モデル・コア・カリキュラムの改訂に関する専門研究委員会(平成22年度)(第7回) 議事録

1.日時

平成23年1月20日木曜日10時00分から12時00分

2.場所

文部科学省3F2特別会議室

3.議題

  1. モデル・コア・カリキュラムを活用した特色ある教育に係る取組事例ヒアリング

4.議事録

【唐沢課長補佐】  まだ来られていない先生もいらっしゃいますが,定刻になりましたので,ただいまからモデル・コア・カリキュラム改訂に関する専門研究委員会(第7回),医学・歯学合同の会議を開催いたします。

 本日は,都合によりまして,梶井委員,嶋田委員,宮村委員,辻本委員,邉見委員の5名が欠席でございます。また,前回までの会議に引き続きまして,全国薬害被害者団体連絡協議会世話人代表の花井十伍様,社団法人日本病院薬剤師会会長の堀内龍也様にゲストスピーカーとしてお越しいただいております。

 引き続きまして,本日の配付資料を確認させていただきます。お手元の茶色の封筒から資料をお出しいただきますと,本日は,議事次第のもとに,資料1から8,さらに参考資料,さらに追加資料として,少し大部の資料を準備させていただきました。この場をおかりしまして,順に確認させていただきたいと思います。

 まず,議事次第が1枚でございます。その次に,資料1が,「医学教育モデル・コア・カリキュラムの改訂に向けて(中間とりまとめ案)」でございます。

 その次が,資料2,「歯学教育モデル・コア・カリキュラムの改訂に向けて(中間とりまとめ案)」でございます。なお,この資料1と資料2につきましては,去る12月20日に開催いたしました連絡調整委員会及び専門研究委員会でのご意見を踏まえ,一部修正したものを連絡調整委員会の高久委員長,並びに本専門研究委員会の福田委員長,江藤委員長に内容を確認いただき,とりまとめたものを今週1月17日月曜日から,現在パブリックコメントを実施しているものでございます。なお,パブリックコメントは来週末,1月28日金曜日までを予定しております。

 引き続きまして,資料3でございますが,本日は大学関係者からのヒアリングを予定していますが,その資料でございます。資料3は,東北大学医学部に係る柴原先生からのプレゼン資料でございます。

 引き続きまして,資料4でございますが,福島県立医科大学の菊地学長からのプレゼン資料でございます。

 その次に,資料5,これは1枚紙でございますけれども,兵庫医科大学の鈴木先生からのプレゼン資料でございます。

 続きまして,これは歯学の関係になりますが,資料6は,昭和大学の向井先生からのプレゼン資料でございます。

 資料7,これは東京歯科大学の一戸先生からのプレゼン資料でございます。

 なお,その次に資料8,今後の検討スケジュールについての資料を添付しております。本日の会議の最後に再度申し上げたいと思いますが,念のため,この場で確認いただければと思います。資料8の中段にございますように,本日1月20日の会議以降の予定でございますが,既に専門研究委員会の各委員の皆さまには,事前に日程のみご連絡差し上げているところでございますが,2月23日水曜日に,専門研究委員会,医学・歯学合同の第8回会議を予定しております。場所は,現在調整中ですので,また追ってご連絡しますが,2月23日の会議におきましては,現在実施しておるパブリックコメントの結果等を踏まえまして,今回の改訂に係る最終報告案を調査研究チームにおまとめいただき,それを提示いただき,ご議論いただいた後,専門研究委員会としての今回の改訂に係る改訂原案をとりまとめ,,その後,3月2日に,この専門研究委員会の親会議に相当します高久先生を委員長とする連絡調整委員会を開催して,改訂原案を提示し,ご議論いただき,可能であれば,その場で改訂内容の決定ができればというスケジュールを考えているところでございます。

 その後の資料でございますけれども,右肩に参考資料と付された資料を3種類準備させていただきました。参考資料1は今回のモデル・コア・カリキュラム改訂に関する基本方針,参考資料2は前回までにお示ししていた6月16日以降の連絡調整委員会並びに専門研究委員会における主な意見に関する資料で,12月20日に開催しました前回の会議での主な意見を追加したものでございます。参考資料3は前々回の会議までお示ししていましたけども,今回のモデル・コア・カリキュラム改訂に関する主な要望等をまとめた資料でございます。

 なお,資料番号は付していませんが,その後に,医学教育モデル・コア・カリキュラム,歯学教育モデル・コア・カリキュラムの概要として,1枚添付しております。

 その後に,追加資料でございますけれども,黒岩委員のほうから,横浜市立大学医学部における取り組み状況ということで,追加の資料の提示がございましたので,モデル・コア・カリキュラムの概要資料の後に,資料を1枚添付しております。

 さらに,本日追加で,東北大学の柴原先生からのプレゼン資料に追加いたしまして,机上にパンフレットとリーフレット,一つは青色の「研究者養成プログラム」というもの,もう一つは「リサーチマインドを育む医学教育体制の構築」という緑色のリーフレットをお手元に配付しております。

 以上でございますが,もし資料の不備,落丁等がございましたら,事務局のほうまでご連絡いただければと思います。

 引き続きまして,本日の議事進行についてでございますけれども,本日は医学・歯学の合同会議として開催しておりますが,本日の進行につきましては,医学教育担当の福田委員長にお願いすることといたしまして,歯学教育に係るヒアリングの進行についてのみ,歯学教育担当の江藤委員長にお願いしたいと思います。

 それでは,ここからの進行は福田委員長にお願いしたいと思います。福田委員長,よろしくお願いいたします。

【福田委員長(医学)】  ありがとうございます。おはようございます。きょうは,大寒で,一番寒い日だと思いますが,早くからの会議にご出席いただきまして,ありがとうございます。

 本日は,先ほどご紹介いただきましたように,モデル・コア・カリキュラムを活用した特色ある教育にかかわる取り組み事例のヒアリングとして,医学系では3大学,歯学系では2大学,計5大学から関係の先生にお越しをいただいております。

 今般のコア・カリ改訂に向けては,先ほど事務局から説明がありましたとおり,去る12月20日の委員会におきまして,ご意見を踏まえた中間とりまとめ案について,現在パブリックコメントを実施している状況です。

 本日は,今回のコア・カリ改訂後,各大学において改訂したコア・カリを活用して,自主的で,特色ある教育を展開していただけるよう,その事例となるような取り組みの発表の場にしたいと考えております。

 そこで,本日は,現在コア・カリを活用して特色ある教育を展開されている大学の先生方から,コア・カリを活用した教育の実施状況,あるいは今回のコア・カリ改訂にかかわる検討内容に関連した取り組み状況等について,ご報告をいただきたいと思います。

 具体的な進行といたしましては,医学系から,まず3大学,それぞれ15分程度,取り組み状況をいただいた後,3大学分について,まとめて15分程度の質疑を行います。その後,歯学系から2大学,それぞれ15分ずつ程度,取り組み状況をいただき,まとめて10分程度の質疑を行いたいと思います。歯学系につきましては,江藤先生に司会をお願いしたいと思います。

 それでは,まず初めに,東北大学医学部における取り組み状況につきまして,柴原先生からご発表いただきたいと思います。柴原先生,よろしくお願いいたします。15分程度と限られておりますので,よろしくお願いいたします。

【柴原氏】  おはようございます。東北大学の柴原です。本日は,このような機会を与えていただきまして,まことにありがとうございます。

 配付資料として,地域医療に特化してしまったものを用意したのですけど,何となくそれでは寂しいのかなということがありましたので,急遽,青い研究養成というパンフレットと,それからGPをいただいていましたので,GPのパンフレットを急遽用意いたしましたので,参考にしていただければと思います。

 まず,そのハンドアウトに加えて,ちょっとだけGPのことをご紹介したいと思います。東北大学では,平成20年度より学部教育ということでご支援をいただきまして,リサーチマインドを育む医学教育体制の構築ということで,一生懸命改革といいますか,従来の教育に,さらにバージョンアップするというふうな形で努力してまいりましたので,その詳細については追加で配付した資料をごらんいただきたいと思います。

 これは,どういうふうなことを東北大学では今までやってきたということの紹介ですけども,実は,医学臨床一次修練というものが平成13年,それから本学がかなり力を入れている基礎医学修練というものがありまして,これは平成元年から,現在では4カ月間,3年生の後半といいますか,11月から4カ月間,フルタイムで基礎医学の分野に配属されて研究をするという,これをすごく力を入れて継続してやっております。それから,平成13年からはMD-PhDコースということで,研究に興味のある学生諸君には,大学院の早期入学ということで対応してまいりました。

 こういうふうなことをずっとやってきたわけですけども,平成20年度からGPのご支援を受けまして,こういうふうなことをさらに強力に推し進めてきたという経緯がございます。

 実際に,これはどういうふうなGPのご支援でやってきたかということをまとめますと,要は,どうも最近の学生諸君は,昔と比べると風変わりになってきたということがありますので,目的意識を植えつけるというふうなことを,1年生のときには力を入れてやっております。もちろん高い倫理観,それから探究心を大いに伸ばしてあげようというようなことを一生懸命努力してやってまいりました。

 そのゴールとしましては,高い理想を持ってほしいと。そして,みずから医学を切り開いていってほしいという,そういうふうな学生,医療人を育てていきたいというふうに考えて頑張っております。

 具体的に,平成20年度には,日本学生支援機構の優秀学生の顕彰というのがございまして,これが平成20年度で,ここに示したように,大賞,優秀賞,奨励賞,昨年度も大賞をいただいております。実は,平成20年度も,ずっと毎年のように学生諸君はいろんな賞をいただいていると。これは,実は専門雑誌に投稿して,それをそういう論文のトップオーサーで研究したような諸君が選ばれているというような様子であります。

 ここで,そういうふうなことに簡単に触れましたけれども,これから地域医療ということに特化してお話ししたいと思います。ここからは配付資料と同じですので,配付資料をごらんになっていただければと思います。

 この定員増というのが,平成21年度から始まりました。平成21年度は10名,平成22年度,今年度は9名であります。9名のうち,そのうちの2名は研究養成のための定員増ということで,きょうお配りしました1枚もののリーフレットに載ってあります。平成23年度については,1名ということで,平成23年度からは入学数が120名ということになります。ただし,入学者の選抜に関しましては,地域枠はありません。地域枠というのは,本学の門戸開放の理念に反するということで,地域枠は設けていません。全員120名がAO3の入試,あるいは一般入試にて選抜するということにしております。

 これだけちょっと加えたのですけど,実は,先週の今ごろ,宮城県の村井知事が,ぜひ学生諸君にお話をしたいということで,村井知事が率先して,宮城県と東北大学で共同して作成した奨学金制度の説明会を行いました。これは,要するに定員増と絡む行事でありまして,村井知事というのは,実は自衛隊のご出身で,すごい行動力があるという方ですので,非常に好評でありまして,この結果,多くの諸君が定員増に伴う奨学金に興味を持っているということがわかりました。

 これからは,配付資料のとおりにご説明させていただきます。

 ここで地域医療関係の赤っぽいマークが,まさに地域医療に特化した科目でありまして,黄色いマークが関連科目ということであります。先ほど申し上げた基礎医学修練というのは,3年の後半に4カ月間,フルタイムで基礎研究をする。それから,地域医療に関する教育は,1年次から始まって,2年次,そして5年,6年というふうに実施しております。

 カリキュラムも,これは1年次と2年次,こういうふうな一般的なカリキュラムに加えて,地域医療,あるいは地域医療と関連する動機付け教育,これは平成21年度より,GPのご支援ということもありまして,地域医療の動機付け教育というものを導入いたしました。そして,3年次は,先ほど来申し上げている基礎医学修練,こういうふうに非常に整理されているのです。

 実は,問題は,4年次のカリキュラムなのです。先生方,ごらんになってわかりますように,4年次というのは,それぞれの外科学なら外科学,内科学なら内科学ということで,それぞれが講義をし,試験をすると。これはずっと数年来,改革をしよう,改革をしようというふうに言っていたのですけど,なかなか足並みがそろわないとか,いろんなご意見があって,もう最後のここは難所といいますか,ここを今,平成23年度は,まず第一歩として,かなりグループ分けといいますか,具体的には臓器別が多分中心になると思うのですけど,そういうふうなことで統廃合しようというふうに考えています。例えば,今の時代について言いますと,児童虐待,現状では小児科でも児童虐待を講義するし,救急でも児童虐待を講義すると。そういうのを統廃合しましょうというふうなことを,今議論しているところです。ですから,ここはかなり整理していきます。

 あと,5年次,6年次は,こういう感じで,主に臨床修練が中心になります。それと,普通の大学と違うところは,東北大学病院の場合には,東北大学病院ということで,医学部の附属病院ではないのです。東北大学の附属病院というふうになっていますので,病院と医学科が連携していろんな制度をつくっているということをお示ししています。

 地域医療に関するのは,また繰り返しになりますけども,1年次を含めて2年次,5年次,6年次ということで,かなりの時間を割いて教育をしております。特に大事なのは,1年生に対する教育ということで,動機付け教育というものに力を置いて講義をしています。これは,具体的には,例えばWHOで活躍されている方とか,あるいは実際の臨床の場で頑張っている方とか,いろんな方,あるいは臨床基礎研究で世界的な業績を修めたような先生方をお呼びして講義,それからワークショップといったことを開催するということも含めて,地域医療動機付け教育というものをやっております。2年次も同じような理念に基づいて,いろいろと実際の地域の医療施設に行って勉強をすると,体験実習をするというようなことを進めております。

 あまり時間がありません。5年次は,ちょっと割愛します。

 6年次も同じように高次医学修練というふうな科目を設けまして,長期の地域医療実習というものも導入して,地域との接点の増加を図っているということであります。

 これは先ほど来言っていました,1年次,4年次です。時間が押していますので,少し割愛させていただきます。

 問題は,卒業後の支援体制というのも非常に大事であると。東北大学の場合,歴史的に初期研修というのは大学病院でしてはいけないという伝統があったものですから,それは40年以来続けていたのです。それが新しい臨床制度になって慌てたといいますか,それではいけないと。大学病院でも研修をしてくださいというふうに大転換をして,もう数年たったわけですけども,現在では,うちの卒業生が大学病院で研修するのは,大体6人ぐらいです。宮城県の基幹病院で初期研修をするのが,大体二十五,六人ということで,合計すると30名ぐらいが,卒業後に宮城県に残っているというふうなことがあります。そういうことを,もう少しキャリア形成の支援を充実させるということと,大学院には社会人入学制度というものがございますので,そういうものが活用しやすいような制度をつくっていこうということを今やっております。

 これは先ほど言いましたように初期研修です。東北大学の昔の流儀は捨てて,初期研修を大学病院でやってくださいということを一生懸命,学生諸君にPRしてやっています。それから,地域の基幹病院とも連携を深めてやっているということであります。

 その他の取り組みとしまして,やはり高校生から,あるいは中学生から,そういうPRをしなければいけないということで活動をしています。

 それから,分野別の偏在対策としましては,産科,麻酔科,小児科,こういったものを集約した周産期総合診療医というものを養成する制度をつくっております。小児科は,宮城県のこども病院とも連携をするといったことです。あるいは,救急,感染症ということで,非常に熱心にいろんな制度をつくって,あるいは寄附講座なんかを利用して,今やっているところであります。

 最後に,女性医師の定着ということで,今,学内保育というものを充実させているということ。それから,女医さんとして活躍している先生をお呼びしたシンポジウムというものを年に一遍はやるというふうなことをやっております。

 以上,ちょっと駆け足でしたけども,ご清聴ありがとうございました。

【福田委員長(医学)】  大変ありがとうございました。時間内にまとめていただきまして,ほんとうにありがとうございました。

 引き続きまして,今度は同じく東北地方ですが,公立大学の福島県立医科大学医学部における取り組み状況につきまして,学長をされておられます菊地臣一先生から,ご発表をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【菊地氏】  菊地です。お願いいたします。

 コア・カリキュラムを基本として,本学では,6年一貫らせん型カリキュラムという形で取り組んでおります。そのイメージは,「人と人,総合科学と医学,大学と地域の融合を目指して」ということです。

 この6年一貫らせん型カリキュラムというのは,コア・カリキュラムの導入を契機として,抜本的につくり直したものです。講義を講座別講義からコースユニット制,そして臓器別講義に再編しました。さらに,その周辺に本学独自の発展的カリキュラムをらせん型に配置したところです。

 このらせん型というのは,総合科学系,それから生命科学・社会医学系,さらには臨床医学系を緊密に行ったり来たりしながら,学生の成長・習熟度に合わせて繰り返し発展的に学ぶ形をつくっております。

 では,簡単に結論からいきますと,まず今回の課題である基礎と臨床の有機的連携による研究マインドの涵養,これについては4年次と5年次に対する基礎上級の実施。それから,地域の医療を担う意欲・使命の向上については,1年次に福島学の講義。さらには,6年次,選択制ですが,ホームステイ型医学教育研修プログラムを導入しております。

 3つ目は,基本的診療能力の確実な習得,これに対してはスキルラボを活用したBSLでのプライマリー,これが5年次,そして6年次にアドバンストコースを行っております。

 いろいろ複雑なカリキュラムを円滑に実施するために,我々は新たに医療人育成・支援センターというものを独自に立ち上げました。

 では,まず基礎と臨床の有機的連携による研究マインドの涵養です。我々は,これについての問題点は,系統講義や実験・実習のみでは,みずから問題を解決する能力を涵養するのには必ずしも十分ではないという認識でいます。それに対応するために,4年次,5年次に基礎上級というシステムを導入しました。

 では,その概要ですが,まず系統講義終了後に,臨床実習直前に6週間,主に生命科学,社会医学系講座に配属されて医学研究を体験します。この間,他の講義や実習は行われません。今年度からは,総合科学も入れて,生物学とか,そういうものも入れております。身につけた知識や問題意識をもとに,担当教員とディスカッションし,テーマを設定します。そして,問題の解明・解決に向けた実験やフィールドワークを行って,これをきちんとできたものは,すべて英文の論文にさせています。

 また,希望者により提携関係にある中国の武漢大学への短期留学も選択可能としております。このシステムに関しては,既に35年間の実績がございます。長い間,提携関係にある武漢大学の短期留学については,希望者を募り,ここ3年間行っています。残念ながら,ほとんどが女性,これは成績上位者を選ぶことが一つ,あと男性では,ほとんど希望者がいない。もう情けない話なのですが。

 それで,基礎上級のシステムの教育効果はどうかということが問題になりますが,このグラフを見てもらうとわかりますように,卒後10年未満のドクターを対象にしたアンケートと,卒後10年以降のドクターを対象にしたアンケートで顕著な違いは,このブルーで示したところにあります。つまり問題発見,問題解決能力の態度です。つまり,この結果は,臨床経験が進むにつれて,問題発見,問題解決に役に立つカリキュラムであったことが,だんだん本人が理解してくるということを示唆しているのだと思います。

 では,次に移ります。地域の医療を担う意欲・使命感の向上というテーマですが,我々は,この問題に対する問題点としては,大学の中にいるばかりでは,地域や地域医療に関する実感的な経験が得られないという認識でおります。それに対して,ホームステイ型医学教育研修プログラムを6年生に選択制にしております。これは,現代GPや医療人GPに採択されて行ってきました。それが終了してからも,福島県にお願いして,平成20年以降は,福島県自身が金を出して,今も継続しております。

 ホームステイ型医学教育研修プログラムの概要は,この図で示したように,真ん中に学生や研修医がいますが,これを取り囲むように地域の診療所,そして地域の行政,そして地域の住民,この体制を大学がバックアップするというイメージです。

 これのプログラムの特徴は,一つは,地域医療でのホームステイ,つまり現代版下宿です。そこに寝泊まりして,住民にお世話になります。

 2番目に,現地に指導教員を派遣していることです。地域医療部の教員は,うちは外に置いています。大学の中には置いておりません。現地で実習の質を確保するために働いています。

 3番目は,テレビ会議システムを整備してあります。実習先の診療所と大学間で定期的に生の言葉で双方向に情報伝達をしております。

 最後に,これは思わぬ効果ですが,地域住民の医療従事者に対する理解が明らかに進みました。これは医学生が身近に生活することで,医療従事者への理解が深まったのだと認識しております。この有効性,あるいは可能性については,既にことしの『アメリカン・ジャーナル・オブ・パブリックヘルス』の最新号に,意欲のある地域のドクターを面接した結果,学生時代からこういうことに関心を持たせて実施をさせると,地域医療に従事するドクターが増える可能性が既に指摘されているので,この方向性は正しいのではないかと考えております。

 では,3番目,基本的診療能力の確実な習得です。これについての私たちが認識している問題点は,基礎的臨床能力の習得には時間がかかり,また習得に個人差があるということです。これに対応するために,スキルラボを利用したプライマリーコース,これは基礎編,です。それとアドバンストコース,応用編を導入しております。スキルラボについては、医療人育成・支援センターを設立して,管理,運営しています。

 では,このコア・カリキュラムを有効活用した教育の実施状況,その効果はどうかというのを,平成19年度版のガイドラインをもとに,本学でつくった実技教育の学習目標を設定しまして,その項目,各項目に小項目が5項目から6項目あります。それの平均を出したアンケートの結果です。これを見ると,「身体診察,小児・高齢者の診察が非常によくできる」というのが低いのが明らかです。つまり,コア・カリを利用すると,習得が不十分な項目が明確になるということがわかりました。

 では,その対策はどうするかということで,結果として,一つはスキルラボの導入で対応しよう。もう一つは,実習手帳をつくって,お互いにその実習手帳で情報交換,あるいは教育をしようということにしました。

 本学のスキルラボは,先ほど言ったようにベーシックとアドバンストに分かれておりますが,右のグラフは1年間の利用人数です。これは,講座によって必修,あるいは選択制にしていますが,1年間で3801件と非常に頻繁に活用されており,医学生の関心が高いことが窺えます。

 次に,学習手帳ですが,これは双方向性のオールインワン実習手帳の開発です。これは,平成22年度の大学教育・学生支援推進事業大学教育推進プログラムに採択されております。右の図が,そのイメージです。つまり,福島県は非常に広い,しかも文化的,地理的にも,山に隔絶された3つの地域に分かれておりますので,大学病院,あるいは地域基幹病院と医学生が広いエリアで臨床実習を行っている中で,コア・カリキュラムの円滑な実施というのは,なかなか大変なものがありますので,このシステムの導入を行うことにしたものです。

 このシステムは,セキュリティーを守りながら,大学と学生を双方向性に結んで,情報ネットワークで確立をする。そして,個々の学生に適した臨床実習の推進を行うために,臨床実習のポートフォリオを作成します。学生が端末で自学自習して,臨床スキルの到達目標を実感できる動画を用いた電子教科書を配信します。実際,もう既に幾つかの科では,この電子教科書は完成しております。端末として,ここにiPadと書いてしまいましたが,私は「i」とつくのは,みんな同じかと思ったら,iPod何とかというやつで,ちょっと違うようです。すみません。

 これによって,少なくともここの学生に適した教育が,教員と学生との間に双方向性にできることは十分に期待できると考えております。

 先ほどから言っているこれらを一括管理するのが,この医療人育成・支援センターで,平成20年度に設立しました。この組織は,学生教育を行う医学教育部門と,卒後の研修医教育を行う臨床医学教育研修部門の2つに分かれております。この卒後研修のほうには,女性医師支援センターも入っております。

 ここで非常によかったのは,県にお願いして,合計30名のスタッフを用意できたことです。そのうち准教授3名,助手・助教専任が11名おります。この14名が専任です。この3人の准教授が,それぞれ学生教育の医学教育部門,研修医教育の臨床医学教育研修部門,そして女性医師支援センターのそれぞれの実務担当責任者に就任して活動しております。

 医療人育成・支援センターの事業イメージは,前にも書きましたが,このほうが簡単にわかると思い,こちらを参考にしてください。つまり,スキルラボ,それから出前講座,それからイングリッシュコミュニケーションセミナー,全員参加型FD,それから卒後は,研修医レクチャーなど,さまざまなことを行っております。女性医師支援センターは,政府が推進している内容を実際ここで行っています。地方の女性医師支援は,都会の場合と違って,復職が主目的ではなくて,継続するためにはどうしたらいいかというのが主体となります。

 これが6年一貫らせん型カリキュラムの成果です。福島県立医科大学は,今,学位離れが叫ばれている中,後期研修とともに,大学院に入って,学位も取れるということにして,そして臨床研究でも学位を取れるように改訂しております。その結果,多くの人数を獲得しております。

 最後に,平成24年度末には,新たな大学,従来の大学にはできなかったコンセプトで,この会津医療センターというものを附属病院として開設いたして,もう工事が始まっております。

 コンセプトは,ここを地域医療の拠点にして,5年,6年生の地域医療の実施をここで行う,ここを拠点に行う。病院のコンセプトは,ここ会津地方というのは,ご存じかもしれませんが,超高齢社会です。そこで,65歳教員の定年制の撤廃,それから教育職ではなくて,医療職として待遇して教育を行ってもらうというものです。

 以上です。ありがとうございました。

【福田委員長(医学)】  ありがとうございました。組織的な取り組みをご紹介いただきました。ありがとうございました。

 引き続きまして,兵庫医科大学医学部における取り組み状況につきまして,鈴木敬一郎先生からご発表いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【鈴木氏】  兵庫医科大学の鈴木でございます。このような機会を与えていただいて,ありがとうございます。

 きょう与えられたタスクの中で,どこの大学でもやっているというようなことは少し短めにいたしまして,私のほうからは,基本的な診療能力の確実な習得,こういったことを中心にお話しさせていただけたらと思っております。

 ここに書いてございますように,統合カリキュラムの実施ということは,大概どこでもやっておりまして,統合カリキュラムが円滑に実施できるよう,本学では,ここに書いてありますように,一つの例として「内分泌代謝の疾患」,これは私の本職が生化学でございますので,内分泌代謝内科,糖尿病内科,産婦,外科,病理,生理,解剖,生化が,一体となって科目を構成し,重複がないように一元化したテキスト,これは電話帳みたいであまり良いテキストではございませんが,こういったものをつくりながら導入しております。

 そのほか,症候学をTBLで入れたり,臨床入門,医療入門,医の倫理とプロフェッショナリズムというような科目新設,あるいはカリキュラム上の工夫でも哺乳動物の解剖を経て,人体解剖,臨床解剖へ進むといったこと。あるいは,教養教育では,関学と包括協定を結んで,関学へ派遣してリベラルアーツを1日学ばせるというような工夫もしております。

 臨床実習のほうは,これもまた他大学同様,クリクラを4週間導入いたしまして,いわゆるクリクラではない従来型の模擬診療型の実習と組み合わせて,学生さんを教育しておりまして,後でアドバンスト・オスキーやプレゼンテーション試験の話はいたしますが,4大学実習すなわち関西医大,大阪医大,近畿大学の医学部との相互乗り入れ等もして,教育を行っております。

 これは取り組みなのですが,まずお話しいたしたいのは,基本的診療能力の確実な習得ということが一番問題でございます。私どもがやっていますのは,診察法実習をプレクリニカルとして充実拡充する、スキルラボを充実させる。これらもどこでもやっているところですが,一応専任担当者として看護師3名を配置して,実務に当たらせるています。あと,アドバンスト・オスキー,臨床実習評価の改善,プレゼンテーション試験の実施でございます。

私どもの特色といいますと,まず評価を充実しようということです。良いプログラムをつくれば,上の3分の1ぐらいの子は,それで伸びるます。しかし,私たちは100人を医者にしなければいけない。そうなったときに,どうやって質の保証をするのかと。あるいは,どうやってモチベーションを上げるかということは,やはり評価だと。最近の若い学生さんは,評価されないことはしません。評価されることは,すごく一生懸命します。ですから,正しい学習を導くために正しい評価をしようというのが最大の私どもの取り組みでございます。

 まず,簡単にプレクリニカル教育ですが,これは従来の診察法実習を拡充いたしまして,こういうようなコミュニケーション教育,あるいはカルテ記載,感染防御,放射線防護,トリアージ訓練,救急実習特別講義等で,臨床前の教育をしております。

 また,先ほど言いましたスキルラボの充実ですが,医療人育成センターとして整備いたしまして,事務職を含め,看護師3名を,ちょっと無理を言って来てもらっています。婦長クラスが2名おりまして,非常に学生に熱心に指導しております。手洗い実習なんかも,Ope場以外に設置するとか,あるいは兵庫医療大学という姉妹大学と交流をして,チーム医療,多職種連携教育も行っております。

 まず,私ども,今取り組んでおりますことは,臨床実習評価の改革です。私ども教育現場の第一線におります人間から申しますと,びっくりされるかもしれませんけど,普通,これまでの臨床実習というのは,まじめに一生懸命やっていたら進級できるのです。本学は,ここに書いてございますような,知識,病歴・診療技術,実習態度,積極性,自主性,思考力,プレゼンテーション能力でA,B,Cと評価して,Aは0点,Bはマイナス0.5,Cはマイナス1。累計がマイナス12点で留年というふうなことです。結局,無遅刻,無欠席でまじめだけど,こういう能力に劣っている学生は留年させたりします。1名程度ですけども。これは,ひょっとしたら医学教育に直接かかわっていられない方は,そんなことがエネルギー要るのかとおっしゃるかもしれませんが,これは実は大変エネルギーの要ることでございます。それに関しましては,各項目において詳細な基準をつくっておりまして,例えば知識,知識の基準は大体何でもいいのですけども,例えば病歴・診療技術においても,「どちらかといえば基準に達していない」といっても,どのように達していないのかまで規定して,各診療科の先生に判定をしてもらっています。例えば,実習態度に至っては,ここに書いているように,恥ずかしい話ですけど,「カンファレンス中に居眠りをする」とか,「患者さんが乗るスペースがないのにエレベーターから降りようとしない」というように,この詳しい実例まで挙げて,評価基準を決めております。あるいは,積極性,自主性。これも,例えば真ん中辺にございますような,「促されて質問するが,質問内容が低レベルにとどまっている(CHOPとは何の略ですか)」。これは作成されたのが血液内科の先生ですので,化学療法のほうが入っているわけですけど,こういったところまできっちり決めています。こういったものがないと,やはり私学ですので,高い授業料をいただいている。その中で,あなたのお子さんは,あるいは君は,診療能力が低いから留年ですという説明はできない。それで,この厳しい評価をしようと。こういうことをやりますと,すごく学生は締まります。ここに書いていますが,思考力,「病態について考えたりしない」とか,こういったような基準を設けておりますし,プレゼンテーション能力は,クリニカルクラークシップの最終週にやってくれということを各科に求めておりますし,その内容につきましても,このような規定をしております。

 プレゼンテーションの到達目標等も,こういうように決めており,学生にはもっと詳しいものを配付しております。

 もう一つは,アドバンスト・オスキーでございます。本学は,平成14年度から1学年全員に同じ課題をやっております。平成15年の秋の11月,これは医学教育学会等でたびたびご報告させていただいておりますけども,厚生労働省の当時の畑尾班のシナリオを,そのまま使いまして,医師国家試験の予行演習として,11課題をやっております。これはできたのですが,その後は,11課題はなかなか大変ですので,一応こういった課題数を設けております。

 私どもの目的は,学生を評価する。到達目標を明示する。意外と臨床実習のシラバスには書いてあるけども,それほどはっきりとした明示がないのです。これを明確に明示しようと。臨床実習そのものの評価をしようと。クリクラを導入して,ほんとうに診療能力が上がったのかという物差しを,アドバンスト・オスキーでできないか、という評価もしようというふうに考えております。

 ここで申し上げることではございませんけども,やっぱり個々の部分は行えても,一連の流れで診断ができない,こういったような問題点は出てきておりまして,こういったことを教育にフィードバックしていこうというふうなことがございますし,課題についても,医療面接はみんな上手になっていると。むしろ面接とか診察手技よりも,判断とか診療の優先順位が学生は苦手だなとか,そういったことがだんだんこういったことの評価からわかってきておりますし,当初は畑尾班の課題をしておりましたが,最近では遺伝カウンセリングの課題を与えるとか,こういったことをやっております。

 もう一つは,プレゼンテーション試験。これはクリクラの各科のプレゼン評価とは別に,大学を挙げて,年に一回プレゼン試験をやっておりまして,これも臨床実習責任者,担当診療科の教員,そして医学教育担当者(私か専任の成瀬准教授)で,3人の合計点でやっております。これも,これ一発で留年させておりますので,学生は異常な緊張でやっております。

 臨床実習の評価,臨床基本能力を,このぐらいの細かい項目で評価するということが,やはり臨床実習に対する学生の態度を一変させるというふうな効果を期待しております。

 それから,あと少しだけ,兵庫の地域枠ということでございますが,本学は県推薦というのは開学当時からございまして,授業料免除をいたしまして,要するに自治医大方式,ローカルな自治医大方式の学生が5名,それから地域枠推薦,これは今回の定員増に伴うものでございますが,これは授業料減免がなくて,義務もない。ですから,こういった学生に対してのモチベーションを上げる教育というのが,実は非常に問題になってきております。

 学生に聞きますと,地域医療のイメージは,献身的で社会的で立派と。でも,僕には無理ですという感じになって遠のいていくと。兵庫県の実態は,550万の人口に,うちと神戸しかありません。正直なことを言いまして,東北地方,北海道,九州地方の方が聞いたら,怒るような病院,例えば人口5万人の篠山市の兵庫医大の分院にも,だれも行き手がいない,そういう状況です。離島といったって,淡路島と家島ぐらいしかないというようなことで,全くコンセプトが違うので,むしろ私たちとしては,手短に申し上げますけども,僻地の病院に行くよりも,むしろ僻地の病院をコントロールする地域中核病院で,振り分けもできる,全科診療ができるスーパードクターに君たちになってほしいというようなことで,モチベーションを与えるようにしています。

 その中核となりますのは,篠山の医療センターで,地域総合医療学という講座,県の寄附講座の地域救急医療学を中心にしています。要するに,いろんな大学で,もっと熱心な取り組みもされておられると思いますけども,こういったところでの取り組みというものをしておりまして,時間がございませんので省きますけども,こういったような連携をとりながら,地域医療のモチベーションを明るい方向で上げていくというふうに思っております。

 1年から4年は通常のカリキュラムがございますので,夏休みを中心に体験旅行とか,現場実習でございます。5年生以降は,クリニカルクラークシップを選択制にするということもしておりますし,6年の学外臨床実習期間においても,地域医療の中核病院に出そうとか,あるいは初期研修も配慮して,後期の専門医資格の取得まで大学のほうでサポートしようということです。ここに書いてございますように,ほとんどのカリキュラムはほかの学生と同じで,非常にお得な,大変有利だと。だから,むしろここに選ばれて入ってきたということは,非常にメリットがあるのだということを意識して,ぜひ地域医療に取り組んでほしいというふうな方向です。県推薦の学生は授業料免除,自分たちは授業料を払っているのに田舎に行けというだけでは,学生にモチベーションが上がらないというふうに考えております。

 私学でございまして,臨床医養成が中心でございますので,なかなか研究マインドの涵養というのは難しいところでございます。一応,基礎講座配属の制度,あるいは医学会講演会の学生参加,これは今後,私が生化学で取り組む予定でございますが,実習をもう少し,学生が自分の検査,アルコールの弱さとか,自分の脂質代謝とか,そういったものは自分で見れるようにやっていきたいと,そういった実習に変えていきたいと考えております。

 この件に関しましては,私自身が最後にちょっと一言だけ申し上げさせていただきますと,日本生化学会の医学部の教育委員長をしておりまして,実は研究者の不足とかにも取り組んでおります。やっぱり大学といたしましては,大学病院は何のためにあるかというと,教育のためだけではなくて,これまで治らなかった病気が治るようになるということでの国民の期待にこたえるべく,やっぱり臨床研究にも力を入れていただきたいと思っております。

 最後、先ほどの評価の件ですけども,これは私の個人的な意見ですけども,これまで大学というのは評価から逃げていた。評価するということは,とてつもないエネルギーが要ることなのです。ですから,今まで入学試験と医師国家試験に評価を任せていた。私たちは,これから頑張って評価をしようではないか。ただし,その評価に,何で大学がモチベーションが上がらないかといいますと,落とすだけの評価のために大学の教員のモチベーションは上がらないのです。ですので,私自身が考えておりますことは,その評価をプラスに使うと。ちょうど厚生労働省の皆さんもお見えですので,例えば,研修と医師国家試験も,大変な学生への負担になっています。だから,アドバンスト・オスキーとか,臨床の実習評価ですばらしい学生は,研修,みんな要らないのではないかと。半年や1年で研修終了にして,基礎系の大学院に行くもよし,地域医療の現場に出るもよし,自分が向いてないと思ったら研修をあきらめて,基礎医学者になればよし。やはり,この卒前卒後の評価を連携させて,大学に評価のモチベーションが上がるような改革をしていただけたらというのが私の現場からのお願いでございます。

 以上,ちょっと差し出がましいことも申し上げました。失礼いたしました。

【福田委員長(医学)】  ありがとうございました。大変効果的な取り組みをご紹介いただきました。

 一応3大学終わりましたが,ここで委員の黒岩先生から,横浜市立大学における取り組み状況について,追加で情報提供をお願いしたいと思います。5分程度でよろしくお願いいたします。

【黒岩委員】  ありがとうございます。全国医学部長病院長会議会長の黒岩でございます。

文部科学省におけるモデル・コア・カリキュラム見直し検討会議では,3本柱,診療技能教育の充実,地域医療マインドの涵養,研究マインドの涵養が決まっています。この3本柱を中心にいたしまして,1,臨床実習の充実,2,地域保健医療教育の充実,3,研究マインド教育の充実(モデル・コア・カリAの主項目とする),4,医学基礎教育の充実,準備教育モデル・コア・カリキュラムにあります生命現象の科学の教育を,モデル・コア・カリBに含める。5,項目の整理の観点から学生が学びやすいように再編成するなどについて,合意が得られました。

 横浜市立大学医学部におきましても,これらを踏まえ,何度も会議を重ねた上で,医学教育の改革に取り組んでまいりました。

 それでは,先ほどの文科省で合意された1,2,3,4,5の各項目に対応した形でプレゼンをさせていただきます。

 まず,1番目の臨床実習の充実でございますが,診療技能教育の充実を図るため,臨床実習を1年10カ月間実施いたしまして,6年次教育の空洞化を排除いたしたいと思います。具体的には,内科,外科などのコアになる各科は3週間,それ以外の各科は1週間ないし2週間といたします。これは仮称でございますが,スチューデント・ドクター認定式を5年の臨床実習の前に行いまして,白衣授与式を,今年から始める予定でございます。この臨床実習が充実するためには,臨床実習前の臨床系統講義とのつながり,あるいは臨床実習後の初期研修とのつながりがシームレスになるということが非常に重要なことかと考えております。

 2番目の地域保健医療教育の充実でございます。地域保健医療のマインドを涵養する教育を活性化し,社会医学教育を充実させます。先ほど,福島県立医科大学におきましても,地域医療教育を2年生からはじめるということでございますが,できるだけ2年生,あるいは3年生からのアーリーエクスポージャーの形を私どもも考えております。

 3番目の研究マインド教育の充実ですが,リサーチマインド教育プログラムを充実させるということでございます。具体的には,基礎,臨床両方の教室研究配属期間を4年生の1学期に設けまして,優秀な成果を上げた学生には,医学部長賞を授与するということを考えております。この医学部長賞の授与につきましては,既に昨年から始めております。本学におきましても, 5年生の1名が,米国内科学会の日本支部で発表いたしまして,日本一の評価をいただき,黒川清支部長から表彰されました。また,6年生の優秀な学生1名は,基礎医学教室に来年度から入る予定ですが,優秀な学生は特に,できるだけ早期からリサーチマインドを育てていくという方向性で考えております。

 それから,病理解剖の重要性につきましても,学生のころから教育面で強調していくということを心がけております。

 4番目の医学基礎教育の充実でございますが,医学科基礎教育科目は,準備教育モデル・コア・カリキュラムである,教養教育と医学専門教育の橋渡し科目でございます。2年ぐらい前から本学におきまして,こういうカテゴリーの科目群をつくっております。これらの充実,具体的には医科学演習,これは短期間の1カ月間ほどの教室配属、それから,生物学,物理学,化学,臨床心理学の教育を充実させ,専門の授業や実習に入る前の基礎学力を養うようにいたしております。語学教育の充実ということにおきましては,1年生の時にアドバンスト・プラクティカル・イングリッシュのカリキュラムを活用し,医学英語を5年生で学ばせたりいたしております。

 それから,5番目の学生が学びやすくするための項目整理として,問題基盤型教育のスリム化を図りました。現行のPBLの一部を症候学講義に分離させまして,学生が学びやすいような臨床系統講義の再編を行う取り組みをいたしております。

 臓器別の講義というのは非常に重要でありますけれども,内科学の中での臓器別講義というものを重視しました。やはり内科学の中で完結され,外科学とは分けるという形で臓器別講義をやるほうが,学生にとっては理解しやすいというふうに考えております。これは過去5年間におけます横浜市立大学における臓器別系統講義の結果の反省として,そのように今考えております。

 歴史に磨かれた医学教育の取り組み,また整理された知識によるすぐれた講義,実習,そういうものに合理性があると,そして,いい教育は必ず国民のためになるというふうに確信して,取り組んでいるところでございます。

 お時間をいただきまして,ありがとうございました。

【福田委員長(医学)】  ありがとうございました。

 それでは,以上,予定いたしました発表はお聞きしましたので,これからディスカッションの時間をとりたいと思います。発表全般にわたって,委員の先生方,いかがでしょうか。どうぞご遠慮なく,よろしくお願いいたします。

  初めに,私のほうから福島県立医科大学の菊地先生にお伺いしたいのですけど,県立医科大学という立場,公立大学で,県との協力関係はかなり大事で,これは別に県立でなくても国立大学などでも同じだと思いますけど,そういう連携の仕掛けを,先生は多分大変ご努力されておられると思いますが,その辺のノウハウを教えていただければ有り難いのですけが。

【菊地氏】  確かに先生のおっしゃるとおりで,県立は県が設置者ですから,金予算も人も県が主導権を持っています。ですから,今,私は知事や副知事とは,月に1回か2回は定期的に行ったり来たりでコミュニケーションをとっていて、結果的に,ここ四,五年で150人近い教員を増員してもらいましたし,予算も年平均で1~2%ぐらい伸びています。知事や副知事には一般の人が思っているようなお医者さんの給料は高い,医者が増えるとたいへんだ、という固定概観念を崩すために,大学の教員は想像以上に安い給料で,ぎりぎりの生活をしているのだ、入れ替わりも頻繁で10年もとどまる人は少ない、そういう話をすると,がらっと認識が変わります。それでその人たちを実際に雇うことができたわけです。しかし、県にも,やはり県民に対する説明責任がありますので,我々は全県内の医療機関から希望をとって,増員となった教員を週1回から1.5回の専門的医療,あるいは地域医療に派遣して,県内の医療の下支えに努めています。おかげさまで、県にとっても県民にとっても大学にとってもメリットがありますので、うまくいってます。

【福田委員長(医学)】  ありがとうございました。大分ご苦労されているお話で,会津病院は,大学病院なんですか。

【菊地氏】  大学病院です。

【福田委員長(医学)】  ありがとうございました。

 どうぞ,ほかにご質問がありましたら。

【奈良委員】  各大学とも非常なエネルギーを割いて,積極的に改革を進められており、感銘を受けました。

 幾つか論点があり,基本的診療能力,地域医療,それから研究能力と分けてディスカッションをしたほうがいいかもしれません。最初に,基本的診療能力について、兵庫医大の鈴木先生にお伺い致します。先生は積極的に評価を重視されており,とても大事なことだと思います。モデル・コア・カリキュラムには,評価のことは出てこないのですが,できればポートフォリオ評価を入れるなど、評価も明確化した方がよいかもしれません。1点ちょっとご質問させていただきたいのは,知識等の評価ではとか,A,B,Cに分けていらっしゃいますが,評価を学生に対して形成的に使っていらっしゃるのでしょうか?というのも,プレゼン能力の評価が,1回でだめだということをお聞きしたのですが,むしろ,形成的に評価して,ここは君だめだったから,もう少し勉強し直しなさいという形での評価もあって良いのではと思います。もちろん最終的には総括評価になろうかと思いますが、形成的評価と総括的評価をうまく使い分けていらっしゃるかどうか,ちょっと確認させていただければと思います。

【鈴木氏】  難しいところでございますけども,まず,一応私ども全学挙げてやりますプレゼンテーション評価は,再試験のチャンスはございます。各科の診療の累計ということに関しましては,ちょっと時期はずれたりするのですけど,年度途中,秋ぐらいに,一度,君は何点だよという中間フィードバックをして,点数の悪い子は,臨床実習責任者に,どの部分がマイナス点が多いのかというのを聞いて教わったりするということになっております。ただ,正直に言いまして,各診療科が自分のところが何点をつけたかをあまり大っぴらに学生に言ってほしくないというような雰囲気の講座もありまして,ここの講座のここで,この点数がすごく悪かったというところまではフィードバックしておりませんが,臨床実習責任者が全体を見て指導をするという体制をとっております。

【福田委員長(医学)】  ほかに,どうぞ。

【奈良委員】  あと,もう一つご質問させて下さい。アドバンスト・オスキーを積極的に導入されていますが,具体的にLong Caseなどを使われて評価されているのでしょうか。

【鈴木氏】  普通の4課題は,胸部診察とか,腹部診察のような症例を提示して,あるいは通常の,昔の畑尾班のアドバンスト・オスキーの課題とよく似た課題が4課題。もう1課題が,患者説明ということで,遺伝カウンセリングの課題とか,要するに患者説明課題が1課題。ことしの場合には,女子学生を模擬患者にして,結婚相手にファミリーアルポルトーシスがあるけども大丈夫でしょうかというような遺伝カウンセリングの課題をしております。

【福田委員長(医学)】  ありがとうございました。ほかにはございませんか。

【光山委員】  研究マインドの涵養というのが今回強調されておりまして,どの大学でも非常に積極的な取り組みをしていらっしゃるということは,よくわかりましたけども,特に東北大学の柴原先生にお伺い致します。先生のところでは,3年生の4カ月ぐらい基礎配属ということですけども,具体的に基礎配属というのは,かなり前から全国的にやられていまして、反省点があってむしろやめたところもありますし,積極的に取り入れているところもありますけれども,長らくのご経験で,全員一律基礎配属をする最終的なアウトカムに対する総括というか,どのような評価が今,先生のところでなされているかを,ちょっとお伺いさせていただけますでしょうか。

【柴原氏】  うちの場合には,平成元年から導入していまして,ただ,アウトカムの数値的な,そういう評価というものはしていませんけども,教員,学生の評価としては,非常に満足度が高いという,そういうデータはございます。ですから,これまでのところでは,大きな問題点というのはありません。ただ,しばしばあるのは,教室と学生のミスマッチというのは,年に二,三件あります。そういう場合には,途中からでも変えてもいいというルールをつくっていますので,最近では,私は相談に乗って,調停というとオーバーですけども,より適した分野に変えるというのですか,そういう事案が毎年一,二件ありますけども,それぐらいで,おおむね学生による評価もすごく高いというふうに理解していますので,問題点はないと。

 あと,留学する子も多いですし,海外の学会で発表する子,もちろん,それがきっかけとなって論文発表ということで,先ほどちょっとお示ししたいろんな賞をもらうような学生諸君も,毎年ように出ていますので,すごくそういう意味では学内的には評判はいいと,評価は高いというふうに思います。だた,数値的なそういうエボリューションというものはありません。

【福田委員長(医学)】  あと,ほかにないですか。

【奈良委員】  東京医科歯科大学でも研究室基礎配属を5カ月行っています。医科歯科大学ではが現在でも2年残っていますので、医学の専門教育は1年半しかありません。そこで、研究を5カ月もやっていても大丈夫なのかと学生に聞くと、学生の満足度は極めてが高く,ほかは削ってでもいいから,研究室配属は止やめないでくれという意見が多いのです。ただ,東北大学と違うところは,私どもは基礎教室だけ競ではなくて,臨床教室にも配属させております。臨床研究の必要性は高く、それが学生の満足度が高いことにつながっているのかもしれません。

 柴原先生にお聞きしますが、MD-PhDコースを10年ほど前に導入されていますが,実際に導入によって,医学研究者が増えたかどうか検証はなされているでしょうか?おそらく臨床研修制度が入ってから,変わっているかもしれませんが, MD-PhDコースを導入したことで医学研究者が実際に増えたかどうか、データがあればお教えいただければと思います。

【柴原氏】  現状では,やはり研修制度の影響をもろにかぶっています。ですから,MD-PhDコースの卒業生,第1期生が,今,初期研修をやっているというか,やらされているというか,やっている状態です。ですから,どれくらい研究者として戻ってくるかというのは,まだわかりません。ただ,GPのおかげかどうかわかりませんけども,今年度,平成23年度の入学者,MD-PhDコースの希望者が3人います。これは今までで2回目に多い数値でした。大体,例年1人か2人,あるいは1人もいないということが多いのですけども,来年度の入学者は多分3人になるだろうということで,やはりMD-PhDコースは,それなりの意義があると。ただ,中には,やはりMD-PhDコースに入ったけどもやめてしまう子も数人,1人,2人います。それは,やっぱりミスマッチというか,実際に入ってみたけども,研究の難しさ,あるいは人間関係等といろんなことがあるのですけども,そういうことでもって挫折といいますか,予定を変えて復学するという子も,過去に2人いますね。

【福田委員長(医学)】  ありがとうございました。では,最後にしたいと思います。

【北村委員】  先生方,ご発表ありがとうございました。私ども東京大学におりますが,共用試験機構では,オスキーの責任をやっておりますが,ご発表の中で,いわゆる共用試験機構が行う共用試験,CBTとオスキーに関する評価というのがなかったので,ぜひお伺いしたいと。基礎医学者,あるいは研究者を育てる上で,4年次に行うCBTとかオスキーというのは,場合によっては邪魔なのではないかと。ほかのタイミングでやったほうがいいのかというご意見も聞くこともありますし,福島のように,連続したスパイラルの中で途切れてしまうことがよくないというお考えもあるかなというふうにお伺いしていたのですが,いかがでしょうか。

【柴原氏】  まず私から。これ個人的な意見になってしまう,別に大学として議論したことはないのですけども,オスキーとCBTを,今4年次の最後に課しています。これは必修で,それが不合格だと病院実習はさせないというふうにしています。個人的には,CBTはすごくいいなと思っています。といいますのは,CBTがあるおかげで,各教員がコア・カリキュラムを意識しながら,かつ独自の教育もできると。つまりCBTという関門といいますか,要するに最低限知っていなければいけないというものを,CBTを利用して確認できますので,そういう意味で,教員に対しては,すごいプラスといいますか,安心感を与えているのではないかというのが,私の個人的な考えですけども,思っていますので,大いに活用させていただいています。

【北村委員】  オスキーは。

【柴原氏】  オスキーは,実は毎年1人ぐらいオスキーで引っ掛かる子がいるのです。あれは非常に助かります。つまり,そういう子は,いろんな問題を抱えている子の場合がほとんどなのです。ですから,それを,言ってみればメンタル的なことで落とすというのは非常に困難,容易ではないという場合がありますけども,オスキーというああいう評価方式がありますので,当人も納得しますし,そういう意味ではオスキーというのはすごくいいなと。本学では,CBT,オスキーが合格することが大学病院にいらっしゃる患者さんと接するための最低限のマナーであるというふうに指導していますので,オスキーというのはすごく役立っているというふうに考えています。

【菊地氏】  本学では,オスキーのほうは再試験者が明らかに減っています。おそらくスキルラボの活用によるものと認識しています。それから,CBTは平均点が明らかに上がってきています。ですから,両方とも非常に有効なのだというのが学内の,みんな一致した見解です。

【鈴木氏】  一言だけ。オスキーに関しましては大変有効だと思っております。ただ,CBTに関しましては,やはり復元本等が出まして,若干改善すべき問題点が多々あると。実は,基本的診察能力の中で,ほんとうに大事なのは聴診器の聞き方ではなくて,臨床推論なんですよね。本学では,やっぱりCBTだけが定着した世代の学生の臨床の現場における評価が,逆に下がっているということがありまして,実は,ことしからCBTと50%・50%の比重で,本学独自の臨床推論をするペーパーテストとCBTの平均点で進級を決めることにいたしました。時間がないので,ペーパーテストの話は出しませんでしたけど,ここにあるのですけど,こういうような臨床症例を出して,これはアメリカではよくあるコンピューターでやるやつと同じですけども,1問目は,この疾患を理解するために,問診で,何を1番を聞くか、重要性とか,2問目は,考えられる病態,治療法が選択された理由と,こういうふうな臨床推論を問うような記述式の症例問題を同時に実施するというようなことで,正直,CBTの欠点を補っているというのが現状でございます。

【福田委員長(医学)】  ありがとうございました。大分時間が延長してしまいましたので,ちょっとまとめさせていただきます。

 3人の先生方,それから黒岩先生からご発表いただきまして,やはり目指している目標に向けて,かなり共通に努力されているということが非常によくわかりました。これからの検討の過程で,多分参考にさせていただかなければいけない事例がたくさんあったと思います。東北大学の事例もそうですし,それから福島県立医科大学の評価の臨床実習のこと,それから鈴木先生のところからの評価の重要性,努力してやらなければいけないということだと思います。それからCBT,オスキーだけではなくて,もう少し工夫するという,かなり大事な論点が出てきました。これを私どもとしても,この委員会としても,今日は非常に有効な資料というか,重要な情報を提供いただきましたので,参考にして,引き続き検討させていただきたいと思います。

 これで,まだ議論は尽きないと思いますけど,歯のほうがありますので,医学のほうは,これで終わりにさせていただきます。先生方,ほんとうにどうもありがとうございました。大変貴重なご意見,ありがとうございました。

 それでは,江藤先生,よろしく。

【江藤委員長(歯学)】  それでは,歯学教育に係るヒアリングとしまして,まず昭和大学歯学部の取り組み状況につきまして,向井美惠先生からご発表いただきます。向井先生,15分程度でよろしくお願いいたします。

【向井氏】  すみません,ちょっと機会のトラブルですので,レジュメのほうでご説明させていただきます。

 昭和大学の向井です。このような形で機会を与えていただきまして,ありがとうございます。

 私のプレゼンテーション,特に1枚目の下にありますように,うちの昭和大学は,医・歯・薬・保健医療の4学部からなる医系総合大学です。だということと,それから歯学部は,まだ1977年の開設ですので,33年しかたっていません。ないということ。それから,1年次に全学部が混成された寮生活を送っておりいるということ,それが非常に大きな特徴であります。

 それで,1学年600人の寮,全員が富士吉田の寮でやっております。1年間を過ごしますので,教育が全寮制から始まるという特徴がございます。

 ここにありますように,コア・カリキュラムを基本としまして,共用試験を中核に据えまして,それから教育理念の設定をしました。その内容は字体,ちょっと色が変わっております。チーム医療の一員としてのというチーム医療と,社会性のある歯科医師をめざしたということで社会性と,そして全身とのかかわりについてということで,これは医学部と薬学と保健医療学と一緒に学びながら,口腔領域の疾患をということで,生涯にわたっての学習をめざしています。ということで,これらをベースにしたカリキュラムポリシーと,臨床実習も終了時のアドバンスト・オスキーをやっております。ので,そこで卒業時のコンピテンシーと,そして卒業時のディプロマポリシーを明確にしまして,各学年のそしてシラバスの最初に,この3つを掲げながら,学生のシラバスで,いつでも目に触れるようにしております。

 この特徴でございますが,カリキュラムの特徴は,ここにあります早期からの,そして学部連携教育にあります。の,そして4学部の約600人を8人くらいの小グループに分けた連携PBLを,1年次から4年次まで行っていますに。そして,また連携の臨床実習を5年次,6年次に学部横断で行っています。このようなそして,問題解決型学習とコミュニケーション教育と,それから先ほどの社会と歯科医療の実施によるスパイラル教育システムが特徴です。終了時のオスキーに社会性という,このような特徴で,1年次から6年次までの教育の場は内容はこのようで,1年次が富士吉田,2,3,4年生は旗の台という品川区のメーンのキャンパスで,これは医学部,歯学部,薬学部と3学部が一緒の建物で講義を受けておりますので,非常に横のつながりができやすい。5年生になりますと,病院が別になりますので,洗足の歯学部の病院のほうに分かれていきます。

 そこのような形で,特にチーム医療ができる医療人を育てるというのが学部連携教育をメーンにして行っていっておりますので,ここではスライドの図の左手のところが1年,3年,4年,5年,6年,このような学部連携教育に,歯学教育がどのような関連で関与していっているかということの図でありますが,時間の関係で,後で確認していただければと思います。

 それで,4学部の連携実習は何をしているのかというのが,これでございます。例えば,1年次は学部連携のPBLをしております。初年次の体験実習,初年次の救命救急や,医療コミュニケーション入門,3年生ですと,学部連携のPBL,これはシナリオはパーキンソン病,リウマチ,脳梗塞,高齢者の転倒なんかのシナリオによってPBLを,各学部1人から2人の混成チームでやっております。

 4年生になりますと,病棟シミュレーションの学部PBLで,これは脳梗塞の病棟カルテなんかの記録を参考にしまして,それをシナリオ化したもののPBLでございます。

 5年生は,連携病棟です。が5,6年の,これも医・歯・薬・保健医療学部の混成チームで110チームでございますが,35病棟で3回に分かれて,1週間ずつ学部連携病棟実習を行います。

 6年生は,これは選択実習で,1カ月の学部連携のアドバンスト実習と,それから地域に出ていく地域医療実習,これを連携でやっております。

 これは,それのGPをいただいた形で,6年生の医・歯・薬と,4年生の保健医療学とうまくマッチさせながら,4つの学部で,昭和大学は附属病院が8つございます。病床数が3200ほどありますので,教育のほかにも十分活用できるよう協力していただいています。にということで,また学部の教員は,もちろん職種が,医師,歯科医師,薬剤師,看護師,作業療法と理学療法科がありますので,それらの教員で担当してやっております。

 歯学部の教育でございますが,この図は歯学部の,これは学部PBLと情報リテラシーです。この情報リテラシーは,このような形で,2年,3年,4年,5年と順に進んでいくわけですが,一番下にありますように,情報リテラシーは学生の到達度別に指導をしていきまして,すべての学生が5年次の最低到達目標が,医中誌とかMindsを臨床場面で使いこなしができるようにというのが,落ちこぼれのないように,そこを最低ラインとして情報リテラシーをやっております。し,また4学部横断のPBLとは別に,歯学部だけのPBLもこのようなの積み重ねという形で進めてんできております。

 これは「社会と歯科医療」のということで,これもコースで,1年生から順に社会を知り,福祉を知り,保健を知り,歯科医療と医療を知り,地域医療を知っていくということで,このようなスパイラルな形で進めてんでいっております。

 では,「社会と歯科医療」で学生に提示可能なことは何なんだということで,7つほど挙げましたが,こういう医療人としての力を,ここで社会性を身につけていこうというための7つの内容でございます。

 このようなスパイラルの1年生から6年生までの教育を,どういうふうに評価したり,指導していくのかということで,それはWebシステムをつくって,このようなサーバを置いて,そしてセキュリティーと相互方向通信と学習成果の提出度ということで,一番下にありますように,学習成果の回収の効率化,そして,すべての学生に対しての指導を円滑にしていくということと,1年生のときにアドレスを与えまして,それがずっと6年間,同じアドレスの中にで積み重ねていくということで,いわゆるポートフォリオのシステムをつくっておりまして,これを20年からは広く使うようにしております。それまでは社会と歯科医療だけで使っておりました。このような電子ポートフォリオで,ウェブ上でディスカッションして,それでフィードバックしていくという形で,これを6年間続けていきますので,5年生の担当の教員は,2年生のときのポートフォリオの実習内容,あるいは,その提出したレポート,こういうものを見ながら,今4年生の指導ができるというよい点がございますが,こういうシステムで,積み上げていくスパイラル教育の柱とする予定ですしております。こういう形で,これは卒業時のコンピテンシーです。

 ここからは,どんな顔でやっているのかということで,指導していた管轄4学部のPBLのシナリオの内容です。,シナリオは人の価値とか,夜食とか,僕の弟とか,姉のがん,こういうです。,場所はこれまでの寮の建物一つをPBLルームに改装しまして,全員がPBLができるようにという形でやっております。

 また,歯学部ですので,自分たちの領域ということで,食べるとか,飲むとか,その介助とか,それから1年生で,混成部隊で病院実習をしたり,歯学部だけで歯科医院病院の見学実習をしたりしております。2年生になりますと,介護の基礎実習をして,そして保健医療学部で,このような形でトランスファーや体位変換などの実習を受けて,そして,それをもとにして高齢者の施設に行きまして,同様に吸引ブラシで口腔のケアをしたり,食事介助をしたり,あるいは経口摂取と胃ろうの療法が必要な人に対しては,胃ろうでの介抱をしたりしております。

 コミュニケーションとしては,職種の申し送りまで参加して,職種間の連携がどうなっているのかというのや,利用者さんとの話し合いなんかをしております。

 3年生になりますと,学部連携PBLで,ここにありますプロブレムマップを書かせて,医・歯・薬・保健医療学部,それぞれの学生が自分の専門で勉強したこと,あるいは領域のことは,どこが問題なのだろうということで,例えば,これは23年間の治療歴のありますリウマチの患者さんについて,右下にありますような形で,みんな和気あいあいと学部を超えて,このような形でPBLをしておりますし,また,こういう療育施設で,障がいのある,ちょっと重度の施設に行きまして,施設実習を行って,これも食事介助やら口腔ケアやらを含めてやっております。

 4年生になりますと,先ほどお話ししました病棟のシミュレーション実習ですので,こういう温度板をやったり,病棟のカルテの模擬カルテで,同じように4学部の学生が,今度はほんとうに実際のものですので,非常に緊張しながらチーム医療の実施をします。

 コミュニケーション実習では,東京SP協会の模擬患者さんをお願いして,このような狭心症や高血圧や歯科の恐怖症というものに対して,学生がコミュニケーションのPBLを使いましてやっております。

 5年生になりますと,学部連携病棟実習がございますので,学部で各病棟に配属しまして,そして1週間,同じ患者さんと,そして,その病棟で行われているさまざまなことに対して勉強していきます。例えば,これは最大のグループです。薬学部は200人いますので2人,保健医療学部は3学科ありますので1人ずつに,医学部と歯学部が1人ずつの学生です。これが最大で,これよりみんな少ないわけですが,こうやって患者さんにごあいさつしながらやっております。これは,その診察の風景です。歯学部は,歯学部の模型を使ったり,ケアをしたりということで,参加型の病棟実習をしております。

 6年生になりますと,地域でということで,学部連携の地域医療実習です。やはり医・歯・薬・保健医療学が混合チームになりまして,2週間から4週間,地域医療をやっている先生のところからチーム医療を進めるように体験実習をしております。

 このような形で,医科・歯科連携で実習をしております。そこで,やはり学部の垣根が,1年生のときの寮生活から6年間,毎年同じテーマで実習していくので,非常にそういう意味では職種間の垣根がなくなって,そういう意味では,一つのことをみんなで考えられるチーム医療を実践できる学生を育てていっているのではないかというふうに自負しておりますし,特徴としましては,このような形で将来的にはオーラル・フィジィシャン的な歯科医を養成していくということを目指してやっている教育であります。

 こんな教育で,新しい歯科医療事情事業に対応できる歯科医師の養成を行っているということです。

 以上です。

【江藤委員長(歯学)】  向井先生,どうもありがとうございました。

 続きまして,東京歯科大学歯学部における取り組み状況につきまして,一戸先生,よろしくお願いいたします。

【一戸氏】  東京歯科大学の一戸と申します。きょうは,このような機会を与えていただきまして,ありがとうございます。

 ただいま向井先生が,昭和大学の4学部合同の教育をご紹介されまして,大変うらやましい限りなのですが,東京歯科大学で,きょうは特に歯学部学生の医科系の科目の臨床実習ということに焦点を当てて,ご紹介をさせていただきたいと思います。

 というのは,これが平成19年度の改訂版,コア・カリの中に書いてある絵ですけれども,このような歯科の基本的な能力の以前に,全人的な歯科医療ということで,歯科の学生は,ともすれば口の中,あるいは模型だけを見てしまうというような学生が多いものですから,そうではなく,生きている人間を相手にしている医療職の一つなんだということを理解してもらうために,私どもの附属の市川総合病院という病院をどうやって活用していくかということについて,ご紹介をさせていただきたいと思います。

 市川総合病院は,昭和21年に東京歯科大学の附属病院として,最初は内科と外科と,それから歯科と3科だけでできた病院ですが,現在は20科です。それから,センター,このようにございます。特に,口腔がんセンターは,市川総合病院が地域がん診療連携拠点病院に指定されていることもあり、文部科学省のがんプロフェッショナル養成プランにも選んでいただきまして,そちらのほうの教育も,あるいは臨床もやっているというところです。570床,歯科診療台が22台ということで,決して大きな病院ではございませんが,こちらのほうで臨床実習をやっています。

 こちらに書いてありますのは,東京歯科大学の3病院のそれぞれの1日の患者さんの数です。千葉病院が約1000名弱です。それから,市川総合病院が1400名ぐらい,水道橋病院が500名ぐらいということで,そのうち歯科の患者さんが赤字になっています。ですので,3病院あわせて統計で2800名ぐらい,そのうち歯科の患者さんは1500名ぐらい,そういう中で教育を行っているということになります。

 臨床実習に先立ちまして,通常の歯学部教育のカリキュラムの中で,医科系の科目につきましては,第4学年に,これだけのコマをとって,市川総合病院の医師を中心に教育をしていただいています。もともと内科,外科,それから産婦人科,整形外科,耳鼻科,眼科等は,昔から行われていましたが,最近は,患者さんとのコミュニケーション,あるいは学生自身のメンタルヘルスということもありますので,精神科の講義もやっていただくようにしています。

 117期生というのは,現在,臨床実習をやっている学年ですが,5年生の4月,昨年の4月に臨床実習を開始いたしまして,約1カ月間は予備実習ということで,見学期間と称していますす。本実習が4月末から,ことしの4月末まで1年間あります。この後,内容をお見せしますけれども,最後の1カ月くらい,ここでプログレス期間と書いてございますけれども,この期間は,学生の希望に応じて,自分で臨床実習を行いたい科に希望を出して,そちらで最後の仕上げの臨床実習を行うということにしています。

 さらに,夏期,夏休みの期間には,ごく短期ですけれども,さらにアドバンスの臨床実習ということで,あるいは,ごく短期ですけども,基礎系の研究室配属ということで,いろいろな学生のその後の進路にも関係しますので,そういう機会も与えているということです。

 私,専門が歯科の麻酔ですので,私のところに来た学生さんでは,一緒にアドバンスの期間では全身麻酔をやっていただいています。

 これは細かいのですが,実際の臨床実習のスケジュールです。学年で大体125名から130名ぐらいおりますので,それを大きく5つの班に分けています。それが昔の言葉で書いてありますが,保存というのは,虫歯の治療,歯周病の治療が中心のところです。それから,補綴というのは,入れ歯ですとか,ブリッジですとか,そういうところです。それから,口腔外科・麻酔,それから矯正・小児歯科・放射線・インプラント,それから,そのほかに水道橋病院と市川総合病院という,こういうふうに5グループに分けます。ですので,1グループが大体25名から二十七,八名ぐらいになるかと思いますが,このグループを水道橋病院,市川総合病院のグループの場合には,さらに半分ずつに分けまして,すなわち十三,四名が市川総合病院,あるいは水道橋病院に2週間ずつ,実日数で12日ぐらいになりますけれども,臨床実習に行くという形を現在のところとっています。

 歯学部学生の医学教育は非常に重要だということで,過去に比べまして,大分日数を増やしています。ただ,内容につきましては,なかなかこの2週間で市川総合病院のいろいろな科を実際に見学する,あるいは一部,診療参加をさせていただいているので,そうしますと,各科,午前,午後,掛け持ちで回るみたいな形で,なかなか忙しい。いかにして充実した臨床実習を行うかというところが,現在,課題になっています。

 先ほどの20科が,それぞれどういうところで臨床実習を行うかということです。一般には,外科系の診療科の場合には,手術室での手術見学が多いのですが,内科系の場合には,診療室,あるいは病棟で指導医のもとに,一部身体診察等もさせていただいているということです。

 科は,今お話ししたような形で,要は,各科いろんなところに半日ぐらいずつ回るというような形です。ですので,こんな形で,極めて細かいスケジュールになっています。

 これで,いかにして実を上げるかというところですが,先ほどお話ししました1年の臨床実習の中で,前半と後半と2回,2週間ずつ市川総合病院にまいります。前半のほうは,医科系の科目を中心に臨床実習を行う。後半のほうは,市川総合病院の歯科口腔外科を中心に,一部医科系の臨床実習を行うという形ですので,これは後半のほうの臨床実習ですが,歯科口腔外科の臨床実習のほかに,医科系の講義ですとか,隣接医学などです。それから,これは口腔がんセンターへの見学ですとかチーム医療,先ほど向井先生のところでは,多職種連携の実習はたくさん含まれていましたが,こちらでは,ごく一部ですけども,そういうこともやっているということです。

 市川総合病院で,医科系の先生に実際に見学,あるいは講義以外でどんなことをやっていただいているかということを聞いたものですが,主に内科と消化器科では,初診の患者さんの簡単な医療面接,それから身体診察等,指導医とともに可能な範囲でやっているということです。

 それから,脳神経外科につきましては,入院患者さんの口腔ケア,これを市川総合病院の歯科口腔外科の歯科医師,それから歯科衛生士とともに口腔ケアを行うということをさせていただいています。それから,場合によっては,手術場での手洗いとして参加するということもしています。

 それから,そのほか,ここに書いてあるような内容のことをやっているということです。

 学生に,市川総合病院で臨床実習を行って,どんなことを感じましたかということで,これはごく最近の班のものですが,記載をしましたが,一番上,さまざまな医療の現場を見学でき,全身という規模で病気を考えることの重要さを感じることができたとか,3番目,全身疾患を持つ患者さんと,その疾患に留意して,どのようなことについて気をつけて歯科治療をやればいいのかということを考えることができたということで,医学系の基本的な素養を持った歯科医師になることが重要だということが,少しでもわかってくれればというふうに思っています。

 また,医科実習について,あなたの意見を書いてくださいということで,こちらには幾つかありますけども,そもそも歯科の勉強で医科の実習は基本的に関係ないと思ってしまいがちだけども,今後,知っているか,知らないかで差が出てくるということを実感した。あるいは,歯科と密接な関係にある病気や治療など,これから歯科で働いていく身として学ばなければならないことが数多くあり,これからの目標ができました。ともかく,医科の実習で,歯科の狭い範囲にとらわれていてはいけないということを実感してくれたように感じています。

 東京歯科大学の場合には,学年百二十数名のうち,大体3分の1が卒後1年の研修の後に大学院に進学をします。約40名ぐらいです。基礎系は10名に満たないので,三十数名が臨床系の大学院生となりますけれども,この中で市川総合病院の歯科口腔外科,あるいは私のところの歯科麻酔科,あるいは口腔外科等,全身と比較的かかわりの深い科の大学院生となるものが,大体3割から4割おります。そういうことから見ても,アウトカムとしても,この医科教育は役立っているのではないかなというふうに感じています。

 ちょっと話はずれますけども,これは平成19年に私,厚労科研の主任研究者として,現在の歯科医師の医科麻酔科研修のガイドライン,改訂版ですが,これを主任研究者としてつくらせていただきました。この中で,歯科医師が,医科の全身麻酔を研修する,その受け入れ施設,一般病院の医師,麻酔科医の先生方が,歯科医師の医科麻酔科研修の意義をどのようにとらえているかというアンケートをとりましたところ,半分近くが,全身管理の習得であるということです。そのほか,いろいろ書いてありますけれども,歯科医師が全身の素養を,もちろん基本的なことですけども,少しでも持って歯科医療の現場に行くことがいかに重要かということを,この医科の麻酔科の先生方もおっしゃっています。

 我々は,卒前の学生につきましても,こういう教育をさらに充実をさせて,広く一般的な,基本的な医学的素養を持った歯科医師を,今後も育てていければというふうに考えております。

 以上です。

【江藤委員長(歯学)】  一戸先生,どうもありがとうございました。

 それでは,ただいまの向井先生,一戸先生,お二人からの発表につきまして,ご質問,ご意見等ございましたら,お願いいたします。

【荒木委員】  お二人の先生,ありがとうございました。向井先生に幾つかご質問させていただきます。先生の資料と説明を聞きますと,2003年と2008年にカリキュラムを改訂したというようにに書かれていますが,先生が本日説明していただいた取り組みですは既に2008年よりも前にも行われているのでしょうか。

【向井氏】  一部,例えば「社会と歯科医療」というのは,2003年からやっておりますし,それから2008年には,「問題解決と生涯学習」の一部が入りましたということで,大きな改訂を,2003年が最初に新カリキュラムというので改訂しまして,2008年に新々カリキュラムにしました。それが,その隣のページの2008年以降ということで,ここに今は,この形でやっておりますが,2008年に全部が入ったのではなくて,それ以前にやっているのは,4学部の連携実習というのも,一部は2008年前から,ほかの学部と連携して,2学部,3学部とやっていたのを4学部にしたということです。

【荒木委員】  ありがとうございます。もう一つの質問です。当然,医・歯・薬が6年で,保健のほうが4年の学年ですよね。そうすると,例えば昭和大学の一つの特徴の,1年次のとき全学部の混成寮の生活をされて,結局スタートのときから非常にいい環境で,お互いによく知っていて,そのままずっと行くのですけど,医・歯・薬の学生が,5年,6年のときに,保健のほうから来る学生は入学学年では違う方になりますね。

【向井氏】  1年生のときは一緒ですけれども,4年以降の,つまり4ページと下に書いてございますところの,4の後の5年生のところが,3~4年生,6年生のところが4年生となっておりますので,ここは違う学生,4年生と6年生ですので変わりますが,3年生までは一緒です。

【荒木委員】  要するに,もちろん低学年も大事なのですけど,最終的にまとめるところすなわち高学年がかなり重要な最終的な経験になると思うのですが,そこは基本的には入学時とは違う方が,一緒にやるということでしょうか。

【向井氏】  そうですね。保健医療学部だけは4年制ですので,そういう形になります。

【荒木委員】  それから,もう1点ですけど,7ページぐらいに,ポートフォリオを用いた指導の確認,評価,それからアドバイスという,非常に良いシステムだと思います。指導教員が学生さんにいろいろディスカッションとかアドバイスをすると思いますが、歯学部の学生さんは,歯学部の教員だけがそれを見てアドバイスするようになっているのでしょうか。

【向井氏】  言葉が足りなくて,すみません。電子ポートフォリオは,今,導入しているのは歯学部だけなのです。23年度から薬学部で同じシステムを広げていきたいということで,今,電子ポートフォリオシステムを使っているのは歯学部だけです。それが,23年,24年くらいには,全学部に同じシステムで入ると思います。

【荒木委員】  この指導教員の数についてですが,昭和大学歯学部の学生さん,何人ぐらいでしょうか。

【向井氏】  定員が96で,1学年約100名前後です。

【荒木委員】  それに対して,指導教員の方は,1人大体何名ぐらいの学生さんを請け負ってチェックするようなシステムになっているのでしょうか。

【向井氏】  大体8人から10人くらいですね。

【荒木委員】  その学生人数に1人の教員で見ているということですか。

【向井氏】  はい。

【荒木委員】  わかりました。ありがとうございます。

【江藤委員長(歯学)】  ほかにございますか。

【俣木委員】  大変貴重なご報告,ありがとうございます。向井先生に伺いたいと思います。同じ7ページの電子ポートフォリオシステムは,これは臨床実習のときに使われるということですが,その下に卒業時の要件として卒業時のコンピテンシーということが書かれています。,ここに掲げてあります項目についての評価は,実際にはどのように行われているのでしょうか。

【向井氏】  「社会と歯科医療」というのは,実習と講義,その他がありますので,パーセントで何パーセントというような形での評価になりますが,「問題解決と生涯学習」のほうもそうですが,私は「社会と歯科医療」が担当ですので,これは,まず行っている地域の施設の施設長さんに,一応客員講師という形で評価内容等をしていただけるような形でお願いして,その実習の態度評価と,それから,もちろん学内での実習,例えば口腔ケアの実習等は,全部,実習評価ができます。そして,それにプラスして講義がありますので,講座の講義の,いわゆる試験評価というのを,どのくらいの割合かというのはシラバスに最初に提示しまして,そして毎年,若干ずつは時間数によって割合は変わりますけれども,その3本柱で評価をしております。

【俣木委員】  少し細かいかもしれませんが,例えばプロフェッショナリズムということに関しては,どのような評価が行われているのでしょうか。【向井氏】  これは,コンピテンシーのところの最初にプロフェッショナリズムというのがございまして,そこに書いてございますのは,社会と歯科医療的な医の原則や歯科医師としての態度というような形ですので,このプロフェッショナリズムだけで評価というわけではなくて,この4つの中,すべてに分かれているというふうに理解していただければと思います。

【俣木委員】  ありがとうございました。

【江藤委員長(歯学)】  ほかに,どうぞ。

【関本委員】  お二方にご質問させていただきます。今回のコア・カリの改訂の中でも,医科とのかかわりというのがうたわれているわけですけれども,今までは隣接医学というような講義でやっていたところが,やっぱり学生のモチベーションは上がっていかないというような,いろんな問題があったところに,かなり踏み込んで実習というような形で入られているのですが,このアンケート,特に東京歯科のアンケートを見ますと,かなりの学生さんのモチベーションが非常に高くなって,感動したとか,そういうアンケートになっているのですが,教える側の医科の先生方の指導方針というのに,かなり影響されるのではないかと思います。といいますのは,医学部の学生に教える場合と,特に昭和大学の場合はそうだと思うのですけど,歯学部の学生に教える場合と,やはり指導の仕方というのが,歯学部の学生のモチベーションを上げるか,下げるかというのに影響してくるような気がするのですが,その辺は何か,医科の先生方にサゼスチョンといいますか,お願いをしているようなことはあるのでしょうか。

【一戸氏】  東京歯科大学の場合には,市川総合病院だけではなく,先ほどご紹介しませんでしたが,水道橋や千葉も同じような形で臨床実習に参加していただいています。ともかく基本は,歯科医療に必要な基本的な医学的素養に限って教えていただきたいということです。そのためのワークショップなどには,医師の先生にも入っていただくということで,極端な話,市川総合病院の医師の教員は,それで文科省から補助金をいただいているのですから,そういうことを十分理解してやっていただきたいということは常々お願いしています。ですので,教える側のモチベーションの維持というのは,我々も重要だろうというふうに考えております。

【向井氏】  昭和大学ですが,ここには体の病気と書いてありますが,平成23年からは人の病気のAとBというのを,3年生と4年生でかなりの時間をとって,医・歯・薬,薬学部からも講義に来ていただきますので,講義時間ですが,正直言って,どの程度医学部の学生が,その講義に対して傾聴しているのかというのと,歯学部がどうかというのは,両方の講義は出ていませんので,比較ということはできません。ただ,歯学部の学生は,確かに先生のおっしゃるように,学生自体が違うことだというふうな理解をしていた2008年以前と違いまして,2008年を過ぎますと,PBL等で1年,3年とやりますので,そのPBLのシナリオなんかを当然,歯学部の学生1人だけですから,発表するのは自分だけですので,そういう意味では,1年生,3年生のPBLで体の病気のPBLをやった後ですので,3年生の体の病気のA,B,4年生というのは,学生側は,かなり今までよりはよくなってはいますけれども,でも,まだまだ不足があります。

 また,講義をしていただく先生方,医学部の先生方も,午前中は外来だから午後にしてほしいとか,それで時々患者が長引いて,30分遅刻したというようなことも,もちろんございます。それは,病院の隣が講義室ですので,そういうことはありますけれども,両方がこういう連携した実習と,そして講義を常に意識してやっておりますので,随分以前に比べたら違ってきているというのは実際です。

 回数をどんどんコンパクトにしていただきながらやっておりますので,10回,15回,同じ講義が続くことはありませんので,例えば,内科とか,そういう意味でのカリキュラムのマイナーチェンジは毎年しておりますので,2008年以前に比べましたら,全然違っています。

【関本委員】  ありがとうございました。

【江藤委員長(歯学)】  よろしいですか。どうぞ。

【西原委員】  興味深い話,ありがとうございました。両大学の先生にお伺いしたいのですが,全身の教育の重要性を踏まえ,4学部連携という形などで,それぞれ工夫されていることは分かりました。そういうような視点で,カリキュラム全体を考えますと,このような試みに割く時間が増えてくると,一方で,知識教育を考えると,基礎及び臨床科目の時間配分をどう工夫するかということなるが問題になるかと思います。特に基礎を考えますと,今まで歯学部では,口腔領域での比重が多かった感があります。そこに,知識として全身に関する基礎教育も入れないといけなくなるかと思います。そこで,基礎科目と臨床科目を教育をしていく中で,先生方がどのような連携をとりながら,改編に向けて,あるいは改善に向けて,どのような工夫をされているかということを具体的に両大学から教えていただけたらと思います。

【向井氏】  私も教育委員長でも,教育推進室の室員でもないのですけれども,従来の減らしたところというのは,例えば補綴科という入れ歯をつくったりするところです。その実習は,補綴全部1つの実習にまとめてしまうということ,そして保存というのも1つにまとめてしまって,例えば模型を1つにしてしまう。ですから,実習時間はかなり減らすことができている。つまり重なりを解くということと,基礎の教え過ぎをチェックして,相互にチェックして,教え過ぎるところを,もうちょっと効率よくしようということで,基礎も臨床も両方ともが時間を少しずつ捻出していって,夏に教授のワークショップがありますので,そのワークショップで決めたことは,大体その次の年から,カリキュラムの中の一部改編ということで実現しておりますので,そういう形での夏休みのワークショップでの成果,プロダクトを反映させるということで,いろんな意見は,そのワークショップの中でやり合って,よりよいものをつくり上げていって,それを次の年からチェンジしていくということで,現在のカリキュラムのところに行き着いています。

【一戸氏】  東京歯科大学も,向井先生の昭和大学と基本的には同じだろうと思います。いかにして重複をなくすかということですが,医学部と違って歯学部は,ご存じのように模型実習に割かれる時間が多いので,ここをいかにほかのところに振り分けるかということですが,一方では,模型実習は,その担当の教員からすると既得権みたいなところがありまして,なかなか削れないのも現実です。ということですので,昭和大学と同じように,ワークショップ等の中で,いかに効率よく重複をなくし,あるいは必要な場所,領域によっては,何度も反復しながらということを常々見直しながらやるという,ちょっと漠然とした言い方ですが,そういうことをせざるを得ないと思っています。

 それから,もう一つ,先ほどお話し忘れましたが,市川総合病院の消化器科の教授ですが,この方は歯学部学生の医科教育の主任ということで,常時,医学教育のプログラムについて目を光らせていただいていますので,その歯科系のほうの主任と常々連絡をとりながら,必要な情報を交換しているということも背景に一つあるかなというふうに思います。

【西原委員】  どうもありがとうございます。

【江藤委員長(歯学)】  どうもありがとうございました。ちょっと時間が押しております。少しまとめさせていただきます。

 まず,チーム医療のほうでございますが,2003年からでございますから,8年がかりで昭和大学のチーム医療の教育を立ち上げた,向井先生は中心人物でございます。それと同時に,厚労省のチーム医療推進会議のメンバーでもございます。昭和大学のチーム医療教育は,チーム医療における役割分担とか,どういうふうにしてチームを動かしていくかという問題もさることながら,全寮制という利点をよく生かされて,チーム医療におけるマインドの養成を行っている点が一番大事なことであろうと思われます。

 それから,一戸先生の歯学教育における医学教育の問題でございますが,これは東京歯科大学のように総合病院のあるところ,歯科の単科大学で総合病院のないところ,それから医学部,歯学部があるところと,設置形態によってかなり連携の形態が違ってまいります。そのために,歯学教育における医学教育のあり方というのは,各大学で工夫をしていただくということかと思っております。

 まず,このチーム医療にしましても,歯学教育における医学教育にしましても,医科側の先生方のご理解というのが非常に大事でございますので,この席をかりて,医科側の先生に,この点をお願いさせていただこうと思っております。

 以上でございます。

【福田委員長(医学)】  ありがとうございました。

 それでは,残りの時間,少し過ぎていますけども,まだ会議室を利用できるという許可をいただきましたので,まとめさせていただきながら,せっかくのチャンスですので,まだお話を伺ってないご出席の方々からも,ご発言をいただきたいと思います。

 本日の,まず位置づけをちょっと考えてみたいと思います。昨年来,議論してまいりましたコア・カリキュラムの改訂の中間報告につきましては,医、歯それぞれのワーキングチームで,名川先生,それから荒木先生のほうでとりまとめていただいて,今パブリックコメントを受けている段階であります。これはどういう意見が出てくるかは,これから待たなければいけない。

 それから,2点目は,一番最後の参考資料をごらんいただきたいのですけども,ここに前回,この改訂にかかわる作業の基本方針というのを皆様にご検討いただいて,ご了解いただいたところに戻りたいと思います。

 これにつきましては,後ろのほうに参考資料1という1枚ものがございます。それの1,2,3のところぐらいまでは進んできたという段階だと思います。今後,何をしていかなければいけないかという非常に大事なターニングポイントにあると思います。これにつきましては,既に両中間報告とりまとめが出ておりますが,その中に,一部それが記載されております。それは,資料1の医学系につきましては,資料1の27ページ以降のところに簡潔に,現在の進捗状況等について記載されております。それから,これからやらなければいけないニーズ等についても,そこに簡潔にまとめられております。同様に,歯のほうにつきましても,歯のほうの資料2のところ,資料がいっぱいで恐縮ですが,33ページに,「その他」というところで,「様々な社会的ニーズへの対応」,同じようなタイトルで書かれております。

 ここのところを中心に,これから作業を進めていくことになろうと思いますが,いかがでしょうか。まとめていただいた名川先生,荒木先生,もしコメントがありましたら,どうぞよろしくお願いいたします。特にありませんか。――ありがとうございます。

 それでは,私のほうから議論のたたき台になる意味で,参考資料2,それから, 3もちょっとごらんください。これは,これまで出てきました検討の中で,ご意見をいただいたものがまとめられております。これはかなり大部になりますが,文科省のほうで事務的によくまとめていただきました。これをごらんいただきながら,例えば,今後やらなければいけないこと等は,前回もここで議論いたしました。例えば,要望書等がたくさん出ております。これは大学と学会以外に,一般社会からたくさんのものが出てきております。これだけ要望が出てくるということは,逆に言えば,私どもの責任は非常に重大であって,社会的ニーズに対応して,可能な範囲でモデル・コア・カリキュラムの改訂という作業をしていかなければいけないというタスクが与えられていると思います。例えば,薬害関係の要望書にございました。きょうは花井さんにご出席いただいていますし,それから,薬剤のことについても堀内先生のほうからお話をいただいております。そういう具体的なところは,これから検討するためにかなり役に立つと思います。それから,看護職等との連携のことが出てまいりましたが,これは先ほどの歯との連携,この観点からどういう形で盛り込んでいくか。あるいは,男女共同参画という国あるいは社会全体の施策に基づくものについてもこの会でお話いただいたところです。こういうものもどういう形かで盛り込んだらいいものもあります。一部は既にワーキンググループのほうでご検討いただいております。それから,医療安全のこと,それから,医・歯学連携があります。それから,放射線の障害等について,これはコア・カリキュラム内容の弱点もありましたので,この辺も検討しなければいけない。

 それから,要望書等がたくさん出てきております。例えば,子どもの心の領域の話,それから実際には犯罪等のことも,直接かどうかわかりませんけれども,出ております。それから処方せんの扱い方等,それから薬害肝炎,これは先ほどの薬害のことがありましたけど,ハンセン病の問題も,これは厚生省のほうで検討されているところです。痛みに関する検討会報告,こういうものもたくさん出てまいりました。

 これは,社会的ニーズとして非常に課題として厳粛に受けとめて,どう対応するかということになると思います。ですから,その辺のところは,全部をここに盛り込むということは物理的に不可能に近いので,かなり努力をして表記を修正するとか,それから,より明確にする。場合によっては,コア・カリキュラムの項目の調整もしなければいけないというふうなことがあると思います。こういう作業がこれから控えております。これは,医と歯,我々内部だけではなくて,外も一体になって,これをいいものにしていくという位置づけで考えておりますので,今後もまたご協力いただきたいと思います。必要に応じて,名川先生,荒木先生のワーキングのほうにお願いしなければいけないこともあるかと思います。

 また,医師会のほうからも,男女共同参画については強くご要望をいただいておりますので,私どもとしても,しっかり受けとめて,それなりにメッセージ性のあるような修正等をしていきたい,これは第1点です。社会的ニーズに対して,どう対応していくか。ですから,広く共通で緊急でやらなければいけないことを,まず取り上げる。それから,国全体として大事なところを,これは考えていかなければいけない。

 それから,あとは,コア・カリの後に来る第2段階の作業の計画もつくっていかなければいけない。きょうは,医学系3人,それから歯学系2人の方からヒアリングをしていただきましたけども,そのプレゼンテーションの中に,やっぱりポートフォリオで実際にどういう評価を基準として,卒業時の,基本的には学習成果のアウトカム,それをどう担保していくかということになってくると思います。ですから,そういうことを,これからどう構築していくかということ,それが臨床研修とうまくつながってほしいということになると思いますので,その辺の議論はこれからしていかなければいけない,継続する作業になっていると思います。

 それから,あとは,このモデル・コア・カリキュラムの概要という1枚ものがありますけども,前から気づいていたことがあるのですけども,医と歯の構成のことがございます。Aの「基本事項」というところは,「医の原則」等,医学のほうには書かれていますが,歯のほうは,「医の原則」の項目立てになっております。それから,「歯科医師としての基本的な態度」というのが,ここに加わってくるという形です。

 それから,問題点は,例えば「社会と歯学」という歯のほう,これはCになっています。それから,医学のほうでいきますと,「医学・医療と社会」という,対社会という非常に大きな視点から見たものが,順番として,これはFのところに来てしまっているのです。これは,かねてからこういうことが言われておりまして,従来の公衆衛生の履修順に従って,こうなってしまったという経緯がありますけれども,この辺もひょっとした「医の原則」,を含む「基本事項」の次に、社会の中での医学・医療ですから、「医学・医療と社会」という広い視点を踏まえて位置づける必要もあるかなと思われます。それ以後は,「医学一般」,ここには準備教育も一部入ってまいりますが,それから,C,Dと実際の臨床のことになってございます。

 ですから,こういうところも必要に応じて,これを変更することに不都合なければ,逆に言えば,医のほうでも直していく必要もあるのではと思われます。

 これからやる作業も大変だと思いますし,かなりの労力をかけなければいけないと思いますので,先生方のご協力をいただく必要があると思います。医学,歯学以外の専門の方,ご出席いただいておりますので,もしありましたら,花井さん,それから堀内先生,どうぞ。あるいは,前野委員からもよろしくお願いいたします。

【花井氏】  この「医学・医療と社会」のブロックについてですか。ちょっと今,全体像をちゃんと把握できてないところで,中途半端な発言はいかがかとは思うのですが,今,私,医薬との関係で言えば,行政が医薬品を審査するのでレギュラトリーサイエンスという領域をやっておりまして,そのときに一番思いますのは,基本的なところで,例えば倫理とか,それから薬事法,医師法,法律領域,それから社会学,もしくは哲学,それから生物学の発生学的な領域というのが非常に密接で,ディシプリンとしては,トランスサイエンスの領域を,人文社会学的にはコミュニケーションデザインであるとか,トランスサイエンスという領域をサイエンティフィックに取り扱おうという試みがあって,そういうことをやろうとするときに,いろんな学会のいろんな人の部分的なところを引っ張ってきてやろうということになっていて,一つの学域として定立してない領域というのは扱わざるを得ないというのがありまして,これは医療の患者参加型,私たちは薬害被害者という言い方をよくされますけど,患者参加型,もしくは被害者の声を聞くということ自体が,それが何を意味するのかという基本的なところにあるのですのですけども,そういったことをいろいろ大学に行って言うわけですけども,基本的なベースの教養部分で,医学部の学生さんは,そもそもエンピリカルサイエンスの形で固まったとこに,そのトランスサイエンティックな領域というのがあるということを説明するまでに結構時間がかかると。

 だから,そこが基本的には,そういう領域があることをわかるようなことが,まずあってほしいというのが一つと,それから,実践的には社会との関係ということで言えば,ハンセンの話がさっき出ていましたけども,HIVもそうなんですけども,もしくは薬害スモンもそうなんですけども,本来サイエンティフィックな知識を有する専門家集団が,事実上,バイアスのかかった偏見を後押ししたという経験がありまして,これはハンセンやスモンのウイルス説とか,あと水俣でもありますね。水銀は胎盤があったら大丈夫なんだといって,実は胎生水俣を見落としたとか,科学の落とし穴というものについて,逆にそれが被害者を苦しめたと。特に,感染症なんかでいえば,専門家がわかっていて,専門家がちゃんとしていれば,オピニオンリーダーの専門家が安心している姿を見て,市民が,これはこういうふうに対応すればいいのだと思うのですが,逆で,専門家が診療拒否で怖がっているのを見て,市民が,エイズはやっぱり怖いんだとか,やはり社会において,公衆衛生というかどうかわかりませんけども,オピニオンリーダーたる専門性というところを発揮するという,そういう領域があるかどうかわかりませんが,そういうところが僕らからすれば,一番期待するところであります。

【福田委員長(医学)】  大変貴重な,私どものかつての経緯をさかのぼると,こうしなければいけないというところがたくさんありますね。そういうことができれば,学生の教育に生かされる必要があるのではないかと思って,可能な範囲で,そういうところは現代的な表現に変えていく必要があるのだと思っております。ありがとうございました。

 堀内先生はどうですか。

【堀内氏】  向井先生がお話になったチーム医療についての昭和大学の例,,学生のときからいろいろな職種を目指す学生が一緒に実習に取り組んでいくということは,前からも昭和大学についてお聞きしておりますけれども,これからの方向性を示しているのではないかと思いました。

 今,厚生労働省初めとしたいろいろな検討会,あるいは病院団体とか医師会などでも,チーム医療について議論が盛んにされております。これからの医療は,これだけ医療が高度化してきておりますので,チーム医療で患者さんに最適な医療を行うという方向になっていくと思いますので,学生のときから垣根のない教育,昭和大学のように,1人の患者に対していろいろな視点から議論される。それを学生のときから理解をしていくというのが大変重要ではないかと感じました。

【福田委員長(医学)】  ありがとうございました。今の点は,私どもも繰り返し医療の職種間の連携のことを考えており、また,社会との関連を含めてです。昭和大学のように,関連学部がそろっているところは,ほんとうにうらやましいと言わざるを得ないので,同じように医学部では看護系があっても,それが連携するといっても,なかなか現実にうまくいかないのが現実です。現実にうまくいかせることが,この委員会の役割ではありませんけども,メッセージ性のあるものとして,この表記の方法を考えるとかしなければいけないのではないか思います。そういう連携がうまくいっているところがあったら,次の機会にでもヒアリングでお呼びする必要があるのではないかと思っています。

 それから,医と歯が一緒のところは,かなりやりやすいと思います。ところが,そうではないところ,歯単独のところ,医単独のところ,たくさんございますので,そこをどうしていくかということは,もっと大きな話になってくるので,現場を認識しながら,そこにどういうメッセージが出せるかというのは,かなり大事ではないかと思っております。それは我々自身がやらなければいけないところですから,重く受けとめさせていただきたいと思います。

 前野委員,いかがですか。ありましたら,どうぞ。

【前野委員】  医・歯・薬連携においては,まず基本的概念をできる限り共通,統一化を図ることが必要ではないか。それも平易な表現になるような形を心砕いてほしいことが1点です。

 次に医・歯・薬教育での連携の考え方が論議されているものの,大学附属病院という医療の現場での連携は心もとない。医学部附属病院,歯学部附属病院での臨床現場での連携はまだまだ足りず、別個にされている部分が多い現状だと思います。実際の臨床の現場を踏まえた上での有効な教育のあり方という視点で考えるべきではないでしょうか。

【福田委員長(医学)】  ありがとうございました。いろいろな医学,歯学の専門家以外のところからのご意見は,かなり大事に受けとめなければいけないと思っております。先ほど,患者参加型の医療というお話がございましたが,実際,それは既に導入されて,チーム医療の一員に患者さんが入っているという認識がだんだん広がってきております。私どもとしても,そのような観点から共用試験の出題レベルで考えておりますので,それが徐々に広がってほしいと思っております。

 そこで,伴先生,医学教育学会の会長として,そういうのを受けて,このカリキュラム検討会をどういうふうに進めるか,何かご意見がありましたら,どうぞ。

【伴委員】  全体としては,,コア・カリキュラムに対して選択カリキュラムというのがあるということを,最終的なレポートには強く反映させていただきたいというのが1点あると思うのです。例えばきょう,東北大学,あるいは福島県立医大,それから兵庫医大から出てまいりましたけども,あそこで特徴が出せるのは,やっぱり選択カリのところだろうと思うのです。

 もう一つ,コア・カリに入れるべき研究マインドとか地域医療マインドと,選択カリキュラムのそれらとは、峻別してやっていくというのが必要だと思います。

 もう一つ,ちょっと僕が気になっているのが,ポートフォリオです。ポートフォリオというのは,ポートフォリオ評価というふうにとらえられがちで,これは次のステップという感じの話だったのですけども,たしか前回か前々回かに,歯学のほうから学習ポートフォリオという話が出ていて,これは別に評価に使わないでも,それぞれの学習者が自分の学習のログをずっとつけていくということで使いますし,あるいは教える人が教育ポートフォリオというのをつけるというふうになると,例えば教育業績をどう評価するのだというところに使えますので,その辺のところは前半の部分に入れていただいてもいいのではないかと思います。

【福田委員長(医学)】  今の点は,結局,実質的な評価をプレゼンテーションされた先生方もおり、いろいろな方法を使ってやっておられます。ですから,我々としては,いい事例を集める必要があるのではないかと思います。それを共通で使えるものは何かというのが一つです。ポートフォリオを使ってやるというのは,いろんな面で使えると。それだけじゃなくて,それをきちんとほかに評価として使うにはどうしたらいいということを考えなければいけないと思います。先生がおっしゃったように,選択制は大事ですね。研究マインドの育成というのは,全員が共通で持つべきものと,それから,さらに選択制を使って,それを全員に一律にやるのではなくて,きちんと分けてやるという事例も出てまいりましたので,それは大事だと思います。ありがとうございました。

 あと,三上先生,どうぞよろしくお願いいたします。

【三上委員】  きょうのヒアリング,非常に有意義なヒアリングだったと思いますが,きょうは評価の問題が非常に出ておりましたけれども,8年間,いわゆる医学部教育6年と,卒後研修の2年間の8年間で医師を養成するという考え方に立てば,医学教育だけのコア・カリキュラムだけではなくて,卒後研修との兼ね合いを十分考える必要があると。その中で,教養試験の問題と国家試験の問題とを,どこまで到達目標を養成するのかというふうなこと,その評価のあり方については,一度このモデル・コアの検討会と卒後研修のほうの検討会の合同の懇談会のようなもので,意見のすり合わせをする必要があるのではないかと思いますし,きょうはスチューデントドクターの話も少し出ておりましたけども,その辺のところをどういうふうに考えていくのか。国家試験もアドバンスト・オスキーをどのような形で位置づけるのか。卒業前の6年生のとき空洞化するのを,どうやって防ぐのかということも含めて考えていきたいと思っております。

【福田委員長(医学)】  大変ポイントを突いたコメントをいただきました。ありがとうございました。実際,これは今回の改訂作業の中で出てきていて,既に名川先生,荒木先生他にまとめていただいた卒業時の診療技能の到達目標も整理されましたので,これと研修に必要な内容との照らし合わせ,これはかなり必要であろうと思います。それから,既に報告がたくさん出ておりましてが,研修の中で前段階の学部教育に移行させてもよい内容医もあるだろうと思います。

 ですから,この辺は研修の到達目標は出ておりますけども,研修に必要な,どういうものがそろってなければいけないか。国家試験も含めて,その議論は今までありませんでした。ですから,これはぜひ始めていかなければいけないのではないかと思います。

 それから,国家試験改善検討委員会でも,その辺の議論が始まりましたので,そこもあわせてやっていく必要があるのではないかと思っております。

【黒岩委員】  全国医学部長病院長会議会長の黒岩でございます。今の点,大賛成でございます。それから,モデル・コア・カリキュラムの見直しの場合に,この数年間で医学部の定員が1200名ぐらい増えているということですが,その背景の中で学生の教育の質が担保されるように,実効性といいますか,そういう視点が非常に重要であるということを,一言追加させていただきたいと思います。

 次に,評価ということでありますけれども,評価の責任体制といいますか,そこは非常に重要であるかと思います。評価がされない場合には学生は勉強しない。それは事実であると思います。

 もう一つ,学生の立場で勉強しやすいカリキュラムにすべきです。講義と臨床実習と初期研修がシームレスであるということが大切です。さらに,評価の責任体制ですが,以前に福田座長がおっしゃったように,モデル・コア・カリキュラムの項目は,必ずしも科目名ではないという観点が重要です。先ほど北村先生とも話しましたけども,やはり臓器別の臨床系の系統講義でも,内科学というのは,一つの完結した形でまとめるということが,学生にとっても勉強しやすいし,さらに学生実習や内科研修との整合性,連続性,そして評価の責任体制,実効性という点においても,この辺は重要な点ではないかなというふうに感じています。現場を担っている医学部長の1人として,また全国医学部長病院長会議の会長として発言させていただきました。

【福田委員長(医学)】  ありがとうございました。定員増にまつわる各大学の影響というのは,きょう議論に出てまいりませんでしたが,聞くところによると,かなり厳しくなっている大学もあるやに聞いております。特に,教員の定員減が継続されている国立大学では,かなり厳しくなっているのではないかと思います。

 その辺のところを考えて,公立ばかり考えるのは無理かもしれませんけれども,重装備の教育では,もうやっていけなくなってきているのは事実なので,精選するという意味からコア・カリが策定された。ただ,実際の科目等は各大学の裁量に任されておりますので,その大学の裁量に従ってやっていけばいいということになっていくのではないかと思います。ですから,コア・カリキュラムの当初のメッセージが,また再度確認すべきだということは大変よかったのではないかと思います。

 あとは,各大学が,きょう提示していただいたような,いいプレゼンテーションができるような努力を惜しまずやらなければいけないのではないかというのが,社会への責任説明ではないかと考えておりますので,引き続きよろしくお願いいたします。

 ほかにございませんか。厚生労働省から来られていますけど,いかがでしょうか。――よろしゅうございましょうか。

 それでは,時間が大分延長してしまいまして,もう限界になっておりますけども,事務局のほうから今後のスケジュールについてよろしくお願いいたします。

【唐沢課長補佐】  最後に,今後のスケジュールについてでございますけれども,冒頭の配付資料の確認の際にも申し上げましたが,資料8,1枚紙をご覧ください。次回は2月23日の水曜日の15時から17時に,本日と同じような形で専門研究委員会,医学・歯学合同の第8回会議を開催させていただきます。

 内容につきましては,先ほど,福田委員長からお話がございましたように,今後,来年度以降も検討しなければいけない事項等もあるかと思いますが,取り急ぎ,今回の改訂内容に係る中間とりまとめ案として,現在パブリックコメントをしている内容につきまして,現時点で対応すべき内容を2月23日の時点で改訂原案として整理していただき,3月2日の連絡調整委員会の審議を経て決定という形で進めていけたらと考えています。

 なお,本日のヒアリングでご報告いただいた内容の中に評価の問題等々ございましたが,現時点では,そういった問題は,来年度以降,調査研究チームにおける検討等のご協力をいただきながら,引き続き検討してまいりたいと考えております。

 以上でございます。

【福田委員長(医学)】  大変時間が過ぎてしまいましたけれども,非常に実のある議論をしていただきましたし,それからプレゼンテーションも非常に参考になりました。この場をおかりして,ご協力いただいた委員の先生方,それからプレゼンテーションをしていただいた先生方,それからオブザーバーで来ていただいた方にお礼を申し上げて,終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。

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