小山委員提出資料1

定住外国人の子どもの教育等に関する政策懇談会提案メモ

財団法人かながわ国際交流財団

小山紳一郎

1. 方針の作成について

 ○国として外国人児童生徒教育に関わる方針を策定する

    ・受入指針……外国人児童生徒の就学を「恩恵」から「権利」へと位置付けを変更する(ユネスコの定義にあわせ、「特別な支援ニーズのある子ども」の中に外国人児童生徒を含める)

    ・教育政策……外国人児童生徒教育(日本語指導・適応指導)と国際理解教育(日本人児童生徒の異文化理解教育)は表裏一体のものである。両者を架橋する教育政策を定め、学習指導要領に位置づける。

    ・人材配置……教員、日本語指導協力者、スクールソーシャルワーカー(以下「SSWr」と表記)等の養成・配置についての全体計画を策定

    ・財源措置……教員人件費については国庫補助金、他については一括交付金として給与費を計上する

2. 人材の養成・配置について

 ○大学の教員養成課程に「日本語教育・異文化間コミュニケーション」を必修化する

    ・国際教室(日本語教室)の担当教員は、教室の担当者になってから、外国人児童生徒教育に必要な知識を学ぶ場合が少なくない。

    ・大学の教員養成の課程において、日本語教育・異文化間コミュニケーション等の科目を必修化することが望まれる。

 ○外国人児童生徒に専門性を有した指導主事・教員の計画的養成と配置が必要である

    ・県・市の指導主事は、必ずしも外国人児童生徒教育に関わる専門的な知見を有しているとは限らない。その結果、現場のニーズに即した教員研修計画を策定できない場合がある。

    ・教員の一定割合を、外国人児童生徒教育に関して深い専門性を有した教員となるよう、計画的に養成・配置することが不可欠である。

 ○日本語指導協力者に対する体系的な研修システムの確立と待遇改善が必要である

    ・市教教育委員会等に所属し、学校に巡回指導を行っている日本語指導協力者の中には、一人で、日本語指導、教科支援、母語支援、児童生徒のメンタルケアなど複数の役割を担っている人もいる。

    ・日本語指導協力者の労働条件は良好でなく、優れた人材ほど他分野へ流出してしまう傾向がある。研修体系を早急に整備するとともに、待遇改善が急務である。今後、協力者の法的位置づけと財源措置についても検討が必要である。

 ○外国人児童生徒の多い地域へSSWrを配置するための財源措置が必要である

    ・スクールソーシャルワーカー派遣制度は、2008年度に文科省がモデル事業としてスタートさせ、現在2年目(2009年度から人件費の3分の1は国庫補助)。SSWrの活動には高い評価があるが、人件費の3分の2を都道府県が負担しなければならないため、絶対数が不足している。

    ・外国人児童生徒の多住地域など、一定の要件を満たした場合に、SSWrを加配できる仕組みが必要であり、そのための財源措置が求められる。

3. 制度・仕組みの創出について

 ○教育行政と学習支援NPOの「事業連携、政策“共創”」の仕組みづくりが重要である

    ・外国人児童生徒をめぐる教育課題の解決は、学校という社会資源だけでは困難であり、地域で学習支援等を行うNPOとの連携・協力が不可欠である。しかし、個別NPOの力は弱く、行政とのパートナーシップ形成に苦労している地域が少なくない。

    ・財団法人かながわ国際交流財団では、教育行政とNPOの双方にパイプのある強みを生かし、外国人児童生徒の教育課題の解決に向けて、行政とNPOの情報・課題共有、知恵の創出を行う「場」(=多文化子ども支援ネットワーク会議)を形成している。官と民とのパートナーシップによる事業連携、政策“共創”を行ううえで、こうした中間支援組織の活用が不可欠であると思われる。

    ・上記の取組は、神奈川県独自のものであるが、他の国際交流協会においても、外国人児童生徒や成人を対象とした「日本語/教材リソースセンター」の設置・運営など、中間支援組織らしい取組をしている団体が少なくない。そこで、各都府県の国際交流協会等に20億程度の基金を創設し、この運用益で必要な事業を展開できる仕組みづくりが望まれる。その際、原資として国が15億、他は自治体と企業負担という方式が考えられる。

 ○プレスクールを設置運営するための財源措置が必要である

    ・プレスクールとは、未就学児が、小学校入学後にスムースに学校生活に移行できるように、「入学準備教育」を行う場である。子どもの母語や文化的背景を熟知した指導者が教室運営にあたるところに特徴がある。

    ・愛知県豊橋市では、こうした教室を試行的に展開しており成果をあげている。自治体等がプレスクールを開設・運営する経費の一部を、一括交付金として、国が負担することが望まれる。

 ○多文化フリースクールの政策的位置づけに関する検討が必要である

    ・近年、国際結婚をしている女性が、海外にいる子ども(前夫との子ども)を日本に呼び寄せる事例が急増している。これに伴い、中学校にも高等学校にも在籍できず、行き場を失った子どもが増えている。

    ・こうした状況を放置できないと考えたNPO(東京と神奈川)が、彼・彼女らの居場所機能を兼ねた「進学準備塾(多文化フリースクール)」を開設・運営している。しかし、高額な月謝が必要なことから、多文化フリースクールにも入塾できず、どこにも帰属する場所のない子どもたちが増えている。

    ・高等学校からのドロップアウト組を含め、こうした子どもたちの学習機会を保障するための総合政策を、自治体の高等教育・青少年政策の中に位置づける必要があるが、現在、都道府県には余剰財源がなく、今後の見通しも立っていない。

    ・この問題は、グローバルな人の移動に伴って発生した新しい政策課題であり、国においても、検討会議を設置するなどして、解決策を早急に考える必要があると思われる。

     

以上

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