資料1 東アジアにおける交流に関するワーキング・グループ (第5回) 議事要旨(案)

1.日時

平成22年4月30日(金曜日)17時~19時

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.議事

(1)東アジアにおけるスポーツ・青少年・教職員交流等のあり方について 等

4.配付資料

資料1 東アジアにおける交流に関するワーキング・グループ(第4回)議事要旨(案)
資料2 スポーツを通じた国際交流と青少年の国際交流(スポーツ・青少年局提出資料)
資料3 高校生交流(留学等)の推進について(初等中等教育局国際教育課提出資料)
資料4 東アジアにおける教職員交流のあり方について(大臣官房国際課提出資料)
資料5 東アジア共同体構想とJENESYS(21世紀東アジア青少年大交流計画)(外務省アジア大洋州局地域政策課提出資料)
資料6 アジアにおける文化発信拠点としての公民館の機能強化(日本文化の発信・国際文化交流の推進)(生涯学習政策局社会教育課提出資料)

5.出席者

委員

青木委員、田中委員、恒川委員

外務省

伊藤アジア大洋州局地域政策課長

文部科学省

坂田次官、清水文部科学審議官、森口文部科学審議官、芝田大臣官房国際課長、坪井大臣官房政策課長、布村スポーツ・青少年局長、芦立競技スポーツ課長、勝山青少年課長、神代社会教育課長 他

6.議事概要

(1)東アジアにおけるスポーツ・青少年・教職員交流等のあり方について等

  • 布村スポーツ・青少年局長よりスポーツを通じた国際交流と青少年の国際交流について、関初等中等教育局国際教育課長補佐より高校生交流(留学等)の推進について、田渕大臣官房国際課長補佐より東アジアにおける教職員交流のあり方について、外務省伊藤アジア大洋州局地域政策課長より東アジア共同体構想とJENESYS(21世紀東アジア青少年大交流計画)について、神代生涯学習政策局社会教育課長よりアジアにおける文化発信拠点としての公民館の機能強化について発表が行われた。その後自由討議が行われ、概要は以下の通り。

【委員】

 高校生の留学に関して毎年50名を支援しているとのことだが、需要はどうなっているか。

【関国際教育課長補佐】

 潜在的に留学を希望する生徒数を計る指標として、何名の採択枠に対し、実際に何名の応募者があるかで見た場合、例えば、平成20年度は、40名の枠に113名、19年度は37名の枠に220名応募。ニーズは高い。

【委員】

 スポーツについては、国際競技大会の招致・開催はあるが、日常的な交流として、例えば留学生・高校生・青少年交流の中で、スポーツは位置づけられているのか。訪日・交流の目的となるスポーツとして、野球等日本が得意とする競技スポーツ、サッカー等必ずしもそうではない競技スポーツ、いわゆる体育教科としてのスポーツ等様々あるが、日本はどのような分野でリードをとれるのか。

【芦立競技スポーツ課長】

 日本固有、日本が発祥地のスポーツである柔道や空手が主導権をとれる分野である。空手は流派が様々分かれているが、日本の求心力が出てきている。アジアや特にアフリカにおいて、空手、柔道の指導者の進出が目覚ましく交流の前線を担っている。オリンピック招致の際も、日本から草の根的に派遣されている人たちにご協力いただいて、日本のよさをアピールしていれば、うまくいったのではないかというレポートも出されている。日本国内でも、例えば講道館などが、日本に来る海外の人々と積極的に交流する方針を打ち出しており、今後大きく進展する可能性のある分野。

【委員】

 日本での受入れに関してはホームステイ等もあると思うが、施設面の体制はどうか。大学の場合、困難な状態に置かれている留学生も多く、日本へ来ても住む所がない、或いは、医療関係の面でうまくいかない等の例も指摘されているが、高校生の場合、その辺りをどの程度配慮しているか。

【関国際教育課長補佐】

 未成年であることから、大学生、研究者に比べ、受入れ・派遣体制をいかにしっかりさせるかが高校生留学において重要。基本的にはホームステイ形式をとり、日本の家庭に入ることを通して、日本の生活についても勉強してもらう。日本人高校生が海外留学する場合も、無償でのホームステイを含め生活の面倒もしっかり見てもらうことが条件。

【委員】

 受入れの場合、指定校はあるのか。例えば、アジア各国から様々な人が入ってきた際に、言語や宗教についてもケアできるような受入れ体制が高校にあるのかが重要。

【関国際教育課長補佐】

 留学生の受入れに関しては、指定校制度ではなく、都道府県・市町村の教育委員会を通じて各学校に受入れ協力依頼を行い、受入支援団体が受入れ候補校を選定の上、当該候補校への学校訪問を実施し、受入れ校を決定している。同様に、留学生の受入れ家庭についても、家庭訪問を実施し、受入れが十分可能かどうか検討した上で、決定している。

【委員】

 派遣先についても、様々な問題が出てくると思う。異文化理解の促進のためには相手国についてしっかり理解することが重要。

【関国際教育課長補佐】

 派遣の場合、(資料3)の6ページにある通り、財団法人ワイ・エフ・ユー日本国際交流財団(YFU)や財団法人エイ・エフ・エス日本協会(AFS)等米国に拠点を置く団体が、関係の支部と連絡をとり、学校やホームステイの受け入れが可能なところに派遣することになっている。

【座長代理】

 高校生の留学は、基本的には大半が高校レベルで取り組んでおり、文科省の関与は少ないということか。平成22年度文科省予算ベースで見ると、高校生の留学促進の派遣人数は約50人だが、全体では少ないといっても3,000人規模の生徒が高校留学で海外へ行っている。

【関国際教育課長補佐】

 高校留学にかかる費用は少なくとも90~120万で、必ずしも低い額ではない。大学受験という制約等があるので、希望する者は限られているものの、高校留学を是非したい、国際関係を学びたいという生徒は一定規模いるのに対し、大学や研究者交流に比べ、支援の規模は小さい。

【委員】

 重要な取組だが、日本の高校生は忙しいし、中学生段階でも必要だと思う。外務省のJENESYS計画のように、特別の予算をつけるような措置はやっているのか。

【関国際教育課長補佐】

 昨年度の補正予算で、高校生留学について約10億円ついたが、政権交代に伴う補正予算の見直しにより、約8億円の減額となった。

【委員】

 本ワーキング・グループでも検討しているので、重要な施策には予算をつけるよう提言していただきたい。

【清水文部科学審議官】

 高校生留学に関しては、ワイ・エフ・ユー日本国際交流財団等の交流団体の役割が大きく、ニーズに応じてボランタリーに尽力してもらっている。文科省は、留学時認定可能単位数の拡大など、制度面において応援している。
 留学を希望する高校生もその保護者も英語圏を留学先に選ぶ傾向にあり、東南アジアや非英語圏に対する需要は小さい。留学ニーズに関しては、各交流団体の語学要件の試験の応募者数である程度把握できるだろう。
 大学入試との関係では、AO入試に有利にはたらく可能性もある一方、学業の遅れ等ハンデとなる面もある。実態としては女子の留学が多いようだ。

【委員】

 外務省のJENESYS計画については、今後力を入れて取り組む方向なのか。

【伊藤外務省アジア大洋州局地域政策課長】

 来年から予算倍増できるかは別として、引き続き全体のバランスの中で拡張していきたい。「5年間で10万人」という総理の施政方針演説の言葉は、JENESYSだけを念頭に置いたものではないと思うので、政府全体で調整する中で、外務省としてはJENESYSの規模も増やしていきたいと思っており、計画の中身としても、これまでの蓄積を踏まえ、新しいこともやっていきたい。

【委員】

 公民館の取組は面白い。現在、日本各地の公民館では、海外にあるコミュニティ・ラーニング・センターとどれくらい交流をやっているのか。

【神代社会教育課長】

 現在は交流実績を把握しないといけない状況。数は多くない。

【委員】

 日本の公民館は、予算もなく潰れているところもあると言われているが、日本の公民館システムや無形文化財はアジア諸国に影響を与えており、その魅力を効果的に伝えるために海外での制度化の働きかけや、日本における公民館の実態に梃子入れができるかが課題。

【神代社会教育課長】

 最近、公民館の数が減少し、高齢者向けの趣味・教養的な講座が中心となり、活動が衰退しているのではないかとの指摘がある一方で、(資料6)で紹介したように、外国人向けの日本語講座や地域住民と外国人との交流機会を設けている公民館もある。「自分の住む街に外国人が住んでいる」という状況が当然となりつつある社会の中で、どうやって彼らと共に地域づくりをしていくべきかヒントを見出そうと努力している公民館と協力しながら、東アジアに向けてどんな支援ができるのか具体的に考えていきたい。

【委員】

 文化交流や地域振興の拠点としての公民館づくりを検討している自治体はあると思うので、モデル的なものを幾つか文部科学省で梃入れし、他の自治体に流れを広めていければありがたい。

【委員】

 日本の青年は最近内向き志向。青年海外協力隊の希望者も減少している。特に派遣について、例えば、「東アジア、そして世界とつき合える青少年の育成」など、大きな標語を掲げる必要があるのではないか。青少年交流を進める際、受入れと派遣とでは目標が異なる。受け入れの場合、短期間でも構わないので、何千人、何万人規模でたくさん来て頂き、日本を見てもらうことが重要。しかし、派遣の場合、一人でも多く東アジア、そして世界とつき合える青少年の芽をつくることが目標で、ある程度の期間派遣することが重要。
 高校生留学については、需要はあるが英語圏が多いとのことだが、子どもたちにとって言葉が通じないことは不安であり、ある程度は仕方ないと思うが、エイ・エフ・エス日本協会などは、途上国に行かせたいという方向が強いとも聞く。東アジア諸国への枠の拡大を図ってはどうか。また、もう少し短期間の派遣プログラムを設けてもよいのではないか。高校留学の経験はAO入試の活発でない国立大学の入試には確実に不利。大学側が受験生の留学経験を考慮する等変わっていかないと、若い段階から積極的に海外に出ていくという状況にはならないのではないか。
 教職員交流における受入れは、もっと期間を長くし、色々なものを見ていただくほうがよいのではないか。
 公民館に関しては、近い将来アジアにおいて高齢化が大きな問題になることから、生涯学習という切り口から公民館の使い方を売り込むことは可能でないか。日本の場合、公民館とは別に、自治体レベルで高齢者向けの講座を設ける等、生涯学習を進めているところもあるが、アジアの場合、公民館で高齢化対応という機能を持てるのではないか。
 スポーツについては、青少年を重視してほしい。また、日本の経済成長と結び付ける意味で、経済効果をより前面に出して売り込んで頂きたいという印象をもった。

【委員】

 教職員派遣は、ある程度長期間やったほうがいい。
 青少年交流や教職員交流を通じてアジア太平洋で役に立つ人材養成を行っていく上で、より戦略的なプログラム・政策の策定が必要。中韓、ロシアなどでは戦略的に取り組んでいる印象。特に、大学における人材派遣、人材養成の目的を、日本のみならずアジアないし世界における優秀な人材の育成に切り換え、具体的プログラムを設けていかなければならないのではないか。

【坂田事務次官】

 東アジア或いは世界で役立ち、働ける人材の養成は国家的課題。若年人口も、我々の時代に比べ減っており、殊の他そのような要請は強い。専門性を強く求められる時代になっていることを踏まえると、大学ではまず基礎学力や知識・教養、専門性を体系的に学ばせないと世界に対抗できないと思う。とはいえ、コミュニケーション能力、主張する能力も必要で、語学力と論理的思考力も求められる。論理的思考力の形成は高等教育だけの問題ではなく、それ以前の教育段階からしっかり教えるべき。国際場裏に出た際に主張できる精神的なタフネスを鍛えるには、学校教育だけでは難しいかもしれない。例えば海外での留学経験や異文化での生活体験などが非常に重要になってくるのではないか。

【委員】

 現代日本の生活は楽。清潔で、喧嘩も民族対立や宗教戦争もない。格差も、中国や韓国、インド、米国等とは比較にならない。留学先として、欧米志向が強いのは、生活面でのインフラが整備されており、快適な生活ができる点もあるだろう。アジアは魅力的だが、生活面で非常に不便。現代日本で育ってきた子どもたちはアジアでは生活していけない。

【清水文部科学審議官】

 交流の問題を考える際、高校・大学の連続性等教育段階の全体を含めた視点は重要。但し、「出」と「入」の問題は分けて考えなければならない。「出」の場合、インセンティブの問題が大きい。米国含め日本からの留学は減少傾向にあるが、自らのキャリア形成や視野拡大にあたり、留学に魅力を感じる学生が少なくなってきているのではないか。現在、出る学生のうちの7%が理工・農業・医学で、大半が人文・社会科学系という状況。今後東アジアとの間で大学間交流を進めていく場合には、質保証の問題をベースにしながら、ある程度短期間の交流も、単位互換を含め、繰り返し、システマチックにやっていくしかない。日中韓のキャンパス・アジアのような構想に加え、SEED-Netのような枠組みも含めて展開していけば、交流はもっと広がっていくかもしれない。また、在外の日本人学校やインターナショナル・スクールでの経験が「出」につながっているということもある。
 「入」の問題は国の役割。予算編成などをシステマチックにやることにより実現していけるかもしれない。現在、外国人労働者の子どもの教育と関わって、義務教育段階ではなく、高等学校段階も含めた日本語教育、日本語指導の体制を、教職員の定数改善も含め見直す方向で動いている。基本的に、希望する限り就学できるようにしようということだ。言語障壁の問題を高等学校段階でクリアできれば、学部或いは大学院段階での進学につながるのではないか。

【委員】

 文部省が近代日本における小学校から大学までの人材育成を担ってきたことは大変な功績だが、21世紀の日本の大学・教育のあり方についても、アジア太平洋、世界を見据えて、イニシアチブをとる方向で取り組み、21世紀の日本の教育をどうするかという観点から施策を打ち出し、予算も要求すべきである。

【座長代理】

 教職員交流について、確たる戦略がないように見える。高校生留学も大事だが、多くの高校生を外向き志向にし、東アジアについて正確な知識、認識を持たせるには、教員側にそういう認識がないと難しい。また、先方の学校事情だけ視察するような派遣プログラムでは子どもに影響を与える上で役に立たないので、現代中韓の躍動している部分を、観光旅行的なことも含めて経験してもらうほうがよい。事業仕分けが進むなか、このような案が通るのかどうか不明だが、東アジア地域に関する教員の教養を高めること自体が本事業の重要な目標であり、何とか工夫いただければと思う。

【清水文部科学審議官】

 在外の日本人学校には、国内から教員が3年任期で派遣されている。派遣から戻ってきた教員のいる学校で、ネットワークを活用し、現地校或いは現地社会との交流を設けているところもあるようだ。東アジア地域における教員の交流を考える上で在外日本人学校の教員も念頭に置く必要がある。

【坂田事務次官】

 日本の若者がなぜ内向き志向で、あまり海外へ出ていかないか原因分析するのは難しい。日本国内の居心地がよく、子どもたちが外国に興味を持たないからかもしれないが、興味を持つためにはその国を知り、語れるかが重要。学校教育の中で教員がその国の魅力を語ることにより、子どもたちが外国に関心を持つ契機・機会が増えれば、内向き傾向に少しでも歯止めをかけることができるかもしれない。

【委員】

 できるだけ多くの日本教員に東アジア或いは他の途上国を訪れて頂き、その経験を子どもたちに語る機会を増やすために、JICAの青年海外協力隊に積極的に教員を送り込んでいただきたい。青年海外協力隊の活動の大半は現地の学校へ行って教えるというもので、活動期間は2年間に及ぶが、インセンティブを高める働きかけをしていただけると助かる。

【委員】

 教員の派遣プログラムの中で、その国の文化も見てきてほしいが、外務省と連携し、何かダイナミックなプログラムとしてできないものか。

【座長代理】

 大学生よりも若い世代の交流も重要であり、彼らが外向き志向になるための施策を考えていかなければならない。その点で言えば、初等中等教育に携わる教員自体を外向き志向にする交流事業には戦略性があり、大学やそれ以上のレベルの交流を活発にする基盤形成に資する。スポーツ交流に関しては、社会全体ではスポーツに熱中する人のほうが勉強に熱中する人よりも多く、東アジアとの交流についても、目に見える活動が増えていくことが重要。市民社会レベルの交流をどう強めていくか検討していかなければならない。招へいも意識的に取り組むべき。JENESYSは計画名もなかなかよいと思うので、是非拡充し、継続頂ければと思う。アジアないし世界で役立つ人材育成という観点では、高等教育のあり方を無視することはできず、今後じっくり議論する必要がある。

7.次回以降の日程

  • 次回は5月19日水曜日、9時半から11時半、5F7会議室で開催予定。
  • 議事は東アジアにおける大学間交流のあり方について。

お問合せ先

大臣官房国際課