モデル・コア・カリキュラムの改訂に関する専門研究委員会(平成22年度)(第4回) 議事録

1.日時

平成22年11月15日月曜日15時00分から17時30分

2.場所

旧文部省庁舎 第2会議室(旧文部省庁舎2階)

3.議題

  1. 調査研究チーム(委託先)における検討状況について
  2. その他

4.議事録

【福田委員長】  それでは,定刻になりましたので,ただいまから,モデル・コア・カリキュラムの改訂に関する専門研究委員会(第4回)を開催いたしたいと思います。本日の委員会は,前回までの医学・歯学合同の会議ではなく,医学教育単独での開催となります。なお,歯のほうからも,オブザーバーとして東京医科歯科大学の荒木先生においでいただいております。よろしくお願いいたします。

 本日は都合により,奈良委員,伴委員,三上委員,辻本委員,邉見委員の5名の方々が欠席でございます。

 また,前回までの委員会に引き続きまして,聖路加看護大学長の井部俊子先生,それから,社団法人日本病院薬剤師会会長の堀内龍也先生にゲストスピーカーとしておいでいただいております。よろしくお願いいたします。

 さらに,本日ご欠席の三上委員が所属する日本医師会より,8月5日に開催いたしました第2回の専門研究委員会におきまして貴重なご意見をいただきました,保坂シゲリ先生にもご出席いただいております。また,同じく本日ご欠席の邉見委員が所属されます全国自治体病院協議会より,同協議会の常務理事であり,沖縄県立中部病院の病院長をされておられる平安山英盛先生にもお越しいただいております。よろしくお願いいたします。

 今ご紹介いたしました井部先生,堀内先生,保坂先生,平安山先生におかれましては,本日の会議全般を通じまして,何かお気づきの点等ありましたら,適宜ご発言いただきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。

 それでは,事務局から,本日の配付資料の確認をお願いいたします。

【唐沢課長補佐】  それでは,私のほうから配付資料の確認をさせていただきます。茶色の封筒から資料をお出しいただきますと,冒頭,議事次第がございまして,その後に本日は,資料1から資料5、参考資料1と参考資料2の7種類の資料を準備させていただきました。委員の先生方には,先週金曜日に資料の一部をメールでお送りしましたが,その部分については内容の変更はございませんけれども,改めて資料をご確認いただければと思います。

 議事次第の後の資料1,今回のモデル・コア・カリキュラム改訂に係る基本方針【修正版】,これは1枚紙でございます。次が資料2,左にホチキス2つでとめたものでございますが,医学教育モデル・コア・カリキュラム改訂素案の取りまとめに向けた検討状況という資料でございます。これは両面で印刷したものでございます。

 次に資料3。この資料3につきましては,これまでの6月16日から開催した連絡調整委員会及び専門研究委員会における主な意見について、議事録をベースに事務局のほうで整理させていただいたものでございます。なお,この資料3の中には,7月28日に開催いたしました医学・歯学教育指導者のためのワークショップにおけるグループ別全体報告会での総合討論・講評における関連のご意見も併せて整理させていただいております。この資料3の骨組みでございますが,先ほどご紹介いたしました資料1の基本方針の4つの柱に沿って,おおむねこの4つの柱に関連する意見ごとに名前を伏した形で発言の要旨を整理させていただいたものでございます。

 続いて資料4でございます。資料4は,前回までの会議でも参考資料としてお配りしておりましたが,今回,モデル・コア・カリキュラムの改訂に係る主な要望等ということで,主としてモデル・コア・カリキュラムについて、どういった要望があるかというところのエッセンスに絞ったものという形で整理させていただきました。目次にございますように1番から8番,これは要望書で記載されたものや,関係者ヒアリングということで,ヒアリングをさせていただいた際に,ご意見,ご要望をいただいた内容を整理しております。なお,その目次の下段にございますが,直接的にモデル・コア・カリキュラム云々というものではございませんが,政府の基本計画等々におきまして,この医学教育などに関する要望・提言等が各種出ておりますので,それも参考に添付しております。

 さらにおめくりいただくと,右肩に資料5と付されたもの。これは今後の検討スケジュールについて(案)でございます。

 次に,参考資料になりますが,カラーの資料で,A4横長の資料でございます。医学教育モデル・コア・カリキュラムの概要。参考資料1として,コア・カリキュラム本体もつけておりますが,何分大部でございますので,事務局のほうで概要という形で整理させていただいたものでございます。この概要の構成は,上段に,医学教育モデル・コア・カリキュラムの趣旨を記載し,下段には全体構成を概念的に整理させていただいたものでございます。続きまして,右肩に参考資料1と付した資料。これは,医学教育モデル・コア・カリキュラムの本体でございます。最後に,右肩に参考資料2と付させていただいた資料は,準備教育モデル・コア・カリキュラムでございます。

 なお,委員の皆様方には,机上に青いファイルを置いておりますが,そのファイルの中には,これまでの委員会での配付資料とあわせまして,今回はこのファイルの表紙をおめくりいただくとわかりますが,机上資料という形で,今回,医学教育の調査研究チームにおきまして,大学や学会に対して意見照会をかけ,その結果,大学や学会等から提出された意見について,参考までに机上資料という形で,大学名,あるいは学会名を伏したような形で添付しておりますので,適宜ご参照いただければと思います。私からの配付資料の確認は以上でございます。

【福田委員長】  ありがとうございました。各自資料の確認,先生方いかがでしょうか。もし過不足等ありましたら,お申し出ください。

 それでは,本日の議事に入りたいと思います。議事に入ります前に,資料1をごらんください。これは前回の会議でご審議いただいた,今回のモデル・コア・カリキュラムの改訂に関する基本方針であります。前回の会議でいただいたご意見を踏まえて,一部修正した内容について,委員長の高久先生,それから,歯学の江藤先生と私に一任いただきましたので,この場をおかりして,各委員長の合意が得られた修正版としてご報告をする次第であります。

 この中で,大きく4つのポイントがありました。四角で囲ったところでね。1番,モデル・コア・カリキュラムの基本理念。ここはこのままといたしたいと思います。

 それから,四角2番目の,今回の改訂に係る検討内容です。ここでは一部追加させていただいたところがあります。それは,冒頭の斜体,イタリックで書いたところに,「医学・歯学教育に係る様々な社会的ニーズ」,これをもう少し具体化したらどうかということがありました。「医学・歯学等」とたのは,歯学・歯学だけではなくて,ほかのものも含めた,いわゆる広く連携も含むという括弧内を入れさせていただきました。

 それから,3番目につきましては,丸が4つ並んでおります。そのうちの上から3番目のところであります。これは今回の改訂に関してどういうところに留意したらいいかということになります。そこで,かなり具体的なところになってきますので,その点につきましては,「各大学における取組」云々というところ,文章的にももう少し洗練するようにいたしました。「各大学等における取組実績」,「実績」という言葉を入れさせていただきました。さらに「や意見等への配慮」としました。それから,全体構成です。これはコア・カリキュラムの全体構成ですが,その中に表記の調整ということも具体的に入ってくるということでありましたので,「(表記の調整を含む)や周知等の工夫」という括弧書きのところを入れさせていただきました。

 それから,4番目は,今回の改訂後の対応として2つ丸でまとめてありますが,ここについては特に異論はなく,このままとするということにいたしました。

 したがって,あまり大きなことではありませんけれども,ご意見をもとに,よりもう少し明確にするという点で修正をさせていただきました。前回ご欠席の委員もおられますので,もし質問等ありましたらよろしくお願いいたしたいと思います。これは既に確認いただいて,お任せいただいているところでありますけれども,ご意見がもしありましたら,どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは,特に質問等ございませんようですので,この基本方針をベースとして,今回の改訂に向けた具体的な議論を進めていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 それでは,本日の議題に入りたいと思います。本日は,議事次第にございますように,前回に引き続き,これは委託をしておりますが,調査研究チームにおける検討状況についてとして,個別のテーマごとに,医学教育に係る調査研究チームのリーダーであります名川委員から検討状況のご説明をいただき,それに対する質疑,あるいは意見交換といった形で,個別のテーマごとに議事を進めさせていただきたいと思います。

 それでは,今回のテーマの1つ目であります,骨格となる臨床実習に関連して,基本的診療能力の確実な習得ということにつきまして,名川先生のほうから検討状況を,時間を制限して申しわけありませんが,20分程度で,大変な作業をされているとお聞きしておりますので,よろしくお願いいたします。

【名川委員】  わかりました。それでは,右上に資料2と書いてあるホチキスどめの1枚目をごらんいただきたいと思います。今回の改訂に係る検討内容のまず1番目の,「基本的診療能力の確実な習得」という部分についてのご説明をしたいと思います。そこの資料2の部分については,かなり省略して書いてございますので,一部内容がうまく反映されていない書き方も含まれていることをお許しいただきたいと思います。まず,この「基本的診療能力の確実な習得」ということについては,Eの一部分とGを統合するという案を今回お出ししております。それから,Gの部分に書かれてある症例を削除したらどうかというような形でお出しいたしております。

 具体的に見ていただくために1枚おめくりいただきまして,基本的にはGの部分、すなわち臨床実習にかかわる部分でございますけれども,ここが非常に重要な部分と認識して,今回の改訂作業に当たりました。1ページのほうに,大体何を検討したかということが書いてありますのでちょっと読ませていただきますと,1番目ですが,「現行モデル・コア・カリキュラムの『E2,3』と『G1,2,3,4』の学習目標を見直し,改訂案においては,卒業までに習得すべき目標をGをまとめて示す」と,これが1番目です。

 それから,2番目は,「現行のE2(2)臨床検査の『検査手技』に関する学習目標はGと重複するため,本改訂案においては削除する」。これが2番目です。

 それから,3番目は,「現行のE3(1)~(6)の記載もGと重複するため,本改訂案のE3(1)~(6)においては見出しのみを記載し学習目標を削除する」。

 4番目。「上記の2,3の項目の削除部分には『学習項目についてはGを参照』と書き込む」と。

 それから,5番目,「改訂案のGでは,現行G2,3の実習形態と症例に関する記載を削除する」と。今回提案しています改訂案の概要,骨格としては,この5つでございます。

 それから,今の改訂案をもし実際にコア・カリとする場合には,注意書きとして下に書いてありますが,「GとE3(1)~(6)の学習目標は同一である。一般に,Gでは,入院あるいは外来,あるいは病棟における臨床実習において,実際に患者に接しながら指導医の指導・監督のもとに実施すべき目標となる。一方,E3では,臨床実習開始前に,学生が卒業時の目標をめざして診察や実技等に関する基本知識を習得し,シミュレータ,模擬患者,学生同士の相互実習等により学ぶべき内容となる。本方針は,GとE2(2)臨床検査の『検査手技』にも適用される」と記載する。こんな感じになっています。

 よろしいですか。

【福田委員長】  この辺のところの内容については、全体としての位置付けとしては,後ほどご用意していただいたコア・カリ全体の説明がございます。そこのEというところがあります。名川先生が今お話しされたのは,診療の基本Eというところの内容で、特に診療の基本的技能の部分です。それから,一番右のほうに書いてある臨床実習ですが、この中身のところの調整をはかっていただくということとご理解ください。実際,このところは前回のコア・カリの改訂段階で,十分調整しきれていなかったということもありましたので,この機会にこれが統一されたという全体像の位置づけでご理解いただければと思います。よろしくお願いいたします。先生,それでよろしゅうございますね。

【名川委員】  はい,そのとおりです。ありがとうございました。

 このちょっと分厚い,机上資料と書いてある資料の一番最後の参考と書いてあるところに,何枚かめくっていただきますと,「医学教育モデル・コア・カリキュラム―教育内容ガイドライン―平成19年度改訂版」という,こういう黄色の表紙の本があって,下にページ数がついてありますけれども,そのページ数のナンバーからいきますと、一番わかりやすい46ページをちょっと見ていただけますでしょうか。46ページを見ていただきますと,これがちょうどA,B,C,D,EのEに当たる診療の基本というところの3と書いてあるところに「基本的診療技能」と書いてあります。例えば,Eの3の「(1)問題志向型システム」という項目があります。ここに書いてある1)から4)まで4項目あるもの,これを資料2の2ページ目に,そのまま記載してあります。

 一方,黄色のモデル・コア・カリキュラムの本体でいきますとGの部分、51ページの「1 全期間を通じて身につけるべき事項」の「(1)診療の基本」,この中に,「問題志向型システム・科学的根拠にもとづいた医療」というものがありまして,それが1)から5)まで書かれてございます。この5項目の記載を資料2の3ページ目の真ん中の段のあたりの現行G1(1)というところに記載してございます。こういうような形で,今,一例を挙げましたけれども,実際のモデル・コア・カリキュラムのガイドラインの本体から,一部こちらの資料にそのまま記載し,それをどのように改訂したかを四角で囲ってある改訂案でお示ししております。

 少し詳しく解説しますと,現行のE3(1)では問題志向型システム,一般目標として,模擬症例について基本的診療計画を立てるということで,到達目標が1)から4)まであります。一方,3ページのほうの現行G1(1)のほうを見ていただきますと,1)から5)までありまして,文面を読みますと,「基本的診療知識にもとづき,情報を収集・分析できる」ということで,先ほどの2ページのE3の(1)の1)の「症例に関する」という文言を除いてはほぼ同じになっています。2)についても,見ていただくとおわかりのように,文面としてはほぼ同一のものになっているということで,改訂案としては,「問題志向型システムと臨床診断推論」と「科学的根拠にもとづいた医療」というこの2つをまず分離して,文言としては1)から4)の,いわゆる収集・分析できるとか,抽出できる,あるいは鑑別診断ができる,診断・治療計画を立案できるというものと,それから,あと「科学的根拠にもとづいた医療」では,必要十分な検査を挙げることができるとか,治療法を述べることができるというような形にして提示したらどうかという提案です。

 基本的に何が違うのかといいますと,それはこちらのこのカラーの資料を見てていただいたほうがわかりやすいかと思いますけれども,Eの「診療の基本」の中のE3という「基本的診療技能」というのは,Gの「臨床実習」の部分とどういう異なりを示しているかを見ていただきますと,EとGの間にCBT(知識)とOSCE(技能)といった臨床実習開始前の「共用試験」が入っています。それでEとGの違いというのは,Gは実際に病棟等で患者さんに接して主訴を聞いたり,あるいは例えば採血をしたりする臨床実習を指します。その前に基本的な知識を身につけておいたり,基本的な診療技能をシミュレータなどで身につけておくのがEにあたります。これは例えば,態度についてもそうです。EとGについてはそのような違いがありますが,実際にはEとGの内容というのは同一文言で書かれていて,何を対象にするかとか,どういう場所で行うかという部分だけが違うので,重複記載を避ける意味で,1つにまとめたらどうかという提案でございます。

 これは幾つかの部分についてそういう重なりがあります。例えば4ページですと,「診療記録とプレゼンテーション」というのも同じような記載で,現行のE3(3),G1(1)に似たような記載があるので,これを「診療記録とプレゼンテーション」という形でまとめたらどうかという提案です。それから,5ページについても同じような形でそれが示されています。こういったような,いわゆる重複記載のような部分を,文言を整理して,EとGの改訂案としてお示ししたのが一つです。

 それからもう一つ,これはも重複を避けるという意味合いが含まれてくると思いますけれども,本体の分厚いほうのGのところを見ていただきますと,例えば,53ページのところに,Gの2として「内科系臨床実習」というのがあります。ここでは内科として学ぶべき一般目標が掲げられていて,その後に到達目標があります。この到達目標を達成するために,実習形態としては内科系病棟,あるいは外来を使う形になっています。それから,症例としては,頻度の高い悪性新生物とか脳血管障害等々ずらっと並んでいるわけです。

 今回の改訂では,症例として挙げられている部分を全部削除したらどうかという提案でございます。その理由として幾つかありますけれども,例えば,内科を例にとりますと,こういった症例が挙がりますと,これはミニマムリクワイメントとして出されるものですので,最低限これだけの症例は経験しなくてはいけないことになります。必ずしもそうではないのかもしれませんし,あるいは,実際の病棟で,内科系で臨床実習ができる時間も相当限られている中で,こういったものを症例として経験できるのかどうかという点が1つあります。それから,もう一つ,卒後臨床研修との接続性という意味で,卒後臨床研修は,到達目標としては示されてはおりませんで,症例経験ということで示されています。役割分担としては,臨床実習では,あくまでも基本的な診療能力を養うことが重要という位置づけで,例えば,内科ですと,1)から3)までのことができるようになることが重要といった考え方です。

 現行のコア・カリで症例として挙げられているのは,例示として挙げられているというふうに私としては解釈しておりました。それが,ある一部の大学から,これは全部経験しなくてはいけないのかとか,卒後の臨床研修とこの症例と,深さとか幅の点で何が違うのかとか,その辺のすり合わせ等がコア・カリ作成当時はできておりませんでしたので,現段階でもできている状況とは言えないのかもしれませんけれども,少なくともこの症例については,今の研修制度の中で挙げられているものですので,ここではあえて挙げる必要はないのではないかと考え,症例を削除するという提案になりました。この提案をするに当たって,検討チームの委員全員で15名いますけれども,その15名の委員が全員一致でこれを削りましょうと決まったわけではなくて,削る方法もあるのではないかということで,今回提案をさせていただいております。

 以上が1番目の改訂の骨格です。

【福田委員長】  ありがとうございました。一番初めのところにまとめの注意書きが書かれて,これはかなり大事なことが書かれていると思います。今,名川委員からご説明がありましたように,ここのGとEのところは,重複していたり,同じような内容で表現が違っていることについて,各大学からいろいろ既にご意見をいただいておりました。これはどうなっているのだろうなどの疑問がありました。それから,研修との絡みもあり、何かダブっているということなど、よくわからないということがございました。これは当時を振り返ってみますと,策定した当時,臨床実習前にどういうことを設定したらいいかというのと,その次の卒後のことが明確に区別されていなかったという経緯があると思っています。ですからこの際,こういう形で整理していただいたのは大変ありがたいし,また,実際の症例を書いてしまいますと,それがマストmust になってしまったりするとかなり厳しいので,各大学の自主的な判断を阻害する可能性もあります。また,もう一つ大事なことは,特に全身の疾患のところとか,C,Dのところにかなり書いてありますので,そこを参照にすれば,実際の実習でどこまでいけるかは各大学の判断で,多分できるのではないかなとは考えられます。

 これらの点について,1つずつご意見をいただきましょうか。名川先生には大変ありがとうございました。これはコア・カリのかなり細かい話になりますが,これをもう少し広く見て,何かもう少し,例えばこういうところをどう考えるかとか,ご意見をいただければと思います。あるいは,ご担当いただいた委員の先生方でも結構ですので,ご意見をいただければと思います。かなり細かい作業をやっていただきまして,一番難しいところはこのところだと私も理解していました。このようにきちんと整理していただいたのは大変ありがたいと思っています。どうぞ,いかがでございましょうか。よろしくお願いいたします。

 梶井先生,地域医療の観点から,例えば,これは医学部の学生が特にどの専門かという領域ではなくて、総合的な――総合医というイメージとは違いますけれども,総合的な診療能力の育成という原点から見ていかがでございましょうか。何かもしつけ加えたりする,あるいはコメントがありましたらどうぞ。

【梶井委員】  ありがとうございます。今,まとめという,まず前段のほうですけれども,私もこれは非常にクリアカットになるのではないかということで,個人としては賛成でございます。それから,疾患に関しても,ほんとうにこれですべてなのかということにもなってこようかと思います。それから,多分地域医療のところで議論があろうかと思うんですけれども,何をどこまでというときに,ここの疾患を果たして示す必要があるかどうかということもあろうかと思います。先ほど委員長がおっしゃっていましたように,その前のところに,学ぶべき疾患のリストはございます。それから,一方では,国家試験に出てくる必修の分野というのもございますので,そういうものとの絡みを考慮しながら,各大学でお決めいただければいいのかなと思います。すべてこれを経験しなければならないというのは,また手かせ足かせとなってしまうのではないかと思いますので,私も今,ご説明いただいた後段に関しても賛成でございます。

【福田委員長】  ありがとうございました。あと,ほかにいかがでしょうか。平安山先生,いかがでしょうか。もし何かありましたらどうぞ。多分初めてごらんになって,とんでもないことになっているとお感じになられたかもしれませんけれども,もし何かコメントがありましたらどうぞ。よろしゅうございますか。

 あと1つ私のほうからで,前回の今までの改訂案ではタッチしていなかったところなんですが,まとめ方の中で,例えばGのほうの臨床実習でやる中での到達すべき目標として非常に整理されてくるので,卒後時に近いような印象となってくると思います。そうすると,非常にわかりやすくなってくる。ただ,臨床実習前までに,どこまでやるべきかについては,先ほどの1ページのところに説明がありましたので,具体的には全部消えるわけじゃなくて,参照という形になっております。特にOSCEと関連しているところがありますので,そういうところは,北村先生,どうでしょうか。よろしゅうございますか。はい。ありがとうございます。そこは適宜便利になったのではないかなという感じを持っております。

 ほか,いかがでございましょうか。基本的には今までの課題であったところを,非常にクリアにまとめていただいたと思います。大変ありがたいことだと思います。ほかにいかがでございましょうか。よろしゅうございましょうか。

 ありがとうございました。それでは,その次に,地域医療について,引き続き名川先生のほうから……。

【唐沢課長補佐】  委員長。

【福田委員長】  はい,どうぞ。

【唐沢課長補佐】  ここで,事務局から資料の補足説明をさせていただきます。今,名川委員には,この分厚いファイルの資料をご活用いただいていますが,ファイルの中の黄色い冊子については,索引などを除いたコアエッセンスになるものは,本日,参考資料1としてお配りしています。また,後ほど研究マインドの涵養のところで引用がありますけれども,参考資料2として,準備教育モデル・コア・カリキュラムも添付しております。ファイルの中の冊子のほうでご覧いただいても結構ですけれども,一応お手元にもお配りしていますし,本日,傍聴の方にもそれはお配りしておりますので,適宜ご参照いただければと思います。

【福田委員長】  ありがとうございます。補佐のほうから追加していただきました。ありがとうございました。名川先生からもご紹介ありましたように,この色刷りの全体像が書かれています。それぞれの今お話しいただいたところのEのところは,参考資料のEのところを見ていただくとわかります。それから,Gのところにつきましては,この臨床実習のところの内容と,要するに,このGとEの記載の部分がかなり重複していたということになります。ですから,それをきちんと整理することを,名川先生がやっていただいたと結論できます。Eのほうから,全部削除してしまう,見えなくしてしまうということではなくて,このGのほうにまとめられたものを参照するようにという形で整理という理解でよろしゅうございますね。

【名川委員】  はい。

【福田委員長】  ということでございますので,また細かい点もありますので,委員の先生方におかれましては,お気づきの点がありましたら,ぜひ事務局のほうにご意見をいただければと思います。基本的な骨格としては,今まで何かすっきりしないでいたところが非常にクリアになって,先生,大変ご議論がたくさんあったと思いますけれども,ありがとうございます。

 事務局,よろしゅうございましょうか。委員の先生方も,細かいところは今すぐご意見をいただくのは難しいかもしれませんけれども,じっくり読んでいただいて,ご関心のあるところをひとつご意見いただければと思います。どうぞ。 

【唐沢課長補佐】  本日は非常に大部で詳細にわたる資料をお示ししています。この場でなかなか細かい部分まで見るのはということもあるかと思いますし,本日ご欠席の委員もおられますので,本日の委員会終了後,もし追加のご意見等がありましたら,1週間ぐらいの期間で,事務局の方まで出していただくという手続もさせていただきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。

【福田委員長】  私ども,コア・カリをよく見ておりますけれども,多分平安山先生ほか,初めてごらんになる先生方も多いと思いますので,もし何か印象でもありましたらどうぞ。どういうことについて、学生が卒業までに身につけておくことが必要であるということが基本になっております。外国のものを見ましても,やはり卒業時の学習成果,いわゆるアウトカムという表現が使われていますけれども,そこに何が出てくるかとなると,基本的な診療のことがきっちり並べられているといえます。何となく大学なり,それから,その地域の医療機関なりに該当した具体的なものをやっていただければいい話であって,そこの細かい詳細まで規定するのはなかなか難しいと我々も思っておりました。その点では,名川先生もその辺のところを配慮されてやっていただいたと思います。そういう全体像の位置づけであります。

 それから,ここに何か加えてどんどんどんどん増やしていくと,膨大なマキシマムのカリキュラムとなり何もできないことになってしまうので,これは具体的にできるということをまとめていただいたと思います。ありがとうございました。よろしゅうございますか。

【唐沢課長補佐】  今,委員長からもご説明がありましたが,コア・カリ本体について初めてごらんになる方もいらっしゃるかもしれませんので,この概要の資料を用いて,もう少し詳細にコア・カリの構造についてご説明を申し上げたいと思います。

 概要の1枚紙にございますように,まず上の段でございますが,そもそもコア・カリの位置付けとして,このコア・カリキュラムはすべての医学部学生が卒業時までに共通して習得すべき必須の基本となる教育内容について,一般目標と到達目標を明記しています。分量としては,学生の履修時間数の大体3分の2程度を目安として提示したもので,残り3分の1程度は,各大学が特色ある選択制カリキュラムを実施していただくこと念頭に置いて策定したものでございます。また,全体構成としては,冒頭に,医師として求められる基本的な資質。これは平成19年改訂で盛り込まれた事項でございますが,医師として求められる基本的な資質として7つのことを明記し,その後,全体構成としては,基本事項とされるAからB,C,D,E,F,Gの合計7つの項目になっております。

 下の図にございますように,基本事項Aというのは,このコア・カリ全体の中では,臨床実習実施前,臨床実習中に限らず,学部教育6年間全体を通じて学習すべき事項としての位置づけであり,基本事項Aには,その下にございますように,医の原則,医療における安全性確保,コミュニケーションとチーム医療,課題探求・解決と学習の在り方という4つの項目が盛り込まれております。また,BからFの内容は,内容的にはどちらかというと臨床実習前に学習する教育の内容として書かれておりまして,具体的には下の図にございますように,Bは医学一般。具体的には個体の構成と機能,個体の反応,病因と病態。またCは,人体各器官の正常構造と機能,病態,診断,治療。さらにDは,全身に及ぶ生理的変化,病態,診断,治療。そしてEが,先ほど名川委員からご説明がありましたように,診療の基本といたしまして,大きくE1からE3に分かれております。そしてFが,図的には下に書かせていただきましたが,医学・医療と社会ということで,地域医療を含めて,8つの項目が盛り込まれています。

 そしてGというのが,図の右側にございます臨床実習として,大きく5個のカテゴライズがございまして,G1というのが,全期間を通じて身につけるべき事項として,診療の基本,身体診察,基本的臨床手技。G2,G3は,それぞれ内科系臨床実習,外科系臨床実習として,内科,精神科,小児科,または外科,産科婦人科。さらにG4が救急医療臨床実習,そしてG5に地域医療臨床実習という構成になっています。

 さらにまた上の囲みを見ていただきますと,4つ目のポツで,生物学をはじめとする基礎科学,特にこの医学教育モデル・コア・カリキュラムの専門的な内容に行く準備的な段階に係るものに関しましては,この図の左側に黄色い台形の形でまとめている部分でございますが,準備教育モデル・コア・カリキュラムとして基本となる内容が明記されている状況にございます。その内容は,今回参考資料2としてお示ししておりますが,4つの柱からなっており,1つは物理現象と物質の科学,2つ目が生命現象の科学,3つ目が情報の科学,4つ目が人の行動と心理という構成になっております。

 また,資料の上段を見ていただきますと,5つ目の特徴として,一部の学習項目,CからFについては,臨床実習開始前というような全体的な位置づけではありますけれども,内容によっては卒業時までに習得すべき到達目標として,△印を付与したものが一部ございます。また,先ほど名川委員からご説明がございましたように,一般目標と到達目標というのが全体的な構成でございますが,臨床実施につきましては,実習形態と症例というのが併せて明記されているという状況にございます。これが現行の医学教育モデル・コア・カリキュラムの大まかな全体概要でございます。

【福田委員長】  ありがとうございました。私の進め方の不手際で,全体像を説明するのがなしで始めてしまって申しわけありません。

 今の補佐のほうからのご説明は,全体の骨格をあらわしています。もう1点大事なところがあります。それは資料1に戻っていきますけれども,モデル・コア・カリキュラムの基本的な考え方そのものです。これは十分策定するときに議論になりましたことです。それはやっぱりこういうものを文科省が提示することが,いわゆる初等中等教育における学習指導要領じゃないかと受けとめる人たちがたくさんいたのは事実です。大学教育をコントロールする目的では決してなく,また、そういう性格ではなくて,各大学がカリキュラムをつくるときに参考になるガイドラインであるということが必要です。それから,こういうことで提示されたものが,例えば,これは大学の授業科目を規定するものではないし,今のカラー図の書かれたこれが,授業の進め方を規定するものでもないということが重要です。大事なのは内容を整理するとこういう形になるという視点です。さらに大事なことは,やはり医学部卒業前,あるいは臨床実習前までに,最低限必要なこのような内容を,到達目標として提示したにすぎないということであります。これを各大学の実質的なカリキュラム策定に有効に使っていただくということが大前提であります。

 今の点は,補佐からも説明がありましたように,各大学からのご意見が整理されておりますけれども,一番初めのところ大学から,これは大学の名前は伏せてありますけれども,基本概念のことが非常によく表現されているのでご紹介したいと思います。大学としては,臨床実習の系統的な充実,地域の医療を担う意欲や使命感の向上,研究マインドの3点について,一般論として必要性を認識しているとしています。その上で,各大学,医学部,医科大学の個性が損なわれないよう,あまりタイトな時間設定や詳細な科目設定がされないように希望しますというご意見です。非常に総論的な立派なご意見をいただきましたが,まさにこれが今回の改訂の骨格になる精神的な背景だと理解しておりますので,こういうご意見があったということを改めて紹介させていただきます。

 ほかにございませんでしょうか。よろしゅうございましょうか。名川先生,この点について,何か追加することがありましたらどうぞ。

【名川委員】  いいえ。

【福田委員長】  よろしゅうございますか。ありがとうございました。

 はい,どうぞ。

【北村委員】  ちょっとよろしいですか。きょうの名川先生の改訂に伴って,この参考資料1の上から5ページ目で,参考資料1というこっちのほう。5ページ目に,「臨床実習の内容」という,臨床実習の前書きがあります。ここがこういう症例を選んだというようなことが書いてあって,ここのところも今回の改訂に伴った形に変えないといけないのかなと。

 それと,19年改訂のときに,臨床実習の一番頭に一文を入れさせていただいて,「臨床実習は個々に独立したものではなくて,体系的に遂行させる統括責任者が必要である」という文言を19年度改訂から入れて,臨床実習管理室というか,そういうものをつくるべしというようなことを入れていただいた記憶があって,実際入っているんですが,これをもうちょっと目立つなり,個別にするか頭にいくかしないと,現実になかなかそうされていない大学もあるやに思っていますので,そこのところも総説に加えていただけるといいかなと思いました。

【福田委員長】  ありがとうございました。この点は,前回の協力者会議のときにも,まさに集中的に議論されたところで,こういう項目がつくられてましたので,このところは総論的に,注意事項みたいな格好になっていると思います。ですけれども,より臨床実習が実効性あるものになるように,また、あまりタイトにきちきちにならないように,各大学の設定も自由にできるようなことは,委員会でたたき台案を出していただきましたので,その上の冒頭のところは,この委員会ぐらいでそういうところをワーキングチームの先生方のご意見をもとにして,ここで議論するということではどうでしょうか。もし必要があれば、北村先生がおっしゃったように,一番初めのところもそうですが、そういうところは,この委員会としてできる範囲で検討していければと思っています。名川先生,それでよろしゅうございましょうか。

【名川委員】  はい。そこはかなり重要な点で,平成19年度の改訂のときにかなり議論して,それで臨床実習,Gと書いてあるところのすぐ下に入れたほうが目立つだろうということで,そこに入れた経緯があります。

【福田委員長】  その辺のところはまた今回の改訂のときに,さらに工夫というか,必要だったらそういうことを検討していくということにしたいと思いますが,いかがでございましょうか。よろしゅうございましょうか。

【黒岩委員】  1つよろしいでしょうか。EとGとの間に項目の重複があるということで,そこのところはよく理解しております。Eのところは非常に重要なところでございますが,Eの教育のメソドロジーとして,PBL方式,Problem Based Learningというのが推奨されているかと思うんです。しかし、近年の医学部定員増でもって,教室のマンパワー,人的リソースの問題が現場ではございます。例えば,症候ということでは,仮に意識障害,失神というのが選ばれますと,神経内科の病棟から,例えば90人の学生に5人に1人の教員とすると,10人以上のドクターが神経内科の病棟から動員されるということになりますと,病棟ががらがらになってしまいます。そういうような事態が起きると。それを避けるためには,専門家でない,例えば産婦人科の先生とか,あるいは全く専門とは関係のない先生を動員しなければなりません。そこら辺の問題が1つございまして,このE1のPBLところをどのようにするかというところが,現場では結構悩むところでございます。

 私たちのほうの大学では,このところに少し講義形式を入れながら,リソースのほうの問題を一部緩和しながらやっていこうといいますか,そういうようなことも考えざるを得ないような状況になっているわけでございます。このE1の部分の実際の教え方について悩んでおります。非常に重要な,症候というのはものすごく大事なところでございますけれども,教育方法ということに関しては,何か名川班のところではご検討なりあったかどうか、ここら辺のところを,私としてはいつも気になっているところなので。

【福田委員長】  では,初めは私のほうからお答えいたします。今の名川先生のご検討いただいたところは,Eの「診療の基本」の中の3のところに主に該当するところであります。そこでは「基本的な診療技能」ということと,「臨床実習」のことの整合性を図っていただきました。黒岩先生のおっしゃっているところは,主にPBLの対象としているのは,E「診療の基本」の中の1番目のところですね。「症候・病態からのアプローチ」というところだと思います。ここが我が国の今までの教育の中ではほとんど欠落していたところと思います。それから,外国でもこんなのはあまりないんです。私どもとしては力を入れてつくっていただいた記憶があります。これは非常によくできていると思います。それから,非常に実際的でもあります。

 ただ,授業方法としては,当時はやっぱりPBLというのが盛んで、学生の思考能力を養うためにやられましたけれども,やはり我が国の教育のスタッフの体制ではなかなか無理なところがあるということがだんだんわかってきております。ですから,先生からご指摘のあったように,やはりちょっと振り返りの時期が大分前から始まっておりまして,基本的な知識のところをある程度講義でまとめてやった上で,効率的にやるということにほとんどなってきているんじゃないかと思うんです。

 ですから,教育スタッフは限られていて,しかも学生が増えてきたというところで,理想的な教育はなかなかできないというのが現実だと思いますから,それは各大学の判断に任されていると思いますので,ぜひそういうところを,コストパフォーマンスも考えながらやっていただけることが大事で,何でもかんでもPBLというわけにはいかないでしょうか……。これは外国でもどうもそうらしいです。ですから,その辺のところは臨機応変にやっていただく必要があるのではないかと考えております。

【黒岩委員】  わかりました。

【福田委員長】  名川先生,どうぞ。

【名川委員】  実際の項目を検討する中で,今,黒岩先生がおっしゃったようなことも出てきました。ただ,項目として具体的にそれを書き込むのは不適当であろうと。こちらの参考資料でつけてあるほうの3ページにそのことが書いてありまして,3ページの一番上に,「臨床前医学教育の内容とその在り方」の「1)臨床前医学教育の在り方」の段落の最後のほうです。「自己学習への指示や問題解決に取り組む機会と時間を与えなければならない。このためには,少人数の演習やテュートリアル教育なども取り入れることが有効である」と。これは私がつくった文面ではないので分析はわかりませんけれども,多分ここで言いたかったことはもう1行,そのためにはちゃんとした人員をつけてくれと,こういうことを言いたかったんだろうなというふうに思っています。

【福田委員長】  そういうことです。実は私も経験で,はっきりいって,やってみたらえらい大変だということがわかりました。そういう人員,事務的な,あるいは教育のスタッフの支援もない中でどうやってやったらいいかというのは,かなり知恵を絞らなければいけないということで,先生のご指摘のとおり,一律にやるのは難しいというのは,私も正直そう思っております。ありがとうございました。

【黒岩委員】  ありがとうございます。

【福田委員長】  ここのところも少し何らかの追加,全体の会議で,名川先生からご指摘いただきましたので,この辺の文面の調整もある程度考えていかなぎこいけないということでよろしゅうございましょうか。

 ありがとうございました。それでは,次の地域医療のほうに入ります。ここもまた難しいことがありますが,名川先生よろしくお願いします。

【名川委員】  また資料2の1ページ,表紙に戻っていただきたいんですが,今回の改訂に係る検討内容の2番でございます。「地域の医療を担う意欲・使命感の向上」。結論から申しますと,今回の改訂では修正等を行わない方向ということで,下のページ数でいきますと同じ資料の23ページのところに,資料2-2というのがあります。この中で,現在のモデル・コア・カリキュラムの中に書かれてあります地域医療というのを抜き出したものがございます。「F 医学・医療と社会」という項目の中に,「(2)地域医療」という項目があって,そこに一般目標,到達目標それぞれ書かれてございます。それから,平成19年度のコア・カリの改訂の際に,やはり臨床実習の項でも地域医療の臨床実習を加えたほうがよいという意見がございましたので,一番最後の部分として,「G 臨床実習」の「5 地域医療臨床実習」としてそこに書かれてあるようなことがつけ加えられたという経緯がございます。それで,それ以外に今の地域の医師の偏在といいますか,不足というような問題は,今回検討に当たった委員は全員認識しておりました。それに対して,このコア・カリに書くべきことなのか,あるいは,制度論として別にすべきなのかという話し合いのもとで,今回コア・カリの内容としては,ここで書かれてある内容で十分とは言えませんけれども,ある程度のことは言ってあるだろうということで,これは別途検討すべき事項として,別のところで行ったほうがいいのではないかという結論です。

【福田委員長】  ありがとうございました。ちょっと今のところを補足させていただきますと,前回の平成19年度の改訂では,かなり大きな課題でした。梶井先生にもご参加いただいて,地域医療のところのFの「医学・医療と社会」のところのかなり全面的な見直しをいたしました。それからもう一つは,臨床実習の中に,言葉が地域医療だけでいいのかどうかわかりませんけれども,各大学の教育病院としていろいろな研修病院を含めて,その地域に根付いた病院も皆さんお持ちでいらっしゃいます。そことの間の連携が,かなり地域医療の充実の観点とかなり関係が深いという認識から,臨床実習の中に地域医療の臨床実習という項目を設けた経緯があります。これが名川先生のレポートの23ページの下のところの「G 臨床実習」の5として,「地域医療臨床実習」が入っております。

 先生のほうでは,ここで大体のところは,基本的な骨格はできているということでございますが,この辺のところは社会的にもかなり偏在の問題等があって,プレッシャーを受けないということは決してないので,その辺のところも勘案して,これを全面変更するというのではなくて,もう少し意義を強調するといいますか,少し徹底するような多少の工夫をする必要があると,私は個人的には思っています。梶井先生,この辺のところはいかがでございましょう。

【梶井委員】  今,前回の改訂の話がございまして,思い出しながら聞かせていただきました。ご承知のように,従来病気を治すという医療について,医学教育はなされていたと。それがすべてではないですけれども,そこがかなり中心的であっただろうと思います。高齢化が進んで社会の変化,あるいは,一人一人の病気とのつき合い方が変わっていく中で,じゃあ医療はどういうふうな立場をとればよいのかということを,従来の医学教育だけでは伝えきれないということで,この地域医療をどういうふうに導入していくかということでの議論があったように思います。

 モデル・コア・カリキュラムのガイドラインのFのところ,49ページに全容がありまして,既に「医学・医療と社会」という項目はございました。その中で地域医療という項目はなくて,そこを独立させるためにどうしたらいいかというような議論で,その背景には,今お話ししたようなことがあったように思います。それでそのときに私は,やはり実際に地域医療教育を担当していて痛切に感じていますことは,講義だけではとても伝えきれないと。例えば,住民の方が何を望んでおられるかとか,あるいは,生活に寄り添った医療というふうに彼らに伝えても,到底伝わらないというふうに日ごろ思っておりました。やはりそこを伝えるのは,地域の中に学生たちを送り出して,そこでいわゆる診療という狭い分野だけではなくて,幅広い地域の医療ニーズを体感してもらって学んでもらうということが必要だということで,この臨床実習のところをご考慮いただいたというふうに覚えております。

 やはり今,ほとんどの大学はこういうような方向で取り組んでくださっているのではないかと思います。それぞれの項目がどうかという問題もありましょうけれども,私は大変これは大きな第一歩であったというふうに,今,振り返りながら考えております。

【福田委員長】  ありがとうございました。実は,地域社会,23ページのところを見ていただくと,「へき地・離島を含む」と。これはたしか厚生労働省のほうの政策として,へき地・離島というキーワードがありますよね。あれと何となく混同していることがあったと思います。それも含めた上で,都会部でも地域格差がかなりあるので,これらも含めて,地域社会というものをちょっと広く含めたほうがいいだろうということで,こういうふうな表現をしたと思います。各大学ともいろいろな方策をやっていただいているのも現実に出てきていますので,そういうのが少しずつ充実のきっかけになってきていると思います。

 ただ,やはり現状では,医療が都市に集中しているというのは間違いないので,その辺のところを学生の間からどうやって教育していくか、あるいは改善の認識を高めていく必要があります。それとこの「医学・医療と社会」のFのところの「地域医療」の項目立てをしたというのは,これをかなり重点的に取り上げたという意味ではよろしいかと思います。実際に地域医療をやっている先生方は,この中にいらっしゃいますでしょうか。平安山先生,いかがでございましょうか。どうぞご意見をいただければと思います。

【平安山氏】  モデル・コア・カリキュラムのF,Gで地域医療を取り上げていただきまして,どうもありがとうございます。でも,実際地域医療をやっている僕らにとってみたら,まだまだ足りないなという気がいたします。概説できるとか説明できるということもいいんですけれども,地域の中に飛び込んでいって,学生たちが実際に経験することによって身につけるということは非常に大きいと思うんです。僕らは琉球大学のクリニカルクラークシップ,それから,他の大学のクリニカルクラークシップを受け入れて,救急医療にも参加してもらっているし,それから,離島診療にも参加していただいているんです。その後,感想文を書いてもらっているんですけれども,非常にポジティブな意見が多いです。

 それから,僕らの研修制度の中でも,後期研修ですけれども,離島中核病院,宮古・八重山に1年間勤務することを義務づけて,それでまた帰ってくることにしているんですけれども,彼らが帰ってきた後の報告も非常にポジティブで,やはりこういうことでFの(2)の一番最後に8)とありますけれども,地域医療に積極的に参加・貢献するというのが1番目にきてもいいんじゃないかなというような感じがいたします。自治体病院協議会としては,ほんとうに学生時代から地域医療に積極的に取り組んでいくよう,そういうカリキュラムをつくっていただけたらなと思っております。

【福田委員長】  貴重なご意見ありがとうございました。確かに△印になってしまっておりまして,参加・貢献する,ちょっとあいまいな表現になっております。ですから,下のほうのもう一つ,臨床実習のほうでは「体験する」云々,それから,「地域における疾病予防・健康維持増進の活動を体験する」。これは参加して体験するというような,より積極的な各大学の取り組みが,先生のご経験,あるいは現状から分析したお考えでは,そういうことが望ましいというように私は理解しました。

 梶井先生もその点,いかがでしょうか。

【梶井委員】  平安山先生,ありがとうございました。全く私も同感です。それで,実は地域医療の視点よりも,医学教育において地域医療をどういうふうにとらえるかということを,今,実は求められているのではないかと思います。先ほど言いましたように,治す医療に終始していくと,結局,臓器であったり,病気であったり,オリエンテッドになってしまいます。ですけれども,今はやっぱりその人の人生で,やはり生活にどういうふうに密着していくか。その中でどういうかかわりを持っていくかということが求められているんだと思います。

 ちょっと私,今たまたま学生のレポートを持っておりますので,ちょっと読ませていただきます。5年生で,地域に行って,まさに診療だけではなくて,地域医療の活動に参加して帰ってきたある5年生のレポートです。ことしの分です。「訪問看護,リハビリで重要だと感じたのは,患者さんとのコミュニケーションである。ふだん病院での診療,入院など,患者さんにとっては病院という異空間でのイベントである。しかし,訪問診療・看護では,生活空間にお邪魔する形となるため,より患者さんの背景が見えてくるし,その中にこそ真の問題点が見えてくることもあるのではないかと思う」。こういう視点で,実は介護とか福祉とか在宅とか,やっぱりそういうことにかかわっていく。学生時代から,やっぱりそのあたりについて意識を醸成していくというのは非常に大事だと思います。

 私たちは,多分大学の中でも珍しくて,大学の中で在宅医療をやっています。それは,ただ我々が在宅医療をやりたいということよりも,在宅医療をどういうふうにとらえていくか。そして,学生たちにどういうふうに体験,あるいは研修医に体験してもらうかということであります。臨床研修のうちに,私たちのところには,病棟の実習はいい,外来実習を受けたいという人たちが来ます。彼らには必修になっています。彼らに聞くと,ケアマネージャーって何をしているのかと知らないんですよ。そして,ほんとうに医療のことはよく知っていますけれども,医療を外れた関連の組織,分野,あるいはそういう職種の必要たちの活動,存在,十分に知っていないんですね。

 ですから,私はやっぱり,そういうことを教育,講義の場合で教えるのではなくて,もちろん基本的なことは伝えなければいけませんけれども,実際に地域に彼らを赴かせると,そういう地域の教育環境の中ですべて学べますよね,それが実体験として。ですから,私は今,ほんとうにそういうことが必要とされているのではないかと思います。医学教育に医療教育も存分に取り入れていくという時代ではないかと思っています。

【福田委員長】  ありがとうございました。今のお二方の先生のお話をまとめると,地域医療というごく一部のことを知識としてやるだけではなくて,現場を見て,そこで学ばせるという教育の必要性ということを,もう少し時代にマッチしたものにする必要があるということになります。 これをどういうところかで,あるいは連携の話もございましたね。これは多職種間の連携云々というご説明できるようになっていますけれども,言葉だけの話ではなく、実体験させるということがかなり大事になってくると思います。

 そうしましたら,ここは名川先生のほうで十分ご検討いただいていると思いますけれども,あとは委員会としてこの場で二,三調整することでよろしいでしょうか。

【名川委員】  そうですね。よろしいですか。23ページの臨床実習の5番目の「地域医療臨床実習」のところで,例えば,3)に,「地域の救急医療,在宅医療を体験する」,4)に「多職種連携のチーム医療を体験する」というところで,平成19年度のときにも,今言われましたような意見をたくさんいただきまして,これをつけ加えたという経緯がございます。

【福田委員長】  わかりました。基本的にはもう入っていることになります。だから,いかに実行させる工夫が必要という段階ですね。そうしますと,例えば総論的な一般目標のところで学ぶだけではなくて,具体的に体験できるように努めるとか,何か多少の表現の強調等が必要かなと思います。その程度でよろしゅうございますね。具体的には入っていますので。ありがとうございました。

 はい,どうぞ。

【梶井委員】  地域医療の位置づけとか,地域医療の中で,その重要性をどういうふうに学生たちが学んでいくかというときに,私自身は実は,地域医療の教育現場――私は教育現場だと思っているんですけれども,そこの環境をどういうふうに整備していくか。今,名川先生がおっしゃったようなことが全部盛り込まれるような,地域でそういうことを伝えるということが1つ大事だということと,一方では学内で,ほんとうに地域医療の現状を学生たちに教えるべき教員がどれぐらいご存じなのかと。そこのところが,実は非常に大きいのではないかと。そこなくして,結局学生が地域医療のことを尋ねても,いや,それは自分たちは専門家だからとかということでは,今の日本の現状は伝えられないのではないかというふうに思います。そこのところを何とか,どういう文言かにせよ,盛り込めないかなとは思っているんですけれども,いかがでしょうか。

【福田委員長】  平安山先生,どうぞ。

【平安山氏】  私どものところでは,研修医が離島に行きやすいようにということで,行く意欲を湧かせるためにということで,離島で働いている先輩の医師を呼んで,病院の中で講演してもらったり,実情を話してもらったりしているんです。これが非常に有効で,こういう連携を大学と離島診療所,あるいは離島中核病院と,あるいは地域の医療機関との連携がつくれないかどうか,1つの方法じゃないかなと思っております。

【福田委員長】  わかりました。そうしますと,コア・カリキュラムというのは,学生が身につけるべき必要最小限のことと設定していますけれども,このところのことにつきましては,大学の教育組織としてのあり方そのものもエンカレッジするといいますか,そちら側に向くような書き方が必要ではないかというふうな理解でよろしゅうございましょうか。そういうことができるような方向に位置づければいいということで,大変大事な話だと思いますので。はい,保坂先生,どうぞ。

【保坂氏】  今のもとっても大事な話だと思うんですけれども,医学教育というか,医師を教育するということにとっても非常に重要だと思うんですが,梶井先生も平安山先生も,お二方とも非常にへき地や離島を抱えているというか,自治医大の場合は全国のというところの先生は,今の座長のお話にもあったように十分理解しているけれども,じゃあ都会の医学部の先生たちはどうかということは,非常に問題があるというのは,座長のおっしゃるとおりなんですけれども。私は日本医師会の立場ですのでついその話をしますが,やはり地域の診療所とか,地域医療をどんな都会であってもやっているわけでございまして,その辺との連携ということが非常に重要になってきて,私たちのほうも,地域の診療所側といいますか,地域の医療機関側のほうもそれについて何とかアプローチしていこうという気持ちはあるんですが,やはり大学は垣根が高くて,なかなかうまくいかない部分もございます。

 ちょっと話は外れますけれども,男女共同参画のことを私は一生懸命お願いしていますけれども,そのことについてもやはり非常にそういうことが重要になってきて,やはり学生が先輩の背中を見ていくということがとても大事なのにもかかわらず,今は大学の中の先生,学問的には偉い先生の背中を見て学生が育つというような部分があって,それを何とかするようなことが,このコア・カリキュラムに書き込めることかどうかわかりませんけれども,多くの医師の先輩の背中を見て勉強していくような,医師になっていくような仕組みができたら,今の梶井先生や平安山先生の言っていることも,都会であってもどういうところであってもできるようになるのではないかと思いましたので,よろしくお願いします。

【福田委員長】  ありがとうございました。大学にいる者は――私はもう大学を卒業ししておりますけれども,大変的確なご指摘だと思います。実は,こちらのほうの参考資料1の1ページの本文の「医師として求められる基本的な資質」の中にも,そのことも繰り返しご指摘いただいたものですから,丸の6番として,「地域における」云々ということも書かせていただきました。こういう総論的なことが実効性あるように,例えば,前書き等で工夫していく必要があるんじゃないかということを痛切に感じます。ですから,きょういただいたご意見を何らかの形で,コア・カリキュラムのところにも書かれておりますので,それを実効性あるようにするような工夫を,これからこの委員会で考えていきたいと思います。よろしゅうございましょうか。

 ほかは。はい,どうぞ。

【堀内氏】  今のお話は大変重要なことだと思います。今,医療の中で一番医療が空白なのは,在宅とか,老人保健施設とか,老人介護施設などにおける医療であり,特にこの分野では薬物療法が中心になると思いますが,ヒューマン・リレーションが大変重要になると思っています。在宅で亡くなる方が3万2,000人で,1年で2割ぐらい増えているという記事がこの前も出ておりましたが,そこにどうかかわっていくかが重要です。今の状況ですと,いろいろな職種との連携,4番目のところにも書いてありますが,これをどう進めるかについて学ぶためにも大変重要だと思います。まだ十分できているとは思っていませんので,それをどうすすめるか、ぜひ強調していただければありがたいと思います。

【福田委員長】  ありがとうございました。この点に関しては,コア・カリ本体を実現可能とするように,もう少し表現等の工夫が必要であると思います。はい,井部先生,どうぞ。

【井部氏】  今議論されていることは,とても重要なことだと思います。看護の領域でも,訪問看護ステーション,訪問看護に従事する者が全体の2%しかいないという状況で,病院に勤務する看護職が圧倒的に多いわけですけれども,そういう課題を看護の領域でも抱えています。資料2の今議論されています23ページの,「臨床実習」の「実習形態」というところを拝見しますと,「学外の地域病院,診療所,社会福祉施設など」。「など」ですから,いろいろなところを含むんだと思いますけれども,今,議論のありました訪問看護ステーションなども明示してもらうといいのではないかなと思っております。訪問看護ステーションとか,介護でいいますと,地域支援,今何でしたっけ,支援センター,地域包括支援センターとか,そういう主要な,今,堀内先生がご指摘された4番のところを代表するような施設を明記してもいいのではないかなと思いました。

 指導者は,指導医というふうにあまりこだわらず,いろいろなところに指導する者がいると思いますので,柔軟に活用するというような。考え方はどこかに反映されていると思いますけれども,それが1点でございます。

 それから,これは私の感想ですけれども,看護の教育カリキュラムも今検討中でありまして,これまで地域看護学といっていたんですけれども,それが今回の改訂で,公衆衛生看護学に変わりまして,地域を使わず公衆衛生というふうに変わったんですけれども。それは保健師教育だからだと思いますが,先ほど梶井先生がおっしゃったように,地域医療は何なのかという議論が必要だとおっしゃったことは全くそのとおりで,看護も地域看護学から公衆衛生看護学に変わったり。最初は公衆衛生看護学だったんですけれども,それが一時,地域看護学に変わって,また公衆衛生看護学に変わって,つまり,地域で暮らす個人ではなくて,地域の集団とか,地域が抱える問題を明らかにしようという,そういう観点で公衆衛生看護学という名称になったと聞いております。

 長々と説明して恐縮ですけれども,この地域医療というのは,地域に暮らす人の医療ということが基本になると思うんですけれども,そうすると,地域が抱えている健康問題,地域の個ではなくて,地域が抱えている健康問題といったようなことは,またどこかで検討されるところがあるのかどうかというのを,ちょっと教えていただきたいと思いました。

【福田委員長】  ありがとうございました。今のところは,「医学・医療と社会」の中の広い中で総論的に,ご指摘いただいたところは述べられております。資料2は,その中の地域医療に限定したものについてだけ,ここに抜き出しをしていただきました。非常に大事なご意見ですので,この辺のところをより具体的にできるように,可能な範囲でこの委員会として検討するということでよろしゅうございましょうか。ありがとうございました。

 大変ここはいろいろなご意見をいただきました。やはり大学の立場をちょっと変えなければいけないかなというような感触も持ちましたので,大学の方々へのメッセージとしても,こういうロジック,構成をどう担保するかということをちゃんと記載することが必要だとまとめさせていただきます。

 それでは,その次に,ちょっと時間が過ぎてしまって申しわけありません。あとは名川先生のほうからは,研究マインドの育成のところをよろしゅうございましょうか。

【名川委員】  資料2のまたトップページの,今度は3番目,「基礎と臨床の有機的連携による研究マインドの涵養」というところで,ここは大きく2つ改訂を提案しております。

 1つは,先ほど,A,B,C,D,E,F,GといったところのAの部分の基本事項に,研究マインドという項目を新設したということです。それから,項目Bのところに,これは医学一般ですけれども,いわゆる準備教育という部分から項目を移動してきました。ちょっと具体的に見ていただきますと,24ページに「A 基本事項」というのがございます。この中の4という項目に「課題探求・解決と学習の在り方」という項目があって,それぞれ「課題探求・解決能力」から始まっていますけれども,その3番目の位置に,「研究マインドの涵養」というものを新たにつくりました。

 これの骨格はどこから持ってきたかといいますと,同じAの「基本事項」の24ページの数字でいいますと「(5)医療の評価・検証と科学的研究」という中で,いわゆる研究マインドの涵養に相当する部分を一部抜き出して持ってきた。あと,新設したものからなっています。全部で4項目ありまして,1番目は,研究は,医学・医療の発展や患者の利益の増進に行われるべきことを説明できる。2番目としては,生命科学の講義・実習で得た知識をもとに,診療で経験した病態の解析ができる。3番目として,患者や疾患の分析をもとに,教科書・論文などから最新の情報を検索・整理統合し,疾患の理解・診断・治療の深化につなげることができる。最後に,検索・検出した医学・医療情報から新たな課題・仮説を設定し,解決に向けて科学的研究(臨床研究,疫学研究,生命科学研究等)に参加することができる,こういうふうに新設いたしました。

 それに伴いまして,番号の移動等がございますが,「(5)医療の評価・検証」の部分から科学的研究という項目は抜けて,ここの部分は医療の評価と検証という部分だけが残ったという格好になります。

 それから,もう一つは,準備教育関連で,これは参考資料2の準備教育モデル・コア・カリキュラムという資料を見ていただきたいんですが,これのちょうど3ページ目の真ん中より少し下の段に,「2 生命現象の科学」というのがございます。ここの部分を医学一般のBのところへ持ってきまして,「生命現象の科学」という項目をつくって,そのままこちらのほうへ移動したという形をとっております。

 改訂案としては以上でございますが,ここの部分については,委員の間で2つの違った意見が出されまして,1つは,今回提示したような案でございます。それから,もう一つの意見というのは,研究マインドの涵養をコア・カリの中に書いても,研究マインドを涵養するわけではないから,逆にいうと書いてほしくないというご意見もありました。対極的な意見になるのかどうかはちょっとわかりませんけれども,ただ,一部の委員が反対しているような状況で,今回のこの案が出されたということではなくて,これはこの改訂案でよいと全員一致で決まりました。ただ,ほんとうの研究マインドの涵養は,このようなもので書きあらわせるようなものではないということを,ちょっとつけ加えておきたいと思います。以上です。

【福田委員長】  ありがとうございました。今のお話の中には2つの骨格があります。研究マインド関係のテーマとして,1つは,基本モデル・コア・カリキュラムのAの「基本事項」の中の「課題探求・解決と学習の在り方」について「研究マインドの涵養」というのを新たに入れていただいたこと,これが1点ですね。それと,直接は関係ないかもしれませんけれども,基礎医学的,あるいは生命科学的なバックグラウンドをどういう形で充実させるかということで,参考資料1を見ていただきますと,この中の6ページのところに,「個体の構成と機能」というところに,細胞の構造云々というところに,準備教育モデル・コア・カリキュラムを参照しなさいと書いてあります。これは書いてありますけれども,ここのところをよく見ていない人がいらっしゃるようで,どうも周知が不十分だったこともあって,参考資料2の準備教育モデル・コア・カリキュラムに関する周知状況が徹底していなかったというのは,私どもとしても反省しなければいけない点だと思います。

 ここのところは,前にもお話をいたしましたが,要するに,教養教育と学部の専門教育のちょうど間のところに生命科学が入ってきまして,そこをどうするかという形で議論になって,こういうことになってしまったう経緯があります。もう一度文科省のほうで用意していただいたカラーの絵の準備教育モデル・コア・カリキュラムのところでは,従来は教養課程があるときは教養のところでやっていたもの,それとの医学部教育との連動というのはあまりうまくなかったと思います。ところが,医も歯も6年一貫になってきて,この辺のところはもう少し合理的に一貫したものにする必要があるのではないかという形で検討されてきました。その辺のところは両方,ただ参照と書いてあるところをきちんと入れたということです。ただし,準備教育モデル・コア・カリキュラムそのものをいじっているわけではないという理解でよろしいと思います。

 初めのところで,研究マインドはコア・カリに書くことができるものではないというご意見はもっともなところで,ただしこれに関しては,やっぱりただ知っていて技術を覚えてというのでは余りにも情けない気もするし,やっぱり臨床にいくにしろ基礎にいくにしろ,あるいは地域医療にしろ,ある程度きちんとしたサイエンティフィックな検証をするということを身につけていく必要があるということでは,前のコア・カリキュラムの改訂のときも共通の意見でした。ただ,現場としてどういう形でやるかとなると,例えば,研究室配属とか,症例研究をやるとか,あるいは,選択制のカリキュラムをつくっていくこと,そういう積極的な方法でやるということで,前回のモデル・コア・カリキュラムの改訂のときにもそれは踏襲されてきたという経緯があります。

 これについて,いかがでしょうか。たたき台が出てまいりましたので。光山先生,どうぞよろしくお願いします。

【光山委員】  研究マインドの涵養ということが特に強調されるようになった背景には幾つかのことがあると思いますけれども,1つには,医学部を出て基礎的な研究者になる人が激減しているという事実があります。これについては,医学教育課のほうでも随分いろいろな手立てを立てていただいて感謝しております。そういった,ベーシックサイエンスの研究者が減っていることへの対応だという割合狭い観点からの問題と,もう一つは,数として不足しているからということではなくて,今,福田先生もおっしゃいましたけれども,試験管を振るとかDNAをいじるということだけが研究ではなくて,非常に広範な領域にリサーチという局面が積極的に必要となってきています。臨床研究にしても,それから,公衆衛生学的,疫学的な研究にしても,橋渡し研究にしてもですね。つまり、研究は基礎の人間が実験室にこもって試験管を振ってやる難しい話ではなくて,研究の幅が非常に広がってきていますし、それに伴って,方法論も非常にバラエティーに富んできています。

 ですから,そのような広範な研究についての研究マインドをどうあらわすかというのは大変難しいのですが、そういった非常に広範な領域でのリサーチというか,インベスティゲーティブに新しいことにアプローチをし、そして,何らかのアウトカムを出すというプロセスの修練の必要性だと思います。その前の段階として、いわゆる課題は何かということを設定し,それをアベイラブルな情報でどこまでそれが理解できるかという,深い学習能力の修得の必要があります。で,この1,2,3のところに書かれているのがそうで、いわゆる研究マインドとはちょっと違って,一般的に医学部学生が当然身につけるべきことなんですね。本来の研究マインドについては、4のところに、「参加することができる」と書かれています。私は少し物足りなく感じるのですが、そういう新たな課題に向けてどういった方法論を用いて,どういう研究をやるかということが,ある程度構築できて,しかもその方法論についてかなりの知識があって,どこかの領域分野で学生の間にそれを実地に経験しているということが,私は可能であれば望ましいなと思っています。

【福田委員長】  ありがとうございました。実は,ことしの夏の医学・歯学教育指導者ワークショップがございました。その中で,たしか研究マインドの養成のところで,今,光山先生からご指摘があったようなことに関して,従来,医学教育の弱点といいますか,それを指摘する話がありました。それは要するに,どんな形でもいいから,きちんとした研究計画を立てるなり,問題点を抽出してそれをどう解決していくかという,そういうプロセスの教育が全然行われていないということです。それが行われるのは,大学院にしかない。6年卒業した中ではなくて,大学院のところで初めてやるというふうに,従来の学部教育の欠点が指摘されて出てまいりました。

 選択制でも構わないから,一般の大学で行われている卒論は,症例研究でもいいですし,そういう意識を持った1つのプロセスを経験することが大事だという意見が出てきたんですね。ですから,それとちょうど符合する今の光山先生のお話なので,それがやっぱりここへ書いてもなかなか実行できないということがありますから,どういう形かで実効性あるようにしていく必要があるのではないかなと思います。私は実際昔,外科にいたときに,リサーチをちゃんとやらないと「ばか」になるぞと言われていて,ほんとうにそうかなと思って,リサーチの道をやったことがあるんですけれども,やっぱり裏づけがないと情けない話になってしまうので,やっぱりきちんとしたそういう経験は,学部の段階で必要ではないかなということに関しては,賛成であります。

 ですから,これが何とか非常にうまい形で,大きな項目として項目立てしていただきましたので,そこら辺は何とか有効に機能するように期待したいんですけれども。ほかにこの点で。先生,どうぞ。

【黒岩委員】  研究マインドの涵養というところが新設されたということは,非常に教育の現場にとってはすばらしいことだと考えております。やはり教室配属であるとか,いろいろなトライアルがあるかとは思うんですけれども,こういう項目が新設されたことによって,臨床の現場における研究マインド,教育の現場が復活されるといいますか,活性化されるという意味では非常にいいかと思います。特に大学におきましては,研究者としての非常に優れたトップランナーがたくさんいるわけでございますので,学生がそのトップランナーを見ながら研究に夢を開かせていくといいますか,そういうことにつながっていくと思いますので,非常に大きなことだというふうに,私としては感謝しております。。

【福田委員長】  ありがとうございました。ここの掲げられた到達目標は非常に明確で,これがコアの中に入ってきたというのは,かなり大事な視点だと思いますので,これをつくっていただいた名川先生,あるいは委員会の先生にお礼を申し上げる次第であります。ただ,実効性を持たせるために,参考になる事例等が,既に各大学でやられていると思います。そういう事例を提示するというのは,1つの方法かなと思っています。

 この教育内容概要ガイドラインのところにも,そういう事例集みたいなのがもし入ってくると参考になるんじゃないかなと思います。ですから,全部をこの中に盛り込むというんじゃなくて,より実効性あるような,トータルとしての工夫が必要かなと思います。そうしますと,ここにどんどん盛り込むという話ではなくなってきますので,非常に使いやすい冊子にできるように,文科省のほうでも知恵を絞っていただきたいと思います。

 名川先生,何かほかにここに関してよろしゅうございますか。

【名川委員】  はい,特に。

【福田委員長】  これだけはっきり書いていただくと,かなりのインパクトになると思います。しかも臨床のところの話も出ておりますので,よかったと思います。ありがとうございました。

【井部氏】  マインドというのは,何か意図があって片仮名で研究マインドにしたんですか。何でここだけマインドという,気持ちみたいなのが入るのかなと思いまして。中身を見ると,研究的なアプローチを身につけるというような内容かなと思います。タイトルが「研究マインド」としなくてもいいのではないかと勝手に思っておりました。なぜ研究マインドという表題にしたのか,教えてください。

【名川委員】  これは1つは,昨年の5月に行われた検討会が研究マインドという言葉を使っていて,これについてつくりなさいとか――まあ,つくりなさいというより,考えなさいというのが1つですね。それからもう一つは,これも委員会の中で議論されましたけれども,研究マインドの涵養という,この項目があるかないかというところがかなり議論になっている。大学,本来からいうと,1)から4)までの内容は,ひょっとしたら――ひょっとしたらですよ,それほど重要なことではないのかもしれません。研究マインドを涵養するというこの言葉にあらわされている裏側にあるもの,これが非常に重要だという意見がありました。

 ですから,片仮名を使っちゃいかんとかいいとかという,そういう議論はもともとはされてはおりませんけれども,そもそもこれはモデル・コア・カリキュラムですから,片仮名です。ですから,そこら辺,片仮名がいかんとなると非常に難しいようになってくると思いますけれども,研究マインドを新設した心はそこにあります。

【福田委員長】 ありがとうございました。確かに医学教育カリキュラム検討会でこういう提言をされていて,推進をしてくださいということです。これは強制力はないかもしれませんけれども,かなりの「重し」として我々は受けとめました。今,名川先生をちょっと補足させていただきますと,研究マインドの涵養というのは,大学全体としてそういう視点を持つということで,ここのところは大学が考えなきゃいけないことです。具体的に到達目標は,これは学生がどこまできる必要か、アウトカムに相当します。日本語にすると何といっていいかわからないけれども,マインドでわかるんじゃないかと思うんですけれども,よろしゅうございましょうか。ありがとうございました。

 これはかなり画期的なところで,これを項目立てしていただいて,ありがとうございました。

 それでは,その次です。最後はその他のところで,さまざまな社会的ニーズへの対応ということも基本方針の中に含まれています。これはただ優先順位といいますか,量的に非常にたくさんのことをやっていただいておりますので,ここら辺のところはかなり次のステップに行かなきゃいけないようなところもあると思いますが,そこについてよろしくお願いいたします。

【名川委員】  資料4に,このモデル・コア・カリキュラム改訂に関する主な要望と。集計表はありますか。

【唐沢課長補佐】  大学の集計は……。

【名川委員】  ごめんなさい。机上資料として,大学からの意見という,1枚めくっていただくと,今,いろいろな大学からいただいたような……。

【福田委員長】  前に要望書が出ておりましたが……。

【唐沢課長補佐】  各大学と学会からの意見の提出状況に関する集計表は,資料2の一番最後の38,39ページにございます。今回,調査研究チームにおいて行っていただいた大学と学会からの個別具体的な意見につきましては,お手元のファイルの冒頭に机上配付ということでお配りしております。

【名川委員】  ありがとうございました。これは各大学と,あと108の日本医学会の分科会にご意見をお伺いした結果が,資料2の一番最後のページについておりまして,ちょっと私が見落としました。済みませんでした。

 そこを見ていただきますと,全部で80大学のうち,29大学からご意見をいただいております。それから,108の医学会からは,1学会から3つ意見があったのもあるんですがそれを1つとしますと,全部で20学会からご意見をちょうだいしています。結論的に申し上げますと,今回かなり時間的に制約のある中での検討ということで,実際にこのモデル・コア・カリキュラムの中に文面として落とし込むというところまでには,今現在至っていない状況です。おそらくあと1カ月ぐらいの間で,一つ一つが非常に重要で重たい問題ですので,どういうふうに書き込むかという点については,ちょっと今回は難しいのではないかなと。これは委員全体の感じでございます。以上です。

【福田委員長】  ありがとうございました。非常に短期間で,それから,決められた主なテーマもありましたし,まだ不十分だったところを最優先してやっていただきました。さらにいろいろな要望等もたくさんいただいています。これは一つ一つ全部この会議,あるいはこのシリーズで全部やるというのは非常に大変なので,優先順位をつけてやらざるを得ないだろうと考えております。ただ,いろいろなご意見をいただいた中に,それなりに配慮しなきゃいけないかなというような,例えば,最近の社会的な状況から見てということもありますので,その辺のところ。これは先生,資料2-5はどうしましょうか。よろしゅうございますか。

【名川委員】  これは社会的ニーズの後で。

【福田委員長】  後で。はい,わかりました。ということであります。

 それでは,この辺のところについては,また引き続き検討をお願いしたいと思いますので,もし追加の説明とかありましたら,よろしくお願いします。

【名川委員】  わかりました。その他の部分で,あとは資料2の一番最初のページの部分の真ん中の,「今回の改訂に際しての留意点」というところの1番目に,「内容の量的過剰状態への対応」というところの2番目の矢印で,AとDとFを整理,統合できないかという部分で,これは29ページを見ていただきますと,ちょうど「人の死」という部分につきまして,AとDとFと3つの部分にわたって記載がございます。これをある程度融合したり,あるいは整頓ができないかなということで,まずAの項目で,「病理解剖,司法解剖,行政解剖の役割と相違点について概説できる」と。これは確かに基本事項といえば基本事項なんですが,これは社会とのかかわり等事務的な問題も含んでいますので,Fのほうへ移動したらどうかと。

 それから,Dに,「全身におよぶ生理的変化,病態,診断,治療」という部分で,7に「人の死」というのがありますけれども,この辺をこの項目を生かして,そこの1)から9)までそれぞれありますけれども,新たにつくった部分,例えば,「3)脳死判定について説明できる」とかというような部分を除いては,いろいろなところにあった項目を,「人の死」というところでまとめて書くと。それから,法律との関係については,先ほど申し上げましたように,「死と法」というのをFの「医学・医療と社会」へ移動してしまうというような形にして,Fの部分が「(6)死と法」という形でDの8からこちらのほうへ移すという形で,例えば異状死の問題,それから,死体検案の問題とか,死亡診断書,検案書等々につきましてここにまとめたということです。基本的にはAの部分の記載がなくなって,Dのところに「人の死」の項目数が少し増えて,それから,8番の「死と法」というのはDの部分から削除されて,これがFの「医学・医療と社会」へ移動したというような形になってございます。

 とりあえず以上です。

【福田委員長】  ありがとうございました。量的な過剰感というのは,これは前につくったときから言われていて,あちこちに分散していて焦点がわからないというご意見もたくさんありました。まさに死という非常に重たい場面につきましては,いろいろなところに分散していました。これは従来の学問体系の法医学と,医事法制のことと,それから,社会学的なこと,全部がばらばらに書かれていたんですね。ですから,ここを一貫して整理していただいたことは,最近,検視のことが課題になっていますけれども,そういう面でもそれが浮き彫りになるという,今のご説明がありました。これはドラスチックなんですけれども,やはり社会な位置づけとして非常に重要であるというご指摘から,今のところをまとめて,「医学・医療と社会」のところに入れるというお話です。

 これは非常にすっきりした形にやっていただいて,少なくとも一本化するということはかねてからの課題でしたので,大変ありがとうございました。これについていかがでございましょうか。ただ,「医学・医療と社会」というのは,従来は公衆衛生の関係の人たちが主にやってこられたんですね。そうなってくると,地域医療のこともここに入ってくるし,それから,今の医事法制のことも入ってくるし,かなり大事な部分になってくるという感じを持っております。ですから,こういうふうに焦点を絞った形でこれをつくるということは,教育に携わる者にとっても,あるいは学生にとっても非常に広く見られるという意味では,大変ご苦労いただいてありがとうございました。

 何かこの点についてご議論ありましたらどうぞ。

 ちょっとまたこれ図を見ていただきたいんですが,今,お話しいただいた死のことは,脳死の判定基準も変わってきましたし,そういう社会的な動きもあるし,ほんとうに社会と医学の接点になっているところなので,この辺のところは基本事項にほんとうは入れてしまってもいいような感じもするんですよね,非常に大事なところで。そうなってくると,「医学・医療と社会」ということを含めた基本事項的なことをちょっと再整理して,重要性を強調する必要があるというのは,今やっていただいたのを見てよくわかりました。

 ですから,これは検討事項としてこの委員会,また,一部はもし名川先生のところに余裕があれば,それをやっていただくことも可能かと思いますけれども,基本的にはいわゆる従来の公衆衛生の概念から,医学・医療を,全体として非常に大事なものとして位置づけるということは,私は1つの課題であると,今回改めて地域医療も含めて思いました。その1つとして,これで挙げていただきました。

 特に細かいところについて,もしご意見等がありましたら,また事務局のほうまでお知らせいただければと思います。名川先生,何か追加することはございますか。

【名川委員】  この点についてはありません。

【福田委員長】  ありがとうございました。それでは,基本的には今まで,直接関係するところについてのワーキングチームのご努力によって,ここまでかなり具体的にやっていただきました。ほんとうにありがとうございました。

【名川委員】  もう一つ。

【福田委員長】  はい,どうぞ。

【名川委員】  今の「人の死」の次の資料で30ページ以降ですが,これは卒前教育と国家試験との接続性というか関係,あるいは共用試験等どうするのかという,そういう課題もありまして,本質的な問題ではないと認識しておりますけれども, 30ページからの対応表を見ていただきますと,例えば,医師国家試験出題基準に準拠した場合,このコア・カリで記載されている部分と必ずしも一致していないという単語とか文言があります。それをこの表に並べたのがこれだけの数ありまして,もし医師国家試験出題基準に準拠した場合の修正案ということでよいということであれば,これを全部書きかえるという作業が1つあります。

 それから,34ページのほうは,今のモデル・コア・カリキュラムの中では,人名が片仮名になっていたりとか,一部Epstein-Barrウイルスみたいに,こういう横文字になっていたりとか,いろいろばらばらなんですね。これを,人名ですので基本的には原語表記をして,それで現在使われている片仮名の部分については括弧書きでつけるというようなことが一番いいのではないかという,これは委員全体から出た意見です。

 それから,36ページから後は,明らかに間違いみたいな形ですね。本文中に括弧がついてしまったりとか,そういった明らかな誤りと思われるものを直したりとか,全角のBなのか半角のBなのかというような部分は,どっちかに統一したほうがいいだろうということで,全角に統一したほうがいいだろうということで,こういった部分の誤りというか,記載統一をしたほうがいいだろうということです。

 それから,モデル・コア・カリキュラムの最後の部分に索引というのがついてございますが,この索引はちょっと間違っている部分があって,例えば,真ん中辺に「咽頭痛が」とありますから,アイウエオのイにほんとうはなきゃいけないのが,「のど」ということで「ノ」のところにあったりとか,こういったようなものがありましたので,これは全部索引をもう一回つくり直すという作業が1つあります。

 それから,もう一つご相談したいのは,先ほどから出ています△の問題です。△というのは,先ほどご説明のあったように,参考資料1の5ページを見ていただきますと,「4 表示の方法」というところのちょうど一番最後の行になお書きで,「なお,△印をつけたものは,卒業時までの到達目標として提示したものである」というふうに書かれております。

 一方,先ほどの黄色い表紙の医学教育モデル・コア・カリキュラムというのを見ていただきますと,最初の1ページ,2ページが,ちょうど平成19年度に改訂されたときの前書きに当たる部分です。この前書きに当たる部分のちょうど2ページ目の最後の文言,平成19年12月というところで終わっているところのちょうど真ん中ぐらいでしょうか。ここもやっぱりなお書きで,△印についての記載があります。ちょっと読みますと,「△印で表示された,卒業時までに習得すべきレベルの到達目標(今回の作業では変更していない)については,原則として共用試験の直接の対象としていないが,臨床実習開始後から卒業までに習得させるべきとの意味ではなく,必要に応じて臨床実習開始前から学習すべき内容も含まれていることを記述しておきたい」ということで,卒業時までというのと,それから,もっと早目にやってもいいんだよというのと,ちょっと扱いに困ったというんですかね,あるいは,少しこれはレベルが上かなというような形のものを,平成13年当時のモデル・コア・カリキュラムをつくるときに,ちょっと横に置いておきたいんだけれども,削除するとわからなくなっちゃうので,それで△印をつけましょうという,非常に単純な理由から△印がついたというふうに記憶しています。

 それで,この△のイメージが非常に悪いので,この△じゃ何か削除したほうがいいんじゃないかというようなイメージがあるので,チームの意見としては,この△をアステリスクとか,少し格好のいいものに変えたらどうなのかというような意見がありました。以上です。

【福田委員長】  ありがとうございました。今の各意見は,基本方針にも入っておりますところで,表記の調整等が全部入っています。国家試験との関係につきましては,基本的には,学生も混乱するといけないので,国家試験のほうに準拠するとなりました。もしそちらも修正することがあると思いますけれども,これはその中で間違っていたら,それは直していただくようにする。それで統一していく。これは各大学,あるいは先生方のご要望もそのとおりでしたので,ぜひそのようにさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

 それから,今の何点かのところにつきましては,まことにほんとうにご苦労いただいて,全部点検していただきまして,実際の表記上の誤りは早速訂正させていただきたいと思います。それからまた,索引が間違っていたのは,前回の作業を私どもがやりまして,最終チェックが不十分で大変申しわけありませんでした。今回はそういうことのないようにしたいと思います。ありがとうございました。

 それから,△印は非常に議論が多くて,これをどうするかは実際上は,共用試験のCBTの視点のところにもかかわってきますので,そこのところのレベルをどうするかは,各大学の先生方の議論で実際には出題する,しない,あるいはテストケースで出してみようというふうな,かなり弾力的な扱いをしていますので,そこで実際に決めていただければいい。これは各大学の先生方が参加しておられて,これはやっぱり卒業時だよなというふうに思えば,そこで調整していただければいいと思います。現実的にはそういうふうになっています。ただ△印そのもののイメージは,皆さん,借金みたいなことになって,変なイメージですね。だからあまりよくないので,△はやめましょうということです。ただ,アスタリスクをつけて,これを厳密に出しちゃいけないんだという話にならないようにだけは注意しなければいけない。必要に応じて出していってもいいだろう思います。たしかそういう事例はたくさんありますよね。そこは弾力的にやっていただくということにしたいと思います。星印か何かということでよろしゅうございますか。

【名川委員】  はい。

【福田委員長】  ありがとうございます。さらに具体的なところでは,は先生方は,国家試験の出題基準とあわせてよく見ている資料なものですから,学生が到達目標というよりも,試験出題の材料となってしまって,ちょっと違和感があるところですので、まずいところはきちんと直していきたいと思います。その辺の作業をきちんとやっていただきまして,どうもありがとうございました。実際,実態等もよく反映されていまして,このとおり。これは特にご意見をいただかなくても異論はないと思いますけれども,よろしゅうございますか。

 ありがとうございます。名川先生,ほんとうにありがとうございました。

 これでコア・カリ本体に関することはある程度すみましたが、周辺の状況,今までの社会的ニーズに関しましては,いろいろなご要望をいただいております。例えば,1つは,やっぱり感染症の問題が最近クローズアップされてまいりました。それから,医師の過剰な勤務態様ですね。これはかなりきつい話で,学生が云々ということもでもありませんが、そういう実態をやっぱり知っておく必要もありますので,そういうところについて,平安山先生いかがでしょうか。現場で医師の過剰勤務の状態とか,あるいは,院内感染の問題などもしありましたら,どうぞ忌憚のないご意見をお寄せください。

【平安山氏】  医師の過重労働のことに関しては,現場でも非常に課題が多いんですね。労働基準監督署が実際入ってきまして,36協定を結ばなければいけないということで,この4月から36協定を結んでいます。うちには普通の労組と,それから医師の労組がありまして,普通の労組は36協定を結ぶのは非常に簡単でしたけれども,医師の労組との36協定は,なかなか時間数が決められなくて大分時間がかかりましたけれども,結局,結びはしたんですけれども,その時間内ではおさまる医師というのは現実にかなり少ないんです。ですから,ほんとうに現実は,まだ厳しいなというところですね。でも,そこに向かってみんなで何とかしていかないと,やはり過労死とかそういう問題が出てくるだろうと思っております。現在,長時間勤務者をリストアップして,管理者で面接するようにもしているんですけれども,何しろ超勤時間数が多い医師が多くて,面接も相当時間をとるというような状況が続いています。

 根本的には,やはり医療者を増やして,医者を増やして,ほんとうでしたら看護師みたいに3交代ができるような医師の数がいればなと思っておりますけれども,そこまではなかなか。現実はそういうところです。

【福田委員長】  ありがとうございました。ほかにこの点について。はい,保坂先生。

【保坂氏】  この項目を見ますと,Aの基本事項のところの2の(3)に「医療従事者の健康と安全」という項目がございます。それから,最後のほうの50ページのところの(5)で,「保健,医療,福祉と介護の制度」ということがございます。そこに産業保健が出てきます。その辺に何か今のようなことについての,あとは労働法制みたいなものもほんとうは入れていただけたらと思いますが,ぜひよろしくお願いしたいと思います。やはり知識を持つということは非常に大事なものですから。

【福田委員長】  ありがとうございました。実は,ご指摘いただいた3ページの「医療従事者の健康と安全」というのは,前回の改訂のときに新たにつくった項目です。この背景になったのは,某関西の大学の研修医の過労死が労基法に違反するということがあって,大学側が負けた事例がありましたね。あれがきっかけになって私どもとしては,そういう表現は直接はできませんでしたけれども,そういう形で重要性を指摘したということがあります。それから,先ほど保坂先生からご指摘のあった点は,やはり「医学・医療と社会」の中に,労働環境ってかなり大事なんですね。実際は公衆衛生学のほうでは,産業医のこともありますので,かなりきっちりやっていただいているのがこの中に見えてこないんですね。これは何らかの表現上の工夫をする必要があるかなとは思っていたところなので,まことにありがとうございました。

 梶井先生,いかがでしょうか。よろしゅうございましょうか。

【梶井委員】  はい。

【福田委員長】  ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

【堀内氏】  安全性の確保というところで,特に私たちが問題にしているのは,例えば抗がん薬による被ばくの問題でありまして,抗がん薬を取り扱うことによって,従事者が被ばくをする危険性があります。揮発性の高い抗がん薬もあります。ですから,安全キャビネットの中で,閉鎖系の器具を使って今後調製を行う必要があります。私たちもいろいろ調べておりますけれども,排泄物だとか,使ったいろいろな医療材料などから抗がん薬が検出されます。それによって医療従事者が,白血病になるとか,不妊,流産だとか,死産が起こることがあります。これについては,基本的には薬剤師がやるようにはなってきておりますけれども,まだ様々な使われ方がされておりますので,そのことも医師も当然知っておかなければいけないことだと思います。薬物全体,特に抗がん薬の扱いのリーダーとして理解しておくことが重要です。いろいろな有害性のある薬剤に対する被ばくの問題を挙げておいていただきたいと思います。

【福田委員長】  ありがとうございました。基本的には「医療従事者と健康と安全」というという大きな項目がありますので,そこに全部含まれるべきものは含められるんですけれども,工夫ができるかどうかは検討する必要があると思います。かなり大事で,それは学生のうちから身につけておかないということですね。このところをつくったときは,感染の問題が非常に大きかったのと,それからやっぱりスタンダードプレコーションをきちんと学生のうちからやるという,対感染のことはかなり議論になりました。それから,あとは健康管理という漠然としたことになりますけれども,この辺のところの記載のよくわかるような工夫も,ある程度検討しなきゃいけないかなというところだと思います。ただ,具体的にどうするかはなかなか難しいところがあるので,この辺のところはこの委員会で慎重にご検討いただければと思います。

 それからあと,「人の死」は,死体検案のことが国会でも話題になっているようなので,この辺は法医解剖のところは先ほど名川先生からまとめていただいたので,この中でかなり浮き彫りになってくるような感じがしているんですけれども,先生,そういう議論はありましたでしょうか。

【名川委員】  ありました。ええ。

【福田委員長】 はい。逆にこれがかなりはっきり位置づけられるということになってくるんだと思います。

 それからあとは,これは保坂先生からもご指摘いただいて,男女共同参画,あるいはワーク・ライフ・バランスといったこと,かなりご要望をいただきました。私はすくむ思いでお聞きしていた覚えがありますけれども。何かこの辺のところ,もしご意見が,繰り返しで申しわけないんですけれども。ある程度,何も女性だけではなくて,男性のキャリアの発揮を目指してやる体制ということはかなり大事になってくると思っているんですけれども,先生,何かよろしゅうございますか。 

【保坂氏】  これも「医療従事者の健康と安全」ということと,それから,先ほどのいわゆるいろいろな法律について知っておかなければいけないという両面で,ぜひ取り上げていただきたいと思うんですが,原則といたしましては,実は最初のところの基本事項より前にある,「医師として求められる基本的な資質」というところで,ぜひ何か一言入れていただくと,大変ありがたいと思います。やはり人間としての基本的な問題であると思いますので,そこにうたっていただいた上で,各項目で何か具体的なことを書いていただくと,とてもよろしいのではないかと。よろしくお願いいたします。

【福田委員長】  ありがとうございます。トータルとして,やはり医療体制をうまく継続的にできるようにするということは,かなり大事な視点だと思いますので,ぜひ検討をさせていただければと思います。ありがとうございました。

 あとはきょう話題に出ませんでしたけれども,基本方針のところでお話をいたしました,医学と歯学の連携。きょうは前野先生がおいでになっていますが,もし何か追加することがありましたらどうぞ。あるいは,荒木先生のほうから,もしありましたら。

【前野委員】  前回,口腔ケアのあり方,歯学の知識の大切さというのを指摘しました。ただ,口腔ケアの部分をどこに入れたらいいのかなという感じがします。全体を見ているわけではないのですが、「基本的診療知識」の中の「食事と輸液療法」の部分,44ページ。このあたりで,口腔ケアについて触れるのはいかがでしょうか。

【福田委員長】  先生がおっしゃっているのは,44ページの5番のところですね。

【前野委員】  はい。

【福田委員長】 5番のところは以前から議論になっていたのは,口腔のところにやっぱり歯のところがありますので,歯周病も入っているんですね。ですから,そこのところの表現を,全身への影響などが必要でしょうか。これはかなり議論してきたところで,逆にCBTに出すかどうかという,そこまでの話になっていますので,かなり我々も認識しておりました。

【前野委員】  わかりました。

【福田委員長】  荒木先生,もし何かありましたら。

【荒木委員】  きょう,歯科のほうから出席させていただきまして,非常に参考になりましたので,今後歯科チームのほうもやらせていただきたいのですが、今,座長のほうからご指名がありましたので、意見を述べさせていただきます。

 実は歯科の方は,多分今以上に,歯科における医学教育という部分,単語をどういうふうにするかは決めていないんですけれども,その部分をもっと充実させろという意見がかなり学会や大学のほうからきています。特に国家試験のほうにも内科学というのを明確に出すというようなことまで出てきていますので,明らかにモデル・コア・カリキュラムの中にその部分を少し意識して書き込むということは必要になってきています。もう一つは,今,福田先生が言われました,いわゆる医療連携の中で,歯科が医科,それからほかの医療業種の方々といろいろと連携をとるということについても,歯科の中に入れるということで方針が固まっています。地域医療という単語を使えるかどうか,歯科の場合はわからないですけれども,入れることまでは決まっています。

 問題はそのときに,複数の歯科チームの委員から言われたのは,医科のほうのモデル・コア・カリキュラムの中にも,医科の学生さんとか,医師になる方のほうにも歯科のことをもう少し学生のうちから理解してもらえるようなもの入えてもらえないか、ということでした。実はお恥ずかしいのですけれども,医科のモデル・コア・カリキュラムをずっと見ていたんですけれども,歯科という単語っはあまりないんじゃないかと思っていましたら,実は索引の中をみたらかなりあるんですね。ですから,問題は,これ以上別に単語を増やしていただく必要はないかもしれないですけれども,中身というか,それがもう少しうまく歯科のほうと医科のほうが連携できるような教育の方法がとれるといいのではないかなというところまで,今,議論が行われています。

なかなか同じテーブルに医科と歯科のモデル・コア・カリキュラムを直接直している人間たちが集まるということはできないかもしれないですが,こういう少し上部の会のほうで,このような意見を少しお伝えさせていただきます。最終的には教育の方法とか教育の内容のほうに入るので,あまり文字の中に書き込む必要はないと思うのですが,ぜひそのことを意識したようなことを考えてやると,非常にありがたいということをお伝えしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【福田委員長】  この点については,特に歯周病絡みでは,前も随分議論していたんですね。要するに,昔医学系では,いろいろ病巣感染ということがあって,それが歯周病と関連しているということと,それから,口腔内の雑菌の問題ですね。ですから,これは嚥下がうまくいかないときに,嚥下性肺炎を起こしますよね。そこで致命的になる,特に高齢者等は,口腔内のことがあったんです。そういう面から見ても,かなり大事だということは医学部の学生も知らなければならないと思います。

 ですから,その辺も含めて,これはどういう形にするかは別として,ここに既に書いてありますので,例えばこういう参考文献なり何なりを後で紹介するとか,各大学に使ってもらうようにするとか,いろいろな考え方はあります。ですけれども,先生ご指摘のように,連携ということがあるので,私どもとしても,全然考えてなかったわけではないということを申し添えさせていただきます。

 それから,歯のほうが内科云々となると,どうしたらいいんですか。歯のほうの教育の中で,内科系のことをたくさん増やすというのは,具体的にどういうことなんでしょうか

【荒木委員】  実は歯科の中にも,いわゆる内科系というか,当たり前ですけれども,バイタルサインとか,そういうような部分につきましてはほとんど入っていますし,いい言葉ではないですけれども,有病というか,医科系の病気を持っている患者さんの中で,歯科の治療をどういうふうにするかということについては,ある程度明確に書いている部分もあります。もう少しそういう部分は充実するということと,それプラス,どうも時間数として,やはり歯学教育の中に医科の内容の部分を,特に内科系なんですけれども,内科系の内容を入れるべきだということです。それから,顎顔面領域についてですが,この部分をもっと充実させるべきだという意見がかなり出てきておりますので,これをどのように反映するかということが,今,話し合われております。

【福田委員長】  では,それをちょっとお待ちしてよろしゅうございますか。

【荒木委員】  はい。

【福田委員長】  私どもとしては,あまり歯科の領域に浸食して申しわけないなんて意見も以前はありましたので。

【荒木委員】  いえいえ。

【福田委員長】  あまりそこまで踏み込んでおりませんでしたけれども,これは連携ということになりましたので。それから,その連携は,医と歯だけではなくて,例えば,先ほどの地域医療のことも,ほかの介護,あるいは看護との連携ということも全部含めておりますので,そういうものは全部入っていればよろしいんじゃないかと思います。

 先生,何か。

【名川委員】  もし歯科のほうで,こちらの医科と共同して同じ項目を載せたほうがいいというものがありましたら,いただければと思います。

【荒木委員】  ありがとうございます。

【福田委員長】  ありがとうございました。大体いろいろでましたが、,後は、実はコア・カリの項目の中で,感染症はやっぱり先ほどの死のことと同じように,あちこちに分散しているんです。それはそれぞれの学問体系の先生方が土台をつくってきたことがありますので,基礎系の感染症のところにも入っているし,それから,全身の感染症という考え方も入っているし,それから,臓器対応のものも入っているし,この感染症は,今,病院等で耐性菌の問題で話題になっておりますけれども,この辺のところをどういうふうにするかなということは考えていたんですけれども,何かご意見がありましたらどうぞ。光山先生,もしありましたら。ただ分散しているので,1つの考え方としては,既によく書かれていることだと思うんです。院内感染対策も含めてですね。ですから,どういうところを参照してほしいというようなことをしておかないと,ばらばらになってしまうのではないかなと。今,全部一括するのはなかなか難しい話なので,もし何かコメントがありましたらどうぞ。あと,平安山先生も,その辺のところがもしあれば。

【平安山氏】  院内感染ではないんですけれども,感染症とは関係あるんですけれども,Aの「基本事項」の「医療従事者の健康と安全」,それから臨床研修にかかわってくるとこですけれども,うちの病院では,臨床研修,あるいはほかの病院から来る看護師の研修をする人たちについては,必ず幾つかのワクチンで予防できるような,ワクチンの接種は義務づけているわけです。すぐは挙げられませんけれども,幾つかのことは接種で予防できるわけですから,このことはAの(3)の項で記載していったほうがよろしいんじゃないかなと思います。

【福田委員長】  「医療従事者の健康と安全」のところですね。

【平安山氏】  そうです。

【福田委員長】  あと梶井先生,もしあれば。それでは,保坂先生。

【保坂氏】  済みません。これ,感染症のところに予防接種のことが全く入っていなくて,あとのほうの「保健,医療,福祉と介護の制度」の中に△がついて,「予防接種の意義と現状」ということで書いてありますが,やはり感染症のところで入れていただくことができれば,そのほうがずっとよろしいんじゃないかと感じております。

【福田委員長】  大変貴重なご意見をありがとうございました。梶井先生,どうぞ。

【梶井委員】  先ほど委員長が,院内感染のお話をされましたけれども,院内感染はこれからますます大きな問題になってくると思います。そういうことを学生たちにどう伝えておくか。これはリスクマネジメントにもなるわけです。新型インフルエンザのときも,日本中ああいう状況だったんですけれども,少なくとも同じことを繰り返さないために,これから医師になる学生たちに,その対応策を,きちっと考え方,それから,策自体を身につけさせるという意味では,これも1つのリスクマネジメントだと思うんです。ですから,そういうことが,少なくとも今のAの2の「医療における安全性確保」とか,あるいは,感染症の項目では読みとれないといいましょうか。ですから,そこのところを強調しておく必要があるのではないかと思います。先ほど委員長がおっしゃったように,ワクチンの話も含めて,何かもう少し集約化があってもいいのかなという感じはいたします。

【福田委員長】  ありがとうございました。今の梶井先生,保坂先生のご意見,あるいは平安山先生のところは,基本的な予防・対処法を学ぶという,Aの2の(3)のところに総論としてはなっておりますけれども,具体的には少し足りないかなというご指摘に聞こえます。

 それから,あといろいろなところに分散しているんですね。これもちょっとまずいんです。ここをどうするかはかなり難しい問題で,またこれを名川先生のほうに投げてしまうのもちょっと大変な気がしますので,ちょっとみんなで議論しながら,この委員会等で可能な範囲で,大分削っていただきましたので,なるべく増やさないで表現をうまく変えていく。より洗練された文章にしていくということが,我々に与えられたタスクだと思いますので,そこら辺のところをぜひいろいろご意見を伺いましたので,委員の知恵を総力を挙げて検討して,可能な範囲で委員の方々のご意見を盛り込むことや、あるいは,社会から見たある視点もかなり大事なので,今のご意見は全部そういうところになります。それがコア・カリキュラムに見えるような形になるということは,かなり大事だと認識しておりますので,ぜひこれから,事務局でちょっと整理していただいた上で,できる範囲で,どこをやっていくかということを検討させていただきたいと思います。

 ちょうど時間になりましたけれども,ほかに何かもしあったらどうぞ。

【光山委員】  重複の件ですけれども,いろいろなところに同じような項目が重複しているのは,できるだけ整理するほうがいいとは思います。一方,このモデル・コア・カリキュラムを実際に利用する現場の先生方は、どうしても自分のテリトリーはどこだという見方をなさる。これを全部お読みになって,その中でご自分の教育のデューティーはどこだという位置づけをなさるならいいのですが、非常に膨大でありまして、全部を理解した上でそれぞれの担当分野を眺めることはあまり期待できないと懸念されます。

  例えば,先ほどの感染症という臨床的なエンティティーのところと,それから,生体と微生物という基本的な領域のところを見ますと,必ずしもうまく調整がとれているとは言えない部分があるわけです。院内感染とか,日和見感染とかを、感染症というクリニカルエンティティーだけに入れていいのかというのは,ちょっと私も悩むところです。生体と微生物のようなところにも,どうして日和見病原体というのがあるのかという項目のがあっても,私はおかしくないような気がします。それぞれのカテゴリーの中に必要に応じて出てくる少々のオーバーラップは,必ずしも排除しなくてもよいということは考えてもいいんじゃないでしょうか。

【福田委員長】  わかりました。かなり技術的な工夫をしていかなきゃいけないと思って,私どももこの点に関しては,前から議論していました。それで,やっぱりほんとうのことをいうと,感染症で全部一本化してしまったほうが簡単だと,はっきりいって考えておりました。それから,今の「医療従事者の健康と安全」にもかかってきますよね。ですから,かなり多岐にわたって,じゃあそこに一本化すればいいかというとそうでもないということもありますね。ですから,その間を埋めるような方策として,例えばここのところもきちんと参照してくださいというようなのは前から考えておりましたので,何らかの有効に使っていただく工夫は,先生ご指摘のように,多少ダブっていても構わないから,そういう形で進めるのが一番じゃないかなと思っております。ありがとうございました。

【名川委員】  今の議論は,一番最初にありました。それで,BとDがわりと重なるので,BとDの中で,特に感染症については,もっとわかりやすく提示できるのではないかというところからまず議論が始まって,それで,案が1回できたんですね。ただ,今言った,いろいろな角度から見た場合に,必ずしも今の状況に合致していないということで,ここはじゃあこのまま触らないでおこう。重複があっても置いておきましょうという,そういう話になりました。

【福田委員長】  私は多分難しいなと思っていたものですから,例えば,ここのところは関連事項はここですよということを提示してあげると,そこを見ていただければ,具体的な助けになるのではないかなと思っておりました。この辺はまた改めて,委員会として先生方のほうで既にご議論いただいているということを前提に,何とか有効に,光山先生がおっしゃったような形で全体を処理できるような工夫を,この委員会としてさせていただければと思いますので,よろしゅうございましょうか。

 きょう,大変きついスケジュールの中で,名川先生のチームにはかなりきちんとしたものを出していただきました。非常に感謝しております。かなり具体的であったのと,改訂の骨格のところが一歩進んだという印象を持っております。これに準拠して,もし何か必要でしたら,ご意見等ありましたら事務局までお寄せいただければと思います。よろしゅうございましょうか,何か。

【唐沢課長補佐】  名川先生は何か。

【福田委員長】  名川先生,よろしいですか。

【名川委員】  はい。

【福田委員長】  ありがとうございました。大変膨大な作業と,それから,積み残しはたくさんありますね。例えば,各学会,大学等のご要望。これは私どもの頭に入れた上で,今回の改訂作業の目的は,基本方針に示している順番どおりやっていくということに徹していきたいと思います。それを受けながら,またいろいろな意見が出てくると思いますけれども,何かほかに追加することはありませんでしょうか。どうぞ。

【唐沢課長補佐】  今後のスケジュールに入る前に,先ほど議論の途中で申し上げましたけれども,本日,5名の委員がご欠席でございます。本日ご欠席の委員も含めまして,委員の皆様におかれましては,本日の議題に関連して,もし追加のご意見等がございましたら,1週間後の来週22日月曜日までに,事務局までメール等でご連絡いただければと思います。また,その依頼につきましては,事務的に各委員の先生方にご連絡差し上げたいと思います。なお,そこでいただいた追加のご意見等につきましては,引き続き調査研究チームの名川委員のほうにご提供し,今後の検討に際してご留意いただくとともに,今後の本委員会における検討にもいかしていければと思います。

 最後に今後のスケジュールについて,お手元の資料5,1枚紙をごらんください。今後の検討スケジュールについて(案),資料5でございます。本日11月15日月曜日が,専門研究委員会<医学>(第4回)となっておりますけれども,明日,実は本日お越しいただいている荒木委員をはじめとする関係者にお集まりいただきまして,専門研究委員会<歯学>(第5回)を開催いたします。その後,年内の予定でございますが,非常に多忙な先生方ばかりということもございまして,一応こういった皆様方にお集まりいただく場は,事前に日時のみご連絡いたしておりますが,12月20日月曜日の3時から5時ということで,医学・歯学の専門研究委員会及び連絡調整委員会との合同という形で会議を開催させていただければと考えております。なお,内容といたしましては,本日,名川委員のほうから,調査研究チームにおける経過報告をいただきましたが,本日のご意見,さらには追加のご意見等を踏まえた改正素案の中間報告のようなものを12月20日にはご提示いただき,それについて総括的なご審議をしていただければと考えております。

 なお,その後の予定でございますが,具体的な日時等はまだ決めておりませんけれども,下にございますように,当面は年内をめどに,調査研究チームから改正素案の中間報告をいただく。これは医学,歯学ともにでございます。その後の予定につきましては,この検討は広く公開してやっている状況でございますので,一般の方々からもどのような意見を持たれるかという観点から,連絡調整委員会及び専門研究委員会として,その時点での中間とりまとめ案についてパブリックコメントをし、その後,そういったパブリックコメントで頂いたご意見等も踏まえまして,最終的には,現在めどとして,2月下旬ごろに調査研究チームのほうから改正素案の最終案をご報告いただき,その後,本専門委員会においてその内容を精査し,改訂原案として内容を固め,最終的にはこの専門研究委員会の親会であります連絡調整委員会の審議を経て,今のところ年度内をめどに,現時点での改訂すべき事項について「平成22年度改訂版」として取りまとめ,大学等へ公表・周知する方向で対応を考えております。

 なお,今回の改訂作業は,医学教育に関する3本の事項を柱としたモデル・コア・カリキュラムの内容についてご検討いただいておりますが,その後の評価の仕組みづくり等々につきましては,現在の委託事業につきましては2年間という形でお願いしておりますので,来年度において,引き続き臨床実習等に係る評価システムのあり方について,調査研究チームにおいて検討を進めていただく予定でございます。以上です。

【福田委員長】  ありがとうございました。ほかに何かありませんでしょうか。課長のほうから何かありませんか。よろしゅうございましょうか。厚生労働省のほうからもおいでいただいていますが,何かコメントはありますでしょうか。用語は統一したいと思いますので,よろしくお願いします。

 きょうは平安山先生,遠いところからおいでいただいて,貴重なご意見をありがとうございました。保坂先生もありがとうございました。梶井先生もどうもありがとうございました。

 それでは,これで終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。

お問合せ先

高等教育局医学教育課

企画係
電話番号:03-5253-4111(内線2509)