歯学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議(第17回) 議事要旨

1.日時

平成26年10月29日(水曜日)10時30分~12時30分

2.場所

文部科学省5階 5F7会議室

3.議題

  1. 医学教育の改善・充実に向けた取組について
  2. 諸外国の歯学教育の現状について
  3. その他

4.出席者

委員

江藤座長、一戸委員、川添委員、越川委員、小森委員、齋藤委員、西原委員、林委員、前田委員、俣木委員、三塚委員、山口委員

文部科学省

寺門医学教育課長、平子医学教育課企画官、島居医学教育課課長補佐、小野医学教育課課長補佐、關医学教育課技術参与、竹本医学教育課医学教育係長

オブザーバー

厚生労働省医政局 鳥山歯科保健課長、厚生労働省医政局歯科保健課 高田歯科医師臨床研究専門官、厚生労働省医政局医事課 青木試験専門官

5.議事要旨

(1)医学教育の改善・充実に向けた取組について

(座長)それでは議事に入りたいと思います。
  前回の会議では、今後議論を進めていくに当たって基礎情報として、文部科学省、厚生労働省から歯学教育及び歯科医療の現状について説明を受けて、続いて平成24年度より文部科学省の補助事業で実施しております歯学教育における分野別認証制度の導入に向けての取組状況につきまして、事業の実施推進責任者である東京医科歯科大学の荒木委員から説明をいただきました。
  本日の会議では、歯学教育と同様に、分野別認証評価の導入や、診療参加型臨床実習の充実に取り組んでおられます医学教育につきまして、それから歯学教育の現状について、これはその次でございますが、本会議で情報を共有して、今後の議論の参考にしたいということでございます。
  まずは、本日お招きしております千葉大学の中谷理事より、議題1の医学教育の改善・充実に向けた取組について、御説明を頂きたいと思っております。
  中谷先生、よろしくお願いいたします。
(理事)はい。それでは資料2をごらんください。
  全国医学部長病院長会議は数年前から、ここに書いてあります共用試験によるStudent doctor認定システムというのを始めております。これは診療参加型臨床実習に臨む前に、共用試験を用いましてその質保証をしようと、そういう形のものでございます。ここにいらっしゃる先生方にはもう御存じのように、日本の医学教育は幾つかの制度改革というのが行われております。文科省が主体になりまして、御承知のように平成13年度にモデル・コア・カリキュラムというのが医学領域では作られました。その後、何回か改訂が行われているとおりでございます。
  それから、平成16年度から卒後臨床研修制度というのができまして、それも一度改革が行われているということであります。
  平成17年度からは、江藤先生も今そこの副理事長をお務めですが、共用試験の本格実施というのが行われました。準備期間を経まして、トライアルを経まして、平成17年度から本格的に開始したと理解しております。現在、もうお話がございましたように、医学領域でも国際的な認証というのが必要になりまして、そこで診療参加型臨床実習を充実させなければならないというのは、内外から非常によく言われていることでございます。それに向けて今回、この質保証システムをスタートさせたということであります。
  医師国家試験、これは厚生労働省の管轄でございますが、4年おきに改善が図られているというものでございます。
  次のページをごらんください。私たちの一番大きなドライブの方針になりましたのは、ECFMG、これは米国、カナダなどで医師を外国人が、外国の医学部の卒業生が行う場合に取らなければならない試験でございますが、そこの事務局が、2023年度より世界基準の医学教育を行っていると認証された大学の卒業生のみが受験可能とすると。ですから、今までは米国で医師をする場合、どこの国の医学部を卒業してもその試験に受かればそれでいいということになっていたわけでありますが、東南アジアにたくさんの医学部ができてきた、あるいは南米、中南米でそういうものがたくさん出てきましたので、ある程度の大学の卒業生でないとこの試験は受けてはいけないと、そういう形でございます。
  2023年ということになりますと、そんな遠くはございません。しかしながら私たち医学教育に絡んでいる者たちにとっては、やはり国際的認証を取るような大学教育をしなければならないという必要性に迫られました。
  国際的基準というのは昔から、アメリカ医科大学協会、あるいは世界医学教育連盟というガイドライン的なものがあります。そういう必要条件というものが示されているわけであります。それに従いまして、日本でもやはり質保証、そういうシステムを立ち上げなければならないということで、全国医学部長病院長会議が、東京医科歯科大学の奈良先生を中心に、日本医学教育認証評価評議会、JACMEと私たちは呼んでおりますが、これを文科省からの予算を頂きましてスタートさせました。その結果昨年から、一番最初は新潟大学、今年になりまして東京医科歯科大学、夏には慈恵医科大学と千葉大学、そして今年度末までには東京大学の認証評価をトライアルとして行う、国際的な認証でございます、そういうことで、進んでいるところでございます。
  数年間に恐らく80医科大学、医学部が存在するわけでありますが、それを済ませなければならないということで、ある程度ハードな状況になるのではないかと、私たちは考えております。そこで求められるのは、十分な期間の診療参加型臨床実習が確保されているかどうかが一つの目安となります。それからコンピテンシーをしっかり定めて、卒業時に何ができるかということを十分評価する、Outcome-based Curriculumの構築、こういうものが一つの要件として見られるわけであります。
  日本の医学部の臨床実習の実態というのは、その下の図に書いてあります。1985年、1995年、2011年とまとめて、国立大学、公立大学、私立大学とそれぞれ書いてあります。もちろん徐々にこの週数は増えております。しかしながら、これでも足りないだろうと。カリフォルニア州では、72週の臨床実習が設定されているということがあります。72週というのは絶対条件ではございません。しかしながら、かなりそれに近いぐらいの週数の臨床実習が必要であろうということであります。といいますのは、私たちの医学生も、臨床実習の一環といたしまして外国の医科大学に臨床実習で行きます。そうしますと、知識の面では負けてはいないようでございます、しかしながら経験が劣っている。すなわち、もちろん英語で患者さんを診るという形で、語学のハンディーというのはあるにしましても、実際に患者さんを診るときにそういう基本的な臨床能力で劣っているのではないかということを感じて帰ってくるようでございます。そういうことから考えても、私たちはやはりより十分な期間と内容の臨床実習を、設定しなければならないと考えております。
  次のページをごらんください。これは御承知のように、歯科も同じだと思いますが、日本の医師養成システムであります。大体4年間ぐらい知識中心、座学を中心の臨床実習前教育を受けるわけであります。それが終わった段階で共用試験、実施評価機構がなさっていますCBT、全国統一のOSCEというものを受けまして、その後臨床実習に進むということであります。国家試験を受けた後、2年間の初期研修を行った後、後期研修あるいは大学院に入るというのが通常のパターンであると思います。
  私たちは、先ほど申し上げましたように臨床実習の充実化を図る前には、やはり十分な質保証が必要だろうと考えました。御承知のように医学教育カリキュラム検討会というのが平成21年、文科省の下に組まれまして、荒川座長が共用試験の位置付けを明確化し、統一的な合格基準を設定、合格者に一定の証明書を発行すべきだということを、もう既に平成21年の段階でおっしゃっております。それから医師国家試験の改革に関しましても、知識偏重を是正いたしまして、より臨床的な能力を評価できるような、そういう問題にしてほしいという方向性になっていることは御承知の通りでございます。
  全国医学部長病院長会議は、一定期間がたちましたら、いつもグランドデザイン的なものを作っております。そこにおきましても私たちは、共用試験合格を、臨床実習を行う資格と認定すべきだということを述べているわけでございます。
  次のページをごらんください。医療系大学間共用試験実施評価機構というのは、先ほど申しましたように共用試験を実施するために、約10数年ぐらい前ですか、設けられました。共用試験というのは医学教育モデル・コア・カリキュラムに準拠した、全国共通の標準評価試験というふうに言われているわけであります。医科学系でも80大学が全て参加して、学生が受けているという試験でございます。
  コンピューターを用いましたCBTは、基礎医学と臨床医学知識の総合的理解力を評価するものでございます。客観試験でございます。これは、通常やはりそれぞれの大学で行う時期は違いますが、全ての大学が参加して、その成績を受け取っているという状況でございます。
  OSCEというのは、基本的診療技能、態度を評価する試験でございます。これはオブザーバーとしまして他大学の先生が来て、実際に1日あるいは2日間ぐらいかけて、それぞれの大学の学生のこういう機能を判定しているという状況でございます。
  共用試験実施評価機構が主催いたしますCBT、OSCEは、今まで実はこのデータをどう使うかはそれぞれの大学に任されていた状況でございます。したがいまして私たちは、先ほど申し上げましたように診療参加型の臨床実習を行う前には必ず、その質保証というのをすべきだと思っておりますので、是非これを資格のデータと評価の基準として使いたいと考えたわけでございます。
  そこの下に書いてありますように、認定書を私たちがその合格者に対して発行いたします。それによりまして、学生の実習を受ける患者さん側も理解が深まりまして、十分な実習の期間とその内容が充実するだろうと、そういうふうに私たちは考えたわけであります。
  次のページをごらんください。ここに書いてありますのは、共用試験実施評価機構で出している経年変化でございます。素点というのは、トライアルのときは比較的そんなに高くはなかったのですが、正式実施をしましたらすぐ上がりました。御存じのようにCBTというのは、各学生の受ける問題の内容が違っております。ですから難易度を補正して、能力値という形で言われておりますが、IRTというのを出しております。それを正式実施から見ますと、最初の2006年の第1回は50であったわけでありますが、現在上がっておりまして、59前後を推移しているという状況でございます。
  私たちはどこに合格ラインを設けるかというので、非常に悩みました。委員会でもいろいろな議論があったわけでございますが、最終的には、その下のスライドにございますように、43のIRT、中途半端な値になっていますが、ここで切りますと約数%の学生、すなわち医師国家試験もこれは公にされているわけではございませんが、大体平均マイナス1.5SDというラインがあるかのように、うわさを聞いております。そういうことでは、それに近い値ですね。それから、再試験を設けませんと、学生がかなり大量に落ちる可能性のある大学もありますので、私たちは最初の1回目までは可としております。これは共用試験実施評価機構が再試験というのは大体年度末に集中してきますので、そこでこなせる人数として500人ぐらいは最終で受けてもいいだろうと、そういう値が大体IRT、43という形になります。
  ここに関しましては、当然のことながら医師国家試験の点数と、このCBTの点数は非常に相関がございます。それから、IRT43で落ちた学生は、実は20数%ぐらいがやはり医師国家試験に失敗しております。一方、それに合格した学生は2%程度の不合格率になりますので、約10倍違うというふうになります。あるいは、その後臨床実習をしたり、卒業時に判定をして留年する確率も、やはりそれと同じぐらいのパーセンテージがございまして、10倍ぐらいの高い確率で、IRT43に満たない学生は失敗している、卒業延期になっている、あるいは途中で留年している、そういう経過をたどっておりますので、まあまあ妥当な数字、妥当な最低合格ラインかなと思っております。
  次のページをごらんください。共用試験実施評価機構は、それぞれの大学のカリキュラムの進み方によって、行う時期は異なっております。そして、そこから各大学に送られて、そこで学生が回答いたします。1週間のうちに能力値、IRTというのが大学及び個人に送られます。しかしながらこのデータは、私たち全国医学部長病院長会議の事務局には送られてまいりません。それから各大学にはそのCBTとOSCEが通ったとしても、それぞれの大学の独自試験がございます。それに合格して進級しませんと、当然臨床実習には行かないわけですので、その3つの試験が合格したときに初めて、全国医学部長病院長会議の方に申請を頂く。そのときには私たちの大学の合格最低ラインは、CBTではこの点数ですよということを、実は報告していただく。そういう形になっています。そこが43以上であれば、私たちはそれについて合格の、後で出てきますが、その合格の証明書を発行する、そういう形になっております。
  そうなりますと、そういうものを受けた学生は次年度、あるいはその後にStudent doctorとして病院におきまして診療参加型臨床実習を行うということになります。
  下の方にまとめておりますが、CBTの統一合格水準を私たちは設定いたしました。それは能力値、IRT43と、それを推奨最低合格ラインとしています。大学の考えによってこれを50で切りたいと言えば、それもオーケーです。それは全然構いません。しかしながら私たちは、それ以上の学生に対しまして証明書を発行するということになります。
  それから、先ほど申し上げましたように、OSCEを客観的に行わなければなりません。そういうことで適正なものが必要であるということです。それから独自試験というのは当然ありますでしょうから、それに基づいて学生評価をしていただく、そういうことでございます。
  その縛りがないと困るということで、ホームページで各大学のCBT最低合格ラインを発表しようということになっております。昨年は少しばらつきがありましたので、実は全国医学部長病院長会議の総会で、各医学部長、病院長の先生方にはそのデータをお示しいたしました。ホームページにはまだ載っておりません。
  平成25年度はトライアル年度といたしました。実は平成26年度も実はトライアルをやっています。27年度から本格実施というふうに考えております。その理由は、少し後でお話しいたします。
  Student doctor認定証の登録というのは、やはり個人情報になりますので、エクセルファイルで厳重にいたしまして、書留とかそういうもので事務局の間を行ったり来たりして、最終的にカードを出すということになります。そこの下に書いてあるのは、昨年度に発行されたものでございます。学籍番号、Student doctor認定証の通し番号というのがついております。これはネームプレートということではなくて、飽くまで証明書という取扱いでございます。裏面には注意事項がございまして、有効期限は在学中に限るという表記を、今年度からは加えております。
  次のページをごらんください。80大学の登録データの提出時期はどうなっていたかということを示しております。これをごらんになって分かりますように、大体が3月、年度末であります。それより先に、7月ぐらいにやっている大学もございます。そういうことでやっています。
  それで臨床実習に進んだとき、その学生の称号はどうしているかということでございます。多くの大学は「スチューデント・ドクター」という片仮名あるいは英語で示しているものが多いように見受けられます。それから「メディカルドクターキャンディテイト」とか、「スチューデントフィジシャン」とか、「SD」とか、「臨床修練生」という大学もありますし、呼称はいろいろ違っておりました。全国医学部長病院長会議では、Student doctorという名前を使っております。
  そういう称号を与えてどういうことが起きるかというのが、次のページをごらんください。これは千葉大学の白衣式の全員集合の写真でございます。教員一人一人から白衣を与えられて、医療チームの一員として社会に貢献する立場になるという責任感を自覚してもらいたい。そして彼ら自身が誓いの言葉を述べていただきます。そういうことでStudent doctorという称号をもらって、心構えを持って、真剣に臨床医師に向かっていただくという、そういうセレモニーとしては非常に役に立つものでございます。
  ただ、その下にごらんいただけますように、Student doctorという名前を使いますと、ドクターと間違うのではないか、医師法第18条に抵触するのではないかという法的な懸念があります。そういうことで、学生なのにStudent doctorという名前を使うことが可かということにつきまして、実は教育側といいましょうか、医療側、附属病院側、19大学でアンケートをとりましたが、それに対してのトラブルはございませんでした。問題はなかったわけであります。しかしながら、患者さんがどういうふうに感じているかということが問題だという話もございますので、現在その各大学のStudent doctorという呼称を使っているところの患者さんを、一部でございますが抽出して、そういう呼称を使って問題を感じないかということについて、実は今、アンケート調査を始めるところでございます。
  最終的には、最後のページにございますように、共用試験検討委員会というところがございますが、このレベルでしばらくは続けていきたいと決まっております。
  実は平成26年度もトライアルになりました。実はCBTが、IRTが40とか、41とか、そこで合格とした大学が実は平成25年度にございました。これはどうしてかといいますと、学則にそういうふうに記載してあることがございまして、学則の変更がすぐさまできなかったということであります。そのために、平成26年度も実はトライアルとして、今年は現段階ではIRT43という形で申請されておりますので、今年はある程度いけるのではないかというふうには、期待しているところでございます。
  先ほど申し上げましたように、来年度総会で認められましたら、平成27年度からは本格実施という形にしたいと考えております。次に冊子をごらんください。この全国医学部長病院長会議では、医行為水準策定ということで委員会を、アドホック委員会でございますが作りまして、こういうことを決めました。これは札幌医大名誉教授の神保先生が中心となりまして、私もその委員の一人として参加させていただきましたが、こういうものを作りました。
  なぜこういうものを作ったかということでございますが、先ほど申しましたように診療参加型臨床実習を充実させるためには、医療行為をどこまでさせていいのかということが問題になります。医学系では有名な前川レポートというのが平成3年に出ております。しかしながら平成3年ですからもう20年以上の年数がたっているということ、それ以降、何度かそれに対する改訂ということで、最近では東京大学の北村先生が中心になって改訂を行ったわけでありますが、私たち全国医学部長病院長会議でも資格化、質保証ということをやったことを契機に、どれぐらいまでやるべきか、どういう安全性を確保して、今の医学生にどこまで許容できるかということを十分検討してみようということで、行った委員会でございます。
  そういうことで、侵襲性ということはもとより、昔から患者の羞恥心を惹起(じゃっき)するようなことはやはりまずいだろうと、そういうことは20年前から感覚が違ってくると思います。それから指導医というものはどういう立場の者がいいのか、そういうことも含めて検討したものでございます。
  2ページをごらんください。ここに書いてありますように、(1)学生に許容される医行為の水準はどこまでかということ、(2)臨床実習の指導医はどういうものか、(3)そこに至る共用試験を利用した医学生の評価をどのようにするか、それからもう一つは(4)患者あるいは保護者の方の同意と、万が一事故が起きた場合それをどういうふうに対応するか、そういうことを目指したものでございます。
  4ページにございますように、前川レポートというのは20年前ということ以外に、「状況によって指導医の指導・監視の下で実施が許容されるもの」という表現がございますが、状況がどういうものか、それから先ほど言いましたように、羞恥心というものは昔より重要なファクターになってきているということです。
  それから全国医学部長病院長会議でも、その修得をどういうふうにするかという評価も各大学に任せられておりますので、共用試験、少なくとも臨床実習のスタートラインでの評価は一定にすべきだというふうに考えて、こういうことで行っております。
  実際問題としてどういう形があるかということを、一つずつの項目でお話しいたします。
  私たちが作りましたのは、具体的には26ページをごらんください、表になっております。「訂正を加えた「医学生の臨床実習における医行為と水準」の例示」ということが書いてあります。レベルを2つに分けました。レベル1というのはこのページでございまして、指導医の指導・監視の下で実施されるべきものである、これがレベル1でございます。一般手技、診療の基本、これは要するに臨床推論等々の問題です。一般手技は皮膚の消毒ですとか、静脈採血もここに入っております。それから診療記録を書く。あるいは外科手技は清潔操作とか縫合、抜糸まで入っています。検査は尿検査等々、血液型判定とか、こういう形でやっています。診察手技では医療面接、診察法、耳鏡、鼻鏡うんぬんというふうに書いてあります。これが指導医の監視の下で実施されるべきだと。
  次のページをごらんください。「指導医の実施の介助・見学が推奨される」、これは見学でもいいということでございます。これはもちろんかなり難しいものがありますので、指導医がやっているところを見る、あるいはシミュレーターを使ってそういうものを経験するというような一段高い、指導医の実施介助ですから、「これを持ってて」といったときにそれを、手を添えて持っているとか、その程度なんです。こういうものがレベル2と考えております。
  この基は、もちろん以前のものを変えております。24ページにお戻りください。今まではこうでございました。これは前川レポートというのが真ん中にございまして、北村試案というのが一番左側でございます。そういう形であったものを少し見直して、現在のものにしたということでございます。こういうことで、医行為レベルを設定したということが一つ。
  もう一つは、どういう人を指導医にするかということも、もちろん問題になります。それは8ページをごらんください、ここに書いてあります。通常は、「指導医は実習生が医行為を実施していることを認識し、かつ必要があれば、当該医行為を直ちに制止し、あるいはこれに介入できる状況になることを要する」ということになると思います。7年以上の臨床経験を有する者、プライマリ・ケアを中心にした指導を行うことのできる経験、能力を有している者、こういうことを考えております。実際は屋根瓦方式と言いまして、研修医が実際にこれはこうなんだよということで、初期研修医とか、研修医が学生を教える場合もあると思いますが、それを否定するものではございません。しかしながら責任は少なくとも、こういう臨床実習の指導医が行う。当然その上に立つ者、医学部長、病院長が全責任をとらなければならないということがあると思います。そういうことで考えております。
  それから、呼称あるいは先ほど言った共用試験を用いた質保証というものは、その後にいろいろ書いてございます。
  最後に、同意書についてお話ししたいと思います。12ページをごらんください。これは以前から「どのような臨床実習の場においても、医学生である旨の明確な紹介及び患者等の同意を得ることが必要である」というふうに言われております。最近は昔よりもそういうことが非常に厳しくなったと、私たちは捉えております。ですから口頭による説明、あるいは病院の前に医学生が診ることがありますよというような掲示、それだけでは説明したとは認識されない、ですから包括同意、それから個別のより侵襲性が高いと思われるところに参加させる場合は個別同意が必要であろうというふうに考えております。それから学生自身がそういう意味で、誓約書を出していただく、すなわちちゃんとルールに従ってやると、そういうことが必要だと思われます。
  13ページの1、患者からの同意書の(1)が包括同意であります。そこの下に書いてありますが、これには臨床実習の意義とか担当実習医学生(スチューデント・ドクター)の資格及び能力、医行為の内容、医療事故などへの補償、担当実習医学生以外の学生が当該行為を見学することの可否、拒否する権利等も含めております。それから(2)個別同意も、やはり同じようにそういうもの、危険性、代替手段等を含めて記載しております。
  それから、2番は学生からの誓約書ということで、指導医に従って実習するということから、感染対策をする、医療安全に気をつける、個人情報の保護、守秘義務、そういうことを含めて注意事項がございます。
  これを全ての大学に強制するものではございませんが、こういうものがどういう形になるか、その例というのは28ページをごらんください。
  まず28ページには「診療参加型臨床実習に関する医学生からの誓約書」でございます。そういうことでここに細々と、臨床実習に進む学生にはこういう誓約書を書いてもらう。次のページをごらんください。「診療参加型臨床実習を行うに当たってのお願い」です。包括同意の説明文書が30ページに、29ページにはそれに対して「協力します」という患者さんの同意書でございます。次の31ページ、32ページにはその個別同意書というのが示されております。こういうことをやるということです。
  あと、何か事故が起きたときの補償でございますが、医療事故の補償は、実は医学生の場合は医学生教育研究賠償責任保険というのがございます。調べますと、80大学のうち防衛大学を除きまして全部入っているということでございます。指導医がついておりますので、そんな大きな、起きるとは思えませんが、万が一起きた場合にはそういうもので、やはり病院あるいは医学部長が責任を持たなければならない。そして保険等を使う状況になる可能性も、100%否定することはできないと考えております。
  ちょっと駆け足になってしまいましたが、以上、共用試験によるStudent doctor認定システムと、全国医学部長病院長会議で決めました診療参加型臨床実習のための医学生の医行為水準選定というものについて、御説明申し上げました。
  以上でございます。

(座長)ありがとうございました。大変ボリュームのあるものを非常に丁寧に、的確に御説明いただきました。
  それではまず、共用試験によるStudent doctor認定システム、これについて御質問、御意見をお伺いしたいと思います。

(委員)どうもありがとうございました。共用試験の歯学系OSCEの実施小委員長を拝命しております、東京医科歯科大学の俣木と申します。
  先ほど共用試験、CBTの成績結果の利用については非常に細かく御説明いただいたんですが、OSCEの結果はどのように使われているんでしょうか。

(理事)OSCEの結果ももちろん各大学で、先生御存じのようにモニターが行かれて、見て、それが妥当かどうかということがもちろん評価されていると思います。御承知のようにOSCEも合格しなければ、この証明書は発行しないという形になっていますので、ただ統一化という意味ではCBTはかなり客観的な、数値として出てきますのでいいのですが、OSCEの実際標準化は、江藤先生も含めていろいろ共用試験実施評価機構の方で、研修会とかFDをやって統一化に努めておりますが、それがどの程度、ばらつきが本当にないのかというのは多少問題があるかもしれません。しかしながらその大学でOSCEに合格したというふうに判定すれば、それはそのまま私たちは信じて証明書を発券する、そういう形をとっております。

(委員)各大学でのOSCEの再試率というデータはあるのでしょうか。

(理事)これは、私たち全国医学部長病院長会議では持っておりませんが、共用試験実施評価機構の方では、それは御存じでしょうかね。

(委員)恐らくそれは各大学になると思います。委ねられている。

(理事)ここに資料はございませんが、調査をすれば出てくるかと思います。

(委員)分かりました。はい、ありがとうございます。

(座長)今おっしゃったことはOSCEの、いわば合格最低ラインのような設定というのは、特にされていないということでございますね。

(理事)していません。はい。

(座長)ただし、OSCEを合格しないと、このStudent doctorにはなれないと。

(理事)はい。

(座長)その合格ラインに関しては、各大学に委ねられている。

(理事)任せています。

(座長)そういうことでございますね。

(理事)はい。モニターの第三者の先生が行かれているので、その方が一応客観性は見ているというふうには私たちは考えておりますが、それを強化しなければならないのかというのはまた、いろいろ考えなければならないと思いますけれど。

(座長)ええ、CBTと違いまして、やはり人が人をジャッジするわけですので、そこら辺のところを、CBTのように非常に明瞭な合格ラインを設定するということは難しいということでございます。

(委員)2つございます。とても分かりやすくお聞きいたしました。
  このStudent doctorということで、今はトライアルということですけれども、患者に向き合うとき、何か名札をつけるとか、見てこの人はStudent doctorだということを患者が分かるような何か工夫がされているのでしょうか。

(理事)恐らく各大学で校章を入れたようなネームプレートは、学生であるということを示すネームプレートは付けて診療に対応していると思います。大学によっては、これをネームプレート用にしないのかという御指摘がございました。全国医学部長病院長会議は、学部長あるいは学長の申請に基づいてやっていますので、ある意味では間接的な認証になります。そういうことではやはりその大学のネームプレートがございますので、それをお使いくださいと、そういうふうに言っております。ですからこれは飽くまで財布の中とか、いわゆる免許証と同じように、何か言われたときに呈示をするという形だとは考えております。

(委員)ということは、白衣姿を見て患者が、この人は研修医で、この人はStudent doctorだという区別はなかなかつかない。

(理事)それはもうネームプレートは、学生と恐らく医師とは違っていると思いますので。それはもう付いていると思います。
  それから、もちろん面接で「私はこの大学の医学部生です」と、自己紹介をするときに確実に言わなければならないというのは、いろはのいでございますので、それはそういうことでやっていると思っています。

(委員)もう一つよろしいですか。資料2の12ページに「共用試験全国統一質保証システム」「適正なOSCEの実施と評価」というふうにございまして、その少し前の8ページのところにStudent doctorとして資格化することにより国民、患者の理解が深まるというふうに書いてありまして、今までのCBT、OSCEとちょっと違ってきている位置付けになるのかなという気がしていますが。ただ一部報道にもあったように、OSCEの試験問題の漏えいみたいなことが実際に起こっていて、ちょっとそこの調査に関わらせていただいて、いろいろ中を拝見しますと、学生のOSCEに対する倫理観というか、試験に対しての向き合い方というものにちょっと問題がある傾向が、全体とは言いませんけれどもそうことをちょっと、危惧を抱いています。
  今回このStudent doctorということを導入するに当たって、大学から学生に対しての試験の向き合い方みたいなものが、これまでとはちょっと違うような、何か働き掛けみたいなものというのが改めて行われているのでしょうか。

(理事)CBTに関してはアナウンスメントされていますので、勉強しないと駄目だよねということで一生懸命勉強すると思いますが、先生おっしゃったようにOSCEというのは、やはりリクワイアメントになるものというのは、それはもうどの年でも恐らく最低限の、インタビューの対面の仕方とか、腹部をどうやって触って診るのか、聴診をどうするのか、かなりこれはその年によって、恐らく変わるものではないと思っております。もちろんそのステーションで漏えいというのは恐らく、何を聞かれるよというのが次の学生に伝わってと、そういう問題なのかもしれませんけれど、だけど基本的なものができるということが一番重要だと思っております。ここはもう入り口でございますので、例えば立っておなかを触る人だったらそれでアウトですから、それはもう臨床医師に進めないという、何も分かっていないという、そういう学生は恐らく絶対進級していくことはないと思っておりますので。
  そこら辺と、あとは模擬患者さんをやり、SPさんですか、来ていただいて、どこの大学でも今はやっております。やはりそれは私たちの大学でも昔ありましたが、この学生さんがもし医師だとしたら、今度はかかりたくないと思うというところにチェックをされましたら、その学生は留年しました。ですからインタビューでも、変なことを言ったりする人は、10年に1人とかそんなレベルなのかもしれませんが、そういう形ではじくということは、恐らくどこの大学でもある程度やっているのではないかという気はしております。

(座長)山口委員の御質問ですけれども、要するに、本来到達度試験として導入された共用試験が資格試験化を始めたと。その辺のところの認識が、学生にまだ十分徹底されていないのでないかということでございますね。

(委員)そうですね。

(座長)ということのようです。ところが、全国紙が取り上げたということは、これはもう資格試験と多分マスコミサイド、国民サイドは見なしているということで、到達度試験であればあれだけの報道はしなかっただろうと。ところが資格試験化しつつあると。それでどうしてそれを厳格に実施しないのだという論調だったんだろうと思うんですね。多分、山口委員の質問はそういう背景でございます。

(委員)済みません、どこまでここで言っていいのかが分からなくて。(笑)追加でちょっと物が言えなくなったので、ありがとうございました。

(理事)おっしゃるとおり、これまでは共用試験は単なる到達度試験で、大学によっては全く利用していない、進級の判定にも、ただ受けてくださいという形でやっていたわけです。ただ、この根底には恐らく、共用試験を始めたときから全国的に一緒にやるのだから、これは学生の評価でやはり統一的な合格水準にした方が、患者さんも安心でしょうと、そういう意味はあったのだと思います。

(委員)一つ加えるとすれば、今おっしゃっていることはとてもよく分かるのですけれども、実施体制が、例えば下の低学年の学生さんを使って設営を準備させるとか、そういう体制が見直されないままに、まあ、人が足りないということもあるんでしょうけれども、そういうふうな実施体制が、資格化しているにも関わらず、試験問題が事前に漏れるような体制のままに行われている大学が。

(理事)ああ、何となく分かりました。下の学生が模擬患者に近いような形でやったら、やることが分かるでしょうと、そういうことですかね。

(委員)いや、模擬患者だけじゃなくて、例えば課題を貼ってあると、それこそ今はもう写メールで送れるわけで。

(理事)それはやはり歯科の分野でも同じではないかと思います。基本的に要求されるものは、どこで身に付けても私はいいと思っています。ですからそれができれば、教員の前で何か、どういう課題を出すかはあれですけれど、それが本番でできるようになれば、それはそれでオーケーだと思います。医療技術の最低限のレベルですから。ですから、それは教員が指導するのか、先輩がこういう問題が出たよ、来年恐らくこんなこと聞かれるよというので、多かれ少なかれそれは当たっているんだと思いますね。でも、医療技術の本当の基本のきですから、それがそういう形であれ身に付いていればオーケー、そういうふうに私たちは考えています。ですから、例えば本当の能力試験でペーパーテストが漏れるといったのとは、ちょっと意味合いが違うのかなと。実技試験ですから。そういうふうに考えています。

(座長)漏えいの問題につきましてはまた改めて、報告書が出ますのでよろしくお願いいたします。

(委員)医道審議会医師国家試験改善検討部会で、全国医学部長病院長会議の代表の方からお聞きしたという経緯も踏まえて、お聞きしたいことは診療参加型臨床実習の前のOSCE、CBT共用試験のお話がございましたけれども、アドバンストOSCEが平成25年の段階で、記憶に間違いなければ54大学で実施しておられて、29大学が卒業の要件にしていると。ただし我が国の場合は、OSCEに掛ける時間が大変短くて、アメリカの場合OSCEが国家試験になっていますので、25分のベースを12ステーションすると、休み時間を入れると8時間1人に掛かっている。それを9000人にするのかというと大変難しいと。とはいえ、アドバンストOSCEはどんどんどんどん数が毎年増えていますので、しかもそれを卒業の要件としていらっしゃる大学も飛躍的に増えていますが、これを早晩義務化というか、80大学に全て行うような方向なのかどうかということが一点と。
  イギリス圏はもともと国家試験がないという、また別途のことがあって、ECFMGが求めるものに早急に合わせないといけないという、そういうこともあったのですが、一方で例えばフランスなどは、卒業試験が全国共通にやられて、しかも非常に厳格で1位からずらっと並べられて、1位の者はフランスのどこで何をするかということまで選択していくと。となると、非常に1点の差というのが厳しい。ですからまさにそういう点数、知識偏重の部分が残されていますよね。だから確かにこういう差し迫ったものはあるんですけれど、長い歴史の中でフランス圏、ドイツ圏、発展途上国がどうでもいいというわけではないですが、とはいえ発展途上国はどうしてもどこかに倣っていきますので、フランス、ドイツというのは今後どういう方向で行かれるのか、やはりこういうスタイルになっていくとお感じでしょうか。

(理事)フランス、ドイツの動きが、今、先生がおっしゃったように点数でレベルが決められてという、米国でもある種の専門医は、ある程度能力が高くないとそこの科に行けないとかいうこともあるようですが、幸か不幸か日本ではそういうことがなされておりません。ですから、将来的にそういうような、今、マッチングというので独自の学力試験をやって、その大学あるいは病院が採るかどうかというのはなされていますが、その程度ではないかと考えております。
  ですから日本で能力を判定する形に、そういうふうに客観試験を使われるかどうかというのは、恐らく私はないのではないかと思います。フランス、ドイツも、それが今の方向が是正されてといいましょうか、日本型になるのか、それとも点数至上主義といいましょうか、それが続いていくのかというのが、どういう方向に行くか、私自身はちょっと想像できない状況であります。
  それから、最初にアドバンストOSCEについて御指摘いただきましたが、おっしゃるとおり医道審議会の国家試験改善検討部会ですか、そこでも言われていますように、今後増えていくと思います。ただ、これをやるのも、先ほど山口先生から少し御指摘があったように、より国家試験に組み込まれるようになる、あるいは卒業試験に組み込まれるようになると、もちろん客観性というのが求められると思います。そこら辺は、この間全国医学部長病院長会議と共用試験実施評価機構との話合いでもございました。アドバンスOSCEの方にむしろ重きを置いて、そちらの方に精力を注(そそ)ぐべきでないかと、共用試験実施評価機構の北村先生からお話がございました。将来的には恐らく両方をしっかり、共用試験実施評価機構みたいなところがクオリティーコントロール、OSCEというのは先ほど御意見がありましたようになかなかクオリティーコントロールの難しい試験でございますが、それでもFDをしっかりやって、そういうものをしっかりできるように、それで判定するという評価法が出てくる可能性がございます。
  そうしますと、それをどこがやるのか、厚生労働省が知識研と一緒にやるかどうかということは、まだ課題が残ってそれは全然決まっておりませんが、将来的にはそういう臨床能力というのをかなり評価の部分に入れて医師国家試験をやるという、方向性が出てくるのではないかというふうには考えています。私たちが今やっているのは、その臨床前の評価をする。臨床に進む前に評価するということですから、ベースをやはり底上げをしませんと、卒業時OSCEも、やはり改善というかしっかりしたものが出てこないと思いますので、しばらくはこれで行いますが、将来的にはやはりそういうものが望まれてくる時代が来るのではないかと思っております。
  小森先生のことに全部お答えできたか分かりませんが。

(委員)いや、ありがとうございました。

(座長)小森先生、ありがとうございます。
  ちょっと追加いたしますと、小森先生の御質問の背景には、アドバンストOSCEというのは東大の北村先生からポスト・クラークシップ・イグザミネーションというふうに直せと、(笑)ついおととい注意されたばかりなんですが。ここではアドバンスOSCEと使いますが。日本医師会の報告書の中に、アドバンスOSCEをもって国家試験にかえよと、そういった報告もございます。
  日本の臨床実習の一番のネックは、入り口でOSCEをやるけれども、出口でいわば臨床実習の試験をやっていない。国家試験は知識と技能の試験にも関わらず、知識しか試験をしていないと。ですから卒業時も、卒業直後の国家試験も、実技の試験が抜けているというのが、日本の医学、歯学の試験制度の一番の問題であるという背景がございまして、今、小森先生が御発言されたんだろうと思います。ですからそれをどうするんだと、そういうことでございます。
  それから、ついイギリス、アメリカを見てしまいまして、ECFMGが、これは釈迦(しゃか)に説法ですが、中谷先生が話された背景というのは、今は9000人の医学部の卒業生のうち、ECFMGを受けるのは100人以下でございますね。

(理事)そうですね。80人ぐらい合格者がいると聞いております。

(座長)だからそういう状況の中で、このアメリカの制度をフォローするような議論が先にあっていいのかということもございます。そういった形で今、中谷先生はお話しになったのではなくて、国際基準というものの一つの指標としてお話しになったということでございます。
  何かございましたら。どうぞ。

(委員)中谷先生、ちょっと一点教えていただきたいと思います。私も数年前まで俣木先生の委員会で一緒に歯の方のOSCEの委員をやらせていただいていたんですけれども、そのときに新しい課題を考えるとき、臨床実習の水準値というのを意識しながら、その基になる課題を作りましょうという、まあ、水準値が妥当かどうかという根本的な議論はあると思いますけれども、なるべく水準値の役に立つOSCE、課題であるべきだろうということで、そうやって新しい課題を作ってまいりました。
  その頃に、ちょっと古い知識なんですけれど、私の理解していた医の方のOSCEというのは、身体診察とBLSと外科手技、ガウンテクニックだとか縫合だとかというのが中心であったかと記憶していますが、先ほどのこの冊子の方の、例えば26ページの訂正を加えたレベル1の医療行為の内容というのは、あの当時に比べると大分いろいろな種類があるのかなというふうに今お見受けして、ちょっとその当時のあれが分からないので、あるいは現在のことが分からないので、その辺、OSCEの課題と臨床実習における水準値、レベル1の医療行為との間に、整合をとるための何らかの努力というか、そういうことはなされているのかどうかということをちょっと教えていただけると。

(理事)アドバンスOSCEは各大学で実施しているかと。

(委員)いや、最初のOSCEです。

(理事)最初のOSCEは、レベル1はやはり自分で診療参加型臨床実習に行けば実際にやらなければなりませんので、それに至るとき、ある程度のことが、近いといいましょうかこういうふうにやりますよということを知って、実行できなければならないというふうには考えております。ですから実際問題として検査とかそんなところというよりも、身体診察とインタビューというのが基本的になりますので、神経内科でしたら頸(けい)反射という王道をやって、自分で果たしてそれをちゃんと調べられるかとか、腹部診察のときにちゃんとそれが、自分の手とかそういうふうにできるかどうか、そういう基本的な、ここに至る前の基本的な手技がマスターできているかどうか、それを意識すると思いますので、当然今、レベル1というのをこの7月に私たち出したわけですが、これは北村先生とか、前川レポートをモディフィケーションかけたにすぎないわけであります。ですから基本的なものはこれから、これらの手技を学ばなければならないのですから、途中のOSCEはこれだけはやらなきゃならないというのはこれからの問題で、恐らくそれを反映していろいろな試験をやっていただけるものと、願っておりますし、信じております。

(委員)拝見しますと、気管内吸引とか、胃管の挿入とか、尿道カテって、これはOSCEの課題に。

(理事)これはちょっと難しいと思いますね。

(委員)何分間の中身に合うかなというところもありまして。

(理事)シミュレーターを使っても可という形にはしていますので、かなり各大学に今シミュレーターが整ってまいりましたので、そういう形で実施というのももちろん、当然のことながら考えなければならないと思っております。

(委員)実際の臨床実習の中では侵襲性の低い行為のグループだと思いますので、確かにこういうのは早めに経験していただいた方がいいのだろうと思います。はい。ありがとうございました。

(座長)ほかにございますか。どうぞ。

(委員)大阪大学の林でございます。臨床実習の現場におりましたら、患者さんの同意をとるというのが結構難しい場合もあるんですけれども、先生お教えいただきました包括同意と個別同意というふうなお話がございましたけれど、これはどんなタイミングでなさるんでしょうか。病院に来られた患者さんにという。

(理事)恐らく主なものは入院患者さんという形になると思います。ですから、もちろん主治医の先生は上にいらっしゃって、「きょうからこの学生が1週間、誰々さんを一緒に診させてもらいますよ。それではこれを書いておいて、よく読んでください。一応承諾書が必要になりますから」ということで、お願いする形になろうかと思います。もちろん個別同意というのは更に侵襲性がありますから、「何々さん、明日これを受けますね。彼も一緒に術場に入ることがありますのでよろしくお願いします。こういう文書があってこういうことを私たちお願いしなければなりませんので、御了承いただけますか。御了承いただけたらお書きください」、そういう形になると思います。だから、非常に細かく書けば書くほど、何か患者さんは恐ろしくなるというところがありますので、それをどうするか。これは飽くまで一つの例でございますので、その大学でどういう形でやっているかというのは、やはりそれぞれになると思います。
  先ほど申し上げましたように、大学によっては玄関にこういう張り紙をして、うちでは医学生が診ることがありますとか、そういう形で済ますところもありますが、それではちょっとまずいでしょうということで、私たちは、こういう形でより詳しく包括同意をとりましょうと、そういう形になっています。

(委員)ありがとうございます。入院のような、先生はさっき屋根瓦とおっしゃいましたけれど、チーム医療の一員として組み込むのがスムーズであろうと。

(理事)どうしても医行為というと侵襲的なものをイメージしますが、そういうことでなくて、むしろ学生が医療チームの一員としてそこに入って、その患者さんの診断、どういう治療法をしたらいいのか、それをディスカッションして決めるという、そういう形が一番大きいと思っております。

(委員)ありがとうございます。

(座長)ほかにございますか。

(委員)後半のことでもよろしいですか。こちらの冊子のことについて。

(座長)はい、どうぞ。

(委員)では、今のことに関連してですけれども。この包括同意、個別同意ということは強制ではないと先ほどの御説明の中で。

(理事)強制ではないですけれど、これをやっていただくようにお願いするということだと思います。文書のパターンとか内容というのは、恐らく大学によって多少違うと思いますが、入院したときに学生に診てもらうときにはこれをとってくださいというふうにお願いする。

(委員)それはもう80大学で足並みをそろえてやっていきましょうという、方向性ということで。

(理事)はい、そういうことです。

(委員)はい、分かりました。ありがとうございます。

(座長)ほかにございますか。
  それでは私から一つ。この診療参加型臨床実習のための医学生の医行為水準策定でございますけれども、この2ページに、前川レポートというのは、上から4行目でございますが、「4つの基本的条件下で医学生が行う医行為については医師法の違法性は阻却される」と。その下に「厚生省健康政策局長から文部省高等教育局長に対して」うんぬんと出てございます。この前川レポートは、厚労省と文科省が一応オフィシャルに認めた形で出てございます。それで今まで20何年間使われてきたわけでございます。そうしますと、今回出されたこの全国医学部長病院長会議からの医行為水準策定は、前川レポートに換わってこれを臨床実習のガイドラインとして使うというオーソライズは、どのような手続でされているのか。

(理事)オーソライズ自身は、全国医学部長病院長会議がすることはできません。これについては、厚生労働省さんと文科省さんの方はもちろん会長からお渡ししていると思います。今後それをどういうふうに扱っていただけるかというのは、両省庁のお考えだと思いますので、それはお願いしたいというふうに。

(座長)そうすると、それが終わってからこれがオフィシャルに使用されると。

(理事)そうだと思いますね。ただ、実際問題として前川レポートはたしか20年前ですので、当然見直されるべきだと思っています。その見直しという形で、北村先生はじめ何回かレポートは、もちろんそれで構わないと、一緒のことは随分ございますので、それでよかったのかもしれませんが、私たちは資格化ということをやりましたので、やはりそれは全国医学部長病院長会議でもそのガイドラインは作るべきではないかということで、その委員会を立ち上げて、もう終了したわけでありますが、そういうものを作ったという経緯がございます。当然それは全国医学部長病院長会議の総意でして、両省庁にはお渡しして、お願いするという立場にあるというふうには考えてございます。

(座長)そうしますと、例えば同意書をもらうとか、そういった実際のアクションがとれるのは、これがオーソライズされてからということで。

(理事)いや、もう既にやられているところは、使ってやっていると思いますけれど。同意書などは違った形で、恐らくそれぞれの大学はある程度やっていたんだと思っております。この文章でなくても。

(座長)そうすると、前川レポートでなくて、このレポートに準拠して、臨床実習が行われつつあるという認識でよろしいですか。

(理事)はい。行われつつあると思っております。

(座長)はい。ありがとうございました。

(理事)もうちょっと周知徹底は必要かもしれませんけれど。最終案といいましょうか、まとまったのが今年の7月に出たばかりですので。作り始めたのは1年半ぐらい前かもしれません。

(座長)ちなみに、前川レポートに相当するような、そういったガイドラインといいますか、臨床実習の指針というのは、歯科にはなかったんです。それで平成15年の厚生労働科学研究でもって、歯科医師卒前臨床実習指針に関する調査研究というのが行われまして、このときにガイドラインが出てございます。これは厚労省、それからこの前川レポートと同じで厚労省から文科省に依頼があって、それで両省のいわば合意という形で、これもオーソライズされております。
  それで今、中谷先生からお話を頂いたこの医学生の医行為水準の策定、この新しいバージョンでございますが、これを歯科の方も新しくバージョンアップするかどうかにつきましては、今後の検討課題でございます。何かその辺のところにつきましても、御意見がございましたら。

(委員)歯科の方のコアカリの平成22年度に改訂したその翌年に、新しい平成22年度の歯学教育モデル・コア・カリキュラムでは、F項目に臨床実習という新しい項目が明示されました。それに準拠した形で、平成23年度の事業として私どもの方で実際に、新しい改訂されたコアカリに準拠した臨床実習のカリキュラムの例を作成しまして、全国にお配りしたんですが、その中に臨床実習の水準のことについても新たに見直しをして、呈示をしております。ですから平成22年度のコアカリの中にも水準を出したんですよね、たしか。出ていると思いますけれど。

(座長)一番新しいバージョンのコアカリには一つの表としてまとめてありますし、文章の中にも出てございます。

(委員)で、翌年にそれの実際のカリキュラムの実例と、評価フォーム実例等の例示として、そういう冊子を出しております。

(座長)はい。ただ、今、中谷先生に御報告いただいたこういった冊子、例えば包括同意とか、同意書とか、いわば一つの体裁がございます。そういった形について、また歯科の方でも勉強させていただきたいということでございます。
  ほかに御意見ございませんか。
  ないようでしたら、中谷先生、どうも大変長時間にわたりまして、ありがとうございました。今後とも御指導のほど、よろしくお願いいたします。

(理事)こちらこそ、よろしくお願いいたします。

(2)諸外国の歯学教育の現状について

(座長)続きまして議題2でございますが、諸外国の歯学教育の現状について、前田先生から御説明を頂きたいと思っております。
  前田先生、よろしくお願いいたします。

(委員)新潟大学の前田でございます。資料4に基づきまして、諸外国の歯学教育の現状について、少し御説明させていただきたいと思います。
  諸外国と申しましても非常に多くて、今、日本の歯学教育で少し問題になっているような点をピックアップしながら、少し御紹介させていただきたいと思います。
  なおこの資料を作るに当たりまして、私だけの情報だけではなくて、医科歯科大学の鶴田准教授の方からも少し資料を提供していただきました。
  今日お話しすることとしまして、歯学教育の日本の方向性、それに対して世界の歯学教育の現状、臨床の歯学教育、諸外国における臨床の歯学教育、そしてシミュレーション教育に関して少し御説明させていただきたいと思います。
  1枚おめくりいただきまして、スライド番号は3になります。本会議では、平成21年に一次報告書を提出しております。その後何回もこの会議が開かれまして、いろいろな討議をされてきましたけれども、本年2月に本会議の方から歯学教育の改善・充実に関する提言・要望ということが出されまして、それは全国の歯科大学、歯学部に発出されました。その中で書かれているのは6項目ございまして、一番初めにやはり診療参加型臨床実習の充実ということ、多様な歯科医療ニーズ等に対応した歯科医師養成等々が書かれております。そして歯学教育の教育認証評価制度の導入ということが書かれ、これに対して各大学で努力をお願いしたいというふうにして発出されました。
  一方、これは国立大学の方でございますけれども、今後の機能強化の方向に向けての考え方ということで、今年の7月24日に改訂版が出されました。これが出される前に、全国のいろいろな分野別でミッションの再定義という作業がありました。そしてこの7月のところで、医学、歯学系については、これはそのまま文科省の資料から取ったものでございますが、赤線で引いてございますけれども、「診療参加型臨床実習の充実等国際標準を上回る医学・歯学教育の構築、総合的な診療能力の育成」うんぬんということが、これを推進するというふうに書かれております。
  特に歯学の場合では、健康長寿社会実現への貢献、医療イノベーションの創出、国際的な医療課題の解決という3点について、各大学の強み、機能強化の方向性ということで、文部科学省と議論をしながら、ホームページに出されております。
  これは私立大学も同じようなことで、歯学を取り巻く現状と社会的要請は共有できることだと思いますけれども、やはり提言・要望にもございましたように、診療参加型臨床実習の充実というのが喫緊の課題ということは、共通的な認識と思われます。
  それではまず、世界の歯学教育の現状についてお話ししたいと思いますけれども、5ページでございます。
  アメリカの方は、余りグローバル的な話ということは出てきませんで、やはりグローバル化の進行というのはヨーロッパの方で非常に進んでおります。特に皆様御存じのように、高等教育の質保証を目指す、いわゆる標準化を目指すボローニャプロセスというのがございまして、EUの統合とともにいろいろなことが起こると同時に、歯科の場合でもヨーロッパの歯科医学教育学会が中心となりまして、DentEd Project、それに続きましてDentEd Evolveというような報告書が出されています。これは、国境がなくなって人材が移動していく中での、教育の質の収束化を目指したものというふうにして書かれております。
  そのページをいろいろ調べてみますと、そこの青字で書いてありますけれども、情報の交換、そして国際的なピアレビュー、訪問調査のプロセスをやっていきましょう、確立していきましょうということでございます。これは、結局は教育の質保証ということになるかと思います。
  その中でやはりうたわれていることが、卒前の歯学教育の評価プロセスの普遍化ということでございます。そのためにはきちんとしたガイドラインを作って、自己評価をして、外部評価に持っていくということになっています。やはりその中でも、このDentEd、ヨーロッパの方でも少し問題になっているのは、いろいろお題目を作っても、各大学がそのガイドラインをいかに担保していくか、担保するためにその外部評価、ピュアなビジテーションが必要なんだということになってございます。
  教育ガイドラインといたしましては、有名なものとしては、次のページの7枚目をごらんください。アメリカでは、Accreditation standard for Dental Education Program、これは米国の歯科医医師会が主導して、こういうものを作っております。ヨーロッパでもProfile and competences for the European Dentistというものが、ヨーロッパの教育学会を中心として出されるとともに、その改訂版が2009年に発行されています。ヨーロッパの中でも、英国の場合ではGeneral Dental council、いわゆるGDCというところが、やはりこのようなガイドラインを作っております。
  日本はどれに当たるのかというと、やはり歯学教育モデル・コア・カリキュラムになるのではないでしょうか。
  一方、評価体制ですけれども、前回、荒木委員からも御紹介がありましたように、米国ではCommission on Dental Accreditation、いわゆるCODAというところがAccreditationをしております。自己評価と、やはり厳しい評価者による視察からなる評価を実施して、歯学教育の質の担保ということをやっておりますし、ヨーロッパでもそういうようなガイドラインに基づいた自己評価とsite visitationが行われています。
  ただよく調べてみますと、ヨーロッパの中で一応ガイドラインは共有されていますけれども、評価体制に関しましては、国別にやられているというのが現状かと思います。
  一方、日本はまだトライアル実施中ということになっています。本年8月にヨーロッパの教育学会に行ってびっくりしたことは、今までアメリカの教育学会とヨーロッパの歯学教育学会は余りコンタクトがないなと思ったのですが、アメリカの教育学会とヨーロッパの教育学会がMOUを結んで、共同で世界的なグローバルな歯科医学教育をやっていきましょうというような流れが起きています。東南アジアのSEAADEというところも、ヨーロッパとそういうふうなところとMOUを結んで、グローバルのネットワークがどんどん構築されていますけれども、日本はちょっと遅れているという形になっています。
  その中でも、日本の喫緊の課題であります臨床歯学教育ということで、この臨床歯学教育は3項目に分けられるかと思います。
  1点目は東南アジア等々の歯科医師養成が急務な国では、患者治療を中心とした臨床教育重視が強い傾向がございます。その中でも、国に特有の問題等々に重視しているところがたくさんございます。日本では、昨年私、その学会で歯学部長会議に出席してまいりましたけれども、そのときの話では、日本では非常に高齢化が進んでいると。それに対応する問題が、日本の歯学教育で今求められていますというような話をしましたところ、ヨーロッパも確かに高齢者は多いのですが、高齢化の速度が鈍いことから、まだそういうことは余り興味がない。一方アメリカでは、高齢者のことは余り話題にもなりませんし、それ以外にやはり研究者養成ということがアメリカでは新たなニーズとして高まっている。それをどうやって臨床歯学に結合させていくか、結び付けていくかということが、一つの課題になっているようでございます。
  その臨床歯学教育の世界的な状況としては、やはり上級生の診療補助とか、学生同士の相互実習を経て、カリキュラムの比較的早い段階から、患者治療を基盤とした臨床実習が行われています。例えばアメリカの場合は4年生のデンタルスクールでございますけれども、1年生のときにはお互いの口腔衛生指導のような実習から、2年生に上がると1本の歯の治療、3年生になると片顎の治療、そして4年生になるとフルマウスの治療、一口腔単位の治療というふうにして、段階的な臨床実習をされているようでございます。
  それで、Competency-basedと書いておきましたけれども、非常にケースを課していて、卒業するまでにきちんとした技能の担保ということを、どこの国でもやっているようでございます。日本のように国家試験があるから一応臨床能力は担保されていますというような議論は、諸外国では全く通用しないという現状でございます。
  では日本の現状はどうなのでしょうかということで、本会議でフォローアップをやってまいりました。9ページは平成24年度、一昨年度のフォローアップ調査からのデータでございますけれども、その中ではいまだに自験の定義というものがよく共有されていない。診療の一連の流れがありますけれども、非常に断片的なことを、1か所だけやれば全てやったというようなふうにした自験の定義ということがございました。その自験の定義を共有しましょうということで、この会議の方からもいろいろ文書を出しているところでございます。
  あと到達目標が余りにも未設定というところとか、一番は臨床能力の評価の現状で、なかなか統一化されていないということです。その下にいろいろな問題点がありますけれども、詳細につきましては、この平成24年度のフォローアップ調査をごらんいただきたいと思います。
  それでは各国における臨床の歯学教育についてということでございますけれども、まずアメリカから行きたいと思います。
  アメリカの、要は州の歯科医師免許の登録条件ということですけれども、1番初めにEducation requirementと書いてあって、一瞬何かなと思われるかもしれませんけれど、要はちゃんとCODAで認証された歯科大学、歯学部を卒業していることということです。要はアプリテーションがきっちりしたところをきちっとしていくことということになっています。そのため大学も認証評価を受ける、パスするために努力を続けています。
  あと皆さんよく御存じのように要はペーパーテストで、低学年の基礎教育領域を中心としたパート1、その後に臨床的なパート2に両方通ることというのがあります。
  ここまでは皆さんよく周知のことでございますけれども、私どもが、もう3年ぐらい前でしょうか、知ったのは、その後にClinical Examination Requirementということがございました。そこに書いてございますように実際の患者診療をして、技能の能力を担保する。それにパスすると州の歯科医師免許を与える、レジストレーションができるというようなシステムになっています。この3番というのが意外と欠けている情報だったかと思います。
  次のページをおめくりいただきたいと思います。このテストは、アメリカを大体大きく5つに分けまして、ブロックごとにテストエージェンシーがあり、Clinical examination、技能試験をやっております。
  下の12ページのところを見ていただきますと、西部の地区でWREB、Western Regional Examining Boardというところでございます。そのホームページにございますけれども、オリエンテーションがあって、その後2日半、臨床のテストをしているということです。これは日本でできるかどうか分かりませんけれども、そこに行くテストを受ける費用、患者さんを連れていく費用、いわゆる衛生士さんがもし必要だったら、その衛生士さんを連れていく費用というのは受験生の負担だそうです。非常にお金がかかるものです。
  詳細はこのホームページを見ていただければと思いますが、どういうことをやっているかということでございます。13ページ目を見ていただきますと、上からいきますと、詰めたりする、保存・修復、歯周病の治療、歯内療法の治療、患者の治療を実際にやること、その次はCBTを用いたようなテストを、やはりそこでももう一度やっております。その後にはシミュレーターを使ったようなテストも加えてやっていくとともに、それで相対的にそれがうまく行くのか、それで合否を決めるということでやっているようでございます。アメリカでもやはりきちんとした卒業時の臨床能力の担保というのは、週単位といいましょうか、ブロック単位でちゃんと質の担保はやっているということでございます。
  その次にヨーロッパの方でございますけれども、EUの統合とともに労働力の自由移動というようなキャッチフレーズで、歯科医師免許の共有化ということがございました。そのために教育内容の明確化、卒前教育基準の共有化ということがいち早く行われておりました。
  次のページをごらんいただきたいと思います。アメリカもそうなんですけれども、そこに書いてありますように、必ず卒業時に具備する能力ということが大きく掲げられております。これは2009年に改訂されたものでございますけれども、卒業時には新たにヨーロッパの歯医者になるためには、何とかすべきであるということが書かれております。全ての臨床の歯学の分野で働くことができるということ、6番のところでしたら、理論的なこととか実践的な技能を持っているということがきちんと明記されていて、これに対してカリキュラムをプランニングしていっているようです。そのアウトカムベースのカリキュラムも、やはり認証していくというシステムになってございます。
  あと非常に有名なところとしましてはイギリスでございますけれども、先ほどもお話ししましたGeneral Dental Councilというのは、歯科医籍の登録、いわゆるレジストレーションを行うとともに、イギリスの歯科大学評価認証機関というものをやっております。そこのところで教育基準の作成、公表と評価ということをやられて、歯科医師の教育、一生涯を長いロングスパンで考えたとき、イギリスの場合5年間が歯科大学の教育でございますけれど、その最初が非常に大事だということで、THE FIRST FIVE YEARSというもので教育内容を規定しているとともに、『Standard for Education』という冊子を出しております。その中で非常に細かく、いろいろなことが書いてございまして、17ページを見ていただきますと、学習のアウトカムということ、登録のアウトカムということで、例えばこれは臨床のところだけを引き抜いてきたものですけれども、必ず「Be competent at」、何々することができる、何々する能力を持っているということが、必ずずっと書かれています。こういうことは、一つ一つアウトカムベースになっています、コンピテーションベースになっていますので、これができると各大学は卒業させます。卒業させたという証拠をちゃんと、アクレディテーションの際はそれをsite visitationのときに示さなければならないというシステムになっています。
  アメリカもヨーロッパも、日本の保険制度と違いまして、患者はたくさんいるのかなと思いましたけれども、やはりなかなか難しいような症例が増えてきているようです。例えば昨年の例えばヨーロッパの教育学会では、やはりシミュレーションの活用ということが、ヨーロッパでも、アメリカの方でもこういう動きができています。例えば18ページには、今年のヨーロッパの教育学会でSmall Interest Groups、すなわち小グループになってディスカッションするワークショップがございましたので、そこに入ってまいりましたけれども、その中で要はバーチャルシステムを用いたようなシミュレーション教育をして、きちんと臨床技能の担保をしようというような取組が行われています。これはアメリカの歯科教育学会に行かれた先生方もお気付きだと思いますけれども、業者展示に行きますと、必ずこのような展示が非常に多く占めていて、このシミュレーションができなければ患者を触らせないとか、最後に、患者さんの実習の後にまたこういうシミュレーションということで数値化をして、能力をきちっと担保していく、技能を担保していこうという試みは、世界的な流れになっております。
  まとめますと、これはそのまま、イギリスのGDCのところから書いてきたものでございますけれども、患者の診療実習を行う、きちんとした実習を行って能力を担保することが大学教員に課せられた必須の使命であるとともに、そして大学としてはその環境要因を満たすことが求められているのだというのが、非常に強く強調されております。
  その世界的な認証の流れということを最後に御紹介して終わりにさせていただきたいと思いますけれども、医学と違いまして、グローバルスタンダードというのが歯科の場合にはありませんというのは、この前、荒木先生からお話があったと思いますけれども、アメリカではCODA、イギリスではヨーロッパの教育学会が主体とした教育スタンダードを用いた認証を行っているようでございますが、昨年になりまして突然、これは前回行ったときに情報を得てきたんですけれども、国際的な歯学の認証評価機構を設置したと。それで、今年の9月に第2回がありました。そこにホームページを載せておきましたけれども、アメリカ以外のいろいろな国がここに入ってきています。カナダとかオーストラリア、ヨーロッパの各国。ドバイとかアジアの各国等々がこういうところに流れてきて、歯科の場合でも国際的な認証というようなことの機運が高まっているようでございます。
  情報はここに書きませんでしたけれども、鶴田先生のお話ですと、オーストラリアでもやはり卒業時の質担保を目指した学生の総合認証ということを、イギリスとかカナダといった英国連邦の中でやっていくという話が、つい最近行われてきたというような情報を得ています。
  まとめますと、まず国際認証等々を世界的な標準に行くためには、この臨床実習を何とかしないと駄目だというのが世界的な流れということになるかと思います。

(座長)ありがとうございました。ただいまの御発表について、御質問等ございましたら。

(委員)ありがとうございました。一つ質問をさせていただければと思います。
  日本の歯学教育の中で、臨床教育を行うときに患者の参加を得るのがとても難しいという話を、以前からお聞きしているんですけれども、今、欧米ともにシミュレーターを使うということが増えてきたという御説明の中であったんですが、それでもやはりシミュレーターだけでなくて、実際に患者に協力してもらうということは欠かせないという御説明だったと思うんですけれども、欧米で行われている患者参加の何か工夫とか、ちょっと日本と違う傾向みたいですし。

(委員)有名な話としましては、日本の場合は保険制度がございますけれども、アメリカはそういう保険制度がございませんので、要は大学で学生さんにやってもらえれば医療費を安くするというような、工夫はあるみたいでございます。それが一番大きなあれではないでしょうか。工夫としては。

(座長)料金が違うということ。

(委員)3割ぐらい。

(委員)安く治療してもらいたい人はそこに協力するという、社会の風潮があるということですね。

(座長)ですから、歯学教育も市場化されていると。

(委員)ルイジアナで見学したときに、お金はないけど時間があるという方は、学生の診療に協力しやすいというお話でしたね。

(委員)ちょっと正確な情報か分かりませんけれども、バルト三国の国にこの間お邪魔したときには、学生がやると、国がある程度治療費を補助してくれるみたいな制度があるというようなことも伺いました。

(委員)シミュレーション教育と患者教育との同時並行のような印象を受けるんですけれども、視察されてきた範囲では、シミュレーション教育が活発化してきたのも割合最近のことと思っていいでしょうか。昔は、まずは患者さんがあったと。

(委員)今、患者さんをやる前にきちんとしたシミュレーションでできること、そして患者さんでトレーニングといったら失礼ですけれども、をしながら、最後に、コンピューターベースになっていますから、きちんとした客観的な数値データで評価ができるというところで、活用しているみたいですし、シミュレーション教育というのは一応補完的な感じというのはどこの国でも持っていて。日本と違ってオープンに、学生にいつでも練習ができるというような環境を出しているということだと思いますけれど。

(委員)かつて10年以上前、15年以上前でしょうか、欧米でもシミュレーション教育の今後について、患者さんの協力が特にヨーロッパで多かったと思うんですけれど、なかなかやれないので、それがだんだんシミュレーション教育の方に、全てが換えられるかどうかはそのときは分からなかったけれども、そういうような方向に進んでいるやに見えて、いろいろなメーカーがそっちへ向かっているのだと。
  ところがまた最近、先生のこのレポート、発表によりますと、やはり根底には生身の患者さんをするのが本来の姿だと。あくまでも今もおっしゃったように補完的なシミュレーション、そう理解してよろしいんですか。

(委員)先生御存じのように、このシミュレーション教育というのは削るだけなんですね。いろいろな広範囲の歯科治療の中での一部分のところを担保するのにシミュレーションを使っている。それではできないのは、やはり患者さんでないとできないところもあるのでということで、御理解いただきたいと思います。

(委員)そうですね。ただ、痛いとか言うのは、もうロボットでできてきているんですけれど。まあ、そこまではあれですよね。分かりました。

(委員)でもロボットは舌が動いたり、いろいろしませんので、それはやはり補完的な意味ということで、限界があるのではないでしょうか。

(座長)シミュレーションの意味ですけれど、人型のロボットは日本しかないんですけれど、後はデンタルダビンチのようなバーチャルのやつ、そこら辺の傾向はいかがなんですか。

(委員)人型ロボットはおっしゃったように日本しかありませんけれども、日本の大学でも余り普及はしておりません、要は高価だということで普及していないんだと思います。
  バーチャルの方は、非常に小さなコンパクトの中で、要は歯を削るのではなくて、眼鏡をかけると3Dで浮き上がってくるものは、何というんですかね、重さまで全部できるというようなシステムができています。これはたしかオランダの大学が開発したバーチャルリアリティシステムを導入したもので、例えば香港大学などではそれが何台も置いてあって、学生がどこでもできるというようなシステム。日本では、医科歯科大学が初めてこの間1台入れたというのを伺っています。かなりよくできています。
  ただ、それでも先ほども申しましたが、削るだけのシステムです。その後に型を取ったりするようなところは、やっぱり全く、そういうシミュレーションはないですね。

(委員)ですからそういう観点でいくと、従来から歯科医師にも削るようなのを実技として国家試験に入れて、それを自動採点機でいこうというのが、かなり、3年以上参加したことがあるんですが。

(委員)ただ、うちの新潟の歯学部の場合ですと、やはり患者さんを削る前にちゃんと、そういうシミュレーターで一回練習をしてこいというような指導はしています。研修医もそういう形でやって、模型でうまくできない人は患者さんの口の中でもできない。そういうふうにして開放してやれば、学生は自ら練習をしていくということになっていくと。

(委員)日本では、そういった削るとかいう実習は、主要科目の基礎教育で一旦やらせるんですけれど、それはまた場所が違ったり、基礎実習室みたいなところでやらせる。病院へ行ってからは、最近のああいったシミュレーターは病院に、そばに置いてあるんですね。ハーバードとかコロンビアなどでも、小児歯科のあれを、首だけですけれども、本当にそこへカチャッとはめて、それから患者さんが来るという前にやらせて。2回やることになる。

(委員)あと実習の、これは新潟の例ですが、実習のスタイルというのもやはりカリキュラム等換えて、実習室の配置とかをいろいろ考えて、単なる技工をしながら、その次はファントムをして、その次はシミュレーションをしながら、その次は総合実習をしてというふうに、新潟の場合は実習室の配置も全部変えたんですね。そうすることでやはり教育効果はだんだん上がってきて、学生もだんだんだんだんステップアップしていくんだなということを自覚しているような気がします。ただアンケートはまだとっていませんけれど。

(座長)ほかにございますか。この一番最後のページのInternational Society of Dental Regulatorsですが、7ページで説明されたアメリカのCODAとかヨーロッパのガイドライン、これとのいわば調整と言いますか、そこら辺はまだ見えてこないですか。

(委員)アメリカのCODAの場合は、これには入っていないような感じですね。

(座長)これはヨーロッパの流れですね。

(委員)ヨーロッパと、中東とかアジアの一部が入っています。

(座長)アジアというのはどこですか。

(委員)東南アジアですね。

(座長)韓国は入っているんですか。

(委員)韓国も入っています。

(座長)韓国と、SEAADE。

(委員)SEAADEも入ってます。

(座長)ASEANですね。

(委員)ASEANです。

(座長)中国は入っていない。

(委員)入っていなかったですね、まだ。
  ただ、今何をやっているかちょっとまだ見えない。一応これに誰も日本人として参加した人がいないので、何をやっているかはホームページで見るしか、まだないという。

(座長)付託金は幾らぐらいなんですか。

(委員)年間5000ドルって言っていました。まあ、各大学で割れば2万円なんですが。

(座長)こういうのができますと、一応網をかけてきて、参加せざるを得ない仕組みを作っていくというのが大体流れですから、日本としてはどういうふうに考えるかという。

(委員)まあ、年に1回しかないみたいなので、まだちょっと情報が非常に不足はしております。先生方もこのホームページにアクセスされて、どういうふうな流れになっているかということを少しお考えいただければ幸いかと思います。

(座長)問題はもう一つありまして、最初から入っていって、そういったいろいろなレギュレーションで網かけてくる、かけてくる側に回るか、かけられる側に回るかという、そういったことが今後はあり得るだろうということでございます。

(委員)今のこのISDRは、各国のキャリアパスはどんなふうに、相互に考えた動きなのでしょうか。

(委員)詳細はわかりません。

(座長)金を出さないと出てこないとか。

(委員)患者さんを相手にした実習において、今まで理解しているのでは、国立大学ではそういったことは十分、まあ、国が補うことができるから、そこでやらなきゃどこでやるんだという感じで、どんどん集めてやりなさいと。我々私立大学などでそれを進める場合、どうしてもそこが、厚労省からの関係では学生にやると、皆ライターの責任になるんですね、医療事故に対して。だからどうもシミュレーションに走ってしまうとか、患者数が非常に不足しているとか。だからそこを、せめて国立並みに堂々とやれるんだと、患者さんを触れるんだというその基準を、今までのそういう保健医療に抵触するとかいうことではなくて、Student doctorかどうか分かりませんけれども、それがそういう資格があると、事故が起こってしまえばそれは保険なり、学部長とか大学がそれに対応するということなんですけれど。

(委員)先生も御存じのように、学生が削るというのは、もうビクビクして削ってますから、一気に削らないんですよね。

(委員)そうなんです。

(委員)時間が掛かる。

(委員)すごく時間掛かって、逆に良いものできますよっていう話も、やはり患者さんには御説明させていただいていますし。それに、ちゃんときちんとトレーニングしたやつを出しています。例えばうちの場合ですと、やはりStudent doctorではないですけれども、ちゃんとネームプレートに共用試験受かっていますよ、学部長が保証していますよというようなことをやって、患者さんに御理解をいただいているという努力はしています。

(委員)ですから、余り最初からシミュレーターを主体にやりますと、ますます今の学生さんは、患者さんへの説明というか、しゃべるのがますます下手になっていって、もうマスクから、帽子から、手袋からして、目だけ出して説明したりするとか、言葉が少ないですね。女子学生の方はまあ、いい。そういう状態でやるから、一層患者さんは怖い、怖いという感じになるんですね。

(委員)そうするとやはり卒前の教育が、臨床実習開始前の教育にいろいろな充実をされるのが。

(委員)いや、それに余り、ファントムとか模型とか、そういうものばかりで幾らやっても、やはり説得とか説明とかいう段には、生身の人間でないと。

(委員)だから一補完教育の、一方策だということを共有していかないと駄目だと思うんですね。

(委員)そうですね。それは感じます。

(座長)ただいま、違法性の阻却ということをおっしゃったんですが、これは御存じのように歯科医師法第17条、これは歯科医師でなければ歯科医業をやってはいけないと。これを阻却できるかと。これは平成15年の報告書ではどう言っているかといいますと、臨床実習の指針及びできる限り詳細な臨床実習マニュアルを作成して、これに基づいて実施すること。それから臨床実習をやってよろしいという試験、今それは共用試験で読み替えられるんですが、共用試験を合格しているということであれば、歯科医師法上の無資格歯科医業に該当しないと介すべきであるというふうな見解が出てございます。ですから、平成15年のこの時点で一応違法性が阻却されるのでなくて、こういった要件を満たせば、違法性は阻却されると。返すべきであると。

(委員)そうですか。それは大きいですね。

(委員)前田先生がおっしゃいましたように、以前の問題でやはり医科と同じように、中谷先生のお話のように、共用試験に問題があると思うんです、歯科医の場合には。そこのところをクリアさせないと、結局学生の質の担保ができないわけで、やはり共用試験のくどく毎回言っていますけれども、各大学での判断ではなくて共通の判断ということをやらない限りは、今、一生懸命前田先生とか、俣木先生が共用試験のところ、それから臨床に入ったところを、こうやって行く前段を、とにかく早く全国共通の医科と同じような取組を持てるような形を早くとっていかないと駄目ではないかというのは、今お話を伺っているとそれを強く感じたんですけれど、その辺のところはどうなんですか。具体的には。

(座長)先生の御意見で、前田先生の御報告と中谷先生の御報告、中谷先生は2つ報告されましたが、この3つを含めて、もうちょっと時間がありますので総合的に討論をしたい。要するに今、先生の御質問は、この資料2の共用試験によるStudent doctor認定を、歯科の方ではどうするのですかと。そういうことだろうと思うんですが。そこら辺、御意見がございましたら。

(委員)その前にちょっといいですか。先ほど中谷先生か前田先生が言われた中に含まれていたんですけれど、質の担保というのは初め、臨床実習も終えて、あるいは国家試験まで通ってというのをクリアして質の担保と思っている人もいるかも分かりませんけれども、まずその共用試験のCBTとOSCEの2つを何とか本試験でパスすれば、それはまず質の担保と見ていいんだというふうなこと……。

(委員)僕はやはりきちんとした、6年間の歯学教育を、質の田んぼでそこのきちんとした大学教育を受けた人の質の田んぼで、そのためにはどういうような能力が必要なのかというのを明確化して、そこに到達しているかどうかはやはりきちんとチェックする必要があるのではないかと思います。
  単にCBTとOSCEに通って、臨床に行くのが質の担保ではなくて、6年間というスパンであって、イギリスで言っているTHE FIRST FIVE YEARSと同じように、6年間の学資教育の過程でどういう人材を我々は育てていって、それが我々の教育の中からそういう人材が出た、それをどうやるのかが質の担保ではないでしょうか。

(委員)それは臨床実習と。

(委員)もう全部含めてだと思います。

(委員)全部含めるわけですね。分かりました。

(委員)と、思いますけれど。

(座長)今の前田先生のお話に付け加えますと、要するに入り口の質の担保、入学時の質。それから入ってから後の教育の質の担保、それで出口、いわゆる卒業時の、これは職能教育ですから臨床能力の質の担保と。
  それで臨床実習をうんぬんするのは、特に日本の医学教育、歯学教育では、卒業時の臨床能力の担保ということが、弱いのではないかと。これは医学、歯学共通の課題でございます。

(委員)きょうの資料を見比べてみると、というお話があったので申し上げるんですが、先ほど中谷先生もおっしゃっていたように、医学の診療参加型臨床実習というのは、診療チームの一員として参加するというところがあるのですけれど、歯科の場合はかなり患者さんとの個人対個人がほとんど、やれても指導医の下でやって1対1、あるいは2人とか、非常に少人数で患者さんを担当する。しかも侵襲的といいますか、患者さんの実際の口腔の中を見られる範囲での実習になりますので、その辺の臨床実習の実施形態が、やはり医学と歯学では決定的に違うという点があるので、その辺の違いも考えなければいけない。となると、やはりより臨床実習に進むに当たっての質の担保ということも、しなきゃいけませんし。
  シミュレーション教育という考え方は決して、その一部を担っているだけであって、シミュレーション教育が臨床実習の代替の教育にはならないということですね。

(委員)ええ、そうですね。

(委員)その一部だということなので、そこら辺の認識を。諸外国ではあくまでも患者さんの治療のために、シミュレーターを前後に使っているということですね。やる前に十分にトレーニングをして、また臨床実習が終わった後に、技能の到達度を客観的に評価するために、シミュレーション教育の機器を使うということなので、その辺を確認しておいていただきたいということと。
  あと、臨床技能教育に関わる教員なんですけれども、やはり教員は自分が受けた教育でしか教えられませんので、ここで新たに全く新しい教育法で教育するということは難しいと思うんですね、ですからその辺を、やはり指導医の育成というか、いろいろな特に以前は行われていたであろうことを、また伝えておく必要があるだろうという気がいたします。
  以上です。

(委員)先生、追加ですと、18枚目のスライドをちょっとごらんいただいて、飛ばしたんですけれども、シミュレーション教育の活用ということで、下の左側にグラフがございます。これ、御説明しなかったんですけれども、シミュレーションで練習してやった人と、練習しない人の実際に削らせて、それを評価したというグラフなんです。Clinical Unacceptable、駄目なのは当然練習していなかったという、ちゃんとデータが出ていて、これを用いてどういうふうにシミュレーション教育をやっていくかというような議論が、ヨーロッパの方のワークショップでやられています。こういうデータが、やはりきちんと出てはいるんですね。要するにやればうまくなると。やらなければうまくならないままだと。

(委員)私、ちょっと見学した時点では、最初の基礎実習でやるのはトータルに、例えば歯を削るといったら支台歯形成のトータルでやらせるんです、何度も何度もやらせるんですけれど、実際、患者さんがきょうの午後来ると、その午前中にチェアサイドでやる場合は、特に最初は遠心の舌側部分のアンダーカットが、みんな成績が悪いと。だからそこだけを部分的に、非常に短い時間でやらせて、それを通った人は患者を診てよろしいというふうな、そんなことまで細かく。それだったら2回使う意味があるんだなと思ったんですけれども。一からチェアサイドでやってたら、本当にそれは時間が掛かって、患者さんが実際に来たときはもう、夕方になるというような感じになるんですよね。

(座長)ありがとうございます。
  三塚先生の御質問にまだお答えしていないんですが、私が答える立場にないんですけれど、要するにきょう、中谷先生に共用試験で言うStudent doctorのお話をしていただいて、それから診療参加型臨床実習のための、医学生の医行為の水準策定についてのお話、それから前田先生に諸外国の歯学教育。この中谷先生のお話のところで、中谷先生のスライドの3ページ目に、世界のいわば認証組織として、アメリカ医科大学協会と、世界医学教育連盟ということが出ています。こういうものがもうあって、そこからのいろいろな、いわば情報によって、ある程度医学の方は動かざるを得ない状況になっていますが、前田先生のお話の最後のページに、歯科も同じ動きになってきたということでございます。
  それできょうの締めでございますけれども、中谷先生はどういうお立場でお話をされたかというと、全国医学部長病院長会議が、こういった企画をして実施をしているということでございます。そういうことでございますから、この本会議といたしましては、こういう情報を歯科の方に、いわば問題提起をさせていただきます。そういうことでございます。ですから、ここの役割は全国医学部長病院長会議のような役割とは違いますので、その辺のところを御理解いただきたいと思っております。
  この中谷先生、前田先生の話は以上でございます。
  最後でございますが、その他のところでもって、前回の会議でフォローアップ小委員会をお認めいただきまして、その人選ができまして、11月下旬に初回の会議を開催させていただきます。その後、書面審査等を進める予定でございますけれども、その進捗につきましては、ある時点でまたこの会議でもって御報告させていただきます。
  大体以上でございます。

(委員)すみません、医科の立場なのでちょっと遠慮をしておりましたが、日本医師会といたしましては、全国医学部長病院長会議とは年に数回定期的に会合を開いて、議論をしてまいりました。このStudent doctor等についても、国民の方々に一定のレベルをクリアしているということを明確に示すことがなければ、5年次、6年次の診療参加型臨床実習の発展はあり得ないと。国民に理解していただくために、これだけの高いハードルをしっかりクリアしましたよということを、相当時間も掛かってきております。先ほど三塚委員がおっしゃったように、やはり歯科医師の卒業時あるいはまた卒業後のさらなる、国民に信頼される歯科医療のためにこういう会があるんだと思いますので、私は歯科におかれましても、各大学の様々な御事情があるにせよ、そういった5年次、6年次の診療参加型臨床実習、特に患者さんの御理解が得にくいということは非常によく理解できるわけですが、それでも行っていくためにはそういう手順が、時間が掛かってもそこに明確に進んでいくと。全大学において一律の、標準化された基準をクリアしているという証明がやはり必要なんだというふうに思っておりますし、日本医師会でもそういう立場で提言をしておりますことを、ちょっと併せてお話ししたいということと。
  もう一点、前回のことでございますが、各フォローアップ等の様々な情報を、各大学のホームページにというお話がございまして、山口委員からも御質問がございました。その後、私、個人的にそれぞれの大学のホームページをちょっと閲覧する機会がございましたが、確かに非常に時間をかけて奥の奥まで見ていくと、ございました。(笑)そこへ到達するのが非常に大変でございますし、本当に全てを網羅して書いてあるのかどうかということは、書いてあるのでしょうけれども、ちょっと不明確な印象を持ちました。ですので、やはり国民の方々が見てその審判を仰ぐと江藤座長があのときにおっしゃったわけですが、そのためにはやはり、閲覧の仕方といいますか、ホームページのどこに資料があるのかということを、例えば一律に、あのときでも提案をされましたが、厚生労働省のホームページに各大学の一覧があり、そしてそこに飛ぶというような、公開の仕方ということについては御検討いただく必要があるのではないかなという印象を持ちましたので、申し訳ございません、時間が押しておりますのに、ちょっと付け加えさせていただきました。

(座長)ありがとうございます。大変貴重な御意見で、まず最初の方につきましては、医科の視点から、歯科にとって非常に重要な御指摘をいただきました。
  それからホームページの内容につきましては、これは多分フォローアップ小委員会でそういったことをフォローアップしていく事項になろうかと思っております。
  大変どうもありがとうございました。
  それでは最後に、事務局の方から何かありましたら。

(事務局)本会議につきましては、次回は年明けの2月頃に開催したいと考えてございます。また詳細につきましては、改めて日程照会等させていただきたいと思います。
  以上でございます。

(座長)それでは以上をもちまして、本日の会議は終了いたします。長時間になりましたが、大変どうもありがとうございました。

以上


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