学校法人会計基準の在り方に関する検討会(第11回) 議事要旨


1. 日 時   平成16年3月17日(水)13時30分〜15時30分

2. 場 所   経済産業省別館10階1020号会議室

3. 出席者  
(協 力 者)   大橋英五、片山覚、齋藤勉、齊藤秀樹、佐野慶子、清水至、西村昭、長谷川昭、松本香、森公高の各委員
(文部科学省)   加茂川私学部長、久保私学行政課長、浅田参事官、德岡参事官付学校法人調査官 他

4. 議事

  事務局から学校法人会計基準の見直しの論点整理等について資料に基づいて説明があり、その後、討議を行った。

○:委員  ●:事務局

:1ページの上から3行目に「利潤の追求」という言葉が出てくるが、自己増殖していくわけではないので、表現を工夫したらどうか。

:「少子化、産業界の変革等による社会経済情勢の変化に伴い」は、「実態をより正確に表すよう基本金の見直しの取崩しを必要に応じ認めるようにすべきではないか」というところに係るのではないかと思うが、その前のところが大上段に振りかぶりすぎて、なぜ基本金の取崩しを認める必要があるのかということが、少し分かりにくいような気がする。

:この検討会ができたきっかけの一つは学校法人制度改善検討小委員会の提言なので、順番としては、財務公開の声があるということがまずあって、それから、新しい企業会計の問題があって、さらに、基本金問題を上げるようにした方が、ポイントの整理がしやすいと思う。

:1ページの下から3行目に「企業会計原則」とあるが、会計原則そのものは変わっていないので、「企業会計の基準」とした方がよいのではないか。2ページの下から1行目も同様である。

:2ページ下段の「学校法人会計の特性」のところで、「基本金についてのこのような基本的な考え方」という表現がやや唐突に出てくるように思われる。その前に基本金というのは具体的にどういうものかを表す言葉があった方がよいと思う。

:2ページの「学校法人会計基準は何のためのものか」の3つ目のパラグラフに「したがって、今後は財務書類の公開も念頭に置きつつ、その在り方を考えるという視点も必要である」とあるが、もともとの議論でも、学校法人会計基準の成り立ちが私学振興助成法であるということが根本にあって、どちらかというと、財務書類の公開とかガバナンスといった視点ではなくて、補助金が効果的に使用されているかどうかに重点を置きながら、財政や経営の状況を明確にしていこうという視点があったと思う。この部分は、学校法人会計基準の在り方について、私学振興助成法での在り方ではなくて、私学法での在り方を検討する必要があるという視点を折り込んだものと解釈している。

:1ページの中段と2ページの中段で、学校法人会計基準は経常費補助を受ける学校法人に適用されるが、他の学校法人についても、学校法人会計基準に従って会計処理を行うことが望ましい旨の記述が重複して出てくるので、整理した方がよい。

:3ページの「留意すべき点」の中で、「仮に見直しを行う場合」という表現が出てくるが、消極的なイメージを打ち出したいのか。そうでなければ、単に「見直しを行う場合」としてもよいのではないか。

:2ページの「学校法人会計基準の特性」のところに「収益を得る」とあるが、そこは「利潤の追求」と同様に表現を工夫すべきではないか。

:3ページの上から2行目に「実態に即して必要に応じ基本金の取崩しも認める」とあるが、この場合の「実態に即して」とは、資産がなくなったとか、減ったとかということを指しているかのように読めるが、基本金は資産とイコールであるということを前提とした上での「実態」に即した、つまり、事業の見直し等を行ったことによって資産の価値が縮小し、その資産の実態に即して、必要に応じた取崩しをするものと理解してよいか。

:「実態に即して」というのはなくても通じると思うが、必要に応じ取崩しを認めるようにするべきであると言うだけでは、恣意的にできると思われないかというおそれがある。

:2ページの「学校法人会計の特性」の最後の部分は、とてもよい表現だと思う。「学校法人が必ず保持しなければならない基本的な財産をどうとらえるかについては、教育研究条件に対応したものとして、社会情勢の変化に応じた弾力的な在り方を考えるべきであろう」という視点に立った上で、「実態に即して」ということになるのだと思う。その後に続く「求められる見直しの観点」が、重要なポイントになると思う。「基本金の取崩しも認めるようにすべきである等の声に早急に応えていくことも重要である」とあるが、むしろ、「早急に応えていかなくてはならない」ということだと思う。

:「2見直しの方向性」は意見として言われている事柄の整理である。「3基本金の在り方」では、「2」に対応して、基本金の取崩しの考え方が述べられており、必ずしも抜本的に見直すという趣旨のものではない。

:ここは、あくまでも学校法人会計基準の特性は特性として整理した上での見直しの論点を書こうとした部分だが、「見直しの観点」という表題を見直したい。

:4ページのこの章の最後から6行目に「また、学生生徒等納付金の在り方を『寄附の意思が明確である寄附』との概念に対応したものに整理できるか等の課題が残る。」とあるが、学生生徒等納付金の中から基本金に組み入れるものがあるという趣旨のことを言っているのか。

:3ページのこの章の4行目の「これらの資産を『基本金』という形で維持するという考え方は、学校法人会計基準の最も特徴的なものの一つである。」について、解釈を積み重ねていけば「基本金」という形で金額に転化して維持するという読み方ができるが、一見すると資産そのものを維持すればよいとの誤解を招く可能性もある。「金額を」という文言を除いて記述してあるが、何か積極的な理由があるのか。

:現状としては、実態ではなくて取得価額でとらえた資産を基本金として位置付けている。実態でとらえようとするのであれば、それは今後の問題である。

:ここは、その前の「価額での面でとらえるのか、実態の面でとらえるのかについては議論があり得るが、」との関係で読みにくくなることを懸念して「資産を『基本金』という形で維持する。」という表現とした。

:ここは、基本金の概念を価額でとらえるか、実態でとらえるかという議論であるが、この「必要な資産を継続的に保持する」ものを基本金とするということについては、源泉としてでも、資産とイコールでとらえてもよいが、維持していこうという考え方は変わらないと思う。そうであれば「基本的な資産を『基本金』という形で維持する。」とした方がよいのではないか。

:そのあとに、会計基準第29条の引用が出てくることと、これまで基本金と同額の資産を金額で維持することによって同等の教育を提供するという考え方がとられてきたという経緯を踏まえると、「資産を「基本金」という形で維持する」という部分は一般には読みづらいと思う。

:3ページの下から3行目に、「対象資産」という表現がいきなり出てくるが、要は、なくなってしまってもいいような、継続的に保持するという意味での「対象資産」ということだと思う。「基本金組入れ対象資産」としてもよい。

:4ページの上から3行目に「寄附者、学費負担者など利害関係者の意思」を資産の拘束性の程度に反映させる仕組とすること。」とあり、そのあと、具体的に3つの例を挙げているが、その中で学費負担者の意思が反映されるものがどれかが分かりにくい。具体的な例示の部分についてはもう少し説明してほしい。

:例えば、学費のうち施設費として徴収したものは、直接的な施設費や借入金返済だけにしか使えないのか、利息や維持管理費として使ってもいいのか、という問題もある。

:4ページの11行目で「学生生徒等納付金の在り方を『寄附の意思が明確である寄附』との概念に対応したものに整理できるか等の課題が残る。」とあるが、そこは学生生徒等納付金に限定しないで、「収入のすべてについて寄附者の意思に対応したものに整理できるか。」という趣旨にしてしまった方がよいと思う。また、4ページの(b)も選択肢として残るという前提で書かれているのか。

:議論としては(b)の意見もあったということであり、(a)を中心とする議論であったと思う。

:「4資本取引と損益取引の区分」では学校法人の取引を資本取引と損益取引に区分するという議論をしているが、学校法人には資本という概念がないのに資本取引という言い方は誤解を招かないか。

:収支計算構造の在り方について、資本取引や損益取引の概念を使った方が、より説明しやすいのではないかということで、この議論が出てきたと思う。確かに、非営利会計で資本取引という表現は使いづらいかもしれない。表現の仕方を工夫する必要があると思う。

:4ページのこの章の6行目は「「帰属収入」から「消費支出」を差し引いた「帰属収支差額(=基本金組入前差額)」を何らかの形で示す」というところで切れてしまっているので、その上で改めて基本金組入れ計算を行うということを書き加えた方が、より明確な言い方になるのではないかと思う。

:今までの消費収支差額はそのまま維持して、単に帰属収支差額も出そうということであるが、そのための前提は、帰属収入の中に使途を拘束されるものが入っていないということである。

:ここでは収支計算構造について2つのことを言っており、一つは現行の帰属収支差額を出そうということ、もう一つは、資本取引と損益取引を明確に区分した収支計算構造を提示しようということである。その前者の方の表現の中に、「消費収支計算書における損益計算と資本取引の混在を分離し、」という文言が入ってしまっているが、これは完全な分離ではない。

:現行の消費収支計算構造を考えると、この帰属収支差額が一番「赤字」か「黒字」かに近い数字を表すと言えるかもしれない。例えば小規模法人の場合、特別寄附金がそれほど多額に入ってくることはないと思われるので、そのような場合には消費収支計算書の資本取引は事実上基本金組入れだけである。

:帰属収入という文言自体が、資本取引と損益取引を区分した言葉ではなくて、負債とならない収入かどうかで整理しているので、当然、帰属収入に入る資本取引もある。

:帰属収支差額の評価が一人歩きする懸念はある。学校の永続性を担保するための基本金組入れは不可欠であり、その基本金組入前の帰属収支がよいことだけで経営状況がよいと判断するという見方には、いささか不安もある。仮に帰属収支差額を出すとしても、学校法人にとっては資本の充実は大変重要なことであるということは触れるべきだと思う。

:この章の構成については、計算構造の分かりにくさを指摘する声があるので、そのため帰属収支差額を明示するという改善方法もあるが、しかし帰属収入の中には資本取引が残っているという問題点が残るという流れにすると分かりやすいのではないか。

:資金収支計算書をキャッシュフロー計算書にするという意見や、発生主義の概念が入っているが消費収支計算書という名称を使うのが適切かという意見もある。

:資金収支計算書と消費収支計算書の重複感が論点であるので、ここは「収支の結果を表すための書類」というより「消費収支の結果を表すための書類」と書いてしまってもよいのではないか。また、次のパラグラフの「有価証券等の金融資産は、現在は取得時の価額となっているが」という部分は、学校法人会計基準の条文を正確に引用して書いたほうが誤解を招かないと思う。

:この章の下から3行目の「一定の方式」は、正確には「一定の目的を持った一定の方式」のことであり、表現を工夫してほしい。

:3つ目のパラグラフに「判断するにあたって参考になる重要な事項」は「判断するための重要な事項」とした方が適切だと思う。

:「6財務情報公開制度への対応」の中で、資金収支内訳表と消費収支内訳表については触れられているが、他の内訳表や明細表については、学校法人制度改善検討小委員会の報告の流れを踏まえて触れられていないという理解でよいか。

:「学校法人会計基準に従って書類を作成している学校法人にあっては、それらの書類を公開すればよい」とあるが、学校法人会計基準に従って作成した書類の公開を義務付けるということではないのか。

:学校法人会計基準は、私立学校振興助成法の規定によるものであり、すべての学校法人に適用されるものではないため、学校法人会計基準の様式を踏まえつつ、基本的な構成について参考となる様式例を示すことが適当と考えている。

:他に何か意見があれば、後で事務局までご連絡いただきたい。本日の議論等も踏まえ、修正については、私に一任をお願いしたい。その上で、本まとめについては、3月末までに公表することとしたい。

以   上

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