参考資料2 「東アジア共同体」構想に関する今後の取組について(内閣官房)

平成22年6月1日
内閣官房

1.目標

 具体的な協力の積み重ねを通じて、平和で安定し、繁栄した地域を形成する。

2.基本的考え方

  • 米国を含む関係国との、「開かれた」「透明性の高い」地域協力を推進する(日米同盟は、地域の平和と安定のための礎となっており、今後とも米国の関与は不可欠)。
  • 長期的なビジョンの下に、機能的な協力を積み重ねる。様々な既存枠組み(日中・日韓等バイ、日中韓、ASEAN+1、ASEAN+3、EAS、APEC、ARF等)を活用しつつ、できること、できるパートナーから始めて徐々に拡げていく(欧州の和解と協力の経験をモデルに)。特に、我が国が議長を務める2010年APECの場を活用する。
  • 我が国が蓄積してきた経験や技術を広く使ってもらうことで、地域の「成長の先にある課題」への対処に貢献する。
  • 「人」は構想を前進させる際に最も大事な鍵。人的・文化的交流を促進し、共同体の中核となる人材を内外で育成する。
  • 我が国も、「日本を開く」との考え方に基づき、大胆かつ積極的な取り組みをスピード感を持って立案し、実行に移す。

1.経済連携の推進等

(1)EPA/FTAの推進と域内の切れ目のないビジネス環境の整備

アジアの経済成長を促進し、共に繁栄するために、「日本を開く」ことを通じ東アジアなど世界との連携を深めた経済・社会を目指すこととし、EPA/FTAの推進や域内の切れ目のないビジネス環境の整備を通じ、ヒト・モノ・カネ・チエの流れの円滑化に貢献する。

○EPA/FTAの推進【外務省、財務省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省等】

日韓EPAの早期交渉再開、インド等とのEPA交渉の推進、日中韓FTAの産官学共同研究への積極的参画、FTAAPをはじめとする東アジアやアジア太平洋地域の広域経済連携に関する議論について、国内産業のセンシティビティにも配慮しつつ、質の高い経済連携を加速する。また、EPAに基づく外国人に係る看護師・介護福祉士国家試験のあり方及び日本語研修に関する検討を進める。

○域内の切れ目のないビジネス環境の整備【総務省、法務省、外務省、財務省、農林水産省、経済産業省、国土交通省等】

・貿易・物流・交通の円滑化

- 物流・交通円滑化のための基盤整備
国際貨物の位置情報を、官民で共有するシームレスな仕組みを構築する。その際、情報共有と可視化に必要な情報コードや電子タグ等の標準化を促進する。また、拡大するアジア物流に対応するため、国際コンテナ・バルク戦略港湾など港湾整備の「選択と集中」を進める。さらに、ヒト・モノ双方について国際航空の活性化を図るため、首都圏空港の容量拡大を実現しつつ、戦略的オープンスカイを推進する。

- 貿易・物流・交通の円滑化のための国際協力の推進
貿易関連のシステム連携、税関・物流・交通安全性向上に関する人材育成等の技術協力を推進する。

・金融の円滑化

- チェンマイ・イニシアティブ、アジア債券市場育成(信用保証・投資ファシリティの早期設立等)を推進する。

・内外のビジネス環境の整備

- 投資協定・租税条約等の締結・改定を促進する。
- 法制度整備支援を強化する。また、知的財産権の保護体制づくりへの協力を進める。
- 専門・技術的分野の人材の受け入れ、活発な対日投資、外国企業の事業活動の拠点誘致による我が国への事業活動の集積促進など、「日本を開く」ための国内諸制度等を見直す。

(2)「連結性(Connectivity)」強化への積極的貢献

 経済成長と共同体形成の途上でアジアが抱える様々な課題(インフラ整備、格差是正、環境問題等)に対し、我が国の知識、経験、技術を広く活用する。

○アジアの課題解決に資する、ハード・ソフト両面のインフラ整備への協力【総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省等】

・ASEANの連結性強化のためのマスタープランや、ERIA等で策定中の「アジア総合開発計画」に協力し、域内の連結性強化に資するために、アジア各国の鉄道、道路、港湾、空港、発電所、上下水道、通信、スマートコミュニティ、農業・農村基盤等のインフラ整備、法制度・規制・基準の整備・改善、国境措置の改善等に貢献する。

・アジアの地域協力・地域統合に向けたインフラや制度整備に実績と強みを有するアジア開発銀行との連携を更に強化する。

・メコン地域開発への協力として、「総合的なメコン地域の発展」、「環境・気候変動および脆弱性克服への対応」、「協力・交流の拡大」を柱に注力する。

・格差是正、環境問題、貧困削減、持続可能な開発(水産資源管理等)など、アジアが抱える様々な課題に対して、社会的セーフティーネットの構築など、広く我が国の知識、経験、環境・省エネ・省資源対応に優れた技術等の蓄積を活用する。

・案件形成から相手国の人材育成まで、ニーズに合わせパッケージ化し、官民による総合的な支援を実施する。

・規格の共通化・調和を進める中、我が国の知見を活かした連携の下、アジア諸国との連携の下、アジアの実情に適した国際標準づくりに貢献する。

2.気候変動をはじめとする環境問題への地域的対処

 地球温暖化という地球規模の問題にアジア諸国と共同して取り組むとともに、大気汚染、水質汚濁等の環境破壊を克服した日本の知識・経験・技術を基に支援する。

○環境・気候変動分野での日本の経験や技術を活用したアジアの国づくり支援(気候変動の緩和と適応、公害防止、循環型社会、生物多様性保全、森林保全、省エネルギー社会、都市・交通システム、水管理等)【総務省、外務省、財務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省等】

・日本の優れた環境・省エネ技術(低炭素・低公害技術、クリーン・コール・テクノロジー、原子力、スマートグリッド、再生可能エネルギー、廃棄物処理技術等)のアジアでの普及を促進する。

・日本の知識・経験を基に環境分野の人材育成に貢献し、アジアにおける持続可能な成長を推進する。

・アジアにおける鳩山イニシアティブの活用・実施
- すべての主要国による公平かつ実効性のある国際枠組みの構築と意欲的な目標の合意に資するよう、アジア諸国の低炭素社会構築に向けた取り組み、気候変動の悪影響への適応対策を支援する。また、低炭素技術による貢献を適切に評価する仕組みにより、技術移転の促進や民間資金の活用を行うことも含め、効率的かつ効果的な支援を促進する。

・「緑あふれるメコン(グリーン・メコン)に向けた10年」イニシアティブ(森林保全、省エネルギー・クリーンエネルギー、水資源管理等)の協力を推進する。

3.防災協力や感染症対策といったいのちを守るための協力

災害、感染症や疾病からいのちを守るために、アジア各国が情報を共有しながら、日本の持つ技術も活かしつつ、迅速かつ緊密に協力する体制を構築する。

○アジアにおける防災・災害対策ネットワーク強化ならびに国際緊急援助体制の強化・迅速化【内閣府、総務省、外務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、防衛省等】

・アジアにおける防災・災害対策ネットワークの強化を図る。特に、早期警戒システム(通信システム向上、分析力向上等)や情報連絡体制(関係省庁の連携システム、公共放送を活用した迅速な災害情報伝達、防災意識向上等)の強化のために、アジア防災センター等を通じた技術支援や人材育成を積極的に行い、アジアの防災能力の向上を図る。また、各国と協力して各国の衛星情報を共有する衛星観測システムの構築の検討を進める。

・国際機関、各国の主要な緊急援助機関・組織、NGO等との連携を強化し、国際緊急援助に係る能力強化を促進する。

・ASEAN全体の防災力強化のために、ASEAN防災人道支援調整センターの能力向上を支援する。また、災害時の人的・物的アセットの登録等を行う多国間協力枠組みつくりに向けて各国とともに検討を進める。

・ARF災害救援実動演習共催(日本とインドネシアが共催して2011年3月の実施を準備中)をはじめとするアジア地域における国際的な演習・訓練を積極的に主導・参加する。

・「友愛ボート」構想を具体化する一つの施策として、「パシフィック・パートナーシップ2010」に自衛隊がNGOとともに参加し、医療活動や文化交流等を実施する。

・大規模災害発生時等の緊急時における安定的な食糧調達の検討を各国と共に進める。

○感染症・疾病対策のネットワーク強化【外務省、厚生労働省、農林水産省等】

・アジアにおける新型インフルエンザ等の感染症、家畜伝染病にかかる諸外国や国際機関との情報交換やサーベイランス体制を強化する。感染症、家畜伝染病対策にかかる研究機関間の情報交換・研究協力もあわせて強化する。

・国際機関とも連携しながら、ASEANにおける感染症・疾病(特に三大感染症及び生活習慣病)の対策を強化する。

○テロ・犯罪から市民を守るための能力強化、連携・協力【警察庁、外務省等】

・「日・ASEANテロ対策対話」の取組を強化するとともに、サイバーテロ対策、国際組織犯罪対策を始めとする警察分野での協力を強化する。

4.海賊対策、海難救助をはじめとする「友愛の海」をつくるための協力

我が国の貿易・物流にとって重要なマラッカ・シンガポール海峡等における海賊・海上武装強盗・航行安全対策を強化し、海難救助等の分野における日中等二国間の対話を促進するとともに、ARF等の場を活用しつつ、多国間での協力を進めていく。

○マラッカ・シンガポール海峡等における海賊・海上武装強盗・航行安全対策の強化【外務省、国土交通省、防衛省】

・沿岸国への巡視船の供与・派遣やアジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)下の情報センターへの貢献、アジアの海上保安機関等に対するキャパシティ・ビルディング等に引き続き努める。

・来年春のARF海上安全保障ISM会合(日本、インドネシア、ニュージーランド共催)等の場の活用・強化を図る。

・同海峡の航行安全対策等「協力メカニズム」支援のため、日本がリーダーシップをとり、航行安全施設の強化とともに、沿岸国等に対する人材育成、能力強化を実施する。

・ソマリア沖・アデン湾の海賊対処において、多くのアジア諸国が海賊対処活動に従事しているところ、マラッカ・シンガポール海峡等東南アジアにおける海賊対処活動や我が国によるキャパシティ・ビルディング支援等の経験や知見等を活用する。

○海難救助等における協力の推進【外務省、国土交通省、防衛省】

・日韓・日露・日中の防衛当局間の海上における捜索救難共同訓練(SAREX)を実施するほか、日米・日韓・日露の二国間海難捜索救助(SAR)協定の枠組みに加え、日中間の海難捜索救助活動の協力体制の充実のため、「日中SAR協定」締結に向けて中国側と協議を促進する。

・日中・日韓で行われている海難救助に関する協議の他、各国との災害救援や海賊対処等に関する対話を通じて地域の関係国との関係強化に努めるとともに、多国間の協力を進める。

○日中防衛当局間の危機管理メカニズムの構築【防衛省】

・日中防衛当局間の海上連絡メカニズム等を早期に確立するため、協議を促進する。

5.人の交流をはじめ文化面の交流の強化

 青少年交流、大学間交流・学生交流、研究者、技術者など様々なレベルでの交流を増加させるとともに、日本語教育の抜本的強化を図るなど文化交流事業を活性化する。

○青少年交流(5年間で10万人)【内閣府、外務省、文部科学省等】

・未来を担う青少年の交流を抜本的に拡充するため、「5年間で10万人」の目標実現にむけ青少年交流を強化する。

- 21世紀東アジア青少年大交流計画(~23年度)を継続するとともに、教育、スポーツ等の分野も加えた新たな計画を検討する。その際、教員等の交流の推進を図る。

○大学間交流、学生交流・育成の推進【文部科学省、経済産業省等】

・東アジアにおける大学間交流、外国人留学生の日本の大学・専門学校等への受入れ、日本人学生の留学支援を強化する。あわせて、日本及び東アジア地域の成長に貢献する人材を育成するという観点から留学生、日本人の学生を産官学で連携しつつ、就職支援を含めた各種支援を強化する。

- 「キャンパス・アジア」をはじめとした質の保証を伴った大学間交流(単位互換、成績評価、交流プログラム等)

- 学生交流・育成の推進
 外国人留学生の日本への受入れの拡大、日本人学生の海外派遣の強化を図る。また、日本と東アジアの成長に貢献する人材育成を進める(留学生・日本人学生の人材育成を産学のネットワークを活用しつつ支援)。

- 留学生の受入体制の整備などを通じた質の高い人材が集まる拠点となる大学の支援

○高度人材【内閣府、総務省、法務省、文部科学省、厚生労働省、経済産業省等】

・アジアとともに発展していくため、高度人材(経営者、研究者、技術者など)を積極的に受け入れるべく、推進体制を含め早急に検討を進める。

- 高度人材の円滑な入国、安定的な在留に資する出入国管理上の優遇措置を講ずるためのポイント制の導入等を検討する。

○科学・技術分野での交流の促進(東アジア・サイエンス&イノベーション・エリア構想等の推進)【内閣府、総務省、外務省、文部科学省、経済産業省等】

・科学・技術分野におけるヒト・モノ・カネ・チエの交流を加速し、アジア諸国とともに研究開発力を強化し、アジア諸国が抱える問題の解決に貢献する。

- 日本の蓄積を活用したアジア共通の課題の解決及びアジアの活力と一体となった研究開発力の強化としての国際共同研究・人材育成等を推進する(遺伝資源イノベーション、感染症対策、重粒子線がん治療技術、宇宙、環境エネルギー、原子力、新都市システム、ナノテク拠点、情報通信技術等)。さらに共同基金プログラムの設立の可能性の探究等アジアの研究者コミュニティの形成に資する枠組みの検討を行う。

・アジア核不拡散・核セキュリティ総合支援センター(仮称)の設置を推進する。

○文化交流の活性化、日本語教育等の強化【総務省、外務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省等】

・東アジアを含めた外国人に対する日本語教育を抜本的に強化するとともに海外子女教育を含む教育の国際化を推進する。また、日本文化の発信を強化するとともに、文化遺産の保存等の協力を推進する。さらに、日本を訪れる海外の訪問客等の受入れ促進を図る。

-日本語教育等の強化
 国際交流基金を通じた日本語講座の展開、日本語教師養成の強化とともに、海外の大学、看護学校等(インドネシア、フィリピン等)と連携した日本語教育について検討する。また、海外における日本の教育機関を活用した日本語教育等について検討する。

- 日本文化の発信の強化
 日本の文化や芸術(伝統文化、メディア芸術、デザイン、ファッション、食文化等)などを、人物交流の拡大、コンテンツの展開強化等により、より強力に対外的に発信する。

- 日本への訪問客等の受入れ促進
 海外の訪問客等の受入れ拡大等により対日理解を促進する(国際競技大会の招致・開催支援、査証発給手続きの円滑化、APECビジネストラベルカード等)。

・毎年アジアの芸術都市を定め様々な文化活動・芸術活動を展開する「東アジア芸術創造都市」構想(仮称)の検討を推進する。

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大臣官房国際課