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薬学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議

2002/10/02 議事録
薬学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議(第1回)

薬学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議(第1回)

1.日    時 平成14年10月2日(水)10:00〜12:00

2.場    所 文部科学省分館201・202特別会議室

3.議事進行 1)開会
2)委員の紹介
3)座長の選任
4)会議の公開について
3)薬学教育をめぐるこれまでの検討経緯について
4)自由討議
5)閉会

4.配付資料
資料1   会議運営要綱
資料2 会議の公開について
資料3 薬学教育関係参考資料
資料4 薬剤師養成問題懇談会に関する申し合わせ(平成8年8月)
資料5 「今後の薬剤師養成に関する諸問題について」(平成14年1月  薬剤師養成問題懇談会)
資料6 日本薬学会「薬学教育モデル・コア・カリキュラム、薬学教育実務実習・卒業実習カリキュラム」(平成14年9月  日本薬学会薬学教育カリキュラムを検討する協議会)(略)
資料7 薬剤師問題検討会運営要綱(平成14年6月  厚生労働省医薬局)
資料8 委員提出資料

5. 出席者  
協  力  者:末松座長、佐藤副座長、野村副座長、秋尾、市川、乾、入村、北澤、桐野、佐村、全田、高柳、舘、寺田、富田、福田、望月、矢内原、吉岡の各協力者
文部科学省:工藤高等教育局長、木谷審議官、村田医学教育課長、新田課長補佐、宮田課長補佐、ほか関係官

6. 議事
(1) 座長・副座長の選任
  座長・副座長の選任が行われ、末松委員が座長に、佐藤委員及び野村委員が副座長に選任された。
(2) 会議の公開について
  会議の公開について、原則公開とする公開規定が決定され、以下公開された。
(3) 資料説明
  事務局より、薬学教育に関するこれまでの検討経緯及び薬学教育の現状に関する資料の説明があった。
(4) 自由討議
  自由討議が行われ、各委員より意見発表があった。各委員の意見の概要は以下のとおり。(協力者の発言ごとにまとめた。)

  最近発表される事項は、納得できる説明が不足していることが多い。この会議の議論では、どのような目線をもって決めたのか、次世代のことを考えて決めたのか明らかにすることを念頭に進めたい。患者の目線を念頭において議論すれば、社会からも納得していただけると思う。

  薬剤師養成の修業年限の問題については、医学部の6年制に対抗するという議論が出発点にあったと聞くが、そういう発想から議論を出発するとひずみが生じる。様々な面において、本当にいい薬剤師を育てること、創薬の研究者を育てることについて、十分な議論をしたと説明できるようにしたい。

  この分野では薬学研究と臨床と教育する人を分け、基礎的なことを4年間習得し、プラス2年でプロフェッショナルを育てるべきではないかと考えている。


  日本薬学会の作成したモデル・コア・カリキュラムの作成委員会の座長を務めた。

  検討に当たっては、薬剤師・研究者の育成という2つの社会からの要請に対して十分に応えなければならない。

  これまでの薬剤師養成には反省すべき点もある。

  日本薬学会のモデル・コア・カリキュラムの誇るべきところは、全ての大学の教官が理解し、普及してきたこと。この機会を実りあるものすべき。他方、薬学教育のワークショップでこれを実際に実施するための教育者を育成しており、これをさらに発展させ、ほぼ全薬学教員が学ぶようになれば、能率のいい教育が出来ると考える。このカリキュラムの延長線上に年限というものが捉えられるべきものとして考えている。

  薬学基礎科目と実務実習はコントラストに捉えるものではない。


  病院薬剤部長として医学教育にも関わっている。

  世論の中で、患者からみて薬剤師がいかに信頼してもらえるかが重要。我々薬剤師は、医薬品の適正使用についての関与や、薬に関するリスクマネージャーとして、社会的に大きな役割を果たしているが、これまでそれに見合う人材の育成がなされてなかった。

  これまで医療現場と薬学教育との乖離があった。日本薬学会のモデル・コア・カリキュラムの作成でその乖離が解消され、非常に評価できる。

  医学教育の分野では、その改革が迅速に行われている。薬学教育の改革方策についても早急に結論を出していただきたい。


  看護職の立場で参加する。臨床現場において安全な医療を提供していくために、チーム医療における薬剤師の役割と薬学教育の充実との関連についてみていきたい。

  過去、病院薬剤師は窓口業務がメインだった時期もあったが、今は診療報酬上服薬指導が評価された事とも相俟って、積極的に医療現場に入るようになった。服薬する患者の傍で直接指導を行なうことは患者の個別性に対応でき、医療チームのメンバーとしての役割も明確になり、専門的知識の提供ができるなど薬剤師の職務満足にも繋がっているという話を聞く。


  薬について多くの情報が出回っているが、薬を安全に使うには資格を持った薬剤師の助けが必要。

  薬により病気を克服した多くの人々がいる一方で、薬の副作用や誤った使用で健康を害する人が少なくない実態がある。

  医療現場で、薬学を学ばれた方々は得た知識を患者にわかりやすく還元することが少ないのが現状ではないか。患者にとって、薬剤師の存在を知っていながら、薬のことに関して得てして医者に聞いてしまうのはなぜなのか。また、薬害がなくならないのはなぜなのか。

  薬学教育はサイエンティストを育てる第一歩であると同時に、職業教育でもある。また、その職場は現在一層広がっている。薬を必要とする方々がもっとそのメリットを享受できる、実質的に役に立つ教育であって欲しい。


  日本薬学会のモデル・コア・カリキュラムができたが、今回全大学の参加によりいいものが出来たと思う。このコア・カリキュラムを各大学で活かし、医療現場で働く薬剤師、創薬研究、公衆衛生、薬事行政など、多様な人材養成に対応できる薬学教育でありたい。

  各大学がコア・カリキュラムの他の部分で特色を出すことが望ましい。

  薬剤師養成教育と研究者養成というものが対立する部分があると言われる。確かにフロンティアの分野ではそういう面もあるかもしれないが、今後、薬剤師も、問題発見解決型の能力を持ち、根拠に基づく医療に貢献できる人材でなければならないし、また、生涯にわたって学び続ける意志と能力をもった人材でなければならず、このような根本のところでは研究者養成と薬剤師養成は重要な点は重なっている。


  薬剤師会にとって、薬学教育の改善は最重要課題。

  薬剤師を取り巻く環境は大きく変化し、資質向上への社会的要請が高まっている。医薬分業の急速な進展、調剤業務の大きな変化により、薬剤師の業務も多様化している。医薬品の適正使用を一層推進するためには、薬剤師の介入が必要。安全な薬物療法を患者・国民に提供し、結果として現在深刻な問題である医療経済にも貢献することが可能。

  薬剤師を取り巻く環境の変化に対応するため、医療薬学分野の充実と長期実務実習の必修化が必要。

  日本薬学会のモデル・コア・カリキュラムの内容を妥当と評価しており、速やかに取り入れて欲しい。実務実習も必須と認識している。このコア・カリキュラムを検討すれば、修業年限は4年では不足する。

  日本薬剤師会では、本年1月の六者懇の検討課題について、実習の受け入れを中心に検討しており、今後の会議の中で詳しく説明したい。


  病院・診療所に勤務する薬剤師の代表として発言したい。

  病院薬剤師の業務・役割が大きく変わってきた。国民に安心した医療を提供するための、医薬品の適正使用のリスクマネージャーとしての責務をどう果たしていくかを考えている。そのためには、薬剤師の資質の確保が重要。

  薬学部は唯一の薬剤師養成学部であるが、薬剤師養成の観点から必ずしも十分な教育でない。他の医療職種に比べて臨床教育がほとんどなされていない。

  六者懇で出された実務実習の受入れ体制の整備について、現在検討を進めている。日本薬学会のモデル・コア・カリキュラムでは、実務実習に係る内容が分けられているが、これが実施されれば、薬剤師の教育として満足できる。

  薬学教育の議論の方向付が出来た時点で、具体的な行政の力で薬剤師養成のシステムが変えられることを願っている。


  高等教育の制度施策を専門としており、大学審議会の時代から、現在中央教育審議会の大学分科会に参加している。

  薬学教育について全般的な視点からすると、薬学知識の普及と教養教育への貢献ということも重要ではないか。教養教育との関係も視野において議論したい。

  一般に専門職分野というのは養成教育と継続教育があり、仮に養成年限の延長等をする場合、同時に、既に実務に就いている人たちがこれに対応することも必要。継続教育も当然視野に入っていると思うが、その点の議論も注意していきたい。


  「薬学」とは何かということはわかりにくい。その問題は、「創薬研究者」と「薬剤師」の養成をどう統一化していくかということであった。

  創薬研究を中心としている薬学者から見ると、薬剤師の養成、特に実務実習が持ち込まれることは問題だという認識があった。

  「薬学」が社会から評価されるのは、いい薬を創ることと、質の高い薬剤師を養成すること。

  他の科学と異なり、「薬学」は物と人の機能という2つの点で評価されることが大きな特色。

  実務実習をしっかり行わないといい薬はできない。また、実務実習を含めた薬剤師の業務はサイエンスと接点を持つことが大事。

  これまでの、薬学を巡る動きは、薬学関係者のみによる動きであった。世間からの視点を意識して、いい薬ができるか、いい薬剤師活動ができる薬剤師を養成できるかを考える必要がある。


  日本薬学会がモデル・コア・カリキュラムを作成したが、この会議でも尊重していただきたい。

  薬学教育とは創薬研究か薬剤師養成かという議論になるとかなり深刻になるが、建設的な姿勢であれば、必ず両立できる。

  薬剤師養成の在り方の検討はかなり急がないといけない。

  国際標準への対応は、国民への貢献のために必要。


  医学分野では、カリキュラム等の改革が近年急速に動いている。これらの改革は常に制度が先行し、制度をつくれば一件落着したと大学人は思いがちだが、まず内容を点検し、膨大となった情報を整理・精選することが大事だ。量が増えたからカリキュラムを増すとの発想は安易に過ぎる。

  大学設置基準の大綱化以降、医学教育分野においても様々な問題点が明らかになり、教育改革の契機となった。モデル・コア・カリキュラムの検討にあたっては、多様な選択肢を与えるため、従来の学問体系は取り外して考えた。

  また、臨床実習開始前に学生を適切に評価するため、大学の教員による、大学間共用試験を行うこととし、現在そのトライアルを実施している。その際、問題作成や評価について、患者さん中心の医療に向けてボランティア団体や模擬患者さん等に積極的に参加いただき、厳しい指摘を受けながら行っている。

  これらの取り組みについて、グローバルスタンダードに達するため、これからも努力が必要と考えている。


  今回日本薬学会がまとめ役をして作成したモデル・コアカリキュラムは重要なものであり、これをどうやって実施するかがこれからの問題。そのため、文部科学省の応援を得ることを期待。大学で本物のカリキュラムを作り上げなければ、大学人の役割はないのではないかと強く思う。まず、大学でしっかりとしたカリキュラムを作り、実際に学生に当てはめ、よい薬剤師が養成できる、という結論が出せるものを、まず実現して定量化することを早急に考えたい。

  薬剤師資格は一度取ったらそれっきりというわけにはいかない。薬科大学では生涯学習を非常に重視している。さらに効果を上げるために、日本薬学会のホームページを使って、少なくとも各大学がやっている生涯学習・社会人学習の情報をひとつにまとめ、受講者が受けやすいものにしたい。薬剤師の研修の仕組がなければいけないし、それを受け入れる場所が大学を中心として日本中に存在することが必要。


  平成5年から平成8年にかけて行われた薬学教育の改善に関する調査研究協議会の一員であった。平成8年3月に同協力者会議は結論として3つの提言をした。

  提言の第1の医療薬学の充実につとめることについては、薬学視学委員の視察においても、各大学に医療薬学教育の現状等について訊ね、また、その推進を助言してくるようにという努力がなされ、実際に教育現場で医療薬学教育は急速に充実されてきた。学部カリキュラムについては、今回の日本薬学会のモデル・コア・カリキュラムは、国公私立大学の多くの関係者の方々のご努力により、すばらしいものができた。

  提言の第2の修士課程の拡充に関しては、今後の問題として議論を期待。本協力者会議名にある「充実」に大きな意義を見いだしていきたい。

  提言第3の中での実務実習については、受け入れが可能か否かと、それが公的な教育施設として認定されうるものであるのかは、別問題であり、今後の課題であると考える。

  今、医療ではEBM(evidence based medicine)が云われているが、この場の議論がEBD(evidence based discussion)でありたい。感情論ではなく、しっかりとしたデータの基に本会議の目的とする結論が導かれることを願う。


  医学部で15年間教員をしていた時から、医者と薬剤師との関係は色々ありそうだという感想を持っていた。

  健康な人間を作ることを教育方針としている早稲田大学人間科学部に移り、薬学や医学と接点を持ち、社会学や心理学という要素も入れた教育を行ってる。医学部や薬学部と異なり、直面する国家試験がないが、人間の命を大事にするという立場で考えると、健康を最終ゴールにおいた仕組みをつくる必要があると考えている。小分けに小分けにすることがこの国にとっていいかという視点で色々意見を述べたい。


  企業の人間から見た、大学教育、あるいはカリキュラムに対する期待・要望を述べたい。

  製薬企業において薬学部出身者が主に活動する部門は研究、開発、生産、営業、市販後調査を担当する学術情報の5部門である。

  大学では、3つの内容をカリキュラムとして充実することが必要。1つは生命倫理。質の高い倫理観と研究における科学性である。研究部門のみならず全ての職種において肝心なこと。2つ目は、体がいかに健康を保っているかという、非常に細かい仕組みについての知識。最後に、医薬品の適正使用のための情報を、倫理性・科学性を確保した上で付与していくための医療現場での活動を学生の時代に積み、見識・知識を習得すること。


  医薬品の切れ味が鋭くなり、よく効くと共に非常に危険な面を持っているという時代に、薬剤師・薬学の専門家が医療の現場によりコミットしていかなければ、安全で効率のいい医療ができないとの認識は、既に共通のもの。

  これからの薬学教育の中でも、医療の現場で教育をし、基本的な実習をすることにより、チーム医療が成り立つと思う。その意味で、臨床実習を評価しなければならない。

  他方、創薬・研究開発では、理工学系や農学系の研究者も創薬に関わっているが、その中で、医療現場でのニーズを十分に把握できる立場は薬学者しかないという独自の立場がある。薬剤師養成を含め、新しい薬学教育の中に十分に共通の問題として盛り込まれるものと理解している。


  薬剤師の養成においても創薬研究者の養成においても、創造性、論理的思考力を有する人材の養成という点で一致する。

  ゲノム科学、ポストゲノム科学あるいは情報科学等、薬学の周囲にあるサイエンスにおける先端の成果を、柔軟・率先して取り込み、将来の薬剤師・薬学研究者を養成するための教育と研究を展開する必要がある。

  薬学は、健康科学の1分野として従来の治療科学から今後は予防科学の観点での教育・研究が重要となる。

  人の病態に酷似するユニークな病態マウスやラットを作出する研究が大切。これを治療薬・予防薬・診断薬の研究・開発に役立てたいものである。

  日本薬学会よりモデル・コア・カリキュラムが提出されたが、このコア・カリキュラムを基に、国際的なレベルで薬学の発展や薬剤師・研究者の養成を考えた行動を取る必要があろう。

(5)閉会


(高等教育局医学教育課)

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