伝統をしっかりととらえて、ほかの国を学んだ上で、独自のリフォームを考えなければいけないということで、例えば、東京大学の医学教育の改革に関しても、独自のものをつくりなさいと。どこかのものをコピーしてくればいいというものではないということで、我々東大の教員の英知を集めたリフォームを計画しなさいという言葉でした。

 だから、ガラパゴスということは間違いはないんですが、だからアメリカのものをコピーしなさいとか、グローバルスタンダードに合わせなさいという意味ではないということをつけ加えたいと思います。

○荒川座長  どうもありがとうございました。ほかにございませんか。平出先生、どうぞ。

○平出委員  平出です。非常に詳細なご報告で、とても参考になりました。

 講義スタイルの教育についてお聞きしたいんです。先日、シンガポールで機会がありました。アメリカの2つの大学がアジアに進出しておりまして、デュークシンガポールとコーネルのカタールです。デュークでは、アメリカのノースカロライナのファカルティ(教員団)がシンガポールに来たら驚いたということです。なぜかというと、アジア系の学生は講義になじまない。質問をしないし、講義中に居眠りをするし、中には来ないやつもいる。それで、全廃にした、講義は全くなしにしたと聞いて私も驚いたんです。講義中に居眠りしたり……、私もよく寝ましたけれども、そういうことは日本では普通です。世界的な潮流では、そのときのディスカッションではオーストラリアからも2大学来ていましたけれども、講義を全部やめている大学は非常に少なかったです。他の国の大学ではどんな形で講義を取り入れて、昔風の壇上の聖人から学ぶというスタイルなのか、どのようにやっておられるのか、その辺を教えていただけますか。

○奈良委員  やはり講義が残っているところはたくさんありまして、アメリカなんかでも全部がテュートリアルじゃなくて、講義は講義としてありました。ただ、私はハーバードを見てきたんですけれども、おもしろいのがありまして、私が行ったときは血管医の講義をやっていたんですけれども、血管医のときに病理学者と免疫学者の2人が一緒に講義しているんです。これは病理学的にはどうだ、免疫学的にはこうだと、2人がかけ合い漫才みたいな感じでやっていた。あれは非常におもしろかったですね。学生もついつい引き込まれて、ハーバードも1学年200名近くでしたかね。

○岡田発表者  165。

○奈良委員  160名ですよね。それを3つのクラスに分けて同時にやっているんです。よくわからないんですけれども、だから、講演する人は別なんですけれども、50人ずつぐらいのクラスで同じテーマで。そうしたこともやっているというのは非常におもしろかったんですが、いずれにしても、講義は残っています。

○荒川座長  ほかにいかがでしょうか。小川先生、どうぞ。

○小川委員  大変おもしろく聞かせていただきました。こうやって海外と日本を比較しますと、他人の庭はよく見えるということで、いいところばかり、よそのものはすごくよく見えるわけなんですが、例えば、一昨年WHOからワールドヘルスレポートが出て、2007年版が出たわけですが、2007年版というのは2002年までのデータを解析したもので、2002年までのデータで、日本の医療は世界一であるということが一応クオリファイされているわけですね。私が非常に心配するのは、今度2012年版が出たときに、多分今ごろのデータを解析するんだろうと思うけれども、そのときには、日本の医療は世界一から転落している可能性は大いにあるなと。

 ということは、何を申し上げたいかというと、先ほど北村先生もおっしゃったことは非常に大事で、ただ単に他人の庭がよく見えて、よそのところが非常によく見えるものだから、それを伝統も文化も関係なく、ただ形だけ導入するということにいかに大きなリスクを伴うかということだと思うんです。

 ですから、やはり日本は独自にいろいろなことが、伝統と文化のもとでいろいろなものを育んできたわけで、この中に医学教育もあるわけですから、そういう意味では、外国の形で、伝統も文化も違うところで発達したものをただ単に持ってくればうまくいくかというと、そうではないということを、やはりこういう中で確認をしておくのが大事かなと思っております。

○荒川座長  ご意見として承ります。

 それでは、また後でしますが、先に進めましょう。名川先生も予定されていますので、お願いいたします。

○名川委員  東京大学の名川と申します。よろしくお願いいたします。今日は臨床実習につきまして、これまで文部科学省を中心に行われました検討事項、データをお示ししたいと思います。

 まず、この診療参加型臨床実習、あるいはクリニカルクラークシップというのは、今から20年近く前からずっと検討されておりまして、1991年にはいわゆる前川レポートというものが出ております。「医学生が医療チームの一員として実際の患者診療に従事しながら、実習を行う」「指導医の指導あるいは監視のもとに、許容された一定範囲の医行為を行い、医学生としての責任を負う」「将来、医師となるために必要な知識、技能および態度・価値観を身につける」という概念できておりました。

 その前川レポートの中に、学生が医行為を行うに当たって、この4条件を満たすべきであるというふうに記載されてあります。侵襲性がそれほど高くなくて、一定のものに限られる。それから、指導医による指導監督が行われる。3番目、これが共用試験に結びつくものですけれども、事前に医学生の評価を行うこと。4番目に患者等の同意を得て実施することというものでございます。この3番目のことから現在のCBT方式を中心とする共用試験が行われように至っております。

 2006年から2007年にかけて、文部科学省の高等教育局の医学教育課が中心になりまして行われました医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議の診療参加型臨床実習に関するワーキンググループというものがありまして、今回の委員でもあります田中先生、あるいは九州の吉田先生にも加わっていただいて議論したものでございます。これは6つの条件になっておりますけれども、基本的に前川レポートの4条件に、あとは6番目の「医学上相当と認められる方法で」とか、その辺が追加になっている程度で、大きく変わりはいたしておりません。

 それから、法律上の問題の解釈についてもディスカッションいたしました。日本の医師法17条には「医師でなければ、医業をしてはならない」とあります。ですから、まず学生が医業をできるのかどうかということですけれども、医師法2条によりますと、「医師になろうとする者は、医師国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受けなければならない」となっております。医師法9条によりますと、「医師国家試験は、臨床上必要な医学及び公衆衛生に関して、医師として具有すべき知識及び技能について、これを行う」となっておりますので、解釈からいきますと、学生がある一定の条件を満たしていれば、当然医行為を行ってよいということになります。

 それから、これは2001年に出されましたモデル・コア・カリキュラムの中に載っているものをそのまま持ってきたものでございますが、先ほど岡田先生から話のありましたハーバード大学のほうでは、1週間の臨床実習の量が合計で79.6時間ですか。それと比較しますと、本邦では33.8時間ということで、こういったこともあって、モデル・コア・カリキュラムが出ました2001年のときには、臨床実習の量を増やすような形で、50時間とるような格好にしております。

 臨床実習に関する調査検討、これはアンケート調査で行ったものですけれども、ちょうど第4回に石川先生がご報告されました内容と若干重複するかもしれませんけれども、これは全国で79大学に対して行ったアンケート調査で、アンケート調査の項目につきましては、そこにありますように、「侵襲的医行為の実施、医療安全を基本として行っているか」とか、全部で十数項目に及ぶものです。

 まず第1番目の質問の「侵襲的医行為の実施を、医療安全を基本として行っているか」、これは当然100%で出るかと思いましたら、そうじゃないというのが1校ありまして、全体で94.9%になっております。これは侵襲的医行為自身を行っていないので行っていないと答えた大学でありまして、医療安全を基本として行っていないということではないということです。

 それから、質問の2番目ですけれども、「医学生に侵襲的医行為を行わせることは必要か」という問いに対しましては、83.5%が「必要である」と。「必要でない」は16.5%でございます。

 質問3の「医学生に羞恥的医行為を行わせることは必要か」ということで、この羞恥的医行為というのはこのアンケート調査で初めて使われた言葉でございますけれども、患者に羞恥心を惹起させるような医行為という言葉として使われております。これでありますと、相当「必要である」という数字が下がりまして、58.2%で、「必要ではない」が39.2%になっております。

 それから、先ほど来、奈良先生からの報告でも出ましたけれども、「シミュレーターやスキルスラボ等の充実が必要か」ということで、これについては79の全大学が「必要である」と回答してあります。

 それから、いわゆるモデル・コア・カリキュラムの中に臨床実習としていろいろな項目、全部で百数十項目ありますけれども、どの項目が侵襲的医行為、あるいは羞恥的医行為に該当すると思われるかということで確認されておりますけれども、1番目に挙げられておりますのは、ちょっと小さい字で申しわけありませんが、「静脈採血の手順、部位と合併症を列挙し、正しく採血できる」、2番目は「尿道カテーテルの挿入と抜去ができる」、3番目は「胃管の挿入と抜去ができる」等々、このような順番で侵襲的医行為と考えるということが記載されております。それから、同様に羞恥的医行為と考えられるものにどういうものがあるかということですが、第1番目としては、「乳房を診察できる」、「直腸指診ができる」、「尿道カテーテルの挿入と抜去ができる」等々が並んできます。

 それから、その次は今の「考える」というところですけれども、実際にそういった臨床実習を実施するのか、しないのかということを問うたものが質問5であります。まず「実施予定あり」というものを順番に並べてみますと、実は侵襲的医行為とか羞恥的医行為が先に来るのではなくて、先ほど来語られていますように、態度、マナーとかコミュニケーションができるとか、その辺が非常に重要だということがわかります。1番目に来ますのが、「基本的診療知識にもとづき、症例に関する情報を収集・分析できる」という点が一番先に挙がっております。「実施予定なし」のほうを見てみますと、逆に「胃管の挿入と抜去ができる」とか、「尿道カテーテルの挿入と抜去ができる」とか、「乳房を診察できる」というような、いわゆる技能に関するもの、侵襲的医行為に関するもの、羞恥的医行為に関するものが来ていることがわかります。

 これは実際の事例紹介でございますけれども、ベテランの看護師さんが1回静脈採血をしましたら、神経を傷つけてしまって、2,419万円の損害賠償請求の判決が下ったということがあります。

 この辺のこともあって、実際、診療参加型臨床実習というものに対する考え方自身が少し違う。これまでいろいろな医療技術を学ぶために診療参加型にするといったように考えられてきましたけれども、実際はそうではなくて、一番目に来るのが医師としての職業的な知識とか思考法。それから技能も必要なんでしょうけれども、態度の基本的な内容がわかって、これを実践できる、この辺が一番重要だろうと。

 そのためには、信頼されるコミュニケーション能力が必要になってきます。これは当然独自ではできませんので、チーム医療の中で実践していくと。先ほど来話がありましたように、これはひょっとしたら医学部に入ってからでは遅いのかもしれません。家庭の教育、初等教育、中等教育等々が全部関係してくるかと思います。

 あと、臨床実習の責任体制を確立すると。これも非常に重要で、外科に行って、内科に行って、あと何々科に行ってというのが統一した臨床実習になっていませんと、効率的な臨床実習はできないということで、この責任体制の確立というのも1つ問題として挙げられました。

 それから、診療技能の向上のために、シミュレーターやスキルスラボを活用する、これも当たり前のことだと思います。それから、もう1つ取り上げられましたのは、地域の医療機関での実習でございます。これは、そのときヒアリングでお話をいただきましたのが、長崎大学の兼松先生からお話をいただいたと思いますけれども、五島列島のお話がありました。そこで患者さんに触れるということで、通常の大学では学べないような医療をそこで学んで、非常に感動を覚えるという話があって、この辺のことも非常に重要だろうということで、今から1年半ほど前でしょうか、これは福田先生が中心になってまとめられたものでございますけれども、モデル・コア・カリキュラムへの追記として、臨床実習という部分に、「体系的に遂行させる統轄責任者が必要である」といった部分、それから「シミュレーターやスキルスラボ等を活用して、学生の診療技能の向上と充実をはかる」、これを追記させていただいております。

 それから、これも非常にまだ不完全ではありますけれども、地域医療臨床実習ということを達成するために、学生さんに早いうちからアーリーエクスポージャーということで、保健・福祉・介護等を体験してもらうということでございます。

 あとは余談になりますけれども、外科医の医師の総数の年次変化を示しました。これは2006年の値ですけれども、全体としては20.7%の増加になっております。男性と女性に分けますと、男性外科医は減っております。13.4%。これに対しまして、女性はまだまだ数は少ない、1,000名強ですけれども、61.8%の増加になっております。これはすべての仕事にわたるものですけれども、労働力率、横軸に年齢、縦軸に就労率をとってありますけれども、諸外国、先進外国では逆U字型になっておりますけれども、日本ですと30代中心にそこの労働力が落ちるということで、M字型と呼ばれております。

 これを参考に、医師ではどうなっているのかというのを計算してみたものが次のグラフで、これは女性医師数率というふうに私が勝手に名前をつけましたけれども、分母に同年齢の女性医師の総数を持ってきまして、分子に外科の女性医師数を持ってくると。そうしますと、M字型ではなくて三角形になって、M字の右型がとれたような感じになっております。1回外科の仕事から離れますと、女性外科医はもう職場に戻ってこないということがこれで読み取れるかと思います。

 これに対しまして、眼科、皮膚科を合わせた数を同じように計算して、このグラフにしてみますと、これが逆U字型になるということで、今、やはり科によって女性の医師の働きやすさがあるんだろうと思います。

 これは保育あるいは妊娠、出産等で進んでいると言われていますフランスと日本を比べたものでございます。産休にしても、育休にしても条件が違う。それから、保育制度は日本と全く違いまして、向こうは2歳8カ月から無料で子供を預かると。いわゆる日本の義務教育の学校が7歳から始まるのに比べて、フランスでは2歳8カ月から始まっているという点が異なると思います。

 あまり時間がありませんので、詳しくは説明いたしませんけれども、日本の保育制度と比べると大分違って、妊娠、出産は女性しかできませんけれども、保育については男性でもできるということで、この辺の改革も、女性医師等がこれから活躍するためには必要であろうということだと思います。

 以上でございます。

○荒川座長  ありがとうございました。それでは、時間をいただきまして、どなたか名川先生のお話にご質問はございますでしょうか。どうぞ。

○福田副座長  名川先生、ありがとうございました。この前の協力者会議のときに先生のほうのワーキンググループでおまとめいただいたものの確認といいますか、今、やらなければいけないのは、このときに議論されて、まとめられた内容が今の課題ではないかと私は理解しております。

○名川委員  そのとおりですね。

○福田副座長  特に臨床実習における学生の医行為をどう考えていって、これから使っていかなきゃいけないというところで、ここの協力者会議のときの全大学へのアンケート結果は、先ほど名川先生がおっしゃったように、今まで考えられていなかったような視点が出てきたんです。これを改めて確認する必要があると。本来臨床実習はどうあるべきかという原点があらわれていますので、これを基準にして考えていただくのがよろしいのではないかと思います。

 難しいのは、診療参加型臨床実習を診療科単位でやらないで、やっぱり1つの大きな単位といいますか、まとまったブロックとして位置づけて、技能教育や態度教育が蓄積されていくようにやっていかなきゃいけないということだと思います。

 それから、もう1つは平成13年にモデル・コア・カリキュラムを策定したときのデータの話がございまして、実際これを調べたんですが、本邦平均20校で、週数として挙げてみました。そのときに、圧倒的に我が国の臨床実習が少ないということに気がつきまして、この当時は診療参加型を導入しているところは少なかったんですけれども、基本的に外国と比較すると、我が国の学生が臨床実習をやっていないという、そこだと思うんです。今、これがどれぐらい改善されているのかも調べなければいけないし、症例の経験とか、そういうこともかなりおくれているというのがこのときで、ですから、今、ご説明いただいたようなポイントに絞ってやっていくことがかなり重要じゃないかと考えています。

○荒川座長  今のお話の中で、全体を通して統括するというのは、具体的なイメージとしてはどういうふうなものですか。

○福田副座長  実はこれはこれから議論していかなきゃいけない話になりますけれども、要するに診療科単位で基本的には教授が卒業認定の単位を押すわけです。ですから、そこの科の臨床実習をどうやってやったかというのを含めてやっている、もっと細かくやっているところもあるもしれませんけれども、そういうパターンが多いんです。

○荒川座長  そうじゃないということですね。

○福田副座長  ええ。そうじゃなくて、臨床実習というのは1つの大きなブロックとして、責任者を置いて蓄積しながらやっていくと。

○荒川座長  そうすると、卒業試験なんていう名のもとに延々とやるようなものはなくしてしまうということですね。

○福田副座長  それをなくしていいかどうかはわかりませんけれども……。

○荒川座長  いやいや、そういうこともある……、実際には6年制のときの実習は非常に問題があったわけですからね。わかりました。

 ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

○田中委員  女性医師の離職というデータを見させていただいたんですけれども、この先生のスライドは、外科医をやめてほかの分野に行ったという意味でしょうか。

○名川委員  どこへ行ったのかわかりません。家庭に入ったのか、別の科に転科したのかわかりませんけれども、少なくとも外科を1回離れると、外科には戻ってこないということがわかると思います。

○田中委員  これは、外科学会に所属している医師の数ですか。

○名川委員  いや、違います。これは厚生労働省のデータベースから私が数字を拾ってきたものです。

○田中委員  要するに、医学部に入学する女子の数は非常に増えていますけれども、面接でどうして医師を希望したのかと聞くと、結構多い答えは「一生涯やれる職業だから」ということなんです。ですから、離職した後、どこかではやっているのではないかと期待しています。ありがとうございます。

○荒川座長  ほかにございますか。先ほどのお話で、先生からも出ましたが、全体として臨床中心だと、基礎医学というのがここでは一言も出てきていませんが、今の基礎医学の教育に対して、やっぱりここにおられる先生は臨床学の先生が多いんですけれども、ここはなかなか難しい問題で、これも触れざるを得ないということがあるんですけれども。

○福田副座長  これも前回の協力者会議の1つの大きな柱は、研究者、教育者をどう育成していくかというのが非常に大きな課題でした。これはお読みいただければわかりますけれども、コア・カリキュラムにも位置づけられましたのは、医師になる全員がそうなんですけれども、さらにその研究に突っ込んでいく、やっていく機会を必ず与えるということも記載してあります。

 それから、コア・カリキュラム以外に選択制のカリキュラムということが忘れ去られてしまっているのは非常に残念なんですけれども、当初つくったときに、13年のときの内容をもう1回読み直していただくとわかりますけれども、総論のところに選択制カリキュラムを思い切って導入してくださいと。例えばその当時臨床実習の選択制のカリキュラムをつくれるようになっているんです。当時、NICUを選択的に選ぶ人たちがいてもいいというところまで全部書いてあるんです。ですから、コア・カリキュラムということだけで、それだけが先走ってしまって、選択制カリキュラムをきちんと各大学の理念に基づいてやれるようになっているわけですから、それが行われていないというのは非常に残念で、基礎の研究も当然その1つで、東京大学でそういうコースをつくられたんじゃないでしょうか。ですから、そういうのは当然できるようになっていますので、ですから、一たんでき上がってしまうと、それに固執してしまって、非常にパターン化した教育になっているのはまずいなと思って、それはできるようになっていますので、今度盛り込んでありますので、ぜひご利用いただければと思います。

○荒川座長  あまりオロジーにこだわっても困るし、そちらも忘れても困るということのようでございます。

 3人の先生からお話を聞きましたが、それを踏まえて、6時まで時間がありますので、全体で皆さんのご意見を聞きたいと思いますが、その前に、今日は伴先生が参考資料を用意していますので、お話しいただけますか。

○伴委員  名古屋大学の伴でございます。参考資料に関するコメントは最後にちょっとだけさせていただくことにして、今までの皆さんのご発言を踏まえて私の意見を述べて、そしてそれに関連する参考資料に対して少し言及したいと思います。

 私自身は、1980年から83年までアメリカにレジデンシーで留学したときに、このときは今で言う研修医の2年目だったんですけれども、先ほどご発言の中にもありましたけれども、やはり臨床の教育は極めてプアであるということを非常に強く印象づけられて、せっかく6年間学んできて、さらに私の場合は1年間の研修を踏まえた上で行ったわけですけれども、それでも向こうの4年生の学生と勝負にならないという卒前教育を何とかしないといけないという思いを抱いて帰ってきて、以来二十数年間この医学教育関係にかかわってきているんですけれども、基本的には、先ほど岡田先生がおっしゃった9年間と8年間を対比させてというお話がありましたけれども、私は8年間と8年間を対比させたプログラムをつくっていかないと、アメリカの医学生の卒業時レベルに追いつかないという印象を持って、いわゆる入門実習、心肺蘇生とか身体診察法とか医療面接とか、そういうものと、それから今度はこのクリニカルクラークシップは、日本はすべての大学で全科ローテですから、そこでどういうふうにいわゆるアメリカでやっているようなクリニカルクラークシップ……、例えば、日本の中小企業の経営とアメリカのジェネラルモータースの経営と一緒の経営手法では当然できないわけですので、どういうふうにやっていったら実際の参加型にできるかということを考えてきました。

 それに関することが、お手元の参考資料1というところにありますけれども、このころは、もう荒川先生はお見えになりませんでしたけれども、私は川崎医大におりまして、総合診療部の臨床実習をクリニカルクラークシップスタイル、2週間しかありませんので、1カ月やるクリニカルクラークシップそのものにはなれないんですけれども、担当学生を患者さんに1人担当になってもらって、カルテを書いて、診察してという形でやっておりました。

 それで、このときにはもう前川レポートは出ていましたので、そのときに実際にどういう形でやれば患者さんがこういう学生が参加する臨床実習を受け入れるのかという、下の3ページを見ていただきますと、「患者さんが学生を歓迎する理由」というのが右の一番上にございまして、左の真ん中に「患者さんが学生を敬遠する理由」というのがありまして、これはすべての担当になった患者さんにお話を聞いて、今で言うインタビューによる質的研究ということになると思うんですが、下の3つ、「クリニカルクラークシップ実施の注意点」、1、2、3という形で、これはかなり手とり足とり的なアドバイスを各科にも使っていただけるような形でまとめたものですけれども、これをある程度注意しながら、学生が1人ずつ最低1人の患者さんの担当になると。

 もちろん1人の学生が3人、4人の患者さんの担当になってもいいわけですけれども、よくあるベッドサイドティーチング、ベッドサイドラーニングのスタイルは、学生が2人で1人の患者さんを受け持ったりとか、あるいは学生用のカルテを持ったりとかという形ではだめで、実際の患者さんを1人が1人でもって、実際のカルテに書き込むということが必要なんだという形でやってきて、幾らかの大学では、こういうスタイルでの学生参加というのが可能になったというお話を聞いております。

 それで、実際の臨床の教育の仕方というのは、やっぱり医学前教育、臨床前教育、臨床教育とこの3つのステップで言うところの臨床前教育と臨床教育というものをどうしていくかというのが、多分ここのこれからのテーマになると思いますけれども、今、いろいろな形での現状とか、これからの考え方というものがあると思いますけれども、やっぱりどのようにそれぞれの大学における状況とか、今の準備状態みたいなものを踏まえて、かなり柔軟に多様な形で取り組んでいかないといけないし、今まで諸外国でやられていないような場合には、オリジナルみたいな教育方法というものもやっていかないといけないんじゃないかと思います。

 それで、例えば最近地域枠の学生さんがいろいろな大学で採用されてということになりますと、先ほどのGPアタッチメントみたいな学習方法を上手に地域枠の学生にある程度少しパイロット的に試みて、そうすると、別にシミュレーターなんかを使わなくてもGPに、ぴったりアタッチして、1カ月、2カ月、そこの地域で診療していて、そうすると、当然診察もするでしょう、血圧もはかるでしょうし、あるいは包帯の交換もするでしょうし、もろもろの手技をする、あるいはサポートするという機会も出てくるでしょうし、そういういろいろな形、別に実技をシミュレーターを使わないとできないと頭から考える必要もないし、だけど、それは労働集約的な教育方法になりますので、全員にぴったり指導医がついた教育というのはできない。そうしたら、ある程度シミュレーションみたいなものも入れないといけないという形での教育が必要なのかなと思います。

 ということで、いずれにせよ、学生が教育に参加する、あるいは研修医が教育に参加するということだけで患者さんが非常に抵抗感を持つということに対しては、やっぱり私たちもこういうふうに学生、あるいは研修医を育てているんだというアピールが、やはり今まであまりにも少な過ぎたので、最近では研修医のドラマとかが出てきているようですけれども、いろいろな形で文科省、厚労省、大学、各病院が国民の、あるいは地域の人たち、住民の人たちに働きかけるということが必要だということで、そのうちの1つとして、この医学教育の39巻3号と書いてある参考資料2ですけれども、これは平出先生も参加しておりました、私たちが34回医学教育者のためのワークショップという形で、平出先生を中心にまとめて、これは医学教育誌ですから、あまり国民まで到達していないんですけれども、こういう形で少しでもアピールしていこうというのが、今、やっている動きです。

 以上でございます。

○荒川座長  ありがとうございました。これまで数回にわたりましてお話を聞きましたし、また、今日も4人の先生方からお話を聞きましたが、ここでひとつまた皆さんの自由なご発言をいただきたいと思っていますが、吉村先生、先ほど発言を控えてしまったんですが、どうぞお願いします。

○吉村委員  すいません。岡田先生に質問なんですけれども、先生、4年と2年に分けたらどうかという大変大胆なご提言で、実際には4年制の課程を終わると5年に行くわけですよね。ということは、4年生でだめということは、4年の課程を修了していないということにつながるわけですよね。ですから、もし分けるんだったら、また改めてそこで入学の手続とか、そういうことが必要になってくるという意味でしょうか。

○岡田発表者  そういうことです。1つのアイデアだけですので、この会議の準備のときに思いついたことだけですので、あまり深くは考えていないですけれども、ただし、何とかフィルタリングをもうちょっとできるような制度があればいいと考えていたので、大きい改革ではあるんですけれども、まだ6年制大学の制度の中ではできることではないかと思いました。

○吉村委員  今の共用試験は非常に厳しくして、例えば数例上げれば多分通らない人が出てくる。そうなると、その人は4年を修了していないということになってしまうんですよね。その辺がうまく解決できるととてもいいご提案だと思うんです。

○荒川座長  それは福田先生やっておられます。この共用試験の判定は各大学に任せるということ。しかし、これは全国統一基準が要るんじゃないかという意見もありますが、先生、何かありますか。

○福田副座長  前からその議論が続いているところで、この検討会でも、これからまとめの作業の段階でそのことが当然議論になってくると思います。大方の先生方は、入学してくる学生、あるいはその親のことを考えないで、大金を払ってと言ってはおかしいんですけれども、入学してくる学生もいますよね、適性はともかくとして。それを適性をふるいにかけるという目的として使おうというのはわからないでもない。ただし、それをどの辺のレベルで設定したらいいのかということ、それを途中でどこかへ振り向けなさいよといったときに、その法的根拠はどういうところにあるのか、これは我々がよく考えておかなきゃいけない。そうしないと、無用な混乱を引き起こす。

 それから、一方、そういう試験のルールを設定するというと、少なくとも今の共用試験では8割はできなきゃいけないというふうに想定してやっていますから、そこでレベルを見てみると、とてもそこまでいかないですね。平均点は80点近いよと、平均点ですよ。8割できなきゃいけなかったら、かなり落ちなきゃいけないので大変なことなんで、それをまた、そこで一番それではまずいと思うのは、例えば4年なら4年を卒業して、何も資格、何もほかへ転換するルートがないんです。ですから、みんな必死になってしがみつくという状況です。私立なんかは特にそうだと思います。やっぱり逃げ道はつくっておかないと、なかなかいかない。それをつくるべきだと。そういうことを総合して考えなきゃいけないというふうに考えております。

 いずれそういうのは皆さんのご要望がどうも強いようなので、それを決めるのは私どもではなくて、私どもの大学の委託と言ってはおかしいでしょうか、会員になっていただいて、共同で病院を提供する立場ですので、決めるのは大学であって、その法的根拠を検討するのは文部科学省、あるいは厚生労働省のお考えを参考にしなければいけない。それがまた国民の意向を得なきゃいけないというふうには考えております。

○荒川座長  同じことが入学試験のことでもって、どう見ても不適切で適正ではない、あれを変えたいときにどうするかということも前に議論が出ましたね。同じようなことが各段階でもあるわけです。でも、そういう議論があるということは、逆にいいますと、必ずしも適正に行われていないかもしれないという疑問もあるんでしょうか。これは大変なことですけれども。

○福田副座長  もしそれを言うならば、例えば大学を卒業させて医師国家試験の免許を与えた者が、例えば医療審議会でどういう判定を食らって免許を剥奪されたか、当然その辺のところも検討しなきゃいけない話で、ですから、そこは非常に難しいですよね。

○荒川座長  今日の議論の中で名川先生がお話しになった、この医療行為をどこまでやるかということをしゃっしゃっしゃとやってもらいたいということで、そのことは非常に大きな問題がありましたし、臨床研修全体を判断するというのは非常に大きな問題でして、ということは、逆に卒業試験の認定ということに対してもできますし、そういうことでして今日は大変重要なことが出ていまして、これについてどなたかご意見ございますか。

○平出委員  平出です。今、吉村先生のご提言のあった、4年間、医科学を修了した人はそれで認めていただいて、臨床に適さない人についてはそこであきらめてもらう道をつくったらどうかという考えには大変賛成なんです。医学教育センターを担う者としては、臨床に合わない学生を最終的にどうするかということはすごく大きな問題なんです。

 私の私見としては、岡田先生の提言のあった4年間の修了というのは、共用試験をOSCE,  

CBT以前で決めていただいたらいいんじゃないかと思います。OSCE、CBTについては、やはり臨床実習を行う者の一つの資格という位置づけでどうかと思うんです。

 実は、京都大学ではいろんな人がいます。コミュニケーションがうまくとれない学生がいまして、OSCEで仮進学にしたんですけれども、やはり病棟へ行ったらだめだったという人もいるんです。そういう方には、医療職以外のもっと別な道を用意できればいいなというふうに思います。

○福田副座長  今の点、よろしいですか。

○荒川座長  どうぞ。

○福田副座長  今の点は考え方が2つありまして、先生おっしゃるのは、この学生は、今までの経歴、学習態度とかを見て、臨床へ出していいなという判断は多分教員の方がされると思います。それを確証するために共用試験を受けていただく、これが1つです。

 もう一方は、そういう人たちをなかなか排除できないから共用試験を使いたい、これがあるんです。現実にこれは、ここで話していいことかどうかわかりませんけれども、歯学部はこれを使いたいと言っているわけです。

 実は、私は、前に大学にいたときは、このOSCEを使って、ビデオも全部撮ってありますから、模擬患者さんの意見も聞いて、こうですからあなたは適さないというふうにして進級をストップさせました。精神的にも少し病んでいた人なものですから、それで納得してくれて大学はやめましたけれども、そこまで来てやめるとなると、かなりの大変なことなんです。ですから、そこでどこかへ行けるようなポテンシャルがあればいいんですけれども、ないパターンのほうが多いんじゃないかと考えられます。ですから、そこの判断は非常に難しいところで、共用試験をそれに負わせるというのはちょっと酷なような気もします。そうなってくると、先生がおっしゃったように、それ以前のところでやる。

 そうすると、学校教育法自体を変えなきゃいけなくなってくるんです。教育制度そのものを4年制の大学の中で、途中で、じゃ、あなたはこういうふうにとなると制度としてすごい難しいことになるので、これは文科省の前から検討課題で、これはできない。

○北村委員  私個人の意見も固まっていなくて恐縮なんですが、先日の東京大学の教務委員会で話題になったことがそこにあります。留年させる、あるいはその先へ行かせないということに対して、その後の受け皿がないから留年させないとか、入学させた以上、卒業させる義務が大学にあるのかという、彼らも20を超えた成人ですので、それなりの到達目標に達していないのであれば、その後の人生を大学が保証する必要はないので、君は臨床に進むべきではないと、そういう判定を冷酷というか、日本人的感覚から言うと冷酷な判断なんですが、それをしていい時期に来ているんではないかと。

 殊に臨床医学は患者がいる世界ですので、そこに温情や大学が卒業させるということのために患者に被害が及ぶということがあってはならないことなので、ある意味、臨床に向いていない人はしっかりと厳格に落とす。そして、大学が卒業させるからには、国家試験の合否にかかわらず、その大学がこの人はいい医者になるという責任を持つくらいの覚悟で卒業させるべきで、一たん入学させたから何とかだましだましでも卒業させようという時代ではないんではないかというのが教務委員会の半々だったんですが、それでもやっぱり何とかやれば、後で化けていい医者になる人もたくさんいますよねみたいな会話があってなかなか結論は出ないんですが、そういう考えもあるというのは事実なので。

○荒川座長  ありがとうございました。

○田中委員  医者の適性を共用試験で判断するということでは、共用試験はCBTに関しては知識ですよね。思考力も試しますけれども、これでもって適性がないとはなかなか言えないと思うんです。

 それから、OSCEも診察主義、8ステーションのうちの7ステーションは診察主義ですから、これがうまくできなかったからすぐ適性がないとも言えないし、医療面接も、そのときうまく患者さんからお話が聞けなかったから、じゃ、適性がないのかというふうにもなかなか言えないので、共用試験をもってフィルタリングをかけるのはかなり無理があるし、社会的にも理解しがたいんだと思うんです。

 ただ、高いある一定のレベルで統一の判定基準をつくるのは私も賛成で、ただ、それに到達し得ない学生がいることも事実なので、私はやっぱり、今は2回しか受けられませんけれども、何遍でも受けられるようにして、それで結果的に留年なのかもしれませんけれども、時間をかけてでもあるレベルをクリアして次のステップに進むという形が合理的なんじゃないかと思います。

○荒川座長  わかりました。

○吉田委員  九州大学の吉田ですけれども、先ほど北村先生のお話で、前の前の第3回のときにカナダの医師国家試験OSCEのコミュニケーションスキルの点数とその後のカナダの2つぐらいの州だったと思いますけれども、そちらに苦情が来ると。日本でいえば、厚労省に電話かける、あるいは文科省に電話かける患者さんのことだと思うんですけれども、そういう率についてかなりコミュニケーションスキルの点数が苦情発生率に関与していたというJAMAの論文の件なんですけれども、あれと同じようなスタディーは、共用試験の点数といいますか、得点でできないことはないと思うんです。やってみる価値はあると思います。

 ただ、今の田中先生のお話に関連することですが、先ほどの北村先生の学生を留年させるのか、進級させないのか、医師になる道を断っていいのかどうかという話なんですけれども、おそらく共用試験のときには、もう次は臨床実習なんですよね。実は、コミュニケーションも含めたプロフェッショナリズム関するその人の資質というか能力については、もっとずっと前の段階、先ほどは入学する前の初等中等教育でという話がありましたけれども、その時点もありますし、入試のときにそれを何とか把握できるかというチャンスもありますけれども、入学した後、共用試験までの間にある程度、もし、ここであなたは終わりというんだったら、1年生あるいは2年生のときに、今あなたはどのレベルにあるのかというのは常に言って伝えておく必要はあると思うんです。これがこのまま、例えば5年生の最初の段階で、これぐらいできるんだったらいいけれども、こういうふうに話もできないようだったら、やっぱり進めないというのを1年生や2年生で伝えておく必要はあるんじゃないかと思います。その上でだったら、結局そこは学んでいないということは言えるんじゃないかと思いますけれども、いかがですか。

○荒川座長  そうしますと、入試の問題、1、2年の教育のときに、そこをいかに我々が効率化するかということが非常に大事だということですよね。

○北村委員  奈良先生に後で補足していただきたいと思うんですが、ドイツの場合、私が訪れたミュンヘンの大学は1学年600人が入学定員です。そして、順番に落としていくんですね。卒業時はほぼ100人ぐらいになっています。教育資源のむだ遣いといえばむだ遣いなんですが、適性のある人をそれだけのむだを使ってでも選ぼうという姿勢と言えばそうなんです。今回、皮肉でもなく、医学部の定員があんなに簡単にぽんと500人も700人も増やせるんだったら、初めから1割は落としますよとか2割は落としますよということでもっと増やして、その中から選んでいくのも一つの手かなという気はしますけれども。

○吉田委員  それが多分一番簡単です。我々は苦労しなくて済みます。だから、200人入れて、卒業を100人にして、その間、例えば居眠りしたら、あなたは留年とかそういうふうにするのが一番楽です。

○荒川座長  わかりました。どうもありがとうございました。

○奈良委員  北村先生から追加ということなんですけれども、私、オランダとかベルギーの例を紹介したいんですけれども、オランダでは6年間教育をやっているんですけれども、最初の3年間をバチェラーコースとして、後半をマスターコースにしていて、バチェラーを卒業した人が、例えばどこかへ行きたいという場合には、そこでフィルターかけるような制度になっているんです。ですから、そういった制度もあるからと思ってございました。

○荒川座長  もう一つの問題で、先ほど名川先生が紹介した侵襲的医療行為ということでいろいろ出ていますが、かなりある意味で抽象的な表現なんですけれども、もっと具体的に、例えばこれだけはこうだということが共通認識としては出ないんでしょうか、それがちょっと気になったんですが。

○名川委員  結論から言いますと、出ておりません。実際の採血できる針を刺す行為も、それほどの侵襲的な行為ではないということでモデルコアカリキュラムに乗った経緯がありますけれども、実際はそうではないと。これを削るという問題で、今から2年前、かなりそれに対する抵抗もあって、現在でも残っている。これが残っているためにやらなくてはいけないと思っている大学もあるんです。だから、その辺どうやって整理していくかというのが問題だと思います。

○荒川座長  絶対にやらんといかんものとか、その辺の仕分けというのがないと、現場ではなかなか苦労することもございますね。

○名川委員  ええ。それも約1年間ぐらいかけて議論しましたけれども、その仕分けがなかなか難しいです。

○荒川座長  なるほど。これはやっぱり難しいですね。

○福田副座長  ですから、そこは、前川レポートの中にあれが書かれて、それが一般化している。ところが、最近の医療安全の観点からすると、それについてクエスチョンマークになってきて、一方、研修医がいなくなったところは戦力として学生を使いたいという魂胆も見えている。

○荒川座長  そうですか。

○福田副座長  これは非常に危ないというか、だからやっていいんだという議論が、ここがちょっと……。

○小川委員  それはないよ、先生。

○福田副座長  もうないですか。

○小川委員  そんなことないですよ。学生を戦力で使おうなんて思っているところはないと思います。それは言い過ぎです。

○福田副座長  某大学協会からそういう要望がこの前の検討会のときに出たんですから、それは現実としてそういうご提案をいただきまして、そこら辺のところをうまく説明するというか、基準をつくる最終段階は具体例として挙げたいんですけれども、大学協会で臨床実習をどうやってやっているか拝見したときに、やはり共用試験を通っただけじゃ、適性、その他について一律に保証することはできない。それから、患者さんとの関係も考えなきゃいけない。患者さんが了解してくれて、指導医がきちんと保証した上でならばいいんじゃないかと、結局最終的には大学の判断でやっていると言っておりました。全くゼロではない。

○荒川座長  ほかに何か。

○田中委員  岡田先生にお伺いしたいんですけれども、私、アメリカの臨床実習はすばらしいということは認めますけれども、1つどうしても疑問が残るんです。それは何かというと、すべての臨床科を回らないわけです。ですから、先生が専門の医者で、眼科もおそらくほとんどのメディカルステューデントは回っていないんです。アメリカではその問題は特に議論されないんでしょうか。つまり、臨床現場を見ないで眼科も学んだことになっているわけですよね、メディカルステューデントは。

○岡田発表者  でも、最低限の目の診察は一般の内科の実習の中には含まれているんです。内科医でも眼底、直像で少なくとも乳頭まで見ないといけないというのが基本なんです。救急外来でこの患者さんが意識不明で頭蓋内高圧がないか、乳頭が膨らんでいるかどうか見るくらいの技術は一般のところで学んでいますので、だから、眼科まで回っていかないとそういうことはできないというわけではないんです。

 そこも日本では、最初、学生には教えられていないことが結構びっくりしたんですけれども、そういう今だと教えられているかもしれないけれども、少なくとも眼科に回ってきた段階では、学生が直像はやっぱり使えないということは、ちょっと驚いたんです。そういうマイナーの専門には、あまり一人前の医者になるためには、多分そこまで必要ないという考えです。

○田中委員  もう一つ臨床実習で全科を回りたいというのは、学生の側の結構強い希望もあったりするんです。その理由は、将来の選択肢として、実際臨床現場に出てみて、それで自分の適性とかそういうことも見たいというのがあるんです。それはアメリカではどういうふうにとらえられるんですか。

○岡田発表者  一応選択科目としては残っていますので、私はいきなり眼科に入ったわけではなくて、やっぱりクリンクアクラクシャと1カ月眼科医をやりましたので、3年目に1カ月やって、4年目でまた岩手で取れましたので、一応そういうのは選択科目としてはあります。ただし、眼科に最初から全然興味がない人は、眼科を全然回らないのは事実ですけれども、でも、そういう人は、先ほども申し上げたように、一応少しは目の診察ができるようにはなっています。

○荒川座長  では、小川先生。

○小川委員  多分、これは岡田先生に聞いたほうがいいと思うんですが、メディカルスクールに入学させるときに、アメリカのメディカルスクールはでかいアドミッションオフィスがあって、そして6カ月ぐらいかけて選抜しているという話も聞いているんですが、そうですよね。

○岡田発表者  かなり大きい組織でやっていることは事実です。

○小川委員  それで、この委員会で入学者選抜のことまで議論になっているということは非常に重要なことだと思いますし、特に私立大学では面接とか適性試験も加えて、そして入学者を選抜していると。国立大学なんかはほんとうに成績中心の順番だけで選んでいて、ほんとうに適性があるのかということを評価も何もしていないと。

○荒川座長  ちょっと反論……。

○小川委員  面接されていないでしょう。

○田中委員  してます。

○小川委員  全員していますか。

○田中委員  ほとんどの大学はしています。

○荒川座長  これは、じゃ、どうぞ。

○田中委員  面接のない国立大学のほうが少ないです。

○小川委員  そうですか。

○荒川座長  ゼロじゃないでしょうか。

○田中委員  ゼロではないですよ。こちらの大学は……。

○荒川座長  まだありますか。

○北村委員  東京大学は……。

○田中委員  やめたの?

○北村委員  やめたんです。10年間面接をやって、それを検証した上で昨年からやめました。というのは、むしろやっているところが、やったためにいい人をとったというエビデンスを十分出してもらえなかったというのが根拠です。

○荒川座長  先生、どなたが見ても、これはまずいという人は中にいないんでしょうか。東大へ行く人はそういうのはないのかもしれませんが。

○北村委員  こういうのを実は学生と先週ディスカッションして、先生が18歳のときに医師としての資質があると自分で思いましたかと、そう聞かれました。

○荒川座長  なるほど。

○北村委員  だれが見たら18歳のときに医師となる資質がある、なしということを判定できるんでしょうと。むしろ、東京大学のように成績だけできちんとやると、あいまいな面接を残さないほうが学生としては納得がいくんではないでしょうかと。逆に、医師としての資質を大学の6年間でしっかりと教育するシステムを東京大学は持っていないということを学生にしかられまして、確かにそうだと思っておりますし、ほかの大学もそうだと思うんですが、いわゆる科学を教えることはあっても、医師としての素養の涵養をするためのシステムをきちんと持っているところは少ないと思います。単発的にアーリーエクスポージャーをやってみたり、単発的にどこかへ行ったということはあっても、人格の涵養と言えば大きいんですが、そういうことを大学として取り組んでいる医科大学、医学部はまだ少ないと思っています。

○荒川座長  小川先生、一言。

○小川委員  この今までのディスカッションで非常にいいディスカッションをされていると思うんですが、例えば抜本的なことを考えると、昔から逆説的なこういうことを言われているんですよね。医学部に入れたら一番最初に臨床をやらせろと。それはインセンティブが上がると。例えば、教養科目から始まって、何で高校と同じことをやらなきゃいけないんだというのではなくて、一番最初に臨床をやらせて、その次に何で臨床がそうなのかという原理である基礎をやらせて、最後にリベラルアーツと倫理をあれして社会に出してやれという、こういう逆説的な話はずっと昔から何回も何回も繰り返しているんです。

 こういうふうな日本の医学教育がどうあるべきかということを広い範囲でディスカッションすることは極めて重要だと思うんですが、じゃ、今、我々がやっている医学教育カリキュラム検討会が何をミッションとしてあれするのかということになると、ちょっとずれるかなと。

 といいますのは、この会が発足したときに1月にお手紙を焼きまして、これはあくまでも臨床研修制度のあり方の検討会の結果を踏まえて、卒前・卒後教育の連携が重要であるから医学教育カリキュラムを見直しましょうということで臨床研修の見直しを踏まえた医学教育の改善、充実、方策というものを柱にしてこの委員会が立ち上がったので、医学教育が根本的にどうあるかということに関しては、これは1年で決着がつくような問題ではないので、これは医学教育課長にお願いをしたいんですが、長い期間で議論をするという医学教育のあり方の検討会と、今回の臨床研修制度の見直しから始まったいろんなことで近々の問題として卒前・卒後の教育を連動させてうまくやるんだという現実的なミッションとは違うんだということで、これは分けて考えていただいて、というのは、この委員会ももう5回を数えるんですが、どうも問題が広くいろいろ一般化していくだけで、一番大事なところである一番最初に来たお手紙のところからどんどん毎回離れていっているという気持ちがしてならないんです。

○荒川座長  先生、それは、実はこれからまだ3回ありますので、当然、先生のおっしゃることが最初のミッションなんです。その議論の中には、やはり問題意識の共有ということがあるわけですので、このヒアリングをする中において、こういう議論が出ても私はいいと、これからあと3回、4回とありますので、そこで先生がおっしゃることが決まっていくと思うんです。その間の議論としては、こういうふうに自由であっても、多分先生がおっしゃるミッションはそこなんです。でも、その前にこういう議論があっても決して僕はおかしくないと思いますし、ぜひそれは、これからまだ3回もありますので、だんたん行きますので。

○小川委員  おかしいと言っているわけではなくて、もう、こういうことは極めて大事であるということは認識をしておりますし。

○荒川座長  多分、皆さんからまたご意見も賜って、紙に書いて出せと言っています、そういうのを整理しまして、最終的にはそこに持っていくということだと思いますので、ぜひ。

○小川委員  わかりました。

○荒川座長  ほかにはどうでしょうか。

○福田副座長  荒川先生、先ほど大学のセンターといって、日本版のメディカルスクールを想定した共通試験を準備されましたよね。実は、あの問題を私、見せられたんです。こういう内容でどうだと。非常によくできている。大学入試センター、研究所でつくられている。これは一般教養から始まっておりまして、しかも自然科学系とヨウケイ、非常によくできております。これは、逆に言えばメディカルスクール云々ということは別として、学士編入学の共通試験として使う可能性はあるんでしょうか。あのまま終わってしまったのでしょうか。

○荒川座長  いえ、まだ研究部でやっていると思いますし、これはメディカルスクールにこだわらず、例えば医学部の2年から3年とか、あるいは学士枠とかいろんなところを使ってもらいたいと。それも日本独自のものではだめで、それで国際シンポジウムを何回もやりまして、インターナショナルでもどうかということで、そして今やっていまして、あれは、むしろだんだん皆さん使っていただければありがたいということです。

○福田副座長  具体的には、もう使った例はあるんですか。

○荒川座長  まだそれは聞いておりませんが、これはもうペーパーも出ておりますので。

 はてさて、時間がそろそろ6時まで来まして、この辺で終わりたいと思いますが、今の小川先生のお話のように、次からだんだん絞っていくことになりますが、今日、何かここでぜひ発言したいということは。どうぞ。

○吉村委員  もう一つお尋ねしたいのは、例えばステップ1とかステップ2とかステップ3に通らなかった方というのはどうなるんでしょうか。そういう方はいるんでしょう。

○岡田発表者  私の周り、ちょっといなかったんですけれども、いると思います。次のステップは受験できないという問題で、最終的には免許をもらえない状況にはなります。

○吉村委員  何%ぐらい。でも、まれというふうに考えてよろしいですか。

○岡田発表者  ちょっと調べておかないといけない。多分数%ぐらいだと思います。一応、医学部、メディカルスクールを卒業して医者にならない人ももちろんいます。ビジネススクールへ行って、私の学年にはどこかのウォールストリートの証券会社でぼろもうけをした人もいたりして、だから、必ずしも臨床をやるという人とは限らないと思います。

○荒川座長  どうぞ。

○奈良委員  今の吉村先生のご質問に対して、私の資料の46ページにUCSDの報告がありまして、ステップ1の報告は5%ぐらいと書いてあります。そこでどうするかと聞いたんですけれども、合宿をやるらしいんです。ほかの学生とかを集めて合宿して、結構な値段するんですけれども、それで今3回しか受験資格がないということ。ステップ2の合格率が3%ぐらいということで、ステップ3は比較的優しいということで、資料がございますのでご参考ください。

○吉村委員  ありがとうございます。

○荒川座長  どうぞ。

○北村委員  これはMCATの成績と相関するんですか。

○吉田委員  以前、MCATを運営している組織(注:米国医科大学協会、Association of American Medical Colleges,AAMC)の方が東京女子医大で講演をされました。結局、MCATの点数を横軸にとって、USMLEの点数を縦軸にとると、大学によって様子が異なる。ハーバード大などは、入学時のMCATの得点とUSMLEの得点が、かなり相関するんですけれども、プライマリーケア教育を重視しているような田舎の大学だとMCATの成績とUSMLEの成績が相関しない。要するに、入学後、MCATが下位で入学した学生もUSMLEの成績が伸びるという話を聞きました。

○荒川座長  それでは、今日はそろそろ時間も過ぎまして、終わりたいと思いますので、よろしいでしょうか。

 では、事務局から今後の予定をお願いします。

○樋口医学教育課長補佐  次回の会議は、4月3日の金曜日、16時から隣の3F2会議室のほうで開催する予定でございます。内容といたしましては、引き続き前回の会議の中で卒業生なり研修医のほうからの意見も聞くべきじゃないかというご議論をもらいましたので、それでヒアリングを予定しておりますが、中心としてはこれまでの意見の整理という話に入っていきたいと思っております。

 以上でございます。

○荒川座長  それでは、今日は終わります。どうもありがとうございました。

 

 

 

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