国際教育交流政策懇談会(第3回)議事要旨(案)

1.日時

平成21年3月17日(火曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省3F2特別会議室

3.議事

(1)グローバル化時代における日本の高等教育
(2)その他

4.配付資料

資料1 国際教育交流政策懇談会(第2回)議事要旨(案)
資料2 効果的・効率的な国際教育交流・協力の推進及び能動的な交流事業を展開する上でのグローバル化時代における日本の高等教育:若干のコメント(二宮皓広島大学理事・副学長(研究))
資料3 国際教育交流政策懇談会の今後の進め方について(案)
参考資料1 第8回教育再生懇談会資料

5.出席者

(委員)

金澤座長、田村座長代理、池上委員、織作委員、佐藤委員、角南委員、恒川委員

(有識者)

二宮皓広島大学理事・副学長(研究)、大澤清二大妻女子大学大学院家政学研究科長

(文部科学省)

銭谷事務次官、木曽国際統括官、芝田大臣官房国際課長、藤原大臣官房会計課長他

6.議事概要

(1)グローバル化時代における日本の高等教育
・二宮広島大学理事・副学長より資料2に基づき特に大学が効果的、効率的な国際交流・協力を進める上で重要な戦略等について、大澤大妻女子大学大学院家政学研究科長より大学における国際協力とその教育的効果について、それぞれ発表あった。
・自由討議の概要は以下の通り。

【委員】

 自分で考える力やコミュニケーション能力を身につけるために、住み慣れた日本を離れ、異質の世界に身を置くための取組が必要である。大学では、1年分の単位は外国で取ることを卒業要件とするような「厳しさ」があってもよいのではないか。

【委員】

 留学生の受入れ数が増加しているのに対して、日本人学生の留学は少ない。日本人学生が留学するにあたり制度上インセンティブを与えるものや、効果があったものがあれば伺いたい。

【二宮広島大学副学長】

 国のGP(グッドプラクティス)プログラムは役に立っている。広島大学では、大学院の工学研究科でGPに採択された、海外の企業で実際に体験をさせるプログラムがある。また、国際協力研究科では青年海外協力隊の事業を組み込む形でアフリカでの途上国の経験を活かした修士学位取得が可能となるプログラムがる。プログラム化すると学生はそれを承知で入って来る。海外経験に関心のある学生を更に伸ばすことで、エンジンの部分ができ上がっていくのではないか。

【大澤大妻女子大学教授】

 海外留学をプログラム化できればうまく行くと考える。

【委員】

 諸外国では海外留学が大学院入学の際に評価されるといった事例がある。海外留学するインセンティブを与えるような事例を本懇談会で出していってはどうか。

【委員】

 二宮先生の発表で、日本の学校が途上国の学校と直結するような国際教育協力指定校制度新設というアイデアがあったが、具体的にどのようなものをお考えか。

【二宮広島大学副学長】

 ESD(持続発展教育)も一つの端緒になると思うが、小中学生が、途上国の子供たちと対話をしてグローバルな課題について勉強していくことは、学習行為であると同時に国際協力の準備となる。思い切って、研究開発学校制度の仕組を使って、21世紀社会に必要とされる国際協力を小・中・高校でも実施できないかという発想である。

【委員】

 海外経験のプログラム化は重要である。例えばジョージタウン大学では、3年目は全員、海外に行くことになっている。その際、学生が将来やりたいことと繋がっていくことが重要である。
 昨今、不況のあおりで学生の就職が大問題になっている。1年間の海外留学をいくらアピールしてもあまり報われない。海外留学をプログラム化するにしても、就職問題と一緒に考えること、戻ってきた後の評価も含めて考えることが必要であると考える。

【二宮広島大学副学長】

 せっかく育った人材がいつになったら安定的な形で社会に役に立っていくのか。一方で、日本の学生は賃金の安い途上国で就職したがらず、どうしてもキャリアトラックが国内に収束、収れんしてしまう。
 他方、経済産業省はアジア人財資金構想で、留学生を国内で育てて、日本の企業で働いてもらっている。とてもよいことだが、海外でトレーニングを受け手帰国した学生を採用してくれればとも思う。何かちぐはぐな印象がある。結局、学生は公務員志望になる。

【委員】

 20年ぐらい前は東南アジア各国の指導者のかなりの数が日本留学経験者であったが、今は、アメリカ留学経験者がとって代わっている。この20年で日本の失ったものは大きい。
 JICAで途上国に派遣される青年の帰国後を、日本の社会は面倒を見ない。海外との交流や、海外に出ることの意味、国際的な活動をすることの重要性を国として支援しようという仕組がないのではないか。
 就職に関しては、国際的な経験を経て、大学で一定の知的水準に至るまでの訓練をした人間を、社会がその中身を評価して採用するということが日本にはない。

【大澤大妻女子大学教授】

 途上国でお会いした日本人学校の校長先生方と話してみると、あまりにも現地のことを知らない。子供たちも、安全の問題もあるとは思うが、バス通学で家と学校の往復であり、現地の人と接しない。外国にいる日本人がそのような状況である。一歩踏み出すということが、まず必要ではないか。

【二宮広島大学副学長】

 最近、学生の就職に関しては、企業の人事担当を責めてばかりではいけないのではないかと思っている。企業に対して、海外経験を積んだ学生には企画力がある、異なった視点を持っていると言っても通じない。何か具体のもの、遂行能力やパフォーマンスに置きかえて提示しなければならない。
 インプットも重要であるが、パフォーマンスやアウトカムまで保障するといったことを、日本の教育は少し怠って来たのではないか。大学がそこまで保証して海外に送り出すべきではないか。
 海外に行けばエンプロイヤビリティー(雇用されうる能力)が高まると思い込むのは早計で、行ったおかげで何ができるようになった、企業にはこういうメリットがあると、学生に売り込ませられるようにならなければならない。大学が自らカリキュラム研究を行い、アウトカムを考慮した事業やプログラムに取り組まなければ、企業や日本社会の批判で終わる。

【委員】

 多くの方から海外留学のプログラム化という話が出ているが、その方向には大いに賛成である。ただ、特定の学部、学科のプログラムとして構築するだけでなく、一般化しないと意味がない。そのためにはそれなりの条件整備が必要である。
 二宮先生にお聞きしたいが、UMAP(University Mobility in Asia and the Pacific)の現状をどう見ていらっしゃるか。また、ボローニャ・プロセスは2010年に一応プロセスは完成するが、実質的な大学間の交流がこれで本当に実現するかについて、多少、疑問を持っている。エラスムス・プログラムでは、もともと大学間交流があったが、ボローニャは政治主導である。アジアで何らかの交流を考える場合にも、大学間の繋がりという実質が裏にないと、うまくいかないのではないか。

【二宮広島大学副学長】

 UMAPは政治的な機構ではなく、大学の自主的な機構であるため、ヨーロッパのような仕組となるのは非常に難しい。プログラムの実質化を図るため、副学長クラスで検討しており、エラスムス・プログラムをモデルにしながら、3ヶ国3大学での共同プログラムの構築を始めている。参加国の大学が単位互換を前提として、学生を移動させるもので、大学が大いに利用できるUMAPになってきている。
 ボローニャ・プロセスは、うまく展開していくと思う。参加国は英語によるプログラムを提供するなどして、自国の高等教育の魅力を高めている。東ヨーロッパも取り込みながら、ヨーロッパの国々の学生交流は更に質を高めていくものと思う。ジョイント学位も試行錯誤されており、単一の大学が単一の学位を出すという時代から、国際的な共同学位を出すという時代になってきている。

【委員】

 国際交流には学生や生徒をリードできたり、相手国の方々とコミュニケーションを図ることができるような先生が必要である。
 大学生に強制的にでも留学をさせることには大いに賛成である。単なる学業のためではなく、海外で大人としてのマナーを身につけたり、将来の強みとなりうる賞につながるようなコンテスト等にも積極的に参加させたりするべきである。
 ロンドンで聞いた話であるが、不況下で有名校の大学院に入学希望者が殺到している。就職していても解雇されたりと、社会が揺れ動いている中で、今こそ大学や大学院でもう一度勉強して、また社会に出ていくということを考えている人たちが多い。今、こういう時代にこそ、もう一度学び直すということを、世に訴えてはどうか。

【委員】

 企業の採用はかなり変わってきている。国際経験を積んで対応能力を身につけたなど、海外経験で何を得たかということをきちんと表現できる人を評価するようになってきている。
 国際化は大学に入ってからだけではなく、小さい頃から視野を広げることが必要である。小学校段階での英語教育はよい機会である。英語を使ってどう自己主張するか、どう他人の意見を聞くかという具体的な方法を身につけていくことが重要であるが、これを指導できる先生がほとんどおらず、課題である。

【委員】

 小学校での英語教育は、中途半端な形で取り組まないほうがいい。取り組むのであれば単に英語だけではなく、コミュニケーション能力をも養うような教育とすべきで、他分野の教育も含めた大々的な初等中等教育の見直しとあわせて取り組んだほうがいい。

【委員】

 国際化の観点からは、日本の初等中等教育は相当深刻な状況である。入試が厳しいことによって学力が向上していくのはよいが、国際的なセンスを磨くこともあわせて取り組まなければ、日本の教育は袋小路に陥る。小学校での英語教育は、そういった状況を回避する一つの機会だと思う。

【委員】

 早い時期での英語教育導入に賛成である。7~8歳という成長段階で外国語に自然に触れさせておくとよい。

【委員】

 次回は初等中等教育に少し集中してご議論いただきたく、今あったようなお話は次回も続けてご議論いただきたい。

7.次回以降の日程

・次回は「グローバル化時代における日本の初等中等教育」を議題として4月15日(水曜日)15時~17時に開催予定。第5回は「日本の教育の特徴を生かした国際交流・協力」を議題として5月に開催予定。6月には、これまでの議論の整理を予定。

以上

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大臣官房国際課国際協力政策室

(大臣官房国際課国際協力政策室)