学校法人会計基準の在り方に関する検討会(第10回) 議事要旨

1. 日 時   平成16年2月25日(水) 13時30分~15時30分

2. 場 所   文部科学省地下1階M1会議室

3. 出席者  
(協 力 者)   大橋英五、片山覚、齋藤勉、齊藤秀樹、佐野慶子、清水至、西村昭、長谷川昭、松本香、森公高、森本晴生の各委員
(文部科学省)   栗山私学助成課長、浅田参事官、德岡参事官付学校法人調査官 他

4. 議事
(1)  事務局から学校法人会計基準の見直しの論点整理等について資料に基づいて説明があり、その後、討議を行った。

○:委員  ●:事務局

:「1 見直しの背景」と「2 見直しの方向性」の考え方についてご意見はあるか。

:学校法人が黒字なのか赤字なのかはっきり分かるようにという批判がある。端的に言えば、その年度の収支がどうなのか、それが計算書類のどこかに明確に表示されていないとおかしいのではないか。そのことを課題として認識すべきである。

:例えば、単年度の消費収支の均衡を見られるようにするということであれば、基本金組入れ前の収支状況でどうか、というような見方を計算構造上の表示の仕方として工夫する必要がある。

:中長期的な均衡は大事であるが、今の会計基準が果たして中長期的な均衡を表しているか。

:次に「3 基本金の在り方」と「4 様式及び記載事項の在り方」について議論したい。

:出資者というと、企業では株主であるが、それにあたるものが学校法人の場合にはないので、学生生徒や寄附者などを含む広い表現は何かないか。

:「4 様式及び記載事項の在り方」に「有価証券等の金融資産は、現在は取得時の価額となっているが、今後は、売買目的有価証券については時価評価を原則とすべきであろう」とあるが、ここで言っているのはいわゆる所有目的区分の相違による売買目的の有価証券か満期保有目的の有価証券か確認したい。

:基本的には、有価証券全てについて原則として時価評価すべきということである。

:学校に売買目的という考え方がなじむかどうか整理してほしい。

:2号基本金をどうやって整理していったら社会的に理解されるのか。経常的な収入の中で、使っていいものといけないものを、会計の仕組みの中で表すということが、なかなか難しいのではないか。

:今の企業会計も実態を表すような会計基準に変わっている。基本的な考え方というのはやはり、「資本の部」をどうやって整理して、より分かりやすくするのかというところだと思う。

:資本取引という形だと、基本金がいらなくなる可能性がある。利益処分、あるいは剰余金処分という概念をとり入れた時に、剰余金で処分してそれが基本金に変わるという方法をとれば、企業会計に近づくし、考え方としてはすっきりするということだったと思う。ただ、利益という概念と同じようなものが表面に出てくると、そういうものを保護者あるいは世の中が受け入れてくれるのではなくて、逆に学費の値下げ要望などが出てくる。

:(a)のところの「明確にし」の後の「企業会計における資本金と同様に「出資者の意思」を資産の拘束性の程度に反映させる仕組とすること」のところは同列ではないので、これを検討する必要があるのではないかと思う。また、(b)よりも(a)の方に重点があるということを表現していただきたいと思う。現行の制度の中での将来性としては、減価償却相当額の取崩しもあるということとイコールで読まれてしまうというのは、心外に思う。

:(b)をやるのであれば、基本金の概念がかなり崩れると思うし、取替更新の意味が全くなくなってしまう。そこをもう一度洗い直さないと、これだけ入るものではないと思う。(a)のところは、このままいってしまうと、消費収入が超過しない限り、2号基本金への組入れもできないし、学校法人にすぐなじむかどうか難しいと思う。

:例えば、10億円の建物を壊して建て替えたら8億円で済んだ場合、差額を減額するということか。

:それは当然減額するということである。ただし、その時に、貸借対照表の持つ限界もあるはずである。貸借対照表は基本的に、価額と科目でしか表現されていないので、教育資産の実態を表してこない。そういう意味で考えれば、財産目録の方が優れているという部分はある。それは要件を、例えば何平米と入れるからである。何平米という部分が教育に必要な資産として使われる、その部分が100平米なら100平米で維持されて、価額が10億円から8億円に落ちたのであれば、教育条件が低下したわけではないので、差の2億円は当然減額するという処理になる。

:基本金の取崩しの弾力化について検討しようということだが、例えば、見直しの方向性のところに、「基本金の取崩しを弾力的にできるようにすべきとの声」とあるが、この弾力化というのは非常にあいまいな表現である。要は、経営の自由度という問題があって、実態を維持しなければならないというのは当然であって、現行の基本金制度の中で、取崩しの考え方の整理をしているだけで、自由度を広げるということではないと思う。

:弾力化というのは、当初は、現行制度の中で財務情報の公開を制度化するに当たって、何か微修正できないかという時に、今やっている修正減額を改めて、もう少し拡大的に解釈することによって収めようとして出てきた言葉だと思う。現行制度の中で公開に対応する手当ては何かないかと考えるものと、将来的な在り方をきちんと考えようというものがあるということを明確にした方がよいと思う。

:「取崩し」という会計用語があるが、「縮小」という言葉の方が分かりやすい。

:基本金について、それぞれ出てきている議論を整理すると、かなり実態に合ったものができると思う。後は、表現の仕方をどうするかという問題を整理すれば、現行制度の枠を大きく外れることなくできると思う。もう一つ、企業会計に一足飛びにということについても否定しない。資本の整理をしていけば、他の会計との整合性も理屈ではとれると思う。ただ、実際にやってみると、実務上は今の基本金よりも難しい問題が出てくるかもしれない。そういう考え方が出たところで、それはそれとしてじっくり検討しないと、その方向にはなかなか行きにくいと思う。

:「4」の中段の「消費収支計算において、基本金組入れを帰属収入から先に差し引くという計算構造のわかりにくさを指摘する声もある」という部分については、もう少しきちんと記述しなければならないのではないか。このあいだ、私立大学団体連合会の会計等部会で意見交換があったが、協会の方からもかなり積極的な意見があったと思う。

:一つは、今の消費収支計算書について、基本金を差し引いた後に収支差額を出すのは世間的に分かりにくいだろうということで、帰属収入から消費支出を引いた段階で、帰属収支差額を出す計算方式と、その場合、資本取引のところを(a)案のようにするのか、違う公式で、例えば、設備投資、学部学科の設置、当年度の消費収支差額が入ってそれを基本金にするという案が出た。また、国立大学法人の計算書も損益計算書と呼んでいるのだから、学校法人も消費収支計算書と呼ばないで、損益計算書でいいのではないかという大胆な意見も出た。また、今の資金収支計算書がいいのか、それともキャッシュフロー計算書がいいのかという問題は、幼稚園法人なども含めて一括してすべての学校法人に適用するのはいかがかという観点から検討が必要という意見が出た。

:基本金組入れのうち、当初の出資と学部・学科の新設には、学校法人の恣意性が入らないと思う。だから、帰属収入から先に引いてしまわないといけない。要するに、当期の損益に反映させてはいけないものと、そうではないものに、収入の段階で明確に区分しないと今のようなやり方では、正確さを欠く。

:幼稚園法人の場合は、商取引という概念がほとんどなく、帰属収支差額という考え方は非常に分かりやすいと思う。そういった意味では、それほど影響がないので、計算表示方法として、分かりやすくなるのだと思うが、ただ、損益計算書という名称はやめていただきたい。

:消費収支計算書は、収支計算でありながら発生主義で計算しているが、概念をきちんと設定すれば、消費収支計算書で発生主義の収支を計算していくということでもよいと思う。

:国立大学法人では、独立行政法人に準じて損益計算書を作成することになっている。

:学校会計に収支計算書が2つあるというのは、外からは分かりにくいと思う。消費収支計算書では、一番最後に消費収支差額が出てくるが、消費収支差額を損益計算書の当期利益と同じ位置付けのものと考えると、消費収支計算書が何を意味するのか説明しにくいところがある。消費収支差額が単年度でも累積でも支出超過であれば、普通は業績が非常に厳しいのではないかと思う。最近は学校の経営に企業の人材がだいぶ入ってきているが、そういう人たちが、決算書や予算書を見ると、よく分からないという意見が出てくるので、学内向けに書類を組み換えて説明している。

:企業側から言われれば、あくまで非営利法人である学校法人が収支バランスを欠いていることの説明は、累積では償却不足というところに決着すればよいし、その前に、もし退職給付の債務の不足があれば、それもはっきり表せばよい。強いて言えば、黒字要因のところで、基本金の繰延べがたくさんあり過ぎると、それもおかしいが、それでも、情報を公開すれば何の問題もないと考える。

:単年度の収支差額が赤字でも、長いスパンでの累計を見た時にバランスがとれていれば説得力があるが、単年度は赤字、累計でも赤字の大学がつぶれないということを説明するのは難しい。

:膨大な支出超過があっても、評価機関は分かっているし、学校関係者も分かっている。しかし、外からは分かりづらいと言われている。

:消費収支計算の計算構造については、検討項目として挙げざるを得ないと思う。その際には、今の学校法人会計では収入側が整理できていないので、今回の検討で踏み込んだ整理ができないのはやむを得ないと思うが、経常的な支出に充当してよい経常的な収入を整理しないと、計算構造としてうまくいかない。消費収支計算の計算構造の分かりにくさのところが議論になったという点は報告書の中で取り上げていただきたいと思う。

:参考資料1では、経常的な支出に充当してよい経常的な収入とそれ以外の収入をきちんと分けるということで、イメージを3つ挙げている。経常的な支出に充当してはいけない収入があった場合、それは基本金の組入れに該当するものだということで、そういう収支計算の構造を3種類作り上げたものである。イメージ(1)は、経常的な支出に充当してよい経常的な収入だけ収入に計上するという発想である。イメージ(2)は、収入全体をとりあえず把握するという発想であるが、ただし収入のところで基本金組入れの計算を行ってしまうというものである。イメージ(3)は、イメージ(1)のうち、基本金の計算を別表にするという発想である。

:例えば、学校法人がその経常的収入の10%を資本的取引に充てることとして最初から分けてしまって、残りの経常的な収支が、黒字か赤字かということを論じていくということであれば分かる。近い将来に、企業会計のように損益計算をするということになれば、収入を分けるしかなくなる。減価償却を整理すれば、費用は出るので、費用対効果も一応出ると思う。

:学生生徒等納付金を区分しようとすると、構造上、何に使っていくのかということを説明していく必要がある。例えば、今すぐではなく10年後に使うものを、施設設備資金として徴収した場合、それは寄附金の代替と同じである。それ以上の話になると、学生生徒等納付金をどういうふうに使っていくのかを説明していかないと収入構造を整理することは難しいのではないかと思う。

:現状では、施設費を徴収している学校は少なく、識別が難しいという問題もあると思う。

:施設費として徴収したものがどこにリンクしているのかというのは、学校法人によってばらつきが出る可能性がある。そこがまた問題になってくる可能性もある。

:続いて、「5 情報公開制度化への対応」と「6 今後の課題」のところについてご意見をいただきたい。

:例えば、私立学校の場合は、負債比率を出して、認可の基準を設定するが、同じように株式会社の財務諸表から財務比率を出したら数値が変わってしまう。違う基準でやればいいのであるが、やはり統一的な基準が必要になってくるということだと思う。評価する場合に、何らかの共通する目安が必要になってくる。そうすると会計上も、何らかの共通する仕組みが必要になってくると思う。

:本日、ご議論いただいたことを踏まえて、次回にまとめたいと考えているが、取扱いについては、主査とも相談をさせていただきたい。

(2)  次回は、3月17日に開催することとした。


以   上

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