(別添)外国人学校の各種学校設置・準学校法人設立の認可に関する調査研究 関係団体、外国人学校への調査結果

1. 調査の方法

 本調査は、以下に対して文部科学省大臣官房国際課より調査票を発出することにより実施した。その際には、都道府県やインターナショナルスクールの個別の名称は公表しない条件とした。書面調査の時期は、平成23年11月であった。

  • 各種学校・準学校法人として認可されていないインターナショナルスクールがある都道府県の外国人学校担当部局(5箇所)
  • 既に外国人学校を対象とする各種学校認可審査基準を定めている都道府県の外国人学校担当部局(7箇所)
  • 日本インターナショナルスクール協議会に加盟しているインターナショナルスクール(26校)
  • 各種学校化に認可されているブラジル人学校(12校)

  (参考)

   日本インターナショナルスクール協議会は、現在広島インターナショナルスクールが幹事校を務めている。加盟するためには、下記の5条件を満たす必要がある。

  1. 学校運営を行う委員会を備え、校長や教員は有資格者であること。
  2. 設立してから3年間以上の継続的な運営がなされており、文章化された教育理念や目的を有し、評価機関による認証を得ているか、認証の候補校となっているか、または認証を得ていない正当な理由があること。
  3. 英語によるカリキュラムを有しており、幼稚園、小学校、中学校、高等学校のいずれかの段階の課程を備えていること。
  4. 国際性を有し、カリキュラムにおいて多国籍の生徒について配慮がなされていること。
  5. 健全な経営計画と資金により持続的な運営が可能であり、十分な施設を有していること。

   この協議会の申請から認可までには約1年を要し、書面審査の後、訪問調査を行った上で、加盟の是非を決めている。

2.1 外国人学校を対象とする各種学校認可審査基準を定めている都道府県に対する調査

(1)いつ、どのような理由で、外国人学校に対する各種学校認可審査基準を設けたのか。

(基準の制定時期)

 平成5年度、平成16年度、平成18年度(2箇所)、平成19年度、平成20年度、平成23年度

(基準の制定理由)

  • 在留外国人が増加しており、それに伴って義務教育課程の無認可の外国人学校が増加していた。こうした学校は公的支援(税制優遇、通学定期券の割引)を受けられず、県補助金の対象にもならないため在住する外国人の子どもの就学機会が保障されなかった。この現状を早期に改善するために財政事情が厳しい外国人学校の状況に応じた各種学校の基準の制定が必要であった。
  • また、他県でも外国人学校の審査基準を設けた例が既にあったこと、文部科学省から校地・校舎の自己所有要件緩和の通知が出されたこと、総務省から多文化共生社会の推進に関して、都道府県等に対し外国人学校の各種学校認可基準の緩和を求めた指針が出されたこと等の理由から校地・校舎の自己所有要件及び資金要件を緩和した外国人学校の各種学校認可基準を設けた。
  • ある学校より、校地・校舎を借用で各種学校を設置したいとの要望があった。また、外国人学校の各種学校化、準学校法人化を支援する必要があるとの判断があった。
  • 県として国際交流大都市圏を目指すため、在日外国人が安心して地域づくりに参加してもらうためにも、子弟の教育環境の整備は重要な課題であった。
  • 南米系外国人が多い地域において、不就学が問題となる中、公的支援などのきっかけにしたいという、地域的緊急課題としての要望が市町村や政党から挙げられた。
  • 特にブラジル人学校について、従来の設置認可審査基準では「校地・校舎の自己所有」の要件を満たさないため、各種学校としての認可が受けられない実態にあった。ブラジル人をはじめとする外国人労働者は、経済情勢により雇用調整の影響を受けやすく、彼らの子弟が就学するブラジル人学校にあっては、これにより生徒数が大きく変動するため、安定した学校経営を行うことが難しいといった課題を抱えている。
  • 平成22年5月に「定住外国人の子どもの教育等に関する政策懇談会」の意見を踏まえた文部科学省の政策のポイントが発出され、その中で「ブラジル人学校等の経営を安定させ、充実した教育内容を提供できるよう各種学校・準学校法人化を促進する必要がある。このため都道府県に対して、適切な範囲で基準の適正化を引き続き求めていく」との見解が示されたことから、外国人学校の経営の安定化を図り、外国人の子どもの就学機会を確保するために要件緩和を行った。

(2)基準の弾力化により、どのような効果が生じることを期待したのか。

  • 自己所有要件及び資金要件を緩和し、認可を受けるためのハードルを下げて設置認可されることにより、上記の公的支援や補助金交付を受けられるようになるなど、在住する外国人の子どもの就学機会の保障及び教育条件の改善が進むことを期待した。
  • 外国人学校は、外国籍生徒の教育の受け皿として果たしている社会的役割が大きく、認可要件を緩和することにより、学校法人化の促進及び当該生徒の未就学の解消と就学の支援を図ることができる。
  • 財政的に基盤の弱い外国人学校が学校法人となることで、補助金の支給対象とすることが可能となる。また、各種学校となることで公共交通機関の学割が適用されることで生徒の負担が減少する。
  • 各種学校の認可を受けることにより、税制上の優遇措置、公的支援が受けやすくなり、学校経営の安定や保護者の経済負担の軽減がなされ、外国人子弟の教育環境の整備を図ることができる。
  • 私塾として活動している外国人子弟を対象とした教育施設を、私立各種学校として認可することにより、その地位や教育条件の向上を図る。
  • 児童生徒の教育環境を充実し、ひいては多文化共生社会の実現にも寄与する。
  • 外国人学校の経営を安定化し、外国人の子どもの就学機会を確保する。

(3)基準の弾力化後、外国人学校の教育や経営に支障は生じているか

    現段階では特段、支障は生じていないと回答した県が6箇所であった。この他、想定したほどの補助が得られなかったことから閉校を一旦決めたが、地元企業からの寄附によって存続できた例があったとした県が1箇所あった。

2.2 各種学校・準学校法人として認可されていないインターナショナルスクールがある都道府県に対する調査

(1)各種学校・準学校法人化への申請や、このことに関する非公式な相談があった場合、各種学校・準学校法人化が適当でないとした事例はあるか。

 事例があるとした都道府県は3箇所、ないとした都道府県は2箇所であった。

(2)各種学校・準学校法人化の申請や、このことに関する非公式な相談があり、それが適当でないとした場合、どのような点が障害になっているのか。

  • 校地・校舎が自己所有ではない
  • 校地・校舎や運営資金等にかかる資産要件を満たさない
  • 目的が不適(私塾等)

(3)営利法人を各種学校の設置主体とすることについて、どのように考えるか。また、その理由は何か。

    4箇所の都道府県で望ましくないとし、1箇所は無回答であった。

 (望ましくないとした理由)

  • 株式会社などの営利法人は利潤の追求を第一の目的としているため、教育機関としての公共性や継続性よりも営利法人としての利潤追求が優先され、適切な学校運営が図られない懸念がある。
  • 各種学校の設置は私立学校の設置を目的とする学校法人が行うのが望ましいと考える。

(4)認可審査基準における基本資産(校地・校舎)の借用、運用資産の保有要件の緩和、外国人学校用の基準制定、設置主体要件(準学校法人への限定)の弾力化について、それぞれ、現状と今後の予定はどのようになっているか。

  • 基本資産(校地・校舎)の借用:4箇所の都道府県で認め、1箇所で認めておらず、認める予定もない。
  • 運用資産の保有要件:5箇所すべての都道府県で緩和の予定がない。
  • 外国人学校用の基準:2箇所の都道府県で定めており、3箇所で定めておらず、今後定める予定もない。
  • 設置主体要件(準学校法人への限定):2箇所の都道府県で弾力化しており、3箇所で弾力化しておらず、今後弾力化する予定もない。

(5)各種学校設置認可審査基準を現状よりも弾力化する予定がない場合、どのような理由からか。

  • 既に他の各種学校に比べて校地、校舎の借用要件及び資金要件を緩和した基準を定めており、さらに緩和すべきと思われる事例がない。また財政基盤や組織体制を安易に緩和すると、学校の永続的経営や教育の質の確保などが担保されなくなるおそれがある。
  • 学校の安定的な運営が確保できる弾力的基準が不透明である。
  • 外国人学校であることを理由に、各種学校基準の弾力化を図る必要性が乏しい。
  • 校地校舎について借用を認めるなど、既に要件緩和している。

3. ブラジル人学校への調査

(1)各種学校設置・準学校法人設立により、どのような利点があったか。

  • 生徒数に応じ補助金がもらえること。JR等の学割定期券が利用できること。
  • 授業料への消費税が免除になった。
  • 町・市役所、議会の見学、公立の小中高校の見学・交流などがしやすくなった。
  • ブラジル人学校として、地域に開かれた学校になるように努めてきたが、行政や周辺地域の学校との交流がしやすくなり、地域における多文化共生社会の実現の一翼を担うことができた。
  • 対外的信用度が増した。
  • 補助金を受けたり、非課税事業者になったことで学校運営を続けることができた。

(2)各種学校・準学校法人化の際、どのような点が困難であったか。

  • 校地について長期賃貸契約の締結が必要なこと。
  • 県において外国人学校の各種学校認可の基準緩和を行ったので、当校は各種学校の認可を得ることができた。それ以前の設置基準では、日本に来て歴史が浅く、経営の厳しいブラジル人学校は日本社会での幅広い協力を得にくいこともあり、当校が資金的に県の設置基準をクリアすることはおそらく不可能であったと思われる。緩和されたとはいえ、時期的に、リーマンショックによる大不況で保護者が職を失い、あるいは仕事が不安定になり、さらに学園の児童が減少するなど、学園を維持するのが厳しい中での認可申請だったので、新しい基準になっても大変であった。
  • 校地、校舎、自己資金の問題だけでなく、校舎内の廊下等、設置基準に合わせた改修もあり、基準に合致した改修のために多額の費用がかかった。
  • 認可申請の書類が多量で、多岐にわたっており、ブラジル人に作成することは困難であり、専門の人に依頼し多額の費用を要した。
  • 厳しい経営環境の中で、教職員の数を規程通り確保するのは、教職員の質の確保や人件費の増大もあり、大変だった。
  • 書類の数がとても多く理解が大変だったことや、外国人学校にはとても理解が難しい部分のあったこと。

(3)各種学校設置・準学校法人設立の認可基準やその運用について、どのような意見があるか。

  • 校地・校舎についてより基準を緩やかにしてほしい。
  • 開設時に必要な自己資金について、年間経費の4分の1相当の現金、預金等の保有に緩和されたが、さらにもう少し基準を下げられないか。
  • 教職員の定数は、生徒数が減少した場合にそれを維持するのは経営的に非常に負担になるので、多少の変更は弾力的に認めるようにしてほしい。
  • 各種学校になり、JRの通学定期が使えるようになったが、公共交通機関の路線の関係もあり、スクールバスを利用する児童・生徒がほとんどである。授業料の他に登下校時のスクールバス代がかなりの負担になっているが、それを補助して負担を緩和することはできないか。
  • 会計年度が、私立学校法で4月1日から3月31日となっているが、ブラジル人学校は年度が2月1日から1月31日となっている。始業期が異なると児童数や教員の確保にずれが生じる。始業期に合わせた会計年度にできないか。
  • 認可基準は各県統一すべきである。 
  • 認可時期は3月でよいと考えるが、認可申請や審査は随時受け付けてもらえるとよい。

4. インターナショナルスクールへの調査

 今回の調査は、各種学校設置・準学校法人設立の必要性や課題に関して行ったものであるが、外国人学校の学校制度上の位置づけや学校教育法第1条校との関係について、様々な意見が出された。

(1)各種学校設置・準学校法人設立が実現していない場合、どのような点が障害になっているのか。

 調査対象の26校中、各種学校化されていないところは5校であった。

 その理由としては、以下の通りであった。なお、2校は既に各種学校に申請中であるとした。

  • 負債の水準が高い。
  • 保有資金が不足している。
  • 校地を所有する費用が高い。
  • 校地について、各種学校設置に必要な長期借用となっていない。
    現状で特に不便なく運営ができている。

(2)各種学校・準学校法人化されていないことにより、どのような問題点があると考えるか。

  • 税金が高額である。日本の大学に進学するのが困難な場合がある。
  • 法的な学校としての一般の認知が得られず、公的助成や通学定期の割引が受けられない。

(3)既に各種学校化されている学校について、現状の法的な位置づけで十分と考えるか。十分でないなら、具体的にどのような点が問題と考えるか。

 各種学校化されている19校について、現行の法的地位が適当であるとしたところは8校で、11校は適当でないとした。具体的には、以下のような点が指摘された。

  • 日本の中学校、高等学校で、インターナショナルスクールの学位が認められない場合があることは問題である。
  • 1条校と比べて、補助金の額が少ない。
  • 行事の際の道路の使用についても、1条校のような便益が受けられない。
  • 各種学校であるため、独自のカリキュラムや教材によることが可能になっているため、現状の地位が適切である。
  • 他の職業学校や専門学校などの各種学校と、インターナショナルスクールは、別の分類にすべきである。

(4)今後、インターナショナルスクールのあり方は、理想的にはどうあるべきだと考えるか。

  • インターナショナルスクールは、地域において独自の教育を、柔軟かつ効果的に展開することができる。
  • インターナショナルスクールが1条校と同等になれば、日本の学校との間でより自由に転学ができる。
  • 学習指導要領に従うことなく、1条校と同等の扱いを受けられることが理想的である。
  • インターナショナルスクールは、カリキュラムに関して日本政府から独立性を有する必要があるが、世界市民としての相互利益を考えれば、日本から何らかの形で認証を受けることが必要と考える。
  • 現状でインターナショナルスクールは正規の学校の枠外にあり、例えばスポーツ大会等に他の日本の学校と一緒に参加できない。より開かれた強い結びつきが必要である。
  • 本校は世界の一流大学への進学者を輩出しており、各種学校よりも適切な認証を日本政府に望みたい。それによって、建築規制や、子どもの安全に関する警察との連携などについて利点が得られる。
  • 国からの補助がなく、学費が非常に高いため、それを負担できない外国人の子どもを受け入れられない。そのため、必要な教育機会を得られない外国人の子どもがいるという問題がある。
  • 政府からの補助金を要望したい。それによって学費が低廉になり、教育が内容や設備が充実できる。
  • インターナショナルスクールが1条校と同等になれば利点は多いが、それによって、文部科学省による規制が課され西洋式の教育に基づく独自の運営ができなくなることが懸念される。インターナショナルスクールと文部科学省の対話により、適切なバランスがとられるようになることを希望する。
  • 基準の変更は求めないが、各種学校以外の学校形態を作らないと認可校となれないだろうと思う。
  • 無認可校を認可校として増加させていくには基準は当然必要だが、緩和をすることも今後の課題と考える。
  • 付帯事業の範囲を広げてほしい。

(5)その他の意見(自由記述)

  • 日本人の子どもがより簡単な手続きでインターナショナルスクールに入れるようにしてほしい。
  • 世界各国のインターナショナルスクールのほとんどは1つの委員会で運営されており、理事会、評議員会の2つを置く利点が明らかでない。
  • 国際バカロレアやWASC、CISなどの国際的に認知されているカリキュラムによるインターナショナルスクールは、1条校と同等の認証を受けられるようにすべきである。
  • 各種学校であるため、地域の教育委員会から子どもの安全その他に関して、必要な情報を得
  • 行政手続きや情報提供等について、日本語だけでなく英語を加えた多言語での対応がなされることを希望する。
  • 行政の調査や情報提供について、日本の学校と異なる8月開始、7月終了であるインターナショナルスクールの年度と合わない場合が多い。
  • インターナショナルスクールはグローバル人材の育成にとって重要であり、その地域への貢献を認識することが日本にとって利益になると考える。
  • シンガポール、香港、上海などアジアの主要都市と比較して、日本ではインターナショナルスクールへの公的支援がほとんど行われていない。日本への対内投資にインターナショナルスクールが貢献していることが見過ごされており、そのため多くの外国企業がアジアの他の国へ地域本部を移転させている。

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