資料1 国際教育交流政策懇談会(第6回)議事要旨(案)

1.日時

平成21年7月2日(木曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.議事

(1)これまでの議論の整理(中間まとめ)
(2)その他

4.配付資料

資料1 国際教育交流政策懇談会(第5回)議事要旨(案)
資料2 世界に開かれた人材育成(中間報告)(案)
資料3 国際教育交流政策懇談会における提言を受けた政策課題と関連施策(案)
資料4 国際教育交流政策懇談会における提言を受けた新規施策案
参考資料1 若手研究者海外派遣事業
参考資料2 高校生の留学促進

5.出席者 

(委員)

金澤座長、田村座長代理、池上委員、池田委員、佐藤委員、白石委員、角南委員、高橋委員、牟田委員、渡辺委員

(文部科学省)

銭谷事務次官、玉井文部科学審議官、木曽国際統括官、芝田大臣官房国際課長、藤原大臣官房会計課長、大森国際教育課長、森田国際交流官他

6.議事概要

(1)これまでの議論の整理(中間まとめ)

・本懇談会での提言を受けた政策課題と関連施策について、事務局より配布資料に基づき説明が行われた。質疑応答の概要は以下の通り。

(参考資料1について)

【委員】

 若手研究者海外派遣事業は派遣期間3ヶ月では中途半端でほとんど意味が無いのではないか。海外でうまくコミュニケーションをとり、ディベートができるようになるには、少なくとも1年かかる。どういう観点から3ヶ月という設定になっているのか。

【事務局】

 「国際研究交流の概況」調査では、滞在期間が1ヶ月を超えるものを長期派遣として定義しているが、短期派遣は微増だが、長期派遣は減少している。本事業では、3ヶ月以上と設定しているが、このような現状認識のもと、できるだけ長期の派遣を含む計画を採択したい。

【委員】

 若手研究者海外派遣事業の組織支援型について、各大学の海外の協定校への派遣など、既に交流を行っている大学への派遣も対象とするのか。

【事務局】

 新規に限らず、既存の事業への支援も対象とする。

【委員】

 派遣期間に上限はあるのか。また、給与や滞在費の支給はどうなっているか。

【事務局】

 派遣期間について、個人支援型事業では、上限設定をしていないが、事業自体が5年間限りとなっているので、その範囲内での派遣となる。組織支援型事業では、1名につき1年を上限としている。また、滞在費と渡航費のみの支援で、研究費等については別の措置が必要となる。

【委員】

 組織支援型について、支援期間2~3年とあるが、4~5年目は支援しないのか。

【事務局】

 5年間で3回程度公募を行う予定であり、採択された各プログラムは、開始年度から2~3年間の支援となる。

(参考資料2について)

【委員】

 補正予算で、高校生や大学生の海外派遣に関する120億円の予算があったと記憶しているが、説明にあった10億円の予算とはどのような関係があるのか。

【事務局】

 120億円の内訳について、私の今手元にある資料では、学生派遣については、学生支援機構による2,400人への支援として15億円、及び今回の「高校生の留学促進」の10億円がある。また、学生受け入れでは、私費外国人留学生約14,000人への支援として95億円、また国際文化交流促進費補助金の拡充ということで、外国人高校生100人の短期招致の3,000万円がある。

【委員】

 高校生の海外派遣の受け入れ先が公立学校の場合には学費は無料であるが、ホームステイ先を探さなければならない点や渡航費が必要になる点が大学と決定的に異なる。この点も含めて、支給額の積算はどうお考えか。

【事務局】

 高校生の交換留学の場合、ホストファミリーに対しても経費は払わず、学費も無料である。航空運賃、食費、雑費等に年間150万円程度必要だが、「高校生の留学促進」事業ではそのうちの50万円を奨学金として支給する。返還の必要はない。

(資料2~4について)

【委員】

 中間報告は、懇談会としての具体的な提案なのか、それとも方向性の示唆にとどまるのか。

【事務局】

 本懇談会は、委員の方々より様々な視点から自由に意見をいただく形式をとっており、中間報告についても全体の合意に基づいた提案ではなく、これまでの意見をとりまとめた示唆という形式をとっている。その中の共通的な意見については、概算要求等に反映していくなど、事務局側で対応していきたい。

・本懇談会における提言を受けた中間報告や施策課題などについて自由討議が行われたところ、概要は以下の通り。

【委員】

 事務局提案の事業については重要であるので実施していただきたい。しかしながら、何か一点集中的なものがあっていいのではないか。日本の将来を考えると、何が足りないか。その一つに海外での学位取得数が少ないということがある。日本人の海外での学位取得数は、中国、インド、韓国といった他のアジアの国よりも少ない。これは単に学位数の問題だけでなく、そこから広がる人的ネットワークが貧弱になるということであり、その結果、日本の評価が下がっていくことにもつながる。海外で学位を取得する下地を作ると同時に、サポート体制の構築が必要である。

【委員】

 例えば、アメリカに留学した学生は、アメリカの教育方法も学んで来ることができ、それを日本での新しい教育方法に生かし、カリキュラムのシステム化などが可能となる。これは大学改革に直結する非常に重要な問題である。
 私の記憶では、アメリカでの奨学金選考においては、日本人は豊かであるという理由から、同じ能力であっても中国人の学生に比べ落選する可能性が高い。その点からも日本が海外での学位取得のための奨学金を導入することが必要である。

【委員】

 全く同感である。海外派遣後、特に3年目以降の資金が獲得しにくい。2年目のMAまでは取得できるが、Ph.D.まで取得するための資金が足りない。企業においても、3年目以降の派遣は認められないことがある。
 なお、多数の日本人を3ヶ月や6ヶ月間の短期で派遣するよりも、少数の日本人を重点的に長期で派遣する方がよいのではないか。
 この中間報告を今後の参考資料とするには、少しまとめすぎているという印象を受ける。

【委員】

 主要な言語以外の言語を学ぶと奨学金が支給される制度を導入することも検討してはどうか。主要言語でなくとも、将来、国として必要になりうる言語の専門家の卵を養成する必要がある。

【委員】

 教育交流は目的ではなく、手段だと考えている。教育交流という手段を通じてどのように大学を改革するか、どのように日本を人材が集まる場にして国際競争力を高めるかなどの目的をはっきりさせることが必要である。
 また、アジアとの交流が深まっていくと、日本人の日本についての知識が問われる。カリキュラムに日本についての知識を深める内容を組み込む必要がある。外国人から日本の良さがよく見えていることもあり、日本人自ら日本を知るということが国際的な議論を深めることや国際的に対等に渡り合うことにもつながっていくと思う。

【委員】

 初等中等教育における海外派遣については、実際に希望者が多いのは3ヶ月程度の短期ではないか。短期間でも高校生に海外を経験させると、留学先の国に対する関心を持ち、将来活きてくるのではないか。
 日本人学校の協力を得てテレビ会議などで交流をした例があるので、ぜひ日本人学校の利用も案に入れていただきたい。
 また、国際理解教育にとどまらず、それを受けて日本の教育を変えられるかということが重要である。ナショナリズムや地理的な問題もあり、日本においては積極的に国際理解教育の先にある目的をはっきりさせなければ、他国に取り残されてしまうのではないか。

【委員】

 報告にはなぜ、内向きの日本人学生を変える必要があるのかを書き込む必要がある。海外に出ることによって、ナショナルスタンダードではなく、インターナショナルスタンダードで日本を見ることができるようになり、日本を愛することができるようになる。留学生30万人計画も重要だが、日本人を外に出すことも重要である。
 中間報告案3ページの海外留学のプログラム化については、文部科学省だけでなく、各省を通じた施策を総合的に実施することが必要である。「グローバル30」が日本人学生の海外派遣に使えないと聞くが、これと若手研究者海外派遣事業をリンクさせることはできないか。
 ボローニャ・プロセスで、欧州高等教育圏が2010年にはできあがるが、日本もOECD高等教育カントリーレビューで指摘されているようにボローニャ・プロセスのフォローアップグループに参画すべきである。
 アジア域内の交流については、単位互換についてはUMAPがあり、域内の評価機構もあるが、ユネスコの学位認定地域条約に加盟していない、クリアリングハウスがないといった現状もあり、具体的な提言を行った方がよい。

【委員】

 若者の海外派遣も大事なことだが、国内でいろいろな経験を積んだ方が途上国へ行って活躍してもらうことも重要である。現役の教員は非常に忙しいので、定年後の方を特任教員などとして派遣し、日本での経験について伝えるような仕組みを作ってはどうか。シニア海外ボランティア「現職教員特別参加制度」についても同様で、60歳~65歳の再雇用の方の派遣を検討することにより幅広い年齢層での国際協力が可能となるのではないか。  

【委員】

 懇談会の報告が問題点や希望の羅列だけで終わってしまうのはどうか。委員が共通に感じているところを絞り込み、それらの課題についてその後どのような検討が行われたかについて報告いただくなどして、懇談会の具体的な成果を出すことが必要ではないか。

【事務局】

 今後、委員の合意が得られたものに関して集約することも含め、座長と相談させていただきたい。

【委員】

 日本人の海外での学位取得の促進については以前から指摘されているが、なかなかうまくいかない。また、外国人研究者の生活環境改善についても、様々な場で指摘されているが、なかなか具体的に進んでいないのが現状である。

【委員】

 アメリカの学校ではアジアの留学生が増えているが、日本人については、ファンディングの面だけでなく基本的な競争力でも取り残されてしまう可能性がある。それを解決するためには、もちろん英語の水準向上も必要であるが、中国人にも韓国人にもないような1人1人のユニークさを養う必要がある。そのためには、日本の教育の特徴についても考えていかなければならない。
 例えば、日本人留学生の海外での学位取得や、少ないと言われる国際機関での日本人職員数を増やすために何をしなければならないか、初等中等教育段階から積み上げたストーリー、シミュレーションのようなものを作ってみるのもよいのではないか。

【委員】

 日本の学生がアメリカの大学にほとんどガイダンスなしで留学し失敗してしまう学生もいるので、学生が常識をもつようにすることも大切である。
 また、日本に来た外国人留学生は半年程度の日本語学習のみで、生活ができる水準の日本語を身につけないまま、特に理系では学位を取得できてしまうことがある。これでは、優秀な外国人が結局就職できず日本から離れてしまう結果につながる。留学生が日本語で生活ができるくらいの水準になるような訓練をするべきである。

【委員】

 留学生寮の問題について、この懇談会でなぜ外国人だけを集めた寮にするのかという話があったが、これは社会が外国人を受け入れていないということではないか。これも外国人の生活環境に関わる問題の1つである。

【委員】

 日本では学位を取得するのに相当時間がかかるので、取得した後に活躍できなかったり、ビジネスの世界に入るのが遅くなってしまったりする。これでは海外から優秀な留学生が来ないのではないか。日本の学位取得基準について、国際基準に合わせることを大学任せではなく組織的に問題として取り上げる必要がある。また、日本語教育の充実、就職のあっせんなどのフォローアップをするべきである。

【委員】

 留学に伴ってその分卒業が遅くなるケースが多い。単位の相互認証等を進め、遅れずに卒業できるようにすることで、学生が海外に行きやすくなるのではないか。

【委員】

 同感である。スタディ・アブロードとして条件に組み込んでしまえば、現行制度でもできるのではないか。

【委員】

 留学制度を高校生が利用する気にならない。3ヶ月以上は海外に行きたがらない。今までの初等中等教育がそのような日本人を作っている。閉塞感のある生徒が多い。今回の補正予算による高校生向けのプログラムで、そのような抵抗感を打ち破ることができるかも知れない。
 ホームステイについて、アメリカ大統領がテレビで訴えたように、日本でも、家庭で外国人をもっと迎え入れるように変わろうといったメッセージを発信できないか。

【委員】

 大学では、海外の大学と単位互換の仕組み等がある程度整っており、大学間協定を締結していれば留年せずに卒業できる。問題は学生の海外派遣プログラムを作っても希望者が少ないことである。海外派遣プログラム自体は現在でも十分あるので、学生にとって、あるいは大学にとって参加することに何らかのメリットがないと手が挙がらないのではないか。

【委員】

 制度作りでは、学生の興味を引くような工夫を若い人にしてもらってはどうか。

【委員】

 海外経験の希望には男女差がある。どういう訳か、男性はより内向きで、女性の方が海外での活動に対して積極的である。この理由は日本の社会システムにもあるのではないか。大企業が採用の際に海外経験は加味するといったことをすれば、男性も海外に目を向けるかも知れない。日本人の考え方、習性を見据えながら、政策を考える必要がある。

【委員】

 海外勤務をしてきた60歳以上のシニアの方が海外での職業経験を話すなど、中高生が海外勤務についてより多く触れる機会が必要ではないか。

【委員】

 国際交流において大きな役割を担うのは非営利活動であるが、初等中等教育で、その元となる奉仕活動が重視されていない。日本の社会システムのなかで、非営利活動はまだまだ十分とは言えず、教育のあるべき姿を考えるなかで非営利活動に着目してもらう必要がある。

【委員】

 日本には今起業家がいない。これから日本が発展していくために必要な人材を育成するためには、従来の人材とは違う人材を育成するという枠組みの中で、どのような人材像があるか例を挙げて議論していく必要があるのではないか。

【委員】

 私の高校である企業の方に講演をしていただいたことがある。その内容は、中高生からの評判がよかった。起業家精神でも国際感覚の醸成でも中高生段階からの取組を継続的に続けることが重要である。

【座長】

 今回の議論を踏まえて資料2を修正し、委員の意見を将来に渡って生かしていくものとしたい。資料3、4については、事務局でさらに精度をあげると思うが、基本的には精神を含めてお認めいただいたということにしたい。

【事務局】

 中間報告については、主な意見として少し充実させた上で、概算要求にも反映させたい。また、本日の議論を踏まえ、懇談会としていくつかの骨太のメッセージをまとめられないかを検討し、今後の議論につなげていきたい。進め方については座長と相談させていただく。

次回以降の日程
・次回は未定。8月は懇談会の開催はなし。9月以降の日程は調整する。

以上

お問合せ先

大臣官房国際課国際協力政策室

(大臣官房国際課国際協力政策室)