手塚委員提出資料

外国人の教育について

青山学院大学 手塚和彰

1. 人の国際化・グローバル化

1. 1 内外の人の交流は、定住・永住者として、ますます増えることは否めない。

1. 2  1990年入管法改正以降その流れはとどまることがない。

1. 3 典型的な例は日系ブラジル人・ペルー人で、これについては昨年来の不況により、政府(厚生労働省)は帰国促進策をとった。これは、かつてのドイツの轍を踏んでいる。しかし、考えなくてはならない点を具体的に提示している。

 

2. どういう事態が起きたか

 2. 1 1990年以降の外国人(とりわけ労働者)の受け入れ政策の問題

    2. 1-1 人手不足の分野に、人手不足を補い、かつ、日本人より安く受け入れたいという経済界(すべてではないが)の要請に従った:日系外国人、技能実習生の受け入れ  

    2. 1-2 しかし、日系人はじめ外国人は家族を呼び寄せ、また、家族を日本で作り、定住、永住傾向にある。そこに、外国人子弟の日本語、教育問題が発生。

    ただし、外国人で働いている成人の日本語問題は、ようやく、今回の不況で顕在化   

     (失業後の再就職ができない)

 

 2. 2 国と地方自治体の政策

    2. 2-1 国の対応として、文部科学省の対応と自治体の対応

    イ 日本語教育 国内外での日本語教育のシステムはほぼできている:国の対応と地方自治体の対応のずれが大きい。言葉を変えると、自治体により千差万別だということである。 

    ロ 外国人子弟の教育 義務教育と中等教育以上

     加配教員、教科書の無償給付など

     ただし、複線教育などの課題はいまだ不十分

     ボランティアの活動(退職教員の力を借りる) 

    ハ 外国人学校の設置要件の緩和(各種学校の設置要件緩和措置:各種学校規程の平成16年6月21日改正)

     地方自治体毎の努力との乖離  

    ニ 問題として、日系人の子供の多文化間での困難さをどう解決するか

    例:久里浜少年院の収容少年のほとんどが日系ブラジル人労働者の子供で、日本語も十分でなく、ポルトガル語(ブラジル人の場合)も十分でなく、親はほとんど出稼ぎで、金を持って帰ることを望むが、子供は日本でしか生きられないという。 

    職業教育はほとんど機会がないまま、15歳以上年齢を迎えている。

    ホ 留学生の問題

    中国などからの留学生が二通りに分化することは、必然。日本語学校問題や酒田短大などの例

    グローバル30と大学などの対応

    留学生20~50万計画の可能性

    ヘ 成人教育

    親の世代の教育、成人の受け入れ条件(日系人について、現地で日本語のできないものの査証を出さないことを試みたがうまくいかない。かつて、西ドイツ外国人労働者を受け入れ条件として日常会話を受け入れ条件とした) 

    社会教育(公民館など)での可能性 

    ト 問題:自治体の一部は、国が金を出せとしかいわないが、教育(とりわけ、義務教育、成人の社会教育)などは、自治体の任務である。

     使用者の責任は大きい。それに対するコストの負担がない。

 

    2. 2-2 結論

    イ 「国際化」とか「多文化共生」という抽象的タームは意味がない。むしろ、人のグローバル化である。むしろ文化や言語の問題がコンフリクトを生じる。それを、どうするのかが、課題

    ロ 日本に来ている外国人の多くが日本を理解してくれたら、それに勝ることはない。

 

    なお、現在改定中であるが、拙著『外国人と法』(有斐閣 第三版 2005年)を参照していただけたら幸甚です。

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