資料4 国際教育協力懇談会 報告2006 『国際開発協力のための知的ネットワークの構築』

1.バックグラウンド

国際的な潮流

  • 国際社会においては、MDGs(ミレニアム開発目標)の達成をはじめ、地球的規模の問題解決が重要テーマに
  • 近年の国際情勢として、先進各国には各種問題解決のための知的貢献が求められる潮流
  • 教育開発においては、EFA(万人のための教育)の達成に向けた量的拡大を進める中、脆弱な教育行財政・制度に起因する開発進捗の遅れ、中途退学者の増加といった状況が見られ、教育の質的向上が大きな課題に
  • 一方、アジア諸国を中心として、基礎教育の普及に伴う高等・職業教育の需要が相対的に高まり、日本に対する期待も増大

我が国における状況

  • 海外経済協力会議の新設に象徴される戦略性の重視、量から質への転換といった、効果的・効率的なODA協力を求める世論の醸成
  • 我が国の教育協力は、質の向上に重点を置きつつ JICA(ジャイカ)を中心としたきめの細かいサポートを行ってきた点が大きな特徴
  • ODAの質の向上の観点から、大学に対する期待が高まり
  • 高等教育のグローバル化の流れの中、近年、我が国の多くの大学がアジア諸国を中心とした外国の大学との連携・交流を重視
  • 特に、国立大学の法人化を契機に、個性化を目指した取組として国公私立大学を問わず国際協力・交流に対する大学の意欲が増加

国際協力の基本的な方向性

  • ODA協力全般にわたり質の向上・持続性の重視が求められている中、教育協力についても我が国が有する教育上の知見・経験を活かした協力を進めていくことが必要
  • また、教育分野に留まらず、広く大学関係者が有する知見を活かし、途上国の多様な開発課題の解決に向けた知的貢献を行うため、「知的ネットワーク」(多様な知に関する情報が提供され、国際協力に活用できる全体システム)の構築など、大学の知的リソースをODA協力に役立てる仕組みの整備が必要

2.今後の教育協力のあり方

1.今後の教育協力の基本的な方向性

  • 基礎教育協力については、質的向上・持続的発展を促すアプローチを重視し、このための協力体制の整備・充実を進めるべき
  • アジア諸国を中心に、日本の知見・経験が活かせる高等教育・職業教育分野における協力の拡充を図り、大学をはじめとした教育関係者の積極的な参画を促すべき

2.具体的な方策

(1)基礎教育の質的向上・持続的発展を促すアプローチ

  • 教育関係者を通じた教育ノウハウの提供
    (政策アドバイザー派遣、JOCV現職教員派遣、退職教員のシニアボランティア派遣等)
  • 理数科教育をはじめとした我が国の教育上の知見・経験のオープンリソース化
  • 基礎教育協力を支える国内関係者相互のネットワークの形成
  • アジアの経験を活かした南南協力への積極的貢献

(2)高等教育・職業教育分野における協力の拡充

  • 日本に対する期待に応え、息の長い協力・交流を進める戦略の実現
    (司令塔機能、戦略的な研修員受入れ、大学における人材育成、交流を見据えた協力プロジェクトの立案 等)
  • 高等教育・職業教育分野における知見・経験の蓄積・共有化
  • アジア地域における高等教育ネットワークの強化
    (大学評価スキームの共同研究、単位互換等域内連携スキームの充実 等)

(3)教育関係者の連携の促進等

  • 教育協力における連携の促進
  • 教育協力人材の育成を推進するための連携協力
  • 初等中等教育現場における国際理解教育の充実

3.我が国の大学が有する「知」の活用

1.大学の知を活用する意義・大学が担う役割

(1)大学の知を活用する意義

  • 我が国のODAの質的な向上
  • 研究成果の実践フィールドとしての国際協力(自然科学のみならず、人文・社会科学の可能性)
  • 社会における知的公共財としての役割-社会貢献

(2)大学が担う役割

  • 大学本来の機能を活かした途上国人材の育成
  • 教育研究機能を活用するとともに、それらを発展し得るような国際協力への参画
  • 途上国の課題解決のための国内外の大学間ネットワークの形成

(3)留意事項

  • ODA戦略の中での大学の位置付けの明確化
  • 大学の特徴(教育研究、国際戦略等)への配慮

2.環境整備の方策

(1)大学の知を活かし得る体制の整備

  • 大学の(人的)ネットワーク化促進(研修員受入、評価、技プロ実施等)
  • プロジェクト・コーディネーターの育成と確保

(2)大学の国際協力活動への支援

  • 途上国や援助機関のニーズや案件に関する情報の提供
  • シーズの途上国適用化に必要な資金の確保
  • 地域研究による知見の活用促進

(3)国際協力に携わる大学に求められる改善事項

  • 各大学における適切な教員評価
  • 学内体制
  • 関係諸機関との有機的連携

(4)サポートセンターの抜本的見直し

  • 将来的には、大学関係者による自立した運営を
  • 関連情報の整備(途上国協力に有用な技術や人材などシーズ情報)
  • 援助関係者への情報提供(シーズ)と提案(プロジェクト形成など)
  • 大学の(人的)ネットワーク化の支援(拠点整備と裾野拡大)
  • 目利き人材の確保(大学教員OB等シニア人材の活用を含む)
  • シーズの途上国適用化に必要な資金による活動監理
  • プロジェクト・コーディネーターに対する研修機会の提供

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大臣官房国際課国際協力政策室

(大臣官房国際課国際協力政策室)