国際協力推進会議(第4回) 議事録

1.日時

平成23年11月7日(月曜日)15時30分~17時30分

2.場所

文部科学省3F1特別会議室
(東京都千代田区霞が関3-2-2 中央合同庁舎第7号館東館3階)

3.議題

  1. JICAマレーシア高等教育基金借款(HELP)事業の紹介 -国際協力機構東南アジア・大洋州部東南アジア第二課

4.出席者

委員

木村座長、井上副座長、内田委員、大野委員、篠崎委員代理、清水委員、中西委員、松岡委員

文部科学省

清水事務次官、金森文部科学審議官、森口文部科学審議官、藤嶋国際統括官、池原国際課長 外

オブザーバー

(独立行政法人国際協力機構) 東南アジア・大洋州部東南アジア第二課 押切課長

5.議事録

○今回の議論に先立って、浅井国際協力政策室長より、去る7月20日及び9月27日に開催した第2回、第3回国際協力推進会議の議論のポイントについて、続いて、今回の会議の論点である対中東・ASEAN協力について、資料2、3に基づいてそれぞれ説明を行った。
○続いて、国際協力機構 押切課長より、「JICAマレーシア高等教育基金借款(HELP)事業」の紹介があり、引き続いて質疑応答を行った。概要は以下のとおり。


マレーシアは、マハティール首相の提唱したLook East Policyのもと、日本に学ぶという政策を打ち出し、かなりの数の留学生を日本に送り込んできた経緯がある。いろいろな分野がある中で特に、工学系、科学技術系の、いわゆるものづくりに携わる分野での人材育成を行いたいということで、日本への留学を進めてきた。こうした中でHELP(Higher Education Loan Project)事業が生まれてきた。
既に、HELP1、HELP2、HELP3が進んできており、いずれも円借款で日本のODAによる支援を行っており、現在はHELP4についての議論が進められている。
HELP4においては従前と異なり、マレーシアが自国予算で大部分を対応したいという意向を示している。その中で、日本の各大学との協力、及びJICAによるODAの支援の可能性がないか検討中である。
HELP1~3と長年にわたっていってきた中で、様々な工夫を凝らしてきたが、大きな取り組みとしてはツイニングプログラムの導入がある。
ツイニングプログラムとは、まずマレーシア現地において日本での高校レベルを卒業した後、日本の大学に進学するため、通称JADと言われる3年間の予備教育として、日本語と日本語による工学教育を受け、その後、日本の大学に編入学し、2年間の留学を経て学士の学位を取るという仕組み。
編入学に際して、日本でどの大学に行くかは、学生自身が決定するが、基本的には2大学の受験が可能。各協力大学の協力を得て、現地で統一的な編入学の試験を実施している。
HELP事業はODAの中でも、低利で長期間の資金の貸付けをする円借款という形で支援しており、この場合、借入人自体はマレーシア政府であるが、実際に事業を実施しているのはマラ教育財団(YPM)という、日本では公益法人に当たり、マレーシア国内では広く普遍的な組織である。いわゆるブミプトラ政策を推進しており、教育も含めて多くの事業に携わっている。
現地での3年間の教育については、業務提携を行っているセランゴール州立大学(UNISEL)が実施している。日本側の教育については、先方実施機関であるマラ教育財団と日本側の大学コンソーシアムに参加している大学間で合意書をグループ(通称:Japan University Group(JUG))として締結し、これら参加大学に先生の派遣ないし学生の受入れをお願いしている。なお、拓殖大学と芝浦工業大学の2校がJUGの取りまとめを行っている。
マラ教育財団と日本側の大学コンソーシアムとの間でツイニング合意書、一種の契約書を結んでおり、この中で、各種の項目、カリキュラム、シラバスの提供、学生の受入れ、単位の認定、教師派遣、TA派遣などを文書ベースできちんと合意していただいており、これに基づいてプログラムを実施している。
マラ教育財団とセランゴール州立大学が、3年間の現地教育を終えた段階で、予備教育が終了したというディプロマの授与を行っており、こうした契約も全体の枠組みの中の一部として取り入れられている。
現地で3年間勉強する間の日本語、日本の工学教育の提供等の教育サービスについては芝浦工業大学と拓殖大学が先生方の派遣等、管理業務を含めて実施している。
様々な契約が関係者の間で締結されており、全体の管理のために約5種類の各種委員会を設置し、円滑な事業の実施管理を行っている。
卒業生の就職先であるが、一番最初にスタートしたHELP1の事後評価を行ったところ、進路が判明している人の約3分の2.67%が日系企業に就職しており、日本語で教育を受け、日本の大学の学士の資格を持ち、日本での生活経験がある学生に対して、特に現地の日系企業において、現地と日本との橋渡しになる役割を期待されているように思われる。
JICAとして、こうしたいわば日本シンパの学生とのネットワーク、コミュニケーションを今後も大事にしていきたいと考えており、同窓会組織設立の促進や、あるいは学部に入るとき、卒業するときに、こうしたJICAの関与の紹介なども行っているところ。
【副座長】まず事業概要の1-2であるが、HELP4はマレーシアの独自事業となっている。今までは円借款でやっていたが、4になって、マレーシア政府はもうコミットしているのか。そういう保障はあるのか。 もう一点は、日本人派遣教員の数が、事業が進むにつれて減ってきているが、これはどういう理由によるものなのか。また、この事業のメカニズム自体はとてもいい仕組みだと思うが、ベースとなるお金のところがどうなっているのか。特にマレーシアは円借款の対象国から外れてきたと思うが、ここのマレーシア独自事業の場合の保障がどの程度なされているのかということについてお聞きしたい。

【国際協力機構・押切課長】 マレーシア政府がHELP4事業についてどの程度コミットしているかという点については、既にHELP4ということで、学生の募集をしている。したがって、これに伴う予算措置もなされたという認識があるので、その意味においては、マレーシア政府がHELP事業を独自予算でやるとはいえ、今後も継続していくという意思表明があったものだというふうに認識している。
 2番目の日本人の教員数の減少という点で、これは、理由は2つあるというふうに考えている。まず1点目が、HELP1から2、2から3とやっていく間で、関係大学の皆さんはいろいろなことに慣れてきて、効率的に授業を進めることができるようになったというところがまず1点。2点目が、当初、学部の学生ばかりであったが、これが修士、博士へと人数がシフトしている。無論のこと、最初に現地の教育が必要になるのは、学部の学生だけであるので、その点から、日本人の派遣教員数が相対的に見て減ってきているということが言えるのではないか。

【委員】ツイニングプログラムの教育サービスのところで、芝浦工業大学と拓殖大学、いずれも日本語での提供ということであるが、例えばツイニングプログラムの最初の3年間、それからあとの2年間、日本というこの組合せは、すべて日本語での教育が前提だと考えていいのか。 というのは、マレーシアの高等教育は、既に英語でかなり行われているというふうに認識をしているので、今後例えば、このツイニングプログラムも英語での導入ということが、特に修士、博士課程のニーズが高まっているという観点から可能性があるのではないかと考えるが、そのあたり教えていただきたい。

【国際協力機構・押切課長】現地の3年間、それから日本に進学した2年間、すべて日本語で行っている。

【委員】今後、それを英語にしていくというような可能性はないのか。特に修士、博士へのニーズが高まっているという観点から日本の大学に受け入れていく場合、英語で教育を行っている大学も増えているかと思うが。

【国際協力機構・押切課長】現在、マレーシア側の関係機関とHELP4、新しい次のプログラムについて議論を始めたところであるが、現時点においては、マレーシア側は引き続き日本語で教育をしてほしいという希望を寄せている。御指摘の点は我々も承知しており、日本語でこのままいくのがいいのか、それとも英語教育にかじを切るべきなのかというところは当然、問題意識としては持っているが、少なくとも、現時点におけるマレーシア側の実施機関のニーズとしては、日本語教育だということは言えると思う。

【委員】これは主に工学部の人材を育成するという理解でいいのかという点がまず1つ。それから、HELP4に関しては、円借款を卒業しつつあるマレーシアにおいて、マレーシアが自分のお金を出して、しかもかなり大規模な人数を継続・拡大派遣しようとのことで、マレーシア政府が非常に強い関心を持っていると見受けられた。マレーシア政府が期待しているもの、自分たちがお金を払っても是非日本留学生を受け入れてほしいという幾つかのポイントとはどういったものなのか。それは例えば工学部の人材育成なのか、日本企業との連携なのか、その辺について教えていただきたい。

【国際協力機構・押切課長】 まず対象としている学問の分野であるが、基本的には工学部、あるいは工学教育ということで、すべて工学部に進学していく学生である。2点目の質問については、引き続きこのHELPの仕組みを継続していく際のマレーシア側が期待している点として、特に工学であるとかものづくりにおけるマレーシアの日本に対する期待は、引き続き非常に大きいということが挙げられる。マレーシアはもともとイギリスの植民地だったということもあり、文系でよくできる学生はみんなイギリスに留学しているが、工学の分野になると、日本に行って勉強してこいという傾向が非常に強くある。その意味で、ものづくりに対するマレーシア側の期待というのは非常に大きいと認識している。 それからもう一点、マレーシアが先日発表した次期5か年計画の中で、高等教育を一種のサービス業として売り出し、高等教育の留学先としてのマレーシアの魅力をもっと高めていこうという方針を打ち出している。HELP4の中でも、単純にマレー人の学生を日本に送り込むということだけではなく、広くイスラム、特に中東の学生をマレーシアに呼んできて、そこからさらに、このHELPのプログラムを使って日本に留学させたら面白いのではないかという話を先方はしている。マレーシアは中東の比較的厳格なイスラム国から見ると敷居が低い国の一つかと思われる。そういうところで一旦受け入れ、ある程度日本語を勉強した後に日本へ留学すれば、日本でカルチャーショックを受けることなく、スムーズに勉強が進められるのではないかというところが彼らの着眼点だと思われる。

【委員】今の件で、このHELP3の実施体制をみると、まずJADという形でマレーシア国内の大学で教育を受ける段階で中東の人たちを招へいし、自らがそういったトレーニングをする能力やノウハウを学ぼうというねらいがあると思われる。つまり、日本に留学できる魅力を使って、中東から人材を招き、マレーシア国内で大学のサービス業を強化するための実践・経験を積みたいということではないか。そのためであれば国費を使っても、日本への留学制度を維持・拡大してよいのではないかという判断と理解できる。

【国際協力機構・押切課長】我々もそのように理解している。これは先方の高等教育省や経済企画院に直接確認した訳ではないので、各種公表されている資料、文書から類推しているところがある点は承知いただきたい。

【委員】まず極めて単純なことであるが、18ページの表に日本語(フルタイム)の欄にJとMという記号がついているがこれらの意味について教えていただきたい。次に、工学系の人材といった場合に、どういうタイプの工学系の人材養成かということが問題になると思うが、例えば第4期になったときに、キャンパスとして向こうのマラ高等技術専門学校のブラナン校に最初に入るということからすると、日本でいうと、高専で授業を受けるレベルの人たちをこのプロジェクトとしてやるのか、それとも、ここではいろいろな企画や開発、研究、設計、開発分野を担う人材をつくるのか、どういうレベルの人たちを考えているのか。
 更に背景のところに、優秀なマレー系国民に国費による留学の機会を提供ということであるが、その下に私立大学の設置があるように、例えば海外の大学、つまり英語圏の大学は、基本的にチャイニーズの収入の高い人たちを想定していると思われるが、これはそうでないマレー系の人たちに対して教育をするというのがこの制度の趣旨なのか。そうすると、チャイニーズに対してどういうつもりなのか。

【国際協力機構・押切課長】最初の御質問については、Jは日本人の先生、Mはマレーシアの先生という趣旨である。 2番目の御質問について、そもそもどのようなレベルの学生の人材育成を目指しているのか、特にHELP4では高専レベルのところに入るという仕組みになっているのではないかという御指摘だが、基本的には生産現場にいるエンジニアが中心的なターゲットになっている。したがって、最先端のところを研究するというよりは、より製造の現場に近いところで、生産管理、品質管理に携わることができる人材を育成していこうということである。その意味では、最初に入るところが高専レベルではないかという御指摘だが、スペースの関係でこちらの高専を借りているが、教育に必要な各種の機材等についてはこれまで使っていたセランゴール州立大学からすべて移送するため、基本的に教育レベルは従前から落とさないというところである。また、マレーシア全体として大学数が増えている中、従来、ブミプトラ政策の一貫として行ってきた留学生借款事業については、人種的なところも含めて今後どういう方向性かという御質問だが、現時点では、今までのHELP3は、いわゆるブミプトラ政策にのっとる形で、基本的に全員がマレー人である。ただ、マレーシア政府自体が、ブミプトラ政策を緩やかに解除していくのか、通常の競争的な政策に変換させようとしているのか、いずれにせよ、マレー人ばかりを優遇することはなくなってきているようである。その意味では、HELP4の議論をしている中では、従前と異なり、中国系の人たちもどんどん入れるつもりだというようなコメントが先方の実施機関から出ている。

【委員】5ページの事業概要のところに事業費というのがある。まず、外貨と内貨に分かれているが、円借事業ということであるが、円借のお金が事業費の外貨のすべてに相当するのかどうか、内貨はどういう形で手当てをされるのか、という事業費と円借との関係。それからさらに、HELP1から3までの推移を見ると、すべて事業期間はほぼ10年であるのに対して、対象人数がかなり変わってきている。HELP2の方が3よりも人数が多いにもかかわらず、事業費は3の方が多く、しかも内貨が一桁増えている。この事業対象と事業費との相関関係はどのように理解すればいいのか。

【国際協力機構・押切課長】まず、事業費の基本的な見方について、資料5ページの事業費の欄にある外貨、内貨、それぞれこれはマレーシア側から見た場合の外貨、内貨であるので、この場合、外貨というと主に円。日本国内でかかる経費や、日本円で支払うべきものである。他方で、内貨がマレーシア国内でかかる経費ないしマレーシアリンギット建てでかかっている経費と御理解いただきたい。こうした中で、どこを円借款でサポートしているかだが、これは主に外貨の部分が中心である。事業費が1、2、3と変遷する中で、外貨、内貨の比率や、学生数に対する事業費全体の金額、プロポーションが変わっているという点だが、これは実は、1、2、3それぞれに、日本の協力大学との関係等々で、どこの経費をどこまで計上するかが、かなり違ってきているためである。 総じて言えるのは、最初のころは、有形、無形の日本側の大学の様々な無償支援を頂いたが、余りボランティア精神ばかりに頼っていると、事業自体のサスティナビリティがなくなってしまうため、こうした見えないコスト等々もどんどん洗い出して対応してきた結果、HELP3のような状態になってきている。

【委員】日本から派遣している教員についてだが、これはすべて円借ベースで行っているのか、それとも、円借款に関連している有償勘定技協、そういったものを財源としてやっているのか。また、専門家等のセレクション等は、大学連合で行っているのか。あるいは文科省等が教員の選定に当たってどういう関連をしておられるのか教えていただきたい。

【国際協力機構・押切課長】日本から派遣している先生方については、基本的に派遣される先生方の経費についても、円借款の枠組みの中で対応している。したがって、マレーシア政府が日本政府から借り入れた資金によって、日本から来る先生方の給与も支払っている。先生方の選考方法についても、基本的には特に文科省やJICAは関与せずに、日本側の協力大学で決定いただいている。更に細かく言うと、工学系の先生に関しては、芝浦工業大学で責任を持って雇用及び現地派遣を行っていただいており、日本語の教員に関しては、拓殖大学が教員の募集から対応している。

【座長】マハティール首相の時代、ブミプトラ政策で日本に大量に留学生を引き受けてほしいという政府間同士の話があり、一時大量にマレー系の学部学生を日本の大学に引き受けたことがあった。しかし非常に程度が低いことが問題になり、そのためかなりの大学が結束して文科省に申入れを行ったことがあった。現在はこれだけシステム化されて、きちんと義務教育も受けてこられているので大丈夫だと思われるが、その辺の問題はもうなくなったと考えてよいのか。

【国際協力機構・押切課長】完全になくなったかというと、恐らく本音のところでは違うとおっしゃる先生方もいらっしゃるかもしれないが、少なくとも学士の学位が取れずに留年する学生はほとんどいない。当然、日本の大学の先生方が相当苦労されているところは引き続きあると思われるが、それなりの結果がきちんと出てきている状況だと考えている。

【座長】HELPのフェーズ3で国立大学が急に減っているが、これはどうしてか。

【国際協力機構・押切課長】各大学によって個別の事情があるようで、国立大学だから、あるいは私立だからということではないようである。特に人数が非常に細かく分かれてしまった点を懸念されたところが若干あったようである。

【座長】フェーズ3まではマレー系の学生がほとんどであったが、それがやや緩みそうだということか。

【国際協力機構・押切課長】 おっしゃる通り。

【副座長】 資料4ページ(背景)のところで、マレーシアは2012年までに15万人の留学生の受入れを標榜(ひょうぼう)とあるが、これはかなりの数字ではないか。日本も留学生10万人計画を20年、30年かけてやってきたが、これが2012年までに15万人もいるのか。あるいは、それだけマレーシアの大学の成長度合い、数的な発展があるのかお聞きしたい。もう一つは、私が昨年12月にマレーシアの留学フェアに行ったとき、非常に多くのアラブ系、アフリカ系の方がいた。聞いてみると、結構な方がマレーシアに留学しているようで、やはり留学しやすい国なのかなという感じがした。仮にアラブ系やアフリカ系の方が日本に留学したいと入ってきて、またマレー系の学生がほとんどであったのを緩めていくことになったとき、受け入れることになるのか、仮にそういう人たちに奨学金を払う場合、例えば国費留学の場合に、マレーシアでカウントされるのか、それとも出身の国でカウントされるのか、その辺をどのようにお考えか教えていただきたい。

【国際協力機構・押切課長】 まず留学生15万人の受入れについては、従来、マレーシアは余り大学の数を広げない方針であったが、96年に私立大学の設置を認めるようになり、現在では約600校弱の大学があるという状況である。加えて、どんどん留学生を増やしていくことを始めており、新しい5か年計画の中でも標榜(ひょうぼう)している。そのため、各マレーシア側機関等も非常に鼻息が荒いというのは事実である。実際問題として、本当に15万人を受け入れられるのかどうかは、我々もきちんとチェックはしていないのが実態ではあるが、いずれも留学生の獲得を大きく打ち出しているというところは言えると思われる。こうした中で、マレーシア政府が外国人に対しても奨学金を給付するということがあるのかについては、少なくともHELP4に関しては、そういう奨学金も用意したいということは、先方の実施機関はコメントしている。まだ計画段階で、必ずしもきちんと予算措置がとられているわけではないようであるが、政府全体として留学生を増やすという、あるいは高等教育の1つの目的地として、マレーシアを世界に売り込んでいく中で、そうした外国人向けの奨学金というもアイデアとしては考えているようである。

【座長】 国費留学生の話はどうなるのか。バイパスしてくる人をどうハンドリングするのか。

【浅井国際協力政策室長】  文部科学省の奨学金、国費留学生については、国籍でカウントすることになる。

【委員】要するに、申請をするときにその国の国民であることが要件になっているので、その国民であるかどうか、帰化していればマレーシアの国で、そうでなければ出自国でやるという極めて明確なことだと思われるが。

【委員】マレーシアも、今やODAのような国際協力を実施するようになった。EPUが全体調整を行っている。マレーシアが国際協力として留学生を受入れようとしているのであれば、(文部科学省の奨学金、国費留学生とは)別の考え方もあるのかもしれない。

 

○次に、中西委員から「ASEAN・中東諸国への協力体制」として、産油国の大国としてのサウジアラビア、及び中小産油国としてのアラブ首長国連邦、カタール等の国について、別紙のとおり話題提供があった。当該話題提供に対する質問、意見等については以下のとおり。


【委員】 中西委員から、北アフリカ諸国への支援の在り方については、産業育成政策などとセットで教育協力の在り方や、国際協力の在り方を考えるべきだというお話があった。これは北アフリカに限らず、ASEANを含め、あるいは他の中近東、アフリカの国も含めてそうではないかと思う。JICAを含めて、アジアなどは産業育成などを念頭に置いたいろいろな政策対話を官民連携でやっている。そういったことをもう少し細かく具体的に、例えばどういったレベルの技能の人たちが必要なのかといったことも詰めて、日本の企業の方々の意見も聞いた上で、どこであれば大学を、あるいは高等教育を通じた協力がいいのか、どこであればJICAの協力がいいのかといったことを考えていけば、民間資金も必要に応じて導入していくといくことができるのではないかと思う。特にアジアのように企業がまとまった形で進出しているところでは、具体的な産業の育成等、日本の企業にとっても重要な分野が明確にあると思うので、そういった視点での政策対話、官民の連携を積極的にやっていくべきである。それをもとに各省庁、JICAも含めて、オールジャパンで考えていくべきではないか。他方、同じようなことを中東でやろうとしたときに、日本企業の存在が限られているということがある。第2回のときに、日揮がサウジアラビアで長期的な立場から人材育成のビジネスを展開しており、その中で見つけてきた人材育成のニーズがあるというお話があったが、逆に中近東の場合、サウジの場合とカタールの場合とでエントリーポイントは違うかもしれないが、既に活動している、あるいは入っていきたいと思っている企業の意見を聞きながら、そこで重点的にターゲットとする分野やどういった分野の技能が必要なのかといったことを考えて、それをもとに、官民を含めたオールジャパンで支援策を考えていくことが妥当である。ASEANと中近東で同じ産業人材を育成するためにオールジャパンで取り組むといったときにも、少し発想を変えないといけない。ただ、根本的に産業育成といったことを軸にしながら、いろいろなリソースを動員していくといった発想が重要であると考えている。

【委員】大変興味深い、基本的な議論が幾つかあると思うが、1つは日本に連れてくるのか、日本から出ていくのか、この議論をある程度しておかなければならないだろう。それからもう1つ、日本の企業という視点であるが、これまでの議論をまとめるとこういうことになってしまうと思う。日本の方で研究開発を行い、現地で製造をする。その製造に必要なエンジニアと、そこでの中堅技術者をその国で養成してくださいということは、日本の企業にとってみるとそれなりの合理性があるのかもしれないが、受け入れる国から見たときに、日本の高等教育の支援は一体何のためかと言われたときに、どういう形で正当化できるのかが、多分、問題にならざるを得ない。それはもう少し言うと、日本の企業としても、Aという国で人材を養成しても、Aという国から離れてBに行くときには、その国において日本語で学んだ人たちは役に立たなくなるのかどうか分からない。そうすると、それぞれの国にとって重要なのは、恐らく中堅技術者であっても、どこの国にこの後進んでいっても、自分たちが中堅技術者として生きられるという、そういう能力を開発するという視点に立たないと、つまり、国が国際協力をするという観点からすると、少し問題ではないか。
 それから、こういう協力を推進していくときには、どの分野でどのレベルでということを抜きにしては考えられない。そういう意味で、これからの議論においてはそこの具体化が必要だということと、それから、この議論は確かに中東と東南アジアなので、その間のところをどうするかということを全く議論しなくていいのか。つまり、タイまでは入るとすると、その先のミャンマーからインドを越えてパキスタン、あのあたりのところを、日本の国際協力の推進として、そこを除いて、中東と東南アジアの議論をするということで本当にいいのか。

【副座長】橋本総理の当時、サウジアラビアとの協力分野として、4つの分野が挙がり、職業教育、教員養成、障害者教育、そしてもう1つに女子教育が入っていたのだが、少なくともサウジアラビアとの関係においては、女子教育はなかなか難しかったという記憶がある。例えばサウジアラビアの女性に対して日本の女子大学に協力していただくのはいいかもしれないが、女子大学ばかりではなく、サウジアラビアの人が日本の社会に入ることに対して、かなり抵抗があるのではないか。その場合、こちらの人が向こうに行かなくてはいけないが、女子教育をする場合に、男性はなかなかできないので、日本の女子大の女性の先生が行くことになった場合、それだけ日本の女性の先生に行く用意があるかよく分からない。そういう意味で、出ていくのか、こちらに呼ぶのか、どの分野、どのレベルかということは、向こうの要請をじっくり踏まえた上で、あるいはそれだけこちらから行く人がいるのか、協力する人はどういう人がいるのかをよく見極めないと、持続的なものにならないのではないか。この議論はマーケットリサーチのようなものが少し必要であると思う。

【委員代理】 中東で教育といった場合に、長期的な部分と、より短期的な部分とのギャップが非常に大きい。実際、日本や欧米の企業もそうであるが、現地で事業をやろうとすると、現地の人を雇うように言われ、法律にもそうある。しかし、発電所1つ運用できる人間がいなくて、インド人、パキスタン人、パレスチナ人を雇ったり、様々なことをして何とかやっている。いきなり製造業というのは、恐らく北アフリカを含めてまだ難しい。電気も水も投資周辺サービス業も何もないという状態に近く、リビアであろうと、エジプト、チュニジア、アルジェリアであろうと、突然日本の製造業が出ていくということは、マーケットとの関係も含めてさほど期待できない。ただ、インフラを輸出したいというニーズは相当あり、早くリビアにも、早く行けるようにしてほしいと考えている企業はかなりある。日本企業は面倒見がいいと言われるのは、要は現地で人が確保できないがために、日本から人を連れて行ったり、他の国で使える人を探して連れていき、現地の人の促成教育をせざるを得ないという事情があるからだ。それを突然、現地の人を教育して、短期間で人材を育成してそこに当てることが可能かと言われると、現状の枠組みではかなり難しい。例えばサウジの国全体の算数のところからやりましょうというのは、かなり長期的な話ではないか。単年度主義のODAでその面倒を見るというのはとても無理だと思うので、どうやって長期的な部分を賄うのかという議論は、この場にはそぐわないのではないか。

【委員】東南アジアにしても中東にしても、日本がやっていく際に非常に重要なのは教員教育だと思われる。特に工学系について言えば、いろいろなレベルの、例えば中堅技術者をつくるという場合、その指導をする人たちをつくるという、これは長い間やっていくと、その国のインフラの製造業をつくる際に、非常に効いてくるわけである。あるいは、すべてが工学系でいいかどうかは別として、向こうの高等専門学校、あるいは工学系の大学でもいいが、そこの教員をつくるというところ、あるいはそれ以外の日本の、いわゆる教育大学で、こういう国から人を呼んで、日本的な教育というのは、これまでのところ、非常に競争力があるというふうに言われているのであるとすると、いわゆる教員養成にもう少し注目するのがよいだろう。というのは、アメリカ、あるいはイギリスなどの国が、そういう中等教育、あるいは高等教育でも非常にレベルが高いところはやると思われるが、そうでないところを含めて、国民の基盤となる人材を養成するための教育に対してそれほど関心がない。そこに対して日本が出ていくというのは、この後長い目で見ていったときに、大変効く分野ではないかと思われるので、確かに女子教育もそうであるが、やはり、中東について言えば教員教育をどうやってうまく支援するかが1つの鍵になるのではないか。

【副座長】今まで日本も留学生政策を長くやってきている訳であるから、各国に帰国した留学生は、大学や教育界、あるいは政財界に入っていらっしゃる方もたくさんいる訳で、例えばポスドクで日本に来た人、帰国した方もいると思われるが、そういう人たちをできるだけその国の拠点として、あるいは情報のツールとして活用していったらどうか。帰国留学生の活用をもっと図るといいのではないか。

【木村座長】  私はずっと昔からそういうふうに思っている。例えば東工大で非常にうまくいっているのはタイで、非常に連携が密で、何かやろうとしたときにはすぐ動き出せるという体制があるが、ほかの国は難しい。各大学が相当努力しないといけないのではないかと個人的には思っている。

【委員】文部科学省の方で準備いただいた資料2の中近東のところで、ODA卒業国に対しては協力の枠組みがなく対応ができない現状があると書いてある。先ほどのHELPの話とも関係するが、HELP3が終わって4になるとJICAは一切関わらなくなくなるという理解でいいのか。例えばJICEにしろJICAにしろ、案件を形成し、それを運営するノウハウを持っている。また。JICEはODAであってもODAでなくても、外部から受託できる仕組みがあると理解している。大学がすべて案件の形成や運営をするのは非常に難しい。JICAやJICEなど、プロジェクトやプログラムの運営、相手国政府との関係、そういったことをしていただけるところが、引き続きODAを卒業した国と何らかの形で関わりを持って、そこと大学が連携していきながら、人を送る場合、あるいは受け入れる場合を含めた仕組みを作ることが可能なのかどうか。ただ、これはODA卒業国に対して、日本がオールジャパンで取り組んでいくのであれば、JICAやJICE等が蓄積してきたノウハウを生かす場があってしかるべきであり、それに大学、民間、省庁がどう連携できるのか、そういった発想で考えていかなくてはいけない。ドイツはGIZという技術協力の実施機関が、ODA卒業国や新興国、あるいは他の国際機関やドナーから大規模な受託をしながら事業展開する仕組みがある。日本においても、そういったことをもう少し考える余地があれば、それを軸としながら、大学、民間、省庁との連携が考えられると思う。

【委員】まず女子教育に関して、日本が出ていくのか、それとも先方を呼んで日本で教育するのかという議論とも関わるが、サウジアラビア、カタール、UAEにおいてはいずれも、恐らくは現地で教育をせざるを得ないだろう。というのは、特にUAE、カタールのエデュケーションシティーと呼ばれているところの大学の欧米の大学を回ったときにも、なぜ欧米の大学が来てくれると有り難いのかという話の中に、わざわざ欧米まで行って娘を出したくないが、「欧米の大学のような質の高い教育を受ける機関が現地に来てくれたので娘たちを教育させたい」という声が多くあると聞いて、こうした点から、恐らくは現地で教育するのが妥当だと考える。その中で、どれだけ日本の大学の先生方が現地に行く用意があるのかというのは、今後、いろいろと調べていく必要があると思う。過日、お茶の水女子大学の先生方と中東の動きなどを話したところ、もし海外でもニーズがあれば、私は出ていきたいという先生方が何人かいらっしゃった。人数は非常に限られているとは思うが、日本が提供できるターゲット層を絞った上でやっていけば、できることもあるのではないか。また先ほど、北アフリカに関してはインフラ整備が重要であって、製造業まではなかなかいかないのではないかというお話があったが、恐らくはインフラ整備が最初に来るのではないかと私も思っている。ただし、北アフリカの中でも、モロッコとエジプトでは状況が違うので、モロッコでは特にインフラ整備が重要だと思うが、エジプトのような国では、恐らくは日本企業の製造業進出に対するニーズが、今後出てくるのではないか考えている。それも都市にターゲットを合わせるのか、それとも非都市部のインフラ整備なのかというところももう少し詰めた議論が必要ではないか。 持続可能な人材育成に日本が参加していくのであれば、かなり突っ込んだ研究調査が必要だと考えている。

【委員】海外での日本の教育協力、あるいは教育の出口としての産業協力、これを一緒に考えていいのかどうかという問題があるが、そこがつながることが教育を受ける人たちにとっても、出口がある教育ということで、その魅力を感じるのではないか。また、日本が海外で何のために教育協力をするのかどうすれば日本の教育協力が、海外での産業振興に寄与できるのか、それをどういうふうにすればいいのか、我々はそういう問題意識を持って、特に中東で相手の国の人たちともいろいろ話をしたが、そこでの結論は、要するに、日本の顔が見える拠点をまずつくれということに尽きる。現地にそれなりの拠点や機関を設けるとなると、どこにどういうお金で設けたらいいのかと、今度はそういう各論になってくるが、まず日本の先生方を派遣して講座を設け日本がどのような教育をあなた方の国に提供しようとしているか少しずつ日本の教育協力の姿を相手側に見せていくことが必要だろう。 一方、企業も現地に既に法人格の拠点を持っているところが少なからずあるため、そういうところに勤めている人たちを講師としてそこで協力してもらう。企業によって分野が異なるので、それぞれの専門を生かしてそこで実学を教えていくことが、相手側にとって意味があろうし、企業にしてみれば、現地の若い人たちの1つのコンタクトポイントにもなり、将来、自分たちの現地法人に、もしかしたら入ってもらえるかもしれないというようなギブ・アンド・テイク的なことも考えられる。現地に物理的にそういう施設を持って、そこで日本の教育協力とその先の産業協力を一対にしたようなシステムを検討してみる価値があるのではないか。 
 それからもう1つ、女子大については、サウジアラビアもだんだんとドアを開け始めており、男性の先生が入っていける可能性も出てきている。実際、私自身もある女子大に入ったことがあり、そこで、女子大の先生から聞いた話だが、特に今の女子大生が、どういうカリキュラムに関心が高いかいうと、アントレプレナーシップ、つまり起業だと。女子大を出て自分でビジネスを起こすために必要な教育を受けられるアントレプレナーシップ学科を持っている大学があるが、そういうところに、例えば日本の専門の先生を派遣してはどうか。男性の先生であっても教育内容が魅力的であれば相手側も受け入れるのではないかと思う。 そこで日本の顔を見せていくといったことも非常に有効なやり方ではないか。まだそういうところに中国や韓国が手を伸ばしているというふうには思えないので、早く中東の、特にサウジアラビアのような国の女性の社会進出と、その予備軍としての女子大生を押さえて戦略的に攻めていく価値は大いにあると思う。

【座長】 皆さん、ディグリー・ミルというのを御存じだと思うが、これは元々、アメリカが発で、学位工場というふうに日本で訳されている。アメリカのCHEA(Council for Higher Education Accreditation)というところがアメリカのディグリー・ミルの横行に手を焼いて、ついに世界的なネットワークを作った。私もそのメンバーの1人であるが、毎日5通から10通ぐらいのメールが来て、こういう大学を知らないかというふうに、そういったものをずっと洗っていくのだが、今、ディグリー・ミルが狙っているのが中東並びにアフリカで、すごい勢いで広がっている。向こうの政府の立場にすれば、これは早く対処しないと、みんながそういうものの餌食になってしまう。ユネスコのHigher Education+5のとき、アメリカがちょうどユネスコに戻ったときであるが、南米諸国のかなりの数が集まって、発展途上国はくれぐれも自制してほしいと抗議文を出した。つまり、ろくでもない教育の配信をやって、自分の国の国民がそれにだまされて犠牲になっているので、そういうことは即刻やめてくれという声明文を出したのだが、今でも南米はかなりひどい状態になっていて、いまそれが中近東やアフリカへ出てしまい、大変なことになっている。私も大学評価をやっていたが、大学評価の世界的な仲間の多くが、現在、リタイアして、ほとんどがオマーンやサウジなど中近東で仕事をしている。そういうところのQA、つまりクオリティーアシュアランスの責任者になって、その国を助けているのだが、それでもディグリー・ミルがたくさん出てきているので、早く高等教育のフレームワークをきちんとしなければいけない。女子教育の話もあったが、南米の状況を見ていると非常に多くの人が犠牲者になっていて、学位といってもいろいろな種類のものあるが、そのようなものを持っていてもどこも相手にしてくれないということが起きている。そういう面でも日本が協力できれば、というのは以前から考えていたことである。 先ほど、日本の顔が見える拠点が要るというお話があったが、非常に成功しているのがペルーの地震工学センターである。JICAが長年やっておられて、かなりの資金援助をして、世界でも有数の地震工学センターを日本と共同で作り、あの辺の地震学の発展に非常に寄与している。あれは完全に日本の大きな顔である。全部の分野というのはなかなか難しいと思うが、私も顔が見える拠点を作るというのは非常に大事だと思う。

 

○ 最後に、事務局より次回の会議での議題について説明がなされ、閉会した。

(別紙)

平成23年11月7日 15時30分~17時30分
文責:委員 中西久枝(同志社大学)

 以下の視点が重要ではないかと考え、話題提供をさせていただきます。

(1)産油国の大国:サウディアラビア

A.サウディアラビア―サウディ人の人材育成に重点を合わせた国家政策から
 日本の大学での留学による人的資本整備を計画・実施
 分野:医療・保健衛生のニーズに対しては、学部レベルでの受入れが求められる
 自然科学:数学、理科の基礎学力を養成するコースが、学部入学以前に必要。
                G30で英語プログラムのある大学で、研究生として受入れ教育、その後、学部、 大学院へ進学するシステムをつくる。
 人文社会:ガバナンス、行政官の人材育成プログラム(短期・長期)

1)モデル化の作成と実施:保健衛生分野の人材育成については、名古屋大学の医学部が実施している「ヤング・リーダーズプログラム」のような修士課程コースが一例。他の分野については、実務家養成の同様なプログラムの策定を行う。他方、基礎的学問分野と応用科学分野では、履修プログラムが異なり、既存の学部、大学院教育のプログラムの中で受け入れ可能な大学、大学院を特定する必要あり。
2)女子教育のニーズ:日本の女子大学を積極的に活用すべき。

*日本の大学での受入れに対しては、受入れ機関、受入れ教員のインセンティブを高める必要がある。そのためには、サウディアラビア政府による奨学金とは別に研究費をつけるようにサウディアラビア政府と調整する必要あり。
*相手側のニーズに応じるとともに、分野、人数を限定して受け入れることが持続可能な教育活動につながる。

(2)中小産油国:UAE,カタール:エネルギー輸出国の人材育成

 既に欧米の大学が進出しており、カタールには、「教育センター」がある。

課題:
女性の就労率を上げることが国家政策となっている一方、大学での受皿が男子学生、女子学生ともに圧倒的に不足。ニーズの高い分野としては、ICTとサービス産業分野。女性の行政官のニーズも高い(就労時間が短く、時間の融通のきく政府系での雇用を望む女性が多い。)政府は、外国人労働者の依存度が高いことが、治安の問題、人権侵害に対する国際的批判の的になりつつあることを懸念し、国家行政、産業界での人材のエミレーツ化、カタール(人)化を最大の国家目標としている。

政策提言:

1)既に欧米の大学が進出しているが、大学進学希望者と産業界、行政界のニーズを満たしていないため、日本の大学が進出する余地はある。外国人による大学教育については、受入れ体制は、サウディアラビアよりも整備されている。オール・ジャパン式と、特定の大学の単独進出の両方を考える。
2)自然科学分野の人材育成は、いずれの国家でも高い(需要が高い割に受皿が小さい。)人文・社会科学では、経済、経営、行政学分野が高い。保健・衛生、医学の分野も高い。その中で、日本がどの分野について進出すべきかを絞る必要があるので、既に、欧米の大学が進出しているため、それらの大学で提供している教育内容との比較優位性を洗い出す必要がある。欧米の現地大学では、女子大と男子大とを分けているキャンパスがあるが、例えば女子大学にのみ特化した教育に日本が進出するだけでも、メリットはホスト国にとって大きい。
3)資金については、欧米の大学が実施しているように、キャンパスの提供、職員、教員の雇用にかかるコストは、ほとんどすべてホスト国が提供している。

参考文献: Gabriella Gonzalez, Lynn A. Karoly, Ouay Constant, Hanine Salem Charles A. Goldman. Facing Human Capital Challenges of the 21st Century: Education and Labor Market initiatives in Lebanon, Oman, Qatar, and United Arab Emirates. Rand-Qatar Policy Institute, 2008.

[参照」

 


(3)北アフリカ諸国:民主化の波とともに、モロッコ、チュニジア、エジプトは安定化の方向へ、(識字率と産業構造には違いあり、モロッコ55%、エジプト66%、チュニジア77%、リビア87%(信ぴょう性が問題)

 

政策:国家開発政策に日本の外交を展開すべき。文部科学省、JICAなどが中心に産業育成政策を策定する過程で政策提言をする。その上で、重点分野を洗い出し、人材育成分野の見取図を作成する必要あり。チュニジア、エジプトは、既に一定レベルの工業化が進んでいる一方、モロッコは農業中心国であるなどの差がある。若者人口が多く、教育での受皿と雇用の創出が今後の中心課題である。

*チュニジア、エジプトは、製造業の誘致を行う余地は十分あり。日本的経営の手法を移転する可能性は、湾岸の産油国よりは高い。

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