国際協力推進会議(第1回) 議事録

1.日時

平成23年6月20日(月曜日)14時00分~16時15分

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.議題

  1. 国際協力推進会議設置の趣旨について
  2. 国際教育協力に関する論点について
  3. 自由討議

4.出席者

委員

木村座長、井上副座長、石井委員代理、内田委員、大野委員、草野委員、篠崎委員代理、清水委員、中西委員、松岡委員

文部科学省

金森文部科学審議官、合田科学技術・学術政策局長、前川総括審議官、藤嶋国際統括官、池原国際課長 外

5.議事録

○事務局より委員の紹介があった後、木村委員が座長に選任された。続いて、井上委員が副座長に選任された。
○「国際協力推進会議の公開」について、委員の賛成により決定された。
○国際教育協力に関する論点について、浅井国際協力政策室長より資料3に基づき概要説明があった後、自由討議が行われた。

【委員】我が国はASEANについては半世紀以上にわたって様々な形で協力してきたが、中東については比較的経験が少ない。その点で、どのような協力を行うかという議論は非常に長いスパンの話になるのではないか。ODA非対象国、あるいは卒業間近な国に対して、お金ではなく、知恵とソフトの面で協力することは大変意義深く、時宜にかなったことである。一方、先方の期待が大きくなりすぎ、我々として先方を裏切るような形になってはいけないので、先方のニーズをかなりきめ細かく考えていく必要がある。日本式教育に対する期待が非常に高いとのことだったが、それが日本の教育の価値観を指しているのか、あるいはより具体的に理数科教育なのか、日本式教育とは何かを定義する必要がある。以前、サウジアラビアと教育協力を行ったことがあるが、先方の要望を聞いてみると、女子教育、障害者教育が挙げられた。同じ中東といえども、各国のニーズは多様である。なお、先方のニーズを聞く場合にはそれがどのレベルの人からの要請なのかを見極める必要がある。国際的な教育協力については、特に中東は、競争関係にさらされていることを認識しないといけない。ブリティッシュカウンシルなどからノウハウをもらうのが大事だが、日本が取組を進めていると知られると警戒されるので慎重に行う必要がある。また、本日は日揮株式会社の方も来られているが、日本のエンジニアの方の貢献は非常に評価されているのではないか。ASEANの関係でいえば、SEED-Netは大変成功している取組で、今後の発展に向けて民間との連携の確保が重要。JETROなどは現地の状況を的確に把握されているように思うが、いずれにしてもオールジャパンで対応してくことが必要である。

【委員】アジアにおいてODAの卒業国が増えており、また、中東ではもとよりODA卒業国がある中で政変が起き、雇用の問題や産業構造の多様化がクローズアップされている。これは、中東が重要な資源の供給源である以上、日本にとっても関係の深い問題である。この状況において、この国際協力推進会議は非常にタイムリーであると思う。グローバル人材の育成という点でも、日本に何ができるかということを考えながら、日本の国際協力にオールジャパンで取り組んでいくことが重要。ODAを超えた取組(Beyond ODA)についても視野に、民間も含めた連携についての枠組みを考えていく必要がある。ODA卒業国に対する有償技術協力や、卒業国に対する円借款など、既存のツールに加えて今までよりも広いプレーヤーとの連携といったことを考えるべき。相手国のニーズと同時に、日本に何ができるか、また、日本の人材育成という観点からも企業から何が望まれているかを考えるなど、日本側も含めたニーズの把握が重要。国際協力において内と外をつなぐことが求められている。その際、ASEANであれば、日本型ものづくりや技術の発展に必要な人材の育成が求められているように思うが、中東では同じ人材育成といえどもものづくり人材とは違うように思う。ASEANと中東では違うニーズがあるということを念頭におくことが重要。

【委員】中東地域におけるビジネスの成果は、ヒューマンリソースをどれだけ上手に生かしているかが深く係わっている。これを踏まえ、一方では自分のところの社員をいかにして海外で活躍できるような人材に育てていけるか、一方ではどうやって現地の人材をうまく使うか、すなわち両側における人材育成の重要性を認識し、企業の立場からその両側の人材のベストマッチングを志向しつつ努力しているところ。日本の若者の内向き志向が問題視されている中、どうやって彼らの目を外に向けることができるか、また、相手国の方をどうしたら日本に目を向けさせることができるか、双方向的な議論が必要。

【委員】まず我が国全体の戦略というのは、グローバル人材の育成とイノベーションの推進であり、その核は大学、高等教育にある。高等教育という産業をどう育成し、国際競争力の高いものとするかが基本的な視点。日本の教育は、初等教育から高等教育に至るまで、欧米と比べても競争力を持っていると思う。特に日本の高等教育の特徴は、研究室・ゼミ単位での少人数教育であることを海外の専門家も指摘している。日本の大学が海外に出ていくにはこの強みをどう生かすか考えることが重要。また、相手のニーズもさることながら、日本の産業にとっても利益になるスキームを考えることが必要。具体的には、アジア、アフリカや中東の国々との間で頭脳のサーキュレーションを実現していくことが求められているのではないか。例えば、日本は学部教育の面で海外の大学に協力し、優秀な学生を日本の大学院に連れて来て教育し、いずれは彼らが母国に戻って要人となる。このような循環は双方にとって非常に重要な意味を持つ。日本の高等教育を輸出産業として考えるときに、現地の初等中等教育のレベルや日本の大学が現地で得られる法制度的な位置づけなど、リスクが大きいという問題がある。これを踏まえると間接的な輸出により相手方の大学の創設に協力する形が望ましい。その際、現地の初等中等教育から高等教育までの状況を精査し、どのようなモデルであれば両国にとって有意義な関係を構築できるかを検証し、その上で地域の歴史的・文化的側面に応じて柔軟に対応することが必要。

【委員】産油国の学生を受け入れる場合、層によって学力のみならず学習意欲に対する姿勢が違い、家族を連れてこなかった学生に対しては文化的な側面も踏まえた生活面でのケアが必要。中東産油国と日本のニーズを考えると、中東諸国の学生は日本に対して理系分野での留学を希望し、一方で日本の学生は文系(政治や言語等)を希望するなど、ミスマッチが生じている。理数科教育に限らず文系科目においても、ASEANの中では、低所得国と体制移行国の間で社会科学の基礎に差があり、これを勘案した受入れが重要。また、中東諸国との関係でいえば、欧米の分校を訪問して感じたことは、本国からの出向者と契約で勤務している教員との間で、教育の内容や情熱に差がある。したがって、欧米の有名大学の分校の質が必ずしも良いわけではなく、日本の高等教育も貢献できる余地がまだまだある。一方、実際に日本の大学の分校を作るとなると、就業規定等、越えるべき課題は少なくない。関連して、日本の大学では大学が知的貢献をするというコンセンサスを得にくい環境にあると感じる。オールジャパンでの連携という話が出たが、学生の受入れ・送り出しに関しても、日本で受け入れる学生は理系である一方、現地に送り出す学生は文系であるなど、部局間・省庁間の連携も必要。ASEANについては、日本への留学組が政府機関で活躍しているような国では日本型経営が浸透している中、関係が浅い国との落差が激しいという課題がある。一方、中国や米国との連携を強めている国もある中、日本型経営だけがニーズの高い分野ではなくなってきているという事実もある。

【委員】サウジアラビアは2000万人程度の人口であるが、総額40兆円の予算の半分を教育に投資するという計画を明確に打ち出している。15歳未満のサウジ人が38%いる中、教育に対するニーズは非常に高い。サウジアラビア政府は、2007年から「キング・アブドーラ・スカラーシップ」という奨学金で、毎年100名規模の留学生を日本に派遣している。この受入れに関しては、理科の補講が必要だったり、受入れ大学を探すのに苦労したりと課題は多いが、留学経験者の話を聞くと、現地で放映されている日本の習慣をテーマにしたテレビ番組の影響などから、日本文化を学びたいという学生が非常に多い。一方で、中東における教育協力に関して、日本は非常に遅れているのも事実。欧米は大学自身が進出するのではなく、留学関係のエージェントが進出している。今、中東の中では「ルック・ジャパン」の流れがあり、それをどう受け止めるかという環境作りが非常に重要。日本への奨学生が理数の試験で苦労しているのでもわかるとおり、理数科教育レベルが特に低く、政府も危機感は感じている。欧米などに改善プランの発注はしているものの、押しつけのようなやり方に不満もあり、ここに日本が果たすべき役割があると思う。理数科教育の改善には、教員を研修する人材を、日本の教育大学で受け入れて育成するのが、時間はかかるが一番重要。一方で、日本の大学の教育関係者は非常にドメスティックで拒否反応が強い。留学生の受入れは、日本の教員志望者にグローバルな視点を与えるという副次的効果も期待できるので、大学を開かれたものにしていきたい。

【委員】アフリカを取材した際、現地の方が、建物などがどこの国の支援で建てられたかを説明してくれた。一方で日本は、20年にわたって一人の専門家が稲作を教えるという、すぐに効果は出ないが、息の長い支援を行っていることを実感し、非常に必要な支援であると感じた。後になって効いてくるような支援は必要であり、端的に言えば日本を好きになってもらうことが重要である。先ほど来「オールジャパン」と言われているが、これはアフリカを訪問したときに感じたこと。残念ながら、今、日本が抱えているのは、オールジャパン体制の構築が極めて国内問題であり、官民、あるいは省庁間の壁をどう越えられるかという議論になっているということ。懸念としては、このような支援体制に対する国内応援団が少なくなっているのではないかという点。これまで出てきた様々なプログラムも、一般の方にはほとんど知られていないので、関心を喚起する広め方がこれまで以上に必要なのではないか。協力したい、力になりたいと思っている方は多いと思うので、一般の方も含めた「オールジャパン」体制の構築が必要。その際、顔の見えないオールジャパンにならないよう、誰がイニシアティブをとるかというような体制の整備も行っていくことが重要。

【委員】日本の場合、中小企業と大企業とで、国際化に対する現状は大きく異なる。中小企業の場合、これまでは海外に輸出や投資を行った場合でも、実は買手は現地の日系商社やメーカーであり、リスクは少なかった。しかし最近は、中小企業が直接、新興市場の開拓を自ら行わないといけない状況にある。この場合、見知らぬ相手との交渉力や人間力が求められるが、その対応として、1点目は国内、特に地方における国際人材育成の充実、2点目は留学生や帰国子女の登用、3点目は日本人学生の海外邦人企業や現地企業のインターンシップへの派遣などが考えられる。また逆に、外国人を、日本の文化や習慣を理解できる人材に育てることも重要。そのためには、外国人への日本語・日本文化の教育が必要。加えて、外国人の日本留学の拡大や、中小企業でのインターンシップ受入れ等が考えられる。大企業の場合は、これまで大きなプロジェクトはメーカーが商談をまとめて、ファイナンス及び技術力によって競争力を保ってきた。とりわけファイナンスが大きな役割を果たしてきたが、そこでのリスクはJBIC、JICAなどの公的機関、最終的には日本政府がとってきた。ところが最近は、公的機関がリスクをとるだけでは不十分で、技術力があっても価格が高すぎると競争力が発揮できない。そこで必要なのが交渉力や人間力であり、現地での人材育成や産業育成への支援で資金や技術力を補完していく必要がある。これに対しては、1つには現地留学生の受入れ拡大により人脈形成、1つには技術者の現地あるいは日本での教育が重要である。これらを踏まえた提案として、1点目は海外ビジネスを学習するプログラムの拡充、2点目として企業が参照できる、留学中の学生の人材検索データベース作成が挙げられる。加えて、留学生受入れの拡大、日本語又は日本ビジネスに関心を持つ人材の育成、日本の学生の海外インターンシップ派遣の拡大等が必要なのではないか。

【委員】大震災後、世界各国から様々な形での支援が来ており、ODAの効果が初めて目に見えた機会だった。ODA額を増やすだとか減らすだとかを議論するのがいかに空(むな)しいかを実感した。アジアの政策イシューで大きなものは、ASEAN全体の連結性を高めていくことである。アジアから日本への留学生が増えているといっても実際には中国からの留学生が大半であり、ASEANからは余り増えていない。国費留学生は最終的には帰国してしまうので、ASEANの私費留学生を雇用したいという企業は少なくない。民間企業の関連財団などで奨学金を出しているところも同じ悩みを抱えている。ASEANからの留学生をどうやったら増やせるかの政策議論は必要ではないか。また、既に話にあったとおり、中東については日本に来たい学生は理工系の学生が多い。一方で日本から留学したい学生の数は圧倒的に少ない。数は1対1にならないという前提がアジアにおける議論とは異なる部分である。

【委員】本会議における大きなイシューは、まず1点は「オールジャパン」での対応ということ、もう1点が「Beyond ODA」ということだと思う。日本が海外に対して行うプロジェクトは、資金援助が終了した時点で関係も終了してしまうパターンが少なくない。その点で、「Beyond ODA」という観点は議論の中心となるのではないか。個人的に心配しているのは日本からの留学生の問題で、特にアメリカへの日本人留学生の数が激減している。その原因が若者の内向き志向にあるという意見もあるが、私は社会環境、特に就職活動の問題が大きいと思う。英国では、大学でも年齢の高い学生が在籍しており、やり直しがきく社会になっている。これに対して、日本はやり直しがきかない仕組みになっているので、学生が就職活動に躍起になる。この点の改善がなされないと、国際化は難しい。企業についていうと、日本の中でも海外に進出する潜在能力のある中小企業が多くあると聞く。それらの企業が進出できない理由は、海外の情報が適切にとれない、あるいはとる人材がいない、また、リスクを冒したがらないという日本独特の体質があるためと考えられる。まずは海外に出て行くことが大事なので、この問題をどうするかが重要。留学生の問題については、御指摘のとおりほとんどが中国からの学生であり、60%を超えている。毎年、学部を卒業、大学院を修了する留学生が2万3000人程度おり、この大部分が日本での就職を希望するが、実際に就職できるのはその3分の1程度である。この原因は様々あると思うが、いずれにしても日本国内での国際化も足りないのではないか。さらに、日本の協力の顔が見えないという指摘について、ある企業でアメリカの顔はデモクラシー、イギリスはオステリティー(austerity)、日本はシンシアリティーではないかという話が出た。しかしシンシアリティーはシステムにならないので結果として日本人の顔が見えなくなってしまうということが起こる。広報をいかにするかという問題だけでなく、このような問題をどうしたらよいかというのも大きな問題。また、頭脳サーキュレーションの問題であるが、日本にある程度いい学生が来ているのは事実であるが、やはり欧米と競争すると勝てない。一方、以前、日本に来ていた外国人の優秀な研究者から、日本の学生は非常にすばらしいという話を聞いたことがある。その研究室が特殊だったのかもしれないが、日本人は相当な能力があるのだと思う。あとはそれをどうやってシステム的に外に出していくかだろう。

【委員】中東については有償の技術協力が始まったという話もあったが、まだ規模は小さい。これを人材育成のモデルとしてどうシステム化し、商品として売れるものにしていくかが重要。例えばドイツなどは、日本でいうJICAのような機関にコンサルティングサービス部門があり、援助終了後も、むしろお金をもらいながらコンサルティングを行っている。「Beyond ODA」についても、JICAが蓄積してきたノウハウも生かし、官と民も含めて必要な機関や関係者が連携していく仕組みをつくるべき。日本の大学教育を輸出産業にとの話があったが、その場合はうまくいった事例とそうでないものを精査し、成功モデルをシステム化していく必要がある。そのためには、大学の中に、教員であってコーディネートもできるといった、プロジェクトの管理ができる人材を増やすべき。例えばシンガポールのリー・クアンユー・スクールの場合、民間出身の経営感覚を持った方をマネジメント担当の幹部に雇って、海外事業の展開を進めている。これに日本がODAで蓄積してきた人材を充てることも可能であろうし、このような仕組みを可能とする体制あるいは予算の導入が必要。またASEANの場合は、日本の様々な協力を通じて育った人材がかなり存在する。これこそ長年にわたり蓄積された財産(アセット)であり、そのような人材をカウンターパートとして動員しながら現地でプロジェクトを実施していくことが可能なのではないか。

【委員】日本に留学した人のフォローは必要。どのような人材を輩出しているか、どのような仕事に就いているかは把握しておく必要がある。また、グッドプラクティスを集めることも重要。それには現地の事情を実際に見ることが大事である。


最後に、事務局より、今後のスケジュールについて説明があり、閉会した。

 

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