資料4 モデル・コア・カリキュラム改訂に関する主な要望等

モデル・コア・カリキュラム改訂に関する主な要望等

(「関係者ヒアリング」及び「要望書」等より)

 

平成22年11月15日

1. 薬害関係(「関係者ヒアリング」及び「要望書」より) ・・・・・・・・・・・・・・1

2. 看護職からの期待(「関係者ヒアリング」より)  ・・・・・・・・・・・・・・・2

3. 薬害/薬剤師の観点からの意見(「関係者ヒアリング」より) ・・・・・・・・・・3

4. 男女共同参画やワークライフバランス(「関係者ヒアリング」及び「要望書」より) ・・・5

5. 医療安全(「関係者ヒアリング」より) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6

6. 医学・歯学の新たな連携(「関係者ヒアリング」より) ・・・・・・・・・・・・・6

7. 放射線医学・放射線科学領域(「要望書」より) ・・・・・・・・・・・・・・・7

8. 子どもの心の領域(「要望書」より) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8

(参考)

・犯罪被害者等基本計画(平成17年12月閣議決定)   ・・・・・・・・・・・・・9

・犯罪に強い社会の実現のための行動計画2008(平成20年12月犯罪対策閣僚会議決定)・・・・9

・全国自治体病院開設者協議会、社団法人全国自治体病院協議会要望書 (平成21年6月) ・・・・9

・日本慢性期医療協会要望書(平成21年8月)・・・・・・・・・・・・・・・・・・10

・全国医学部長病院長会議要望書(平成21年10月) ・・・・・・・・・・・・・・・11

・自治体からの要望書(平成21年12月)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11

・内服薬処方せんの記載方法の在り方に関する検討会報告書(平成22年1月) ・・・・・12

・日本製薬団体連合会、日本製薬工業協会要望書(平成22年2月) ・・・・・・・12

・薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会報告書(平成22年4月) ・・・・13

・ハンセン病問題に関する検証会議の提言に基づく再発防止検討会報告書(平成22年6月) ・・・・14

・慢性の痛みに関する検討会報告書(平成22年9月) ・・・・・・・・・・・・・・14

1.薬害関係(「関係者ヒアリング」及び「要望書」より)

<モデル・コア・カリキュラムへの要望>

1.薬害や医療被害の歴史と事実経過、その背景や真相などを、再発防止と強く願う被害者の視点からしっかりと伝える。

2.事実ではない情報を発信したり、そのような情報に惑わされたりしないように、薬害等の事例における偏見や差別の歴史を伝える。

3.医療情報の公開、開示、共有の歴史的経過や意義を、被害防止の観点からしっかりと伝え、情報リテラシーを高める。

4.医学を根拠に仕事をする者としての学問的良心、人間を相手にする仕事をする者としての職業的良心を大切にする価値観を育てる。

5.患者、社会的弱者、薬害・薬の副作用・医療事故被害者らを救済する制度を伝え、救済の役割を担えるようにする。

(第1回連絡調整委員会・第1回専門研究委員会(H22.6.16)勝村久司氏プレゼン資料より)

<医学教育モデル・コア・カリキュラム改訂に関する意見>

※「A 基本事項>2 医療における安全性確保>(2)医療上の事故等への対処と予防」の項目(到達目標)に以下を加える。

○  薬の副作用と薬害の違いを説明できる。また、それぞれの薬害について、その原因と被害の実態について正しく説明できる。

○  薬害の被害者が差別や偏見の対象となってきた歴史を説明できる。

○  インターネット上で医師による被害者への誹謗中傷、デマの流布、個人情報の暴露などの事件が起こった事実と背景を説明でき、適切な情報リテラシーを身につける。

○  カルテ開示、レセプト開示、診療明細書の発行などの医療情報の開示が、薬害や医療事故被害者らによる被害の再発防止を願う思いから進んできた事実とその意義を説明できる。

○  薬の副作用被害者や薬害被害者・医療事故被害者やその遺族に、事実を隠さず情報提供すること、被害者に救済制度の活用を促すこと、被害の報告をし再発防止に努めることのそれぞれの重要性を説明し実行できる。

なお、歯学教育のモデル・コア・カリキュラムに関しても同様の意見。

(全国薬害被害者団体連絡協議会からの要望書(2010年8月24日文部科学大臣宛て)より)

 

2.看護職からの期待(「関係者ヒアリング」より)

<医学・歯学教育に係るカリキュラムの改善に向けて>

1.新たな医師臨床研修制度に看護職として期待すること(井部,2003年)

1) 基本的な診療能力の向上による確実で迅速な判断ができること

2) 患者を全人的に診るために、他の専門職との連携を促進し、真のチーム医療の実現を可能とする医師であること

3) そのためには、謙虚でありかつ寛容さが求められること

 (口の利き方が悪いという研修医のために、病棟師長は苦労しているというエピソードが少なくない)

指導医がいれば研修医の指導は完結するといった“認識”は傲慢である。

4) つまり、何事もマナーという作法があることとコミュニケーションが基盤であること

そして、一定の守らなければならないルールがあるといった社会性を早期に体得すること

5) そして、少なくともリスクマネジメント報告くらいは覚醒していられるくらいの“健康的な生活”を確保されること

1. その後の疑問

1) 医学は「患者を全人的に診る」というパラダイムをもっているか

 例:医師は「どうしましたか」と相手に問うが、相手の答えをきいていない。(自分のききたいことだけを選択する?!)

 例:同僚として勤務しているナースは、医師に「わかってもらいたい」と異口同音に話す(わかってもらいたい願望)

2)「真のチーム医療」を実現するために、医師はチームリーダーとして適切か

   チーム医療における4つの困難性(細田,2003年)

   「専門性志向」「患者志向」「職種構成志向」「協働志向」

(ア)    リーダーシップやマネジメント理論の学習と実践が必要

(イ)    EQ(心の知能指数)は、リーダーの必需品

 3)「医師の指示」と看護業務の関係

  (1)医師の指示を仰ぎ過ぎる看護職 ― あいまいな医師の指示範囲 

  (2)医師の指示を催促しなければならない現状

  (3)組織のルールを逸脱して出される医師の指示

  (4)医師の指示と看護職のジレンマ

 看護師の専門分野である「生活行動の援助」と、医師の専門分野である「疾病の診断と治療」が、対等に意見を述べ合い医療が進められるべきである。(新たな看護のあり方に関する検討会,2003年)

(第1回連絡調整委員会・第1回専門研究委員会(H22.6.16)井部俊子氏プレゼン資料より)

 

 

3.薬害/薬剤師の観点からの意見(「関係者ヒアリング」より)

<コア・カリキュラムにおける薬物療法>

B 医学一般

2 個体の反応 (4)生体と薬物

   一般目標: 薬物・薬物の生体への作用について、個体・細胞。分子のレベルにおける作用機序と、生体と薬物分子との相互作用を理解し、的確な薬物療法を行うための基本的な考え方を学ぶ。

「薬物作用の基本」

「薬物の動態」

「薬物の評価」・・・薬物の評価におけるプラセボの意義を説明できる。

   ⇒ 市販後臨床試験による有効性と安全性医の評価に対する認識が重要ではないか

E 診療の基本

 2 基本的診療知識

 (1)薬物治療の基本原理

   到達目標 1)~17) 診療に必要な薬物の基本を学ぶ。

   ⇒ 各組織に対する薬の薬理作用が主。分子標的薬についての記述なし。

     薬物動態学的相互作用については記載あり。遺伝薬理学等についての記述なし。

(第1回連絡調整委員会・第1回専門研究委員会(H22.6.16)堀内龍也氏プレゼン資料より)

 

<医療安全 -個々の患者に安全で最適な薬物療法を- >

A 基本事項(平成19年改訂:医療における安全性への配慮などの記載を充実)

2 医療における安全性確保

(1)安全性の確保

    一般目標

     4)医療の安全性に関する情報(薬害や医療過誤の事例、やってはいけないこと模範事例等を共有し、事後に役立てるための分析の重要性を説明できる。

 ⇒ 1 薬害や医療過誤、特に薬物療法に対する医師の責任を明確にする必要がある。

また、被害者の肉体的、精神的、社会的、経済的被害について患者から直接聴く講義を行うことが重要である。

② 医療過誤のうち薬剤に関するものが最多である。医薬品関連の医療過誤防止を強調する必要があるのではないか。

(第1回連絡調整委員会・第1回専門研究委員会(H22.6.16)堀内龍也氏プレゼン資料より)

 

<チーム医療>

A 基本事項

3 コミュニケーションとチーム医療

(3)チーム医療

   一般目標:チーム医療の重要性を理解し、医療従事者との連携を図る能力を身につける。

 到達目標 1)2)3)4)

⇒ 1 チーム医療はこの数年来急速に医療の共通の認識になった。医療構造が大きく変わろうとしている。「必要に応じて援助を求めることができる」という受動的な位置づけではなく、チーム医療の中核になる医師として積極的な意識を持てるような表現に変えるべきではないか。 

     2 「チーム医療推進のための検討会」報告書(2010年3月19日)、および2010年4月30日医政発0430第1号医政局長通知「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」を参考にして改正すべきではないか。

(第1回連絡調整委員会・第1回専門研究委員会(H22.6.16)堀内龍也氏プレゼン資料より)

 

<医療従事者の安全確保のために>

A 基本事項

2 医療における安全性確保

(3)医療従事者の健康と安全

一般目標:医療従事者が遭遇する危険性(感染を含む)について、基本的な予防・対処方法を学ぶ。

到達目標:1)医療従事者の健康管理の重要性を説明できる。

2)標準予防策(Standard Precautions)の必要性を説明し、実行できる。

3)患者隔離の必要性について説明できる。

4)針刺し事故等に遭遇した際の対処の仕方を説明できる。

⇒ 癌患者の増加、がん治療薬の増加と複雑なレジメン、外来化学療法の増加、一般病院の53%の病院で抗癌薬を取り扱っている。

⇒ 抗癌薬などハイリスク薬の取り扱いの基本を熟知している必要があることを明記する必要があるのではないか。

(第1回連絡調整委員会・第1回専門研究委員会(H22.6.16)堀内龍也氏プレゼン資料より)

 

<総括>

1)チーム医療を実施して高度化する薬物療法に対処できる医師教育を希望します。

2)薬剤部における参加型臨床実習(少なくとも3日)が必要だと考えます。

 → 薬に対しても、あるいは無菌混合等も、ここで経験させる。それから、処方せんと疑義照会にどういう関係があるかということも経験させることが重要。

(第1回連絡調整委員会・第1回専門研究委員会(H22.6.16)堀内龍也氏プレゼン資料等より)

 

4.男女共同参画やワークライフバランス(「関係者ヒアリング」及び「要望書」より)

<基本的に必要なこと>

・医師全体の勤務環境の改善

 ・医療への適正な投資

 ・指導的立場、意志決定機関への女性の参画

<具体的に必要なこと それぞれに対する取り組み>

1.病院管理者や病院長への啓発

2.法律の整備など

3.若い女性医師、女子学生への働きかけ、キャリアモデルの提示等

4.就業継続支援

5.再研修支援

6.出産・育児支援

(第2回専門研究委員会(H22.8.5)保坂シゲリ氏プレゼン資料より)

 

<社団法人日本医師会からの要望>

女性医師が生涯を通じてキャリアを継続するためには、医学生の時期から男女共同参画について明確に理解しておくことが求められます。特に女子医学生には、医師としての使命感を持ち続けるとともに、結婚・出産・育児などのライフサイクルの中で、様々な支援を利用しつつ就業を継続していくことを強く意識させるような教育が必要であり、一方、男子医学生には、パートナーや同僚が母性を尊重しつつ仕事を継続できるような精神的・身体的なサポートを積極的に行うように意識させる教育が必要であります。

つきましては、現在検討中のモデル・コア・カリキュラム改訂にあたって、男女共同参画やワークライフバランスについての講義を必修とするように本会として強く要望いたしますのでよろしくお願い申し上げます。

(社団法人日本医師会からの要望書(平成22年7月1日文部科学大臣宛て)より)

○ アンケートに答えていただいた女性医師の結婚している方の7割が配偶者は医師でございます。その医師である配偶者がいかに協力の度合いが低いかということがはっきり数字で出ております。(中略)特にごらんになっていただくと、40代、50代は、医師である人と医師でない人の協力度の差が大きい。なぜ医学部の教育の中に入れていただきたいかということの理由のもう一つは、そうすることによって、40代、50代の教える側の意識の改革もぜひしていただきたい。それをしない限りは全体の意識の改革はできない。女子学生だけにこのことをやってもだめで、男子学生と、今教えている40代、50代の方もこのことを理解して、医療界全体がこういうことを理解していくことが、女性医師を生かしていくということだけではなくて、男性医師のクオリティオブライフといいますか、そういうものを高めて、今、心が大事というお話が出ておりますけれども、ほんとうに心を持った医療ができるようになる人材を育てていくことにつながるのではないかと思いますので、ぜひよろしくお願いします。

 

(第2回専門研究委員会(H22.8.5)保坂シゲリ氏の発言より)

5.医療安全(「関係者ヒアリング」より

<医療安全に関する卒前教育について(まとめ)>

・医療安全教育の体系化が必要

・医療安全の科学としての位置づけ

・知識、スキル、態度が身につく教育

・内容と時期と方法

・ノンテクニカルスキル教育

・チームやシステムの中で機能する能力の開発

・診療との関係性(診断、処方、治療、情報伝達等)や連続性

・臨床現場の安全を脅やかすシステムの問題解決能力

・医療安全管理者の業務内容の紹介ではない

(第2回専門研究委員会(H22.8.5)中島和江氏プレゼン資料より)

○ 我が国でも、現在のコアカリにある医療安全の内容を充実させる時期に来ています。学生時代に、医師になってからより安全な診療を行うことができるような知識、技術、態度を身につけておく必要があります。そのための医療安全の教育は、病院の医療安全管理者の業務内容の紹介ではないと考えます。医療安全はヒューマンファクターやシステムに関する科学として教育されるべきであり、そのような観点から、医学部の6年間で教えるべき内容と時期また最適な教育方法を検討する必要があります。教育内容の中には、医療チームのパフォーマンスを向上するようなノンテクニカルスキルの教育や自分の職場においてシステムの問題を解決できるようなクオリティ・インプルーブメント能力の開発も含まれるべきだと思います。           

(第2回専門研究委員会(H22.8.5)中島和江氏の発言より)

 

 

6.医学・歯学の新たな連携(「関係者ヒアリング」より)

<今後の課題>

・歯科と医科とのさらなる連携が、これまで未知であった疾患のメカニズムの解明につながる可能性が示唆されている。

・新規の診断法・治療法の確立、これまで十分に実施されてこなかった医科/歯科の医療連携が創出。

(第2回専門研究委員会(H22.8.5)村上伸也氏プレゼン資料より)

○  いろいろなさまざまな疾患があるけれども、その中には既に証明されている既知のメカニズムがある。けれども、100%すべてのからくりがわかっているわけではなくて、そのわかっていないからくりの中には、医科と歯科と連携をするということで、新しい仕組みの解明、医科と歯科との新たな連携によって不明だった部分のメカニズムの解明につながる可能性があると思う。そういったことから、新規の診断法、治療法の確立、これまで十分に実施されてこなかった医科・歯科の医療連携というものが創出されてくるのではないか。もしくはそうあるべきではないかということで、今後の課題とさせていただきました。

  (第2回専門研究委員会(H22.8.5)村上伸也氏の発言より)

 

7.放射線医学・放射線科学領域(「要望書」より)

<検討をお願いしたい事項>

1.現行のモデル・コア・カリキュラム「B.2(3)生体と放射線・電磁波・超音波の「放射線と生物」」の項では、4項目が示されていますが、これらの内容は、やや包括的な記述のため、実際の教育内容が教育機関間で大きくばらつく可能性があります。そこで学ぶべき内容をより精選したものとするために、いくつかのキーワード(コア)を明記することが望ましいと考えます。

   具体的には、同項を、

1) 放射線と放射能の種類、性質、測定方法、単位(照射線量、吸収線量、実効線量、生物学的効果比を含む。)について説明できる

2) 放射線の人体への影響(急性影響と晩発影響、確率的影響と確定的影響、胎児への影響を含む。)について説明が出来る。

3) 放射線による人体への全身障害と局所障害を説明できる。

4) 種々の正常組織の放射線感受性の違いを説明できる。

5) 放射線の細胞への作用と放射線による細胞死の機序を説明できる。

とすること(下線部の明記)をご検討下さい。

2.現行のモデル・コア・カリキュラム「D.4.「物理・化学的因子による疾患」(3)疾患」の項において、物理的・化学的因子の一つとしての放射線の人体への影響を学ぶことにつき、ご勘案いただければ幸いです。大量の放射線を被ばくした患者であっても、初期の数時間以内に起こる症候は、嘔吐や下痢といった非特異的なものであることから、初期対応に当たった医師が、化学物質の中毒だけでなく、放射線を思い浮かべ、総合的な初期対応を行うことができるかどうかは、患者のその後の治療のみならず臨床現場の二次的な汚染の拡大防止などに大変重要となるからです。モデル・コア・カリキュラムのコアとしての性格を考えれば、いたずらに項目を増やすことは避けなければなりませんが、最低限の基本的な事項として以下の内容を盛り込むことについてご検討下さい。

4放射線による障害

到達目標

1)放射線の外部被ばくおよび内部被ばくの症候、診断と治療を説明できる。

 

(独立行政法人放射線医学総合研究所からの要望書(平成22年7月21日モデル・コア・カリキュラム改訂に関する連絡調整委員会委員長宛て)より)

 

8.子どもの心の領域(「要望書」より)

<要望事項>

 以下の下線部分(小児心身症)の追加を要望致します。

D 全身におよぶ生理的変化、病態、診断、治療

5 成長と発達

(3)小児期全般

到達目標:

1) 小児の精神運動発達を説明できる。

(中略)

9)心身相関を理解し、小児心身症(不定愁訴、起立性調節障害、慢性頭痛、過敏性腸症候群、神経性無食欲症、過換気症候群、不登校)を列挙できる。

G 臨床実習

2 内科系臨床実習

(3)小児科

到達目標:

1)新生児、乳・幼児期、学童期、思春期の患者およびその家族と良好な関係を築いて、漏れのない正確な情報を取ることができる。

(中略)

       症例:てんかん・けいれん

(中略)

     運動・精神発達の遅れ

     心身の不調・行動上の問題

     成長障害・低身長

【要望理由】

現行コアカリの小児科領域において、虐待と小児行動異常(注意欠陥多動障害<ADHD>、自閉症、学習障害、チック)は学習対象となっているが、「小児心身症」が未掲載である。厚労科研奥野班の調査(2000年)によれば、小児心身症はADHDの5倍以上の受診者数を占め、一般小児科を受診する患者では感染症に次いで多い。日本小児心身医学会は、小児心身症の中で重要な4つの病態(起立性調節障害、くり返す頭痛・腹痛、神経性無食欲症、不登校)について診療ガイドラインを作成した。以上のことから、「9)心身相関を理解し、小児心身症(不定愁訴、起立性調節障害、慢性頭痛、過敏性腸症候群、神経性無食欲症、過換気症候群、不登校)を列挙できる。」の追記を要望する。また実習においては、不定愁訴等の心身の不調、行動上の問題の症例を追記して頂きたい。

   なお、精神科領域で子どもの心に焦点を当てた記載はなく、関連する病態は以下のように成人疾患の中で取り扱われている。

C 人体各器官の正常構造と機能、病態、診断、治療

15 精神系(精神科領域)

(3)疾患・障害

  11) 心身症(摂食障害を含む)の症候と診断を説明できる

△16)精神遅滞(知的障害)と広汎性発達障害(自閉症)を概説できる。

△17)多動性障害と行為障害を概説できる。

(日本小児心身医学会からの要望書(平成22年8月10日モデル・コア・

カリキュラム改訂に関する連絡調整委員会委員長宛て)より)

 

(参考)

・犯罪被害者等基本計画(平成17年12月閣議決定)   ・・・・・・・・・9

・犯罪に強い社会の実現のための行動計画2008(平成20年12月犯罪対策閣僚会議決定) ・・9

・全国自治体病院開設者協議会、社団法人全国自治体病院協議会要望書 (平成21年6月)・・9

・日本慢性期医療協会要望書(平成21年8月)  ・・・・・・・・・・・・10

・全国医学部長病院長会議要望書(平成21年10月)  ・・・・・・・・・11

・自治体からの要望書(平成21年12月) ・・・・・・・・・・・・・・・・11

・内服薬処方せんの記載方法の在り方に関する検討会報告書(平成22年1月)・・12

・日本製薬団体連合会、日本製薬工業協会要望書(平成22年2月)  ・・12

・薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会報告書(平成22年4月)  ・・13

・ハンセン病問題に関する検証会議の提言に基づく再発防止検討会報告書(平成22年6月) ・・14

・慢性の痛みに関する検討会報告書(平成22年9月) ・・・・・・・・・・14

(参考)

○犯罪被害者等基本計画(平成17年12月閣議決定)(抜粋)

第2 精神的・身体的被害の回復・防止への取組

[今後講じていく施策]

(11)犯罪被害者等への適切な対応に資する医学教育の促進

文部科学省において、犯罪被害者等への適切な対応に資するよう、PTSD等の精神的被害に関する知識・技能を修得させるための教育を含め、各大学の医学教育における「モデル・コア・カリキュラム」に基づくカリキュラム改革の取組を更に促進する。

 

○犯罪に強い社会の実現のための行動計画2008(平成20年12月犯罪対策閣僚会議決定)(抜粋)

第7 治安再生のための基盤整備

 2 犯罪の追跡可能性の確保、証拠収集方法の拡充

  6 死因究明体制の強化

死体取扱数の増加に対応するため、的確な検視の実施に資する人員の増強、施設・資機材の整備、死亡時画像病理診断の積極的活用、医師の死体検案に対する意識・能力の向上を推進するとともに、解剖医・解剖施設の充実、大学医学部の法医学講座等との連携促進、監察医制度の更なる活用等死因究明体制を強化するための方策について検討する。

 

○ 全国自治体病院開設者協議会,社団法人全国自治体病院協議会要望書(平成21年6月)(抜粋)

1.医師確保対策について

3) いわゆる総合診療に従事できる医師の養成に努めるとともに,専門医の養成・認定においては,地域医療従事等の評価を考慮した体系とするよう,国として早急な対策を講じること。

 

○ 日本慢性期医療協会要望書(平成21年8月)(抜粋)

老年医学の継承発展に関する要望書

謹啓 新涼の候ますますご盛栄のこととお喜び申し上げます、平素は格別のご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。

 さて、大学医学部における老年医学講座は近年縮小の傾向にあり、当日本慢性期医療協会としては、官民の福利に少なからぬ影響を及ぼすのではないかと懸念しているところであります。

 今後の日本の厳然たる事実として到来するのが超高齢社会であり、今や急性期医療の現場でも患者の3分の2以上が高齢者という時代となっております。高齢者を身体的には成人の一部と考えることは異論が多く、小児科と同じように身体環境の異なった集団として特別な治療が必要とされております。そのため、旧来より各大学に老年医学の講座が創設され、日本でも高齢者に対する医療の学問的研究が進んでいることは誠に評価されるべきことと存じます。

 しかしながら、ここにきて老年医学講座の廃止や統合が行われようとすることは、今後爆発的に増加し、老年医療の需要がさらに大きくなろうとする時代に逆行するものではないかと危惧しております、どの診療科においても高齢者の占める比率は高く、小児科など一部を除くすべての診療科で老年医学の専門性が必要とされております。老年医学の視点から診療できる医師の養成を怠っては慢性期医療のみでなく、急性期医療の現場でも的確な診断、治療を欠くことにもつながりかねません。

 当白本慢性期医療協会の会員施設では、高齢者の医療を担当する機会が多くある中で全国の老年医学の先生方にご支援をいただき、診療に大いに参考にさせて頂いております。時代背景や日本の現状を鑑みて、医学教育の場においても老年医学の継承、発展についてご高配いただければ幸いです。何卒よろしくお願い申し上げます。

                                 敬具

 

○ 全国医学部長病院長会議要望書(平成21年10月)(抜粋)

6.  医学研究を再興させるための具体的政策を直ちに推進して頂きたい。

  臨床研修制度などの影響により、基礎医学研究者の志望が激減し、医学研究が沈滞の危機にあります、世界の論文数は1997年米国に次いで世界第2位でしたが,2007年には5位に後退しました。この10年間の論文数の伸びは中国が505%すなわち5倍、韓国204%;約2倍に対し本邦はわずか5%にとどまり、国立大学医学部全体では3%減という惨憺たる状況です。医学研究は医療の質を担保し国民福祉を維持するためには必須のものです。医学研究を再興させるため具体的政策の速やかな推進を求めるものです。

 

○ 自治体からの要望書(平成21年12月)(抜粋) 例:茨城県要望書

医師確保対策について

 医療の高度化,専門化に加え,インフォームドコンセントの充実等患者ニーズの多様化や,女性医師の増加など,医師を取り巻く環壕が大きく変化する中,医師の絶対数の不足に加え,医師の地域偏在や診療科偏在などにより,全国的な医師不足が一層深刻なものとなっています。

 本県の医師数は人口10万人対155.1人と全国平均217.5人を大きく下回り,特に,全国平均の半分に満たない二次保健医療圏があることや,小児科,産婦人科など、不足診療科はもとより,内科及び外科等の基本的な診療科においても,医師不足が深刻なものとなうており,本県の医療体制の充実を図るためには,医師確保は緊急の課題であります。

 国においては,平成21年度から過去最大の医李部入学定員増を図るとともに,臨床研修制度の見直しが実施されたところでありますが,地域における医療提供体制の確保のためには,医師養成に多額の公費負担が行われている現状や医師に求められている公的責務なども踏まえたうえで,現在の医師の勤務のあり方の見直しも含め,さらなる抜本的な対策を進める必要があります。

 以上のことから,下記事項について要望いたします。

7 今後ますます増加が見込まれる女性医師が第一線で継続して働くことができるよう,保育制度の充実,短時間勤務やワークジェアリング等勤務体制の柔軟化,再就業支援等,就業環境の整備を促進するために必要な措置を早急に講じること。

 

○内服薬処方せんの記載方法の在り方に関する検討会報告書(平成22年1月)(抜粋) 

        厚生労働省

 

【4.内服薬処方せんの記載方法の標準化に至る短期的方策】

 「3.内服薬処方せん記載の在るべき姿」に基づき、まず、可及的速やかに着手すべき方策として実施すべきものを示す。

7)医師、歯科医師、薬剤師及び看護師の養成機関においては、内服薬処方せんの標準的な記載方法に関する教育を実施し、内服薬処方せんの標準的な記載方法を基に国家試験等へ積極的に出題する。

8)医師、歯科医師、薬剤師及び看護師の臨床研修等の卒後の教育においても、上記養成機関における対応等を踏まえ、医師臨床研修指導ガイドライン等に内服薬処方せんの標準的な記載方法を明記し、内服薬処方せんの標準的な記載方法に関する教育を可及的速やかに実施する。

 

○ 日本製薬団体連合会、日本製薬工業協会要望書(平成22年2月)(抜粋)

わが国の医学研究と医薬品産業の国際競争力を高めていくためにも、今こそ基礎医学研究振興に向けて、早急に下記の施策を講じていただくことを要望致します。

1.基礎医学研究振興を科学技術部門の成長戦略の一環に位置付け、医学部における基礎医学教育の充実と優れた基礎医学研究者が安心して研究活動に専念できる研究費を確保すること。

 

○ 薬害再発防止のための医薬品行政等の見直しについて(最終提言)(平成22年4月)(抜粋)

厚生労働省

第4 薬害再発防止のための医薬品行政等の見直し

3 薬害教育・医薬品評価教育

・ 大学の医学部・薬学部・看護学部教育において、薬害問題や医薬品評価に関して学ぶカリキュラムがないか少ないため、関係省と連携してカリキュラムを増やすなど、医療に従事することになる者の医薬品に対する認識を高める教育を行う必要がある。

・ 具体的には、医学部・薬学部・看護学部におけるコアカリキュラムや、国家試験の問題作成基準の見直しを含めた検討を行うべきである。

・ 医師、薬剤師、歯科医師、看護師となった後、薬害事件や健康被害の防止のために、薬害事件の歴史や健康被害、救済制度及び医薬品の適正使用に関する生涯学習を行う必要がある。

 

○ ハンセン病問題に関する検証会議の提言に基づく再発防止検討委員会報告書(平成22年6月)(抜粋)

  厚生労働省

第2 疾病を理由とする差別・偏見の克服、国民・社会への普及啓発

 2 正しい医学的知識の普及・啓発

・疾病を理由とする差別・偏見を克服するためには、すべての人が正しい医学的知識を持つことが、なによりも大切なことである。

・正しい医学的知識の普及・啓発という観点からみた場合、医療従事者の果たす役割は極めて大きい。このため、医療従事者の幅広い専門的知識と高い倫理的視野に対する社会の要請に医療従事者が応えられるよう、国・地方公共団体、大学、研究機関は、医学系・看護系教育の強化、充実、海外の知見や国内の少数意見を含め、正しい医学・医療の知識・情報を提供するためのシステムの構築を図っていかなければならない。さらに学術的根拠の解明が恒常的に推進され、啓発活動に資するよう、学術的研究体制の充実、研究者の確保、育成に努めなければならない。

 

○ 慢性の痛みに関する検討会報告書(平成22年9月)(抜粋)

           - 今後の慢性の痛み対策について(提言) -

                            厚生労働省

3.今後、必要とされる対策

(2)教育、普及・啓発

○ 医師、看護師等の医療従事者の育成において、慢性の痛みに関する診断法や対処法等を、初期教育や卒前・卒後教育において実施することが必要である。これらを教育プログラム等に反映させるような取組が望まれる

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