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今後の国立の教員養成系大学学部の在り方について(報告)

2001/11/22
今後の国立の教員養成系大学学部の在り方について(報告)


平成13年11月22日
高等教育局専門教育課

今後の国立の教員養成系大学学部の在り方について
−国立の教員養成系大学学部の在り方に関する懇談会−


    

-V 今後の国立の教員養成大学・学部の組織・体制の在り方-

2   再編・統合の考え方

  (1) 再編・統合の基本的な考え方

   @ 検討の前提
現在、大学(国立大学)の構造改革の観点から、大学間の再編・統合や大学自体の改革の検討が進められている。教員養成学部の組織・体制の具体的な在り方は、これらの動向と密接に関係していくものと考えられるが、本懇談会としては、教員養成の在り方という観点から検討を行った。

   A 教員養成課程全体の入学定員及び今後の教員需要への対応
教員養成課程全体の入学定員については、少子化に伴う教員就職率の低下を踏まえ、平成10年度から12年度までの3年間に約5千人の削減を行い、現在約1万人の規模となっている。

今後、公立学校の教員の定年退職者の増加や都道府県における教員配置基準の改善に伴い、教員採用数の増加が見込まれるため、それに対応して、むしろ教員養成規模を拡大すべきではないか、特に教員養成学部の小学校教員養成に果たしている役割を考えると、小学校教員が不足するのではないかとの意見がある。

これに対しては、
・ 教員採用試験受験者数と教員採用数に大幅なギャップがあり、就職できない教員希望者が多数存在すること
・ 公務員の再任用制度が導入されたこと
・ 採用の側も各学校における教員の年齢構成のバランスを確保するという観点から、幅広い年齢層から採用するような措置をとってきていることなどから、退職者の増がそのまま新規卒業者の採用数の増につながっていくとは考えられない状況がある。
また、退職者数は一時期増加した後、また減少に転じていくことが見込まれることなどから、教員養成学部の養成規模を今後の定年退職者の増加見込み数に応じて増加しなければ、教員の確保に支障が生じるようなことにはならないと考えられる。

このようなことから、今回の再編・統合の検討に当たっては、現在の1万人体制をもとに、優秀な教員を養成していくための教員養成学部の組織・体制の在り方を検討していくことが適当である。

これからの教員養成における国の役割を考えた場合、義務教育諸学校、特に小学校教員を一定数、計画的に養成していくことは、今後とも重要なことであるが、それとともに、様々な課題を抱える学校現場においてリーダーとなって活躍していく力量ある教員を養成していくシステムづくりが、強く求められている。

   B 再編・統合の基本的な考え方
活力ある大学・学部を実現し、新たな教育課題に積極的に対応するとともに特色ある教育研究を推進していくため、1学部当たりの学生数や教員組織がふさわしい規模となるように再編・統合を行うことが必要である。
その際、当該地域の教員需給の見通しや学生の流動状況等も勘案しつつ、近隣の複数の都道府県を単位として教員養成学部の再編・統合を行うことが適当である。

再編・統合に当たっては、国立の教員養成学部の役割、とりわけ小学校教員の養成に果たす役割を勘案しつつ、特定の地域の偏在を避け、全国的にバランスのとれた養成体制になるよう考慮する必要がある。

再編・統合の際、総合大学の学部として再編・統合する方法と単科の教育大学として再編・統合する方法が考えられる。
総合大学の場合には、
・ 多様な学部の学生と一緒に学んだり交流を持つことを通じて、より幅広いものの見方・考え方に触れることができること
・ 教育や教職の在り方を客観的な目でとらえる機会がより多く持てること
・ 他学部との連携により幅のある教育研究の展開が期待できること
などの利点があると考えられる。
他方、単科大学の場合には、
・ 学生が教職という共通の目的意識をもって学べること
・ 教育理念や目指す教員像に向かって大学全体での取組がしやすいこと
などの利点があると考えられる。

教員養成という観点からみれば、いずれかに特定するのは適当でなく、いずれの場合もあり得ると考えられる。実際上は、現在進められている国立大学の構造改革の一環としての再編・統合とも密接に関係してくるものであり、各大学の将来構想等も踏まえつつ、個別具体的に検討を行う必要がある。

新課程については、教員養成学部の再編・統合を契機に、原則として教員養成学部から分離していくことが適当である。その際、当該再編・統合に係る関係大学・学部間で、教員養成課程と新課程の分野の適切な役割分担を図るほか、既存の組織の充実に充てるなど、それぞれの大学の個性・特色の発揮につなげていくようにしていくことが適当である。

教員養成学部の再編・統合によって、教員養成学部がなくなる都道府県については、当該都道府県等の教育委員会との連携協力の体制や現職教員の大学院での再教育の体制の整備に十分留意する必要がある。その実現に向け、大学と教育委員会との連絡調整等、国としても必要な支援を行っていくことが望まれる。

なお、今回の再編・統合による新たな教員養成の組織・体制については、一定期間の後、その成果について評価を行うとともに、必要な場合には見直しを行い、更なる改善に努めていくべきである。
その際、教員養成学部が設置されている都道府県だけでなく、幅広く他の都道府県の教育委員会等の関係者から意見を聞くことにも配慮すべきである。

  (2) 再編・統合の形態

   再編・統合を実施する場合、様々な形態があると考えられるが、本懇談会としては、基本的に考えられる次のような形態を検討した。

   A 複数の大学・学部を統合するケース
この形態は、再編・統合後の個々の教員養成学部の充実強化が最も明確に表れる方法である。一方、教員養成学部がなくなる都道府県が生じ、現職教員の再教育や教育委員会との連携などの面で工夫が必要となる。

   B 小学校教員養成機能は各大学に残し、中学校10教科を例えば文系、理系、技術系のように複数の大学で分担するケース
この形態は、教員養成学部は各都道府県に残るが、これまでの教員養成学部のように中学校10教科に対応した幅広い分野を対象とする学部とは性格が異なり、特定の分野に偏った学部となる。また、いわゆるピークが限定されるなどの課題がある。

   C 基幹大学とその他の大学に分け、基幹大学は一定のブロックごとに1大学程度とし、当該大学ではすべての学校種の教員養成を行い、その他の大学は小学校教員養成に特化するケース
この形態は、各都道府県では少なくとも小学校教員の養成は行われるが、その他の大学の教員養成学部は、学生数や教員数においても教育内容においてもますます小規模化するとともに、中学校教員免許状が取得できなくなる。また、取得できる教員免許状の種類について基幹大学とその他の大学とで較差が生じることになる。

   上記再編・統合の形態にはそれぞれメリット、デメリットがあるが、今回の再編・統合の理念が個々の教員養成学部の充実強化にあることにかんがみ、上記Aの形態により再編・統合することを基本と考えていくべきである。
なお、教員養成学部の実際の再編・統合やそれに伴う組織の設計は、大学全体の組織体制の在り方や大学間の再編・統合とも深く関係することから、大学や地域の実状も勘案しながら弾力的に検討していくことも必要である。


  (3) 再編・統合後の基本的な枠組み

   沿革の項で述べたように、現在教員養成学部は教員養成にとどまらず、幅広い機能を併せ持っているのが実状である。

   再編・統合後の基本的な枠組みとしては、教員養成課程の1万人体制の中で、教員養成課程を担当する大学(以下「教員養成担当大学」という。)と教員養成学部がなくなる大学(以下「一般大学」という。)とで、これまで担ってきた役割を分担し、それぞれの大学が個性や特色を発揮していけるようにすることを基本とすべきである。

   それを前提とした上で、再編・統合した場合の各大学・学部の基本的な枠組みを、上記Aの形態をもとに整理すると次のようになる。

   教員養成担当大学の学部の機能
・ 教員養成の専門学部としての独自性を高め、教員養成に徹するため、再編・統合して置かれる教員養成学部には、原則として教員養成課程のみを置き、新課程は置かないものとすることが適当である。
・ 教員養成課程の入学定員は、再編・統合前の関係大学の教員養成課程の入学定員の合計数以内とすることが考えられる。
・ 教員養成担当大学に置かれていた新課程については、必要に応じ、一般大学の充実に資するよう再編成し、そのために必要な教員を振り替えることとなる。
なお、前記T−2−(5)−Dの類型のうち、教員の職務に密接に関連する分野については、修得単位数が過大とならないよう留意しつつ、そのカリキュラムを教員養成課程に取り込むことや、学校教育に関連する分野については、特に必要があると認められる場合は、教員養成課程とは別の課程として設置することも考えられる。
・ 再編・統合後の教員養成学部では、幼稚園から中学校(必要に応じ高等学校)までの各学校種、各教科の教員免許の取得が可能となるようにすることが適当である。
・ 教員養成担当大学は一般大学と協力し、教員養成学部がなくなる都道府県を含め、養成・採用・研修の各段階において教育委員会との連携を図りつつ、様々な工夫を凝らし、その体制を整備する必要がある。
・ 教員養成担当大学には、今後の我が国の教員養成を支える大学として、教員養成の在り方やそれを実現していくための組織体制、カリキュラムの編成等について格段の努力や不断の見直しが求められる。


   教員養成担当大学の大学院の機能
・ 学校教育専攻、教科教育専攻(中学校10教科)を置くほか、必要に応じて新たな教育課題に対応するための専攻を設置することが考えられる。
・ 学部段階で取得できる教員免許に接続する専修免許状の取得が可能となるようにする必要がある。
・ 再編・統合により教員養成学部がなくなる都道府県の現職教員も視野に入れ、カリキュラム開発を含め、現職教員の受け入れ体制の整備を図る必要がある。
・ 教員養成学部の大学院における通信教育の適否を含め、その在り方を検討する必要がある。


   一般大学の機能
・ 教員養成学部を置かないこととなる大学にあっては、当該大学及び教員養成担当大学の新課程のこれまでの実績等を踏まえ、それらを継承・発展させ、例えば新しい時代に求められる教養教育を担当する組織や地域の求める人材養成を行う組織の設置、あるいは学内既存組織の充実に充てることについて検討する必要がある。
・ 一般大学の教員については、一部を教員養成担当大学に振り替え、一部を上記新組織や学内既存組織の充実に充てることが考えられる。
・ 当該大学における教員免許状取得あるいは現職教員の再教育や地域の教育委員会との連携等のために必要な場合には、教員養成担当大学とも協力し、例えば教職センター(仮称)などの組織を、過大な規模にならないよう留意しながら、整備することも考えられる。


   現職教員の再教育への対応
・ できるだけ現職教員の学修の機会の確保に努めることとし、特に教員養成学部がなくなる都道府県においては、教員養成担当大学のサテライト教室の開設や遠隔教育の充実等体制の整備を図っていくことが必要である。
・ 教員養成担当大学と一般大学は協力して、関係都道府県と協議しつつ、修士課程における教育に限らず、免許法に基づく認定講習の実施など様々な面で現職教員の再教育への適切な支援を行っていくことが必要である。






    
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